説明

ブローバイガス用オイルセパレータ

【課題】優れたオイル分離性能が安定的に発揮され得るブローバイガス用オイルセパレータを提供する。
【解決手段】ブローバイガスが流通せしめられるガス流路42と、該ガス流路42の途中に設けられる分離手段44,46にて、ブローバイガス中から分離されるオイルが流通せしめられる底部26を備えたオイル流路54との共通流路部分56に、該共通流路部分56の一部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制して、該幅が規制された共通流路部分56の一部を狭窄部とする流路規制部58bを、該共通流路部分56の前記底部26から上方に向かって延びるように設けて、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガス用オイルセパレータに係り、特に、内燃機関の内部で発生するブローバイガスに含まれるオイルミストを分離するブローバイガス用オイルセパレータの新規な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
よく知られているように、内燃機関、例えば自動車のエンジン等では、その稼働時において、ピストンリングとシリンダ壁との隙間からクランクケース内に、未燃焼の炭化水素を多量に含むブローバイガスが、不可避的に漏出する。そのため、そのような自動車エンジンの多くのものにあっては、クランクケース内のブローバイガスが、吸気管路内の負圧を利用して、吸気管路内に強制的に環流され、更に、燃焼室内に戻されて、再燃焼せしめられるようになっている。
【0003】
ところで、ブローバイガス中には、エンジンオイル等の潤滑油がミスト状とされて飛散したオイルミストも含まれている。そのため、従来より、ブローバイガス中への混入によるオイル持去り量の低減や、吸気管路内のオイルによる汚染防止を図ること等を目的として、ブローバイガス中からオイルミストを分離するオイルセパレータが、シリンダヘッドカバーの内側や、クランクケースと吸気管路とを連結する連結流路の途中等に、各種の構造をもって設けられている。
【0004】
そのようなオイルセパレータとしては、例えば、ガス導入口とガス排出口を備え、ガス導入口からガス排出口に向かってブローバイガスを流通せしめるガス流路と、かかるガス流路の途中に設けられて、ガス流路内を流通するブローバイガス中からオイル(ミスト状のオイル)を分離する分離機構と、少なくとも一部が、ガス流路における分離機構よりもブローバイガス流通方向の下流側部分と共通とされ、分離機構にて分離されたオイル(分離され、凝縮して液滴となったオイル)を、下方に位置する底部に沿って流通せしめるオイル流路と、このオイル流路におけるオイル流通方向の下流側端部に設けられて、オイル流路内を流通するオイル(液滴状のオイル)を外部に排出するオイル出口とを有して構成されたオイルセパレータが、知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0005】
このような構造を有するオイルセパレータにおいては、分離機構にて、ブローバイガス中から分離されて、液滴となったオイルが、ガス流路とオイル流路との共通部分からなる共通流路部分内に留まることなく、共通流路部分の底部上を、ブローバイガスの流れによりオイル出口側に向かって押し流されて、オイル出口から外部に確実に排出されるようになっている。
【0006】
ところが、かくの如き従来のオイルセパレータ内でのオイルの流動状態について、本発明者等が調べたところ、ガス流路内を流通するブローバイガスの流量が多くなって、流速が増すと、分離機構にて分離されて、液滴となったオイルが、共通流路部分内を、流速が大きなブローバイガスにて吹き飛ばされて、再飛散せしめられ、或いは巻き込まれるように流動せしめられて、かかるオイルの一部が、オイル出口から排出されずに、ブローバイガスにて持ち去られるようにして、ブローバイガスと共にガス排出口から排出されるようになる場合があることが判明した。即ち、従来のオイルセパレータでは、ブローバイガスの導入量の違いによって、オイルの分離性能にバラツキが生ずる恐れがあることが判ったのである。
【0007】
【特許文献1】特開2000−45750号公報
【特許文献2】特開2004−204811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、ガス導入口からのブローバイガスの導入量に拘わらず、ブローバイガスから分離されたオイルの全量が、オイル出口を通じて外部に排出され、以て優れたオイル分離性能が安定的に発揮され得るように改良されたブローバイガス用オイルセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、内燃機関の内部で発生する、オイルを含んだブローバイガスのガス導入口及びガス排出口を備え、該ガス導入口から該ガス排出口に向かって該ブローバイガスを流通せしめるガス流路と、該ガス流路の途中に設けられて、該ガス流路内を流通する該ブローバイガス中から前記オイルを分離する分離手段と、少なくとも一部が、該ガス流路における該分離手段よりも該ブローバイガスの流通方向の下流側部分と共通とされ、該分離手段にて分離されたオイルを、下方に位置する底部に沿って流通せしめるオイル流路と、該オイル流路における該オイルの流通方向の下流側端部に設けられて、該オイル流路内を流通する該オイルを外部に排出するオイル出口とを有して構成されたオイルセパレータにおいて、前記オイル流路と前記ガス流路との共通流路部分に、該共通流路部分の一部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制して、該幅が規制された共通流路部分の一部を狭窄部とする流路規制部を、該共通流路部分の前記底部から上方に向かって延びるように設けたことを特徴とするブローバイガス用オイルセパレータにある。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータにあっては、分離手段にてオイルが分離されたブローバイガスが共通流路部分の狭窄部を通過する際に、その流れが、流路規制部にて、底部に近づく程、より大きく妨げられるようになる。そのため、狭窄部を通過するブローバイガスの流量が、共通流路部分の底部に近い部分程、より少なくされ、それによって、狭窄部を通過した後におけるブローバイガスの流速が、共通流路部分の上部側よりも底部側の方が遅くされる。
【0011】
