説明

ブロックコポリマーを含有する組成物および内燃機関を潤滑する方法

本発明は、潤滑粘度の油とブロックコポリマーとを含有する潤滑組成物を提供する。ブロックコポリマーは、(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、(b)ヘテロ原子含有基をさらに有することで極性基を提供する、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックとを含有し得る。本発明はさらに、内燃機関を潤滑組成物で潤滑することによって内燃機関を潤滑する方法に関する。本発明はさらに、乳化剤および/または流動点降下剤としてのブロックコポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑粘度の油とブロックコポリマーとを含有する潤滑組成物を提供する。本発明はさらに、内燃機関を潤滑組成物で潤滑することによって内燃機関を潤滑する方法に関する。本発明はさらに、乳化剤および/または流動点降下剤としてのブロックコポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は多くの場合は汚染量の水に曝されている。汚染量の水は、稼動中に機器のシールを通る水の進入によって、または吹抜けによりクランク室内に入る燃焼副産物から生じると考えられている。水は潤滑剤中において第2の層を形成し得る。典型的には、第2の層の形成を低下させるために、乳化剤および/または分散剤が用いられる。水の濃度が高くなりすぎると、乳濁液が生じる。乳濁液が不安定な場合は、汚染性の水は腐食などのさらなる難事を引き起こし得る。腐食は、銅もしくは鉛の軸受け、または鉄からであり得る。
【0003】
乳化剤の必要性に加えて、潤滑剤基油はワックス様構成要素も含有し得る。ワックスは凝集して潤滑剤中に結晶の蓄積を引き起こし得る。これが起こった場合に生じる問題には、低温油ポンパビリティーの低下、低温特性の劣化または燃料経済の低下が含まれる。したがって、一実施形態では、ワックス凝集を低下させる流動点降下剤を用いることが望ましい場合もある。
【0004】
フレキシブル燃料車(FFV)では、内燃機関はガソリンまたは85%までのエタノールの混合物(E85)で動くように設計されている。いくつかのエンジンおよび燃料システムの改変を除いて、これらはガソリンのみのモデルと同一である。伝統的に、分散剤はガソリン自動車のエンジン油中の汚染物質を安定化させるように設計されている。E85を燃料とすることにより、エンジン油が乳状の乳濁液へと転換される潜在性が導入される。不安定な乳状の乳濁液の形成に打ち勝つためには、乳化剤を用いることが望ましい。
【0005】
特許文献1は、直鎖状および星型のRAFTポリマーを様々な潤滑剤における粘度指数向上剤として開示している。RAFTポリマーはジブロックコポリマーを含めた様々な構造を有し得る。すべてのポリマーはC12〜15アルキル(メタ)アクリレートに由来する。乳化および/または流動点降下の特性を有する直鎖状または星型のポリマーの開示または教示はない。
【0006】
特許文献2は、基油と摩擦調整特性を有する少なくとも1つの添加剤とを含有する潤滑組成物を開示している。添加剤は、疎水性セグメントPおよび極性セグメントDが含まれる直鎖状ジブロックコポリマーであり、前記疎水性セグメントは、0〜40%のC1〜5アルキル(メタ)アクリレート、50〜100%のC6〜30アルキル(メタ)アクリレート、および0〜50%の極性基含有エステル、チオエステルまたはアミド官能基を含むモノマー組成物の重合によって得られる。すべての例はC12〜15アルキル(メタ)アクリレートを開示している。乳化および/または流動点降下の特性を有する直鎖状または星型のポリマーの開示または教示はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/047393号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0189490号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ブロックコポリマーを含有する潤滑組成物および本明細書中に開示する方法が、(i)乳化特性および(ii)流動点降下特性のうちの少なくとも1つを許容され得るレベルで提供することができることを見い出した。一実施形態では、ブロックコポリマーを含有する潤滑組成物は乳化特性および流動点降下特性をどちらも提供する。
【0009】
本明細書中で使用する場合、最新技術における用語「極性」とは、この言葉の通常の意味で使用し、親水性を意味することでも知られている。
【0010】
一実施形態では、本発明は潤滑粘度の油とジブロックコポリマーとを含む潤滑組成物を提供し、ジブロックコポリマーは、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む。
【0011】
また、非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックは、ヘテロ原子基をさらに有することで極性基を提供する、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックとしても記載し得る。
【0012】
一実施形態では、本発明は潤滑粘度の油とジブロックコポリマーとを含む潤滑組成物を提供し、ジブロックコポリマーは、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む。
【0013】
一実施形態では、本発明は、
(1)
(i)フリーラジカル開始剤と、
(ii)連鎖移動剤(典型的にはRAFT重合プロセスに有用なチオカルボニルチオ基を含有するもの)と、
(iii)C1〜30アルキル(メタ)アクリル系モノマー単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、1つまたは複数のC1〜30アルキル(メタ)アクリル系モノマー単位とを接触させて、ポリマーを形成するステップであって、
そのステップ(1)のプロセスが、典型的には制御ラジカルまたはリビング特徴を有する他のリビング重合プロセス(たとえば制御ラジカル重合プロセス)であり、そのステップ(1)からのポリマー鎖の少なくとも約50重量%が、多価カップリング剤と反応することができる反応性末端基を含有するステップと、
(2)任意選択で、ステップ(1)のポリマーを重合阻害剤と接触させるステップと、
(3)ステップ(1)またはステップ(2)のポリマーを、1つまたは複数の(メタ)アクリル単位、典型的には少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%のヘテロ原子含有基をさらに含有する前記単位と接触させるステップと、
(4)任意選択で、ステップ(3)のポリマーを潤滑粘度の油と混合して潤滑組成物を形成するステップと
を含むプロセスによって得られる/得ることができる、ジブロックコポリマー生成物(および任意選択で潤滑組成物)を提供する。
【0014】
異なる実施形態では、C16〜20アルキル(メタ)アクリル単位は、C16〜18アルキル(メタ)アクリル単位またはC18〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり得る。また、C16〜20アルキル(メタ)アクリル単位は、10重量%まで(または典型的には5重量%まで)のC14アルキル(メタ)アクリル単位を含有し得る。一実施形態では、C16〜20アルキル(メタ)アクリル単位は、16〜20または16〜18個の炭素原子を含有するアルキル基を有する(メタ)アクリル化合物の混合物の形態であり得る。
【0015】
上述のプロセスでは、プロセスの第1のステップは、鉱物油、合成油、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、または他の既知の重合溶媒の存在下で行い得る。
【0016】
一実施形態では、本発明は、
(1)
(i)フリーラジカル開始剤と、
(ii)連鎖移動剤(典型的にはRAFT重合プロセスに有用なチオカルボニルチオ基を含有するもの)と、
(iii)1つまたは複数の(メタ)アクリル単位、典型的には少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%のヘテロ原子含有基をさらに有する前記単位とを接触させるステップであって、
そのステップ(1)のプロセスが、典型的には制御ラジカルまたはリビング特徴を有する他のリビング重合プロセスであり、そのステップ(1)からのポリマー鎖の少なくとも約50重量%が、多価カップリング剤と反応することができる反応性末端基を含有するステップと、
(2)任意選択で、ステップ(1)のポリマーを重合阻害剤と接触させるステップと、
(3)ステップ(1)またはステップ(2)のポリマーを、C1〜30アルキル(メタ)アクリル系モノマー単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、1つまたは複数のC1〜30アルキル(メタ)アクリル系モノマー単位と接触させて、ポリマーを形成するステップと、
(4)任意選択で、ステップ(3)のポリマーを潤滑粘度の油と混合して潤滑組成物を形成するステップと
を含むプロセスによって得られる/得ることができる、ジブロックコポリマー生成物(および任意選択で潤滑組成物)を提供する。
【0017】
上述のプロセスでは、プロセスの第1のステップは、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの溶媒の存在下で行い得る。
【0018】
プロセスの温度、圧力および試薬は、制御ラジカル重合技法の当業者に知られている。そのような材料を説明している参考文献には、WO2006/047393およびジブロックコポリマーの説明において本明細書以下に開示する様々な参考文献が含まれる。
【0019】
一実施形態では、本発明は、上述のプロセスによって得られる(または得ることができる)ブロックコポリマーを提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油とブロックコポリマーとを含む潤滑組成物を内燃機関に供給することを含む、フレキシブル燃料車(フレックス燃料ビヒクルまたはFFV)の内燃機関を潤滑する方法を提供し、ブロックコポリマーは、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロック(ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個である)と、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む。
【0021】
当業者には、フレキシブル燃料車は、典型的には5重量%〜85重量%、または10重量%〜85重量%まで、または15重量%〜85重量%までのアルコールを含有するガソリンを燃料とし得ることを理解されよう。アルコールはたとえばエタノールであり得る。
