説明

プラズマ援用ブースタおよび運転方法

長手方向軸を有するロータハブの周りに円周方向に離間された複数の最初のロータブレードを有し、長手方向軸から延びる第1のピッチ線半径を有する最初のロータ段と、最初のロータ段から軸方向後部に位置する最後のロータ段であって、長手方向軸の周りに円周方向に離間された複数の最後のロータブレードを備え、長手方向軸から延びる第2のピッチ線半径を有する最後のロータ段と、最後のロータ段から軸方向後部に位置し、空気流を受け取ることが可能なグースネックダクトであって、入口端部、および入口端部から軸方向後部に、ある距離で位置する出口端部を備え、少なくとも1つのプラズマアクチュエータが中に取り付けられているグースネックダクトとを備えるブースタシステムが、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、圧縮機に関し、より具体的にはプラズマアクチュエータを有する移行ダクトを有するブースタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンでは、運転中に空気が圧縮モジュールで加圧される。圧縮モジュールを通って運ばれる空気は、燃焼器で燃料と混合され、点火されて、タービン段を通って流れる高温燃焼ガスを発生させ、タービン段は、ファンおよび圧縮機ロータに動力を供給するためにその高温燃焼ガスからエネルギーを抽出し、エンジン推力を発生させて、飛行中の航空機を推進し、または発電機などの負荷に動力を供給する。
【0003】
圧縮機は、ロータアセンブリおよびステータアセンブリを含む。ロータアセンブリは、ディスクから半径方向外側に延びる複数のロータブレードを含む。より具体的には、各ロータブレードは、ディスクに隣接するプラットフォームから先端までの間で半径方向に延びる。ロータアセンブリを通るガス流路は、ロータブレードプラットフォームによって半径方向内側に、かつ複数のシュラウドによって半径方向外側に延びる。
【0004】
ステータアセンブリは、圧縮機に入る圧縮ガスをロータブレードに向ける、複数の円周方向に離間されたステータベーンまたはエーロフォイルを含む。ステータベーンは、内側バンドと外側バンドとの間を半径方向に延びる。ステータアセンブリを通るガス流路は、内側バンドによって半径方向内側に、かつ外側バンドによって半径方向外側に延びる。ロータ段は、ロータハブの周りに円周方向に配置されるロータブレードを備える。各圧縮段は、ベーン段およびロータ段を備える。
【0005】
現代の高バイパス比ガスタービンエンジンは、ブースタ(低圧圧縮機)および高圧圧縮機を有し、それらの間に移行ダクトが位置する。従来の移行ダクトまたはグースネックダクトの幾何学的形状は、端壁の湾曲のレベルによって支配される。というのは、過度の湾曲が端壁の境界層剥離、従って効率の高損失につながるからである。流れの剥離がない滑らかな空気力学的移行を確保するために、従来の移行ダクト設計は、環状流半径の所与の変化に合わせていくらかの最小軸長を有していなければならない。移行ダクト長の増加は、エンジン長の増加に直接つながり、それがエンジン重量を増し、エンジンのバックボーン剛性を低減するので、これは、望ましくない。剛性のこの低減は、ロータ先端の上に所望の隙間を維持することを困難にし、エンジンの効率および操作性範囲を低減する。
【0006】
圧縮機およびブースタロータが、空気に仕事/圧力を加えるそれらの能力の限界に近づくにつれて、それらのロータは、より効率が低下する傾向があり、この限界を越えた場合、失速する(必要とされる圧力上昇を生成することができず、その段を通る逆流およびエンジン推力の喪失につながる)。ブースタの後段でその限界に非常に近く設計されるブースタロータは、著しい操作性問題を経験することもあり得る。これは、後部ロータ段でより低い半径に制限される従来のブースタシステム設計での懸案事項である。これらは、ブースタの後端を外側へ押すことによって矯正することができ、それは移行ダクト内でプラズマアクチュエータを使用することによって可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3300121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ダクト中に流れの剥離を引き起こすことなく強化された圧力分布を有するより短い移行ダクト設計を有することが望ましいことになる。