それ故、このようなブローバイガス用オイルセパレータでは、多くのブローバイガスがガス流路内に導入されて、ガス流路内を速い速度で流通せしめられる際にも、共通流路部分の底部側でのブローバイガスの流速が有利に小さく抑えられ得るようになり、その結果、共通流路部分の底部を流れるオイルが、ブローバイガスにて吹き飛ばされて、再飛散したり、或いはブローバイガスに巻き込まれたりして、オイル出口から排出されずに、ブローバイガスと共にガス排出口から排出されるようになってしまうことが可及的に防止され得る。
【0012】
従って、かくの如き本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータにあっては、ガス導入口からのブローバイガスの導入量に拘わらず、ブローバイガス中から分離されたオイルの全量が、オイル出口から有利に排出され得るのであり、その結果として、優れたオイル分離性能が、高い信頼性をもって安定的に発揮され得ることとなるのである。
【発明の態様】
【0013】
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
【0014】
(1) 内燃機関の内部で発生する、オイルを含んだブローバイガスのガス導入口及びガス排出口を備え、該ガス導入口から該ガス排出口に向かって該ブローバイガスを流通せしめるガス流路と、該ガス流路の途中に設けられて、該ガス流路内を流通する該ブローバイガス中から前記オイルを分離する分離手段と、少なくとも一部が、該ガス流路における該分離手段よりも該ブローバイガスの流通方向の下流側部分と共通とされ、該分離手段にて分離されたオイルを、下方に位置する底部に沿って流通せしめるオイル流路と、該オイル流路における該オイルの流通方向の下流側端部に設けられて、該オイル流路内を流通する該オイルを外部に排出するオイル出口とを有して構成されたオイルセパレータにおいて、前記オイル流路と前記ガス流路との共通流路部分に、該共通流路部分の一部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制して、該幅が規制された共通流路部分の一部を狭窄部とする流路規制部を、該共通流路部分の前記底部から上方に向かって延びるように設けたことを特徴とするブローバイガス用オイルセパレータ。
【0015】
(2) 上記の態様(1)において、前記オイル出口と前記ガス排出口とが、前記共通流路部分の幅方向において互いに異なる位置にそれぞれ設けられると共に、該共通流路部分の前記狭窄部における最小幅となる部分が、該共通流路部分の幅方向における該オイル出口の配設側に位置するように構成されていること。この本態様によれば、狭窄部における最小幅となる部分を通過したオイルが、狭窄部よりも下流側の底部上を、共通流路部分の幅方向に離間したガス排出口とオイル出口のうち、オイル出口に近接する側において流動せしめられるようになり、それによって、ブローバイガスによる持ち去りの防止作用と相俟って、かかるオイルのガス排出口からの排出が、より効果的に防止され得る。そして、その結果、優れたオイル分離性能が、更に一層安定的に発揮され得ることとなる。
【0016】
(3) 上記せる態様(2)において、前記オイル流路が、前記共通流路部分における前記狭窄部の最小幅部分の底部と連続する底部を有して、該共通流路部分よりも前記オイルの流通方向の下流側に延びるオイル流路下流側部分を含んで構成される一方、前記ガス流路が、該共通流路部分よりも前記ブローバイガスの流通方向の下流側において、該オイル流路下流側部分の延出方向とは異なる方向に延びるガス流路下流側部分を含んで構成されていること。このような本態様によれば、狭窄部における最小幅となる部分を通過したオイルが、オイル流路下流側部分内にスムーズに導かれて、かかるオイル流路下流側部分内を流動せしめられるようになり、それによって、オイル出口から有利に排出される。また、ガス流路下流側部分が、オイル流路下流側部分とは異なる方向に延出せしめられていることで、オイル出口が、ガス排出口に対して有利に離間位置せしめられ、これによっても、ガス排出口からのオイルの排出が効果的に防止され得る。
【0017】
(4) 上記せる態様(3)において、前記ガス流路下流側部分が、前記オイル流路下流側部分の延出方向とは相反する方向に延出せしめられていること。この本態様によれば、オイル出口が、ガス排出口に対して、更に十分に離間位置せしめられ、それによって、ガス排出口からのオイルの排出が、更に効果的に防止され得る。
【0018】
(5) 上記せる態様(1)乃至態様(4)のうちの何れか一つにおいて、前記流路規制部が、前記共通流路部分の途中に、厚さ方向の一方の面において、該共通流路部分内での前記ブローバイガスの流れを部分的に遮るように位置せしめられた状態で、該共通流路部分の前記底部から上方に向かって一体的に延びるように立設された板状リブからなり、且つ該板状リブが、下方に向かうに従って幅が漸増して、前記共通流路部分の狭窄部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制する漸増部を有して構成されていること。かかる本態様によれば、共通流路部分のうちで、流路規制部の配設部位、つまり狭窄部が占める部分の大きさが可及的に小さくされ、それによって、それら流路規制部や狭窄部の配設乃至は設置に起因した共通流路部分の長さの増大、ひいてはオイルセパレータ全体の無用な大型化が、有利に回避され得る。
【0019】
(6) 上記の態様(5)において、前記板状リブの上側部位が、前記漸増部にて構成される一方、その下側部位が、該漸増部の最大幅よりも大きく且つ前記共通流路部分の幅よりも小さな広幅部にて構成されていること。この本態様にあっては、漸増部における幅の漸増量を特に変更せずとも、狭窄部の最小幅となる部分の幅を、より小さく為すことが出来る。従って、例えば、上記せる態様(2)や態様(3)と組み合わされた態様(5)において採用される場合に、特に、狭窄部における最小幅となる部分を通過したオイルが、共通流路部分における狭窄部よりも下流側の底部上を、ガス排出口から、共通流路部分の幅方向に、より離間する側において流動せしめられるようになる。これによって、かかるオイルのガス排出口からの排出が、更に効果的に防止され得て、優れたオイル分離性能が、より一段と安定的に発揮され得ることとなる。
【0020】
(7) 上記の態様(1)乃至態様(6)のうちの何れか一つにおいて、前記ガス流路が、Uターンして延びるように延出せしめられていること。かかる本態様によれば、オイルセパレータ全体の長さを増大させることなく、ガス流路の長さを可及的に長く為すことが可能となる。
【0021】
(8) 上記せる態様(1)乃至態様(7)のうちの何れか一つにおいて、前記ガス流路における前記流路規制部よりも前記ブローバイガスの流通方向の下流側に、該ガス流路の断面積が大きくされた膨大部が設けられていること。この本態様によれば、膨大部において、ブローバイガスの流速を急激に減少させることが出来、これによっても、ブローバイガスの持ち去りによるオイルのガス排出口からの排出が、有利に防止され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0023】
