説明

プラズマ洗浄方法

【課題】熱硬化型のシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板をプラズマ処理して、接着剤中に含まれるシロキサン成分を除去して、その後の信頼性の高いワイヤーボンディング等が行えるようにすること。
【解決手段】真空チャンバー1を所定の真空状態とし、高周波電源10からの高周波電圧を下部電極3に高周波電圧を印加する。また、開閉バルブ23を開いて、上部電極2と下部電極3との間に六フッ化イオウガスを供給してプラズマ化する。すると、六フッ化イオウガスのフッ素がシリコン系接着剤7中のケイ素と合体して、このケイ素は真空通路6を介して装置外部へ排出される。このプラズマ洗浄を60秒間行った後、5秒経過後に上部電極2と下部電極3との間にアルゴンガスを供給してプラズマ化する。すると、アルゴンガスのアルゴンが六フッ化イオウガス中のイオウと合体して、このイオウは真空通路6を介して装置外部へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、一方の前記電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記プリント基板を洗浄し、この洗浄した後のプラズマ化された反応性ガスを装置外へ排出するプラズマ洗浄方法に関する。詳述すると、前記基板は熱硬化型のシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着されたものであり、前記接着剤中に含まれるシロキサンを除去洗浄するプラズマ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ洗浄方法は、例えば特許文献1などに開示されているが、熱硬化型のシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板にあっては、前記基板をキュア炉(加熱炉)内に入れて前記接着剤を硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−123370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤を熱硬化させる際に基板の電極部や半導体素子のボンディングパッド部の表面に、この接着剤中に含まれるシロキサン成分が降り積もることとなる。すると、このシロキサン成分は、絶縁体であるために、その後に行われるワイヤーボンディング或いはモールドの信頼性を損なうという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、この熱硬化型のシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を加熱炉内に入れて前記接着剤を硬化させる際に、この接着剤中に含まれるシロキサン成分が基板等に降り積もっても、シロキサン成分を除去して、その後の信頼性の高いワイヤーボンディング或いはモールドが行えるようにすることを目的とする。また、前記半導体素子或いはこの半導体素子が装着された基板に付着したイオウも除去して、半導体素子への悪影響を防止することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内にシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄し、この洗浄した後のプラズマ化された反応性ガスを装置外へ排出するプラズマ洗浄方法であって、
初めに前記反応性ガスとして六フッ化イオウガスを使用して、六フッ化イオウガスのフッ素がシリコン系接着剤に含まれ、前記半導体素子の表面に付着したシロキサン中のケイ素と合体して、このケイ素を除去し、
次いで前記反応性ガスとしてアルゴンガスを使用して、このアルゴンガス中のアルゴンが前記半導体素子或いはこの半導体素子が装着された基板に付着したイオウを除去することを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に電極部が銀メッキで作製されシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄し、この洗浄した後のプラズマ化された反応性ガスを装置外へ排出するプラズマ洗浄方法であって、
初めに前記反応性ガスとして六フッ化イオウガス及び酸素ガスを使用して、六フッ化イオウガスのフッ素がシリコン系接着剤に含まれ前記半導体素子の表面に付着したシロキサン中のケイ素と合体して生成されたケイ素を含む合成物質を除去すると共に、六フッ化イオウガスのイオウ(S)が酸素ガス(O)と合体して生成されたイオウを含む合成物質を除去し、
次いで前記反応性ガスとしてアルゴンガスを使用して、このアルゴンガス中のアルゴンが前記半導体素子或いはこの半導体素子が装着された基板に付着したイオウを含む合成物質を除去することを特徴とする。
【0008】
