説明

プラズマ洗浄処理装置

【課題】いずれの被処理物であっても迅速な表面処理が行なえるようにする。
【解決手段】垂直面9及び水平な下面11を備えた電界印加電極3と、その電界印加電極3の垂直面9と対向し合う垂直面15及び水平な下面17とを備えた接地電極5とによって構成する。各垂直面9,15及び各下面11,17にはプラズマ供給口23からプロセスガスが流れるようにする一方、高周波電圧が印加される電界印加電極3の垂直面9及び下面11を、プラズマ生成領域を作る面状の放電電極面とし、生成されたプラズマが被処理物27の上面に対して面状にあたるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生成されたプラズマを被処理物の表面にあてて表面処理を行なうプラズマ洗浄処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプラズマ洗浄は、地球に悪影響を与えるとされるフロンを用いたフロン洗浄処理にかわって近年にわかに脚光を浴びるようになっているもので、エレクトロニクス分野を始め多くの分野にわたって用いられるようになっている。
【0003】
例えば、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチングを始めとして、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、めっき前処理、コーティング前処理、各種材料、部品の表面改質などの表面処理に用いられる。
【0004】
プラズマ洗浄処理としては、対向し合う電極によって生成されるプラズマガス生成通路内に被処理物を通過させることで表面処理を行なう外に、生成されたプラズマを噴射口から被処理物の表面に噴射させることで表面処理を行なうタイプがある。
【0005】
プラズマ中にはイオン、電子、ラジカル、紫外線が存在し、これらが被処理物の表面に作用することで表面処理が行なわれる。
【特許文献1】特開2002−72497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被処理物の表面にプラズマをあてて表面処理を行なうタイプにあっては、プラズマガス生成通路内を通過させて表面処理を行なうタイプに比べて、必要な部分のみを表面処理できるメリットを有し、生成されたプラズマは幅の狭い長孔状に吹き出される。処理面積も幅の狭い長孔領域となる。
【0007】
これは、プラズマを生成する一対の電極を対向させる構造からきているもので、例えば、一定の表面積を備えたウエハ等の被処理物の表面処理を行なう場合、例えば、幅の狭い長孔状に吹き出されるプラズマの下を通過させることで表面処理が行なわれる。
【0008】
この時の具体的な処理動作は、被処理物の端部にプラズマを一定時間(秒単位)で当てた後、続いて長孔の幅分、わずかに移動しプラズマを一定時間当てる。続いて長孔の幅分、わずかに移動しプラズマを一時間当てる動作を繰返すことで、端から順々に表面処理を行なっていくため、例えば、表面積の広い被処理物にあっては多大の時間を必要とし、処理能率の面で問題があった。
【0009】
この場合、プラズマを当てる1回当りの噴射時間を短くすることで、ある程度の処理速度をあげることができるが、そのためには短時間で表面処理を完了させる必要があるため強い出力のプラズマが要求される。
【0010】
強い出力のプラズマは、例えば、電子部品が装着されている被処理物の場合、その電子部品にダメージを与える恐れがある等、被処理物によって使用できない不具合をかかえる。
【0011】
そこで、本発明にあっては、処理速度の向上が図れると共にいずれの被処理物であっても表面処理の可能な汎用性を備えたプラズマ洗浄処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、垂直面及び水平な下面とを備えた電界印加電極と、その電界印加電極の垂直面と対向し合う垂直面及び水平な下面とを備えた接地電極と、対応し合う電界印加電極の垂直面と接地電極の垂直面とによって作られるガス流路に設けられたプロセスガス供給口と、ガス流路から下方の搬送体へ向けてプロセスガスを流すガス流出口とを有し、前記一方の電界印加電極の垂直面及び下面を、その垂直面から下面にかけて面状のプラズマ生成領域を作る面状の放電電極面としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電界印加電極の垂直面と下面とに連続した面状のプラズマ生成領域を作ることができるため、被処理物の上面に生成されたプラズマが面状に作用する結果、1回でできる処理面積は大幅に拡大し、広い面積を備えた被処理物であっても迅速に表面処理作業を完了することができる。
