説明

プラズマ生成装置、表面処理装置、表示装置、および流体改質装置

【課題】プラズマ生成を低電圧で安定して行うことのできるプラズマ生成装置、およびこのプラズマ生成装置を用いた表面処理装置、表示装置、流体改質装置を提供する。
【解決手段】プラズマ生成装置20は、第1絶縁被覆線1を経糸(縦糸)、第2絶縁被覆線2を緯糸(横糸)として平織(経糸2本、緯糸2本を最小単位として、経糸と緯糸とを交互に上下に交差させる織り方)で織り合せた平織構造(ファブリック構造)からなるプラズマ生成部8を備える。第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2間に交流電圧(電源3)を印加することで、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2間に生じる微小な隙間においてプラズマPを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ生成装置、およびこのプラズマ生成装置を用いた表面処理装置、表示装置、流体改質装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大気圧下でプラズマを生成するプラズマ生成装置として、例えば、アーク放電、熱プラズマジェット、誘電体バリア放電などを利用したプラズマ生成装置が提案されている。
【0003】
一例として、誘電体バリア放電の放電形態を説明する。誘電体バリア放電を用いたプラズマ生成装置では、2枚の導体板が互いに離間して対向配置されており、その両方あるいはどちらか一方の表面に絶縁性の誘電体層が配置されている。そして、両導体板の間に交流電圧を印加すると、パッシェンの法則(気体中に置いた2枚の平板間の放電電圧は、気体密度(圧力)と放電距離との積の関数となるという法則)の放電開始条件が整ったときに、プラズマが生成される。プラズマが生成されると両導体板間の電位差によりプラズマ中の荷電粒子が絶縁層の表面に蓄積され、プラズマ生成が終了する。次に、電圧を前回のプラズマ生成時と反対極性で印加すると、前回のプラズマ生成時に絶縁層の表面に蓄積された荷電粒子が作る電界と両導体板間に印加された電圧による電界とによって再びプラズマ生成が開始される。このようなプラズマ生成が繰り返される。
【0004】
また、非特許文献1には、細管状の医療器具の内部滅菌を行うためのプラズマ生成方法として、誘電体によって被覆された直線状の電極の周囲に帯状の電極を螺旋状に取り巻け、両電極間に正弦波電圧を印加することでプラズマを生成する方法が開示されている。
【0005】
また、本願発明者の一人は、特許文献1において、複数の貫通孔を有する金属基板の表面に誘電体層を設け、当該金属基板を前記貫通孔が一致するように複数重ね合わせた電極部と、表面処理用ガスないし反応性ガスを前記貫通孔に向けて供給するガス供給部と、前記金属基板間に電圧を印加する電圧印加部とを備えたプラズマ処理装置(プラズマ生成装置)を提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大野嘉仁、江藤洋幸、荻野明久、永津雅章、「メートル長細線状誘電体バリア放電プラズマの生成特性」、2006年8月29日、応用物理学会、第67回応用物理学会学術講演会講演予稿集
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−227990号公報(2004年8月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のプラズマ生成装置は、プラズマ生成条件によってはプラズマを安定かつ均一に生成することが困難であるという問題があった。例えば、大気圧下においてプラズマを安定して均一に生成することは困難であった。
【0009】
なお、従来の誘電体バリア放電を用いたプラズマ生成装置は、プラズマ生成用の気体としてヘリウムを用いた場合には、電極間に比較的均一なプラズマが生成されることが知られている。しかしながら、例えば気体が窒素や酸素や大気の場合には、電極間に多数のフィラメント状放電が発生し、均一で安定なプラズマを得ることは難しかった。
【0010】
また、上記非特許文献1および特許文献1の技術では、プラズマ生成領域が両電極間を直線的に結ぶ領域からずれているため、実質的な放電距離が長くなり、放電電圧が高くなるという問題があった。つまり、非特許文献1および特許文献1に開示されている技術は、2枚の平板電極を両電極間に隙間が生じるように対向配置して用いる構成とは異なるものの、パッシェンの法則と同様の傾向を示す。したがって、気体密度が一定の場合(例えば大気圧下でプラズマを生成する場合など)、両電極間の実質的な放電距離が長くなると、放電電圧が大きくなってしまう。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマ生成を低電圧で安定して行うことのできるプラズマ生成装置、およびこのプラズマ生成装置を用いた表面処理装置、表示装置、流体改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプラズマ生成装置は、上記の課題を解決するために、第1導電体と、第2導電体と、上記第1導電体と上記第2導電体との間に備えられた少なくとも1層の絶縁層とを備えたプラズマ生成部を有し、上記第1導電体と上記第2導電体との間に電圧を印加することによってプラズマを生成するプラズマ生成装置であって、上記第1導電体と上記第2導電体とは上記絶縁層を介して互いに接触しており、上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲における、上記第1導電体と上記絶縁層との間、上記第2導電体と上記絶縁層との間、上記絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、プラズマ化する流体に晒された隙間が形成されており、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体とを含んでなるファブリック構造を有することを特徴としている。ここでいう流体には、気体および液体の両方が含まれる。ここで、ファブリック構造とは、布地状の構造を総称するものであり、例えば、2本以上の線状部材を織り合わせた織物構造、2本以上の線状部材を編み合わせた編物構造、2本以上の線状部材を組み合わせた組物構造、網状部材あるいは多数の穴部を有する板状部材に線状部材を編み込んだ構造などを含む。
【0013】
上記の構成によれば、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲における、上記第1導電体と上記絶縁層との間、上記第2導電体と上記絶縁層との間、上記絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、プラズマ化する流体に晒された隙間が形成されている。上記の隙間は、上記接触部の周囲に形成されているので微小な隙間であり、この隙間において、プラズマ化する流体の流体圧力(気体圧力あるいは液体圧力)を低くすることなく、流体圧力と放電距離との積を小さくすることができる。このため、パッシェンの法則と略同様の放電開始条件を満たすための、両導電体間に印加すべき交流電圧の電圧値を、流体圧力が高い場合であっても低くできる。したがって、低電圧で安定してプラズマを生成することができる。
【0014】
また、上記の構成によれば、プラズマ生成部が、第1導電体と第2導電体とを含んでなるファブリック構造を有しているので、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲に上記の隙間を容易に形成できる。
【0015】
また、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触する接触部が3次元方向に分布した構成である構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、上記接触部が3次元方向に分布しているので、3次元方向に分布した形状のプラズマを生成できる。