【0022】
疎水性の第1のブロックは、0重量%〜5重量%の親水性モノマー(すなわち、窒素または酸素含有基に由来するヘテロ原子基を含有するモノマーなどの、極性基を有するモノマーに由来する単位を含有し得る。この種類のモノマーは、以下にさらに詳述する。一実施形態では、疎水性の第1のブロックは0重量%の親水性モノマーを含有し得る。
【0023】
一実施形態では、本発明は、潤滑粘度の油とブロックコポリマーとを含む潤滑組成物をエンジンに供給することを含む、内燃機関を潤滑する方法を提供し、ブロックコポリマーは、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む。
【0024】
一実施形態では、本発明は、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロック(ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個である)と、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示して、ブロックコポリマーが乳化剤および/または流動点降下剤となり得るような極性基をもたらす、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、ブロックコポリマーの使用を提供する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示して、ブロックコポリマーが乳化剤および/または流動点降下剤となり得るような、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、ブロックコポリマーの使用を提供する。
【0026】
典型的には、ブロックコポリマーは内燃機関における乳化剤および/または流動点降下剤であり得る。
【0027】
流動点降下特性は、典型的には、ブロックコポリマーがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位を含有する場合に生じる。
【0028】
乳化特性は、本発明の任意のブロックコポリマー組成物で生じ得る。
【0029】
乳化および流動点降下特性は、典型的には、ジブロックのブロックコポリマーがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位およびC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位を含有する場合に生じる。
【0030】
内燃機関は、ガソリン、ディーゼル、生物燃料、エタノール、またはそれらの混合物で稼動し得る。一実施形態では、内燃機関はガソリンおよびエタノールの混合物で稼動し得る。内燃機関はフレキシブル燃料車エンジンと呼び得る。
【0031】
典型的には、本明細書中に開示したブロックコポリマーは直鎖状ジブロックコポリマーであり得る。
【0032】
一実施形態では、潤滑組成物は、(i)0.8重量%以下の硫黄含有量、(ii)0.2重量%以下のリン含有量、または(iii)2重量%以下の硫酸塩灰分含有量のうちの少なくとも1つを有するとしてさらに特徴づけ得る。
【0033】
一実施形態では、潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)0.1重量%以下のリン含有量、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量を有するとしてさらに特徴づけ得る。
【0034】
一実施形態では、潤滑組成物には、摩擦調整剤、粘度調整剤、抗酸化剤、過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、流動点降下剤、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つがさらに含まれる。
【0035】
一実施形態では、潤滑組成物には、粘度調整剤および過塩基性清浄剤がさらに含まれる。
【0036】
一実施形態では、潤滑組成物には、過塩基性清浄剤およびスクシンイミド分散剤がさらに含まれる。
【0037】
一実施形態では、本発明は、本明細書中に開示した潤滑組成物をエンジンに供給することを含む、エンジン油を潤滑する方法を提供する。
【0038】
ブロックコポリマーは、本明細書中に開示した潤滑組成物の0.01重量%〜0.5重量%、または0.05〜0.3重量%で使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、上記開示した潤滑組成物および機械的装置を潤滑する方法を提供する。典型的には、機械的装置は内燃機関であり得る。
ブロックコポリマー
本明細書中で使用する場合、用語「(メタ)アクリル単位」にはアクリルおよびメタクリル単位がどちらも含まれ、これらの単位は適切なモノマーに由来する。(メタ)アクリル単位には、典型的にはメタクリレート、アクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド、またはそれらの混合物が含まれる。
【0040】
本明細書中以降に記載するように、ブロックコポリマーの分子量は、ポリスチレン標準を用いたGPC分析などの既知の方法を用いて決定されている。ポリマーの分子量を決定する方法は周知である。方法は、たとえば、(i)P.J.Flory、「Principles of Polymer Chemistry」、Cornell University Press 91953)、第VII章、ページ266−315、または(ii)「Macromolecules,an Introduction to Polymer Science」、F.A.BoveyおよびF.H.Winslow編、Academic Press(1979)、ページ296−312に記載されている。
【0041】
ブロックコポリマーは、ジブロック、トリブロック、またはより高次のブロックコポリマーであり得る。
【0042】
ジブロックコポリマーは、Aが疎水性単位であり、Bが親水性単位である、ABの組成を有し得る。
【0043】
トリブロックコポリマーは、AおよびBが上記定義したとおりであり、A’およびB’はそれぞれAおよびBとは異なる疎水性および親水性の単位である、ABAもしくはBAB、ABA’、またはBAB’を有し得る。
【0044】
それぞれのブロックは、テーパードコポリマー、ランダムコポリマー、連続的なコポリマーであり得るか、または、2つ以上のモノマー単位のランダムもしくは連続的な分布を有し得る。
【0045】
ブロックコポリマーの重量平均分子量は、1000〜400,000、または1000〜150,000、または15,000〜100,000の範囲であり得る。
【0046】
第2のブロック対第1のブロックの重量比は、1:2〜1:100、または1:4〜1:30、または1:6〜1:18の範囲であり得る。
【0047】
第1のブロック対第2ブロックの長さは、10:1〜1:10、または6:1〜1:2の比を有し得る。
【0048】
1〜30アルキル(メタ)アクリル単位はアルキル(メタ)アクリレートに由来し得る。
【0049】
(メタ)アクリル酸アルキルには、たとえば、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−メチルペンチル(メタ)アクリレート、2−プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、2−ブチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−tert−ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5−メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5−メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2−メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5−イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5−エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3−イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートなどの飽和アルコールに由来する化合物、オレイル(メタ)アクリレートなどの不飽和アルコールに由来する(メタ)アクリレート、ならびに3−ビニル−2−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはボルニル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0050】
長鎖アルコール由来の基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、たとえば、(メタ)アクリル酸(直接エステル化による)またはメチルメタクリレート(エステル交換による)と長鎖脂肪アルコールとの反応によって得てよく、この反応では、(メタ)アクリレートなどのエステルと様々な鎖長のアルコール基との混合物が一般に得られる。これらの脂肪アルコールには、MonsantoのOxo Alcohol(登録商標)7911、Oxo Alcohol(登録商標)7900およびOxo Alcohol(登録商標)1100、ICIのAlphanol(登録商標)79、Condea(現在はSasol)のNafol(登録商標)1620、Alfol(登録商標)610およびAlfol(登録商標)810、Ethyl CorporationのEpal(登録商標)610およびEpal(登録商標)810、Shell AGのLinevol(登録商標)79、Linevol(登録商標)911およびDobanol(登録商標)25L、Condea Augusta、MilanのLial(登録商標)125、Henkel KGaA(現在はCognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)、ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標)7−11およびAcropol(登録商標)91が含まれる。
【0051】
一実施形態では、ブロックコポリマーはメタクリレートポリマーであり得る。
【0052】
疎水性の第1のブロックは、70重量%以上、または80重量%以上の、C12〜15アルキル(メタ)アクリル単位を含有するC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し得る。
【0053】
疎水性の第1のブロックは、30重量%まで、または20重量%までの、C16〜20アルキル(メタ)アクリル単位を含有するC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し得る。
