説明

プラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター及びプラズマディスプレイパネル

【課題】長期使用しても近赤外線遮蔽能が低下しないPDP用近赤外線吸収フィルターと、このフィルターを用いたPDPを提供する。
【解決手段】基材と、当該基材表面に設けられた粘着樹脂層とを有し、前記粘着樹脂層中には、平均分散粒子径が800nm以下、波長1200nm〜1800nmの範囲に近赤外線吸収の極大を有する、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散されており、前記粘着樹脂層中には、電磁波を遮蔽し、可視光を透過するメッシュ状の金属層またはメッシュ状の金属含有層が存在し、前記粘着樹脂層中には、前記金属層または金属含有層から溶出してくる金属イオンを補足する金属不活剤が含有されているプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、該基材表面上に設けられた近赤外線遮蔽性を有する積層体に粘着樹脂層および電磁波遮蔽層を有し、プラズマディスプレイパネル(本発明において、「PDP」と記載する場合がある。)の発光部から、当該PDPの前面に向けて放射される近赤外線と電磁波とを吸収する高耐候性を有するプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターと、このフィルターを用いたプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの大型化・薄型化に伴いPDPが注目を集めている。PDP表面には、画面保護の目的に加え、反射防止、色調補正などの光学的機能を付与したPDP用光学フィルターが設置される。当該PDP用光学フィルターの多機能化を実現するため、最近のフィルターでは、近赤外線遮蔽層や電磁波遮蔽層、反射防止層などを別々に作製し、接着剤などで各層を貼り合せて複合化した多層フィルムを用いることが主流となってきた。
【0003】
しかし、当該PDP用光学フィルターを多層化したために、フィルターの透明性が低下して画面の輝度に影響を及ぼす、フィルターの生産性が悪化してコストが上昇するなどの問題が生じていた。そこで、1つの層に複数の機能を併せ持たせることで、フィルター構造を簡易にし、生産性を向上させ、コストを下げる試みが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ベースフィルム層と、当該ベースフィルム層上に直接形成されたメッシュタイプ又は導電膜タイプの電磁波遮蔽層と、当該電磁波遮蔽層上に直接形成された近赤外線遮蔽物質等、を含んで構成されるプラズマディスプレイ装置用フィルターが提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、膜厚が50μm〜200μmである1枚の透明基材上に、現像銀を有する幾何学パターン層を備え、かつ、当該透明基材上に近赤外線遮蔽能、反射防止能、調色機能を有する透光性電磁波シールドフィルムが提案されている。
【0006】
また、本出願人は、特許文献3において、透明基材表面に銅などの金属箔の薄膜層をメッシュ状に加工した電磁波遮蔽層を設置し、当該メッシュの間隙を埋めるように近赤外線遮蔽無機微粒子含有の接着層を積層することで、近赤外線遮蔽機能と電磁波遮蔽機能を1つの層に併せ持たせる方法を開示している。当該方法によれば、特許文献1,2を超えて、フィルターの積層数低減に伴う生産性向上と製造の低コスト化が図れるというメリットがある。
【特許文献1】特開2007−300108号公報
【特許文献2】特開2007−208133号公報
【特許文献3】特願2007−25726号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者らの研究によると、前記近赤外線遮蔽無機微粒子含有の電磁波遮蔽フィルターは、長期使用により近赤外線遮蔽機能が低下するため、性能を長期保持するのが困難であるという問題があることが明らかとなった。
【0008】
本発明は、当該知見を基になされたものである。即ち、本発明が解決しようとする課題は、長期使用しても近赤外線遮蔽能が低下しないPDP用近赤外線吸収フィルターと、このフィルターを用いたPDPを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、近赤外線遮蔽無機微粒子を含有する電磁波遮蔽フィルターの長期使用により近赤外線遮蔽機能低下について、さらに研究を行った。そして、当該近赤外線遮蔽機能低下が、電磁波遮蔽層を構成しているメッシュ状の金属層やメッシュ状の金属含有層から溶出した金属イオンが、粘着樹脂層を構成する有機高分子である粘着性樹脂に触媒的に作用して、これを分解劣化させることにより引き起こされていることを知見した。
本発明者らは、まず、メッシュ状の金属層やメッシュ状の金属含有層から溶出した金属イオンが、粘着樹脂層を構成する有機高分子である粘着性樹脂に触媒的に作用して、これを分解劣化させる機構を研究した。その結果、メッシュ状の金属層やメッシュ状の金属含有層から溶出した金属イオンが粘着樹脂層を構成する有機高分子に触媒的に作用し、当該有機高分子の鎖を切断することで、活性な有害ラジカルを連鎖的に発生させていることを知見した。これらの連鎖的に発生した有害ラジカルが、今度は、近赤外線遮蔽無機微粒子に作用して近赤外線遮蔽機能の低下を引き起こしているものと想到するに至った。
【0010】
上述の知見に基づき、本発明者らは、近赤外線遮蔽微粒子を含有する粘着樹脂層中に、遊離金属イオンを捕捉してキレート化合物を形成することで、当該遊離金属イオンを無害化する働きを持つ金属不活剤を存在させることで、有害ラジカルの発生を抑制するという画期的な構成に想到し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
