説明

プラスチック複合材料及びその製造方法、プラスチック成形体の製造方法、水熱反応処理残渣の処理方法並びに植物育成用容器の製造方法

【課題】 有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を容易に製造する。
【解決手段】 プラスチックとフィラーとを含むプラスチック複合材料の製造方法であって、上記フィラーに、有機物及び無機物が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック複合材料及びその製造方法、プラスチック成形体の製造方法、水熱反応処理残渣の処理方法並びに植物育成用容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリエチレン等のプラスチックと無機物あるいは有機物とを複合させることによって、プラスチック複合材料を製造する方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、プラスチックと植物体(有機物)とを混合することによって、プラスチックと有機物とを含むプラスチック複合材料を製造する技術が開示されている。また、プラスチックと粘土質粉末等の無機物とを混合することによって、プラスチック複合材料を製造する技術も提案されている。
これらの技術によれば、従来廃棄されていた有機物や無機物をフィラーとしてプラスチックと混合することによって、プラスチック複合材料を製造することができるため、従来廃棄されていた有機物や無機物を再利用することが可能となる。
【特許文献1】特開2000−70914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般的に有機物は、強度が低いため、有機物をフィラーとして用いた場合には、プラスチック複合材料の強度が低くなる。逆に、一般的に無機物は、強度が高いため、無機物をフィラーとして用いた場合には、プラスチック複合材料の強度を向上させることができる。
しかしながら、例えば、プラスチック複合材料を成形してプラスチック成形体を製造する場合には、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチックプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料が求められる場合がある。このような場合においては、有機物あるいは無機物を単独でフィラーとして用いたプラスチック複合材料を成形してプラスチック成形体を製造する場合には、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチックプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を製造することは困難であった。
【0004】
また、近年、下水汚泥を水熱反応処理することによって、分解処理する技術が提案されている。このように下水汚泥を水熱反応処理した場合には、下水汚泥に大量に含まれる有機物が可溶化されることによって下水汚泥を減容化することができるとともに、可溶化された有機物を再利用することができる。ところが、このような水熱反応処理においても、下水汚泥に含まれる有機物が全て可溶化されることはなく、その一部は、残渣(水熱反応処理残渣)として廃棄されるため、このような残渣を再利用する技術が求められている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、以下の点を目的とするものである。
(1)有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を容易に製造する。
(2)下水汚泥を水熱反応処理することによって生成された水熱反応処理残渣を有効利用する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のプラスチック複合材料の製造方法では、第1の手段として、プラスチックとフィラーとを含むプラスチック複合材料の製造方法であって、上記フィラーに、有機物及び無機物が含まれているという構成を採用する。
【0007】
プラスチック複合材料の製造方法に係る第2の手段として、上記第1の手段において、上記フィラーは、下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣であるという構成を採用する。
【0008】
プラスチック複合材料の製造方法に係る第3の手段として、上記第1または第2の手段において、上記プラスチックは、生分解性プラスチックであるという構成を採用する。
【0009】
プラスチック複合材料の製造方法に係る第4の手段として、上記第1〜第3いずれかの手段において、上記プラスチックと上記フィラーとが固相反応するように攪拌・混合することによって上記プラスチック複合材料を製造するという構成を採用する。
【0010】
プラスチック複合材料の製造方法に係る第5の手段として、上記第1〜第3いずれかの手段において、上記プラスチックと上記フィラーとを上記プラスチックの溶融温度において混練することによって上記プラスチック複合材料を製造するという構成を採用する。