また第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記チャンバーの真空引きをプラズマ反応ガスを供給することなく、ケイ素除去の後で、アルゴンガスの使用前にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱硬化型のシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を加熱炉内に入れて前記接着剤を硬化させる際に、この接着剤中に含まれるシロキサン成分が基板等に降り積もっても、シロキサン成分を除去して、その後の信頼性の高いワイヤーボンディング或いはモールドが行えるようにすることができる。また、イオウを除去できるから、半導体素子への悪影響を防止することができる。
【0010】
更には、基板の電極部が銀メッキで作製された基板にあっては、初めに反応性ガスとして六フッ化イオウガスを使用したときに、銀とイオウとが反応して硫化銀が発生することがあったが、この硫化銀の発生を防止して、メッキの変色の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】プラズマ洗浄装置の概略図である。
【図2】基板の正面図である。
【図3】プラズマ洗浄に係るレシピ設定画面を示す図である。
【図4】プラズマ洗浄処理のレシピ番号を選択する画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ洗浄装置について説明する。1は真空チャンバーで、この真空チャンバー1内には一対の平行な上部電極2及び下部電極3が配設される。そして、この真空チャンバー1は、真空通路6中に設けられた開閉弁4を介して真空ポンプ5によって所定の真空状態とされる。
【0013】
そして、グランド電位に接続された前記上部電極2を貫通して後述するプラズマ反応性ガスを供給通路20を介して上部電極2と下部電極3との間に供給する。この下部電極3上に、電極部9を備えた洗浄すべき基板PBが配設される。図2に示すように、この基板PB上には熱硬化型のシリコン系接着剤7を介して半導体素子であるLED(Light Emitting Diode)チップ8が装着される。なお、この基板PBは、セラミック基板であるが、リードフレームや、その他の基板でもよい。
【0014】
10はアースに接続された高周波電源で、前記下部電極3に自動整合器11を介して高周波電圧を印加して前記プラズマ反応性ガスをプラズマ化させるものである。そして、生成されたプラズマ中のプラスイオンが前記下部電極3上の基板PBに衝突することにより、この基板PBの表面やLEDチップ8表面などをスパッタリングして、後述する汚染物質を取り除き、洗浄する。
【0015】
13はマイクロコンピュータ等から構成させる制御装置で、前記高周波電源10、その他の駆動源等を制御して、本プラズマ洗浄装置を統括制御する。14は各種データを格納する記憶装置、15はインターフェース17を介して制御装置13に接続される表示装置としてのモニター、このモニター15には入力手段としての種々のタッチパネルスイッチ16が設けられ、作業者がタッチパネルスイッチ16を操作することにより、種々の設定を行うことができる。
【0016】
そして、制御装置13は、インターフェース17及び駆動回路18を介して前記開閉弁4、真空ポンプ5、ガスボンベ19からアルゴンガス(Arガス)が供給される供給通路20中に設けられた開閉バルブ21、ガスボンベ22から六フッ化イオウガス(SF)が供給される供給通路20中に設けられた開閉バルブ23等の駆動を制御する。24、25は流れる反応性ガスの量を計測する流量計で、前記各供給通路20に、ガスボンベ19と開閉バルブ21との間、ガスボンベ22と開閉バルブ23との間に配設される。
【0017】
ここで、熱硬化型のシリコン系接着剤7を介してLEDチップ8が装着された前記基板PBはキュア炉(加熱炉)内に収納されて、硬化したシリコン系接着剤7によりLEDチップ8は基板PB上に固定される。この硬化の際に、基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に、この接着剤中に含まれるシロキサン成分が降り積もることとなる。すると、このシロキサン成分は、絶縁体であるために、その後に行われるLEDチップ8と基板PBの電極部9との接続のためのワイヤーボンディングの信頼性を損なうという不具合が生じる。そこで、このプラズマ洗浄装置にて、シロキサン成分を除去するものであり、本発明の第1の実施形態の洗浄処理について以下説明する。
【0018】
先ず、モニター15にタッチパネルスイッチ16の押圧操作により、図3に示すようなプラズマ洗浄処理のレシピ設定画面を表示させて、入力キーとしての数字キースイッチ部を表示させて、各種データを入力してレシピを設定する。即ち、プラズマエッチングを行うレシピ番号「1」の第1ステップとして、供給するアルゴンガス(「Ar」と表示)を「0」として、供給する六フッ化イオウガス(「SF」と表示)を「20(1分間当り20ccの意)」とし、プラズマ洗浄する際の開始圧力を「20(Pa)」とし、RF電源出力パワーを「600(W)」とし、プラズマ処理時間を「60(秒間)」とし、RF方式をRIE(Reactive Ion Etching)処理とし、スパッタリングを行うその後の第2ステップまでの間隔を「0005(5秒間)」と入力する。
