プラスチック構造体及びプラスチック構造体の製造方法
【課題】表面近傍の内部に金属微粒子が高濃度に浸透する新規なプラスチック構造体を提供すること。
【解決手段】プラスチック構造体は、パラジウム等の有機金属錯体やその変性物からなる金属元素202がプラスチック構造体4の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在している。そして、このプラスチック構造体4には、少なくともその金属元素202が存在する領域にアミド基が存在している。
【解決手段】プラスチック構造体は、パラジウム等の有機金属錯体やその変性物からなる金属元素202がプラスチック構造体4の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在している。そして、このプラスチック構造体4には、少なくともその金属元素202が存在する領域にアミド基が存在している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面改質されたプラスチック構造体及びプラスチック構造体の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は表面改質され導電性を有するプラスチック構造体及びプラスチック構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキは、プラスチック構造体よりなる電子機器の表面に金属導電膜を形成する手段として広く利用されている。プラスチックの無電解メッキプロセスは材料などにより多少異なるが、一般的に図10の流れ図に示されるように、樹脂成形(S100)、成形体の脱脂(S101)、エッチング(S102)、中和及び湿潤化(S103)、触媒付与(S104)、触媒活性化(S105)、および無電解メッキ(S106)の各工程からなる。
【0003】
また、エッチングにはクロム酸溶液やアルカリ金属水酸化物溶液などを用いるが、これらエッチング液は中和等の後処理が必要なため、コスト高の要因となっている他、毒性の高いエッチャントを用いることによる取り扱いの問題がある。
【0004】
エッチングによる粗面化の必要のないプロセスが従来から幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらはメッキ触媒の含有する薄膜を有機バインダーや紫外線硬化樹脂によりプラスチック表面に形成するものである。また、アミン化合物等のガス雰囲気で紫外線レーザーをプラスチック表面に照射し改質する技術も既に提案されている(例えば、特許文献3)。さらに、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理等による改質技術も提案されている。
【0005】
一方、無電解メッキや電解メッキにより回路基板上に配線を形成する方法としてセミアディティブ法がよく知られている。セミアディティブ方法にかかるフローを図11に示す。
【0006】
この方法によれば、配線層は次に示す工程により形成される。まず、図10に示した方法と同様の工程により樹脂成形体の表面を処理する(S100〜S105)。次に、無電解メッキにより基板全体に1〜2μmのメッキ層を形成する(S106)。続いて、感光性フィルムやレジストを形成後(S107)、マスキングして露光および現像を行うことにより配線パターンが設けられたフィルムやレジストの層を形成する(S108)。さらに電解メッキプロセスによりパターン化によって露出した無電解メッキ層上に電解メッキを形成する(S109)。次にフィルムやレジストを除去した後(S110)、ソフトエッチングにより配線部以外の無電解メッキ層を除去することでメッキ配線は完成する(S111)。
【0007】
更に、銅メッキの場合、樹脂との密着性が悪いことから(酸化)銅に微細突起を作り樹脂とのアンカー作用を強化する後処理も行われることもある。この処理は、通常、黒化処理と呼ばれる。
【0008】
成形体に立体回路を設ける方法も従来から提案されている(例えば、特許文献4及び5)。まず、立体的な回路基板のプラスチックを樹脂成形により形成する。次に、表面を粗面化および触媒付与した後、全面に無電解メッキを形成し、フォトレジストを全面塗着する。そしてフォトマスクを被せて露光した後に現像し回路パターン形成部以外を除去する。
【0009】
この上に電解メッキさらにNiやAuの無電解メッキを形成した後、フォトレジストを剥離するとともに無電解メッキの不要部分をエッチング除去する。立体構造体に均一なフォトレジストを形成するのは困難であるため、電着レジストを用いることが特許文献4に提案されているが、かかるレジストは耐アルカリ性が低いという欠点を有している。
【0010】
射出成形を利用した回路形成方法も提案されている(例えば、特許文献6)。この特許文献6に記載された方法によれば、先ず、金型表面における回路形成面にRa1〜5μm程度の粗面化した面を設け、射出成形前に触媒核を金型の全面に付着させた後、回路基板を射出成形で形成することで該触媒核を全面転写させる。そして、触媒核の密着性の強い粗面化された成形面のみ無電解メッキが強固に密着し、それ以外の粗面化されていない個所は密着性が弱いため電解メッキ後における回路以外の無電解メッキ層を除去するエッチングの際に核触媒と共に除去できると特許文献6中で説明されている。
【0011】
こうした、従来におけるプラスチックの無電解メッキ膜およびメッキ膜配線の形成技術の問題点を克服すべく、超臨界流体を用いた、新規なプラスチックの無電解メッキ法が提案されている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1に記載された方法によれば、有機金属錯体を超臨界二酸化炭素に溶解させ、各種ポリマーに接触させることで、ポリマー表面に金属錯体を注入することができる。そして、加熱や化学還元処理する等によって還元することにより金属微粒子を析出させる。これにより、ポリマー表面全体に無電解メッキ可能になる。このプロセスによれば、廃液処理が不要で、表面粗さが良好なプラスチックの無電解メッキプロセスが達成できる、とされる。
【特許文献1】特開平9−59778号公報
【特許文献2】特開2001−303255号公報
【特許文献3】特開平6−87964号公報
【特許文献4】特開平4−76985号公報
【特許文献5】特開平1−206692号公報
【特許文献6】特開平6−196840号公報
【非特許文献1】堀照夫著「超臨界流体の最新応用技術」株式会社エヌ・ティー・エス出版、p.250-255(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記非特許文献1においては、メッキ処理可能なポリマーとして、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン6(PA6)、等が開示されている。そして、超臨界二酸化炭素に溶解するとともにポリマー内に浸透し、メッキ核となる金属錯体として、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)が開示されているが、金属錯体はポリマー表面から内部に、島状に浸透する例のみ開示されている。そして、ポリマー表面に導電性を付与するためには、金属錯体の浸透および還元後、上述の通り無電解メッキ膜の形成が必須であった。
【0013】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、超臨界流体に溶解した金属錯体は、ほとんどのポリマーに対し、最表面における浸透量が、多くても2〜3atomic%(アトミックパーセント)以下であり、島状に浸透することが判明した。さらに、浸透した金属錯体が、効率よく還元され金属微粒子になることは殆どなく、つまり還元率が必ずしも高くないことが判った。
【0014】
従って、本発明の目的は、超臨界流体を溶媒に用いたプラスチックの表面改質方法において、前記課題を解決し、金属錯体をプラスチック表面から高濃度に内部に浸透させることにある。さらに、高濃度に浸透した金属錯体を高還元率にて金属微粒子に還元することで、金属微粒子による導電性膜を、無電界メッキプロセスなしで形成することを目的とした。
【0015】
さらに、成形加工時に、超臨界流体に溶解した金属錯体をプラスチック表面に選択的に高濃度に浸透させ、かつ還元し、表面を粗面化することなく、また無電解メッキプロセスなしで導電性を有する電気配線パターンを形成することを目的とした。もしくは、無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を高効率にてプラスチック表面に形成することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明にかかるプラスチック構造体は、有機金属錯体若しくはその変性物からなる金属元素がプラスチック構造体の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在し、少なくとも前記金属元素が存在する領域にアミド基が存在するものである。本発明によれば、金属錯体もしくはそれに由来する金属元素がプラスチックおよびプラスチック構造体の最表面において高濃度に浸透しているで、良質な無電解メッキ膜が形成できる。また、無電解メッキ処理を行わずとも、導電性を得ることが可能となる。尚、本発明にかかるプラスチック構造体は、プラスチック及びプラスチック成形体(成形品)の双方を含む。
【0017】
図4に本発明にかかるプラスチックの断面構造の模式図を示す。図に示されるように、プラスチックの表面領域201に金属錯体や金属元素のクラスター202が浸透している。特に、最表面200に、より多くのクラスター202が浸透している。
【0018】
ここで、プラスチックの分析方法は、例えば、次の方法を用いることができる。まず、金属錯体や金属元素における、プラスチック最表面よりの厚み方向の分布は、プラスチック断面を集束イオンビーム加工観察装置(FIB:Focused Ion Beam)にて露出させた後、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて断面観察することにより同定できる。また、電子線マイクロプローブ分析装置(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)にて金属微粒子の分布を厚み方向にマッピングすることができる。
【0019】
