説明

ブレーキ制御装置

【課題】制御弁による圧損量をもとにブレーキフルードの温度を推定できるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】ブレーキ制御装置において、ポンプは、モータの駆動によりホイールシリンダにブレーキフルードを供給し、ホイールシリンダ圧を加圧する。制御弁は、ホイールシリンダ内のブレーキフルードの排出を制御する。液圧センサは、ホイールシリンダ圧を検出する。ブレーキECUは、ポンプおよび制御弁を制御し、ポンプの吐出流量および液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧にもとづいて、ブレーキフルードの温度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に制動力を付与するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキペダルの操作量に応じた液圧を液圧回路内に発生させ、各車輪のホイールシリンダにその液圧を供給することにより制動力を付与するブレーキ装置が知られている。ホイールシリンダの液圧は、液圧回路に設けられたポンプおよび電磁制御弁によりブレーキフルードが給排されることによって調整される。
【0003】
特許文献1には、ブレーキブースタ負圧制御装置において、低温時にのみ大きなブースタ負圧をブレーキブースタの負圧室に与えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−348765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレーキフルードの温度に応じてブレーキフルードの粘度が変化し、ホイールシリンダに液圧を伝達する応答性が変化しうる。そのため、液圧伝達の応答性の変化に対応すべく、ブレーキフルードの温度を取得することが所望される。特許文献1に記載の技術的思想においては、ブレーキオイルが低温かどうかを判定するため、ブレーキオイルの温度を検出するための温度センサが別途必要であり、コストが嵩む。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コストを抑え、ブレーキフルードの温度を算出できるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、モータの駆動によりホイールシリンダにブレーキフルードを供給し、ホイールシリンダ圧を加圧するポンプと、ホイールシリンダ内のブレーキフルードの排出を制御する制御弁と、ホイールシリンダ圧を検出する液圧センサと、ポンプとおよび制御弁を制御し、ポンプの吐出流量および液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出する制御手段と、を備える。
【0008】
この態様によると、ブレーキフルードの温度を直接検出する温度センサを設けることなく、ブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0009】
制御手段は、ブレーキフルードの温度に応じて制御弁を通電制御するための制御ゲインを決定してもよい。これにより、ブレーキフルードの温度に応じたブレーキフルードの粘度の変化に対応して制御弁の通電制御を実行できる。
【0010】
制御手段は、ホイールシリンダ圧の目標液圧およびホイールシリンダ圧にもとづいて制御弁による圧損量を算出し、圧損量にもとづいてブレーキフルードの温度を推定してもよい。これにより、圧損量をもとにブレーキフルードの温度を推定できる。
【0011】
制御手段は、ポンプの吐出流量および制御弁のオリフィス径にもとづく評価関数によって推定した複数のブレーキフルードの温度のいずれかを選択し、選択したブレーキフルードの温度をもとにブレーキフルードの温度を決定してもよい。これにより、各輪について推定されたブレーキフルードの温度のうち、どの温度が信頼性が高いかどうか評価することができる。
【0012】
制御手段は、評価関数によって選択した2つのブレーキフルードの温度の差が所定温度以上であれば、選択されなかったブレーキフルードの温度にもとづいて、選択した2つのブレーキフルードの温度のどちらかをブレーキフルードの温度に決定してもよい。これにより、一層精度良くブレーキフルードの温度を算出できる。
【0013】
制御手段は、推定した複数のブレーキフルードの温度のうち最大の温度と最小の温度を除いた温度を用いてブレーキフルードの温度を決定してもよい。これにより、外乱の影響を大きく受けた可能性のある推定したブレーキフルードの温度を除いて、精度良くブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0014】
制御手段は、所定値以上のモータ回転数でモータを駆動して取得したポンプの吐出流量および液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出してもよい。これにより、ポンプの吐出流量を大きくした状態で圧損量を算出するためのホイールシリンダ圧を取得することができる。
【0015】
制御手段は、モータ回転数が所定値に達するまで、モータ回転数を漸増してもよい。これにより、圧損によって制動力が急に発生することを抑えることができる。
【0016】
制御手段は、ブレーキフルードの温度を算出するときに、駆動しているモータが外気温に応じた上限回転数に達した場合、モータの駆動を停止してもよい。これにより、モータ回転数が大きくなりすぎることを抑え、圧損により発生する制動力を低減することができる。
【0017】