【0017】
また、上記プラズマ生成部は、上記ファブリック構造の集合体によって形成されている構成であってもよい。
【0018】
上記の構成によれば、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する接触部が3次元方向に分布した構成のプラズマ生成部を容易に形成できる。
【0019】
また、上記プラズマ生成部は、外力を付与することによって形状を変形可能であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、プラズマ生成部の形状を、プラズマ生成装置の用途に適した形状に変形させて使用することができる。例えば、第1導電体、第2導電体、および絶縁層として柔軟性を有する部材を用いることにより、外力を付与することによって形状を変形可能なプラズマ生成部を容易に形成できる。
【0021】
なお、従来のプラズマ生成装置の多くは、減圧下でプラズマを生成するプラズマ生成装置を改良したものであり、固定形状のプラズマ生成用電極あるいはプラズマ生成用アンテナを備えたものであった。つまり、電極系の構造がある一定の固定形状であった。このため、生成されるプラズマ形状もほぼ固定形状であり、用途等に応じてプラズマ形状を制御することはできなかった。
【0022】
また、非特許文献1および特許文献1の技術においても、プラズマ生成装置の形状を任意に変形可能にすることについては何ら考慮されておらず、用途等に応じてプラズマ形状を制御することはできなかった。
【0023】
また、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体、上記第2導電体、および上記絶縁層によって上記隙間が形成された構造を保持している構成であってもよい。
【0024】
上記の構成によれば、第1導電体、第2導電体、および絶縁層によって上記隙間が形成されたプラズマ生成部の構造が保持される。このため、プラズマ生成部の構造を保持するための支持体を別途設ける必要がないので、プラズマ生成部の構成を簡略化できる。
【0025】
また、上記第1導電体における上記絶縁層との接触面、上記第2導電体における上記絶縁層との接触面、上記絶縁層における上記第1導電体との接触面、上記絶縁層における上記第2導電体との接触面、上記第1導電体と上記第2導電体との間に配置された複数の絶縁層のうちのいずれか1層以上の絶縁層における他の絶縁層との接触面、のうちのいずれか1つ以上が曲面であってもよい。
【0026】
上記の構成によれば、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲に、この接触部から離れるに従って間隔が広くなる微小な隙間を形成できる。このため、この隙間において、流体圧力を低くすることなく、流体圧力と放電距離との積を小さくすることができ、パッシェンの法則と略同様の放電開始条件を満たすための、両導電体間に印加すべき交流電圧の電圧値を低くできる。したがって、低電圧で安定してプラズマを生成することができる。
【0027】
また、上記隙間の少なくとも一部が、上記第1導電体と上記第2導電体とを結ぶ直線上に位置する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、上記隙間の少なくとも一部が、上記第1導電体と上記第2導電体とを結ぶ直線上に位置するので、両導電体間における電界強度の強い領域でプラズマを生成することができる。したがって、プラズマ生成のために印加すべき電圧の電圧値を低くできる。また、プラズマを安定して生成することができる。
【0029】
また、上記第1導電体および上記第2導電体のうちの少なくとも一方は、上記絶縁層によって被覆されていてもよい。
【0030】
上記の構成によれば、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する構成を容易に実現できる。
【0031】
また、上記プラズマ生成装置は、大気圧の気体をプラズマ化させるものであってもよい。
【0032】
上記の構成によれば、第1導電体と絶縁層との間、第2導電体と絶縁層との間、絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、大気圧の気体に晒された微小な隙間が形成されるので、この隙間において、気体圧力を低くすることなく、気体圧力と放電距離との積を小さくすることができる。したがって、大気圧の気体であっても安定してプラズマ化させることができる。
【0033】
また、上記プラズマ生成装置は、大気組成の気体をプラズマ化させるものであってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、第1導電体と絶縁層との間、第2導電体と絶縁層との間、絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、大気組成の気体に晒された微小な隙間が形成されるので、この隙間において、気体圧力を低くすることなく、気体圧力と放電距離との積を小さくすることができる。したがって、大気組成の気体であっても安定してプラズマ化させることができる。
【0035】
また、上記プラズマ生成装置は、液体をプラズマ化させるものであってもよい。
【0036】
上記の構成によれば、第1導電体と絶縁層との間、第2導電体と絶縁層との間、絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、液体に晒された微小な隙間が形成されるので、この隙間において、圧力を低くすることなく、圧力と放電距離との積を小さくすることができる。これにより、液体中に含まれる例えば酸素や水素などをプラズマ化させることができる。
【0037】
また、上記の構成において、上記プラズマ生成部に気泡を供給する気泡供給手段を備えていてもよい。
【0038】
上記の構成によれば、プラズマ生成部に気泡を供給することで、このプラズマ生成部において気体放電を生じさせ、プラズマを安定して生成することができる。
【0039】
また、上記気泡供給手段は、上記液体中で電気分解を生じさせることで上記気泡を生成する構成であってもよい。
【0040】
上記の構成によれば、液体中で電気分解を生じさせ、この電気分解によって生じる気泡をプラズマ生成部に供給することができる。これにより、プラズマ生成部において気体放電を生じさせ、プラズマを安定して生成することができる。
【0041】
本発明の表面処理装置は、上記したいずれかのプラズマ生成装置を用いて被処理材の表面処理を行うことを特徴としている。
【0042】
上記の構成によれば、プラズマを用いた表面処理を低電圧で安定して行うことができる。なお、第1導電体、第2導電体、および絶縁層として柔軟性を有する部材を用いることにより、形状を容易に変形可能な表面処理装置を形成してもよい。この場合、曲面形状や凹凸形状を有する被処理材に対しても表面処理を適切に施すことができる。
【0043】
本発明の表示装置は、上記プラズマ生成装置を用いて表示を行う表示装置であって、線状部材からなる上記第1導電体および上記第2導電体をそれぞれ複数備え、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体と複数の絶縁線とからなるファブリック構造を有し、上記絶縁線によって区画された複数の画素領域を備え、各画素領域において上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触していることを特徴としている。
【0044】
上記の構成によれば、線状部材からなる上記第1導電体および上記第2導電体をそれぞれ複数備え、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体と複数の絶縁線とからなるファブリック構造を有し、上記絶縁線によって区画された複数の画素領域を備え、各画素領域において上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触している。このため、各第1導電体および各第2導電体の電位を制御することで、各第1導電体と各第2導電体との絶縁層を介した接触部におけるプラズマ生成を制御し、各画素領域の発光状態を制御して表示を行うことができる。これにより、従来のプラズマディスプレイパネルのように基板上に電極線、誘電体層、リブなどを形成する場合に比べて、製造工程を簡略化し、製造コストを低減できる。また、第1導電体、第2導電体、絶縁層、および絶縁線として柔軟性を有する部材を用いてもよく、その場合には形状を容易に変形可能なフレキシブルなプラズマ表示装置を実現できる。