【0019】
また、第2ステップとして、供給するアルゴンガス(「Ar」と表示)を「5(1分間当り5ccの意)」として、供給する六フッ化イオウガス(「SF」と表示)を「0」とし、プラズマ洗浄する際の開始圧力を「20(Pa)」とし、RF電源出力パワーを「600(W)」とし、RF方式をRIE(Reactive Ion Etching)処理とし、プラズマ処理時間を「0020(20秒間)」と入力する。
【0020】
以下同様に、レシピ番号「2」、「3」の第1ステップ及び第2ステップの必要事項を入力するが、ここでは省略する。このようにして、レシピ番号「1」、「2」、「3」の必要事項を入力した後に、タッチパネルスイッチ16のデータ更新スイッチ部16Aを押圧操作すると、制御装置13は初めに設定入力した又は更新入力したレシピデータを記憶装置14に格納させ、また入力終了スイッチ部16Aを押圧操作すると、このレシピ設定画面を閉じるように制御する。
【0021】
以上の構成により、以下動作について説明する。先ず、設定されたプラズマ洗浄処理のレシピを選択すべくモニター15に、図4に示す選択画面を表示させ、レシピ番号「1」を選択するために、タッチパネルスイッチ16の対応するチェック・ボックススイッチ部16Cを押圧操作してチェック・マーク(レ)を付す。そして、運転開始スイッチ(図示せず)を操作して、本プラズマ洗浄装置の運転を開始させる。
【0022】
すると、初めに制御装置13は開閉弁4を開いて真空ポンプ5を駆動させて、真空チャンバー1を所定の真空状態とし、高周波電源10からの高周波電圧を下部電極3に自動整合器11を介して高周波電圧を印加するように制御する。また、開閉バルブ23を開いて、上部電極2を貫通して、この上部電極2と下部電極3との間に第1ステップのプラズマ反応性ガスである六フッ化イオウガスをガスボンベ22から流量計25で計測しながら1分間当り20cc分供給してプラズマ化する。この場合、六フッ化イオウガスが所定の流量で真空チャンバー1内に供給され、所定の真空圧を維持するように開閉弁4を開き、常に排気しており、略一定の濃度の六フッ化イオウガスが真空チャンバー1内を満たしている。
【0023】
そして、基板PBの表面及びLEDチップ8表面などをエッチングして、汚染物質を取り除き、洗浄する。即ち、基板PBをキュア炉(加熱炉)内に収納してシリコン系接着剤7を硬化してLEDチップ8を基板PB上に固定するが、この硬化の際に、基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に、前記接着剤7中に含まれるシロキサン成分が降り積もるが、キュア炉より取出されたLEDチップ8を固定した基板PBを真空チャンバー1内に入れ、前記反応性ガスとして六フッ化イオウガス(SF)を使用して、六フッ化イオウガスのフッ素(F)がシロキサン成分中のケイ素(Si)と合体してフッ化ケイ素(SiF)を生成し、このフッ化ケイ素は真空通路6を介して装置外部へ排出される。この場合、六フッ化イオウガスの供給と、ケイ素とフッ素との合成物質(フッ化ケイ素)の真空通路6を介しての排出とは、平行して常時行われる。
【0024】
レシピ番号「1」の洗浄処理にあっては、このような六フッ化イオウガスを供給しながら、プラズマ化して洗浄して装置外部へ排出するプラズマ洗浄処理の第1ステップは60秒間行われ、この第1ステップ終了から5秒経過すると、次に第2ステップのプラズマ洗浄処理が20秒間行われることとなる。
【0025】
そして、六フッ化イオウガス中のフッ素がケイ素と合体してガス状のフッ化ケイ素(SiF)を生成し、イオウ(S)は残ってLEDチップ8を含めた半導体素子及び基板PB等に付着した状態となる。
【0026】
そこで、初めに開閉バルブ23を閉じて第1ステップが終了してから5秒間、真空チャンバー1内の第1ステップで使用した反応性ガスを含む各種ガスを真空通路6を介して装置外部へ排出する(開閉弁4は開状態。)。即ち、プラズマ反応ガスを供給することなく、前記真空チャンバー1を真空引きする。そして、この真空引きを5秒間行って、この5秒経過後に、開閉バルブ21を開いて、上部電極2と下部電極3との間に第2ステップのプラズマ反応性ガスであるアルゴンガス(Ar)をガスボンベ19から流量計24で計測しながら、1分間当り5cc分供給してプラズマ化する。
【0027】
そして、生成されたプラズマ中のプラスイオンが前記下部電極3上の基板PBに衝突することにより、基板PBの表面及びLEDチップ8表面などをスパッタリングして、汚染物質を取り除き、洗浄する。即ち、アルゴンガスのアルゴン(Ar)がLEDチップ8を含めた半導体素子及び基板PB表面等に付着しているイオウ及びその他の有機物成分など(炭素、酸素など)を除去し、除去されたイオウ及びその他の有機物成分などが真空通路6を介して装置外部へ排出される(開閉弁4は開状態。)。そして、このようなプラズマ処理の第2ステップは20秒間行われる。従って、この第2ステップにおいては、特にLEDチップ8に悪影響を与えるイオウを除去することができる。