先ず、図1及び図2には、本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータの一実施形態として、自動車エンジンのシリンダヘッドカバーに装着されて構成されるオイルセパレータが、その縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図から明らかなように、本実施形態のオイルセパレータ10は、上側開口部を備えたケーシング12が、シリンダヘッドカバー14にて覆蓋されて、構成されている。
【0024】
より具体的には、セパレータ本体としてのケーシング12を覆蓋するシリンダヘッドカバー14は、例えば、ポリアミド樹脂をマトリックスとするガラス繊維強化樹脂材料等を用いた射出成形品からなっている。そして、略長手矩形平板状の天板部16と、かかる天板部16の下面(裏面)の外周縁部に全周に亘って一体形成された、長手矩形の枠体形態を呈する脚部18とを有する、全体として、長手矩形の筐体形状をもって、構成されている。
【0025】
また、かかるシリンダヘッドカバー14の天板部16には、長さ方向(図2中、左右方向)の一端部における幅方向(図2中、上下方向)中央から一方側に偏寄した部位に、シリンダヘッドカバー14にて覆蓋されたケーシング12内に、後述する如くして導入されるブローバイガスを外部に排出するためのガス排出口20が、円形形状をもって、天板部16を貫通して設けられている。更に、このガス排出口20の外側開口部の周縁部位には、比較的に高さの低い円筒状のカラー部22が、一体形成されている。
【0026】
そして、図1及び図2に明示されてはいないものの、このシリンダヘッドカバー14は、従来と同様に、脚部18において、例えばボルト固定等により、シリンダヘッドに取り付けられるようになっている。また、かかるシリンダヘッドへの取付状態下で、カラー部22に対して、吸気管路から延びる連結配管が接続されることにより、ガス排出口20が、連結配管を介して吸気管路に連通状態で、連結されるようになっている。なお、図2中、24は、プラグチューブを挿通させるための貫通孔である。
【0027】
一方、ケーシング12は、シリンダヘッドカバー14の天板部16よりも小さな長手矩形の平板形態を呈する底部26と、かかる底部26の上面の外周縁部に全周に亘って一体形成された、長手矩形の枠体形態を呈する側壁部28とを有し、全体として、シリンダヘッドカバー14よりも小さな長手矩形の筐体にて、構成されている。なお、このケーシング12も、シリンダヘッドカバー14の形成材料と同じガラス繊維強化樹脂材料等を用いた射出成形品からなっている。
【0028】
また、このようなケーシング12における側壁部28の四隅のそれぞれの上端部には、取付フランジ30が、それぞれ一つずつ一体形成されている。そして、ケーシング12が、長さ方向の一端部において、シリンダヘッドカバー14の天板部16に設けられた前記ガス排出口20に対応せしめられ、且つ上側開口部が、天板部16にて覆蓋されるように、側壁部28の上端面を天板部16の下面に突き合わせて、位置せしめられた状態で、天板部16に挿通された4個の固定ボルト32が、ケーシング12の各取付フランジ30に挿通されて、各固定ボルト32の脚部の先端部にナット34が螺合されている。これにより、ケーシング12が、シリンダヘッドカバー14の天板部16の下面に固定されている。また、そのような固定状態下において、側壁部28の上端面と天板部16の下面との間にシールゴム36が介在せしめられていることで、それら側壁部28の上端面と天板部16の下面との間が、気密にシールされるようになっている。
【0029】
さらに、かかるケーシング12の底部26には、その長さ方向(図1中、左右方向)一方側の端部の幅方向(図1中、紙面に垂直な方向)中央部に、ガス導入口38が、シリンダヘッドカバー14の天板部16に設けられたガス排出口20と略同一の径を有する円形形状をもって、底部26を貫通して設けられている。また、底部26におけるガス導入口38の外側開口周縁部位には、比較的に高さの低い円筒状のカラー部40が、一体形成されている。
【0030】
かくして、本実施形態のオイルセパレータ10においては、シリンダヘッドカバー14が、図示しないシリンダヘッドに取り付けられると共に、シリンダヘッドカバー14の天板部16に設けられたガス排出口20が、不図示の吸気管路に連通せしめられることにより、吸気管路内の負圧に基づいて、クランクケース(図示せず)内のブローバイガスが、ガス導入口38を通じて、オイルセパレータ10(ケーシング12)の内部に導入されて、ガス排出口20に向かって流通せしめられ、そして、かかるガス排出口20から排出されて、吸気管路内に環流されるようになっている。つまり、ここでは、ケーシング12の内部空間全体が、ブローバイガスを流通せしめるガス流路42とされている。
【0031】
また、ケーシング12の底部26における長さ方向中央よりも、ガス導入口38の形成側に所定寸法偏寄した部位、換言すれば、ガス流路42におけるブローバイガスの流通方向上流側の部位には、整流板44と衝突板46とが、厚さ方向の一方の面において、ブローバイガスの流れを遮るように位置せしめられた状態で、前者をガス導入口38側にして、所定距離を隔てて互いに対向せしめられている。
【0032】
すなわち、整流板44は、ケーシング12の底部26の幅と同一の幅と、側壁部28の高さと同一の高さとを有する矩形の平板からなり、下端部と両サイド部において、底部26と側壁部28とに対してそれぞれ一体化されている。また、その幅方向と高さ方向のそれぞれの中間部には、小径の通孔48が、複数(ここでは4個)形成されている。更に、かかる整流板44の上端面とシリンダヘッドカバー14の天板部16の下面との間には、シールゴム49が介在せしめられている。これにより、ケーシング12内のガス流路42が、かかる整流板44を境界にして、ブローバイガス流通方向の上流側部分と下流側部分とに二つに仕切られていると共に、それら上流側部分と下流側部分とが、整流板44に設けられた複数の通孔48のみにて連通せしめられている。
【0033】
一方、そのような整流板44に対して、ガス排出口20側において対向位置せしめられた衝突板46は、ケーシング12の底部26の幅よりも所定寸法小さな幅と、側壁部28の高さよりも所定寸法低い高さとを有する矩形の平板からなっている。そして、シリンダヘッドカバー14の天板部16の下面や側壁部28の内面との間に、コ字状の間隙が形成されると共に、整流板44に設けられた複数の通孔48が、ガス排出口20側から掩蔽されるように位置せしめられた状態で、底部26上に一体的に立設されている。