【0045】
また、上記第1導電体、上記第2導電体、上記絶縁層のうちのいずれか1つ以上に、蛍光材料が塗布されている構成としてもよい。
【0046】
上記の構成によれば、上記第1導電体、上記第2導電体、上記絶縁層のうちのいずれか1つ以上に蛍光材料を塗布した後、これら各部材からなるファブリック構造を形成することで、カラー表示が可能な表示装置を容易に形成できる。また、従来のプラズマディスプレイパネルのように各セル毎に蛍光体を塗布する処理を行う必要がないので、製造工程をさらに簡略化し、製造コストをさらに低減できる。
【0047】
本発明の流体改質装置は、上記したいずれかのプラズマ生成装置を用いて流体の改質処理を行う流体改質装置であって、上記流体中でプラズマを生成させて上記流体を改質処理することを特徴としている。
【0048】
上記の構成によれば、低電圧で安定してプラズマを用いた流体改質処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0049】
以上のように、本発明のプラズマ生成装置は、上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲における、上記第1導電体と上記絶縁層との間、上記第2導電体と上記絶縁層との間、上記絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、プラズマ化する流体に晒された隙間が形成されており、上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体とを含んでなるファブリック構造を有している。
【0050】
それゆえ、上記の隙間において、流体圧力を低くすることなく、流体圧力と放電距離との積を小さくすることができ、低電圧で安定してプラズマを生成することができる。また、プラズマ生成部が、第1導電体と第2導電体とを含んでなるファブリック構造を有しているので、第1導電体と第2導電体とが絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲に上記の隙間を容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプラズマ生成装置の概略構成を示す図である。
【図2】(a)は図1に示したプラズマ生成装置における第1絶縁被覆線と第2絶縁被覆線との接触部近傍の様子を模式的に示した斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図3】(a)は図1に示したプラズマ生成装置に備えられるプラズマ生成部の写真である。(b)は(a)に示したプラズマ生成部を大気圧のヘリウム中に配置してプラズマ生成したときの写真である。
【図4】(a)は図1に示したプラズマ生成装置の変形例における、絶縁層を介して互いに当接する導体線(互いに当接する導体線と絶縁被覆線)の接触部近傍の様子を模式的に示した斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図5】(a)は撚線構造を2次元正方格子状に整列させたプラズマ生成部を大気圧のヘリウム中に配置して交流電圧を印加したときの写真であり、(b)は(a)に示したプラズマ生成部を約0.04MPaのヘリウム中に配置してプラズマ生成したときの写真である。
【図6】本発明の他の実施形態にかかるプラズマ生成装置の概略構成を示す図である。
【図7】(a)は図6に示したプラズマ生成装置に備えられるプラズマ生成部の写真であり、(b)は(a)に示したプラズマ生成部を大気圧のヘリウム中に配置してプラズマ生成したときの写真である。
【図8】本発明の他の実施形態にかかるプラズマ生成装置の変形例を示す図である。
【図9】(a)は、図8に示したプラズマ生成装置を大気圧のヘリウム中に配置してプラズマ生成したときの写真である。(b)は、図8に示したプラズマ生成装置を大気圧の空気中に配置してプラズマ生成したときの写真である。
【図10】図8に示したプラズマ生成装置よりも第1絶縁被覆線を金網に密に編み込み、大気圧の空気中でプラズマ生成したときの写真である。
【図11】図8に示したプラズマ生成装置をヘリウム中、窒素中、空気中に配置したときの、気体圧力と放電開始電圧との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の他の実施形態にかかるプラズマ生成装置の変形例を示す図である。
【図13】(a)は、本発明の一実施形態にかかる表面処理装置の概略構成を示す図である。(b)は、(a)に示した表面処理装置に備えられるプラズマ生成部8の形状を非処理物の表面形状に応じて変形させた場合の一例を示す図である。
【図14】(a)は、図13(a)に示した表面処理装置においてプラズマ生成したときのプラズマ生成部8の様子を模式的に示した断面図である。(b)は、図13(a)に示した表面処理装置の変形例においてプラズマ生成したときのプラズマ生成部8の様子を模式的に示した断面図である。(c)は、図13(a)に示した表面処理装置の他の変形例においてプラズマ生成したときのプラズマ生成部8の様子を模式的に示した断面図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかる表面処理装置による表面処理効果を調べるために行った実験の実験装置の写真である。
【図16】(a)および(b)は、図15に示した実験装置を用いて行った実験の結果を示す写真である。
【図17】本発明の一実施形態にかかる表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示した表示装置に備えられる表示部の概略構成を示す図である。
【図19】本発明の一実施形態にかかる流体改質装置の概略構成を示す図である。
【図20】図19に示した流体改質装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかるプラズマ生成装置10の概略構成を示す図である。
【0053】
この図に示すように、プラズマ生成装置10は、導体線4が絶縁層5によって被覆されてなる第1絶縁被覆線(第1電極)1と、導体線6が絶縁層7によって被覆されてなる第2絶縁被覆線(第2電極)2と、電源3とを備えている。
【0054】
第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とは互いに撚り合わされて撚線構造(撚糸構造)からなるプラズマ生成部8を形成している。つまり、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とは互いに捻れながら当接している。なお、本実施形態では、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2として軟銅線をETFE樹脂で絶縁被覆した絶縁被覆銅線からなり、直径560μm、絶縁層(ETFE樹脂)厚150μmのものを用いた。ただし、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2はこれに限るものではなく、導体線を絶縁層によって被覆した構成であればよい。また、両絶縁被覆線の構成は互いに異なっていてもよい。
【0055】
電源3は、一端を第1絶縁被覆線1に接続され、他端を第2絶縁被覆線2に接続されており、これら両絶縁被覆線間に交流電圧(高周波電圧)を印加するものである。電源3によって両絶縁被覆線間に電圧が印加されると、両絶縁被覆線の接触部近傍における両絶縁被覆線間の隙間において図1に示すようにプラズマPが生成される。なお、プラズマPは、両絶縁被覆線の接触部がなす螺旋形状に沿った形状に生成される。ここで、両絶縁被覆線間に印加する電圧の波形および電圧値は特に限定されるものではなく、プラズマを生成する流体(気体あるいは液体)の種類、圧力等に応じて適宜設定すればよい。