最表面における金属錯体やそれに由来する金属微粒子の元素比率や金属錯体の還元率等の状態解析は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy、ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いることができる。X線光電子分光法では、検出された電子の結合エネルギーから元素の種類、シグナル強度から元素の比率を調べることができる。また、内部に浸透した金属錯体が完全に金属元素に還元されていないプラスチックを分析した場合、検出波形は金属元素の結合エネルギーよりも高エネルギー側にシフトしたブロードな形状になる。この場合、メタルと、その酸化物や金属錯体の比率を状態解析することにより、メタルとして存在する金属元素の比率を求めることができる。あらかじめ、金属錯体単体の結合エネルギーを調査する必要があるが、プラスチック内に存在する金属錯体は、超臨界二酸化炭素にてプラスチックより抽出し、単体で取り出し分析することができる。
【0020】
また本発明にかかるプラスチック構造体は、アミド基(-CONH)を有するプラスチック材料により構成される。本発明者らの検討によれば、例えば、下記構造を有するポリアミド(PA)系材料に対しては、高濃度に金属錯体が浸透され、また高い還元率を得ることができる。PAは下記化学構造式(1)、(2)で示されるナイロン系ポリマーを用いることができる。また、ポリアミドイミド(PAI)のようなベンゼン環を有する高耐熱性スーパーエンプラや芳香族ナイロンを用いることができる。各種プラスチック材料は、無機フィラー等を含有していてもよい。
【0021】
【化1】
【0022】
【表1】
【0023】
【化2】
【0024】
【表2】
さらに、本発明にかかるプラスチック構造体は、その表面が内部に浸透した金属元素により導電性を有する。上記ポリアミド系材料に対して、他のプラスチックと比較し、高濃度に金属錯体が浸透し、無電解メッキプロセスなしで金属導電性膜が形成可能となる。そのメカニズムは、親水性のアミド基を有することに起因し、超臨界二酸化炭素や金属錯体に対し親和性がよい、金属錯体の還元サイトとして働く、などと考えられる。
【0025】
また、超臨界流体に溶解させた有機金属錯体を、アミド基を有するプラスチックに接触させることで、該プラスチックの表面に有機金属錯体に含有される金属元素より構成される導電膜を形成するが可能である。本発明に用いることが可能な有機金属錯体には、超臨界二酸化炭素にある程度の溶解度を有すれば、任意であるが、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトヒドレート銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトプラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(トリメチルホスフィン)銀(I)、ジメチル(ヘプタフルオロオクタネジオネート)銀(AgFOD)等が含まれる。超臨界流体にこれら金属錯体を溶解させ、プラスチックに浸透させた後、加熱処理や化学還元処理により、還元効率を向上させてもよい。
【0026】
本発明においては、金属錯体の超臨界流体に対する溶解度を向上させるために、アセトン、アルコール等の助溶媒を用いてもよい。
また、プラスチック構造体において少なくとも金属元素が存在する領域にガラス繊維を包含させることが好ましい。これにより、プラスチック構造体の強度を高めることができる。
【0027】
本発明の態様においては、成形時に表面に高濃度にプラスチック表面および内部に金属錯体および金属微粒子を浸透させることができ、例えば導電性を有するプラスチック構造体を得ることができる。特に、本発明によれば、密着性の高い金属膜を得ることができ、配線として利用することも可能である。表面電気抵抗の低減のため、さらに、無電解メッキ膜の形成を施してもよい。
【0028】
アミド基を有するプラスチックと金属錯体の溶解した超臨界流体を接触させる方法は、任意であるが、例えば可塑化シリンダー内等において、溶融状態のプラスチックと超臨界流体等を混合してもよい。また、金型にプラスチックを射出充填した後、金型とプラスチックの間に隙間を形成し、超臨界流体および金属錯体を導入してもよい。
【0029】
本発明で使用することができる超臨界流体は、空気、CO、CO2、O2、N2、H2O、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、メタノール、エチルアルコール、アセトン、ジエチルエーテル等である。N2の臨界温度は−147℃、臨界圧力は34気圧であり、H2Oの臨界温度は374℃、臨界圧力は218気圧であるのに対して、CO2の臨界温度は31℃、臨界圧力は73気圧であり、n―ヘキサン並の溶解度を有し、ある種の熱可塑性樹脂材料へ可塑剤として働き射出成形や押し出し成形で実績が多い点で、CO2が特に望ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0030】
また、別の観点による本発明は、プラスチック構造体の表面に導電膜を形成する金属元素のパターンを有するプラスチック構造体の製造方法であって、射出成形装置もしくはプレス装置の金型内にアミド基を表面に有するプラスチックからなる熱可塑性樹脂を射出充填もしくは保持するステップと、有機金属錯体の溶解した超臨界流体を熱可塑性樹脂表面に選択的に接触させるステップからなり、前記プラスチック構造体の表面には、前記有機金属錯体に還元されることにより生成された金属微粒子が5atomic%の割合で存在し、導電性を有する。
【0031】
本発明におけるプラスチックの断面構造の模式図を図5に示すが、任意の線幅203にて、任意の高さ201を有する凸部において、最表面200を中心に金属錯体や金属元素のクラスター202が浸透している。本発明の態様によれば、金属微粒子がナノスケールのクラスターを形成しながら高密度にパターン化された状態でプラスチック内部に選択式に浸透しているため、密着性および表面平滑性に優れた電気配線を得ることができる。さらに導電膜の膜厚を無電解メッキ等により増やし、表面の電気抵抗を下げて用いてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、表面近傍の内部に金属微粒子が高濃度に浸透する新規なプラスチックを提供することができる。金属微粒子は選択式に浸透させることも可能であるので、電気回路を有するプラスチック構造体も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[実施例1]
本実施例において用いたプラスチック構造体の製造装置の概略構成を図1に示す。本実施例においては、図1に示す製造装置を用いて、ナイロン樹脂の表面全体に金属錯体を注入した。また、超臨界流体の種類としては、二酸化炭素を用いた。本装置の配管表面すべてには、図示しないヒーターが巻かれている。配管ヒーターは55℃に設定した。
【0034】
また、本実施例においては、超臨界流体の発生装置として、公知のシリンジポンプ(ISCO社製SFX260D)を用いた。3〜7MPaの液化二酸化炭素を蓄えるボンベ1は、ボールバルブ35の手動による開放により、フィルター41および逆流防止弁37を通過し、シリンジポンプ2に導入され、昇圧される。尚、液化二酸化炭素の圧力は、圧力計40によって測定される。一方、助溶媒であるエタノールやアセトン等のエントレーナは、容器31に蓄えられる。容器31に蓄えられたエントレーナは、ボールバルブ36を開放すると、逆流防止弁37を経てエントレーナ用シリンジポンプ3に導入され、昇圧される。
【0035】
本実施例においては、二酸化炭素に対するエントレーナの体積比濃度を任意の値にて制御しながら、二酸化炭素とエントレーナの混合流体を、圧力計39の圧力が20MPaになるように制御した。本実施例においては、エントレーナにエタノールを用い、二酸化炭素に対する濃度は2%とした。圧力計39の圧力が過剰に上昇しないように安全弁42を設けた。
【0036】
上記方法にて合成された、エタノール混合の超臨界二酸化炭素を、ボールバルブ43の開放にて、導入口46より、高圧容器6内に導入した。
【0037】
高圧容器6には、予めプラスチック4および金属錯体8をフィルター44により区分けして設置しておいた。高圧容器6内は、攪拌装置7にて、攪拌され濃度の均一化を図ることができる。
【0038】
本実施例において、プラスチック4は板厚0.3mmのPA6フィルム(アラム株式会社製6432−02 6N 6ナイロン)を用いた。また、金属錯体8は、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)を用いた。
【0039】
本発明においては、本実施例のようにバッチ法を用い、ナイロン樹脂表面に金属錯体を高濃度に注入するためには、対象プラスチックに対して金属錯体の仕込み量をある程度、多くする必要がある。プラスチックに対する金属錯体の仕込み量は0.5wt%(重量パーセント)以上が望ましい。仕込み量が少ないと島状にしか注入されず、導電性を得ることができない場合があるからである。本実施例においては、3g(グラム)のPA6に対し、金属錯体は60mg(2wt%)用いた。
【0040】
高圧容器6内に導入された、上記超臨界二酸化炭素は、金属錯体8を溶解し、容器内全体に拡散する。そして、プラスチック4表面より、一部は浸透していく。高圧容器6の温度は図示しないヒーターによって温度制御可能であるが、本実施例においては120℃とし、この温度で1時間保持した。その後、40℃まで容器6を冷却した。
【0041】
そして、ボールバルブ69を開放し、保圧弁34にて圧力33が急減圧しないように制御しながら、抽出容器32に、大気圧に減圧した二酸化炭素とエタノールおよび余剰な金属錯体の粉体を抽出した。
高圧容器6内を大気にし、PA6のプラスチックを取り出した。表面は金属光沢があり、導電性を有した。
【0042】
本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表3に示す。Pd由来の元素は11.6atomic%含まれることがわかった。
【0043】
【表3】
【0044】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率すなわち金属錯体の還元率を算出した。図8に本実施例のPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すが、Pd3d5とPd3d3のピークがブロードに検出された。これより、メタル成分以外の成分が含まれることが判明した。予め、金属錯体単体にて、Pdの化学結合状態、つまりPd3dのピーク結合エネルギーを同定しておいた。そして、図8の原波形における、Pd3d5化学結合のピークエネルギーは、Pdメタルの335.1eV、PdO2および金属錯体の337.9〜338.2eV、PdOの336.3eVそれぞれに帰属される3種類の波形に分離できることが認められた。各分離波形の合成波形が原波形に完全に重なるようにして、分離波形の面積比を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、76%であることが判明した。