移行ダクト中に流れの剥離を引き起こすことなく後部ロータ段についてより高い半径を有するブースタシステムを有することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の必要性は、長手方向軸を有するロータハブの周りに円周方向に離間された複数の最初のロータブレードを有し、長手方向軸から延びる第1のピッチ線半径を有する最初のロータ段と、最初のロータ段から軸方向後部に位置する最後のロータ段であって、長手方向軸の周りに円周方向に離間された複数の最後のロータブレードを備え、長手方向軸から延びる第2のピッチ線半径を有する最後のロータ段と、最後のロータ段から軸方向後部に位置し、空気流を受け取ることが可能なグースネックダクトであって、入口端部、および入口端部から軸方向後部に、ある距離で位置する出口端部を備え、少なくとも1つのプラズマアクチュエータが中に取り付けられているグースネックダクトとを備えるブースタシステムを提供する例示的な実施形態によって満すことができる。
【0010】
本発明の別の態様では、第2のピッチ線半径と第1のピッチ線半径との比は、少なくとも0.9である。
【0011】
本発明の別の態様では、ガスタービンエンジンを運転する方法は、ブースタロータ段から軸方向後部に位置するグースネックダクト中で壁に沿ってプラズマを形成するステップを含む。
【0012】
本発明と見なされる主題は、本明細書の結びの部分で詳細に指摘され、明確に特許請求される。しかしながら、本発明は、添付の図面と併せて以下の記述を参照することによって最もよく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の例示的な実施形態による圧縮システムを備える例示的なガスタービンエンジンアセンブリの横断面図である。
【図2】本発明の例示的な実施形態によるブースタシステムの一部分を示す図1からの拡大軸方向横断面図である。
【図3】本発明の例示的な実施形態によるプラズマアクチュエータを有するグースネックダクトの概略図である。
【図4】励起モードにあるプラズマアクチュエータシステムを有する例示的なダクトの一部分の拡大軸方向横断面図である。
【図5】本発明の例示的な実施形態によるブースタシステムのグースネックダクトの概略図である。
【図6】比較のために従来のブースタ流路と重ね合わされた、本発明の例示的な実施形態によるプラズマアクチュエータを有するブースタシステムの概略図である。
【図7】プラズマアクチュエータが励起されるときおよび励起されないときの本発明の例示的な実施形態によるブースタシステム中の圧力分布のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
同一の参照符号がさまざまな図全体にわたって同じ要素を示す図面を参照すると、図1は、長手方向軸11ならびに第1の圧縮機21および第1の圧縮機21から軸方向後部に位置する第2の圧縮機22を備える圧縮システム20を有する例示的なガスタービンエンジンアセンブリ10の横断面図を示す。図1で示される例示的な実施形態では、第1の圧縮機21は、ブースタ40であり、それはまた、別法として本明細書では低圧圧縮機とも呼ばれる。図1および2で示される例示的なブースタ40は、4つのロータ段を有し、各ロータ段は、50から90の間のブースタロータブレードを有する。例示的なブースタシステム50は、第1のブースタロータ段から軸方向前方に位置するステータベーン(別法として本明細書ではブースタ入口案内ベーン「IGV」と呼ばれる)の列を有する。例示的なブースタシステム50は、最後のブースタロータ段から軸方向後部に位置するステータベーン(別法として本明細書ではブースタ出口案内ベーン44「OGV」と呼ばれる)の列を有する。OGV44は、長手方向軸11の周りに円周方向に離間された120のベーンを有する。さらに、図1で示される第2の圧縮機22は、軸流高圧圧縮機14(「HPC」)である。図1および2で示される例示的なHPC14は、7つのロータ段を有し、各ロータ段は、24から96の間のHPCロータブレードを有する。例示的なHPC14は、第1のHPCロータ段から軸方向前方に位置する40のステータベーン(別法として本明細書ではHPC入口案内ベーン「IGV」と呼ばれる)の円周方向列を有する。図1で示されるガスタービンエンジンアセンブリ10の例示的な実施形態はさらに、燃焼器16と、高圧タービン18およびコアガスタービンエンジン12から軸方向下流に結合される低圧タービン19と、コアガスタービンエンジン12から軸方向上流に結合されるファンアセンブリ13とを備える。ファンアセンブリ13は、ロータディスク29から半径方向外側に延びるファンブレード17の配列を含む。図1で示される例示的な実施形態では、ファンアセンブリ13、ブースタ40および低圧タービン19は、第1のロータシャフト28によって一緒に結合され、圧縮機14および高圧タービン18は、第2のロータシャフト27によって一緒に結合される。
