説明

プラスチックボトル用プリフォーム及びプラスチックボトル

【課題】本発明の目的は、軽量化を図りながら、必要な座屈強度を有するプラスチックボトル及びそれを成形可能なプラスチックボトル用プリフォームを提供することである。
【解決手段】本発明に係るプラスチックボトル用のプリフォーム100は、ネックサポートリング14が下端に設けられた口部10と、ネックサポートリング14の下に連接する筒状の胴部20と、胴部20の下に連接する底部30とを備えるプラスチックボトル用のプリフォームにおいて、胴部20及び底部30を外周面S2側から薄肉化して、胴部20及び底部30の外周面S2に、胴部20の上端20aから底部30に至る縦リブ50を複数本設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化を図りながら、必要な座屈強度を有するプラスチックボトル及びそれを成形可能なプラスチックボトル用プリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
ペットボトルなどのプラスチックボトルは、通常、プリフォームと呼ばれる有底筒状の成形物をボトル状にブロー成形することで製造される。近年、プラスチックボトルは、資源及びコストの削減の観点から、軽量化が進められており、ボトルは薄肉化されて強度が低下する傾向にある。
【0003】
そこで、プラスチックボトルの壁面に、補強を目的とした凹凸を形成することが行われている。例えば、プリフォームの軸方向の中間部分の外周面に、プリフォームの軸方向と平行に複数の突条リブを形成し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで、プラスチックボトルの胴部及び肩部の外周面に突条リブを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、プリフォームの底部及び胴部の内壁面及び外壁面に上下方向に沿う突条リブを設け、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形して得られるプラスチックボトルの底壁及び胴部の壁面に縦リブを形成する技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。強度の向上を目的とするものではないが、プラスチックボトルの壁面に凹凸を形成する方法として、プリフォームの外周面又は内周面の少なくとも一方に凹凸模様を形成し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで、プラスチックボトルの内周面に凹凸模様を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−052234号公報
【特許文献2】実開昭62−144612号公報
【特許文献3】特開2010−126193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プラスチックボトルは、例えば、飲料用の容器として使用される場合、数本〜数十本単位で段ボール箱に入れられて輸送・保管される。このとき段ボール箱は段積みされるため、プラスチックボトルには縦圧縮荷重がかかる。よって、プラスチックボトルには、縦圧縮荷重に対する座屈強度を有することが望まれる。特許文献1のように、胴部及び肩部の外周面だけに突条リブを形成したプラスチックボトルでは、内圧に対する強度は向上するものの底部の座屈強度が不足する。また、特許文献3に記載されたプラスチックボトルは、そもそも、凹凸模様による光学的な視覚効果の変化を利用して周壁を加飾することを目的とするものであるため、底部に凹凸が形成されておらず、底部の座屈強度を補強するものではない。また、二軸延伸ブロー成形において、プリフォームは、外周面側から再加熱される。このとき、特許文献2のように内壁面に突条リブを形成すると、突条リブに熱が伝わりにくく、成形性が劣るという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、軽量化を図りながら、必要な座屈強度を有するプラスチックボトル及び離型性が良好で、必要な座屈強度を有するプラスチックボトルを成形可能であるプラスチックボトル用プリフォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプラスチックボトル用のプリフォームは、ネックサポートリングが下端に設けられた口部と、前記ネックサポートリングの下に連接する筒状の胴部と、該胴部の下に連接する底部とを備えるプラスチックボトル用のプリフォームにおいて、前記胴部及び前記底部を外周面側から薄肉化して、前記胴部及び前記底部の外周面に、前記胴部の上端から前記底部に至る縦リブを複数本設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプラスチックボトル用のプリフォームでは、前記縦リブ同士は、前記底部の中央部で交差することが好ましい。プラスチックボトルの底部における座屈強度を更に高めることができる。