基材と、当該基材表面に設けられた粘着樹脂層とを有し、
前記粘着樹脂層中には、平均分散粒子径が800nm以下、波長1200nm〜1800nmの範囲に近赤外線吸収の極大を有する、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散されており、
前記粘着樹脂層中には、電磁波を遮蔽し可視光を透過する、メッシュ状の金属層またはメッシュ状の金属含有層が存在し、
前記粘着樹脂層中には、さらに金属不活剤が含有されている、ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0012】
第2の発明は、
前記金属不活剤が、ヒドラジン誘導体、サリチル酸誘導体、シュウ酸誘導体から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする第1の発明に記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0013】
第3の発明は、
前記粘着樹脂層を構成する粘着樹脂が、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エステル系接着剤、シリコーン系接着剤から選択される1種以上であることを特徴とする第1または第2の発明に記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0014】
第4の発明は、
前記粘着樹脂層が、さらに、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択される1種以上の化合物を含有していることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0015】
第5の発明は、
前記タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子であることを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0016】
第6の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であることを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0017】
第7の発明は、
前記タングステン酸化物微粒子または/及び複合タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0018】
第8の発明は、
第1〜第4の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターであって、
前記基材の前記粘着樹脂層が設けられていない側の面に、前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散された層が形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターである。
【0019】
第9の発明は、
第1〜第8の発明のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターが設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルである。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、近赤外線遮蔽性能と電磁波遮蔽性能を併せ持ち、かつ長期使用によっても近赤外線遮蔽機能が低下しない、耐候性に優れたPDP用近赤外線吸収フィルターが得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
尚、本発明において、可視光とは、波長380〜780nmの光のことであり、近赤外線とは、波長780〜1500nmの光のことであり、電磁波とは、周波数帯域が30MHz〜130MHzの電磁波のことである。
【0022】
図1は、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターの基本構成の1例の概略断面図である。
透明基材1aの一方の面である図面上側表面には、メッシュ状電磁波遮蔽層2が設けられている。そして、メッシュ状電磁波遮蔽層2の間隙を埋めるように形成された粘着樹脂層3aを介して透明基材1bが接着されている。粘着樹脂層3a中には、タングステン酸
化物または/及び複合タングステン酸化物微粒子と、金属不活剤とが分散されている。透明基材1bのもう一方の図面上側表面には反射防止層4a・4bが設けられている。
メッシュ状電磁波遮蔽層2は、メッシュ状の金属層またはメッシュ状の金属含有層(以下、「金属メッシュ層」と略記する場合がある。)で構成されている。
透明基材1aのもう一方の図面下側表面は、粘着樹脂層3bを介してPDP本体のガラス表面に接着される。
【0023】
反射防止層4として高屈折率層4aと低屈折率層4bとを交互に積層する方式を選択した場合、当該積層された層を形成するには、例えば、上述の材料を溶剤などで希釈した塗布液をグラビアコーティング等の方法で基体上に塗布し、乾燥後、熱や紫外線などにより硬化させればよい。最終的に、PDP用近赤外線吸収フィルターとしての透明性を保つため、高屈折率層4aおよび低屈折率層4bの可視光線透過率は、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0024】
上述の構成を有することにより、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターは、波長1200nm〜1800nmの範囲の近赤外線領域に吸収の極大を持ち、上記波長領域における透過率が20%以下、さらには、10%以下とすることが出来る。上記波長域の透過率が20%以下であれば、十分な近赤外線遮蔽機能が得られる。