【0045】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は11.6(atomic%)*76(%)=約8.8(atomic%)であることがわかった。
【0046】
これより、最表面(XPSの分析能力に依存するため、通常5nm以下の深さ)においては、Pd錯体が高還元率にてメタルに還元され、高濃度に存在することがわかった。
【0047】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図6,7に示す。図6、図7ともに、矢印部分がプラスチックの最表面部である。これらより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層200が、約40nmの厚みで形成されていることがわかる。また図6より、Pd元素が浸透している深さは少なくとも2μm以上であることがわかる。
【0048】
以上、本実施例におけるナイロン樹脂においては、金属錯体が還元されたPdメタル成分が高濃度に浸透しており、最表面においては、導電性を有する金属膜が形成されていた。
【0049】
[実施例2]
金属錯体にヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用い、プラスチックに対する仕込み量を15wt%とした以外は、実施例1と同様にPA6に金属錯体を注入した。圧力39は15MPaになるように制御した。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で1時間保持した。また本実施例においては、エントレーナを用いなかった。それ以外は、実施例1と同様にして金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0050】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表4に示す。Pd由来の元素は15.0atomic%含まれることがわかった。
【0051】
【表4】
【0052】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、77%であることが判明した。
【0053】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は15.0(atomic%)*77(%)=約11.6(atomic%)であることがわかった。
【0054】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図12、図13に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が明確に形成されていないが、深さ方向においても高濃度に浸透していることがわかった。またPd元素が浸透している深さは少なくとも5μm以上であることがわかった。
【0055】
[実施例3]
プラスチックに板厚0.5mmのPA66フィルム(アラム株式会社製 6435−02 66N)を用い、圧力計39の圧力は20MPaになるように制御した。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で5時間保持した。それ以外は、実施例2と同様な金属錯体および仕込み量にて、プラスチック表面全体に金属錯体を浸透させた。
【0056】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表5に示す。Pd由来の元素は18.2atomic%含まれることがわかった。
【0057】
【表5】
【0058】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、81%であることが判明した。
【0059】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は18.2(atomic%)*81(%)=約14.7(atomic%)であることがわかった。
【0060】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図14、図15に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が、約60nmの厚みで形成されていることがわかった。
【0061】
[実施例4]
プラスチックに板厚0.3mmのPAIフィルム(アラム株式会社製 6448−01)を用い、金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を10重量%とした。圧力計の圧力39は20MPaになるように制御した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0062】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表6に示す。Pd由来の元素は17.9atomic%含まれることがわかった。
【0063】
【表6】
【0064】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、75%であることが判明した。
【0065】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は17.9(atomic%)*75(%)=約13.4(atomic%)であることがわかった。
【0066】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図16、図17に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が、約20nmの厚みで形成されていることがわかった。該最表面部200をEDS(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy エネルギー分散型分光法)にて元素分析したところ、Pd元素が30atomic%検出された。
【0067】
本試料においては、深さ方向における金属錯体の浸透が認められなかった。この要因として、材料のガラス転移温度が高く(約250℃)、処理条件(150℃、20MPa)によりポリマーが十分に膨潤しなかったことが推定される。しかし、最表面においては、高濃度に金属錯体が吸着していることより、金属錯体および二酸化炭素と本ポリマーの親和性が高いことが示唆される。
【0068】
[実施例5]
プラスチックに射出成形で作製したガラス繊維を33%含有した板厚2.0mmのPA6(三菱エンジニリアリングプラスチック製 ノバミッド1015G33)の基板を用いた。金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を25重量%とした。圧力計の圧力39は20MPaになるように制御した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0069】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表7に示す。Pd由来の元素は8.6atomic%含まれることがわかった。
【0070】
【表7】
【0071】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、80%であることが判明した。
【0072】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は8.6(atomic%)*80(%)=約6.9(atomic%)であることがわかった。
【0073】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図18、図19に示した。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層は明確に形成されていないことがわかった。しかし、少なくとも2μm以上の深さにて高濃度にPd元素が浸透していることがわかった。この深さの範囲において、ガラス繊維は観察されなかった。これは、射出成形時において、比重の重いガラス繊維が成形体の中心分に集中し、最表面に浮上しにくいことが要因と考えられる。
【0074】
[実施例6]
本実施例においては、シリンジポンプ等は実施例1と同様な装置を用い、ボールバルブ43までは実施例1と同様な装置構成とした。本実施例にかかる装置の一部を図2に示す。超臨界二酸化炭素とエタノールの混合溶媒は、ボールバルブ43、バルブ47を経て、金属錯体8を溶解させる高圧容器6に導入した。エタノールと二酸化炭素の混合比および圧力は実施例1と同様にした。圧力は圧力計51が20MPaになるように調整した。
高圧容器6内で、実施例1と同様の金属錯体ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)を、攪拌装置7を用い、超臨界二酸化炭素に溶解させた。
【0075】
本実施例においては、下記方法で予め射出成形したナイロン樹脂のプラスチック板をプレス成形した。本実施例においては、ナイロン樹脂にPA6(三菱エンジニアリングプラスチック社製 ノバミッド1010C2)を用いた。まず、板厚1.0mmのプラスチック板4をプレスピストン15上にセットし、減圧弁49で圧力計が15MPaになるように調整した超臨界流体をバルブ48の開放により、プレスピストン15下面より導入して、ピストン15を上昇させた。プレスピストン15は、温調ホース52により導入された100℃の温調水によって、温度制御されている。
【0076】
プラスチック板4は、プレスによりNi製のスタンパ14に押し当てられる。スタンパ14は厚み0.6mmであり、スタンパホルダー19によって上金型21上に保持されている。上金型21は温調回路56を流動する温調水によって100℃に温度制御されている。上金型21と下金型は、Oリング67の内側をシールされている。
【0077】
スタンパ14上には、微細な溝幅を有する図3に示す矩形溝22が数本刻まれている。図3に示す通り、スタンパ上の溝22は、溝幅9が100μm、ピッチ10が100μmである。そして各溝の深さは100μmである。また、各溝9は、超臨界流体の導入用円筒状穴18、および排出用穴17と接続されている。各導入穴18、排出穴17それぞれの中心には、スタンパを貫通する直径φ30μmの貫通穴11、12が設けられている。