【0054】
一実施形態では、疎水性の第1のブロックはC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも70重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であってよく、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の30重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個(または少なくとも10個の炭素原子)である。
【0055】
一実施形態では、疎水性の第1のブロックはC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも80重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であってよく、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の20重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個(または少なくとも10個の炭素原子)である。
【0056】
一実施形態では、疎水性の第1のブロックはC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%〜99重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の1〜50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個(または少なくとも10個の炭素原子)である。
【0057】
一実施形態では、疎水性の第1のブロックはC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも75重量%〜95重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の5〜25重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個(または少なくとも10個の炭素原子)である。
【0058】
一実施形態では、疎水性の第1のブロックはC1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を含有し、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも80重量%〜95重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の1〜20重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個(または少なくとも10個の炭素原子)である。
【0059】
(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックはヘテロ原子含有基を有することで極性基を提供し、ヘテロ原子には、硫黄、窒素、非カルボニル酸素、リン、またはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、ヘテロ原子は窒素であり得る。用語「非カルボニル酸素」はカルボニル酸素の存在を排除することを意味するのではなく、そのようなものが存在する場合は、カルボニル酸素でないヘテロ原子(すなわち、アルデヒドもしくはケトンの酸素原子でも、カルボン酸もしくはエステルの酸素原子でもない)も存在することを示す。
【0060】
一実施形態では、本発明のコポリマーには、窒素または酸素含有基に由来するヘテロ原子(heteratom)基がさらに含まれる。この基は、共重合中に取り込まれることができる窒素または酸素含有化合物に由来し得る。
【0061】
窒素または酸素含有基は、以下の式によって表され得るアミノアルキル(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリレートモノマーに由来し得る:
【0062】
【化1】

【0063】
[式中、
Qは水素またはメチルであり、一実施形態ではQはメチルであり、
Zは、N−H基、NR基またはO(酸素)であり、
それぞれのRは、独立して、水素または1〜8もしくは1〜4個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、
それぞれのRは、独立して、水素または1〜2個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、一実施形態では、それぞれのRは水素であり、
gは、1〜6または1〜3を含めた範囲内の整数である]。
【0064】
コポリマー内に取り込まれることができる適切な窒素含有化合物の例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカルボンアミド(たとえば、N−ビニル−ホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミドまたはそれらの混合物が含まれる。
【0065】
一実施形態では、窒素含有基に由来するヘテロ原子(heteratom)基には、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、(メタ)アクリル酸および他の窒素含有(メタ)アクリレートのニトリル、たとえば、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジイソブチルケチミン、N−(メタクリロイルオキシエチル)ジヘキサデシルケチミン、メタクリロイルアミドアセトニトリル、2−メタクリロイルオキシエチルメチルシアナミド、シアノメチルメタクリレート、またはそれらの混合物が含まれ得る。
【0066】
コポリマー内に取り込まれることができる適切な非カルボニル酸素含有化合物の例には、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4−ジヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオール(メタ)アクリレート、カルボニル含有メタクリレート、たとえば、2−カルボキシエチルメタクリレート、カルボキシメチルメタクリレート、オキサゾリジニルエチルメタクリレート、N−(メタクリロイルオキシ)ホルムアミド、アセトニルメタクリレート、N−メタクリロイルモルホリン、N−メタクリロイル−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシプロピル)−2−ピロリジノン、N−(2−メタクリロイルオキシペンタデシル)−2−ピロリジノン、N−(3−メタクリロイルオキシヘプタデシル)−2−ピロリジノン、グリコールジメタクリレート、たとえば、1,4−ブタンジオールメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、またはそれらの混合物が含まれる。
【0067】
コポリマー内に取り込まれることができる適切な非カルボニル酸素含有化合物の他の例には、エーテルアルコールのメタクリレート、たとえば、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ビニルオキシエトキシエチルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシプロピルメタクリレート、1−メチル−(2−ビニルオキシ)エチルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエトキシメチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1−エトキシブチルメタクリレート、メトキシメチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレートおよび典型的には1〜20もしくは2〜8個のエトキシ基を有するエトキシ化(メタ)アクリレート、またはそれらの混合物が含まれる。
【0068】
ブロックコポリマーは、制御ラジカルまたはRAFT(可逆的付加開裂移動)、ATRP(原子移動ラジカル重合)、窒素酸化物媒介性および陰イオン性などの他のリビング重合技法から得られ得る/得ることができる。これらの重合技法は当業者に知られている。
【0069】
重合中にアミンを反応停止させる手段を講じる場合は、第2のブロックのヘテロ原子が窒素ヘテロ原子(アミン由来)を含有する場合に陰イオン重合プロセスが有用であり得る。そのような技法は当業者に知られている。
【0070】
重合機構および関連化学のより詳細な説明は、Handbook of Radical Polymerization、Krzysztof MatyjaszewskiおよびThomas P.Davis編、2002、John Wiley and Sons Inc出版(本明細書中以降「Matyjaszewskiら」と呼ぶ)中で、窒素酸化物媒介重合(第10章、ページ463−522)について記載されている。
【0071】
一実施形態では、ブロックコポリマーを調製するために用いる制御ラジカル重合プロセスはRAFTプロセスであり得る。RAFTプロセスの詳細な説明は、WO2006/047393号(試薬には文書全体、および直鎖状ポリマーへの言及を参照)または米国特許出願第2006/0189490号(段落[0128]〜[0131]を参照に記載されている。
【0072】
一実施形態では、ブロックコポリマーを調製するために用いる制御ラジカル重合プロセスはATRPプロセスであり得る。ATRP重合では、ラジカル機構によって移動され得る基には、ハロゲン(ハロゲン含有化合物由来)または様々なリガンドが含まれる。移動され得る基のより詳細な総説は、米国特許第6,391,996号、または米国特許出願第2005/038146号の段落61〜65に記載されている。ATRPプロセスの別の詳細な説明は米国特許出願第2006/0189490号(段落[0102]〜[0126]を参照)に記載されている。
【0073】
重合機構および関連化学のより詳細な説明は、Matyjaszewskiら中で、ATRP(第11章、ページ523−628)およびRAFT(第12章、ページ629−690)について記載されている。
【0074】
一実施形態では、制御ラジカル重合プロセスはRAFTプロセスであり得る。
【0075】
RAFT重合では、連鎖移動剤が重要である。適切な連鎖移動剤のより詳細な総説は、米国特許出願US2005/038146号の段落66〜71に見つかる。
【0076】
一実施形態では、適切なRAFT連鎖移動剤には、2−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニル−2−メチル−プロピオン酸ブチルエステル、クミルジチオベンゾエートまたはそれらの混合物が含まれる。
【0077】