また、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターは、画面の鮮明性を保つため、十分な透明性と可視光透過性を有している。具体的には40%以上の可視光透過率を持ち、かつヘイズ値が5%以下である。可視光透過率が40%以上あり、ヘイズ値が5%以下であれば、画面の輝度が確保され、且つ、鮮明な画像が得られる。
【0025】
そして、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターの粘着樹脂層中には、さらに、金属不活剤が含有されていることが必要である。当該金属不活剤が、金属メッシュ層から遊離する金属イオンを捕捉しキレート化合物を形成することで、当該遊離金属イオンを無害化するので、当該遊離金属イオンによる触媒的作用が抑制され、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターは、長期間に渡り安定した近赤外線遮蔽機能を発揮する。
【0026】
本発明に係るPDP用赤外線遮蔽フィルターでは、可視光線を透過させ近赤外線を遮蔽することのできる近赤外線吸収無機材料微粒子を、基材表面に設けられた積層体中の粘着樹脂層中に分散し、金属メッシュ層を用いた電磁波遮蔽層上に積層している。当該積層により、これまで別々に設けていた電磁波遮蔽層と粘着樹脂層と近赤外線遮蔽層とを1つの層にすることができた。この結果、PDP用赤外線遮蔽フィルターの積層数を減らして透明性を向上させ、同時に工程削減によって生産性も高く安価に作製することができた。さらに、前記粘着樹脂層中に金属不活剤を含有させることで、金属メッシュ層からの遊離金属イオンによる触媒的作用を抑制し、長期間安定した近赤外線遮蔽機能を保つことができた。
【0027】
本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターを用いたPDPは、高い透明性と可視光透過率を持ちながら、近赤外線遮蔽性に優れる。この結果、当該PDP本体の輝度を低下させることなく、当該PDP本体から発生する近赤外線によって周囲の電子機器が誤動作を生じる事態を回避することが出来る上に、長期使用によっても近赤外線遮蔽機能が低下しない耐候性に優れたPDPである。
【0028】
次に、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターに使用される材料について、当該材料毎に具体的に説明する。
【0029】
1.基材
本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターに適用される基材は、可視光に対して高
い透明性をもつ材料であれば特に限定はされない。尤も、一般的には、プラスチックフィルムが使用され、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクル酸メチル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン等のフィルムやボードを好ましい例として挙げることができる。
【0030】
ここで、後述するタングステン酸化物微粒子または/及び複合タングステン酸化物微粒子を、上記樹脂中に練り混んだ後にフィルムやボードとし、予め、近赤外線吸収機能を付与した透明基材も好ましく使用できる。
【0031】
2.電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層
本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターは、上述した基材表面に設けられた粘着樹脂層中に近赤外線遮蔽性を有する微粒子を含有している。当該粘着樹脂層は、基材と他の構成層とをつなぎ合わせる役目を果たしているが、本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターにおいては、当該粘着樹脂層に近赤外線吸収微粒子を分散させて、近赤外線遮蔽機能を持つ粘着樹脂層としている。さらに、当該粘着樹脂層へ、電磁波遮蔽機能を有するメッシュ状の金属層または金属含有層を埋め込む構造とすることで、近赤外線遮蔽機能、電磁波遮蔽機能、接着機能の3つの機能を、当該粘着樹脂層の一層で達成している。
【0032】
3.粘着樹脂成分
前記粘着樹脂層を構成する粘着樹脂成分は、十分な接着性を有するものであればその樹脂成分は特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、エステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、およびそれらの混合物などが挙げられる。中でも、好適に用いられるアクリル系粘着剤について詳細に説明する。アクリル系粘着剤としては、粘着性を与えるモノマー、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等の、アクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アクリルエステル等が、挙げられる。
架橋や接着性改良するカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が、三級アミノ基含有モノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が、アミド基を有するモノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド等が、挙げられる。
これらは、所望特性に応じて1種もしくは2種以上混合して用いることができる。