【0078】
本実施例においては、超臨界流体および溶解した金属錯体は、貫通穴11および導入穴18を経て、プラスチック4と密着したスタンパ上の溝22の間に形成される微細な空間を流動し、排出穴17および貫通穴12から排出させる。
【0079】
本実施例においては、上記の方法でプレスされた状態にて、溝22に対峙したプラスチック4の表面部分にボールバルブ47を開き、超臨界流体に溶解した金属錯体を接触させた。5分間、超臨界流体を滞留させた後、ボールバルブ53を0.5秒間のみ開き、回収槽13に超臨界流体等を一部排出させた。そして、バルブ54を開き、回収槽を大気圧に減圧した。
【0080】
プラスチック4の表面に高圧に戻した超臨界流体を接触させた後、排出させる動作を4回繰り返した。そしてボールバルブ47を閉鎖した後、バルブ53および54を開き、金型内部を大気に減圧した。
【0081】
上記方法により、溝22に対応した部分にのみ、超臨界流体の溶解した金属錯体を浸透させた。さらに、上金型21と下金型20の温調水の温度を170℃に上昇させて、金属錯体を熱還元した。
そして、金型温度を50℃まで冷却した後、プラスチックを取り出した。
【0082】
本実施例におけるプラスチック表面は、スタンパの溝22に対応した部分のみ、凸状に変形し、凸部のみ金属光沢および導電性を有した。断面を観察したところ、図5に示すように、金属元素のクラスター202が表面に高濃度に密集した層を形成しており、深さ50μmまで浸透していた。
【比較例】
【0083】
[比較例1]
プラスチックに、ガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた以外は、実施例1と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表8に示す。その結果、Pd由来の元素は2.2atomic%含まれることがわかった。
【0084】
【表8】
【0085】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。波形は図9に示す。これより、Pdメタルの存在率は、60%であることが判明した。
【0086】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は2.2(atomic%)*60(%)=約1.3(atomic%)であることがわかった。
【0087】
[比較例2]
プラスチックに板厚2.0mmのPEI(ポリエーテルイミド GEプラスチックス社製 ウルテム)基板を用い、金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を1重量%とした。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で30分間保持した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0088】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表9に示す。Pd由来の元素は3.7atomic%含まれることがわかった。
【0089】
【表9】
【0090】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、6%であることが判明した。
【0091】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は3.7(atomic%)*6(%)=約0.2(atomic%)であることがわかった。
【0092】
[比較例3]
プラスチックに板厚0.1mmのPETフィルムを用い、金属錯体にジメチルシクロオクタジエン白金(II)を用いた。金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を1重量%とした。高圧容器の温度を120℃とし、この温度で1時間保持した。それ以外は、比較例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0093】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表10に示す。Pt由来の元素は1.0atomic%含まれることがわかった。
【0094】
【表10】
【0095】
次に、XPSで測定したPt4fの結合エネルギーのナローバンド波形より、Ptメタルの存在率を算出した。これより、Ptメタルの存在率は、26%であることが判明した。
【0096】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPtメタルの量は1.0(atomic%)*26(%)=約0.3(atomic%)であることがわかった。
【0097】
なお、本比較例以外に、PMMA、PCにて同様な実験を行ったが、本発明のような金属光沢を有する導電性膜を形成することができなかった。また、XPS分析による最表面に存在するメタルの量は3atomic%以下であり、還元率は最大65%であった。
上記実施例1〜5および比較例1〜3の金属錯体の注入条件を表11に、金属錯体注入後のXPS分析結果を表12にまとめて示す。
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置の一部を示す概略構成図である。
【図3】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置に組み込まれたスタンパ上の溝の構成を示す上面図である。
【図4】本発明にかかるプラスチック構造体の断面構造の模式図である。
【図5】本発明にかかるプラスチック構造体の断面構造の模式図である。
【図6】本発明にかかるプラスチック構造体のTEMによる断面写真である。
【図7】本発明にかかるプラスチック構造体のTEMによる断面写真である。
【図8】本発明にかかるプラスチックにおけるPD3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すグラフである。
【図9】本発明にかかるプラスチックにおけるPD3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すグラフである。
【図10】一般的なプラスチックの無電解メッキプロセスを示すフローチャートである。
【図11】一般的な配線層の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図12】実施例2にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図13】実施例2にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図14】実施例3にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図15】実施例3にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図16】実施例4にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図17】実施例4にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図18】実施例5にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図19】実施例5にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【符号の説明】
【0101】
4 プラスチック構造体
202 クラスター
【技術分野】
【0001】
本発明は表面改質されたプラスチック構造体及びプラスチック構造体の製造方法に関する。更に詳細には、本発明は表面改質され導電性を有するプラスチック構造体及びプラスチック構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキは、プラスチック構造体よりなる電子機器の表面に金属導電膜を形成する手段として広く利用されている。プラスチックの無電解メッキプロセスは材料などにより多少異なるが、一般的に図10の流れ図に示されるように、樹脂成形(S100)、成形体の脱脂(S101)、エッチング(S102)、中和及び湿潤化(S103)、触媒付与(S104)、触媒活性化(S105)、および無電解メッキ(S106)の各工程からなる。
【0003】
また、エッチングにはクロム酸溶液やアルカリ金属水酸化物溶液などを用いるが、これらエッチング液は中和等の後処理が必要なため、コスト高の要因となっている他、毒性の高いエッチャントを用いることによる取り扱いの問題がある。
【0004】
エッチングによる粗面化の必要のないプロセスが従来から幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2)。これらはメッキ触媒の含有する薄膜を有機バインダーや紫外線硬化樹脂によりプラスチック表面に形成するものである。また、アミン化合物等のガス雰囲気で紫外線レーザーをプラスチック表面に照射し改質する技術も既に提案されている(例えば、特許文献3)。さらに、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線処理等による改質技術も提案されている。
【0005】
一方、無電解メッキや電解メッキにより回路基板上に配線を形成する方法としてセミアディティブ法がよく知られている。セミアディティブ方法にかかるフローを図11に示す。
【0006】
この方法によれば、配線層は次に示す工程により形成される。まず、図10に示した方法と同様の工程により樹脂成形体の表面を処理する(S100〜S105)。次に、無電解メッキにより基板全体に1〜2μmのメッキ層を形成する(S106)。続いて、感光性フィルムやレジストを形成後(S107)、マスキングして露光および現像を行うことにより配線パターンが設けられたフィルムやレジストの層を形成する(S108)。さらに電解メッキプロセスによりパターン化によって露出した無電解メッキ層上に電解メッキを形成する(S109)。次にフィルムやレジストを除去した後(S110)、ソフトエッチングにより配線部以外の無電解メッキ層を除去することでメッキ配線は完成する(S111)。
【0007】
更に、銅メッキの場合、樹脂との密着性が悪いことから(酸化)銅に微細突起を作り樹脂とのアンカー作用を強化する後処理も行われることもある。この処理は、通常、黒化処理と呼ばれる。
【0008】