【0015】
運転時には、空気は、ファンアセンブリブレード17を通って流れ、その空気の一部分は、バイパス空気流15として流れ、空気の一部分は、第1の圧縮機21および第2の圧縮機22を含む圧縮システム20中へコア空気流25として流れる。図1および2で示される例示的な実施形態では、第1の圧縮機21は、ブースタ40(低圧圧縮機)であり、第2の圧縮機22は、高圧圧縮機14である。圧縮システム20に入るコア空気流25は、最初に第1の流路23を通って運ばれ、第1の圧縮機21(本明細書の図ではブースタ40として示される)で圧縮される。コア空気流25は次いで、ダクト30(別法として本明細書では移行ダクト30またはグースネックダクト38と呼ばれる)の弓形の第3の流路33を通って第2の圧縮機22(本明細書の図では高圧圧縮機14として示される)の第2の流路24へ運ばれ、ここでコア空気流25は、さらに圧縮される。圧縮システム20から出る空気流は、燃焼器16へ運ばれる。空気は、燃焼器で燃料と混合され、燃やされる。燃焼器16からの燃焼生成物は、高圧タービン(HPT)18および低圧タービン(LPT)19を駆動するために利用される。本明細書で示される例示的な実施形態では、LPT19は、ファンロータシャフト28を介してブースタ40およびファンアセンブリ13を駆動し、HPTは、HPロータシャフト27を介して高圧圧縮機14を駆動する。エンジン10は、設計運転条件と非設計運転条件との間の運転条件範囲で運転可能である。図1および2で示される例示的な実施形態では、ブースタ40のロータは、1500rpmから2700rpmの間の運転速度を有してもよく、高圧圧縮機14のロータは、6000rpmから12000rpmの間の運転速度を有してもよい。
【0016】
図1および2で示される例示的な実施形態では、ブースタロータ段のピッチ線は、高圧圧縮機ロータ段のピッチ線より高い半径で半径方向に位置する。これは特に、現代の高バイパス比エンジンの場合に当てはまる。本明細書で使用されるように、ロータ段の「ピッチ線」は、ロータ段のロータブレードのエーロフォイルの前縁の根部と先端との間の半径方向中間点を通過する軸線として規定される。移行ダクト30は、コア空気流25をブースタ40の第1の流路23から高圧圧縮機の第2の流路24へ流す。図3および5は、本発明による移行ダクト30の例示的な実施形態の軸方向横断面図を概略的に示す。術語「ダクト」、「移行ダクト」および「グースネックダクト」は、同じ意味を有し、本明細書では交換可能に使用される。ダクト30は、入口部分34および入口部分から軸方向後部に位置する出口部分35を備える。入口部分34は、入口面積36を有する入口端部47を有し、出口部分35は、出口面積37を有する出口端部48を有する。入口部分34は、ブースタ40の近くに軸方向に位置し、出口部分は、高圧圧縮機14の近くに軸方向に位置する。入口部分34は、出口部分35および中心線軸11から半径方向外側に位置する。ダクト38は、間に流路33を形成する内壁31および外壁32を備える。ダクト38は、長手方向軸11の周りに環状の形状を有してもよい。図1、2および3で示される例示的な実施形態では、支持フレームの支柱46は、いくつかの円周方向位置でダクト38の第3の流路33を通って半径方向に延びる。第3の流路は、軸方向で長手方向軸11に関して全体的に環状の形状を有し、支柱46は、いくつかの用途ではある円周方向位置で第3の流路を通って延びる。入口部分34が出口部分35から半径方向外側に位置する状態のダクト38の全体的に環状の構成に起因して、第3の流路33およびダクト38は、例えば図3および5で示されるものなどのグースネック形状を有する。内壁31および外壁32は、例えば図3および5で示されるものなどの、軸方向に弓形形状を有する。
【0017】
図5を参照すると、ダクト30の入口端部47は、長手方向軸11に関して出口端部48より高い半径に位置する。出口端部48は、入口端部47から軸方向後部距離76(「D」)に位置する。本明細書で示される本発明の例示的な実施形態では、出口外半径72(「RO」)に対する入口外半径71(「RI」)の比は、約1.8である。同じダクト軸長Dについて、この比は、従来の設計では約1.6以下である。本明細書で示される例示的な実施形態では、軸方向距離D76は、約16インチから18インチの間である。本明細書で示される例示的な実施形態では、入口面積36は、約598平方インチであり、出口面積37は、約570平方インチである。出口面積37の入口面積36からのわずかな減少は、ダクト38中の流れの剥離をさらに低減するのに役立つこともある。本発明の他の実施形態では、入口面積36および出口面積37は、他の適切な値を有してもよい。代替実施形態では、周知の設計方法を使用してダクト38中の圧力分布を改善するために入口面積36より大きい出口面積37を有することが、有利なこともある。本発明は、入口および出口半径(「RI」および「RO」)と比較して短いダクト軸長(「D」)を有するブースタシステムの設計を可能にする。本発明の例示的な実施形態では、比(RI−RO)/Dとして定義される縦横比は、約0.5から0.8の間である。図3および5で示されるものなどの第3の流路33の横断面形状の幾何学的性質に起因して、移行ダクト30は、別法として本明細書ではグースネックダクト38と呼ばれる。