また、当該粘着樹脂層の厚みは、当該粘着樹脂層への近赤外線吸収微粒子の添加量にもよるが、5μm〜50μmの範囲が好ましく、10μm〜30μmの範囲がさらに好ましい。
【0033】
4.メッシュ状の金属層、メッシュ状の金属含有層
メッシュ状の金属層の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば透明フィルム上に金属箔の層を設け、当該層をメッシュ状にエッチング加工する方法、金属繊維および/または金属被覆有機繊維をメッシュ状に編む方法、等が挙げられる。
一方、メッシュ状の金属含有層の形成方法は、例えば、透明フィルム上に、導電性微粒子をバインダー樹脂に分散させた導電性インクにより、メッシュ状のパターン印刷を行う方法が挙げられる。
メッシュ状の金属層として金属繊維および/または金属被覆有機繊維を用いる場合、当該金属繊維および/または金属被覆有機繊維を構成する繊維の線径は、光透過性、電磁波遮蔽性およびメッシュ強度の観点から好ましくは1μm〜1mm、より好ましくは10μ
m〜500μmである。また、開口率は、光透過性とメッシュ強度の観点から好ましくは50〜90%、より好ましくは60〜90%である。なお、メッシュの開口率とは、当該メッシュの投影面積において開口部分が占める面積割合のことである。
メッシュ状の金属層を構成する金属繊維および/または金属被覆有機繊維の金属種としては、例えば銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、または、これらの合金等が挙げられ、好ましくは、銅、ステンレス、アルミニウムである。
また、金属箔を用いる場合、金属箔種としては、例えば、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、ニッケル、または、これらの合金等が挙げられ、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムである。金属箔の厚さは、エッチング効率の観点から1μm〜150μm、好ましくは3μm〜50μmである。エッチングパターンの形状は特に限定されるものでなく、三角形、四角形、六角形、円形、長方形等が挙げられる。
メッシュ状の金属含有層を用いる場合、当該金属含有層に含まれる導電性微粒子は、例えば、カーボンブラック、銅、ニッケル、アルミニウム、または、これらの合金等が挙げられる。パターン印刷の際における開口部の形状は特に限定されるものでなく、三角形、四角形、六角形、円形、長方形等が挙げられる。
【0034】
5.タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子
本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターは、可視光線を透過させ近赤外線を遮蔽することのできる耐候性の良い無機材料微粒子として、平均分散粒子径が800nm以下で、且つ分散集合体が波長1200nm〜1800nmの範囲に近赤外線吸収の極大を持つタングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物微粒子を用いている。
【0035】
本発明に適用されるタングステン酸化物微粒子は、一般式WOx(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦X≦2.999)で示される。当該タングステン酸化物微粒子は近赤外線吸収成分として有効に機能する。
ここで、前記一般式WOx(2.45≦X≦2.999)で示されるタングステン酸化物微粒子の好ましい例として、W1849、W2058、W11などを挙げることができる。Xの値が2.45以上であれば、当該熱線吸収材料中に目的外であるWOの結晶相が現れるのを完全に回避することが出来ると共に、材料の化学的安定性を得ることが出来る。一方、Xの値が2.999以下であれば、十分な量の自由電子が生成され効率よい近赤外線吸収材料となる。そして、Xの範囲が2.45≦X≦2.95であるようなWOx化合物は、いわゆるマグネリ相と呼ばれる化合物で、耐久性に優れている。
【0036】
次に、本発明に適用される複合タングステン酸化物微粒子は、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)で示される。
【0037】
前記一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、六方晶、正方晶、立方晶の結晶構造を有する場合に耐久性に優れることから、該六方晶、正方晶、立方晶から選ばれる1つ以上の結晶構造を含むことが好ましい。例えば、六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子の場合であれば、好ましいM元素として、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの各元素から選択される1種類以上の元素を含む複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。
【0038】
このとき、添加されるM元素の添加量Yは、0.001以上1.0以下が好ましく、更
に好ましくは0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出されるYの値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。一方、酸素の存在量Zは、2.2以上、3.0以下が好ましい。典型的な例としてはCs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WO、Ba0.33WOなどを挙げることができるが、Y、Zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な近赤外線吸収特性を得ることができる。