成形体に立体回路を設ける方法も従来から提案されている(例えば、特許文献4及び5)。まず、立体的な回路基板のプラスチックを樹脂成形により形成する。次に、表面を粗面化および触媒付与した後、全面に無電解メッキを形成し、フォトレジストを全面塗着する。そしてフォトマスクを被せて露光した後に現像し回路パターン形成部以外を除去する。
【0009】
この上に電解メッキさらにNiやAuの無電解メッキを形成した後、フォトレジストを剥離するとともに無電解メッキの不要部分をエッチング除去する。立体構造体に均一なフォトレジストを形成するのは困難であるため、電着レジストを用いることが特許文献4に提案されているが、かかるレジストは耐アルカリ性が低いという欠点を有している。
【0010】
射出成形を利用した回路形成方法も提案されている(例えば、特許文献6)。この特許文献6に記載された方法によれば、先ず、金型表面における回路形成面にRa1〜5μm程度の粗面化した面を設け、射出成形前に触媒核を金型の全面に付着させた後、回路基板を射出成形で形成することで該触媒核を全面転写させる。そして、触媒核の密着性の強い粗面化された成形面のみ無電解メッキが強固に密着し、それ以外の粗面化されていない個所は密着性が弱いため電解メッキ後における回路以外の無電解メッキ層を除去するエッチングの際に核触媒と共に除去できると特許文献6中で説明されている。
【0011】
こうした、従来におけるプラスチックの無電解メッキ膜およびメッキ膜配線の形成技術の問題点を克服すべく、超臨界流体を用いた、新規なプラスチックの無電解メッキ法が提案されている(例えば、非特許文献1)。非特許文献1に記載された方法によれば、有機金属錯体を超臨界二酸化炭素に溶解させ、各種ポリマーに接触させることで、ポリマー表面に金属錯体を注入することができる。そして、加熱や化学還元処理する等によって還元することにより金属微粒子を析出させる。これにより、ポリマー表面全体に無電解メッキ可能になる。このプロセスによれば、廃液処理が不要で、表面粗さが良好なプラスチックの無電解メッキプロセスが達成できる、とされる。
【特許文献1】特開平9−59778号公報
【特許文献2】特開2001−303255号公報
【特許文献3】特開平6−87964号公報
【特許文献4】特開平4−76985号公報
【特許文献5】特開平1−206692号公報
【特許文献6】特開平6−196840号公報
【非特許文献1】堀照夫著「超臨界流体の最新応用技術」株式会社エヌ・ティー・エス出版、p.250-255(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記非特許文献1においては、メッキ処理可能なポリマーとして、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、PBT(ポリブチルテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン6(PA6)、等が開示されている。そして、超臨界二酸化炭素に溶解するとともにポリマー内に浸透し、メッキ核となる金属錯体として、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)が開示されているが、金属錯体はポリマー表面から内部に、島状に浸透する例のみ開示されている。そして、ポリマー表面に導電性を付与するためには、金属錯体の浸透および還元後、上述の通り無電解メッキ膜の形成が必須であった。
【0013】
そして、本発明者らが鋭意検討した結果、超臨界流体に溶解した金属錯体は、ほとんどのポリマーに対し、最表面における浸透量が、多くても2〜3atomic%(アトミックパーセント)以下であり、島状に浸透することが判明した。さらに、浸透した金属錯体が、効率よく還元され金属微粒子になることは殆どなく、つまり還元率が必ずしも高くないことが判った。
【0014】
従って、本発明の目的は、超臨界流体を溶媒に用いたプラスチックの表面改質方法において、前記課題を解決し、金属錯体をプラスチック表面から高濃度に内部に浸透させることにある。さらに、高濃度に浸透した金属錯体を高還元率にて金属微粒子に還元することで、金属微粒子による導電性膜を、無電界メッキプロセスなしで形成することを目的とした。
【0015】
さらに、成形加工時に、超臨界流体に溶解した金属錯体をプラスチック表面に選択的に高濃度に浸透させ、かつ還元し、表面を粗面化することなく、また無電解メッキプロセスなしで導電性を有する電気配線パターンを形成することを目的とした。もしくは、無電解メッキの触媒核となる金属微粒子を高効率にてプラスチック表面に形成することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明にかかるプラスチック構造体は、有機金属錯体若しくはその変性物からなる金属元素がプラスチック構造体の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在し、少なくとも前記金属元素が存在する領域にアミド基が存在するものである。本発明によれば、金属錯体もしくはそれに由来する金属元素がプラスチックおよびプラスチック構造体の最表面において高濃度に浸透しているで、良質な無電解メッキ膜が形成できる。また、無電解メッキ処理を行わずとも、導電性を得ることが可能となる。尚、本発明にかかるプラスチック構造体は、プラスチック及びプラスチック成形体(成形品)の双方を含む。
【0017】
図4に本発明にかかるプラスチックの断面構造の模式図を示す。図に示されるように、プラスチックの表面領域201に金属錯体や金属元素のクラスター202が浸透している。特に、最表面200に、より多くのクラスター202が浸透している。
【0018】
ここで、プラスチックの分析方法は、例えば、次の方法を用いることができる。まず、金属錯体や金属元素における、プラスチック最表面よりの厚み方向の分布は、プラスチック断面を集束イオンビーム加工観察装置(FIB:Focused Ion Beam)にて露出させた後、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて断面観察することにより同定できる。また、電子線マイクロプローブ分析装置(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)にて金属微粒子の分布を厚み方向にマッピングすることができる。
【0019】
最表面における金属錯体やそれに由来する金属微粒子の元素比率や金属錯体の還元率等の状態解析は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy、ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)を用いることができる。X線光電子分光法では、検出された電子の結合エネルギーから元素の種類、シグナル強度から元素の比率を調べることができる。また、内部に浸透した金属錯体が完全に金属元素に還元されていないプラスチックを分析した場合、検出波形は金属元素の結合エネルギーよりも高エネルギー側にシフトしたブロードな形状になる。この場合、メタルと、その酸化物や金属錯体の比率を状態解析することにより、メタルとして存在する金属元素の比率を求めることができる。あらかじめ、金属錯体単体の結合エネルギーを調査する必要があるが、プラスチック内に存在する金属錯体は、超臨界二酸化炭素にてプラスチックより抽出し、単体で取り出し分析することができる。
【0020】
また本発明にかかるプラスチック構造体は、アミド基(-CONH)を有するプラスチック材料により構成される。本発明者らの検討によれば、例えば、下記構造を有するポリアミド(PA)系材料に対しては、高濃度に金属錯体が浸透され、また高い還元率を得ることができる。PAは下記化学構造式(1)、(2)で示されるナイロン系ポリマーを用いることができる。また、ポリアミドイミド(PAI)のようなベンゼン環を有する高耐熱性スーパーエンプラや芳香族ナイロンを用いることができる。各種プラスチック材料は、無機フィラー等を含有していてもよい。
【0021】
【化1】
【0022】
【表1】
【0023】
【化2】
【0024】
【表2】
さらに、本発明にかかるプラスチック構造体は、その表面が内部に浸透した金属元素により導電性を有する。上記ポリアミド系材料に対して、他のプラスチックと比較し、高濃度に金属錯体が浸透し、無電解メッキプロセスなしで金属導電性膜が形成可能となる。そのメカニズムは、親水性のアミド基を有することに起因し、超臨界二酸化炭素や金属錯体に対し親和性がよい、金属錯体の還元サイトとして働く、などと考えられる。
【0025】
また、超臨界流体に溶解させた有機金属錯体を、アミド基を有するプラスチックに接触させることで、該プラスチックの表面に有機金属錯体に含有される金属元素より構成される導電膜を形成するが可能である。本発明に用いることが可能な有機金属錯体には、超臨界二酸化炭素にある程度の溶解度を有すれば、任意であるが、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)、ジメチル(シクロオクタジエニル)プラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトヒドレート銅(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトプラチナ(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナト(トリメチルホスフィン)銀(I)、ジメチル(ヘプタフルオロオクタネジオネート)銀(AgFOD)等が含まれる。超臨界流体にこれら金属錯体を溶解させ、プラスチックに浸透させた後、加熱処理や化学還元処理により、還元効率を向上させてもよい。
【0026】
本発明においては、金属錯体の超臨界流体に対する溶解度を向上させるために、アセトン、アルコール等の助溶媒を用いてもよい。
また、プラスチック構造体において少なくとも金属元素が存在する領域にガラス繊維を包含させることが好ましい。これにより、プラスチック構造体の強度を高めることができる。
【0027】
本発明の態様においては、成形時に表面に高濃度にプラスチック表面および内部に金属錯体および金属微粒子を浸透させることができ、例えば導電性を有するプラスチック構造体を得ることができる。特に、本発明によれば、密着性の高い金属膜を得ることができ、配線として利用することも可能である。表面電気抵抗の低減のため、さらに、無電解メッキ膜の形成を施してもよい。
【0028】
アミド基を有するプラスチックと金属錯体の溶解した超臨界流体を接触させる方法は、任意であるが、例えば可塑化シリンダー内等において、溶融状態のプラスチックと超臨界流体等を混合してもよい。また、金型にプラスチックを射出充填した後、金型とプラスチックの間に隙間を形成し、超臨界流体および金属錯体を導入してもよい。