【0009】
本発明に係るプラスチックボトル用のプリフォームでは、前記縦リブは、前記プリフォームの周方向に沿って等間隔に3本以上8本以下配置されていることが好ましい。プラスチックボトルの軽量化を図りつつ、プラスチックボトルの座屈強度を更に高めることができる。
【0010】
本発明に係るプラスチックボトル用プリフォームでは、前記縦リブは、水平方向の幅を、前記胴部の上端で最大とし下方に向けて次第に小さくするテーパー状であることが好ましい。プラスチックボトルの肩部及び胴部の上方を重点的に強化することができる。また、プリフォーム成形時の離型性を良好とすることができる。
【0011】
本発明に係るプラスチックボトル用プリフォームでは、前記縦リブは、前記胴部の上端から下方に向けて同一の幅で形成された等幅部と該等幅部の下端に連続して形成され、下方に向けて次第に幅を小さくするテーパー部とを有することが好ましい。プラスチックボトルの肩部及び胴部の上方を重点的に強化することができる。また、プリフォーム成形時の離型性を良好とすることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチックボトルは、本発明に係るプラスチックボトル用プリフォームをブロー成形して作製されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、軽量化を図りながら、必要な座屈強度を有するプラスチックボトル及び離型性が良好で、必要な座屈強度を有するプラスチックボトルを成形可能であるプラスチックボトル用プリフォームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係るプラスチックボトル用のプリフォームの一例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図3のCで示す部分の拡大断面図である。
【図5】図1のプリフォームをD方向から見た図である。
【図6】縦リブの第一の変形例を示す正面図である。
【図7】縦リブの第二の変形例を示す正面図である。
【図8】プリフォーム100を射出成形するための金型900の一例を示す断面図であり、(a)は金型が開いている状態、(b)は射出成形時の状態を示す。
【図9】本実施形態に係るプラスチックボトル用プリフォームをブロー成形して得られたプラスチックボトルの一例を示す正面図である。
【図10】図9のE−E断面図である。
【図11】座屈強度評価における垂直方向の変位量と垂直荷重(圧縮荷重)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係るプラスチックボトル用のプリフォームの一例を示す正面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、図1のB−B断面図である。本実施形態に係るプラスチックボトル用のプリフォーム100は、ネックサポートリング14が下端に設けられた口部10と、ネックサポートリング14の下に連接する筒状の胴部20と、胴部20の下に連接する底部30とを備えるプラスチックボトル用のプリフォームにおいて、胴部20及び底部30を外周面S2側から薄肉化して、胴部20及び底部30の外周面S2に、胴部20の上端20aから底部30に至る縦リブ50を複数本設けてなる。
【0017】
プリフォーム100は、プラスチックボトルを成形するのに適した形状に予め成形したプラスチック成形体である。プリフォーム100は、図1に示すように、上方から順に、口部10と、胴部20と、底部30とを備える。口部10は、上端10aが開口した円筒状の周壁11を有し、プラスチックボトルにおいて、内容物の充填口及び注ぎ口として機能する。周壁11の外周面には、キャップ(不図示)と螺合する雄ねじ部12と、雄ねじ部12の下方に設けられたビードリング13と、口部10の下端に設けられたネックサポートリング14とが、突出して形成されている。胴部20は、図2に示すように、内部を中空とした筒状である。胴部20の内周面S1の水平方向における断面形状は、例えば、図3に示すように円形である。なお、胴部20の内周面S1の水平方向における断面形状は、円形に限定されず、例えば、四角形、五角形、六角形、八角形などの多角形にしてもよい。底部30は、図1、図2に示すように、例えば、半球状である。なお、底部30の形状は、半球状に限定されず、例えば、円錐状、角錐状、円柱状、角柱状にしてもよい。