【0056】
次に、プラズマ生成部8におけるプラズマ生成についてより詳細に説明する。図2(a)は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との接触点(接触部)Cを模式的に示した斜視図であり、図2(b)はこの接触点Cを含む第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2の断面図である。
【0057】
図2(b)に示すように、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との接触点Cでは両絶縁被覆線間に空間が存在しないのでプラズマは生成し得ない。ただし、絶縁層5、7が存在するので両者が短絡することはない。
【0058】
一方、接触点Cの近傍では、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との間に微小な隙間が生じる。この微小な隙間において、パッシェンの法則と同様の放電開始条件が整えば、プラズマが生成される。つまり、この隙間において流体圧力と両絶縁被覆線間の距離との積に応じて決まる放電開始電圧以上の電圧が印加されたときに放電が生じる。
【0059】
そして、プラズマが生成されると両導体線4、6間の電位差によりプラズマ中の荷電粒子が絶縁層5、7の表面に蓄積され、プラズマ生成が終了する。つまり、絶縁層5の表面には導体線4と反対極性の電荷が蓄積され、絶縁層7の表面には導体線6と反対極性の電荷が蓄積される。
【0060】
次に、両導体線に対して反対極性の電圧が印加されると、上記のように蓄積された電荷が作る電界と両導体線間に印加された電圧による電界とにより再びプラズマ生成が開始される。そして、両導体線間に印加される電圧の極性が反転する毎にこの現象が繰り返される。
【0061】
図3(a)は、プラズマ生成部8の写真である。図3(b)は、プラズマ生成部8を大気圧のヘリウム中に配置し、両絶縁被覆線間に交流電圧(+0.6kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−0.6kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加したときの写真である。図3(b)に示すように、両絶縁被覆線の接触部に沿った螺旋状のプラズマが生成された。また、この図に示すように、両絶縁被覆線からなる撚線構造を湾曲させた状態においても、プラズマを安定して生成することができた。
【0062】
なお、接触点Cから離れて両絶縁被覆線間の距離が長くなりすぎた領域では、放電開始条件を満たさず、プラズマは生成されない。このため、プラズマ生成は、両絶縁被覆線の接触点Cから所定範囲内の空間でなされることになる。この範囲は、両絶縁被覆線間に印加する電圧の大きさ等にも依存するが、本願発明者らの検討によれば、例えば大気圧のヘリウム中では接触点Cから1mm〜2mm程度までであり、大気圧・大気組成の気体中では接触点Cから数100μmまでであった。
【0063】
以上のように、本実施形態にかかるプラズマ生成装置10は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに撚り合わされた撚線構造を有するプラズマ生成部8を備えている。これにより、2本の導体線4、6がそれぞれ捻れた状態で絶縁層5、7を介して互いに当接している。
【0064】
上記の構成によれば、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに撚り合わされて撚線構造を形成しているので、両絶縁被覆線の接触部近傍において両絶縁被覆線間にプラズマ化する流体(気体あるいは液体)に晒された微小な隙間を設けることができる。これにより、この隙間において、流体圧力を低くすることなく、流体圧力と両絶縁被覆線間の距離との積を小さくすることができる。このため、両導体線間に交流電圧を印加することでパッシェンの法則と略同様の放電開始条件を満たしてプラズマを生成させることができる。また、高圧(例えば大気圧)の条件下においても低電圧でプラズマを安定して生成することができる。また、プラズマ化する流体の種類によらず、同一の電極形状を用いて容易にプラズマを生成できる。例えば、短距離でプラズマを生成しやすい窒素、酸素等、長距離でプラズマを生成しやすい希ガスなど、プラズマ化する流体の種類によらず単一の電極形状でプラズマ生成を行うことができる。
【0065】
なお、従来の対向電極を用いた誘電体バリア放電方式のプラズマ生成装置では、大気圧下でプラズマ生成を行う場合、制御が困難なアーク放電になってしまう場合がほとんどであった。また、上記した非特許文献1の技術は、絶縁被覆された直線形状の電極(一方の電極)の周囲にテープ状の電極(他方の電極)を螺旋状に巻きつけた形状であり、他方の電極から一方の電極に伸びる放物線状あるいはアーチ状の電界によって放電が生じていた。このため、実質的な放電距離が長くなり、また、電界強度が弱い領域でプラズマ生成を行うことになるので、放電電圧が高くなるという問題があった。また、特許文献1の技術においても、非特許文献1と同様、放物線状あるいはアーチ状の電界によって放電が生じる構成であり、放電電圧が高くなるという問題があった。
【0066】
これに対して、本実施形態の構成によれば、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに撚り合わされており、両絶縁被覆線の接触部近傍に生じる両絶縁被覆線間の微小な隙間において放電を生じさせてプラズマを生成できる。これにより、放電距離を短くすることができ、低電圧で効率的にプラズマを生成することができる。したがって、例えば大気圧下であってもプラズマを安定して均一に生成できる。
【0067】
また、本実施形態では、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2として断面形状が円形の絶縁被覆線を用いている。つまり、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2は、互いの接触面が曲率を有する形状である。これにより、両絶縁被覆線の接触部近傍において、接触部から遠ざかるにつれて徐々に空間寸法が広がる微小な隙間を構成でき、両絶縁被覆線間に微小な隙間を容易に形成することができる。したがって、プラズマを容易かつ安定して生成することができる。
【0068】
また、上記の隙間を、導体線4と導体線6とを結ぶ直線上、あるいはこの直線の近傍に形成できる。これにより、強い電界が生じる領域でプラズマを生成させることができるので、より低い電圧で効率的にプラズマを生成することができる。
【0069】
また、本実施形態では、軟銅線を絶縁層で被覆した絶縁被覆線同士を撚り合わせている。すなわち、形状を容易に変形可能な柔軟性(可撓性)を有する導線を撚り合わせてプラズマ生成部を形成している。これにより、プラズマ生成部に外力を付与することによってプラズマ生成部の形状を任意の形状に容易に変形できる。つまり、一旦決めた形状を一定範囲内で変形可能である。また、撚線構造であるため、形状を変形しても絶縁被覆線同士の接触状態が安定して維持されるので、任意の形状に変形させた状態でプラズマを安定して生成できる。
【0070】
なお、非特許文献1および特許文献1の技術では、プラズマ生成装置の形状を任意に変形可能にすることについては何ら考慮されておらず、用途等に応じてプラズマ形状を制御することができなかった。また、非特許文献1のプラズマ生成装置において、仮に各部材に柔軟性を有する部材を用いたとしても、電極部を湾曲されるなどして変形させた場合、直線状の電極の周囲に巻き付けた螺旋状の電極が断線してプラズマ生成を行えなくなったり、螺旋状の電極の位置がずれてプラズマ生成を安定して行えなくなったりするという問題が発生する。
【0071】