制御手段は、ブレーキフルードの温度を算出するときのモータを駆動する時間が所定時間を経過すると、モータの駆動を停止してもよい。これにより、ブレーキフルードの温度を算出する処理に過度の時間がかかることを防ぐことができる。
【0018】
モータは、ブレーキペダルに対する操作に応じて駆動し、制御手段は、ブレーキペダルに対する操作がオンからオフに切り替わったときに、ブレーキフルードの温度の算出を開始してもよい。これにより、運転者が制動制御を実行後、そのままブレーキフルードの温度の算出をすることができ、算出時に生じるモータの作動音および圧損により生じる制動力を目立たなくすることができる。
【0019】
制御手段は、ブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定するモータ回転数を、前回実行したブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定されたモータ回転数より大きく設定してもよい。これにより、たとえば時間などの制限により所望の圧損量が得られなかった場合において、次回のブレーキフルードの温度の算出時に所望の圧損量が得られる可能性が高くなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブレーキ制御装置において、コストを抑え、ブレーキフルードの温度を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るブレーキ制御装置の概略構成図である。
【図2】実施形態に係る液圧調整弁における圧損量を示す図である。
【図3】実施形態に係るポンプ吐出流量と圧損量とブレーキフルードの温度との関係を説明する図である。
【図4】実施形態に係る液圧調整弁の通電制御の制御ゲイン、目標液圧およびブレーキフルードの温度の関係を説明する図である。
【図5】実施形態に係るブレーキフルードの温度推定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、実施形態に係るブレーキ制御装置100の概略構成図である。本図では右前輪−左後輪、左前輪−右後輪の各配管系統を備えるX配管の液圧回路を構成する車両に実施形態のブレーキ制御装置100を適用した例について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0023】
図1に示すように、ブレーキ制御装置100は、ブレーキペダル1、ストロークセンサ2、マスタシリンダ3、ストローク制御弁30、ストロークシミュレータ4、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5、ホイールシリンダ6FL、6FR、6RL、6RR(以下、特に区別しない場合は、「ホイールシリンダ6」という)を備える。また、ブレーキ制御装置100は、ブレーキ制御装置100の各部の動作を制御する制御部としてのブレーキECU200を備えている。ブレーキ制御装置100は、液圧回路を介したホイールシリンダ6へのブレーキフルードの供給によりホイールシリンダ6に液圧(「ホイールシリンダ圧」という)を供給し、当該液圧により車輪に制動力を付与する。各ホイールシリンダ6は、ブレーキディスク(不図示)とブレーキキャリパ(不図示)にそれぞれ内蔵されていてよく、ホイールシリンダとブレーキディスクとブレーキキャリパとを含んでディスクブレーキユニットという。
【0024】
ドライバによってブレーキペダル1が踏み込まれると、ブレーキペダル1の操作量としてのペダルストロークがストロークセンサ2に入力され、ペダルストロークに応じた検出信号がストロークセンサ2から出力される。この検出信号はブレーキECU200に入力され、ブレーキECU200でブレーキペダル1のペダルストロークが検出される。なお、ここではブレーキ操作部材の操作量を検出するための操作量センサとしてストロークセンサ2を例に挙げているが、ブレーキペダル1に加えられる踏力を検知する踏力センサ等であってもよい。
【0025】
ブレーキペダル1には、ペダルストロークをマスタシリンダ3に伝達するプッシュロッド等が接続されており、このプッシュロッド等が押されることでマスタシリンダ3に備えられているプライマリ室3aおよびセカンダリ室3bにマスタシリンダ圧が発生させられるようになっている。
【0026】
マスタシリンダ3には、プライマリ室3aとセカンダリ室3bを構成するプライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dが備えられている。プライマリピストン3cおよびセカンダリピストン3dは、スプリング3eの弾性力を受けることで、ブレーキペダル1が踏み込まれていないときには各ピストン3c、3dが押圧されてブレーキペダル1を初期位置側に戻るように構成されている。
【0027】
マスタシリンダ3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bには、それぞれブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて延びる管路B、管路Aが連結されている。
【0028】
また、マスタシリンダ3には、リザーバタンク3fが備えられている。リザーバタンク3fは、ブレーキペダル1が初期位置のときに、プライマリ室3aおよびセカンダリ室3bのそれぞれと図示しない通路を介して接続されるもので、マスタシリンダ3内にブレーキフルードを供給したり、マスタシリンダ3内の余剰ブレーキフルードを貯留する。リザーバタンク3fには、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5に向けて延びる管路C、管路Dが連結されている。