【0014】
また、1回当りの処理面積が大きい面状処理が行なえるため、ダメージを与えない弱い出力のプラズマを使用しても大きく処理時間をとられることがなくなると共に、制約を受けることなくいずれの種類の被処理物であっても処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によれば、第1に、前記面状の放電電極面となる電界印加電極の下面とその下面の下に配置される被処理物上面までの距離を、0.5mm〜4mmの寸法に設定し、電界印加電極の下面に安定した面状のプラズマ生成領域を作る。
【0016】
第2に、前記対向し合う一対の電界印加電極と接地電極を、被処理物の搬送方向に沿って直列に複数配置し、面状処理する処理面積の拡大を図ることで、連続した速い流れの流れ作業を可能とする。
【実施例】
【0017】
以下、図1と図2の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0018】
図1は本発明にかかるプラズマ洗浄処理装置全体の概要切断面図を示している。プラズマ洗浄処理装置1は、電界印加電極3とその電界印加電極3と対向し合う接地電極5とプロセスガス供給手段7とを有している。
【0019】
電界印加電極3はアルミ等の材質により垂直面9と水平な下面11とを備えた断面矩形状に形成され、図2に示す如く正面からみた時に左右に長い角筒状に作られている。
【0020】
電界印加電極3の垂直面9及び下面11はそれぞれ連続し合う面状の放電電極面となっていて、プラズマ発生電源13によって高周波電圧が印加される。高周波としては50kMz〜27.12Mzのサイン波が好ましいがパルス波であってもよい。
【0021】
接地電極5は、アルミ等の材質により垂直面15と水平な下面17とを備えた断面矩形状に形成されている。接地電極5の長さ及び幅は前記電界印加電極3の形状と同一形状に作られ、絶縁製の支持部材19によって前記電界印加電極3と並列配置された状態で固定支持されている。
【0022】
接地電極5の垂直面15は前記電界印加電極3の垂直面9と対向し合うと共に、対向し合う各垂直面9,15によって上下方向の面状のガス通路21が形成されている。
【0023】
ガス通路21は、上部にプロセスガス供給口23が、下部にガス流出口25がそれぞれ設けられている。
【0024】
ガス通路21を構成する垂直面9の面状の放電電極面と下面11の面状の放電電極面は図2、正面から見た時に、前記支持部材19の一方の側壁19aから他方の側壁19bまでの幅Dを有し、この幅Dは被処理物27を表面処理するための最大の処理幅となっている。また、両サイドの側壁19a,19bはプロセスガスが両サイドから外へ逃げるのを阻止する阻止壁として機能している。
【0025】
電界印加電極3と接地電極5は、中心部位を冷却水が流れる冷却路29がそれぞれ設けられた水冷式となっている。電界印加電極3及び接地電極5の各垂直面9,15と各下面11,17には材質が石英ガラス又はセラミック等で作られたプレート状の誘電体31a,31bがそれぞれ設けられている。各垂直面9,15に対向して設けられた誘電体31aと誘電体31aの間は平面からみた時に幅の狭い長孔状のガス通路21が形成されることで、プロセスガス供給口23からのプロセスガスはガス通路21を通り、ガス流出口25から各下面11,17へ向け面状に拡がる流れが得られるようになっている。
【0026】
なお、誘電体31a,31bは、安定した放電を確保するために設けられているものであって必ずしも必要としない。
【0027】
一方、誘電体31a,31bがそれぞれ設けられた電界印加電極3の下面11と接地電極5の下面17の下部は、図1矢印イの如く搬送する搬送体33が配置されている。
【0028】
搬送体33は、駆動輪と従動輪(いずれも図示していない)とにエンドレスに掛け回されたチェーン等の搬送部材35に被処理物27を1つずつセットするセットプレート37が一定の間隔でエンドレスに回動するよう設けられている。
【0029】
搬送体33は前記した如く下面11と対向し合う構造となることで、電界印加電極3に高周波電圧が印加されると、電界印加電極3の垂直面9を始めとして下面11にも面状のプラズマ生成領域が作られるようになる。
【0030】