【0029】
本発明で使用することができる超臨界流体は、空気、CO、CO2、O2、N2、H2O、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、メタノール、エチルアルコール、アセトン、ジエチルエーテル等である。N2の臨界温度は−147℃、臨界圧力は34気圧であり、H2Oの臨界温度は374℃、臨界圧力は218気圧であるのに対して、CO2の臨界温度は31℃、臨界圧力は73気圧であり、n―ヘキサン並の溶解度を有し、ある種の熱可塑性樹脂材料へ可塑剤として働き射出成形や押し出し成形で実績が多い点で、CO2が特に望ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0030】
また、別の観点による本発明は、プラスチック構造体の表面に導電膜を形成する金属元素のパターンを有するプラスチック構造体の製造方法であって、射出成形装置もしくはプレス装置の金型内にアミド基を表面に有するプラスチックからなる熱可塑性樹脂を射出充填もしくは保持するステップと、有機金属錯体の溶解した超臨界流体を熱可塑性樹脂表面に選択的に接触させるステップからなり、前記プラスチック構造体の表面には、前記有機金属錯体に還元されることにより生成された金属微粒子が5atomic%の割合で存在し、導電性を有する。
【0031】
本発明におけるプラスチックの断面構造の模式図を図5に示すが、任意の線幅203にて、任意の高さ201を有する凸部において、最表面200を中心に金属錯体や金属元素のクラスター202が浸透している。本発明の態様によれば、金属微粒子がナノスケールのクラスターを形成しながら高密度にパターン化された状態でプラスチック内部に選択式に浸透しているため、密着性および表面平滑性に優れた電気配線を得ることができる。さらに導電膜の膜厚を無電解メッキ等により増やし、表面の電気抵抗を下げて用いてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、表面近傍の内部に金属微粒子が高濃度に浸透する新規なプラスチックを提供することができる。金属微粒子は選択式に浸透させることも可能であるので、電気回路を有するプラスチック構造体も得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
[実施例1]
本実施例において用いたプラスチック構造体の製造装置の概略構成を図1に示す。本実施例においては、図1に示す製造装置を用いて、ナイロン樹脂の表面全体に金属錯体を注入した。また、超臨界流体の種類としては、二酸化炭素を用いた。本装置の配管表面すべてには、図示しないヒーターが巻かれている。配管ヒーターは55℃に設定した。
【0034】
また、本実施例においては、超臨界流体の発生装置として、公知のシリンジポンプ(ISCO社製SFX260D)を用いた。3〜7MPaの液化二酸化炭素を蓄えるボンベ1は、ボールバルブ35の手動による開放により、フィルター41および逆流防止弁37を通過し、シリンジポンプ2に導入され、昇圧される。尚、液化二酸化炭素の圧力は、圧力計40によって測定される。一方、助溶媒であるエタノールやアセトン等のエントレーナは、容器31に蓄えられる。容器31に蓄えられたエントレーナは、ボールバルブ36を開放すると、逆流防止弁37を経てエントレーナ用シリンジポンプ3に導入され、昇圧される。
【0035】
本実施例においては、二酸化炭素に対するエントレーナの体積比濃度を任意の値にて制御しながら、二酸化炭素とエントレーナの混合流体を、圧力計39の圧力が20MPaになるように制御した。本実施例においては、エントレーナにエタノールを用い、二酸化炭素に対する濃度は2%とした。圧力計39の圧力が過剰に上昇しないように安全弁42を設けた。
【0036】
上記方法にて合成された、エタノール混合の超臨界二酸化炭素を、ボールバルブ43の開放にて、導入口46より、高圧容器6内に導入した。
【0037】
高圧容器6には、予めプラスチック4および金属錯体8をフィルター44により区分けして設置しておいた。高圧容器6内は、攪拌装置7にて、攪拌され濃度の均一化を図ることができる。
【0038】
本実施例において、プラスチック4は板厚0.3mmのPA6フィルム(アラム株式会社製6432−02 6N 6ナイロン)を用いた。また、金属錯体8は、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)を用いた。
【0039】
本発明においては、本実施例のようにバッチ法を用い、ナイロン樹脂表面に金属錯体を高濃度に注入するためには、対象プラスチックに対して金属錯体の仕込み量をある程度、多くする必要がある。プラスチックに対する金属錯体の仕込み量は0.5wt%(重量パーセント)以上が望ましい。仕込み量が少ないと島状にしか注入されず、導電性を得ることができない場合があるからである。本実施例においては、3g(グラム)のPA6に対し、金属錯体は60mg(2wt%)用いた。
【0040】
高圧容器6内に導入された、上記超臨界二酸化炭素は、金属錯体8を溶解し、容器内全体に拡散する。そして、プラスチック4表面より、一部は浸透していく。高圧容器6の温度は図示しないヒーターによって温度制御可能であるが、本実施例においては120℃とし、この温度で1時間保持した。その後、40℃まで容器6を冷却した。
【0041】
そして、ボールバルブ69を開放し、保圧弁34にて圧力33が急減圧しないように制御しながら、抽出容器32に、大気圧に減圧した二酸化炭素とエタノールおよび余剰な金属錯体の粉体を抽出した。
高圧容器6内を大気にし、PA6のプラスチックを取り出した。表面は金属光沢があり、導電性を有した。
【0042】
本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表3に示す。Pd由来の元素は11.6atomic%含まれることがわかった。
【0043】
【表3】
【0044】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率すなわち金属錯体の還元率を算出した。図8に本実施例のPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すが、Pd3d5とPd3d3のピークがブロードに検出された。これより、メタル成分以外の成分が含まれることが判明した。予め、金属錯体単体にて、Pdの化学結合状態、つまりPd3dのピーク結合エネルギーを同定しておいた。そして、図8の原波形における、Pd3d5化学結合のピークエネルギーは、Pdメタルの335.1eV、PdO2および金属錯体の337.9〜338.2eV、PdOの336.3eVそれぞれに帰属される3種類の波形に分離できることが認められた。各分離波形の合成波形が原波形に完全に重なるようにして、分離波形の面積比を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、76%であることが判明した。
【0045】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は11.6(atomic%)*76(%)=約8.8(atomic%)であることがわかった。
【0046】
これより、最表面(XPSの分析能力に依存するため、通常5nm以下の深さ)においては、Pd錯体が高還元率にてメタルに還元され、高濃度に存在することがわかった。
【0047】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図6,7に示す。図6、図7ともに、矢印部分がプラスチックの最表面部である。これらより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層200が、約40nmの厚みで形成されていることがわかる。また図6より、Pd元素が浸透している深さは少なくとも2μm以上であることがわかる。
【0048】
以上、本実施例におけるナイロン樹脂においては、金属錯体が還元されたPdメタル成分が高濃度に浸透しており、最表面においては、導電性を有する金属膜が形成されていた。
【0049】
[実施例2]
金属錯体にヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)を用い、プラスチックに対する仕込み量を15wt%とした以外は、実施例1と同様にPA6に金属錯体を注入した。圧力39は15MPaになるように制御した。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で1時間保持した。また本実施例においては、エントレーナを用いなかった。それ以外は、実施例1と同様にして金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0050】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表4に示す。Pd由来の元素は15.0atomic%含まれることがわかった。
【0051】
【表4】
【0052】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、77%であることが判明した。
【0053】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は15.0(atomic%)*77(%)=約11.6(atomic%)であることがわかった。
【0054】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図12、図13に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が明確に形成されていないが、深さ方向においても高濃度に浸透していることがわかった。またPd元素が浸透している深さは少なくとも5μm以上であることがわかった。
【0055】
[実施例3]
プラスチックに板厚0.5mmのPA66フィルム(アラム株式会社製 6435−02 66N)を用い、圧力計39の圧力は20MPaになるように制御した。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で5時間保持した。それ以外は、実施例2と同様な金属錯体および仕込み量にて、プラスチック表面全体に金属錯体を浸透させた。
【0056】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表5に示す。Pd由来の元素は18.2atomic%含まれることがわかった。