【0029】
ストロークシミュレータ4は、管路Aにつながる管路Eに接続されており、セカンダリ室3b内のブレーキフルードを収容する役割を果たす。管路Eには、管路Eの連通・遮断状態を制御できる常閉型の二位置弁により構成されたストローク制御弁30が備えられ、ストローク制御弁30により、ストロークシミュレータ4へのブレーキフルードの流動が制御できるように構成されている。
【0030】
ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、マスタシリンダ3のセカンダリ室3bと前輪FRに対応するホイールシリンダ6FRを接続するように、管路Aに連結された管路Fが備えられている。管路Fには、遮断弁36が備えられている。遮断弁36は、非通電時には開状態(連通状態)、通電時には閉状態(遮断状態)となる二位置弁であり、遮断弁36によって管路Fの連通・遮断状態が制御され、これにより管路A、Fを介したホイールシリンダ6FRへのブレーキフルードの供給が制御される。
【0031】
また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、マスタシリンダ3のプライマリ室3aと前輪FLに対応するホイールシリンダ6FLを接続するように、管路Bに連結された管路Gが備えられている。管路Gには、遮断弁37が備えられている。遮断弁37は、非通電時には開状態、通電時には閉状態となる二位置弁であり、遮断弁37によって管路Gの連通・遮断状態が制御され、これにより管路B、Gを介したホイールシリンダ6FLへのブレーキフルードの供給が制御される。
【0032】
また、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5には、リザーバタンク3fから延設された管路Cに接続された管路Hと、管路Dに接続された管路Iが設けられている。管路Hは、管路H1、H2という2本の管路に分岐して、それぞれホイールシリンダ6FR、6RLに接続されている。また、管路Iは、管路I3、I4という2本の管路に分岐して、それぞれホイールシリンダ6FL、6RRに接続されている。ホイールシリンダ6RLおよびホイールシリンダ6RRは、それぞれ後輪RL、後輪RRに対応している。
【0033】
各管路H1、H2、I3、I4には、それぞれ1つずつポンプ7、8、9、10が備えられている。各ポンプ7〜10は、例えば静寂性に優れたトロコイドポンプにより構成されている。ポンプ7〜10のうち、2つのポンプ7およびポンプ8は、第1モータ11によって駆動され、2つのポンプ9およびポンプ10は、第2モータ12によって駆動される。第1モータ11および第2モータ12は、ブレーキペダル1に対する操作に応じて駆動する。第1モータ11および第2モータ12(以下、これらをとくに区別しない場合、単にモータという)は、各ポンプ7〜10を介して、駆動に応じて各ホイールシリンダ6にブレーキフルードを供給する。実施形態では、4つのポンプ7〜10が液圧源として機能する。各ポンプ7〜10は、液圧回路中に設けられ、接続された第1モータ11または第2モータ12の回転数に応じてホイールシリンダにブレーキフルードを供給する。すなわち、2つのポンプが1つのモータの駆動により作動され、2つのポンプのそれぞれには1つのホイールシリンダが接続されている。第1モータ11および第2モータ12に電力を供給するバッテリは共通であってよい。ポンプ7〜10は、モータ11、12の駆動によりホイールシリンダ6にブレーキフルードを供給し、ホイールシリンダ圧を加圧する。
【0034】
また、ポンプ7〜10のそれぞれに、並列的に管路J1、J2、J3、J4が備えられている。ポンプ7に対して並列的に接続された管路J1には、直列的に接続された連通弁38と液圧調整弁32が備えられている。連通弁38および液圧調整弁32は、連通弁38がポンプ7の吸入ポート側(管路J1におけるブレーキフルード流動方向の下流側)に、液圧調整弁32がポンプ7の吐出ポート側(管路J1におけるブレーキフルード流動方向の上流側)にそれぞれ位置するように配置されている。つまり、連通弁38によってリザーバタンク3fと液圧調整弁32との間の連通・遮断を制御できる構成とされている。連通弁38は、非通電時には閉状態、通電時には開状態となる二位置弁であり、液圧調整弁32は、非通電時には開状態、通電時には閉状態で、通電制御により弁の開度が調整される常開型のリニア弁である。
【0035】
ここで、液圧調整弁32には以下に示す力が作用する。液圧調整弁32のリニアソレノイドへの通電電流に応じた電磁駆動力をF1とし、スプリングの付勢力をF2とし、液圧調整弁32の出入口間の差圧に応じた差圧作用力をF3とし、ソレノイドの摺動に対する摩擦力F4とすると、F1=F2+F3+F4という関係が成立して、液圧調整弁32の開度は、{(F2+F3+F4)−F1}の値に依存する。つまり、電磁駆動力F1が大きくなるにつれて、弁の開度が小さくなる。
【0036】
次に、液圧調整弁32には以下に示す閉弁電流特性がある。閉弁電流とは、弁を開いた状態から閉じるときの弁への通電電流値をいう。閉弁電流特性とは、閉弁電流とホイールシリンダ圧の関係を示す特性をいい、閉弁電流特性は、閉弁電流がホイールシリンダ圧に対してリニアに比例する一次関数である。液圧調整弁32の作動液は、ホイールシリンダ6FRから下流側の連通弁38方向へ排出される。常開型のリニア弁において、液圧調整弁32の通電電流が増加されるにつれて弁の開度が小さくなり、液圧調整弁32の流量は減少する。そして、通電電流が閉弁電流に達したときに液圧調整弁32は閉弁し、液圧調整弁32の流量はゼロとなる。
【0037】