【0034】
さらに、ケーシング12の底部26における長さ方向中央よりも、ガス排出口20側に所定寸法偏寄した部位、換言すれば、ガス流路42におけるブローバイガスの流通方向下流側で且つガス排出口20よりも上流側の部位には、オイル出口50が、形成されている。このオイル出口50は、ガス排出口20やガス導入口38よりも小径の円形形状をもって、底部26を貫通して設けられている。また、底部26におけるオイル出口50の外側開口周縁部位には、比較的に高さの低い円筒状のカラー部52が、一体形成されている。
【0035】
かくして、本実施形態のオイルセパレータ10にあっては、ガス導入口38からケーシング12内(ガス流路42内)に導入されたブローバイガスが、ガス流路42の整流板44よりも上流側部分から、整流板44の複数の通孔48のみを通じて、整流板44よりも下流側部分に進入し、かかる下流側部分内をガス排出口20に向かって流通せしめられるようになっている。また、このようなガス流路42内でのブローバイガスの流通状態下において、ブローバイガスが、整流板44における小径の通孔48を通過せしめられることにより流速が増大せしめられた上で、衝突板46に衝突せしめられて、そのときに、ブローバイガス中のオイルミストが、衝突板46の整流板44との対向面に付着せしめられ、更に、かかる対向面に付着されたオイルミストが凝集されて、液滴とされるようになっている。即ち、ここでは、所謂慣性衝突方式によって、ブローバイガス中からオイルミストが分離されて、液状のオイルが生成されるようになっている。そして、かかる液状のオイルが、ブローバイガスの流れにより、ケーシング12の底部26上をオイル出口50側に押し流されて、オイル出口50から、再びクランクケース内に戻されるようになっているのである。
【0036】
このことから明らかなように、ここでは、整流板44と衝突板46とにて、オイルを分離する分離手段が、構成されている。また、ケーシング12の内部空間における衝突板46の配設部位からオイル出口50の形成部位までの間の部分が、液状のオイルが流通せしめられるオイル流路54とされ、また、このオイル流路54の全体が、ガス流路42の下流側部分と共通とされた共通流路部分56とされている。
【0037】
而して、図1及び図3から明らかなように、かくの如き本実施形態に係るオイルセパレータ10にあっては、特に、ケーシング12の底部26における長さ方向の略中央部位、換言すれば、共通流路部分56の中間部位に、一対の板状リブ58a,58bが、共通流路部分56の幅方向において左右に並び、且つ前記衝突板46と対向位置せしめられた状態で、それぞれ一体形成されている。
【0038】
より詳細には、この一対の板状リブ58a,58bは、何れも、ケーシング12の底部26や側壁部28と同程度の厚さを備えた平板からなっている。また、それら各板状リブ58は、底部26の幅の半分よりも所定寸法小さな長さを有する底辺部と、側壁部28の高さと略同一の高さを有する対辺部(底辺部と直角となる辺部)とを備えた直角三角形状の全体形状を有している。そして、そのような板状リブ58a,58bが、共通流路部分56の中間部位における幅方向の中央から右側と左側にそれぞれ偏寄した位置において、底辺部をケーシング12の底部26に一体化させると共に、対辺部をケーシング12の側壁部28に一体化させ、更に、斜辺部を共通流路部分56の幅方向中央よりも右側や左側に偏寄して位置せしめた状態で、底部26から上方に向かって延びるように立設されている。
【0039】
換言すれば、共通流路部分56の中間部位において右側に偏寄して位置せしめられた板状リブ58aは、下方に向かうに従って徐々に幅が左側に向かって増大せしめられるような形態を有し、衝突板46との対向面において、共通流路部分56の中間部位の右側半分でのブローバイガスの流れを部分的に遮るように位置せしめられている。一方、共通流路部分56の中間部位において左側に偏寄して位置せしめられた板状リブ58bは、下方に向かうに従って徐々に幅が右側に向かって増大せしめられるような形態を有し、衝突板46との対向面において、共通流路部分56の中間部位の左側半分でのブローバイガスの流れを部分的に遮るように位置せしめられている。
【0040】
かくして、本実施形態のオイルセパレータ10にあっては、共通流路部分56の中間部位の幅が、一対の板状リブ58a,58bにて、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制されており、それによって、かかる共通流路部分56の中間部位が、下底が上底よりも小さくされた台形状の縦断面形状を有する狭窄部60とされているのである。このことから明らかなように、ここでは、一対の板状リブ58a,58bにて、流路規制部が構成されている。また、各板状リブ58の全体にて、漸増部が構成されている。
【0041】
それ故、かくの如き構造を有するオイルセパレータ10では、整流板44と衝突板46とにてオイルが分離されたブローバイガスが共通流路部分56の狭窄部60を通過する際に、底部26に近い部分程、かかるブローバイガスの流れが、一対の板状リブ58a,58bにて、より大きく妨げられて、狭窄部60を通過するブローバイガスの流量が、底部26に近い部分程、より少なくされるようになる。
【0042】
また、それによって、例えば、ガス導入口38から大量のブローバイガスが短時間に導入されて、ガス流路42内でのブローバイガスの流速が速くされていても、オイルが分離されたブローバイガスが狭窄部60を通過せしめられることで、共通流路部分56の狭窄部60よりも下流側部分を流通せしめられるブローバイガスの流速が、底部26側で有利に小さく抑えられ得るようになる。そして、その結果、オイル流路54(共通流路部分56)の底部を流れる液状オイルが、ブローバイガスにて吹き飛ばされて、再飛散したり、或いはブローバイガスに巻き込まれたりして、オイル出口50から排出されずに、ブローバイガスと共にガス排出口20から排出されて、吸気管路内に混入せしめられるようなことが可及的に防止されて、かかる液状オイルの略全量が、オイル出口50から確実に排出され得ることとなる。
【0043】
従って、かくの如き本実施形態のオイルセパレータ10にあっては、ガス導入口38からのブローバイガスの導入量に左右されることなく、優れたオイル分離性能が、高い信頼性をもって安定的に発揮され得ることとなるのである。
【0044】