【0028】
以上のように、基板PBをキュア炉(加熱炉)内に収納してシリコン系接着剤7を硬化してLEDチップ8を基板PB上に固定するが、この硬化の際に、基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に、前記接着剤7中に含まれるシロキサン成分が降り積もることとなる。すると、このシロキサン成分は、絶縁体であるために、従来はその後に行われるワイヤーボンディングの信頼性を損なうという不具合が生じたが、本発明はシロキサン成分を除去することができ、信頼性の高いワイヤーボンディングを行うことができる。
【0029】
なお、第1ステップの六フッ化イオウガスの供給から第2ステップのアルゴンガスの供給への切替えの際には、必ずしも間隔をあける必要はない。即ち、第1ステップ後に、真空引きのみする期間を設けずに、第2ステップに移行するようにしてもよい。
【0030】
以上のような洗浄処理の第1の実施形態は、基板PBの電極部9が銀メッキや、金メッキ、パラジウムメッキなどのメッキで作製された場合にも、適用できる。
【0031】
しかし、基板PBの電極部9が銀メッキで作製されている場合には、前述した第1ステップにおける六フッ化イオウガスの使用時に、どうしてもイオウが基板PBに残ってしまって、このイオウと基板PBの電極部9の銀メッキとが反応して硫化銀(AgS)が僅か生成されるので、この硫化銀によりメッキが変色するという問題が発生することがあった。このため、LEDチップ8による照明が黄色ぽくなるという問題が発生する。
【0032】
そこで、この問題を解消する第2の実施形態について、以下説明する。この実施形態では、プラズマエッチングを行う第1ステップにおいて、プラズマ反応性ガスとして六フッ化イオウガス(SF)に加えて、酸素ガス(O)をも使用する。すると、六フッ化イオウガスのフッ素(F)が前述したような基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に降り積もったシロキサン成分中のケイ素(Si)と合体して合成物質であるガス状のフッ化ケイ素(SiF)が生成されると共に、六フッ化イオウガスのイオウが酸素ガス(O)と合体して、合成物質であるガス状の二酸化イオウ(SO)が生成される。従って、イオウと基板PBの電極部9の銀メッキとが反応することによる硫化銀(AgS)の生成されることが防止されるから、この硫化銀によりメッキが変色することが防止される。
【0033】
また、基板PB上の電極部9に付着しているその他の有機物成分である炭素(C)が酸素ガス(O)と合体してガス状の二酸化炭素(CO)が生成されたり、水素(H)が酸素ガス(O)と合体して水蒸気(HO)が生成される。
【0034】
そして、開閉バルブ23を閉じてこの第1ステップが終了してから所定時間、真空チャンバー1内の第1ステップで使用した反応性ガス、及び前述した各種ガスを真空通路6を介して装置外部へ排出する(開閉弁4は開状態。)。即ち、プラズマ反応ガスを供給することなく、前記真空チャンバー1を真空引きする。そして、この真空引きを前記所定時間行う。
【0035】
この第1ステップの処理を行うと、残渣として電極部9を含めた基板PB表面やLEDチップ8を含めた半導体素子表面に、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、イオウ(S)、リン(P)などが僅か残ることとなる。
【0036】
そして、スパッタリングを行う第2ステップとして、前記所定時間経過後に、開閉バルブ21を開いて、上部電極2と下部電極3との間に第2ステップのプラズマ反応性ガスであるアルゴンガス(Ar)を所定量供給してプラズマ化する。
【0037】
そして、生成されたプラズマ中のプラスイオンが前記下部電極3上の基板PBに衝突することにより、基板PBの表面及びLEDチップ8表面などをスパッタリングして、汚染物質を取り除き、洗浄する。即ち、アルゴンガスのアルゴン(Ar)が電極部9を含めた基板PB表面やLEDチップ8を含めた半導体素子表面などに付着しているイオウ(S)及びその他の有機物成分など(炭素、酸素、水素など)を除去し、除去されたイオウ及びその他の有機物成分などが真空通路6を介して装置外部へ排出される(開閉弁4は開状態。)。そして、このようなプラズマ処理の第2ステップを所定時間行うことにより、この第2ステップにおいては、特にLEDチップ8に悪影響を与えるイオウを完全に除去することができる。
【0038】
なお、以上の第2の実施形態においては、プラズマ反応性ガスとして六フッ化イオウガス(SF)と酸素ガス(O)を第1ステップで使用するが、イオウ(S)と酸素ガス(O)とはいずれかが残らないように等量にするのが望ましいが、イオウ(S)を電極部9を含めた基板PB表面やLEDチップ8を含めた半導体素子表面に残さないためには、酸素ガスが僅かに多い方がよい。イオウ(S)が完全に除去され、少量残った酸素は表面に付着している有機物成分である炭素(C)や水素(H)と反応して、この反応物である二酸化炭素(CO)及び水蒸気(HO)が排出されることで除去される。