【0018】
本明細書で示される例示的な実施形態から明らかなように、内壁31および外壁32は、軸方向にかなりの湾曲を有する。図1、2、3、5および6で示される本発明の例示的な実施形態では、ダクト38中の流れの剥離は、プラズマアクチュエータ60を使用することによって低減される。本明細書で使用されるような術語「プラズマアクチュエータ」および「プラズマ発生器」は、同じ意味を有し、交換可能に使用される。例えば本明細書の図で項目60、61、62、および63として示されるものなどのプラズマアクチュエータは、壁31、32の近くの空気流の局所軸モーメントを増強し、内壁および外壁31、32の鋭い曲率半径を有する領域でダクト30中の流れの剥離を最小限にする。本発明の例示的な実施形態で示されるように使用されるプラズマアクチュエータは、壁31、32の近くの流体に作用するイオンの流れおよび物体力を生成し、その流体を、壁31、32からの流れの剥離が低減した状態で、壁31、32により近づいて所望の流体流動方向に流れるようにする。
【0019】
図4は、図1および2で示されるブースタ40およびHPC14などの2つの圧縮機の間に位置する移行ダクト38中の流れの剥離を低減するためのプラズマアクチュエータ60の例示的な実施形態を軸方向横断面図で概略的に例示する。本明細書で示される本発明の例示的な実施形態は、図1で横断面で例示される航空機ガスタービンエンジンなどのガスタービンエンジン10で、ダクト38中の圧力分布の改善を容易にし(図7を参照)かつ/または圧縮システムの効率を高める。図1〜6で示される例示的なガスタービンエンジンプラズマアクチュエータは、内壁31、外壁32またはブースタOGV44のハブ部分45に位置する項目60、61、62もしくは63として示されるものなどのプラズマアクチュエータを含む。図4で示される項目60などのプラズマアクチュエータは、内壁31などの壁の溝68に位置する。プラズマアクチュエータ60は、環状溝に位置する円周方向で連続的であってもよい。別法として、プラズマアクチュエータ60は、分割されてもよく、その場合複数のプラズマアクチュエータ60は、壁31、32の円周方向に離間された対応する溝区分に位置する。図4で示される例示的な実施形態は、ダクト38の内壁31の溝68に位置するプラズマアクチュエータ60を備える。別法として、プラズマアクチュエータ60は、例えばダクト38壁が空気流の方向に鋭い曲率半径を有する場所などの、流れの剥離が生じそうなダクト38の他の場所に位置してもよい。
【0020】
図4で示される例示的な実施形態は、内壁31に取り付けられる環状プラズマ発生器60を示し、誘電材料65によって分離される第1の電極64および第2の電極66を含む。誘電材料65は、ダクト38の環状溝68内に配置される。AC(交流電流)電力供給部70は、約3〜20kVの範囲の高電圧AC電位を電極64、66に供給するために電極64、66に接続される。AC振幅が十分に大きいときは、空気は、最大電位の領域でイオン化してプラズマ80を形成する。プラズマ80は一般に、空気にさらされる第1の電極64の縁67の近くで始まり、誘電材料65によって覆われる第2の電極66によって投影される面積69にわたって広がる。電場勾配の存在下でのプラズマ80(イオン化空気)は、壁31の近くの空気流25への力を生成し、環状ダクト38の内壁31にわたって圧力分布の変化を引き起こす仮想空気力学的形状を誘起する。電極の近くの空気は、弱くイオン化され、通常空気の加熱はない、またはほとんどない。壁31の近くの空気流25は、壁31に貼り付いたままとなる傾向があり、ダクト38中の圧力損失の低減に起因してダクト38内の流れの剥離の低減および圧力分布の改善をもたらす。
【0021】