ポンプ8に対して並列的に接続された管路J2には、液圧調整弁33が備えられている。液圧調整弁33は、液圧調整弁32と同様にリニア弁である。常開型のリニア弁である液圧調整弁33〜35も液圧調整弁32と同様に機能する。なお、以下において液圧調整弁32〜35をとくに区別しない場合、単に「液圧調整弁」という場合があり、連通弁38および連通弁39をとくに区別しない場合、単に「連通弁」という場合がある。
【0038】
ポンプ9に対して並列的に接続された管路J3には、直列的に接続された連通弁39と液圧調整弁35が備えられている。連通弁39および液圧調整弁35は、連通弁39がポンプ9の吸入ポート側(管路J3におけるブレーキフルード流動方向の下流側)に、液圧調整弁35がポンプ9の吐出ポート側(管路J3におけるブレーキフルード流動方向の上流側)にそれぞれ位置するように配置されている。つまり、連通弁39によってリザーバタンク3fと液圧調整弁35との間の連通・遮断を制御できる構成とされている。連通弁39は、非通電時には閉状態、通電時には開状態となる二位置弁であり、液圧調整弁35は、非通電時には開状態、通電時には閉状態で、通電制御により弁の開度が調整されるリニア弁である。液圧調整弁35は、通電制御により開度が調整されて、ホイールシリンダ6FLのブレーキフルード量を調整する。液圧調整弁および連通弁は、通電制御によりホイールシリンダ6内のブレーキフルードの排出を制御する。
【0039】
ポンプ10に対して並列的に接続された管路J4には、液圧調整弁34が備えられている。液圧調整弁34は、液圧調整弁35と同様にリニア弁である。
【0040】
そして、管路J1〜J4における各ポンプ7〜10と各ホイールシリンダ6FR、6FL、6RR、6RLとの間には、液圧センサ13、14、15、16が配置されており、各ホイールシリンダ6FR、6FL、6RR、6RLにおける液圧を検出できるように構成されている。また、管路F、Gにおける遮断弁36、37よりも上流側(マスタシリンダ3側)にも液圧センサ17、18が配置されており、マスタシリンダ3のプライマリ室3aとセカンダリ室3bに発生しているマスタシリンダ圧を検出できるように構成されている。
【0041】
さらに、ホイールシリンダ6FRを加圧するためのポンプ7の吐出ポートおよびホイールシリンダ6FLを加圧するためのポンプ9の吐出ポートには、それぞれ、逆止弁20、21が備えられている。逆止弁20、21は、それぞれホイールシリンダ6FR、6FL側からポンプ7、9側へのブレーキフルードの流動を禁止するために備えられている。このような構造により、ブレーキ液圧制御用アクチュエータ5が構成されている。
【0042】
上述の構成を備えたブレーキ制御装置100では、管路C、管路H、管路H1、管路H2を通じてリザーバタンク3fとホイールシリンダ6FR、6RLをつなぐ回路と、ポンプ7、8に並列的に接続された管路J1、J2の回路とを含む液圧回路と、管路A、管路Fを通じてセカンダリ室3bとホイールシリンダ6FRをつなぐ液圧回路とが、第1配管系統を構成している。
【0043】
また、管路D、管路I、管路I3、管路I4を通じてリザーバタンク3fとホイールシリンダ6FL、6RRをつなぐ回路と、ポンプ9、10に並列的に接続された管路J3、J4の回路とを含む液圧回路と、管路B、管路Gを通じてプライマリ室3aとホイールシリンダ6FLをつなぐ液圧回路とが、第2配管系統を構成している。
【0044】
そして、ストロークセンサ2や各液圧センサ13〜18の検出信号がブレーキECU200に入力され、これら各検出信号から求められるペダルストロークやホイールシリンダの液圧およびマスタシリンダ圧に基づいて、ストローク制御弁30、遮断弁36、37、連通弁38、39、および液圧調整弁32〜35や、第1モータ11、第2モータ12を駆動するための制御信号がブレーキECU200から出力されるようになっている。
【0045】
通常時には、ブレーキペダル1が踏み込まれ、ストロークセンサ2および液圧センサ17,18の検出信号がブレーキECU200に入力されると、ブレーキECU200は各電磁制御弁30、32〜39や、第1モータ11、第2モータ12を制御して、次のような状態にする。すなわち、遮断弁36および遮断弁37への通電は共にONされ、連通弁38および連通弁39への通電も共にONされる。これにより、遮断弁36および遮断弁37は遮断状態、連通弁38および連通弁39は連通状態とされる。
【0046】
また、液圧調整弁32〜35は、通電電流値に応じて弁の開度が調整される。ストローク制御弁30は、通電がONされる。このため、管路A、Eを通じて、ストロークシミュレータ4がセカンダリ室3bと連通状態となり、ブレーキペダル1が踏み込まれたときに、各ピストン3c、3dが移動しても、セカンダリ室3b内のブレーキフルードがストロークシミュレータ4に移動することになる。したがって、マスタシリンダ圧が高圧になることでブレーキペダル1に対して硬い板を踏み込むような感覚が発生することなく、ブレーキペダル1を踏み込めるようになっている。
【0047】
さらに、第1モータ11および第2モータ12への通電が共にONされ、ポンプ7〜10から電磁制御弁を介さないでホイールシリンダ6へのブレーキフルードの吐出が行われる。すなわち、ポンプ7〜10によるポンプ動作が行われると、各ホイールシリンダ6に対してブレーキフルードが供給される。
【0048】
ブレーキECU200により第1モータ11および第2モータ12のモータ回転数が制御されることで、ホイールシリンダ6へのブレーキフルードの供給量が制御される。このとき、遮断弁36および遮断弁37が遮断状態とされているため、ポンプ7〜10の下流側の液圧、つまり各ホイールシリンダ6へのブレーキフルードの供給量が増加する。そして、連通弁38および連通弁39が連通状態とされ、かつ、液圧調整弁32〜35の開度がそれぞれ制御されているため、開度に応じてブレーキフルードが排出され、各ホイールシリンダ6の液圧が調整される。