【0057】
【表5】
【0058】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、81%であることが判明した。
【0059】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は18.2(atomic%)*81(%)=約14.7(atomic%)であることがわかった。
【0060】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図14、図15に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が、約60nmの厚みで形成されていることがわかった。
【0061】
[実施例4]
プラスチックに板厚0.3mmのPAIフィルム(アラム株式会社製 6448−01)を用い、金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を10重量%とした。圧力計の圧力39は20MPaになるように制御した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0062】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表6に示す。Pd由来の元素は17.9atomic%含まれることがわかった。
【0063】
【表6】
【0064】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、75%であることが判明した。
【0065】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は17.9(atomic%)*75(%)=約13.4(atomic%)であることがわかった。
【0066】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図16、図17に示す。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層が、約20nmの厚みで形成されていることがわかった。該最表面部200をEDS(Energy Dispersive X-Ray Spectroscopy エネルギー分散型分光法)にて元素分析したところ、Pd元素が30atomic%検出された。
【0067】
本試料においては、深さ方向における金属錯体の浸透が認められなかった。この要因として、材料のガラス転移温度が高く(約250℃)、処理条件(150℃、20MPa)によりポリマーが十分に膨潤しなかったことが推定される。しかし、最表面においては、高濃度に金属錯体が吸着していることより、金属錯体および二酸化炭素と本ポリマーの親和性が高いことが示唆される。
【0068】
[実施例5]
プラスチックに射出成形で作製したガラス繊維を33%含有した板厚2.0mmのPA6(三菱エンジニリアリングプラスチック製 ノバミッド1015G33)の基板を用いた。金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を25重量%とした。圧力計の圧力39は20MPaになるように制御した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0069】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢があり、導電性を有した。本実施例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表7に示す。Pd由来の元素は8.6atomic%含まれることがわかった。
【0070】
【表7】
【0071】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、80%であることが判明した。
【0072】
以上より、本実施例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は8.6(atomic%)*80(%)=約6.9(atomic%)であることがわかった。
【0073】
さらに、本実施例のプラスチックをFIBにて断面を露出させ、TEMにて観察した結果を図18、図19に示した。これより、最表面には高濃度にPdの金属元素が密集した層は明確に形成されていないことがわかった。しかし、少なくとも2μm以上の深さにて高濃度にPd元素が浸透していることがわかった。この深さの範囲において、ガラス繊維は観察されなかった。これは、射出成形時において、比重の重いガラス繊維が成形体の中心分に集中し、最表面に浮上しにくいことが要因と考えられる。
【0074】
[実施例6]
本実施例においては、シリンジポンプ等は実施例1と同様な装置を用い、ボールバルブ43までは実施例1と同様な装置構成とした。本実施例にかかる装置の一部を図2に示す。超臨界二酸化炭素とエタノールの混合溶媒は、ボールバルブ43、バルブ47を経て、金属錯体8を溶解させる高圧容器6に導入した。エタノールと二酸化炭素の混合比および圧力は実施例1と同様にした。圧力は圧力計51が20MPaになるように調整した。
高圧容器6内で、実施例1と同様の金属錯体ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(II)を、攪拌装置7を用い、超臨界二酸化炭素に溶解させた。
【0075】
本実施例においては、下記方法で予め射出成形したナイロン樹脂のプラスチック板をプレス成形した。本実施例においては、ナイロン樹脂にPA6(三菱エンジニアリングプラスチック社製 ノバミッド1010C2)を用いた。まず、板厚1.0mmのプラスチック板4をプレスピストン15上にセットし、減圧弁49で圧力計が15MPaになるように調整した超臨界流体をバルブ48の開放により、プレスピストン15下面より導入して、ピストン15を上昇させた。プレスピストン15は、温調ホース52により導入された100℃の温調水によって、温度制御されている。
【0076】
プラスチック板4は、プレスによりNi製のスタンパ14に押し当てられる。スタンパ14は厚み0.6mmであり、スタンパホルダー19によって上金型21上に保持されている。上金型21は温調回路56を流動する温調水によって100℃に温度制御されている。上金型21と下金型は、Oリング67の内側をシールされている。
【0077】
スタンパ14上には、微細な溝幅を有する図3に示す矩形溝22が数本刻まれている。図3に示す通り、スタンパ上の溝22は、溝幅9が100μm、ピッチ10が100μmである。そして各溝の深さは100μmである。また、各溝9は、超臨界流体の導入用円筒状穴18、および排出用穴17と接続されている。各導入穴18、排出穴17それぞれの中心には、スタンパを貫通する直径φ30μmの貫通穴11、12が設けられている。
【0078】
本実施例においては、超臨界流体および溶解した金属錯体は、貫通穴11および導入穴18を経て、プラスチック4と密着したスタンパ上の溝22の間に形成される微細な空間を流動し、排出穴17および貫通穴12から排出させる。
【0079】
本実施例においては、上記の方法でプレスされた状態にて、溝22に対峙したプラスチック4の表面部分にボールバルブ47を開き、超臨界流体に溶解した金属錯体を接触させた。5分間、超臨界流体を滞留させた後、ボールバルブ53を0.5秒間のみ開き、回収槽13に超臨界流体等を一部排出させた。そして、バルブ54を開き、回収槽を大気圧に減圧した。
【0080】
プラスチック4の表面に高圧に戻した超臨界流体を接触させた後、排出させる動作を4回繰り返した。そしてボールバルブ47を閉鎖した後、バルブ53および54を開き、金型内部を大気に減圧した。
【0081】
上記方法により、溝22に対応した部分にのみ、超臨界流体の溶解した金属錯体を浸透させた。さらに、上金型21と下金型20の温調水の温度を170℃に上昇させて、金属錯体を熱還元した。
そして、金型温度を50℃まで冷却した後、プラスチックを取り出した。
【0082】
本実施例におけるプラスチック表面は、スタンパの溝22に対応した部分のみ、凸状に変形し、凸部のみ金属光沢および導電性を有した。断面を観察したところ、図5に示すように、金属元素のクラスター202が表面に高濃度に密集した層を形成しており、深さ50μmまで浸透していた。
【比較例】
【0083】
[比較例1]
プラスチックに、ガラス転移温度約150℃の脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製ゼオネックス480R)を用いた以外は、実施例1と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表8に示す。その結果、Pd由来の元素は2.2atomic%含まれることがわかった。
【0084】
【表8】
【0085】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。波形は図9に示す。これより、Pdメタルの存在率は、60%であることが判明した。
【0086】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は2.2(atomic%)*60(%)=約1.3(atomic%)であることがわかった。
【0087】
[比較例2]
プラスチックに板厚2.0mmのPEI(ポリエーテルイミド GEプラスチックス社製 ウルテム)基板を用い、金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を1重量%とした。高圧容器の温度を150℃とし、この温度で30分間保持した。それ以外は、実施例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0088】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表9に示す。Pd由来の元素は3.7atomic%含まれることがわかった。
【0089】
【表9】
【0090】
次に、XPSで測定したPd3dの結合エネルギーのナローバンド波形より、Pdメタルの存在率を算出した。これより、Pdメタルの存在率は、6%であることが判明した。
【0091】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPdメタルの量は3.7(atomic%)*6(%)=約0.2(atomic%)であることがわかった。
【0092】
[比較例3]