図6は、本発明の例示的な実施形態によるブースタシステム50を示す。図6で示されるブースタシステム50は、従来のブースタシステムより大きいピッチ線半径54を有する最後のロータ段57を有する。これは、ブースタの最後の段から流れを受け取るダクト38中で、例えば図6で項目60、61、62として示されるものなどのプラズマアクチュエータを使用することによって本発明で可能になる。従来のブースタシステムの従来の流路90は、本発明の例示的な実施形態のブースタシステム50との比較のために図6で点線によって示される。最後のロータ段57などの、ブースタの後段をさらに半径方向外側に有することに関連していくつかの恩恵がある。より大きなピッチ線半径54を有するロータ段57は、従来の設計と比較して高い先端速度を有する。ロータが流体に対して仕事をする能力は、ロータの接線速度に直接関係するので、図6で示される本発明の例示的な実施形態は、圧力上昇を生成するための高い能力を有する。いくつかの用途では、所望の圧力比について、本発明を使用することによってブースタシステムで必要とされる段数を低減することが可能であり、エンジン10のために重量の著しい低減をもたらす。
【0022】
図6で示される本発明の例示的な実施形態では、ブースタシステム50は、ロータハブ41の周りに円周方向に離間された複数の最初のロータブレード56を備え、長手方向軸11から延びる第1のピッチ線半径53を有する最初のロータ段55と、最初のロータ段55から軸方向後部に位置する最後のロータ段57とを有する。最後のロータ段57は、ロータハブ41の周りに円周方向に離間された複数の最後のロータブレード58を有し、長手方向軸11から延びる第2のピッチ線半径54を有する。ブースタシステムは、最後のロータ段57から軸方向後部に位置するグースネックダクト38を有し、最後のロータ段57から出る空気流25を受け取る。グースネックダクト38は、入口端部47と、入口端部47から軸方向後部に、ある距離で位置する出口端部48とを有し、少なくとも1つのプラズマアクチュエータが中に取り付けられている。グースネックダクト38の幾何学的形状および例えば図6で項目60、61、62として示されるものなどのプラズマアクチュエータの配置は、本明細書で先に述べられている。従来のブースタシステムとは違って、最後のロータ段57は、最初のロータ段55ピッチ線半径53「A」と比較してより高いピッチ線半径54「B」を有する。本明細書で示される本発明の例示的な実施形態では、比B/Aは、少なくとも0.9である。
【0023】
図6で示される例示的なブースタシステム50は、後部端部に位置するグースネックダクト38を有し、ダクト38は、軸方向に弓形の内壁31および軸方向に弓形の外壁32を有する。出口端部48は、出口面積37を有し、入口端部47は、入口面積36を有する。グースネックダクトの幾何学的形状(図5を参照)は、出口外半径72に対する入口外半径71の比RI/ROが少なくとも1.6であるようなものである。例えば図6で項目60、61、62として示されるものなどのプラズマアクチュエータは、本明細書で先に述べられたようにダクト38中に位置する。
【0024】
本明細書で述べられるようなプラズマアクチュエータを有するグースネックダクト38を備えるブースタシステム50を有するガスタービンエンジン10は、AC電力供給部70からのAC電位を使用して第1の電極64および第2の電極66を励起することによって運転できる。電極64、66を励起し、プラズマ80を生成することによって、ダクト38中の流れの剥離が、低減でき、そのことは、ブースタシステム50中の圧力分布の優位性および改善をもたらす。一方法では、図6での項目60などのプラズマアクチュエータは、エンジン運転期間全体にわたって連続的に励起できる。別法として、プラズマアクチュエータは、エンジン運転計画の選択された部分の間だけ励起できる。プラズマアクチュエータ励起の時期および継続時間は、エンジン操作性を決定するための周知のエンジン試験方法によって決定できる。
【0025】
図7は、周知の流体流動分析方法によって決定される出口端部48でのダクト38内の例示的な圧力分布を示す。横軸は、ダクト38内の規格化圧力を示し、縦軸は、ダクト38内の半径方向スパン位置を示す。符号91で識別される分布は、プラズマアクチュエータ60がAC電力供給部70によって励起されないときのダクト38の出口端部48での半径方向圧力分布を示す。符号92で識別される分布は、プラズマアクチュエータ60がAC電力供給部70によって励起されるときの同じ場所(ダクト38の出口端部48)での半径方向圧力分布を示す。プラズマアクチュエータが位置する壁32の近くでは(1.0スパン位置の近くでは)、規格化圧力が約0.79から約0.86まで増加することは、明らかである。
【0026】