潤滑粘度の油
潤滑組成物は潤滑粘度の油を含む。そのような油には、天然および合成の油、水素化分解、水素化、および水素化仕上げに由来する油、未精製、精製および再精製の油、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0078】
未精製油とは、一般にさらなる精製処理なし(またはわずかな処理)で天然または合成源から直接得られたものである。
【0079】
精製油とは、未精製油に類似しているが、1つまたは複数の特性を改善するために1つまたは複数の精製ステップでさらに処理したものである。精製技法は当分野で知られており、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、パーコレーションなどが含まれる。
【0080】
再精製油とは、再生または再加工油としても知られ、精製油を得るために使用するプロセスと同様のプロセスによって得られ、多くの場合、消費した添加剤および油分解産物の除去に向けられた技法によってさらに加工されている。
【0081】
本発明の潤滑剤の作製に有用な天然油には、動物油、植物油(たとえばヒマシ油)、液体石油などの鉱物潤滑油、およびパラフィン、ナフテンまたは混合パラフィン−ナフテン型の油の溶媒処置または酸処置した、石炭もしくは頁岩またはそれらの混合物に由来する鉱物潤滑油が含まれる。
【0082】
合成潤滑油が有用であり、重合および共重合したオレフィン(典型的には水素化)(たとえば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびそれらの混合物、アルキル−ベンゼン(たとえば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン)、ポリフェニル(たとえば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル)、ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドならびにその誘導体、類似体および相同体またはそれらの混合物などの、炭化水素油が含まれる。
【0083】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル(Prolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(たとえば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または高分子テトラヒドロフランが含まれる。合成油はフィッシャー−トロプシュ反応によって生成してよく、典型的には水素化異性化(hydroisomerised)フィッシャー−トロプシュの炭化水素またはワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー−トロプシュの気体から液体および他の気体から液体の油への合成手順によって調製し得る。
【0084】
また、潤滑粘度の油は、米国石油協会(API)の基油互換性指針に指定されているように定義し得る。5つの基油の群は、第I群(硫黄含有量>0.03重量%、および/または<90重量%の飽和物、粘度指数80〜120)、第II群(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量%の飽和物、粘度指数80〜120)、第III群(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量%の飽和物、粘度指数≧120)、第IV群(すべてのポリアルファオレフィン(PAO))、ならびに第V群(第I、II、III、またはIV群に含まれないすべての他のもの)である。潤滑粘度の油には、APIの第I群、第II群、第III群、第IV群、第V群の油またはそれらの混合物が含まれる。多くの場合、潤滑粘度の油はAPIの第I群、第II群、第III群、第IV群の油またはそれらの混合物である。
【0085】
存在する潤滑粘度の油の量は、典型的には、100重量%から本発明の化合物および他の性能向上添加剤(performance additive)の量の合計を減算した後に残った差量である。
【0086】
潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形態であり得る。本明細書中上記に開示した添加剤を含む本発明の潤滑組成物が濃縮物の形態である場合(これは、追加の油と合わせて、完成した潤滑剤を完全にまたは部分的に形成し得る)、これらの添加剤対潤滑粘度の油および/または希釈油の比には、重量で1:99〜99:1、または重量で80:20〜10:90の範囲が含まれる。
他の性能向上添加剤
組成物には、他の性能向上添加剤も任意選択で含まれる。他の性能向上添加剤は、金属不活性化剤、粘度調整剤、清浄剤、摩擦調整剤、磨耗防止剤、腐食阻害剤、分散剤、分散性粘度調整剤、極圧剤、抗酸化剤、泡沫阻害剤、解乳化剤、乳化剤(本発明のブロックコポリマー以外)、流動点降下剤(本発明のブロックコポリマー以外)、シール膨張剤およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能向上添加剤のうちの1つまたは複数を含有する。
【0087】
一実施形態では、本発明の潤滑組成物には、摩擦調整剤、粘度調整剤、抗酸化剤、過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つがさらに含まれる。
【0088】
一実施形態では、本発明の潤滑組成物には、粘度調整剤、抗酸化剤、過塩基性清浄剤、スクシンイミド分散剤、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つがさらに含まれる。
【0089】
清浄剤
一実施形態では、潤滑組成物には、既知の中性または過塩基性の清浄剤がさらに含まれる。適切な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/もしくはジ−チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、またはサリゲニンが含まれる。様々な過塩基性清浄剤およびその調製方法は、WO2004/096957号およびその中に引用される参考文献を含めた、多数の特許公開にさらに詳述されている。清浄剤基質は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、またはそれらの混合物などの金属を用いて塩としてもよい。
【0090】
一実施形態では、過塩基性清浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリチレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。典型的には、選択された過塩基性清浄剤には、カルシウムもしくはマグネシウムフェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート、サリゲニン(saliginen)、サリチレート、またはそれらの混合物が含まれる。
【0091】
一実施形態では、清浄剤はサリチル酸カルシウムであり得る。一実施形態では、清浄剤はスルホン酸カルシウムであり得る。本発明の一実施形態では、清浄剤はスルホン酸カルシウムおよびサリチル酸カルシウムの混合物であり得る。
【0092】
一実施形態では、清浄剤はカルシウムフェネートであり得る。一実施形態では、清浄剤はスルホン酸カルシウムであり得る。本発明の一実施形態では、清浄剤はスルホン酸カルシウムおよびカルシウムフェネートの混合物であり得る。
【0093】
潤滑組成物が2サイクル舶用ディーゼルエンジンを潤滑しない場合は、清浄剤は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)潤滑組成物の0重量%〜10重量%、または0.1重量%〜8重量%、または1重量%〜4重量%で存在し得る。潤滑組成物が2サイクル舶用ディーゼルエンジンを潤滑する場合は、清浄剤の量は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)潤滑組成物の0重量%〜40重量%、または2重量%〜35重量%、または5重量%〜30重量%であり得る。
【0094】
分散剤
分散剤は、潤滑油組成物中に混合する前にこれらが灰形成金属を含有せず、また、潤滑剤およびポリマー分散剤に加えた際にこれらが通常、灰形成金属に貢献しないため、多くの場合は無灰分散剤として知られる。無灰分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に付着した極性基によって特徴づけられている。典型的な無灰分散剤には、N−置換の長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N−置換の長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が350〜5000または500〜3000の範囲であるポリイソブチレンスクシンイミドが含まれる。スクシンイミド分散剤およびその調製物は、たとえば、米国特許第3,172,892号または米国特許第4,234,435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されたイミドである。
【0095】
一実施形態では、本発明には、数平均分子量が350〜5000または500〜3000の範囲であるポリイソブチレンに由来するポリイソブチレンスクシンイミドである、少なくとも1つの分散剤がさらに含まれる。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独でまたは他の分散剤と組み合わせて使用し得る。
【0096】
一実施形態では、本発明には、ポリイソブチレンコハク酸無水物、アミンおよび酸化亜鉛に由来して亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成した、少なくとも1つの分散剤がさらに含まれる。亜鉛とのポリイソブチレンスクシンイミド錯体は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。
【0097】
無灰分散剤の別のクラスにはマンニッヒ塩基が含まれる。マンニッヒ分散剤とは、アルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。アルキル基は、典型的には少なくとも30個の炭素原子を含有する。
【0098】
また、分散剤は、慣用方法によって、様々な薬剤のうちの任意のものとの反応によって後処理してもよい。とりわけ、これらには、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換の無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物がある。
【0099】