【0011】
プラスチック複合材料の製造方法に係る第6の手段として、上記第1〜第3いずれかの手段において、上記プラスチックと上記フィラーとが固相反応するように攪拌・混合し、その後、上記プラスチックの溶融温度において混練することによって上記プラスチック複合材料を製造するという構成を採用する。
【0012】
次に、本発明のプラスチック成形体の製造方法では、本発明のプラスチック複合材料の製造方法に係る第1〜第6いずれかの手段を用いることによって得られた上記プラスチック複合材料を圧縮成形あるいは射出形成することによってプラスチック成形体を製造するという構成を採用する。
【0013】
次に、本発明の水熱反応処理残渣の処理方法は、下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣の処理方法であって、上記水熱反応処理残渣とプラスチックとを含むプラスチック複合材料を製造することによって上記水熱反応処理残渣を処理するという構成を採用する。
【0014】
次に、本発明の植物育成用容器の製造方法は、第1の手段として、下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣と生分解性プラスチックとを含むプラスチック複合材料を圧縮成形あるいは射出成形することによって植物育成用容器を製造するという構成を採用する。
【0015】
植物育成用容器の製造方法に係る第2の手段として、上記第1の手段において、上記プラスチック複合材料に熱可塑性プラスチックを含有させるという構成を採用する。
【0016】
次に、本発明のプラスチック複合材料は、プラスチックとフィラーとを含むプラスチック複合材料であって、上記フィラーに、有機物及び無機物が含まれているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプラスチック複合材料の製造方法によれば、フィラーとして有機物及び無機物が含まれたものを用いる。このため、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を容易に製造することが可能となる。
また、本発明のプラスチック成形体の製造方法によれば、本発明のプラスチック複合材料の製造方法によって得られたプラスチック複合材料を用いてプラスチック成形体が製造されるため、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度の低いプラスチック成形体を製造することができる。
また、本発明の水熱処理残渣の処理方法によれば、水熱処理残渣をフィラーとして用いることによってプラスチック複合材料が製造されるため、下水汚泥を水熱反応処理することによって生成された水熱反応処理残渣を有効利用することが可能となる。
また、本発明の植物育成用容器の製造方法によれば、水熱処理残渣をフィラーとして用いることによって製造されたプラスチック複合材料を成形することによって、植物育成用容器が製造されるため、下水汚泥を水熱反応処理することによって生成された水熱反応処理残渣を有効利用することが可能となる。
また、本発明のプラスチック複合材料によれば、フィラーとして有機物及び無機物が含まれたものが用いられている。このため、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るプラスチック複合材料及びその製造方法、プラスチック成形体の製造方法、水熱反応処理残渣の処理方法並びに植物育成用容器の製造方法の一実施形態について説明する。
【0019】
「プラスチック複合材料とその製造方法及びプラスチック成形体の製造方法」
本実施形態においては、主としてプラスチック成形体の製造方法の一例を説明し、その説明の過程において本発明のプラスチック複合材料とその製造方法の一例を説明する。
本実施形態のプラスチック成形体の製造方法は、プラスチック複合材料の製造方法によって得られたプラスチック複合材料を成形することによって、プラスチック成形体を製造する方法である。具体的には、プラスチックと有機物及び無機物を含むフィラーとを混合し、これによって得られたプラスチック複合材料を成形することによって、プラスチック成形体を製造する。
【0020】
プラスチックとしては、熱可塑性プラスチックや生分解性プラスチックを用いることができる。
【0021】
熱可塑性プラスチックとしては、極性基のないポリエチレン(PE)、極性基を付与したポリエチレン(MPE)あるいはポリ塩化ビニル(PVC)等を用いることができる。なお、ポリエチレンとしては、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンのいずれも使用可能であるが、プラスチック成形体の強度を確保する上では高密度ポリエチレンが好ましい。また、上述のように極性基のないプラスチックを用いることもできるが、プラスチック成形体の強度を向上させるためには、極性基を有するプラスチックを用いることが好ましい。より具体的には、極性基を有するプラスチックを用いることによって、フィラーとプラスチックとが相互作用、若しくは化学結合等によって強固に結合するため、プラスチック成形体の強度を向上させることが可能となる。