電界印加電極3の下面11に作られる面状のプラズマ生成領域は、実験でわかったもので、垂直面9のように対向し合う接地電極5のない下面11にどのようにしてプラズマ生成領域が作られるのかは理論的には解明されていないが、電界印加電極3の下面11を垂直面9と同様に面状の放電電極面としたことと、下方にアース電極として機能する搬送体33が対向して配置されることで、放電が起こりプラズマが生成されるものと推測される。
【0031】
この場合、電界印加電極3の下面11から搬送体33の上面にセットされる被処理物27の上面までの距離hは0.5mm〜4mmの間が望ましい。好ましくは1.5mmである。これにより、実績結果でも誘電体31bの組合せと相俟って安定したプラズマ生成が得られるようになる。
【0032】
一方、プラズマ供給口23は、供給管37を介してボンベ等のプロセスガス供給手段7と接続連通し、供給管37の途中に設けられた制御バルブ39の開又は閉によってプロセスガスの供給及び遮断制御が可能となっている。
【0033】
プロセスガスとしては、ヘリウム又はアルゴンガスがあり、それらを単独で使用したり、あるいは、組合せた混合ガスとして用いることも可能である。
【0034】
この場合、ヘリウム又はアルゴンガスの外に酸素、水素等の反応ガスを組合せる手段とすることが望ましい。
【0035】
このように構成されたプラズマ洗浄処理装置1によれば、プロセスガス供給口23からプロセスガスを送り込みガス通路21及び下面11,17にプロセスガスが満たされた状態で電界印加電極3に高周波電圧を印加することで電界印加電極3の垂直面9及び下面11側とに面状のプラズマ生成領域が作られる。
【0036】
この結果、被処理物27の上面は1回あたりの処理面積が大きい面状処理となるため、広い面積を備えた被処理物27であっても迅速に表面処理を完了することができる。また、処理面積が大きい面状処理によって、大きく処理時間がとられることがなくなるため、弱い出力のプラズマでも処理が可能となり、いずれの種類の被処理物であっても、ダメージを与えることなく表面処理を行なうことができる。
【0037】
この場合、プラズマ洗浄処理装置1を構成する一対の電界印加電極3と接地電極5とを搬送方向に沿って直列に複数配置する手段としてもよい。
【0038】
これにより、面状処理する処理面積が搬送方向に沿って拡大するため、連続した流れの速い流れ作業を可能とし、処理能力の大幅な向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかるプラズマ洗浄装置の図2のA−A線拡大概要説明図。
【図2】プラズマ洗浄装置の概要正面図。
【符号の説明】
【0040】
3 電界印加電極
5 接地電極
7 プロセスガス供給手段
9 電界印加電極の垂直面
11 電界印加電極の下面
15 接地電極の垂直面
17 接地電極の下面
21 ガス通路
23 プロセスガス供給口
25 ガス流出口
27 被処理物
31a,31b 誘電体
33 搬送体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直面及び水平な下面とを備えた電界印加電極と、その電界印加電極の垂直面と対向し合う垂直面及び水平な下面とを備えた接地電極と、対応し合う電界印加電極の垂直面と接地電極の垂直面とによって作られるガス流路に設けられたプロセスガス供給口と、前記ガス流路から下方の搬送体へ向けてプロセスガスを流すガス流出口とを有し、前記一方の電界印加電極の垂直面及び下面を、その垂直面から下面にかけて面状のプラズマ生成領域を作る面状の放電電極面としたことを特徴とするプラズマ洗浄処理装置。
【請求項2】
前記面状の放電電極面となる電界印加電極の下面とその下面の下に配置される被処理物上面までの距離は、0.5mm〜4mmの寸法に設定されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ洗浄処理装置。
【請求項3】
前記垂直面が対向し合う一対の電界印加電極と接地電極は、被処理物の搬送方向に沿って直列に複数配置されていることを特徴とする請求項1記載のプラズマ洗浄処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−237080(P2007−237080A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63097(P2006−63097)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000114891)ヤマト科学株式会社 (17)
【Fターム(参考)】