分散剤(典型的にはポリイソブチレンスクシンイミド)は、高い全塩基数を有し得るか、または分散剤は高い全酸数を有し得る。一般に、高いTAN数を有する分散剤は、1以上、一態様では1.2以上、別の態様では1.4以上、さらに別の態様では1.45以上、たとえば1.5のカルボニル対窒素の比を有する。一般に、高いTBN数を有する分散剤は、1未満、一態様では0.94以下、別の態様では0.88以下、別の態様では0.8以下、たとえば0.77のカルボニル対窒素の比を有する。カルボニル対窒素の比はモルに基づいて計算する、すなわち、カルボニル官能基(たとえば−C(O)O−)のモル数対窒素官能基(たとえばアミン窒素)のモル数の比である。一実施形態では、分散剤は、(i)1以上のカルボニル対窒素の比を有する分散剤、および(ii)1未満のカルボニル対窒素の比を有する分散剤の混合物であり得る。
【0100】
分散剤は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)潤滑組成物の0重量%〜20重量%、または0.1重量%〜15重量%、または0.1重量%〜10重量%、または1重量%〜6重量%で存在し得る。
【0101】
抗酸化剤
抗酸化化合物は知られており、たとえば、硫化オレフィン、アルキル化ジフェニルアミン(典型的には、ジ−ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン)、ヒンダードフェノール、モリブデン化合物(ジチオカルバミン酸モリブデンなど)、またはそれらの混合物が含まれる。抗酸化化合物は、単独でまたは組み合わせて使用し得る。抗酸化剤は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)潤滑組成物の0重量%〜20重量%、または0.1重量%〜10重量%、または1重量%〜5重量%の範囲で存在し得る。
【0102】
ヒンダードフェノール抗酸化剤は、多くの場合は立体障害する基として第二級ブチルおよび/または第三級ブチル基を含有する。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には直鎖状もしくは分枝状のアルキル)および/または第2の芳香族基と連結する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール抗酸化剤の例には、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールもしくは4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノールが含まれる。一実施形態では、ヒンダードフェノール抗酸化剤はエステルであってよく、たとえばCibaのIrganox(商標)L−135が含まれ得る。適切なエステル含有ヒンダードフェノール抗酸化剤の化学のより詳細な説明は、米国特許第6,559,105号に見つかる。
【0103】
一実施形態では、潤滑組成物にはモリブデン化合物がさらに含まれる。
【0104】
モリブデン化合物は、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0105】
抗酸化剤として使用し得るジチオカルバミン酸モリブデンの適切な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のMolyvan822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan855(商標)、およびAdekaのAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165、S−515、S−600、S−710などの商品名の下で販売されている市販の物質、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0106】
存在する場合は、モリブデン化合物は、5ppm〜1000ppmまたは20ppm〜300ppmのモリブデンを潤滑組成物に提供し得る。
【0107】
粘度調整剤
粘度調整剤には、無水マレイン酸−(アルファオレフィン)コポリマーの水素化コポリマー、スチレン−ブタジエン、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアレーンとコンジュゲートしたジエンコポリマー、ポリオレフィン、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステルが含まれる。
【0108】
分散性粘度調整剤
分散性粘度調整剤(多くの場合DVMと呼ばれる)には、官能化したポリオレフィン、たとえば、無水マレイン酸およびアミンなどのアシル化剤で官能化したエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能化した、またはアミンと反応させたスチレン−無水マレイン酸コポリマーでエステル化したポリメタクリレートが含まれる。
【0109】
磨耗防止剤
一実施形態では、潤滑組成物には磨耗防止剤がさらに含まれる。
【0110】
追加の磨耗防止剤は、無灰または灰形成のどちらかであり得る。典型的には、無灰磨耗防止剤は金属を含有しない一方で、灰形成のものは金属を含有する。
【0111】
磨耗防止剤は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)潤滑組成物の0重量%〜15重量%、または0重量%〜10重量%、または0.05重量%〜5重量%、または0.1重量%〜3重量%を含めた範囲で存在し得る。
【0112】
一実施形態では、潤滑組成物にはリン含有磨耗防止剤がさらに含まれる。典型的には、リン含有磨耗防止剤は、以下の「産業上の利用可能性」の小見出し下で内容中に記載の範囲のリンを送達するための量で存在し得る。
【0113】
適切な磨耗防止剤の例には、リン酸エステル、硫化オレフィン、金属ジヒドロカルビルジチオリン酸塩(第一級もしくは第二級のジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはジアルキルジチオリン酸モリブデンなど)を含めた硫黄含有磨耗防止添加剤、チオカルバミン酸エステルを含めたチオカルバミン酸モリブデン含有化合物、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが含まれる。
【0114】
適切なジアルキルジチオリン酸亜鉛の例には、PCT出願US07/073428号(表題「Method of Lubricating an Internal Combustion Engine and Improving the Efficiency of the Emissions Control System of the Engine」)またはPCT出願US07/073426号(表題「Lubricating Oil Composition and Method of Improving Efficiency of Emissions Control System」)に開示されているものが含まれる。どちらの出願も、2006年7月17日からの優先権を主張する。一実施形態では、ジアルキルジチオリン酸亜鉛またはジアルキルリン酸亜鉛は、以下の式によって表されるリン含有化合物の混合物の亜鉛塩として定義し得る:
【0115】
【化2】

【0116】
[式中、JおよびJは、独立してSまたはOであり、RおよびRは、独立してヒドロカルビル基であってよく、リン含有化合物の混合物中のR+R中の炭素原子の平均合計数は少なくとも9.5であり、RおよびRは、(i)そのような基の4〜70モルパーセントが2〜4個の炭素原子を含有し、(ii)そのような基の30〜96モルパーセントが5〜12個の炭素原子を含有することを特徴とし、リン含有化合物の混合物中の式の分子の8モルパーセント未満において、RおよびRのそれぞれが2〜4個の炭素原子を含有し、前記混合物中の式の分子の11モルパーセントより多くにおいて、Rが2〜4個の炭素原子を有し、Rが5〜12個の炭素原子を有し、式中、O原子に対してベータの位置の炭素原子上のRおよびR中の水素原子の平均合計数は、少なくとも7.25である]。
【0117】
ジチオカルバメート含有化合物は、ジチオカルバメートの酸またはその塩を不飽和化合物と反応させることによって調製し得る。また、ジチオカルバメート含有化合物は、アミン、二硫化炭素および不飽和化合物を同時に反応させることによっても調製し得る。一般に、反応は25℃〜125℃の温度で起こる。米国特許第4,758,362号および第4,997,969号は、ジチオカルバメート化合物およびその作製方法を記載している。
【0118】
硫化して硫化オレフィンを形成し得る適切なオレフィンの例には、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、ウンデシル、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン(octadecenene)、ノノデセン(nonodecene)、エイコセンまたはそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、オクタデセネン(octadecenene)、ノノデセン(nonodecene)、エイコセンまたはそれらの混合物ならびにその二量体、三量体および四量体が特に有用なオレフィンである。あるいは、オレフィンは、1,3−ブタジエンなどのジエンとブチルアクリレートなどの不飽和エステルとのディールズ−アルダー付加物であり得る。
【0119】
硫化オレフィンの別のクラスには、脂肪酸およびそのエステルが含まれる。脂肪酸は多くの場合は植物油または動物油から得られ、典型的には4〜22個の炭素原子を含有する。適切な脂肪酸およびそのエステルの例には、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸またはそれらの混合物が含まれる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油またはそれらの混合物から得る。一実施形態では、脂肪酸および/またはエステルをオレフィンと混合する。
【0120】
極圧剤