【0039】
以上説明したタングステン酸化物微粒子、および、複合タングステン酸化物微粒子は、各々単独で使用してもよいが、混合使用することも好ましい。
また、上記タングステン酸化物微粒子の表面、複合タングステン酸化物微粒子の表面を、Si、Ti、Zr、Alのいずれか1種類以上の元素を含有する酸化物で被覆すれば、耐候性をより向上させることができ、好ましい。
【0040】
当該近赤外線吸収材料が分散された被膜を有する近赤外線吸収フィルターは、PDP用近赤外線吸収フィルターとして用いる。従って、当該近赤外線吸収材料は、透明性を保持したまま近赤外線の効率良い吸収を行なうことが必要となる。ここで、当該近赤外線吸収材料である、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子は、上記基材上に形成された積層体中の粘着樹脂層に分散されるが、その含有量は、単位面積あたりの含有量で表した場合、0.01g/m〜10g/mの間であることが好ましい。含有量が0.01g/mより多ければ、十分な近赤外線吸収効果が現れ、10g/m以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0041】
前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子を、近赤外線吸収材料として適用した場合、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域の透過率が高く、波長780nm〜1500nmにおける近赤外線領域の透過率が低くなる。該波長780nm〜1500nmにおける透過率の低下は、前記タングステン酸化物または複合タングステン酸化物中の伝導電子によるプラズモン共鳴に起因した吸収反射に因るものと考えられる。また、波長380nm〜780nmにおける可視光線領域では、波長1000nm付近の近赤外線領域の吸収と比較してその吸収量が少ないため、視認性が良好に保たれる。この結果、当該近赤外線吸収材料が分散された被膜を有する近赤外線吸収フィルターを、ディスプレイ前面に設置しても画面表示を十分鮮明に確認することが可能となり好ましい。
【0042】
6.金属不活剤
上記したように、本発明者等は、近赤外線遮蔽無機微粒子を含有する電磁波遮蔽フィルターを長期使用した際、当該電磁波遮蔽フィルターの近赤外線遮蔽機能が低下する現象については、電磁波遮蔽層を構成しているメッシュ状の金属層やメッシュ状の金属含有層から溶出した金属イオンが、粘着樹脂層を構成する有機高分子である粘着性樹脂に触媒的に作用して、これを分解劣化させることにより引き起こされていることを知見した。
上記電磁波遮蔽フィルターを長期使用した際の、近赤外線遮蔽機能の低下における金属イオンの発生や有機高分子鎖が切断されて生じるラジカルの発生についてその詳細は不明である。しかし、本発明に係る金属不活剤は、上述した金属メッシュ層から溶出してくる遊離金属イオンを捕捉しキレート化合物を形成することで、当該遊離金属イオンを無害化することができる。この結果、従来であれば、遊離金属イオンの触媒的作用により、粘着樹脂層を構成する粘着樹脂の有機高分子鎖が切断されてラジカルが発生し、当該ラジカルが近赤外線遮蔽微粒子に作用して近赤外線遮蔽機能を低下させていた問題を回避できるのである。
【0043】
当該金属不活剤としては、ヒドラジン誘導体、サリチル酸誘導体、シュウ酸誘導体等が好ましく用いられ、特に2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−
ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド、2−ヒドロキシ−N−(2H−1,2,4−トリアゾール−3−yl)ベンザミド、ドデカン二酸ビス[2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド]などが好ましい。
【0044】
上述した金属不活剤に加えて、有機高分子材料自体の劣化を防止するために一般的に用いられる添加剤、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤などを併用してもよい。
【0045】
上述した近赤外線遮蔽粘着樹脂層中への金属不活剤の添加量は、要求される性能や併用される他の添加剤の種類および使用量によっても変わるため、特に限定されるものではないが、粘着樹脂層中の近赤外線遮蔽微粒子100重量部に対して1〜10重量部が好ましく、3〜8重量部がより好ましい。金属不活剤の添加量が1重量部以上あれば、赤外線遮蔽機能の低下防止効果が認められ、10重量部で効果はほぼ飽和する。
【0046】
7.他の構成層
本発明に係るPDP用赤外線吸収フィルターにおける、電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層以外の、他の構成層について説明する。
当該他の構成層としては、外光の映りこみ防止のための反射防止層、画像の色再現性を向上させるための色調補正層、表面の汚れを防ぐための帯電防止層、耐擦傷性向上のためのハードコート層などが挙げられる。
また、基材の電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層が設けられていない側の面に、前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散された層を設けることも好ましい構成である。当該層へ、さらに有機系近赤外線吸収材料を添加することも好ましい構成である。当該構成は、例えば、基材の電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層が設けられていない側の面に、ハードコート層が設けられている場合等に、好適に適用される。