また、かかるオイルセパレータ10においては、ガス排出口20が、ケーシング12を覆蓋するシリンダヘッドカバー14の天板部16に設けられて、オイル出口50が形成される底部26側とは反対の上部に位置せしめられており、これによっても、底部26上を流動せしめられる液状オイルのガス排出口20を通じての排出が、有利に防止され得る。
【0045】
さらに、本実施形態では、ガス排出口20が、オイル出口50よりもブローバイガス流通方向の下流側に設けられているため、ブローバイガス中から分離された液状オイルが、ケーシング12の底部26上を、ブローバイガスの流れにて確実に押し流されつつ、オイル出口50まで確実に到達せしめられ得るといった利点がある。
【0046】
更にまた、本実施形態のオイルセパレータ10にあっては、共通流路部分56の中間部位に、一対の板状リブ58a,58bが設けられて、狭窄部60が形成されているところから、ブローバイガス流通方向における狭窄部60の長さが効果的に短く為され得る。それによって、狭窄部60が無用に長くなり、その分だけ共通流路部分56が長くなって、オイルセパレータ10全体が大型化するようなことが、有利に回避され得る。
【0047】
次に、図4及び図5には、上記せる実施形態とは、一部の構造が異なる別の実施形態が、示されている。なお、以下に詳述する実施形態は、前記第一の実施形態と、ケーシング12の構造が異なるものである。それ故、図4及び図5には、本実施形態に係るオイルセパレータのうち、ケーシング12の構造を明示する部分のみが示されていることが、理解されるべきである。また、かかる図4及び図5に部分的に示される実施形態、並びに後述する図6に示される実施形態においては、図1乃至図3に示される実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1乃至図3と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明は省略した。
【0048】
すなわち、本実施形態のオイルセパレータは、全体として、略長手矩形形状を呈する底部26と、かかる底部26の上面の外周縁部に全周に亘って一体形成された、長手矩形の枠体形態を呈する側壁部28とを備えたケーシング12を有して、構成されている。なお、このケーシング12は、シリンダヘッドカバー14(図4に二点鎖線で示す)の形成材料と同じガラス繊維強化樹脂材料等を用いた射出成形品からなっている。
【0049】
そして、かかるケーシング12にあっては、底部26における長さ方向(図4中、左右方向)一方側(図4中、左側)の端部において、幅方向(図4中、上下方向)の中央より一方側(図4中、上側)に偏寄した部位に、ガス導入口38が、大径の円形貫通孔形態をもって設けられている。一方、図4に二点鎖線で示される如く、シリンダヘッドカバー14の天板部16には、ガス導入口38と同じ円形の貫通孔形態を有するガス排出口20(図4に二点鎖線で示す)が、天板部16に対するケーシング12の取付状態下で、ケーシング12の幅方向においてガス導入口38と隣り合って位置するように形成されている。
【0050】
さらに、ケーシング12の底部26における幅方向の略中央部には、側壁部28と同一の高さ及び厚さを有して、ケーシング12の内部空間を幅方向に二つに仕切る仕切リブ62が、一体的に立設されている。また、この仕切リブ62は、底部26の長さ方向におけるガス導入口38側端部から中央部に至るまでの長さをもって、連続的に延出せしめられている。そうして、ガス導入口38が設けられた底部26部分と、シリンダヘッドカバー14の天板部16に形成されたガス排出口20と対応する底部26部分とが、仕切リブ62を間に挟んだ幅方向の両側に位置せしめられるようになっている。
【0051】
かくして、ケーシング12の内部空間のうち、仕切リブ62と、ガス導入口38を間に挟んで仕切リブ62と対向する側壁部28部位との間の部分にて、ガス流路上流側部分64が構成されており、また、仕切リブ62が形成されていない、ケーシング12の長さ方向他方側部分にて、ガス流路中流部分66が構成され、更に、仕切リブ62と、ガス排出口20との対応部位を間に挟んで仕切リブ62と対向する側壁部28部位との間の部分にて、ガス流路下流側部分68が構成されている。
【0052】
これによって、ガス導入口38から導入されたブローバイガスが、ガス流路上流側部分64からガス流路中流部分66に進入し、そこで、ガス流路中流部分66を包囲して延びる側壁部28部位に衝突することで流通方向が反転せしめられて、ガス流路下流側部分68に進入せしめられるようになっている。そして、ガス流路下流側部分68に進入せしめられたブローバイガスは、ガス流路下流側部分68を、ガス流路上流側部分64での流通方向とは相反する方向において流通せしめられて、かかるガス流路下流側部分68の端部に位置するように、シリンダヘッドカバー14の天板部16に設けられたガス排出口20を通じて排出され、更に、図示しない吸気管路内に環流せしめられるようになっている。つまり、本実施形態では、ガス流路42が、ケーシング12の内部空間の略全体にて構成されて、Uターンして延びるように形成されているのである。
【0053】
なお、ここでは、ガス流路下流側部分68の途中に、その底部26部位が側方に突出せしめられることにより、ガス流路下流側部分68の断面積が部分的に増大せしめられた膨大部69が、設けられている。これにより、ガス流路下流側部分68内を流通せしめられるブローバイガスの流速が、かかる膨大部69において減少せしめられるようになっている。
【0054】
一方、そのようなガス流路42において、ガス流路上流側部分64のガス流路中流部分66との近傍部位には、整流板44と衝突板46とが、前記第一の実施形態と同様な構造をもって、底部26上に、それぞれ立設されている。これにより、ガス導入口38からガス流路42内に導入されたブローバイガス中のオイルミストが、それら整流板44と衝突板46とによる慣性衝突作用に基づいて、ブローバイガス中から分離されて、液化されるようになっている。そして、そのような液状オイルが、ガス流路中流部分66の底部26部位上を、ブローバイガス流れにより、その流通方向に押し流されるようになっている。
【0055】
また、ここでは、ガス流路中流部分66の流路上流側部分64とは遠位の部分に、ケーシング12の長さ方向に延びる狭幅の流路が、ケーシング12の幅方向におけるガス導入口38側とは反対側に偏寄して、設けられている。更に、この狭幅流路は、その底部26部位が、ガス流路中流部分66の底部26部位と連続せしめられており、そして、かかる底部26部位におけるガス流路中流部分66側とは反対側の端部に、オイル出口50が、小径の円形貫通孔形態をもって形成されている。
【0056】