また、プラズマ生成装置10では、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに撚り合わされた撚線構造からなるプラズマ生成部8を備えている。このプラズマ生成部8は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とによってこれら両絶縁被覆線の接触部近傍に微小な隙間が生じるように自らの構造を保持している。つまり、プラズマ生成部8は、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2(第1導電体、第2導電体、および絶縁層)の弾性力等と、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との接触部の空間分布とによって自らの構造を保持している。このため、プラズマ生成部8の構造を保持するための支持体を別途設ける必要がないので、プラズマ生成部8の構成を簡略化できる。また、第1導電体、第2導電体、および絶縁層として形状を容易に変形可能な柔軟性(可撓性)を有する部材を用いることで、形状を任意の形状に容易に変形できるプラズマ生成部2を容易に形成できる。
【0072】
また、本実施形態では、2本の絶縁被覆線からなる撚線構造を有するプラズマ生成部8を用いているが、これに限らず、2本以上の導体線が絶縁層を介して接触しており(一方の導体線が絶縁層の一方の面に接触し、この絶縁層の他方の面における上記一方の導体線との接触部に対応する位置に他方の導体線が接触しており)、この接触部の周囲に微小な隙間が生じる構成であればよい。例えば、両絶縁被覆線あるいはいずれか一方の絶縁被覆線の断面が楕円、半円、多角形、薄膜形状等の任意の形状であってもよい。また、一方の導線(電極)に絶縁被覆を施していない導線を用いてもよい。また、両方の導線に絶縁被覆を施していない導線を用い、両導線を互いの間に絶縁層を挟んだ状態で撚り合わせてもよい。
【0073】
図4(a)は、第1絶縁被覆線1に代えて絶縁被覆されていない導体線4を用いた場合の、導体線4と第2絶縁被覆線2との接触点Cを模式的に示した斜視図であり、図4(b)はこの接触点Cを含む導体線4および第2絶縁被覆線2の断面図である。
【0074】
この図に示すように、一方の導線として絶縁被覆を施していない導線を用いた場合にも、導体線4と第2絶縁被覆線2との接触点Cの近傍において導体線4と第2絶縁被覆線2との間に微小な隙間を生じさせ、この隙間においてプラズマを生成できる。
【0075】
また、3本以上の導体線が絶縁層を介して互いに接触するように撚り合わせた構成であってもよい。また、撚線構造に限らず、複数の導体線を、絶縁層を介して互いに接触するように組み合わせた組紐構造としてもよい。また、直線状の導体線の周囲に、曲面形状を有する導体線が絶縁層を介して接触するように巻きつけた構造としてもよい。
【0076】
また、本実施形態にかかるプラズマ生成部8は撚線構造あるいは組紐構造からなる1次元形状を有しているので、例えば直管、曲管等の細管内壁面の処理が可能である。
【0077】
また、本実施形態では、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とからなる撚線構造を1本のみ備えた1次元形状のプラズマ生成部8について説明したが、これに限らず、プラズマ生成部8が第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とからなる撚線構造あるいは組紐構造を複数備えている構成としてもよい。例えば、撚線構造あるいは組紐構造を複数並べて配置することで、2次元形状、あるいは3次元形状のプラズマ生成部8を形成してもよい。
【0078】
図5(a)は、上記撚線構造を2次元正方格子状に整列させたプラズマ生成部8を大気圧のヘリウム中に配置して交流電圧(+1.0kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−1.0kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加したときの様子を示す写真であり、図5(b)は上記撚線構造を2次元正方格子状に整列させたプラズマ生成部8を約0.04MPaのヘリウム中に配置して交流電圧(+0.8kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−0.8kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加したときの様子を示す写真である。
【0079】
このように、上記撚線構造を複数並べて配置することで、2次元方向あるいは3次元方向に分布したプラズマを安定して生成できる。また、この場合にもプラズマ生成部8の形状は外力によって容易に変形可能なので、用途に応じた多様な分布形状のプラズマを形成できる。
【0080】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1で説明した各部材と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0081】
本実施形態では、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とからなるファブリック構造のプラズマ生成部8を有するプラズマ生成装置について説明する。なお、ファブリック構造とは、布地状の構造を総称するものであり、例えば、2本以上の線状部材を織り合わせた織物構造、2本以上の線状部材を編み合わせた編物構造、2本以上の線状部材を組み合わせた組物構造、網状部材あるいは多数の穴部が設けられた板状部材に線状部材を編み合わせた(あるいは組み合わせた)構造などを含む。
【0082】
図6は、本実施形態にかかるプラズマ生成装置20の概略構成を示す図である。この図に示すプラズマ生成装置20は、第1絶縁被覆線1を経糸(縦糸)、第2絶縁被覆線2を緯糸(横糸)として平織(経糸2本、緯糸2本を最小単位として、経糸と緯糸とを交互に上下に交差させる織り方)で織り合せた平織構造(ファブリック構造)からなるプラズマ生成部8を備えている。
【0083】
図7(a)は、プラズマ生成装置20におけるプラズマ生成部8の写真である。また、図7(b)は、プラズマ生成部8を大気圧のヘリウム中に配置し、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2に交流電圧(+0.6kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−0.6kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加したときのプラズマ生成部8の写真である。この図に示すように、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との交差部分においてプラズマを生成することができた。
【0084】
以上のように、本実施形態にかかるプラズマ生成装置20は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とを含んでなるファブリック構造を有するプラズマ生成部8を備えている。
【0085】
上記の構成によれば、両絶縁被覆線の接触部近傍において両絶縁被覆線間にプラズマ化する流体に晒された微小な隙間を設けることができる。したがって、上記の隙間において、流体圧力を低くすることなく、流体圧力と両絶縁被覆線間の距離との積を小さくすることができるので、両導体線間に交流電圧を印加することでパッシェンの法則と略同様の放電開始条件を満たしてプラズマを生成させることができる。また、高圧(例えば大気圧)の条件下においても低電圧でプラズマを安定して生成することができる。また、プラズマ化する流体の種類によらず、同一の電極形状を用いて容易にプラズマを生成できる。例えば、短距離でプラズマを生成しやすい窒素、酸素等、長距離でプラズマを生成しやすい希ガスなど、プラズマ化する流体の種類によらず単一の電極形状でプラズマ生成を行うことができる。
【0086】