【0018】
胴部20及び底部30は、図3に示すように、周方向に沿って、薄肉部40と縦リブ50とを交互に有する。図3において、縦リブ50の頂点50a上を通過する外周面(以降、仮想の外周面という。)S0を点線で示すが、薄肉部40は、その外周面S2を、仮想の外周面S0と比較して中心軸O側に位置させて薄肉化した部分である。外周面S2側から薄肉化することで、樹脂の使用量の更なる削減が可能となる。
【0019】
薄肉部40は、図1に示すように、胴部20の上端20aから下方に所定の間隔をあけたストレート部21には形成しないことが好ましい。ストレート部21は、成形ラインにおいて、グリッパに把持される部分であるため、薄肉部40を形成しないことで、グリッパの形状変更を必要とせず、従来のラインに適用できる。領域21は、例えば、ネックサポートリング14から下方に3.0〜7.0mmまでの領域である。
【0020】
縦リブ50は、薄肉部40同士の間を薄肉化せずに残すことで、図3に示すように、胴部20及び底部30の外周面S2に突出した状態で設けられる。縦リブ50は、胴部20の上端20a、すなわち、ネックサポートリング14の直下から設けられているため、プリフォーム100を成形時に無理抜きする必要がなく、離型性が良好である。また、本実施形態に係るプリフォーム100では、縦リブ50を胴部20の上端20aから底部30に至る上下方向に伸ばして形成したため、得られるプラスチックボトルの座屈強度が高い。したがって、本実施形態に係るプリフォーム100では、薄肉部40の薄肉化する割合を大きくしても必要な座屈強度を発揮することができ、更なる軽量化が可能となる。また、縦リブ50を外周面S2に設けることで、成形時に縦リブ50への熱の伝達が良好となり、成形性を良好とすることができる。
【0021】
本実施形態に係るプラスチックボトル用のプリフォーム100では、縦リブ50は、プリフォーム100の周方向に沿って等間隔に3本以上8本以下配置されていることが好ましい。このように配置することで、プラスチックボトルの軽量化を図りつつ、プラスチックボトルの座屈強度を更に高めることができる。図1のプリフォーム100は、図3に示すように、4本の縦リブ50を90°毎に配置した形態である。プリフォーム100の周方向に沿って等間隔に配置する他の形態例(不図示)としては、縦リブ50を120°毎に3本配置する形態、縦リブ50を72°毎に5本配置する形態、縦リブ50を60°毎に6本配置する形態、縦リブ50を51.4°毎に7本配置する形態、縦リブ50を45°毎に8本配置する形態である。本実施形態では、複数本の縦リブ50は、座屈強度をバランスよく有するプラスチックボトルを成形できる点で、形状が互いに同一であることが好ましい。
【0022】
仮想の外周面S0の周囲長さw0に対する縦リブ50の幅の合計w(w1+w2+w3+w4+・・)の割合(w/w0)は、10〜60%であることが好ましい。より好ましくは、20〜50%である。ここで、縦リブ50の幅w1,w2,w3,w4・・は、仮想の外周面S0における縦リブ50の一方の端e1と他方の端e2との最短距離である。w/w0が10%未満では、プラスチックボトルにおいて縦リブによる補強効果が不足する場合がある。w/w0が60%を超えると、軽量化が不十分である。本実施形態では、複数本の縦リブ50の幅w1,w2,w3,w4・・は、全て同じであることが好ましい。
【0023】
図4は、図3のCで示す部分の拡大断面図である。縦リブ50の高さh1は、0.1mm以上であることが好ましい。より好ましくは0.2mm以上である。ここで、縦リブ50の高さh1は、仮想の外周面S0と胴部20の外周面S2との距離であり、薄肉部40の薄肉化した厚さを示す。縦リブ50の高さh1が0.1mm未満では、プラスチックボトルの軽量化が不十分である。また、縦リブ50の高さh1は、縦リブ50の頂点50aにおける肉厚をtmmとしたとき、t/10mm以下であることが好ましい。より好ましくは、t/12mm以下である。縦リブ50の高さh1がt/10mmを超えると、プラスチックボトルの強度が低下する場合がある。また、縦リブ50と薄肉部40との段差が大きすぎて、均一に加熱することが難しく、成形性が劣る場合がある。
【0024】
図5は、図1のプリフォームをD方向から見た図である。本実施形態に係るプラスチックボトル用のプリフォーム100では、縦リブ50同士は、底部30の中央部30aで交差することが好ましい。縦リブ50同士が、底部30の中央部30aで交差することで、プラスチックボトルの底部における座屈強度を更に高めることができる。