かくして、ガス流路中流部分66と、そこから延出する狭幅の流路とにて、オイル流路54が構成されて、ガス流路中流部分66の底部26部位上を流れる液状オイルが、狭幅流路を経て、オイル出口50から図示しないクランクケース内に戻されるようになっている。つまり、ガス流路中流部分66と共通するオイル流路54の上流側部分にて、共通流路部分56が構成されていると共に、ガス流路中流部分66から、ガス流路下流側部分68の側とは反対側に延出する狭幅流路にて、オイル流路下流側部分70が構成されている。また、これにより、オイル流路下流側部分70が、ガス流路下流側部分68の延出方向とは相反する方向に延出せしめられていると共に、ガス排出口20とオイル出口50とが、ケーシング12の長さ方向の両側端部、換言すれば、共通流路部分56の幅方向の両端部側に、それぞれ位置せしめられるようになっている。
【0057】
そして、かかる本実施形態のオイルセパレータにおいては、共通流路部分56におけるブローバイガスやオイルの流通方向の中間部分に、流路規制部としての板状リブ58が、仕切リブ62と連続してケーシング12の長さ方向に延びるように一体形成されている。換言すれば、板状リブ58は、共通流路部分56内の中間部において、ガス流路上流側部分64内やガス流路下流側部分68内でのブローバイガス流通方向と直角な方向に流通するブローバイガスの流れを部分的に遮るように、共通流路部分56の幅方向(図4中、左右方向)に延出し、且つ底部26から上方に向かって一体的に延びるように、立設されている。そして、そのような共通流路部分56内における板状リブ58の配設部位が、狭窄部60とされている。
【0058】
また、ここでは、板状リブ58における幅方向(図4中、左右方向)の一方側(仕切リブ62と連続する側で、図4中、左側)の略半分の部分が、幅方向他方側(図4中、右側)に向かうに従って徐々に高さが低くなる台形形状とされる一方、残りの略半分の部分が、同一高さをもって延びる幅広の矩形形状とされている。つまり、板状リブ58のうち、ガス流路上流側部分64に近位の略半分の部分が、下方に向かうに従って幅が漸増する漸増部72とされる一方、オイル流路下流側部分70に近位の残り略半分の部分が、漸増部72の下端の最大幅部分よりも大きく且つ共通流路部分56の幅よりも小さな広幅部74とされている。
【0059】
これによって、共通流路部分56の狭窄部60の幅が、ガス流路上流側部分64に近位の部分において、下方に向かうに従って徐々に小さくされ、且つオイル流路下流側部分70に近位の部分において最小幅となるように、板状リブ58により規制されている。そして、かかる狭窄部60の最小幅部分76が、共通流路部分56の幅方向におけるオイル出口50の配設側に位置せしめられるようになっている。
【0060】
また、ここでは、共通流路部分56における板状リブ58よりもブローバイガスやオイルの流通方向下流側の底部26部位の上面(内面)が、オイル流路下流側部分70に向かって下傾する傾斜面78aとされている。以て、狭窄部60の最小幅部分76を通じて、共通流路部分56の上流側から下流側に向かって底部26上を流動せしめられる液状オイルが、傾斜面78aを伝って、オイル流路下流側部分70にスムーズに流入せしめられるようになっている。そして、このオイル流路下流側部分70の底部26部位も、オイル出口50に向かって下傾する傾斜面78bとされていることで、オイル流路下流側部分70に流入せしめられた液状オイルが、オイル出口50に向かって更にスムーズに流動せしめられるようになっているのである。
【0061】
このように、本実施形態のオイルセパレータにおいては、共通流路部分56の狭窄部60の幅が、板状リブ58の漸増部72により、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制されているため、整流板44と衝突板46とにてオイルが分離されたブローバイガスが狭窄部60を通過する際に、底部26に近い部分程、ブローバイガスの流れが、板状リブ58にて、より大きく妨げられて、狭窄部60を通過するブローバイガスの流量が、底部26に近い部分程、より少なくされるようにされる。そして、その結果として、ブローバイガス中から分離された液状オイルのブローバイガスによる持ち去りが、効果的に阻止され得る。
【0062】
従って、かかる本実施形態にあっても、ガス導入口38からのブローバイガスの導入量に左右されることなく、優れたオイル分離性能が、高い信頼性をもって安定的に発揮され得るといった前記第一の実施形態において奏され得る優れた作用・効果が、効果的に享受され得るのである。
【0063】
また、本実施形態のオイルセパレータにおいては、狭窄部60に立設された板状リブ58に対して、漸増部72の最大幅よりも大きな幅を有する広幅部74が設けられて、この広幅部74と狭窄部60の最小幅部分76とが、狭窄部60内で、その幅方向に隣り合って位置せしめられているため、共通流路部分56の底部26上を流動せしめられる液状オイルが、広幅部74を伝って、狭窄部60の最小幅部分76に向かって流動せしめられるようになる。そして、それにより、かかる液状オイルが、狭窄部60の最小幅部分76から、その底部26部位に連続する底部26部位を有するオイル流路下流側部分70を経て、オイル出口50から確実に排出され得ることとなる。
【0064】
また、かかるオイルセパレータでは、ガス流路下流側部分68とオイル流路下流側部分70とが、共通流路部分56から、ケーシング12の長さ方向の相反する方向に延出せしめられていると共に、狭窄部60の最小幅部分76が、共通流路部分56の幅方向におけるオイル出口50の側に設けられていることで、かかる最小幅部分76が、ガス排出口20よりもオイル出口50に、十分に近接位置せしめられている。また、オイル出口50を端部に有するオイル流路下流側部分70の底部26部位と最小幅部分76の底部26部位とが連続せしめられている。これらによっても、ブローバイガス中から分離された液状オイルの略全量が、オイル出口50を通じて、より確実に排出され得るのである。
【0065】
しかも、本実施形態においては、共通流路部分56における板状リブ58よりもブローバイガスやオイルの流通方向下流側の底部26部位の上面が、オイル流路下流側部分70に向かって下傾する傾斜面78aとされているところから、ブローバイガスの流れにより、狭窄部60の最小幅部分76からオイル流路下流側部分70への直接の流れ込みが阻止された液状オイルも、傾斜面78aによって、ガス流路下流側部分68への流入が有利に阻まれて、オイル流路下流側部分70を経て、オイル出口50から排出させることが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態のオイルセパレータにあっては、ガス流路42がUターンして延びるように形成されているため、限られた全長を有するケーシング12に対して、ガス流路42の長さが可及的に長くされ得る。