油中で可溶性の極圧(EP)剤には、硫黄および塩化硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤ならびにリンEP剤が含まれる。そのようなEP剤の例には、塩素化ワックス、有機スルフィドおよびポリスルフィド、たとえば、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールズ−アルダー付加物、リンスルフィドとテレピン油またはオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化(phosphosulphurised)炭化水素、亜リン酸二炭化水素および三炭化水素などのリンエステル、たとえば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル、亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸ジオレイル、亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル、亜リン酸ジドデシル、亜リン酸ジC12〜14アルキル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリルおよびポリプロピレン置換の亜リン酸フェノール、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびヘプチルフェノール二酸バリウムなどの金属チオカルバミン酸塩、たとえばジアルキルジチオリン酸と酸化プロピレンとの反応生成物のアミン塩を含めたアルキルとジアルキルリン酸とのアミン塩、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0121】
摩擦調整剤
一実施形態では、潤滑組成物には、摩擦調整剤またはそれらの混合物がさらに含まれる。典型的には、摩擦調整剤は、(油なしに基づいて、すなわち活性物質に基づいて)0重量%〜10重量%、または0.05重量%〜8重量%、または0.1重量%〜4重量%を含めた範囲で存在し得る。
【0122】
適切な摩擦調整剤の例には、アミン、エステル、またはエポキシドの長鎖脂肪酸誘導体、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンとの縮合物などの脂肪イミダゾリン、アルキルリン酸のアミン塩、酒石酸脂肪アルキル、脂肪アルキルタルトリミド、または脂肪アルキルタルトラミドが含まれる。
【0123】
また、摩擦調整剤には、酒石酸脂肪アルキル、脂肪アルキルタルトリミド、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデン、ヒマワリ油またはポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルなどの物質が包含され得る(これらの摩擦調整剤はすべて、抗酸化剤または磨耗防止剤としても記載し得る)。
【0124】
一実施形態では、摩擦調整剤摩擦調整剤は、アミン、エステル、またはエポキシドの長鎖脂肪酸誘導体、酒石酸脂肪アルキル、脂肪アルキルタルトリミド、および脂肪アルキルタルトラミドからなる群から選択される。
【0125】
一実施形態では、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステル(以前に無灰磨耗防止剤として上述)であり得る。一実施形態では、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、たとえばモノグリセリドであってよく、一実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは(トリ)グリセリドであってよい。
【0126】
他の添加剤
腐食阻害剤などの他の性能向上添加剤には、米国出願US05/038319号(2004年10月25日に出願、McAteeおよびBoyerが発明者名)の段落5〜8に記載されているもの、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または酸無水物およびオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合物が含まれる。一実施形態では、腐食阻害剤にはSynalox(登録商標)腐食阻害剤が含まれる。Synalox(登録商標)腐食阻害剤は、典型的には酸化プロピレンのホモポリマーまたはコポリマーである。Synalox(登録商標)腐食阻害剤は、The Dow Chemical Companyから出版されている製品カタログ様式番号118−01453−0702 AMS中にさらに詳述されている。この製品カタログの表題は「SYNALOX Lubricants,High−Performance Polyglycols for Demanding Applications」である。
【0127】
ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールを含めた金属不活性化剤、エチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートと任意選択で酢酸ビニルとのコポリマーを含めた泡沫阻害剤、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(酸化エチレン−酸化プロピレン)ポリマーを含めた解乳化剤、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含めた流動点降下剤が有用であり得る。本発明の組成物において有用であり得る泡沫阻害剤には、エチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートと任意選択で酢酸ビニルとのコポリマー、ならびにトリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(酸化エチレン−酸化プロピレン)ポリマーを含めた解乳化剤が含まれる。
【0128】
本発明の組成物において有用であり得る流動点降下剤には、ポリアルファオレフィン、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、フマル酸エステル−酢酸ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキルアクリレートまたはポリアルキルアクリルアミドが含まれる。
【0129】
(産業上の利用可能性)
一実施形態では、機械的装置は内燃機関である。
【0130】
一実施形態では、内燃機関は、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジンまたは混合ガソリン/アルコール燃料エンジンであり得る。一実施形態では、内燃機関はディーゼル燃料エンジンであってよく、一実施形態ではガソリン燃料エンジンであってよい。
【0131】
内燃機関は2サイクルまたは4サイクルのエンジンであり得る。適切な内燃機関には、舶用ディーゼルエンジン、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、ならびに自動車およびトラックのエンジンが含まれる。
【0132】
本明細書中で使用する場合、内燃機関の構成要素には、エンジン潤滑剤によって潤滑される、金属から得られるエンジンのすべての部品が含まれる。これには、たとえば、シリンダライナー、カムシャフト、ピストン、軸受け、油冷却器などが含まれる。
【0133】
一実施形態では、内燃機関は、三価鉄(すなわち二価鉄)の構成要素を含有する。三価鉄の構成要素には、Fe、FeO、Feまたは鉄を含有する他の材料が含まれる。
【0134】
一実施形態では、内燃機関はアルミニウム合金の構成要素を含有する。アルミニウム合金には、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、または他のセラミック材料が含まれる。一実施形態では、アルミニウム合金はケイ酸アルミニウム表面である。
【0135】
内燃機関の潤滑組成物は、硫黄、リンまたは硫酸塩灰分(ASTM D−874)の含有量にかかわらず、任意のエンジン潤滑剤に適切であり得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下、または0.3重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、0.001重量%〜0.5重量%、または0.01重量%〜0.3重量%の範囲であり得る。リン含有量は、0.2重量%以下、または0.1重量%以下、または0.085重量%以下、またはさらには0.06重量%以下、0.055重量%以下、または0.05重量%以下であり得る。一実施形態では、リン含有量は、100ppm〜1000ppmまたは200ppm〜600ppmであり得る。全硫酸塩灰分含有量は、2重量%以下、または1.5重量%以下、または1.1重量%以下、または1重量%以下、または0.8重量%以下、または0.5重量%以下であり得る。一実施形態では、硫酸塩灰分含有量は、0.05重量%〜0.9重量%、または0.1重量%〜0.2重量%〜0.45重量%であり得る。
【0136】
一実施形態では、潤滑組成物はエンジン油であってよく、潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)0.08重量%以下のリン含有量、および(iii)1.5重量%以下の硫酸塩灰分含有量を有するものと特徴づけ得る。
【0137】
一実施形態では、潤滑組成物は、2サイクルまたは4サイクルの舶用ディーゼル内燃機関に適切であり得る。一実施形態では、舶用ディーゼル燃焼エンジンは2サイクルエンジンである。
【0138】
また、本発明のブロックコポリマーは、乳化剤および/または流動点降下剤を必要とする様々な潤滑剤においても使用し得る。本発明のブロックコポリマーは、動力伝達装置、工業用ギア、油圧装置、農業用トラクターなどのオフハイウェイ移動機器、グリース、金属加工油および燃料における乳化剤および/または流動点降下剤であり得る。これらの装置のそれぞれについて、当業者には理解されるように、潤滑剤配合物は、それぞれの潤滑剤の種類において一般に用いられる様々な添加剤および処理率が原因で変化し得る。それにもかかわらず、このブロックコポリマーは乳化剤および/または流動点降下剤として機能すると考えられる。
【0139】
動力伝達装置には、ギアボックス、車軸ギア、トラクションドライブ変速機、自動変速機または手動式変速機が含まれる。
【0140】
自動変速機には、無段可変変速機(CVT)、無限可変変速機(IVT)、トロイダル(Torroidal)変速機、連続滑り式トルク・コンバーター・クラッチ(CSTCC)、有段式自動変速機またはデュアルクラッチ変速機(DCT)が含まれる。
【0141】
以下の実施例は本発明の例示を提供する。これらの実施例は網羅的でなく、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0142】
調製用実施例1(EX1)は、(C12〜15−アルキルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート)−b−ジメチルアミノエチルメタクリレートのジブロックコポリマーである。このジブロックコポリマーは、試薬を窒素導入口、熱電対および加熱マントルを備えた4つ口フラスコ内に入れることによって調製する。加えた試薬には、99.2gのC12〜15−アルキルメタクリレート、48gの2−エチルヘキシルメタクリレート、5.04gの連鎖移動剤(ドデシル−トリチオカーボネートブチルエステル)、0.87gのTrigonox(登録商標)21開始剤および41.48gのPAO−4希釈油が含まれる。フラスコを撹拌し、窒素で30分間パージする。窒素流速は0.028m/時(または1SCFH)である。その後、フラスコを90℃まで加熱し、窒素流を0.014m/時(または0.5SCFH)まで下げ、150分間保つ。その後、フラスコに12.8gのジメチルアミノエチルメタクリレートを入れる。フラスコをさらに3時間90℃で保った後、冷却する。生成物は粘稠な液体である。