【0025】
プリフォーム100を軽量化した一例を次に示す。胴部20及び底部30において肉厚が均一であり、図3の点線で示す仮想の外周面S0を有する従来のプリフォーム(500ml用)では、質量が20.16gであるのに対して、胴部20及び底部30の外周面S2側から薄肉化して、高さh1を0.2mm、幅w1を5.0mmとした縦リブ50を、胴部20及び底部30において図3の実線で示すように、90°ごとに4本形成した本実施形態に係るプリフォーム(500ml用)では、質量が19.32gとなり、約4.2%軽量化することができる。
【0026】
図1では、縦リブ50を水平方向の幅w1を上下方向で一定とし、等幅・直線状の帯形状としたが、本実施形態は、これに限定されない。次に、縦リブの変形例を示す。図6は、縦リブの第一の変形例を示す正面図である。本実施形態に係るプラスチックボトル用プリフォーム101では、図6に示すように、縦リブ51は、水平方向の幅w1を、胴部20の上端20aで最大とし、下方に向けて次第に小さくするテーパー状であることが好ましい。この形態では、プラスチックボトルの肩部及び胴部の上方を重点的に強化することができる。
【0027】
図7は、縦リブの第二の変形例を示す正面図である。本実施形態に係るプラスチックボトル用プリフォーム102では、縦リブ52は、胴部20の上端20aから下方に向けて同一の幅で形成された等幅部52aと等幅部52aの下端に連続して形成され、下方に向けて次第に幅を小さくするテーパー部52bとを有することが好ましい。より好ましくは、テーパー部52bの下端から下方に向けて同一の幅で形成された幅狭等幅部52cを更に有する。この形態では、プラスチックボトルの肩部及び胴部の上方を重点的に強化することができる。
【0028】
図1、図6及び図7に示す本実施形態に係るプリフォーム100,101,102は、いずれも成形時に無理抜きする必要が無く、離型性が良好である。
【0029】
次に、プリフォーム100,101,102の成形方法について説明する。プリフォーム100,101,102は、熱可塑性樹脂を主原料として、射出成形法、PCM成形法(Preform Compression Molding)などの成形法で、成形される。プリフォーム100,101,102の主原料となる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィンコポリマー樹脂、アイオノマー樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン‐1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル‐スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂である。この中で、PETがより好ましい。
【0030】
ここでは、図8を用いて、成形法が射出成形法である場合について、プリフォーム100を例にとって説明する。図8は、プリフォーム100を射出成形するための金型900の一例を示す断面図であり、(a)は金型が開いている状態、(b)は射出成形時の状態を示す。プリフォーム100を射出成形するための金型900は、図8(a)に示すように、プリフォーム100の内側面を成形するコア金型910と、プリフォーム100の口部10の外側面を成形する口部形成用金型920と、プリフォーム100の胴部20及び底部30の外側面を成形するキャビティ金型930とを備える。
【0031】
コア金型910は、円柱状で、先端部910aを半円球状としたコア部911を有する。口部形成用金型920は、口部10の外側面の形状に対応した凹部921を有する。キャビティ金型930は、胴部20及び底部30の外側面の形状に対応した凹部931と樹脂を充填するためのゲート932とを有する。キャビティ金型930内には、薄肉部40の形状に対応した突部(不図示)を設ける。
【0032】
コア金型910と、口部形成用金型920と、キャビティ金型930とを型締め後、図2(b)に示すように、ゲート932から、プリフォーム100の形状を有するキャビティ940内に、溶融状態の熱可塑性樹脂を含有する材料を射出してプリフォーム100を成形する。プリフォーム100が所定の温度まで冷却したところで、金型900を開いて、プリフォーム100を取り出す。
【0033】
図9は、本実施形態に係るプラスチックボトル用プリフォームをブロー成形して得られたプラスチックボトルの一例を示す正面図である。本実施形態に係るプラスチックボトル200は、本実施形態に係るプラスチックボトル用プリフォーム100をブロー成形して作製される。ブロー成形は、例えば、二軸延伸ブロー成形である。