【0022】
具体的にポリエチレンの一部に極性基を導入する方法としては、例えばポリエチレンにラジカル開始剤である過酸化ベンゾイルを添加して、ポリエチレン分子から水素原子を引き抜き、ポリエチレン分子鎖上にラジカルを生成させる。そして、さらに無水マレイン酸を添加することで、この無水マレイン酸が上記ポリエチレン分子鎖上のラジカルと反応するため、ポリエチレン分子鎖上にカルボニル基を導入することができる。なお、無水マレイン酸以外にも極性基を有したラジカル反応性の化合物を添加することも可能である。なお、一般的にポリ塩化ビニルは、極性基を有しているため、極性基を導入する処理を行う必要はない。
【0023】
生分解性プラスチックは、土壌中等の微生物によって分解されるプラスチックであり、例えば、ポリ乳酸やポリグリコール酸等を用いることができる。しかしながら、本発明における生分解性プラスチックは、ポリ乳酸やポリグリコール酸に限定されるものではなく、微生物によって分解される全てのプラスチックを本発明の分解性プラスチックとして用いることができる。
【0024】
フィラーは、有機物及び無機物を含んでいる。このようなフィラーとしては、下水汚泥を水熱反応処理した場合に得られる水熱反応処理残渣や下水汚泥そのものを乾燥させたもの等を用いることができる。なお、水熱反応処理残渣には、大量の水分が含有されているため、スプレードライヤや気流乾燥機等を用いて乾燥粉末とした後に用いることが好ましい。また、ここで言う下水汚泥とは、し尿汚泥を含むものである。
このようなフィラーが、例えば、極性基を有するプラスチックと混合されると、フィラーが有する極性基とプラスチックが有する極性基とが相互作用(水素結合等)、若しくは化学結合(例えばエステル結合)等を生じることとなり、極性基がないプラスチックとフィラーとが混合された場合と比較してプラスチック複合材料の強度を向上させることができる。
【0025】
極性基を有するプラスチックとフィラーとを混合する際には、両者が固相反応を生じる条件にて攪拌・混合することが好ましい。具体的には、両者が固相反応するように、機械的に粉砕、攪拌、混合して、次いでその生成物を、プラスチックの溶融温度において加熱混練することにより、両者間における相互作用若しくは化学結合を促進させることが可能となる。なお、加熱混練のみによっても両者間の相互作用若しくは化学結合が生成するため、機械的粉砕、攪拌、混合等の工程を省略することも可能である。また、条件によっては、攪拌・混合のみでもプラスチックとフィラーとが固相反応するため、加熱混練工程を省略することができる。しかしながら、加熱混練工程を省略した場合には、プラスチックが融解しない状態で相互作用若しくは化学結合が進行するため、プラスチック複合材料の成形の容易性が低下する。このため、加熱混練工程を省略した場合には、プラスチック複合材料に含まれるプラスチックが一度溶解するように加熱圧縮工程等によってプラスチック複合材料を成形することが好ましい。
【0026】
なお、固相反応とは、ボールミル等の粉砕、攪拌、混合を常温で同時に行う装置、あるいはヒータとスクリューとを備えた混練機等の装置を用いて、粉砕、攪拌、混合、混練等の剪断力を利用して粒子表面を化学的に改質し、反応性に富む活性基の生成ならびに活性基間の結合を生じさせる反応である。すなわち、このような固相反応を利用することによって、物質の結晶の規則性が乱れ活性になる過程で、周囲の他の物質と反応を生じるメカノケミカル反応が生じ、プラスチックとフィラーとの間に相互作用若しくは化学結合が生じる。
【0027】
また、極性基がないプラスチックとフィラーとを混合する場合であっても、プラスチック及びフィラーを機械的に粉砕、攪拌、混合して、次いでその生成物を、プラスチックの溶融温度において加熱混練することにより、プラスチック複合材料を製造することができる。
【0028】
そして、上述のようにプラスチックとフィラーとを混合することによって、本発明のプラスチック複合材料が製造される。このようなプラスチック複合材料は、プラスチックと有機物及び無機物が含まれたフィラーとを含んで構成されているため、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いものとなる。また、本実施形態のプラスチック複合材料の製造方法によれば、有機物及び無機物が含まれたフィラーを用いることによって、容易に、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を製造することができる。
【0029】
また、このようにして製造されたプラスチック複合材料は、フィラーとして有機物及び無機物を含んでいるため、フィラーとして有機物のみを含んだプラスチック複合材料よりも重量を増加させることができ、フィラーとして無機物のみを含んだプラスチック複合材料よりも重量を低減させることができる。
【0030】
その後、プラスチック複合材料を冷却して、例えば、多孔板を介して排出することによって、直径1〜2mm、長さ2〜3mmのペレットにする。このようにプラスチック複合材料のペレット状に加工する工程を行うか否かは任意であるが、ペレット状に加工することにより、次の成形工程において扱いが容易となる。