【0039】
また、前記第2の実施形態においては、プラズマ反応性ガスとして六フッ化イオウガス(SF)と酸素ガス(O)を第1ステップで使用したが、四フッ化炭素ガス(CF)と酸素ガス(O)を使用してもよい。
【0040】
この場合、四フッ化炭素ガス(CF)のフッ素(F)が前述したような基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に降り積もったシロキサン成分中のケイ素(Si)と合体して合成物質であるガス状のフッ化ケイ素(SiF)が生成されると共に、四フッ化炭素ガス(CF)の炭素(C)が酸素ガス(O)と合体して、合成物質であるガス状の二酸化炭素(CO)が生成される。そして、この第1ステップが終了してから所定時間、真空チャンバー1内の第1ステップで使用した反応性ガス、及び前述した各種ガスを真空通路6を介して装置外部へ排出する(開閉弁4は開状態。)。即ち、プラズマ反応ガスを供給することなく、前記真空チャンバー1を真空引きする。そして、この真空ひきを前記所定時間行う。
【0041】
従って、四フッ化炭素ガス(CF)のフッ素(F)が前記基板PBの電極部9やLEDチップ8のボンディングパッド部の表面に降り積もったシロキサン成分中のケイ素(Si)と合体してガス状のフッ化ケイ素(SiF)を生成し、これを装置外部へ排出することができる。
【0042】
次に、この第1ステップ終了後の前記所定時間経過後に、第1及び第2の実施形態と同様に、上部電極2と下部電極3との間に第2ステップのプラズマ反応性ガスであるアルゴンガス(Ar)を所定量供給してプラズマ化させる。そして、生成されたプラズマ中のプラスイオンが前記下部電極3上の基板PBに衝突することにより、基板PBの表面及びLEDチップ8表面などをスパッタリングして、汚染物質を取り除き、洗浄し、この第2ステップの終了後に、所定時間、真空チャンバー1内の第1ステップで使用した反応性ガス、及び前述した各種ガスを真空通路6を介して装置外部へ排出する(開閉弁4は開状態。)。
【0043】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0044】
1 真空チャンバー
2 上部電極
3 下部電極
7 シリコン系接着剤
10 高周波電源
PB 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内にシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄し、この洗浄した後のプラズマ化された反応性ガスを装置外へ排出するプラズマ洗浄方法であって、
初めに前記反応性ガスとして六フッ化イオウガスを使用して、六フッ化イオウガスのフッ素がシリコン系接着剤に含まれ、前記半導体素子の表面に付着したシロキサン中のケイ素と合体して、このケイ素を除去し、
次いで前記反応性ガスとしてアルゴンガスを使用して、このアルゴンガス中のアルゴンが前記半導体素子或いはこの半導体素子が装着された基板に付着したイオウを除去することを特徴とするプラズマ洗浄方法。
【請求項2】
チャンバー内に一対の電極を配設して、真空状態にされたチャンバー内に電極部が銀メッキで作製されシリコン系接着剤を介して半導体素子が装着された基板を収納し、プラズマ反応性ガスを供給すると共に、前記一対の電極に高周波電源により高周波電圧を印加して前記反応性ガスをプラズマ化して前記基板を洗浄し、この洗浄した後のプラズマ化された反応性ガスを装置外へ排出するプラズマ洗浄方法であって、
初めに前記反応性ガスとして六フッ化イオウガス及び酸素ガスを使用して、六フッ化イオウガスのフッ素がシリコン系接着剤に含まれ前記半導体素子の表面に付着したシロキサン中のケイ素と合体して生成されたケイ素を含む合成物質を除去すると共に、六フッ化イオウガスのイオウ(S)が酸素ガス(O)と合体して生成されたイオウを含む合成物質を除去し、
次いで前記反応性ガスとしてアルゴンガスを使用して、このアルゴンガス中のアルゴンが前記半導体素子或いはこの半導体素子が装着された基板に付着したイオウを含む合成物質を除去することを特徴とするプラズマ洗浄方法。
【請求項3】
前記チャンバーの真空引きをプラズマ反応ガスを供給することなく、ケイ素除去の後で、アルゴンガスの使用前にすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマ洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189338(P2011−189338A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10202(P2011−10202)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】