説明

ブレードの作動機構

【課題】整地作業等に使用される作業機械のフロント部に装着されるブレードの構造物を重量増加させることなく、作業中の過負荷を逃がすことによって、ブレードの寿命を延長させることができるブレードの作動機構を提供する。
【解決手段】油圧回路におけるブレード用シリンダの作動油供給回路に接続されたメインリリーフバルブ1及びオーバーロードリリーフバルブ2の設定圧を、複数段形成させ、ブレードの作動状態に応じて、多段へ切替自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業機械におけるブレードの作動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械のフロント部に装着されるブレードは、排土板として整地作業に用いられたり、フロント作業時のアウトリガとして用いられる。さらに頻度としては少ないが、ブレード先端の接地動作あるいは、フロント部先端との同時接地動作による機体持ち上げ時にも利用される。
【0003】
このようなブレードの油圧回路の一例を図3に示す。図示のように、ポンプ5、コントロールバルブ6、リモコンバルブ7、ブレード用シリンダ8が配置され、さらに油圧回路の許容圧力や構造物の強度に応じたメインリリーフバルブ9が配置されている。メインリリーフバルブ9は、ブレードの多用途に応じて、(1)排土作業時に地面からの反力に負けない、(2)アウトリガとして使用しても保持できる、(3)機体を持ち上げる推力を有すること等を前提に圧力が設定され、特に最大設定圧は、(3)の機体持ち上げ作業時の推力を基準に決定する場合が多い。
【0004】
一方、ブレードはその作業中に走行力や掘削力の反力を受け、シリンダ8に過負荷となる保持力が生じる。そこで、その過負荷となる圧力を逃がすために回路内にはオーバーロードリリーフバルブ10が配置されている。このバルブ10の最大設定圧は前記メインリリーフバルブ9に対応するため、それと同様に上記(3)の機体持ち上げ作業時に要する推力を基準にすることになる。
【特許文献1】特開2000−96604号(0012〜0015段)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブレードが何かに衝突した際、前記オーバーロードリリーフバルブ10の設定圧が適正であれば、その衝撃の過負荷は適度に逃がされる。しかし、設定圧の基準となる上記(3)の機体持ち上げ作業時の推力は高く、設定圧が高くならざるを得なかった。
【0006】
作業中の過負荷を適切に逃すことができないと、構造物の損傷が起き、結果として構造物寿命が短縮してしまう。そこで、ブレードに過負荷がかかったときに警告を発生させるような技術も提案されているが(特開2000−96604)、その技術では発生した保持圧を逃がすことは想定していないので、瞬間的な衝撃はそのまま受けざるを得ない。
【0007】
したがって、オーバーロードリリーフバルブ10の設定圧が高くならざるを得ない従来は、構造物の強度化(例えば断面積を増す等)で対応せざるを得ず、これが、機体自体の重量増加を引き起こす要因となっていた。
【0008】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、構造物を重量増加させなくても、その寿命を延長させることができるブレードの作動機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そもそも、オーバーロードリリーフバルブの設定圧の基準は、上記(3)の機体持ち上げ作業による場合が多いが、この作業は他の(1)及び(2)の作業とくらべて頻度も少ない。つまり、従来技術の上記問題は、希な作業を基準に設定圧を設定し、それが原因で重量増加の構造にせざるを得ないという、設計効率の悪さが問題の根元にあった。本発明者らは、この問題点を根本的に見直した結果、本発明を創案するに至った。
【0010】
すなわち、この発明に係るブレードの作動機構は、ブレードシリンダの作動圧及びオーバーロード設定圧を、複数段形成させ、ブレードの状態に応じて、各段へ切替自在とさせたことを特徴とする。
【0011】
ブレードシリンダの作動圧及びオーバーロード設定圧は、メインリリーフバルブ及びオーバーロードリリーフバルブの設定圧によって定まる。よって、それらリリーフバルブの設定圧を複数段設定し、切替自在とする。各段へ切り替える機構は、手動であっても、自動であってもいずれでも良い。自動の場合、例えばリモコンバルブの作動圧やシリンダ回転角(またはストローク)を検出させ、検出値に基づくブレードの状態により、適正な段に切り替えるようにすれば良い。設定される段は高低2段でも、3段以上でも良い。
【0012】
本発明では、例えば上記(3)の機体を持ち上げ動作のように、高い作動圧が必要な場合は設定圧力が高い高圧段に切り替え、それ以外の上記(1)及び(2)の動作の場合は設定圧が低い低圧段に切り替える。その場合、上記(3)の動作以外は設定圧が低い低圧段となるので、オーバーロードリリーフバルブの設定圧も通常は低い設定段に設定されることになり、過負荷が生じても、オーバーロードリリーフバルブから圧力を逃がすことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、機体の持ち上げ時のように高い作動圧が必要なときだけ設定圧の高い高圧段に切り替え、通常は設定圧を低圧段にしておくことで、通常の作業中に過負荷入力があっても、シリンダ保持圧を逃がすことができる。これにより、構造物への負担が格段に減少するので、重量構造物とする必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願に係る発明の具体的実施形態例を図面に基づき説明する。以下の形態例は、油圧ショベルのブレードに、本発明に係る機構が適用された一例である。