【0143】
調製用実施例2(EX2)は、(C12〜15−アルキルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート)−b−ジメチルアミノエチルメタクリレートのジブロックコポリマーである。111.6gのC12〜15−アルキルメタクリレート、54gの2−エチルヘキシルメタクリレート、および0.97gのTrigonox(登録商標)21開始剤をブレンドして、ブレンドを形成する。ブレンドの約3分の1を、窒素導入口、熱電対および加熱マントルを備えた4つ口フラスコに入れる。その後、5.67gの連鎖移動剤(ドデシル−トリチオカーボネートブチルエステル)をフラスコに加える。
【0144】
フラスコを撹拌し、窒素で30分間パージする。窒素流速は0.028m/時(または1SCFH)である。その後、フラスコを80℃まで加熱し、窒素流を0.014m/時(または0.5SCFH)まで下げ、ブレンドの残りの3分の2を90分間かけて加える。フラスコを80℃に維持し、150分間保つ。その後、フラスコに14.4gのジメチルアミノエチルメタクリレートを入れる。フラスコをさらに150分間80℃で保った後、冷却する。生成物は粘稠な液体である。
【0145】
調製用実施例3(EX3)は、(C12〜15−アルキルメタクリレートおよびC16〜18−アルキルメタクリレート)−b−ジメチルアミノエチルメタクリレートのジブロックコポリマーである。1500gのC12〜15−アルキルメタクリレート、260gのC16〜18−アルキルメタクリレート(C16〜18−アルキルメタクリレートは5重量%までのC14−アルキルメタクリレートおよび2重量%までのC20−アルキルメタクリレートも含有する)、ならびに3gのTrigonox(登録商標)21開始剤をブレンドして、ブレンドを形成する。ブレンドの約3分の1を、窒素導入口、熱電対および加熱マントルを備えた4つ口フラスコに入れる。その後、17.5gの連鎖移動剤(ドデシル−トリチオカーボネートブチルエステル)をフラスコに加える。
【0146】
フラスコを撹拌し、窒素で30分間パージする。窒素流速は0.056m/時(または2SCFH)である。その後、フラスコを80℃まで加熱し、窒素流を0.014m/時(または0.5SCFH)まで下げ、ブレンドの残りの3分の2を90分間かけて加える。フラスコを80℃に維持し、15時間保つ。その後、フラスコに240gのジメチルアミノエチルメタクリレートを入れる。フラスコを90℃で2時間保つ。3回の別々のチャージのTrigonox(登録商標)21開始剤(それぞれ1g)を5時間にわたって加える。生成物は粘稠な液体であり、希釈油で希釈して油中の40%のポリマー混合物が形成される。
【0147】
調製用実施例4(EX4)は、最終ポリマーが(C12〜15−アルキルメタクリレートおよびC16〜18−アルキルメタクリレート)−b−(ジメチルアミノエチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート)のブロックコポリマーである以外は、EX3に類似のプロセスによって調製するジブロックコポリマーである。メチルメタクリレートをジメチルアミノエチルメタクリレートと同時に加える。C12〜15−アルキルメタクリレート対C16〜18−アルキルメタクリレートの重量パーセントの比は85:15である(C16〜18−アルキルメタクリレートは5重量%までのC14−アルキルメタクリレートおよび2重量%までのC20−アルキルメタクリレートも含有する)。ジメチルアミノエチルメタクリレート対メチルメタクリレートの重量パーセントの比は91:9である。疎水性ブロック対極性基を含有する第2のブロックの重量パーセントの比は87:13である。生成物は粘稠な液体であり、希釈油で希釈して油中の50%のポリマー混合物が形成される。
【0148】
比較調製用実施例1(CP1)は、C12〜15−アルキルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、およびジメチルアミノエチルメタクリレートのランダムポリマーである。このランダムポリマーは、試薬を窒素導入口、熱電対および加熱マントルを備えた4つ口フラスコ内に入れることによって調製する。加えた試薬には、99.2gのC12〜15−アルキルメタクリレート、48gの2−エチルヘキシルメタクリレート、12.8gのジメチルアミノエチルメタクリレート、5.04gの連鎖移動剤(ドデシル−トリチオカーボネートブチルエステル)、0.87gのTrigonox(登録商標)21開始剤および41.48gのPAO−4希釈油が含まれる。その後、EX1に記載のようにフラスコを90℃まで加熱する。
【0149】
以下の潤滑剤実施例および比較潤滑剤実施例では、調製用実施例または比較調製用実施例からの記載した生成物の量には、場合によっては、それに加えたまたは含めたと報告されている希釈油の量が含まれる。
【0150】
比較潤滑剤実施例1(CLC1)はSAE 5W−30エンジン潤滑剤である。
【0151】
比較潤滑剤実施例2(CLC2)は、0.05重量%のCP1の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0152】
比較潤滑剤実施例3(CLC3)は、0.12重量%のCP1の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0153】
比較潤滑剤実施例4(CLC4)は、80重量%の、100℃で4.6mm/sの粘度を有するExxonMobil Group II EHC(商標)−45と、20重量%の、100℃で6.0mm/sの粘度を有するExxonMobil Group II EHC(商標)−60との油混合物である。
【0154】
潤滑剤実施例1(LC1)は、0.05重量%のEX1の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0155】
潤滑剤実施例2(LC2)は、0.12重量%のEX1の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0156】
潤滑剤実施例3(LC3)は、0.05重量%のEX2の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0157】
潤滑剤実施例4(LC4)は、0.12重量%のEX2の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0158】
潤滑剤実施例5(LC5)は、0.07重量%のEX3の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0159】
潤滑剤実施例6(LC6)は、0.16重量%のEX3の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0160】
潤滑剤実施例7(LC7)は、0.06重量%のEX4の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0161】
潤滑剤実施例8(LC8)は、0.15重量%のEX4の生成物をさらに含有すること以外はCLC1に類似の5W−30エンジン潤滑剤である。
【0162】
潤滑剤実施例9(LC9)は、0.26重量%のEX2の生成物を含有すること以外はCLC4に類似している。
【0163】
潤滑剤実施例10(LC10)は、0.35重量%のEX3の生成物を含有すること以外はCLC4に類似している。
【0164】
潤滑剤実施例11(LC11)は、0.35重量%のEX4の生成物を含有すること以外はCLC4に類似している。
【0165】
試験
潤滑剤実施例LC1〜LC8および比較潤滑剤実施例CLC1〜CLC3を以下のASTM試験D445、D4684−07およびD5985−02において評価する。また、潤滑剤はChryslerのFFV乳濁液安定性試験においても評価する。
【0166】
ASTM D445は、100℃での動粘度(単位はmm/s)の測定に関する。
【0167】
ASTM D4684−07(ミニ回転粘度計(Mini−Rotary Viscometer)すなわちMRV)は、エンジン潤滑油の低温ポンパビリティーに関する。制御された速度で45時間を超える期間にわたって−10℃〜−40℃の最終試験温度まで冷却した後に、降伏応力および低剪断速度粘度を測定する。単位はセンチポアズ(cP)またはmPa−sである。
【0168】
D5985−02は、試験検体の冷却中に試験検体を吊り下げた検出装置に対して連続的に回転させる自動器械による、石油生成物の流動点の決定をカバーする。
【0169】
Chrysler FFV乳濁液安定性試験は、10体積%のE85燃料、10%の水、および80%の完全に配合されたエンジン油を合わせるステップと、それらをワーリングブレンダー中で混合するステップとを含む。生じる乳濁液をメスシリンダー中で、0℃および室温(25℃)で24時間保管する。試験の終わりに、油の体積パーセント(油%)、乳濁液のパーセント(乳濁液%)、および水のパーセント(HO%)を記録する。典型的には、配合された油は、0℃および室温のどちらでの%HOも0である場合に、FFV試験に合格したとみなされる。
【0170】
上述の試験で得られた結果は以下のとおりである。
【0171】
【表1】

【0172】
【表2】

【0173】
表の脚注:
n/mは測定しなかったデータ点を示す。
【0174】
実施例CLC4およびLC9〜LC11を、ASTM方法D5985−02の方法論によって流動点の性能について分析する。得られた結果は以下のとおりである。
【0175】
【表3】

【0176】
本発明のブロックコポリマーで得られた全体的な結果は、ポリマーが乳化特性および/または流動点降下特性を有することを示している。
【0177】
上述した材料の一部が最終配合物中で相互作用する場合があり、したがって最終配合物の構成要素が最初に加えたものとは異なる場合があることが知られている。本発明の潤滑組成物をその意図する使用で用いる際に形成される生成物を含めた、それにより形成される生成物は、容易に説明可能でない場合がある。それにもかかわらず、すべてのそのような改変および反応生成物が本発明の範囲内に含まれ、本発明には、上述の構成要素を混ぜることによって調製した潤滑組成物が包含される。
【0178】