本明細書で使用されるように、単数形で列挙され、単語「a」または「an」に続く要素またはステップは、そのような排除が明確に列挙されない限り、複数形の前記要素またはステップを排除しないと理解すべきである。本明細書で述べられかつ/または例示される構成部品およびシステムを設計しかつ/または製造する要素/構成部品/ステップその他を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、要素(複数可)/構成部品(複数可)/その他の1つまたは複数があることを意味することが意図されている。術語「備える」、「含む」および「有する」は、包括的であり、記載される要素(複数可)/構成部品(複数可)/その他以外の追加の要素(複数可)/構成部品(複数可)/その他があってもよいことを意味することが意図されている。その上、本発明の「一実施形態」への言及は、列挙される特徴もまた組み込む追加の実施形態の存在を排除すると解釈することは意図されていない。
【0027】
本明細書で述べられる方法ならびにベーン、外側バンド、内側バンドおよびベーン区分などの品目は、タービンエンジンで使用される圧縮機との関連で述べられるけれども、本明細書で述べられるベーンおよびベーン区分ならびにそれらの製造または修理の方法は、圧縮機またはタービンエンジンに限定されないことがわかる。本明細書に含まれる図で例示されるベーンおよびベーン区分は、本明細書で述べられる特定の実施形態に限定されず、むしろこれらは、本明細書で述べられる他の構成部品から独立して、別々に利用できる。
【0028】
本書は、例を使用し、最良の形態を含む本発明を開示し、また当業者なら誰でも本発明を作り、使用できるようにする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に思い付く他の例を含んでもよい。そのような他の例は、それらが特許請求の範囲の文字通りの言葉とは異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字通りの言葉とはごくわずかに異なる等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0029】
本明細書では本発明の好ましくかつ例示的な実施形態であると考えられるものが述べられたが、本発明の他の変更形態は、本明細書の教示から当業者には明らかであるものとし、従って、本発明の真の精神および範囲に入るすべてのそのような変更形態が添付の特許請求の範囲で確保されることが、望まれる。
【符号の説明】
【0030】
10 ガスタービンエンジンアセンブリ
11 長手方向軸
12 コアガスタービンエンジン
13 ファンアセンブリ
14 軸流高圧圧縮機
15 バイパス空気流
16 燃焼器
17 ファンブレード
18 高圧タービン
19 低圧タービン
20 圧縮システム
21 第1の圧縮機
22 第2の圧縮機
23 第1の流路
24 第2の流路
25 コア空気流
27 第2のロータシャフト
28 第1のロータシャフト
29 ロータディスク
30 ダクト
31 内壁
32 外壁
33 第3の流路
34 入口部分
35 出口部分
36 入口面積
37 出口面積
38 グースネックダクト
40 ブースタ
41 ロータハブ
44 ブースタ出口案内ベーン
45 ハブ部分
46 支柱
47 入口端部
48 出口端部
50 ブースタシステム
53 第1のピッチ線半径
54 第2のピッチ線半径
55 最初のロータ段
56 最初のロータブレード
57 最後のロータ段
58 最後のロータブレード
60 プラズマアクチュエータ
61 プラズマアクチュエータ
62 プラズマアクチュエータ
63 プラズマアクチュエータ
64 第1の電極
65 誘電材料
66 第2の電極
67 第1の電極の縁
68 溝
69 第2の電極によって投影される面積
70 AC電力供給部
71 入口外半径
72 出口外半径
76 軸方向後部距離
80 プラズマ
90 従来の流路
91 プラズマアクチュエータが励起されないときの半径方向圧力分布
92 プラズマアクチュエータが励起されるときの半径方向圧力分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸を有するロータハブの周りに円周方向に離間された複数の最初のロータブレードを備え、前記長手方向軸から延びる第1のピッチ線半径を有する最初のロータ段と、
前記最初のロータ段から軸方向後部に位置する最後のロータ段であって、前記長手方向軸の周りに円周方向に離間された複数の最後のロータブレードを備え、前記長手方向軸から延びる第2のピッチ線半径を有する最後のロータ段と、