【0015】
図1は第1形態例の油圧回路を示す。図中、1はメインリリーフバルブ、2はオーバーロードリリーフバルブ、5はポンプ、6はコントロールバルブ、7はリモコンバルブ、8はブレード用シリンダであり、以下に説明する構成以外は、基本的には従来の油圧回路である図を前提としている。
【0016】
前記各リリーフバルブ1,2はいずれも可変式のものを用いる。本形態例において、メインリリーフバルブ1、オーバーロードリリーフバルブ2の可変形式はいずれも高段と低段の2段型に形成し、例えばそれぞれ高圧段27.5MPa,30.4MPa、低圧段20.6MPa,23.5MPaに設定する(前者がメインリリーフバルブ、後者がオーバーロードリリーフバルブの設定圧)。
【0017】
各リリーフバルブ1,2とリモコンバルブ7との間には、切替弁3と電磁弁4とを配置させる。切替弁3は、ブレード操作手段によるリモコンバルブ7からのパイロット圧に応じて切替圧を発生させ、その切替圧を前記リリーフバルブ1,2に送る。通常のパイロット圧の場合、切替圧は発生させず、所定値より高いパイロット圧の場合、切替圧を発生させるように設定する。電磁弁4は、ブレードに設けた位置センサからのポテンショナ信号により切替圧を発生させ、前記リリーフバルブ1,2に送る。位置センサはブレードの操作角度を検知し、通常の操作角度より大きい場合、前記電磁弁にポテンショナ信号を送る。なお、位置センサとして、シリンダ8の回転角やストローク等を検知するものを用いても良い。
【0018】
各リリーフバルブ1,2はコントローラ(図示なし)の制御によって設定圧の段が切り換え自在となっている。通常状態では低圧段に設定されているが、前記切替弁と電磁弁との両方の切替圧が送られた場合、高圧段に設定が切り換わるように制御される。すなわち、各リリーフバルブ1,2は、ブレードパイロット圧が高く、かつ実際にブレードが大きく傾斜したときに初めて高圧段に切り換わる。単にパイロット圧が高い場合やブレードが傾斜しているだけの場合は、低圧段の設定が維持される。
【0019】
以上のように、第1形態例の各リリーフバルブ1,2は、通常は低圧段に設定されており、ブレードに不意に過負荷が生じたときには、低圧段に維持されたオーバーロードリリーフバルブによって過負荷分のシリンダ保持圧を直ちに逃がすことができる。一方、機体を持ち上げる等ブレードに高い作動圧が必要なときは、操作パイロット圧と実際のブレードの傾斜角によって発生する切替圧から、コントローラの制御により、リリーフバルブ1,2の設定圧を自動的に高圧段に切り替えるので、メインリリーフバルブ1によって高い作動圧が供給され、十分な作業が行えることになる。
【0020】
図2は第2形態例の油圧回路を示す。基本的には、第1形態例と同じであるが、前記切替弁3を用いず、段の切替を手動で行う点で異なる。すなわち、この例では、ブレードに高圧作業を強いるときは、作業者が自ら手動で電磁弁4を切り替え、この切替により切替圧を発生させ、各リリーフバルブ1,2の設定圧を高圧段に切り替える。この形態例においても、通常は各リリーフバルブ1,2の設定圧を低圧段に維持しておけば、ブレードに不意に過負荷が生じたときには、低圧段に設定されたオーバーロードリリーフバルブ2により過負荷分のシリンダ保持圧を直ちに逃がすことができる。
【0021】
以上の形態例によれば、いずれでも、機体の持ち上げ時のように高い作動圧が必要なときだけリリーフバルブ1,2を高圧段に切り替え、通常はオーバーロードリリーフバルブ2の設定圧を低圧段にしておくことで、通常の作業中に過負荷入力があっても、シリンダ保持圧を逃がすことができる。これにより、本形態例の作業機械は重量構造物ではないが、構造物への負担が格段に減少するものとなっている。
【0022】
なお、本発明が以上の形態例に限定されるものでないことは当然であり、例えば、切替可能な段を3段以上にしたり(例えば3段であれば高圧段、中圧段、低圧段等)、あるいは第1形態例において、ブレード操作の検出にリミットスイッチ等を用い、その電気信号によって切り替える機構や、リンケージにより直接切替弁を切り替える等の手段を用いたり、また第2形態例において、ブレード角度を検知する位置センサを用いて、コントローラにより自動的に高圧段に切り替えるように設定する等しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、ブレードのある作業機械に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1形態例を示す油圧回路図である。
【図2】本発明の第2形態例を示す油圧回路図である。
【図3】従来のブレード作動用の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0025】
1 メインリリーフバルブ
2 オーバーロードリリーフバルブ
3 切替弁
4 電磁弁
7 リモコンバルブ
8 ブレード用シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードシリンダの作動圧及びオーバーロード設定圧を、複数段形成させ、ブレードの状態に応じて、各段へ切替自在とさせたことを特徴とするブレードの作動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−154478(P2007−154478A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349201(P2005−349201)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】