説明

ブロー成形品とその製造方法および分割金型

【課題】
解決しようとする課題は、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際し該溶着用のボスが成形時のブローアップによって引き伸ばされ、溶着面が非常に薄肉となってその面精度が顕著に低くなるという点である。
【解決手段】
分割金型の該溶着用のボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめるため、該溶着面の肉厚を厚肉に保って、面精度の低下を引き起こすことなく、熱板溶着に対しても必要十分な面精度を保持させることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱板溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂のブロー成形品の熱板溶着に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【特許文献1】特開平5−77321号公報
【0003】
しかし、特許文献1の段落0006に「また、パイプ部12はブロー成形部品であることから、その接合部20の溶着面の面精度(面歪)が悪い場合が多く、熱板溶着において、熱板26により該接合部20を溶融させる際に、均一に溶かすことができず、同一溶着面において多く溶ける部位と少ししか溶けない部位とが生じてしまい、ばらつきが出る問題を内在している。・・・」とあるように、ブロー成形品の溶着面の面精度が低いことは周知のことであり、特に該溶着面の肉厚が薄い場合にはその問題は顕著であった。
【0004】
以下、図によってより詳しく説明する。図1は熱可塑性樹脂のブロー成形により形成される自動車用サクションパイプ1の斜視図である。平面状の部分と非平面状の部分とからなる溶着用のボス2上に設けられた孔3によって別部品(図示せず)に連通するものであり、4は該別部品を熱板溶着するための溶着面である。
【0005】
図2は図1のB−B断面図である。該サクションパイプ1の該断面は図2に示すように扁平であるがためパーティングラインを5,5’に設定せざるを得ず、該溶着用のボス2は成形時のブローアップによって引き伸ばされ、特に該ボス2の平面状の該溶着面4が非常に薄肉となってその面精度が顕著に低くなるという問題が避けられなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、溶着用のボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際し該溶着用のボスが成形時のブローアップによって引き伸ばされ、特に該ボスの平面状の溶着面が非常に薄肉となってその面精度が顕著に低くなるという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を果たすため本発明は、熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるボスを有するブロー成形品であって、該ボスが厚肉な平面状の部分と該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とからなることを最も主要な特徴とする。
【0008】
また、ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造方法であって、分割金型の該ボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめることを第2の主要な特徴とする。
【0009】
また、ボスを有する熱可塑性樹脂成形品のブロー成形用の分割金型であって、該分割金型の該ボスに該当する位置内にスライドコアを有することを第3の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際して、分割金型の該ボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめるため、該スライドコアとのパリソンの接触部分の肉厚が厚肉に保たれて面精度の低下を引き起こすことがなく、熱板溶着に対しても必要十分な面精度を保持させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際して該ボスの肉厚が厚肉に保たれて面精度の低下を引き起こすことがなく、熱板溶着に対しても必要十分な面精度を保持させるという目的を、分割金型の該ボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめることによって、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。尚、従来例と同一の符号は同一の部材を表す。
【0013】
図3ないし図6は本発明の1実施例を示す部分断面図であり図1のB−B断面と同一の箇所を表している。図3において10は分割金型、11はスライドコア、12はパリソンを示す。
【0014】
次に本発明の作用を説明する。該分割金型10内に半溶融状態にあるポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の該パリソン12を垂下させ該分割金型を型締めする。
【0015】
尚、該パリソン12に適用される該熱可塑性樹脂としてはポリプロピレンに限らず、ポリエチレンや他のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、ポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等、ブロー成形が可能な樹脂であれば何でも良い。また、該熱可塑性樹脂にガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、硫酸カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末等を混錬させた複合材であってもよい。
【0016】
次いで該パリソン12内に圧縮空気を吹き込んでブローアップすると、該パリソン12は膨張して図4に示すように該分割金型10及び該スライドコア11の平面状の部分に接触する。この時該スライドコア11に接触した該パリソン12の接触部分13はその表面を瞬間的に冷却、固化され、その部分の肉厚は固定されてしまい以後のブローアップ過程でほとんど変化しない。尚、該分割金型10に接触した部分も同様であるが、ここでは言及はしない。
【0017】
更に該パリソン12は膨張を続けるが、それに同調して該スライドコア11を該分割金型10に引き込むようにスライドさせると図5に示すような状態になる。尚、上記スライドの方向は図5中の矢印の方向である。
【0018】
更に該パリソン12は膨張を続け、吹き込みが完了した状態を図6に示す。該スライドコア11は該分割金型10に完全に引き込まれ、該パリソン12は該分割金型10及び該スライドコア11に密着するが、該パリソン12の該接触部分13の肉厚は既に固定されているので他の部分のようには薄肉とはならず厚肉のままである。
【0019】
図7は本実施例による該サクションパイプ1の斜視図であり、図8は図7のB−B断面図である。
【0020】
該ボス2は成形時のブローアップによって引き伸ばされるが、該溶着面4は該接触部分13の肉厚が厚肉に保たれているために面精度の低下を引き起こすことがなく、熱板溶着に対しても必要十分な面精度を保持させることができる。
【0021】
即ち、該サクションパイプ1の該ボス2は熱板溶着に対して必要十分な面精度を有する厚肉な平面状の該溶着面4と、ブローアップによって引き伸ばされた該溶着面4以外の、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とに分かれることになる。
【0022】
尚、上記実施例では溶着用のボスを有するサクションパイプを例として説明したが、本発明はこれに限るものではなくボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形体であれば何でもよい。
【0023】
以上実施例に述べたように本発明によれば、ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に際して、分割金型の該ボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめたため、該スライドコアとのパリソンの接触部分の肉厚が厚肉に保たれて面精度の低下を引き起こすことがなく、熱板溶着に対しても必要十分な面精度を保持させることができるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、自動車用サクションパイプ及びそれ以外の、ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の自動車用サクションパイプの斜視図
【図2】図1のB−B断面図
【図3】スライドコアにパリソンが接触する前の本発明に係る部分断面図
【図4】スライドコアにパリソンが接触した瞬間の本発明に係る部分断面図
【図5】パリソンが更に膨張を続けている途中の本発明に係る部分断面図
【図6】吹き込み完了後の本発明に係る部分断面図
【図7】本発明に係る自動車用サクションパイプの斜視図
【図8】図7のB−B断面図
【符号の説明】
【0026】
1 サクションパイプ
2 (溶着用の)ボス
3 孔
4 溶着面
5,5’ パーティングライン
10 分割金型
11 スライドコア
12 パリソン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のブロー成形によって形成されるボスを有するブロー成形品であって、該ボスが厚肉な平面状の部分と該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とからなることを特徴とするブロー成形品
【請求項2】
ボスを有する熱可塑性樹脂のブロー成形品の製造方法であって、分割金型の該ボスに該当する位置内に突出させたスライドコアを、パリソンが該スライドコアに接触して後、該分割金型内に引っ込めることにより該ボスを厚肉な平面状の部分と、該平面状の部分よりも薄肉な非平面状の部分とになさしめることを特徴とするブロー成形品の製造方法
【請求項3】
ボスを有する熱可塑性樹脂成形品のブロー成形用の分割金型であって、該分割金型の該ボスに該当する位置内にスライドコアを有することを特徴とするブロー成形用の分割金型

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−76095(P2010−76095A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243427(P2008−243427)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】