プラスチックに板厚0.1mmのPETフィルムを用い、金属錯体にジメチルシクロオクタジエン白金(II)を用いた。金属錯体のプラスチックに対する仕込み量を1重量%とした。高圧容器の温度を120℃とし、この温度で1時間保持した。それ以外は、比較例2と同様に金属錯体をプラスチック表面全体に浸透させた。
【0093】
処理後のプラスチック表面は、金属光沢や導電性は有さなかった。本比較例のプラスチック表面をX線光電子分光装置(XPS)にて元素比を測定した結果を表10に示す。Pt由来の元素は1.0atomic%含まれることがわかった。
【0094】
【表10】
【0095】
次に、XPSで測定したPt4fの結合エネルギーのナローバンド波形より、Ptメタルの存在率を算出した。これより、Ptメタルの存在率は、26%であることが判明した。
【0096】
以上より、本比較例のプラスチックにおいては、最表面におけるPtメタルの量は1.0(atomic%)*26(%)=約0.3(atomic%)であることがわかった。
【0097】
なお、本比較例以外に、PMMA、PCにて同様な実験を行ったが、本発明のような金属光沢を有する導電性膜を形成することができなかった。また、XPS分析による最表面に存在するメタルの量は3atomic%以下であり、還元率は最大65%であった。
上記実施例1〜5および比較例1〜3の金属錯体の注入条件を表11に、金属錯体注入後のXPS分析結果を表12にまとめて示す。
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置の一部を示す概略構成図である。
【図3】本発明にかかるプラスチック構造体の製造装置に組み込まれたスタンパ上の溝の構成を示す上面図である。
【図4】本発明にかかるプラスチック構造体の断面構造の模式図である。
【図5】本発明にかかるプラスチック構造体の断面構造の模式図である。
【図6】本発明にかかるプラスチック構造体のTEMによる断面写真である。
【図7】本発明にかかるプラスチック構造体のTEMによる断面写真である。
【図8】本発明にかかるプラスチックにおけるPD3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すグラフである。
【図9】本発明にかかるプラスチックにおけるPD3dの結合エネルギーのナローバンド波形を示すグラフである。
【図10】一般的なプラスチックの無電解メッキプロセスを示すフローチャートである。
【図11】一般的な配線層の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図12】実施例2にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図13】実施例2にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図14】実施例3にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図15】実施例3にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図16】実施例4にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図17】実施例4にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図18】実施例5にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【図19】実施例5にかかるプラスチックの断面をTEMにより観察した図である。
【符号の説明】
【0101】
4 プラスチック構造体
202 クラスター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属錯体若しくはその変性物からなる金属元素がプラスチック構造体の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在し、少なくとも前記金属元素が存在する領域にアミド基が存在するプラスチック構造体。
【請求項2】
前記金属元素の還元率は60%以上であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック構造体。
【請求項3】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項1又は2記載のプラスチック構造体。
【請求項4】
プラスチック構造体の表面が内部に浸透した金属元素により導電性を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のプラスチック構造体。
【請求項5】
前記プラスチック構造体において少なくとも前記金属元素が存在する領域は、ガラス繊維を包含することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のプラスチック構造体。
【請求項6】
プラスチック表面に導電膜を形成する方法であって、
有機金属錯体を超臨界流体に溶解させるステップと、
前記有機金属錯体を、アミド基を有するプラスチック表面に接触させるステップを備え、該プラスチックの表面に有機金属錯体に含有される金属元素によって導電膜を形成する導電膜の形成方法。
【請求項7】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項6記載の導電膜の形成方法。
【請求項8】
前記プラスチックはガラス繊維を含有することを特徴とする請求項6又は7記載の導電膜の形成方法。
【請求項9】
プラスチック構造体の製造方法であって、
有機金属錯体を超臨界流体に溶解させるステップと、
射出成形装置の金型内に射出充填したアミド基を有するプラスチックと、上記有機金属錯体の溶解した超臨界流体とを接触させ、プラスチック構造体を得るステップとを備え、
前記プラスチック構造体の所望部分の最表面から5nm以下の深さにおいては、前記有機金属錯体に含有される金属微粒子が5atomic%以上の割合で存在しているプラスチック構造体の製造方法。
【請求項10】
プラスチック構造体の表面に導電膜を形成する金属元素のパターンを有するプラスチック構造体の製造方法であって、
射出成形装置もしくはプレス装置の金型内にアミド基を表面に有するプラスチックからなる熱可塑性樹脂を射出充填もしくは保持するステップと、
有機金属錯体の溶解した超臨界流体を熱可塑性樹脂表面に選択的に接触させるステップからなり、
前記プラスチック構造体の表面には、前記有機金属錯体に還元されることにより生成された金属微粒子が5atomic%の割合で存在し、導電性を有することを特徴とするプラスチック構造体の製造方法。
【請求項11】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項9又は10記載のプラスチック構造体の製造方法。
【請求項12】
前記プラスチックはガラス繊維を含有することを特徴とする請求項9、10又は11記載のプラスチック構造体の製造方法。
【請求項1】
有機金属錯体若しくはその変性物からなる金属元素がプラスチック構造体の所望部分の最表面より5nm以下の深さにおいては5atomic%以上存在し、少なくとも前記金属元素が存在する領域にアミド基が存在するプラスチック構造体。
【請求項2】
前記金属元素の還元率は60%以上であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック構造体。
【請求項3】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項1又は2記載のプラスチック構造体。
【請求項4】
プラスチック構造体の表面が内部に浸透した金属元素により導電性を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のプラスチック構造体。
【請求項5】
前記プラスチック構造体において少なくとも前記金属元素が存在する領域は、ガラス繊維を包含することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のプラスチック構造体。
【請求項6】
プラスチック表面に導電膜を形成する方法であって、
有機金属錯体を超臨界流体に溶解させるステップと、
前記有機金属錯体を、アミド基を有するプラスチック表面に接触させるステップを備え、該プラスチックの表面に有機金属錯体に含有される金属元素によって導電膜を形成する導電膜の形成方法。
【請求項7】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項6記載の導電膜の形成方法。
【請求項8】
前記プラスチックはガラス繊維を含有することを特徴とする請求項6又は7記載の導電膜の形成方法。
【請求項9】
プラスチック構造体の製造方法であって、
有機金属錯体を超臨界流体に溶解させるステップと、
射出成形装置の金型内に射出充填したアミド基を有するプラスチックと、上記有機金属錯体の溶解した超臨界流体とを接触させ、プラスチック構造体を得るステップとを備え、
前記プラスチック構造体の所望部分の最表面から5nm以下の深さにおいては、前記有機金属錯体に含有される金属微粒子が5atomic%以上の割合で存在しているプラスチック構造体の製造方法。
【請求項10】
プラスチック構造体の表面に導電膜を形成する金属元素のパターンを有するプラスチック構造体の製造方法であって、
射出成形装置もしくはプレス装置の金型内にアミド基を表面に有するプラスチックからなる熱可塑性樹脂を射出充填もしくは保持するステップと、
有機金属錯体の溶解した超臨界流体を熱可塑性樹脂表面に選択的に接触させるステップからなり、
前記プラスチック構造体の表面には、前記有機金属錯体に還元されることにより生成された金属微粒子が5atomic%の割合で存在し、導電性を有することを特徴とするプラスチック構造体の製造方法。
【請求項11】
前記金属元素は、パラジウム錯体若しくはその変性物であることを特徴とする請求項9又は10記載のプラスチック構造体の製造方法。
【請求項12】
前記プラスチックはガラス繊維を含有することを特徴とする請求項9、10又は11記載のプラスチック構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−131769(P2006−131769A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322790(P2004−322790)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】
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