【0034】
プラスチックボトル200は、図9に示すように、上方から順に、口部210と、肩部220と、胴部230と、底部260とを備える。ブロー成形において、プリフォーム100,101,102の口部10は、未延伸のまま、変形せずに、プラスチックボトル200の口部210となる。すなわち、プラスチックボトル200の口部210は、その形状及び寸法を、本実施形態に係るプリフォーム100,101,102の口部10と同じくする。よって、ここでは、共通する点については説明を省略する。プリフォーム100,101,102の胴部20は、プラスチックボトル200の肩部220及び胴部230となる。肩部220は、円錐台筒形状を有し、口部210と胴部230とをつなげる部分である。なお、図9に示した肩部220は、曲面で形成しているが、複数の面から形成されていてもよい。胴部230は、例えば、内部を中空とした筒状を有し、主として、使用者が把持する部分である。なお、図9に示した胴部230は、外形を円柱状としているが、角柱状であってもよい。プリフォーム100,101,102の底部30は、プラスチックボトル200の底部260となる。底部260は、ボトルの底面となる部分である。なお、本実施形態は、プラスチックボトル200の形状は、図8に示した形状に限定されない。
【0035】
図10は、図9のE−E断面図である。図1に示す本実施形態に係るプリフォーム100をブロー成形すると、プリフォーム100の胴部20及び底部30は、薄肉部40と縦リブ50との厚さの相関関係を維持しながら延伸され、ブロー成形金型のキャビティ面に押し付けられる。その結果、プリフォーム100の胴部20及び底部30の外周面S2に突出した状態で設けられた縦リブ1は、図9に示すように、プラスチックボトル200の肩部220、胴部230及び底部260の内周面S3に突出した状態で設けられた縦リブ250となり、縦リブ250同士の間は薄肉部240となる。ブロー成形において、縦リブ250の高さH1は、0.03mm以上となるように延伸することが好ましい。より好ましくは、0.05mm以上である。また、プラスチックボトルは、例えば、500ml容積のペットボトルでは、胴部の肉厚は、一般的に0.25〜0.50mmであるのに対して、本実施形態に係るプラスチックボトル200では、薄肉部240の厚さTを、例えば、0.10〜0.20mmとすることができる。このように、本実施形態に係るプラスチックボトル200では、縦リブ250が支柱として働くため、肩部220、胴部230及び底部260を薄肉化しながら、必要な座屈強度を有する。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
図1に示した形状を有するPETからなるプリフォーム(樹脂量19.3g)を用意した。縦リブ50を設けた領域は、ネックサポートリング14の直下から下方に64.0mmの領域であり、縦リブ50同士を、底部30の中央部30aで交差させた。縦リブの頂点50aにおける肉厚tは、3.15mm、縦リブ50の高さh1は0.2mm、幅w1,w2,w3,w4はいずれも5.0mmとした。仮想の外周面S0の周囲長さw0は、70.6mmであり、w/w0は28.3%であった。このプリフォームをブロー成形して、図9に示した形状を有する高さ205mm、胴部の外径66mm及び容量500mlのプラスチックボトルを得た。得られたプラスチックボトルは、縦リブの平均高さH1が0.05mmであり、薄肉部の平均厚さTが0.20mmであった。
【0038】
(比較例1)
縦リブ50を設けず、胴部及び底部の肉厚をそれぞれ均一とした以外は、実施例1で用意したプリフォームと同一の形状及び材質を有するプリフォーム(樹脂量19.3g)を用意した。胴部及び底部の肉厚は、3.15mmで均一とした。このプリフォームをブロー成形して、図9に示した外形を有する高さ205mm、胴部の外径66mm及び容量500mlのプラスチックボトルを得た。得られたプラスチックボトルは、全体の平均肉厚が0.21mmであった。
【0039】
(比較例2)
縦リブ50を胴部20だけに形成した以外は、実施例1で用意したプリフォームと同一の形状及び材質を有するプリフォーム(樹脂量19.3g)を用意した。縦リブ50を設けた領域は、ネックサポートリング14の直下から下方に53.5mmの領域である。このプリフォームをブロー成形して、図9に示した外形を有する高さ205mm、胴部の外径66mm及び容量500mlのプラスチックボトルを得た。得られたプラスチックボトルでは、縦リブは底面から40mmの位置を下端とし、底面から120mmの位置を上端とする長さ80mmであった。さらに、縦リブの平均高さH1が0.05mmであり、薄肉部の平均厚さTが0.20mmであった。