上記で言及した文書のそれぞれが、本明細書中に参考として組み込まれている。実施例中、または他の箇所で明確に示した場合以外は、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定する本記載中のすべての数量は、単語「約」によって修飾されるものとして理解されたい。別段に指定しない限りは、本明細書中で言及するそれぞれの化合物または組成物は、異性体、副産物、誘導体、および市販グレード中に存在することが通常認識されている他のそのような物質を含有し得る市販グレードの物質であると解釈されるべきである。しかし、それぞれの化学成分の量は、別段に指定しない限りは市販の物質中に習慣的に存在し得る、すべての溶媒または希釈油を除いて提示している。本明細書中に記載する量、範囲、および比の上限および下限は独立して組み合わせ得ることを理解されたい。同様に、本発明のそれぞれの要素の範囲および量は、他の要素のうちの任意のものの範囲または量と一緒に使用し得る。上述の式中、同じ記号で表した複数の基は、同一または異なるものであってよい。
【0179】
本明細書中で使用する場合、「C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位」は、C1〜30アルキル(メタ)アクリルモノマーの重合によって形成された生成物に関する。その後、C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を用いて本明細書中に上述したブロック(複数可)を形成し得る。C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のパーセンテージへの言及はモルパーセントであるとみなされる。
【0180】
本明細書中で使用する場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」とは、当業者に周知のその通常の意味で使用する。具体的には、これは、炭素原子が分子の残りの部分に直接付着しており、主に炭化水素の特徴を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例には、
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(たとえば、アルキルまたはアルケニル)、脂環(たとえば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環で置換された芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分によって完成される環状置換基(たとえば、一緒になって1つの環を形成する2つの置換基)、
(ii)置換された炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈では、置換基の主に炭化水素の性質を変更しない、非炭化水素基を含有する置換基(たとえば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、ならびにスルホキシ)、
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈では、主に炭化水素の特徴を有する一方で、それ以外は炭素原子からなる環または鎖中に炭素以外を含有する置換基であり、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基が包含されるもの、
(iv)硫黄、酸素、および窒素を含めたヘテロ原子が含まれる。一般に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに2個以下、好ましくは1個以下の非炭化水素置換基が存在し、典型的には、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0181】
本発明をその好ましい実施形態に関連して説明したが、その様々な改変が、本明細書を読んだ際に当業者に明らかとなることを理解されたい。したがって、本明細書中に開示した本発明は、そのような改変を添付の特許請求の範囲内にあるとみなしてカバーすることを意図することを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーが、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロック(ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個である)と、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、該疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、該(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、潤滑粘度の油と該ブロックコポリマーとを含む潤滑組成物を内燃機関に供給することを含む、内燃機関を潤滑する方法。
【請求項2】
前記内燃機関がフレキシブル燃料車エンジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーが、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)ヘテロ原子基をさらに有することで極性基を提供する、(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、前記請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ブロックコポリマーが、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも70重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の30重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個である、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、該疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、該(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、前記請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ブロックコポリマーが、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも80重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の20重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数は少なくとも8個である、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、該疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、該(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、前記請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2のブロックの前記ヘテロ原子含有基が、硫黄、窒素、非カルボニル酸素、リン、またはそれらの混合物を含有する、前記請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2のブロックの前記ヘテロ原子含有基が窒素を含有する、前記請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ヘテロ原子含有基が、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、およびそれらの混合物からなる群から選択される窒素含有モノマーに由来する、前記請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ブロックコポリマーがメタクリレートポリマーである、前記請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ブロックコポリマーが直鎖状ジブロックコポリマーである、前記請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ブロックコポリマーが、制御ラジカル重合プロセスまたは他のリビング重合プロセスから得られる/得ることができる、前記請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記制御ラジカル重合プロセスまたは他のリビング重合プロセスが、RAFT(可逆的付加開裂移動)、ATRP(原子移動ラジカル重合)、窒素酸化物媒介性、または陰イオン性のうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御ラジカル重合プロセスがRAFTプロセスである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、該疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、該(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、潤滑粘度の油と該ブロックコポリマーとを含む潤滑組成物。
【請求項15】
ポリマーが、
(a)C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の少なくとも50重量%がC12〜15アルキル(メタ)アクリル単位であり、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位の50重量%までがC16〜20アルキル(メタ)アクリル単位であり、ただし、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位のアルキル基の炭素原子の平均合計数が少なくとも8個である、該C1〜30アルキル(メタ)アクリル単位を有する疎水性の第1のブロックと、
(b)非カルボニルヘテロ原子含有基をさらに有することで(メタ)アクリル単位に極性基を提供し、該疎水性の第1のブロックよりも高い親水性を示す、該(メタ)アクリル単位を有する第2のブロックと
を含む、潤滑剤における乳化剤および/または流動点降下剤としてのブロックコポリマーの使用。
【請求項16】
乳化剤および流動点降下剤としての、請求項15に記載のブロックコポリマーの使用。

【公表番号】特表2012−507613(P2012−507613A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534870(P2011−534870)
【出願日】平成21年11月3日(2009.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/063046
【国際公開番号】WO2010/053890
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】