その後、例えば、ペレットを成形することによって、プラスチック成形体を製造する。このようにして製造されたプラスチック成形体は、有機物及び無機物を含むフィラーを含むプラスチック複合材料によって製造されるため、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度の低いものとなる。したがって、本実施形態のプラスチック成形体の製造方法によれば、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料から成形されたプラスチック成形体より強度の低いプラスチック成形体を製造することができる。
【0031】
なお、プラスチック複合材料を成形する場合には、例えば、プラスチック複合材料を金型に入れ、圧縮成形機により圧縮することによって、板状のプラスチック成形体とすることもできる。また、射出成形機を用いることによって任意形状のプラスチック成形体を製造することもできる。
例えば、板状のプラスチック成形体は、建築用床タイルや遮音材等として用いることができる。また、射出成形機を用いた場合には、プランターや鉢、皿、壷等のプラスチック成形体を製造することができる。
【0032】
次に、本発明のプラスチック成形体の製造方法について、その具体的実施例を図1に示す。
図1はプラスチック成形体の製造工程のフローを示しており、有機物及び無機物を含むフィラーと、極性基を導入したポリエチレン(MPE)とを複合させて、平板状のプラスチック成形体を製造するプロセスについて示すものである。
【0033】
本実施例では、フィラーとポリエチレン(MPE)とをボールミル等により機械的に粉砕、攪拌、混合する工程(S1)を行った後、その混合物を混練機等を用いて例えば約200℃にて加熱混練を行う(S2)ことによってプラスチック複合材料を製造する。その後、プラスチック複合材料を冷却(S3)し、さらに直径1〜2mm、長さ2〜3mm程度のペレットとする(S4)。
【0034】
得られたペレットを用いて、例えば圧縮成形機による圧縮成形、若しくは射出成形機による射出成形を例えば200℃程度の温度にて行う(S5)。そして冷却(S6)することによって、例えば平板状成形体(プラスチック成形体)を製造する(S7)。
【0035】
このようにして製造された平板状成形体は、フィラーとして有機物及び無機物を含むものが使用されているため、フィラーとして有機物のみを含むものが使用されて製造された平板成形体よりも強度が高く、フィラーとして無機物のみを含むものが使用されて製造された平板成形体よりも強度が低いものとなる。
【0036】
「水熱反応処理残渣の処理方法」
次に、図2を参照して、本発明の水熱反応処理残渣の処理方法について説明する。
図2は、下水汚泥を水熱反応処理する水熱反応処理装置1の概略構成を示したフロー図である。この図に示すように、水熱反応処理装置1は、下水汚泥Xが供給される水熱反応器2を備えている。水熱反応器2は、下水汚泥Xを亜臨界状態まで加圧・加熱することによって、下水汚泥Xに含まれる有機物の一部を液状化して処理済液Yとして排出するものである。このように下水汚泥Xを水熱反応器2において水熱反応処理することによって、下水汚泥Xが減容化されるとともに、再利用可能な処理済液Yを抽出することができる。
【0037】
水熱反応器2において下水汚泥Xが水熱反応処理されることによって生成された水熱反応処理残渣Zには、有機物及び無機物が含まれている。したがって、上述のプラスチック複合材料を製造する場合に、水熱反応処理残渣Zをフィラーとして用いることによって、容易に、有機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度が高く、無機物をフィラーとして用いたプラスチック複合材料より強度の低いプラスチック複合材料を製造することができる。
【0038】
従来、下水汚泥Xを水熱反応処理することによって生成された水熱反応処理残渣Zは、廃棄処分されていたが、本発明の水熱反応処理残渣の処理方法によれば、水熱反応処理残渣Zがプラスチック複合材料のフィラーとして再利用されるため、水熱反応処理残渣Zを有効利用することが可能となる。
なお、水熱反応器2から排出された水熱反応処理残渣Zは、重量割合で65%の水分が含まれている。このため、スプレードライヤや気流乾燥機等を用いて水熱反応処理残渣Zを乾燥させて乾燥粉末とした後にフィラーとして用いることが好ましい。
【0039】
「植物育成用容器の製造方法」
次に、図3及び図4を参照して本発明の植物育成用容器の製造方法について説明する。
本実施形態においては、植物育成用容器として、図3に示す、プランター3を製造する方法について説明する。
【0040】
プランター3は、生分解性プラスチックと水熱反応処理残渣Z(フィラー)とを含むプラスチック複合材料を射出形成することによって製造される。