【0047】
8.反射防止層
当該他の構成層のうち、反射防止層について簡単に説明する。
反射防止層には、光の入射面を粗面化することにより、光を拡散、散乱させて反射を防ぐ方式のもの、高屈折率材料と低屈折率材料を交互に積層することで表面反射を抑える方式のものなどがある。
【0048】
高屈折率材料と低屈折率材料との積層に用いられる高屈折率材料としては、高屈折率の透明樹脂や、樹脂中に高屈折率微粒子を添加したものなどが挙げられる。そこで、当該高屈折率微粒子としてZnO、CeOなどの紫外線遮蔽微粒子を用いると、本発明に係るPDP用赤外線吸収フィルターに、紫外線遮蔽機能をも付与することができるので好ましい。また、当該高屈折率微粒子としてITO,ATO等の導電性微粒子を用いると、帯電防止効果が付与されて、PDP画面への埃の付着を防止することができるので好ましい。
一方、積層に用いられる低屈折率材料としては、シリカ微粒子を水または有機溶媒に分散したゾルフッ素系樹脂などに混合した材料などが挙げられる。
【0049】
9.PDP用近赤外線吸収フィルターにおける電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層の製造方法
本発明に係るPDP用近赤外線吸収フィルターの、製造方法の一例について説明する。
前記タングステン酸化物または/および複合タングステン酸化物を近赤外線吸収剤として用いる場合、工業的に安価で簡便な方法として微粒子分散法がある。当該微粒子分散法とは、上述したタングステン酸化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を、基材上に設けられた電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層内に均一に分散させ、そこを透過する近赤外線を遮蔽する方法である。
【0050】
微粒子分散法でPDP用近赤外線吸収フィルターを作製するとき、前記タングステン酸化物または/及び複合タングステン酸化物の微粒子の平均分散粒子径は、上述したように800nm以下であることを要し、好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下がよい。タングステン酸化物や複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が800nm以下であれば、PDPから放射される波長380nm〜780nmの可視光線領域の光を、幾何学散乱またはミー散乱によって散乱してしまうため外観上曇りガラスのようになり、鮮明な画面表示が得られなくなることを回避出来るからである。
【0051】
タングステン酸化物や複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が200nm以下になると、前記幾何学散乱またはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。当該レイリー散乱領域において、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、前記可視光線の散乱が低減し鮮明な画面表示が可能となる。さらに、タングステン酸化物や複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなるためより好ましい。一方、粒子径が1nm以上であれば、工業的な製造は容易である。
【0052】
当該タングステン酸化物や複合タングステン酸化物微粒子を、電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層内に分散する方法は、乾式法、湿式法等各種挙げられる。特に、粒子径が200nm以下のタングステン酸化物や複合タングステン酸化物を分散する場合は、湿式法が有効である。具体的には、ボールミル、サンドミル、媒体攪拌ミル、超音波照射等を用いた湿式法が挙げられる。
【0053】
また、微粒子分散時の各種分散剤の添加、pH調整などにより粒子径が200nm以下のタングステン酸化物、複合タングステン酸化物微粒子を安定に液体中に分散保持することが容易になる。各種分散剤は、使用する溶媒やバインダー等との相性を確認することで各種選択可能である。代表的なものとして、シランカップリング剤や各種界面活性剤が挙げられる。
【0054】
さらに、上述したタングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子と、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択された1種類以上の有機化合物とを併用することも好ましい構成である。当該併用により、当該有機化合物が有する耐熱性、耐候性等に劣るという弱点を補償するとともに、無機系および有機系近赤外線吸収材料の互いの長所を発揮させ合うことが出来る。
具体的には、両者の特性を活かし、近赤外線吸収特性を向上させることができる。
【0055】
作製した近赤外線吸収微粒子分散液と金属不活剤と粘着樹脂とを混合して混合物とし、当該混合物を、基材表面または基材表面に設けられた積層体表面に均一に塗布し、適切な方法で硬化させてPDP用近赤外線吸収フィルターを得る。このとき、近赤外線吸収微粒子分散液と粘着樹脂との混合割合や、近赤外線遮蔽層の膜厚を変えることで、近赤外線遮蔽機能を調節することが可能である。
【0056】
さらに、近赤外線吸収微粒子分散液、近赤外線吸収材料を有する粘着樹脂のいずれか1つ以上へ、適宜な紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、増粘剤等を配合することで、PDP用近赤外線吸収フィルター表面における保護機能アップや耐久性の向上、被膜形成時の作業性の改善が図れ、好ましい構成である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定され