なお、従来の対向電極を用いた誘電体バリア放電方式のプラズマ生成装置では、大気圧下でプラズマ生成を行う場合、制御が困難なフィラメント状放電になってしまう場合が多かった。これに対して、上記の構成によれば、大気圧下においてもプラズマ生成を安定して制御できる。
【0087】
また、本実施形態では、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2として断面形状が円形の絶縁被覆線を用いている。つまり、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2は、互いの接触面が曲率を有する形状である。これにより、両絶縁被覆線の接触部近傍において、接触部から遠ざかるにつれて徐々に空間寸法が広がる隙間を構成でき、両絶縁被覆線間に微小な隙間を容易に形成することができる。したがって、プラズマを容易かつ安定して生成することができる。
【0088】
また、上記の隙間を、導体線4と導体線6とを結ぶ直線上、あるいはこの直線の近傍に形成できる。これにより、強い電界が生じる領域でプラズマを生成させることができるので、より低い電圧で効率的にプラズマを生成することができる。
【0089】
また、本実施形態では、軟銅線を絶縁層で被覆した絶縁被覆線同士を織り合わせている。すなわち、形状を容易に変形可能な柔軟性(可撓性)を有する導線を織り合わせてプラズマ生成部を形成している。これにより、プラズマ生成部に外力を付与することによってプラズマ生成部の形状を任意の形状に容易に変形できる。つまり、一旦決めた形状を一定範囲内で変形可能であり、例えば衣類等に用いられる繊維からなる布と同様、任意の曲面形状に変形できる。また、撚線構造であるため、形状を変形しても絶縁被覆線同士の接触状態が安定して維持されるので、任意の形状に変形させた状態でプラズマを安定して生成できる。
【0090】
また、プラズマ生成装置20では、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに織り合わされたファブリック構造からなるプラズマ生成部8を備えている。このプラズマ生成部8は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とによってこれら両絶縁被覆線の接触部近傍に微小な隙間が生じるように自らの構造を保持している。つまり、プラズマ生成部8は、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2(第1導電体、第2導電体、および絶縁層)の弾性力等と、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との接触部の空間分布とによって自らの構造を保持している。このため、プラズマ生成部8の構造を保持するための支持体を別途設ける必要がないので、プラズマ生成部8の構成を簡略化できる。また、第1導電体、第2導電体、および絶縁層として形状を容易に変形可能な柔軟性(可撓性)を有する部材を用いることで、形状を任意の形状に容易に変形できるプラズマ生成部2を容易に形成できる。
【0091】
なお、本実施形態では、2本の絶縁被覆線からなる平織構造のファブリック構造を有するプラズマ生成部8を用いているが、これに限らず、2本以上の導体線が絶縁層を介して互いに接触しており(一方の導体線が絶縁層の一方の面に接触し、この絶縁層の他方の面における上記一方の導体線との接触部に対応する位置に他方の導体線が接触しており)、この接触部の周囲に微小な隙間が生じる構成であればよい。例えば、綾織、朱子織、パイル織などの他の織り方によって織り合わせてもよい。また、種々の編み方によって第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とを編み合わせた編物構造としてもよい。また、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とが互いに接触するように適宜組み合わせた組物構造であってもよい。
【0092】
また、両絶縁被覆線あるいはいずれか一方の絶縁被覆線の断面が楕円、半円、多角形、薄膜形状等の任意の形状であってもよい。また、2本の絶縁被覆線を用いた構成に限らず、2本以上の導線が絶縁層を介して接触している構成であればよい。例えば、一方の導線(電極)に絶縁被覆を施していない導線を用いてもよい。また、両方の導線に絶縁被覆を施していない導線を用い、両導線を互いの間に絶縁層を挟んだ状態で織り合わせてもよい。
【0093】
また、3本以上の導体線が絶縁層を介して互いに接触するファブリック構造であってもよい。また、実施形態1に示した撚線構造、組紐構造、あるいは撚線構造と組紐構造との組み合わせを織り合わせたり、編み合わせたり、組み合わせるなどしてファブリック構造を形成してもよい。
【0094】
また、線状部材(線状電極)同士を組み合わせた構成に限らず、例えば、網状の電極や多数の穴が設けられた板状の電極に線状電極を編み込むことでファブリック構造を形成してもよい。
【0095】
図8は、ステンレス製の金網11に絶縁被覆線12を編み込んでファブリック構造を形成し、金網11と絶縁被覆線12との間に交流電圧を印加する構成としたプラズマ生成装置20bの概略構成を示す図である。なお、ここでは、絶縁被覆線12として軟導線をETFE樹脂で絶縁被覆した絶縁被覆線からなり、直径560μm、絶縁層(ETFE樹脂)厚150μmのものを用いた。
【0096】
図9(a)は、図8に示したプラズマ生成装置20bを大気圧のヘリウム中に配置し、交流電圧(+0.4kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−0.4kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加したときのファブリック構造部分の写真である。また、図9(b)は、図8に示したプラズマ生成装置20bを大気圧の空気中に配置し、電圧の最大値および最小値を±1.9kVとした以外は図9(a)の場合と同じ波形の交流電圧を印加したときのファブリック構造部分の写真である。
【0097】
これらの図に示すように、導電性の金網に絶縁被覆線を編み込み、金網と絶縁被覆線との間に交流電圧を印加するだけで、プラズマを容易に生成できた。なお、これらの図に示す例では、金網と絶縁被覆線との接触部の近傍においてプラズマが生成され、網目内における金網と絶縁被覆線との非接触部ではプラズマは生成されなかった。
【0098】
図10は、絶縁被覆線を図8よりも密に編み込んだプラズマ生成装置20bを作成し、金網と絶縁被覆線との間に図9(a)の場合と同じ交流電圧を印加したときの様子を示す写真である。この図に示すように、絶縁被覆線を図8よりも密に編み込むことで、図9(b)と同じ条件下において図9(b)よりもプラズマを密に生成できた。
【0099】
次に、図8に示したプラズマ生成装置20bを用いてヘリウム中、窒素中、空気中でプラズマを生成するときの気圧と放電開始電圧との関係を調べる実験を行った。なお、金網と絶縁被覆線とに印加する電圧は、正極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧とした。
【0100】
図11は、ヘリウム中、窒素中、空気中における圧力と放電開始電圧との関係を示すグラフである。なお、この図における点線、一点鎖線、破線(partial)は、それぞれ、ヘリウム中、窒素中、空気中において金網に絶縁被覆線を編み込んだ領域の一部で放電が生じた条件を示しているまた、○印、■印、●印(entire)は、それぞれ、ヘリウム中、窒素中、空気中において金網に絶縁被覆線を編み込んだ領域における金網と絶縁被覆線との各接触部において放電が生じたときの条件を示している。この図に示すように、大気圧の場合、ヘリウム中では約0.4kV、窒素中では約1.5kV、空気中では約1.6kVで安定して放電させることができた。なお、従来の誘電体バリア放電方式のプラズマ生成装置では、大気圧下の空気中では10kV程度の放電開始電圧が必要であり、また、安定したプラズマ生成を行うことは困難であったが、図8に示した構成により、従来よりもはるかに低い電圧でプラズマを安定して生成できた。
