説明

プラスチックス粉末及び金属粉末の製造方法

【課題】高強度・高靭性・高弾性率プラスチックス粉末又は/及び展延性金属粉末の低コスト・易操業性の製造方法の提供。
【解決手段】粉砕媒体を用いて被粉砕物に高衝撃力を高速で反復して加える構造の粉砕機を使用して、プラスチックスを粉砕しプラスチックス粉末を得る。又は該粉砕機を使用して、プラスチックスと金属箔との積層物を粉砕し、混合粉砕物を分級してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を得る。該粉砕機としては、振動ミル又は遊星ミルが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の方法によっては粉砕が困難な高強度・高靭性・高弾性率プラスチックス粉末又は/及び展延性金属の、機械的粉砕による製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックス粉末或いは金属粉末は、工業中間原料として極めて重要なものであるが、高強度・高靭性・高弾性率プラスチックス又は展延性に富む金属は、通常使用される衝撃作用を主体とした方法或いは媒体を使用した磨砕方法では粉砕が困難である。これらの材料に対しては、特殊な剪断方式或いは冷凍の併用による方式が採用されるが、装置及び操業上コストの上昇は避けがたい。本発明者らは、これらの問題を解決するため、先にプラスチックス及び金属を相互に密着させた多層膜とし、該多層膜を衝撃作用を主体とする粉砕機に供給することによって所期の微細粉末を得る方法を提案(特願2003−139636)したが、この方法では、粉砕に先立って金属及びプラスチックスの多層膜を形成することが必要であった。
【特許文献】特願2003−139636
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明においては、これらの問題点を踏まえ、特殊な装置を使用せず、高強度・高靭性・高弾性率プラスチックス単体及び上記金属・プラスチックス多層膜を処理し得るプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、種種の粉砕方法について検討した結果、高強度・高靭性・高弾性率プラスチックスの粉砕に対しては、被粉砕物に高い衝撃力を高速で反復して加えることが有効であることを見出し、以下のごとき発明を行った。
(1)粉砕媒体を用いて被粉砕物に高衝撃力を高速で反復して加える構造の粉砕機を使用してプラスチックスを粉砕する、プラスチックス粉末の製造方法。
(2)粉砕媒体を用いて被粉砕物に高衝撃力を高速で反復して加える構造の粉砕機を使用してプラスチックスと金属箔との積層物を粉砕し、混合粉砕物を分級してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を得る、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(3)(1)若しくは(2)記載の粉砕機が、振動ミル又は遊星ミルである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(4)(1)若しくは(2)記載の粉砕媒体が、比重4以上、好ましくは比重6以上のものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(5)粉砕媒体としてSUSロッドを用いる、(1)、(2)若しくは(3)記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末製造方法。
(6)粉砕媒体として鋼球を用いる、(1)、(2)若しくは(3)記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(7)粉砕媒体として順次SUSロッド及び鋼球を用いる、(1)、(2)若しくは(3)記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(8)粉砕媒体として炭化タングステン球を用いる、(1)、(2)若しくは(3)記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(9)被粉砕物及び粉砕媒体に第3の物質を添加する、(1)〜(8)の何れかに記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(10)被粉砕物及び粉砕媒体にステアリン酸を添加する、(1)〜(8)の何れかに記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(11)(2)記載の混合粉砕物を気流搬送し、個々の構成要素の比重差による搬送加速度の差を利用してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を分離取得する、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(12)(2)記載の混合粉砕物の個々の構成要素の帯電差を利用してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を分離取得する、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(13)(1)若しくは(2)記載のプラスチックスがポリイミド或いはポリイミドのコポリマー、またはアラミド或いはアラミドのコポリマー、若しくは前4者に準ずる高強度・高靭性・高弾性率を有するものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
(14)(2)記載の金属箔が、銅又は銅合金若しくは銅又は銅合金を主体とするものであるか、或いは前4者に準ずる展延性を有するものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、ポリアミド等の高強度・高靭性・高弾性率プラスチックスを、特殊な装置或いは金属との複層化等の前処理を必要とすることなく粉砕すること、併せて該プラスチックスと展延性金属との複層物をも同様に粉砕することが出来、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末を低コストで製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において使用される粉砕機は、所要の反復高速衝撃を被粉砕物に加え得るものであれば特に機種は限定されないが、通常は振動ミルを用いることが望ましい。粉砕媒体は特に限定されないが、比重は4以上、好ましくは6以上のものを使用する。