【0049】
ブレーキECU200は、各液圧センサ13〜16の検出信号に基づいて各ホイールシリンダ6に供給されている液圧をモニタリングし、液圧調整弁32〜35への通電電流値を制御することで、各ホイールシリンダ6の液圧が所望の値となるようにする。これにより、ブレーキペダル1のペダルストロークに応じた制動力が発生させられることになる。以上のようにして、実施形態のブレーキ制御装置100のブレーキ制御が行われる。
【0050】
実施形態に係るブレーキ制御装置100は、制動時に、ポンプ7〜10を駆動してブレーキフルードを供給しつつ、液圧調整弁を開弁しながら弁の開度を調節してブレーキフルードを排出する漏らし制御を実行する。つまり、制動中の漏らし制御では、ブレーキフルードが継続的に供給および排出される。
【0051】
このブレーキフルードはブレーキフルードの温度に応じて粘度が変化する特性を有する。ブレーキフルードの粘度が変化すれば、ホイールシリンダ6に液圧を伝達する応答性が変化しうる。そこで、実施形態に係るブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度に応じて制御弁を通電制御するための制御ゲインを決定する。これにより、ブレーキフルードの温度に応じた液圧伝達の変化に対応することができる。
【0052】
ブレーキフルードの温度を計測する温度センサを別途に設けるにはコストがかかる。そこで、実施形態に係るブレーキECU200は、ポンプおよび制御弁の制御に加えて、液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧およびポンプの吐出流量にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出する。これにより、温度センサを用いることなくブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0053】
図2は、実施形態に係る液圧調整弁における圧損量を示す図である。本図の縦軸はホイールシリンダ圧を示し、横軸は時間を示す。また本図の一点鎖線は目標液圧81を示し、実線はその目標液圧に制御されたホイールシリンダ圧80を示す。
【0054】
ホイールシリンダ圧80は、目標液圧81に近づくように制御されるが、ある程度まで目標液圧81に近づくとそれ以上に近づかない。これは、液圧調整弁および連通弁(以下、液圧調整弁および連通弁を単に「制御弁」という場合がある)のオリフィスによって生じた圧損により、その圧損分が液圧としてホイールシリンダ内に残るためである。
【0055】
したがって、制御弁のオリフィスにより生じた圧損量は、ホイールシリンダ圧80と目標液圧81との差82である。なお、圧損量を算出する際のホイールシリンダ圧80は、目標液圧81が設定されてから数秒経過し、一定の状態であることが好ましい。
【0056】
制御弁は、弁子が弁座に着座または離間することによりブレーキフルードの流通を遮断または連通するものであり、制御弁のオリフィスは、この弁座および弁座に設けられた孔である。また、前輪側にはそれぞれ2つの制御弁が設けられており、前輪の制御弁のオリフィスとは、液圧調整弁のオリフィスと連通弁のオリフィスとの合算したオリフィスをいう。また、圧損は配管の内壁によっても生じるが、その圧損量は制御弁のオリフィスでの圧損量と比べて非常に小さい。
【0057】
図3は、実施形態に係るポンプ吐出流量と圧損量とブレーキフルードの温度との関係を示す図である。本図の縦軸は圧損量を示し、横軸はポンプ吐出流量を示す。なお、ポンプ吐出流量は、モータ回転数に応じて定まる値である。
【0058】
本図に示す特性83〜85は、それぞれブレーキフルードの温度が一定である場合のポンプ流量と圧損量との関係を示す。ブレーキフルードの温度は、特性83、特性84、特性85の順に高くなっている。
【0059】
本図に示すように、制御弁による圧損量は、ポンプ吐出流量の上昇とともに大きくなる。また、制御弁による圧損量が大きければ、ブレーキフルードの粘度が高いためブレーキフルードの温度が低くなっている。ポンプ吐出流量が大きくなれば、ブレーキフルードの温度に応じた制御弁による圧損量の差が大きくなり、精度良くブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0060】
本図では2次元で示したが、ブレーキECU200は、ポンプ吐出流量と圧損量とブレーキフルードの温度との関係を示す3次元マップを保持してよい。このマップを用いて、ブレーキECU200は、ポンプ吐出流量および圧損量にもとづいてブレーキフルードの温度を算出する。
【0061】
具体的には、ブレーキECU200は、各輪それぞれについて制御弁による圧損量およびポンプ吐出流量を算出する。制御弁による圧損量は、液圧センサ13〜16により検出されたホイールシリンダ圧から目標液圧を減算した差として算出される。液圧センサ13〜16によりホイールシリンダ圧を検出するとき、制御弁は全開で開弁した状態であることが好ましい。ポンプ吐出流量は、モータ回転数に応じて算出される。
【0062】
ブレーキECU200は、所定値以上のモータ回転数でモータを駆動して取得したポンプの吐出流量および液圧センサにより検出したホイールシリンダ圧にもとづいてブレーキフルードの温度を算出する。これは、図3に示すようにポンプ吐出流量が大きければポンプ吐出流量が小さい場合と比べて圧損量の差が大きいため、精度良くブレーキフルードの温度を算出できるからである。これにより、圧損量を算出するために必要なポンプ吐出流量を確保することができる。さらに、ブレーキECU200は、モータ回転数が所定値に達するまで、モータ回転数を徐々に漸増するよう制御する。これにより、最初から所定値以上のモータ回転数でモータを駆動する場合と比べて、圧損により不要な制動力が急に発生することを抑えることができ、運転者のブレーキフィーリングを良好にする。