【0101】
次に、図8に示したプラズマ生成装置20bを、大気圧の空気を封入したチャンバ内に設置し、交流電圧(1.9kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−1.9kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧)を印加してプラズマを生成させ、チャンバ内におけるプラズマ生成の前後でのオゾン濃度を測定した。具体的には、Hgランプをチャンバ内に照射して透過光の変化を測定し、Lambert−Beer則で定量化した。その結果、プラズマ生成に伴って生成されたオゾンがチャンバ内の全域に略均一に広がっていることが確認された。
【0102】
なお、本実施形態では、ファブリック構造からなる2次元形状のプラズマ生成部8を1層のみ備えた構成について説明したが、これに限らず、例えばファブリック構造を複数層積層することで3次元形状のプラズマ生成部8を形成してもよい。また、図12に示すように、多数の第1絶縁被覆線1と多数の第2絶縁被覆線2との接触部が3次元方向に分布するファブリック構造を形成してもよい。これにより、図12に示すように、3次元形状のプラズマを生成することができる。
【0103】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態で説明した各部材と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0104】
本実施形態では、上述したプラズマ生成装置を用いて各種固体表面の表面処理を行う表面処理装置の例について説明する。この表面処理装置は、プラズマを用いた種々の表面処理に適用でき、その用途は特に限定されるものではないが、例えば、固体表面の撥水性を制御する処理、固体表面の有機物除去処理、電子部品や液晶基板等の表面を洗浄する処理、粉体等への薄膜堆積処理などに用いることができる。
【0105】
図13(a)は、本実施形態にかかる表面処理装置30の概略構成を示す図である。この図に示すように、表面処理装置30は、実施形態2に示したプラズマ生成装置20に加えて、プラズマ生成部8を支持する支持部材21を備えている。
【0106】
支持部材21は、絶縁材料からなり、プラズマ生成部8を被処理物22に対して所定の間隔を保った状態で支持するためのものである。また、支持部材21は、プラズマ生成部8の形状を任意に変形させた状態で支持することができるように構成されている。つまり、プラズマ生成部8は、形状を容易に変形可能な柔軟性(可撓性)を有する導電体および絶縁層を織り合わせて形成されており、任意の形状に容易に変形可能な構成である。そして、支持部材21は、例えば図13(b)に示すように、プラズマ生成部8を被処理物の表面形状等に応じて形状を変形させた状態で支持するようになっている。したがって、平面に限らず、曲面や凹凸面等の従来はプラズマによる表面処理が困難であった被処理物に対しても、表面処理を行うことができる。
【0107】
なお、支持部材21は、プラズマ生成部8を所定の形状および位置で支持できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば支持部材21上に載置されたプラズマ生成部8を支持するものであってもよく、プラズマ生成部8を上方あるいは側方から支持するものであってもよい。また、プラズマ生成部8を被処理物22上に載置した状態で表面処理を行う場合には、支持部材21を省略してもよい。
【0108】
図14(a)は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との間に交流電圧を印加してプラズマを生成したときの、プラズマ生成部8の様子を示す図である。この図に示すように、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との間に交流電圧を印加することで、両絶縁被覆線間の領域に1012cm−3を超える高イオン密度のプラズマPが生成され、このプラズマPによってプラズマ生成部8の表面に細かい渦巻き状にガス流Fが誘起される。つまり、プラズマ部で生成された長寿命の励起種(酸素プラズマ内のオゾン等)がガス流誘起層全体に分布する。このため、プラズマあるいはガス流誘起層の表面あるいは内部で酸化、薄膜堆積、エッチング、アッシング等の化学変化などを起こすことにより、被処理物に表面処理を施すことができる。
【0109】
以上のように、本実施形態にかかる表面処理装置30は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とを含んでなるファブリック構造を有するプラズマ生成部8を備えている。
【0110】
上記の構成によれば、プラズマを用いた表面処理を低電圧で安定して行うことができる。また、プラズマ生成部の形状を、非処理物の表面形状に応じて任意に形状を変更可能な表面処理装置を形成でき、多様な形状の被処理物の表面処理を行える。つまり、例えば布巾のように面形状に合わせて形状を任意に変更できるので、平坦面はもちろん、凹凸面や曲面の表面処理も好適に行える。また、表面処理装置30の構成を従来のプラズマを用いた表面処理装置よりも簡略化することができる。
【0111】
なお、本実施形態では、平織構造を有するプラズマ生成部を備えた表面処理装置について説明したが、これに限らず、例えば実施形態1あるいは実施形態2に記載した他の構成のプラズマ生成部、あるいはそれらを組み合わせた構成のプラズマ生成部を用いて表面処理装置を構成してもよい。
【0112】
例えば、図14(b)に示すように、タオル地状の織物構造(パイル織り構造)を有するプラズマ生成部を用いてもよい。この場合、図14(b)に示すように、プラズマPおよび誘起ガス流の厚さを増すことができる。これにより、表面処理に寄与する領域を厚くすることができる。また、微小な凹凸を有する被処理物に対してプラズマ生成部を接触させた状態で表面処理を行う構成において、被処理物の表面との密着性を向上させることができる。
【0113】
また、図14(c)に示すように、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とを織り合わせた織物構造の表面に、絶縁糸からなるファブリック構造層23を設けてもよい。この場合、ファブリック構造層23が被処理物側になるように配置することで、プラズマ生成部を被処理物の表面に対して密着させた状態で相対的に移動させても、誘起ガス流によって被処理物の表面処理を行うとともに、被処理物の表面電位がプラズマ生成部に影響を及ぼすことを防止できる。なお、ファブリック構造層23としては、誘起ガス流を被処理物側に移動可能なように、通風性を有する織り方(例えばレース織り)で織った織物層、あるいは編物層を用いることが好ましい。
【0114】
また、実施形態1に示したプラズマ生成装置を用いてもよく、その場合には管状や溝状の被処理物の表面処理を行える。また、管内あるいは溝面に曲面や凹凸がある場合であっても、プラズマ生成部を被処理物の表面形状に応じて変形させることで、表面処理を適切に行える。
【0115】
図15は、本実施形態にかかる表面処理装置による表面処理の効果を調べるために行った実験の実験装置を示す写真である。この実験では、実施形態1で説明したプラズマ生成部を互いに平行な方向に5本並べて配置したプラズマ生成部8を、被処理物としてのフッ素樹脂基板31の表面に接触配置し、プラズマ生成した領域、およびプラズマ生成していない領域での撥水性を比較した。
【0116】
プラズマ生成条件としては、0.04MPaの空気中で、+2.0kVの電圧印加期間5μs、電圧無印加期間1μs、−2.0kV負極性の電圧印加期間5μs、電圧無印加期間189μsを1周期とする矩形波の交流電圧を3分間印加した。
【0117】
そして、フッ素樹脂基板31におけるプラズマ生成した領域(処理部)、被処理物におけるプラズマ生成していない領域(非処理部)、被処理物と同じ構成の表面処理を行っていない基板(非処理基板)のそれぞれについて、水道水を滴下し、滴下した水道水の形状を目視により検査した。
【0118】