【0007】
粉砕媒体としては、通常は鋼球を用い、必要に応じ前段にSUSロッドを使用する。
【0008】
必要に応じ、粉砕媒体として酸化ジルコニウム球若しくは炭化タングステン球を使用する。
【0009】
必要に応じて、(9)記載の第3の物質として粉砕助剤を添加する。通常使用されるのはステアリン酸である。
【0010】
プラスチックスと金属との複層物も同様に粉砕が可能であり、プラスチックス粉末と金属粉末とを得ることが出来るが、この方法は廃棄されたプラスチックスと金属との複層物からプラスチックス又は/及び金属を回収する目的に特に有効に使用される。
【0011】
廃棄されたプラスチックスと金属との複層物から、プラスチックス又は金属の何れか一方のみを回収する際には、(9)記載の第3の物質として、回収の対象としないものと物理的・化学的またはメカノケミストリー的に反応する適宜の物質を選定することにより、分離・回収を有利に進めることが出来る。
【0012】
プラスチックスと金属との複層物が粉砕された結果のプラスチックス粉末と金属粉末との混合物は、両者の比重差が大きく、適当な速度での気流搬送中に金属粉が先に落下することを利用して分級することが出来る。
【0013】
また、プラスチックスが粉砕中により帯電し易いことを利用して、電気的手段によりプラスチックス粉末のみを吸着することで分級することが出来る。
【実施例】
【0014】
振動ミル(容量:3.6l、粉砕媒体:炭素鋼球、振動数:1,200rpm、振幅:9mm)を使用し、イミド樹脂300gにステアリン酸2%を添加したものを240min処理した結果、イミド粉末として、粒径90μ以下:87%、50μ以下:40%、10μ以下:12%を得た。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は実施が容易であり、低コストで高強度・高靭性・高弾性率プラスチックスの粉末を得ることが出来るので、広範囲の利用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕媒体を用いて被粉砕物に高衝撃力を高速で反復して加える構造の粉砕機を使用してプラスチックスを粉砕する、プラスチックス粉末の製造方法。
【請求項2】
粉砕媒体を用いて被粉砕物に高衝撃力を高速で反復して加える構造の粉砕機を使用してプラスチックスと金属箔との積層物を粉砕し、混合粉砕物を分級してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を得る、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくは請求項2記載の粉砕機が、振動ミル又は遊星ミルである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2記載の粉砕媒体が、比重4以上、好ましくは比重6以上のものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項5】
粉砕媒体としてSUSロッドを用いる、請求項1、請求項2若しくは請求項3記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末製造方法。
【請求項6】
粉砕媒体として鋼球を用いる、請求項1、請求項2若しくは請求項3記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項7】
粉砕媒体として順次SUSロッド及び鋼球を用いる、請求項1、請求項2若しくは請求項3記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末製造方法。
【請求項8】
粉砕媒体として炭化タングステン球を用いる、請求項1、請求項2若しくは請求項3記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項9】
被粉砕物及び粉砕媒体に第3の物質を添加する、請求項1〜請求項8の何れかに記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項10】
被粉砕物及び粉砕媒体にステアリン酸を添加する、請求項1〜請求項8の何れかに記載のプラスチックス粉末又は/及び金属粉末製造方法。
【請求項11】
請求項2記載の混合粉砕物を気流搬送し、個々の構成要素の比重差による搬送加速度の差を利用してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を分離取得する、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項12】
請求項2記載の混合粉砕物の個々の構成要素の帯電差を利用してプラスチックス粉末又は/及び金属粉末を分離取得する、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項13】
請求項1若しくは請求項2記載のプラスチックスがポリイミド或いはポリイミドのコポリマー、またはアラミド或いはアラミドのコポリマー、若しくは前4者に準ずる高強度・高靭性・高弾性率を有するものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法。
【請求項14】
請求項2記載の金属箔が、銅又は銅合金若しくは銅又は銅合金を主体とするものであるか、或いは前4者に準ずる展延性を有するものである、プラスチックス粉末又は/及び金属粉末の製造方法

【公開番号】特開2006−122883(P2006−122883A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341193(P2004−341193)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000100757)アイシーエス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】