【0067】
更にまた、かかるオイルセパレータにおいては、ガス流路下流側部分68の途中に設けられた膨大部69において、ブローバイガスの流速が減少せしめられるようになっているため、ブローバイガスに吹き飛ばされたり、巻き込まれたりして、ガス流路下流側部分68に侵入せしめられた液状オイルが、かかる膨大部69で、ブローバイガスから放出され、以て、そのような液状オイルのガス排出口20からの排出が、効果的に抑制され得ることとなる。
【0068】
なお、ここで、かくの如き実施形態に係るオイルセパレータが、上記のような優れた特徴を発揮するものであることを確認するために、本発明者等によって実施された試験について、詳述する。
【0069】
すなわち、先ず、図4及び図5に示される如き構造のケーシングを作製し、これを、それとは別個に作製したシリンダヘッドカバーに取り付けることで、オイルセパレータを製造して、準備した。そして、このオイルセパレータを供試品1とした。なお、この供試品1のオイルセパレータを構成するケーシング及びシリンダヘッドカバーは、ポリアミド樹脂をマトリックスとするガラス繊維強化樹脂材料を用いた射出成形により、それぞれ作製した。また、共通流路部分の底部上に立設される板状リブは、その厚さが2.0mmで、最大高さが20mm、最小高さが3mmとなるようにした。更に、かかる板状リブの漸増部の幅を40mmとし、また漸増部の上面の傾斜角度は、仕切リブの上端面から30°の角度で下傾する角度とした。
【0070】
また比較のために、板状リブが設けられていない以外、図4及び図5に示される構造と同一の構造を有するケーシングを作製した。また、このケーシングを、供試品1のオイルセパレータに用いられるシリンダヘッドカバーと同一のシリンダヘッドカバーに取り付けて、板状リブが設けられていない、従来と同様な構造を有するオイルセパレータを製造して、準備し、これを供試品2とした。なお、この供試品2のオイルセパレータを構成するケーシング及びシリンダヘッドカバーは、ポリアミド樹脂をマトリックスとするガラス繊維強化樹脂材料を用いた射出成形により、それぞれ作製した。また、ガス流路上流側部分とガス流路下流側部分とを仕切る仕切リブの厚さを2.0mmとし、更に、その高さを20mmとした。
【0071】
次に、かくして準備された2種類のオイルセパレータ(供試品1及び2)のうち供試品1のオイルセパレータの内部に、ブローバイガスを、ガス導入口から70L/分の流量で導入せしめた。そして、その状態下において、板状リブの漸増部における上部部位と中間部位と下部部位のそれぞれの部位の近傍を流れるブローバイガスの流速を、公知の手法により、各々測定した。その結果を、下記表1に示した。なお、ブローバイガスの流速を測定する板状リブの漸増部における上部部位は、シリンダヘッドカバーの天板部と接触する漸増部の上端位置とし、また、下部部位は、ケーシングの底部と接触する漸増部の下端位置とし、更に、中間部位は、漸増部の高さ方向の中央位置とした。
【0072】
また、それとは別に、供試品2のオイルセパレータの内部にも、ブローバイガスを、ガス導入口から70L/分の流量で導入せしめた。そして、その状態下において、仕切リブのガス導入口側とは反対側の端部における上部部位と中間部位と下部部位のそれぞれの部位の近傍を流れるブローバイガスの流速を、公知の手法により、各々測定した。その結果を、下記表1に併せて、示した。なお、ブローバイガスの流速が測定される仕切リブの上部部位と中間部位と下部部位のそれぞれの位置は、供試品1のオイルセパレータにおける板状リブの上記せる上部部位と中間部位と下部部位の位置と、各々同一とした。
【0073】
【表1】

【0074】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う構造を有する供試品1のオイルセパレータにあっては、板状リブの近傍でのブローバイガスの流速が、板状リブの下部部位に向かう程、段階的に小さくなっており、板状リブの下部部位の近傍でのブローバイガスの流速は、その上部部位の近傍でのブローバイガスの流速に対して、1/2を下回る値となっている。これに対して、従来構造を有する供試品2のオイルセパレータにおいては、仕切リブの近傍でのブローバイガスの流速が、仕切リブの中間部位の近傍で最も大きく、次いで、仕切リブの下部部位の近傍で、仕切リブの上部部位の近傍で最も小さくなっている。このことから、本発明に従って、共通流路部分の幅が下方に向かうに従って徐々に小さくなるように、共通流路部分の幅を規制する流路規制部を設けることにより、共通流路部分の底部側でのブローバイガスの流速を効果的に減少させる得ることが、明確に認識され得るのである。
【0075】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0076】
例えば、前記二つの実施形態では、分離手段が、慣性衝突方式によりブローバイガス中からオイルを分離する整流板44と衝突板46とにて構成されていたが、これに代えて、或いはそれに加えて、実開昭63−105712号公報等に記載されるラビリンス方式によりブローバイガス中からオイルを分離する構造のものや、特開2001−246216号公報等に記載されるサイクロン方式によりブローバイガス中からオイルを分離する構造のもの等が、適宜に採用され得る。
【0077】
また、前記二つの実施形態では、ケーシング12が、シリンダヘッドカバー14に取り付けられて、シリンダヘッドカバー14と一体化されてなる構造とされていたが、例えば、図6に示されるように、ケーシング12の上部開口部が、シリンダヘッドカバー14とは別個の部材からなる蓋体80にて覆蓋されて、それらケーシング12と蓋体80との組付体として構成された、シリンダヘッドカバー14とは独立した別個の形態とされていても、何等差し付かえないのである。
【0078】
なお、このシリンダヘッドカバー14とは独立した構造をもってオイルセパレータ10を構成する場合には、例えば、クランクケースと吸気管路との間に、それらを連通状態で連結するように設けられた連結流路の途中に、オイルセパレータ10が、接続される。即ち、かかる連結流路が、ブローバイガスの流通方向の上流側部分と下流側部分とに二分された分割構造とされて、その上流側部分が、ケーシング12のガス導入口38に接続される一方、下流側部分が、蓋体80のガス排出口20に接続されることによって、オイルセパレータ10が、連結流路の途中に設けられることとなるのである。また、このとき、オイル出口50は、エンジンのオイルパンに連通せしめられたオイル排出管に接続されるようになる。
【0079】