【0040】
(座屈強度)
実施例及び比較例のプラスチックボトルについて、座屈強度を測定した。座屈強度の測定は、プラスチックボトルに水(23℃)を500ml充填してキャップをして密封した。キャップの天面側から垂直荷重を50mm/分の速度で負荷した。そして、プラスチックボトルが座屈した時の荷重を座屈強度とした。図11に垂直方向の変位量と垂直荷重(圧縮荷重)との関係を示した。図11において、圧縮荷重の最高値が座屈強度である。
【0041】
実施例1、比較例1及び比較例2のプラスチックボトルは、いずれも樹脂量をほぼ同じくするが、図11に示すように、座屈強度が、実施例1では170.9N(変位量1.54mm)であり、比較例1では、124.7N(変位量1.08mm)であり、比較例2では、112.3N(変位量1.24mm)であった。実施例1は、座屈強度を、比較例1よりも1.4倍、比較例2よりも1.5倍高いことが確認できた。比較例2は、縦リブを形成しているが、胴部だけに形成したため、座屈強度は、縦リブを形成していない比較例1よりも若干劣り、縦リブによる補強効果が発揮されていないことを確認した。このことから、縦リブを胴部だけでなく底部まで伸ばすことで、縦リブによる補強効果が得られ、座屈強度を向上できることが確認できた。以上より、本発明に係るプリフォームをブロー成形して得たプラスチックボトルは、高い座屈強度を有するため、プラスチックボトルに必要な座屈強度を保持しつつ、薄肉部を薄肉化する割合を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0042】
10 口部
10a 口部の上端
11 周壁
12 雄ねじ部
13 ビードリング
14 ネックサポートリング
20 胴部
20a 胴部の上端
21 ストレート部
30 底部
30a 底部の中央部
40 薄肉部
50,51,52 縦リブ
52a 等幅部
52b テーパー部
52c 幅狭等幅部
50a 縦リブの頂点
100,101,102 プリフォーム
200 プラスチックボトル
210 口部
220 肩部
230 胴部
240 薄肉部
250 縦リブ
260 底部
900 金型
910 コア金型
910a 先端部
911 コア部
920 口部形成用金型
921 凹部
930 キャビティ金型
931 凹部
932 ゲート
O 中心軸
S0 仮想の外周面
S1 内周面
S2 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネックサポートリングが下端に設けられた口部と、前記ネックサポートリングの下に連接する筒状の胴部と、該胴部の下に連接する底部とを備えるプラスチックボトル用のプリフォームにおいて、
前記胴部及び前記底部を外周面側から薄肉化して、前記胴部及び前記底部の外周面に、前記胴部の上端から前記底部に至る縦リブを複数本設けたことを特徴とするプラスチックボトル用のプリフォーム。
【請求項2】
前記縦リブ同士は、前記底部の中央部で交差することを特徴とする請求項1に記載のプラスチックボトル用のプリフォーム。
【請求項3】
前記縦リブは、前記プリフォームの周方向に沿って等間隔に3本以上8本以下配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックボトル用のプリフォーム。
【請求項4】
前記縦リブは、水平方向の幅を、前記胴部の上端で最大とし下方に向けて次第に小さくするテーパー状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラスチックボトル用のプリフォーム。
【請求項5】
前記縦リブは、前記胴部の上端から下方に向けて同一の幅で形成された等幅部と該等幅部の下端に連続して形成され、下方に向けて次第に幅を小さくするテーパー部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラスチックボトル用のプリフォーム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のプラスチックボトル用プリフォームをブロー成形して作製されたことを特徴とするプラスチックボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−28137(P2013−28137A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167203(P2011−167203)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】