【0063】
また、ブレーキECU200は、所定量以上の圧損量を検出した場合に、モータ回転数を制限してよい。所定量は、温度の算出に用いることに適した量であり、実験等により設定される。これにより、不要にモータを駆動することを抑えることができる。
【0064】
ブレーキECU200は、算出した制御弁による圧損量およびポンプ吐出流量から、マップを参照してブレーキフルードの温度を推定する。この推定したブレーキフルードの温度を、場合により推定温度という。推定温度は、各輪の圧損量を用いて4つ算出される。
【0065】
ここで、各輪について算出した推定温度は、推定過程において液圧センサ13〜16の出力に電気ノイズが重畳されるなど、外乱の影響を受けることがある。そのため、推定した温度が実際の温度とは乖離することもありうる。
【0066】
そこで、実施形態に係るブレーキECU200は、複数の制御弁に対して算出された4つの圧損量のうち相対的に大きいいずれかの圧損量にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出する。具体的に、ブレーキECU200は、算出された4つの圧損量のうち相対的に大きい2つの圧損量を選択し、選択したブレーキフルードの温度の平均値をブレーキフルードの温度に決定する。これにより、精度良くブレーキフルードの温度を算出できる。
【0067】
また、ブレーキECU200は、複数の制御弁による圧損量にもとづいて推定した複数のブレーキフルードの温度のうち最大の温度と最小の温度を除いた2つの温度を用いて、その2つの温度の平均値をブレーキフルードの温度に決定してもよい。これにより外乱の影響を大きく受けた可能性のある推定温度を除くことができ、精度良くブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0068】
また、ブレーキECU200は、算出された圧損量を評価する評価関数を用いて、評価が高いかどうかによって、いずれの推定温度を用いるか選択してよい。具体的に、ブレーキECU200は、ポンプの吐出流量および制御弁のオリフィス径にもとづく評価関数によって推定温度のいずれかを選択し、選択した推定温度をもとにブレーキフルードの温度を決定してもよい。ここで、前輪の制御弁のオリフィス径は、液圧調整弁のオリフィス径および連通弁のオリフィス径を合算したものである。後輪の制御弁のオリフィス径は、前輪の制御弁のオリフィス径より評価関数の評価は高くなる。またポンプの吐出流量が大きければ、評価関数の評価は高くなる。評価関数を用いることで、精度良くブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0069】
さらに、ブレーキECU200は、評価関数によって選択した2つのブレーキフルードの温度の差が所定温度以上であれば、選択されなかったブレーキフルードの温度にもとづいて、選択したブレーキフルードの温度のどちらかをブレーキフルードの温度に決定する。具体的には、ブレーキECU200は、評価関数により2つの推定温度を選択し、その選択した2つの推定温度の差が所定温度以上であれば、選択した2つの推定温度のうち、選択されなかった推定温度の平均値に近い方をブレーキフルードの温度に決定する。たとえば、選択した推定温度にも外乱の影響を大きく受けている可能性があり、選択した2つの推定温度の差が所定温度以上であれば、どちらかが正確でないブレーキフルードの温度を示していることがある。そこで、評価関数では選択されなかったブレーキフルードの温度を用いて、どちらのブレーキフルードの温度が正確かどうか決定することで、精度良くブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0070】
図4は、実施形態に係る液圧調整弁の通電制御の制御ゲイン、目標液圧およびブレーキフルードの温度の関係を説明する図である。本図の縦軸は制御ゲインを示し、横軸は目標液圧を示す。特性87および特性88は、それぞれ一定の温度での制御ゲインおよび目標液圧の関係を示す。
【0071】
本図では2次元で示したが、ブレーキECU200は、制御ゲイン、目標液圧およびブレーキフルードの温度の関係を示す3次元マップを保持してよい。このマップを用いて、ブレーキECU200は、制御ゲインを決定する。
【0072】
本図に示すように、目標液圧が大きくなるにつれて液圧調整弁に加わる差圧が大きくなるため、制御ゲインは大きくなる。特性88は特性87より低温であり、特性88は、相対的に高温の特性87より制御ゲインが小さくなっている。これにより、低下した伝達応答性に対して液圧調整弁の制御ゲインを小さくすることで、制動時に弁をあまり開かないようにすることができ、液圧をホイールシリンダ6に残して安全なブレーキ制御ができる。なお、別の態様では、伝達応答性の低下に対して液圧調整弁の制御ゲインを大きくすることで、制動時に弁をすばやく閉じることができ、安全なブレーキ制御ができる。
【0073】
図5は、実施形態に係るブレーキフルードの温度推定処理を示すフローチャートである。まず、ブレーキECU200は、車両に運転者が乗車したかどうか判定する(S10)。たとえばブレーキECU200は、イグニッションスイッチがオンであれば、車両に運転者が乗車したと判定する。また、ブレーキECU200は、運転席のシートセンサの出力、または運転席のドアスイッチの出力にもとづいて運転者が乗車したかどうか判定してもよい。これにより、まず最初に車両の乗車直後にブレーキフルードの温度を算出することで、車両が発進する前に制御弁の制御ゲインを決定することができる。