また、前記二つの実施形態では、流路規制部が、板状リブ58にて構成されていたが、かかる流路規制部は、共通流路部分56に、その一部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制して、狭窄部60を形成し得る構造のものであれば、特に限定されるものではない。従って、例えば、共通流路部分56を取り囲むケーシング12の底部26や側壁部28を内側に向かって部分的に突出させ、この突出部によって、流路形成部を構成することも出来る。また、板状リブ58にて流路規制部を構成する場合にあっても、斜辺部を、湾曲形態や段付形態において形成しても良い。勿論、斜辺部を傾斜面形態とする場合にも、その傾斜角度は、特に限定されるものではない。
【0080】
さらに、ケーシング12の全体形状も、如何なる形状であっても良い。
【0081】
加えて、本発明は、自動車エンジンに取り付けられるブローバイガス用オイルセパレータの他、自動車エンジン以外の内燃機関の内部で発生するブローバイガス中のオイルを分離するブローバイガス用オイルセパレータの何れに対しても、有利に適用可能であることは、勿論である。
【0082】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータの一実施形態を示す縦断面説明図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図1におけるIII−III断面説明図である。
【図4】本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータの別の実施形態を構成するケーシングを示す平面説明図である。
【図5】図1におけるV−V断面説明図である。
【図6】本発明に従うブローバイガス用オイルセパレータの更に別の実施形態を示す図1に対応する図である。
【符号の説明】
【0084】
10 オイルセパレータ 12 ケーシング
14 シリンダヘッドカバー 16 天板部
20 ガス排出口 26 底部
38 ガス導入口 42 ガス流路
44 整流板 46 衝突板
48 通孔 50 オイル出口
54 オイル流路 56 共通流路部分
58 板状リブ 60 狭窄部
72 漸増部 74 広幅部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の内部で発生する、オイルを含んだブローバイガスのガス導入口及びガス排出口を備え、該ガス導入口から該ガス排出口に向かって該ブローバイガスを流通せしめるガス流路と、該ガス流路の途中に設けられて、該ガス流路内を流通する該ブローバイガス中から前記オイルを分離する分離手段と、少なくとも一部が、該ガス流路における該分離手段よりも該ブローバイガスの流通方向の下流側部分と共通とされ、該分離手段にて分離されたオイルを、下方に位置する底部に沿って流通せしめるオイル流路と、該オイル流路における該オイルの流通方向の下流側端部に設けられて、該オイル流路内を流通する該オイルを外部に排出するオイル出口とを有して構成されたオイルセパレータにおいて、
前記オイル流路と前記ガス流路との共通流路部分に、該共通流路部分の一部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制して、該幅が規制された共通流路部分の一部を狭窄部とする流路規制部を、該共通流路部分の前記底部から上方に向かって延びるように設けたことを特徴とするブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項2】
前記オイル出口と前記ガス排出口とが、前記共通流路部分の幅方向において互いに異なる位置にそれぞれ設けられると共に、該共通流路部分の前記狭窄部における最小幅となる部分が、該共通流路部分の幅方向における該オイル出口の配設側に位置するように構成されている請求項1に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項3】
前記オイル流路が、前記共通流路部分における前記狭窄部の最小幅部分の底部と連続する底部を有して、該共通流路部分よりも前記オイルの流通方向の下流側に延びるオイル流路下流側部分を含んで構成される一方、前記ガス流路が、該共通流路部分よりも前記ブローバイガスの流通方向の下流側において、該オイル流路下流側部分の延出方向とは異なる方向に延びるガス流路下流側部分を含んで構成されている請求項2に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項4】
前記ガス流路下流側部分が、前記オイル流路下流側部分の延出方向とは相反する方向に延出せしめられている請求項3に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項5】
前記流路規制部が、前記共通流路部分の途中に、厚さ方向の一方の面において、該共通流路部分内での前記ブローバイガスの流れを部分的に遮るように位置せしめられた状態で、該共通流路部分の前記底部から上方に向かって一体的に延びるように立設された板状リブからなり、且つ該板状リブが、下方に向かうに従って幅が漸増して、該共通流路部分の前記狭窄部の幅を、下方に向かうに従って徐々に小さくなるように規制する漸増部を有して構成されている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項6】
前記板状リブの上側部位が、前記漸増部にて構成される一方、その下側部位が、該漸増部の最大幅よりも大きく且つ前記共通流路部分の幅よりも小さな広幅部にて構成されている請求項5に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項7】
前記ガス流路が、Uターンして延びるように延出せしめられている請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。
【請求項8】
前記ガス流路における前記流路規制部よりも前記ブローバイガスの流通方向の下流側に、該ガス流路の断面積が大きくされた膨大部が設けられている請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載のブローバイガス用オイルセパレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−247623(P2007−247623A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75982(P2006−75982)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000225577)内浜化成株式会社 (21)
【Fターム(参考)】