るものではない。
また、各実施例において、電磁波遮蔽機能を持つ粘着樹脂層の膜厚は、波長380nm〜780nmの可視光領域における透過率の最大値が60〜70%の範囲となるように形成した。ここで、光の透過率測定は分光光度計U―4000(日立製作所製)を使用し、JIS A 5759に準ずる方法で波長300nm〜2600nmの範囲において5nm間隔で測定した。
PDP用近赤外線吸収フィルターの耐候性試験については、作製したフィルター試料を60℃、湿度90%の高温高湿試験槽に250時間保管し、当該フィルター試料の波長750nmの近赤外光の透過率の初期値に対する変化量を求めた。
即ち、耐候性の判断基準(波長750nmの近赤外光の透過率の初期値に対する変化量)=(250時間後の波長750nmの近赤外光の透過率)−(高温高湿試験前の波長750nmの近赤外光の透過率)とした。
【0058】
(実施例1)
Cs0.33WO粉末18.5重量部と、4−メチル−2−ペンタノン63重量部と、分散剤18.5重量部とを混合して混合物とし、当該混合物に分散処理を行って分散液Aを作製した。
金属不活剤2’,3−ビス[[3−[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名IRGANOX MD1024)0.8重量部と、4−メチル−2−ペンタノン3重量部と、ウレタン系熱硬化型粘着樹脂(固形分20%)12重量部と、分散液A1重量部とを混合し、近赤外線遮蔽粘着剤Bを作製した。
【0059】
ここで、表面に銅箔が形成された膜厚50μmのPETフィルム上に、フォトレジストを塗布し、乾燥後フォトマスクを用いて、当該フォトレジストへメッシュ状パターンを露光し、次に、ここへ、エッチング処理を行ってメッシュ状のレジストパターンを形成した。さらに銅箔をエッチング処理した後、レジスト層を剥離して、PETフィルム上にメッシュ状の銅箔で構成された電磁波遮蔽層が形成された電磁波遮蔽フィルムを得た。
当該電磁波遮蔽層が形成された電磁波遮蔽フィルムの金属メッシュ層面側に、近赤外線遮蔽粘着剤Bを用いて、当該金属メッシュ層の間隙を埋めるように近赤外線遮蔽粘着樹脂層を形成した。次に、当該近赤外線遮蔽粘着樹脂層上に、当該近赤外線遮蔽粘着樹脂層を介してPETフィルムを接着し、実施例1に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターを得た。
【0060】
この実施例1に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターの光学特性を測定したところ、可視光透過率は54%、波長1200nm〜1800nmの範囲における近赤外線透過率の最小値が1%以下と、可視光を十分に透過し、かつ高い近赤外線遮蔽機能を持つことがわかった。
この実施例1に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターに対し、上述の耐候性試験を行った。すると、250時間の耐候性試験後における、波長750nmの近赤外光の透過率変化量は4.3%に留まり、高い耐候性を有していることが判明した。
【0061】
(実施例2)
金属不活剤0.4重量部に加えて、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.4重量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例2に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターを得た。
【0062】
この実施例2に係るフィルターの光学特性を測定したところ、可視光透過率は53%、波長1200nm〜1800nmの範囲における近赤外線透過率の最小値が1%以下であり、可視光を十分に透過し、かつ高い近赤外線遮蔽機能を持つことがわかった。
また、250時間の耐候性試験前後における、波長750nmの近赤外線の透過率変化量は4.1%に留まり、実施例2に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターは、高い耐候性を有していることが判明した。
【0063】
(実施例3)
金属不活剤0.4重量部に加えて、ヒンダードアミン系光安定剤を0.4重量部添加した以外は、実施例1と同様の操作を行って実施例3に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターを得た。
【0064】
この実施例3に係るフィルターの光学特性を測定したところ、可視光透過率は53%、波長1200nm〜1800nmの範囲における近赤外線透過率の最小値が1%以下であり、可視光を十分に透過し、かつ高い近赤外線遮蔽機能を持つことがわかった。
また、250時間の耐候性試験前後における、波長750nmの近赤外線の透過率変化量は4.2%に留まり、実施例3に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターは、高い耐候性を有していることが判明した。
【0065】
(参考例1)
膜厚50μmのPETフィルム表面に銅箔を形成せずに、実施例1と同様の操作を行って、直接近赤外線遮蔽粘着樹脂層を形成した。そして、当該赤外線遮蔽粘着樹脂層上へ、当該赤外線遮蔽粘着樹脂層を介してPETフィルムを接着し、参考例1に係る電磁波遮蔽層を持たないPDP用近赤外線遮蔽フィルターを得た。
【0066】
このフィルターの光学特性を測定したところ、可視光透過率は55%、波長1200nm〜1800nmの範囲における近赤外線透過率の最小値が1%以下と、可視光を十分に透過し、かつ高い近赤外線遮蔽機能を持つことがわかった。
また、250時間の耐候性試験前後における波長750nmの近赤外線の透過率変化量は3.7%であった。