【0074】
運転者が乗車してなければ(S10のN)、ブレーキECU200は乗車判定を繰り返す。運転者が乗車すれば(S10のY)、ブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度を算出する(S12)。
【0075】
ここで、ブレーキECU200は、所定の圧損量が取得できるまでモータ回転数を漸増させるが、駆動しているモータが外気温に応じた上限回転数に達した場合には、モータの駆動を停止してもよい。これにより、モータ回転数が大きくなりすぎることを抑えることができる。外気温には、ブレーキフルードの温度とある程度関連性があり、外気温が低ければブレーキフルードの粘度が高い可能性がある。ブレーキフルードの粘度が高ければ、モータ回転数をあまり大きくしなくても、温度算出に必要な大きさの圧損量を取得することができる。また、温度算出実行中の圧損により発生する制動力を低減できる。上限回転数は、外気温が高くなるにつれて大きくなるように設定される。なお、外気温検出センサに異常が生じた場合には、それ以降の温度算出を中止してもよい。
【0076】
また、ブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度を算出するときのモータを駆動する時間が所定時間を経過すると、モータの駆動を停止してもよい。これにより、モータ回転数を漸増させる場合に、温度算出に時間がかかり過ぎることを防止することができる。
【0077】
ブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度を算出をすることができたかどうか判定する(S14)。ブレーキフルードの温度を算出できていなければ(S14のN)、ブレーキECU200は、再度ブレーキフルードの温度を算出をする(S12)。たとえば、モータ回転数が上限回転数に達した場合や、モータの駆動時間が所定時間を超えた場合には、温度算出ができないことがあり、温度算出を再度実行する。
【0078】
ブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定するモータ回転数を、前回実行したブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定されたモータ回転数より大きく設定してよい。これにより、たとえばモータの駆動時間が所定時間を超えたことによって所望の圧損量が得られずに温度算出ができなかった場合に、再試行時に温度算出が所望の圧損量が得られる可能性を高めることができる。ブレーキECU200は、前回の温度算出開始時のモータ回転数を記憶し、その記憶したモータ回転数に所定の回転数を加算する。なお、別の態様として、ブレーキECU200は、前回の温度算出終了時のモータ回転数を記憶し、その記憶したモータ回転数に所定の回転数を減算してもよい。いずれにしても、今回の温度算出では、前回のモータ回転数より大きいモータ回転数で実行される。
【0079】
ブレーキフルードの温度を算出できていれば(S14のY)、ブレーキECU200は、算出したブレーキフルードの温度にもとづいて制御弁の制御ゲインを決定する(S16)。そして、ブレーキECU200は、算出したブレーキフルードの温度が所定温度より高いかどうか判定する(S18)。算出したブレーキフルードの温度が所定温度より高ければ(S18のY)、ブレーキECU200は、本処理を終了する。これは、たとえば所定温度を10℃に設定し、10℃以上であれば、ブレーキフルードの粘度がそれほど高くないので、本処理を終えてもよいからである。
【0080】
算出したブレーキフルードの温度が所定温度より高くなければ(S18のN)、ブレーキECU200は、所定の再開条件を満たすかどうか判定する(S20)。所定の再開条件は、前回の温度算出から1時間経過したかどうか、および、車速が所定速度以下であるかどうかを有してよい。たとえば所定速度を時速20kmに設定することで、ブレーキフィーリングに影響の少ない低速時に温度算出を実行することができる。なお、回生制動を実行する車両においては、エンジンが駆動しているかどうかを所定の再開条件に加えてよい。これにより、エンジンが停止している場合に温度算出を実行する場合と比べて、温度算出によるモータの作動音を目立たなくすることができる。また、車両が駆動したことでエンジンなどから熱がブレーキフルードに伝達されて、ブレーキフルードの温度が変化した場合に対応することができる。
【0081】
さらに、所定の再開条件は、ブレーキペダル1に対する操作がオンからオフに切り替わったかどうかを有してよい。つまり、ブレーキECU200は、ブレーキペダル1に対する操作がオンからオフに切り替わったときに、ブレーキフルードの温度を算出する。これにより、たとえば運転者が制動制御を実行後、モータの駆動を停止することなく、温度算出を実行することも可能となる。これにより、新たにモータを駆動させる必要がなくなり、温度算出によるモータの作動音および圧損により生じる制動力を目立たなくすることができる。とくにブレーキECU200がモータ回転数を漸増する温度算出を実行する場合、モータの作動音が変化するため、その作動音が運転者に対して目立つことがある。その場合であっても、通常の制動制御時につづいて温度算出をすれば、モータの作動音が目立つことを少なくすることができる。
【0082】