図4は、水熱反応処理残渣Zを815℃で焼却することによって得られた灰成分について分析した結果を示すものである。この図に示すように、水熱反応処理残渣Zには、植物の栄養素となる、リン、カリウム、カルシウム等が含まれている。このため、プランター3の生分解性プラスチック成分がプランター3内に配置された土に含まれる微生物によって分解されることによって、リン、カリウム、カルシウム等の植物の栄養素が土中に供給される。したがって、本実施形態の植物育成用容器の製造方法によれば、植物に対してプランター3から栄養素を提供することができる植物育成用容器を製造することができる。
【0041】
なお、プラスチック複合材料を製造する際に、熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレン等)を生分解性プラスチックと共に混合することもできる。このように熱可塑性プラスチックを含有させることによって、プラスチック複合材料のプラスチック成分における生分解性プラスチックの割合が低下する。このため、プラスチック複合材料の微生物による分解速度を遅くすることができる。したがって、熱可塑性プラスチックの含有率を変化させることによって、プラスチック複合材料の分解速度をコントロールすることが可能となる。
【0042】
以上、図面を参照しながら本発明に係るプラスチック複合材料及びその製造方法、プラスチック成形体の製造方法、水熱反応処理残渣の処理方法並びに植物育成用容器の製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のプラスチック複合材料の製造方法、プラスチック成形体の製造方法の一例を示すフロー図である。
【図2】水熱反応処理装置の概略構成を示したフロー図である。
【図3】プランターの斜視図である。
【図4】水熱反応処理残渣を焼却することによって得られた灰成分について分析した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1……水熱反応処理装置
2……水熱反応器
3……プランター(植物育成用容器)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックとフィラーとを含むプラスチック複合材料の製造方法であって、
前記フィラーに、有機物及び無機物が含まれていることを特徴とするプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記フィラーは、下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記プラスチックは、生分解性プラスチックであることを特徴とする請求項1または2記載のプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記プラスチックと前記フィラーとが固相反応するように攪拌・混合することによって前記プラスチック複合材料を製造することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記プラスチックと前記フィラーとを前記プラスチックの溶融温度において混練することによって前記プラスチック複合材料を製造することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記プラスチックと前記フィラーとが固相反応するように攪拌・混合し、その後、前記プラスチックの溶融温度において混練することによって前記プラスチック複合材料を製造することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のプラスチック複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載のプラスチック複合材料の製造方法によって得られた前記プラスチック複合材料を圧縮成形あるいは射出成形することによってプラスチック成形体を製造することを特徴とするプラスチック成形体の製造方法。
【請求項8】
下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣の処理方法であって、
前記水熱反応処理残渣とプラスチックとを含むプラスチック複合材料を製造することによって前記水熱反応処理残渣を処理することを特徴とする水熱反応処理残渣の処理方法。
【請求項9】
下水汚泥を水熱反応処理した場合に生成される水熱反応処理残渣と生分解性プラスチックとを含むプラスチック複合材料を圧縮成形あるいは射出成形することによって植物育成用容器を製造することを特徴とする植物育成用容器の製造方法。
【請求項10】
前記プラスチック複合材料に熱可塑性プラスチックを含有させることを特徴とする請求項9記載の植物育成用容器の製造方法。
【請求項11】
プラスチックとフィラーとを含むプラスチック複合材料であって、
前記フィラーに、有機物及び無機物が含まれていることを特徴とするプラスチック複合材料。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52286(P2006−52286A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234208(P2004−234208)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】