前記最後のロータ段から軸方向後部に位置し、空気流を受け取ることが可能なグースネックダクトであって、入口端部、および前記入口端部から軸方向後部に、ある距離で位置する出口端部を備え、少なくとも1つのプラズマアクチュエータが中に取り付けられているグースネックダクトとを備えるブースタシステム。
【請求項2】
前記第2のピッチ線半径と前記第1のピッチ線半径との比が、少なくとも0.9である、請求項1記載のブースタシステム。
【請求項3】
前記グースネックダクトが、軸方向に弓形の内壁および軸方向に弓形の外壁、前記長手方向軸と前記入口端部の前記外壁との間に延びる入口外半径、ならびに前記長手方向軸と前記出口端部の前記外壁との間に延びる出口外半径を備え、前記出口外半径に対する前記入口外半径の比が、少なくとも0.9である、請求項1記載のブースタシステム。
【請求項4】
前記第2のピッチ線半径と前記第1のピッチ線半径との比が、少なくとも0.9である、請求項3記載のブースタシステム。
【請求項5】
前記入口端部が、ある入口面積を有し、前記出口端部が、前記入口面積より大きい出口面積を有する、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプラズマアクチュエータが、前記内壁に位置する、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプラズマアクチュエータが、前記外壁に位置する、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項8】
前記最後のロータ段と前記グースネックダクトとの間に位置する出口案内ベーンをさらに備え、前記出口案内ベーンが、ハブ部分に位置するプラズマアクチュエータを有する前記ハブ部分から半径方向外側に延びる、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項9】
前記プラズマアクチュエータが、長手方向軸の周りに円周方向に連続的である、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項10】
長手方向軸の周りに円周方向に配置される複数のプラズマアクチュエータをさらに備える、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項11】
前記プラズマアクチュエータが、誘電材料によって分離される第1の電極および第2の電極を備える、請求項2記載のブースタシステム。
【請求項12】
高電圧AC電位を前記第1の電極および前記第2の電極に供給するために前記第1の電極および前記第2の電極に接続されるAC電力供給部をさらに備える、請求項11記載のブースタシステム。
【請求項13】
プラズマアクチュエータを有するブースタシステムを備えるガスタービンエンジンを運転する方法であって、ブースタロータ段から軸方向後部に位置するグースネックダクト中で壁に沿ってプラズマを形成するステップを含む方法。
【請求項14】
AC電位を誘電材料によって分離される第1の電極および第2の電極に供給するステップをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記AC電位を前記第1の電極および前記第2の電極に連続的に供給するステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
エンジン運転範囲の選択された部分の間、前記AC電位を遮断するステップをさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
AC電位を複数の電極に供給することによって複数のプラズマアクチュエータを選択的に励起するステップをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
前記ブースタシステムが、最初のロータ段についての第1のピッチ線半径および前記最初のロータ段から軸方向後部に位置する最後のロータ段についての第2のピッチ線半径を備え、前記第2のピッチ線半径と前記第1のピッチ線半径との比が、少なくとも0.9である、請求項13記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−514717(P2012−514717A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545403(P2011−545403)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/020213
【国際公開番号】WO2010/080798
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】