ブレーキECU200は、所定の再開条件が満たされなければ(S20のN)、所定の再開条件を満たすかどうか判定を繰り返す。所定の再開条件が満たされていれば(S20のY)、ブレーキECU200は、ブレーキフルードの温度を再度算出する(S12)。以下、上述のステップを繰り返す。
【0083】
以上のように、実施形態に係るブレーキ制御装置100は、制御弁による圧損量に応じてブレーキフルードの温度を算出することができる。
【0084】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0085】
A,B,C,D,E,F,G,H,H1,H2,I,I3,I4,J1,J2,J3,J4,K,L,M,N 管路、 1 ブレーキペダル、 2 ストロークセンサ、 3 マスタシリンダ、 3a プライマリ室、 3b セカンダリ室、 3c プライマリピストン、 3d セカンダリピストン、 3e スプリング、 3f リザーバタンク、 4 ストロークシミュレータ、 5 ブレーキ液圧制御用アクチュエータ、 6FL,6FR,6RL,6RR ホイールシリンダ、 7,8,9,10 ポンプ、 11 第1モータ、 12 第2モータ、 13,14,15,16,17,18 液圧センサ、 20,21 逆止弁、 30 ストローク制御弁、 32,33,34,35 液圧調整弁、 36,37 遮断弁、 38,39 連通弁、 100 ブレーキ制御装置、 200 ブレーキECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動によりホイールシリンダにブレーキフルードを供給し、ホイールシリンダ圧を加圧するポンプと、
ホイールシリンダ内のブレーキフルードの排出を制御する制御弁と、
ホイールシリンダ圧を検出する液圧センサと、
前記ポンプおよび前記制御弁を制御し、前記ポンプの吐出流量および前記液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出する制御手段と、を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、ブレーキフルードの温度に応じて前記制御弁を通電制御するための制御ゲインを決定することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、ホイールシリンダ圧の目標液圧およびホイールシリンダ圧にもとづいて前記制御弁による圧損量を算出し、前記圧損量にもとづいてブレーキフルードの温度を推定することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ポンプの吐出流量および前記制御弁のオリフィス径にもとづく評価関数によって推定した複数のブレーキフルードの温度のいずれかを選択し、選択したブレーキフルードの温度をもとにブレーキフルードの温度を決定することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記評価関数によって選択した2つのブレーキフルードの温度の差が所定温度以上であれば、選択されなかったブレーキフルードの温度にもとづいて、選択した2つのブレーキフルードの温度のどちらかをブレーキフルードの温度に決定することを特徴とする請求項4に記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、推定した複数のブレーキフルードの温度のうち最大の温度と最小の温度を除いた温度を用いてブレーキフルードの温度を決定することを特徴とする請求項3に記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、所定値以上のモータ回転数で前記モータを駆動して取得した前記ポンプの吐出流量および前記液圧センサにより検出されたホイールシリンダ圧にもとづいて、ブレーキフルードの温度を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、モータ回転数が所定値に達するまで、モータ回転数を漸増することを特徴とする請求項7に記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、ブレーキフルードの温度を算出するときに、駆動している前記モータが外気温に応じた上限回転数に達した場合、前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、ブレーキフルードの温度を算出するときの前記モータを駆動する時間が所定時間を経過すると、前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項11】
前記モータは、ブレーキペダルに対する操作に応じて駆動し、
前記制御手段は、ブレーキペダルに対する操作がオンからオフに切り替わったときに、ブレーキフルードの温度の算出を開始することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のブレーキ制御装置。
【請求項12】
前記制御手段は、ブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定するモータ回転数を、前回実行したブレーキフルードの温度の算出の開始時に設定されたモータ回転数より大きく設定することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−162121(P2011−162121A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29098(P2010−29098)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】