【0067】
(比較例1)
金属不活剤を添加しない以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係る金属不活剤を含まないPDP用近赤外線遮蔽フィルターを得た。
【0068】
このフィルターの光学特性を測定したところ、可視光透過率は55%、波長1200nm〜1800nmの範囲における近赤外線透過率の最小値が1%以下と、可視光を十分に透過し、かつ高い近赤外線遮蔽機能を持つことがわかった。
250時間の耐候性試験前後における波長750nmの近赤外線の透過率変化量は9.0%と高く、耐候性に欠けていることが判明した。
【0069】
(まとめ)
実施例1〜3に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターは、250時間の耐候性試験前後における波長750nmの近赤外線の透過率変化量が4.1%〜4.3%に留まり、高い耐候性を有していた。当該透過率変化量が4.1%〜4.3%に留まり、金属メッシュ層を有していない参考例1に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターの該透過率変化量3.7%に匹敵する値である。一方、金属不活剤を添加しない比較例1に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターの該透過率変化量は、9.0%と高かった。
以上のことから、実施例1〜3に係るPDP用近赤外線遮蔽フィルターに添加された金属不活剤が、遊離金属イオンを十分に不活性化し、耐候性を向上させていることが裏付けられた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】PDP用近赤外線吸収フィルターの略断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1a、1b 透明基材
2 電磁波遮蔽層
3a、3b 粘着樹脂層
4 反射防止層
4a高屈折率層
4b低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、当該基材表面に設けられた粘着樹脂層とを有し、
前記粘着樹脂層中には、平均分散粒子径が800nm以下、波長1200nm〜1800nmの範囲に近赤外線吸収の極大を有する、タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散されており、
前記粘着樹脂層中には、電磁波を遮蔽し可視光を透過する、メッシュ状の金属層またはメッシュ状の金属含有層が存在し、
前記粘着樹脂層中には、さらに金属不活剤が含有されている、ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項2】
前記金属不活剤が、ヒドラジン誘導体、サリチル酸誘導体、シュウ酸誘導体から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項3】
前記粘着樹脂層を構成する粘着樹脂が、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エステル系接着剤、シリコーン系接着剤から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項4】
前記粘着樹脂層が、さらに、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、有機金属錯体、シアニン系化合物、アゾ化合物、ポリメチン系化合物、キノン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、トリフェニルメタン系化合物から選択される1種以上の化合物を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項5】
前記タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物の微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項6】
前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MxWyOz(但し、M元素は、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1.1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物の微粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項7】
前記タングステン酸化物微粒子または/及び複合タングステン酸化物微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターであって、
前記基材の前記粘着樹脂層が設けられていない側の面に、前記タングステン酸化物微粒子または/および複合タングステン酸化物微粒子が分散された層が形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルター。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のプラズマディスプレイパネル用近赤外線吸収フィルターが設けられていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2010−8818(P2010−8818A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169633(P2008−169633)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】