その結果、図16(a)に示すように、非処理部および非処理基板においては滴下した水滴は上方から見た形状がほぼ真円になったが、処理部においては真円と異なる形状になった。また、図16(b)に示すように、処理部における水の接触角αは、非処理部および非処理基板における水の接触角βよりも小さくなった。このように、本実施形態にかかる表面処理装置により非処理物の表面処理を行うことで、非処理物の表面を親水化できることが確認できた。
【0119】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態で説明した各部材と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0120】
本実施形態では、本発明を表示装置に適用する場合の例について説明する。図17は、本実施形態にかかる表示装置40の概略構成を示すブロック図である。なお、この表示装置40は、例えば、テレビジョン受像機、各種記録媒体に記録された文字データや画像データを再生するための再生装置のモニター、各種コンピュータシステム等のモニターなどに用いることができる。
【0121】
図17に示すように、表示装置40は、表示部41とドライブユニット51とを備えている。図18は、表示部41の要部を示す図である。
【0122】
表示部41は、図18に示すように、行方向(水平方向)に延伸するアドレス電極線(第1絶縁被覆線)43および絶縁線44と、列方向(垂直方向)に延伸する表示電極線(第2絶縁被覆線)45および絶縁線46とを備えている。
【0123】
なお、行方向に延伸するアドレス電極線43と絶縁線44とは、列方向に沿って1本ずつ交互に配置されている。つまり、2本の絶縁線44によって挟まれた領域毎に、アドレス電極線43が1本ずつ配置されている。
【0124】
また、列方向に延伸する表示電極線45と絶縁線46とは、2本の表示電極線45と1本の絶縁線46とからなる組が行方向に沿って複数組並べて配置されている。つまり、2本の絶縁線46によって挟まれた領域毎に、表示電極線45が2本ずつ配置されている。
【0125】
そして、行方向に延伸する各線と列方向に延伸する各線とが織り合わされ、2本の絶縁線44と2本の絶縁線46とによって囲まれた各画素がマトリクス状に配置されたファブリック構造が形成されている。なお、これら各線の織り方は特に限定されるものではなく、各画素においてアドレス電極線43と2本の表示電極線45とが互いに接触するように織り合わせればよい。例えば、従来の衣料等で用いられているストライプ模様の布生地の織り方を適用できる。
【0126】
なお、アドレス電極線43および表示電極線45は、絶縁被覆された導体線からなる。また、表示電極線45は、織り合わされる前に絶縁層の表面に蛍光体を塗布されている。そして、行方向に沿って並ぶ各画素において、表示電極線45の色がR(赤)、G(緑)、B(青)の順になるように、配置されている。
【0127】
また、このように形成されたファブリック構造が対向配置された基板(図示せず)の間に挿入されており、この基板間には上記ファブリック構造とともに放電ガスが封入されている。なお、上記各基板の材質は、少なくとも一方が透明であればよく、特に限定されるものではない。なお、形状を変更可能なフレキシブルな表示装置を実現したい場合には、上記両基板として柔軟性を有する基板(フレキシブル基板)を用いればよい。
【0128】
ドライブユニット51は、制御回路52、電源回路(図示せず)、アドレス電極ドライバ53、および表示電極ドライバ54を備えている。
【0129】
制御回路52は、フレームメモリ55、制御信号生成部56、およびROM57を備えている。
【0130】
フレームメモリ55は、表示データを一時的に記憶するものである。より具体的には、表示装置40には、TVチューナ、記録媒体の再生装置、コンピュータなどの外部装置から画像データ(例えばR、G、Bの3色の輝度レベルを示す信号)および各種同期信号が入力されるようになっており、フレームメモリ55は上記画像データを一時的に格納する。
【0131】
制御信号生成部56は、フレームメモリ55に一旦格納しておいた画像データを読み出し、この画像データに基づいて各ドライバを駆動するための制御信号を生成する。この制御信号は、各電極に対して印加する電圧値、電圧の印加タイミングなどを示すものである。ROM57には、入力される画像データおよび各種同期信号に応じた駆動電圧の制御データが記憶されており、制御信号生成部56はROM57に記憶されている制御データに基づいて制御信号を生成し、各ドライバに出力する。
【0132】
アドレス電極ドライバ53は、制御回路52から入力される制御信号に基づいて、各アドレス電極線43の電位を個別に制御する。また、表示電極ドライバ54は、制御回路52から入力される制御信号に基づいて、各表示電極線45の電位を個別に制御する。これら各ドライバには電源回路から配線を介して所定の電力が供給される。これにより、アドレス電極線43および表示電極線45の電位が制御され、セルの選択および表示が行われる。なお、これら各電極線の駆動方法は特に限定されるものではなく、従来のプラズマディスプレイと略同様の駆動方法を適用できる。
【0133】
以上のように、本実施形態にかかる表示装置40は、アドレス電極線43と表示電極線45とが各画素において絶縁層を介して互いに接触するように織り合わされた表示部41を備えている。
【0134】
これにより、アドレス電極線43と表示電極線45とを織り合わせることで表示部41を形成できるので、従来のプラズマディスプレイパネルのように基板上に各電極線、誘電体層、リブなどを形成する場合に比べて、製造工程を簡略化し、製造コストを低減できる。
【0135】
また、アドレス電極線43と表示電極線45とを織り合わせる前に表示電極線45に蛍光体を塗布しておくことで、従来のプラズマディスプレイパネルように各セル毎に蛍光体を塗布する処理を行う必要がなく、製造工程をさらに簡略化し、製造コストをさらに低減できる。
【0136】
また、アドレス電極線43と表示電極線45とを織り合わせてなるファブリック構造を対向配置した基板間に挿入し、この基板間に放電ガスを封入することで表示部41を形成できるので、放電ガスの保持をより確実に行うことができる。
【0137】
また、上記ファブリック構造を構成する各線として、柔軟性(可撓性)を有する材料を用いることで、形状を任意に変更可能なファブリック構造を形成できる。そして、対向する両基板として柔軟性を有する基板を用いることで、形状を任意に変更可能なフレキシブルな表示装置を容易に実現できる。また、この場合、両電極線がファブリック構造をなしているので、表示部の形状を変形させても、各画素における両電極線の接触状態を安定して維持することができ、適切な表示を行うことができる。
【0138】
なお、アドレス電極線43や表示電極線45の数や配置は上記した構成に限らず、適宜変更してもよい。例えば、各画素を通る表示電極線45の数をさらに増やしてもよい。また、各画素において絶縁層を介して表示電極線45に当接するように維持電極線(図示せず)を配置し、いわゆる3電極型のプラズマディスプレイパネルを構成してもよい。
【0139】
また、放電ガスとして大気を用いる場合には、両基板を省略して、上記ファブリック構造を表示部41として用いてもよい。
【0140】
〔実施形態5〕
本発明のさらに他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上述の実施形態で説明した各部材と同様の機能を有する部材については同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0141】
本実施形態では、本発明を流体改質装置に適用する場合の例について説明する。図19は、本実施形態にかかる流体改質装置60の概略構成を示す図である。なお、この流体改質装置60は、例えば、原動機、焼却施設、各種産業機械等の排ガスなどの気体から汚染物質、有害物質、微生物、ウィルスなどを除去する処理、あるいは各種溶液を浄化する処理などを行うためのものである。
【0142】
図19に示すように、流体改質装置60は、処理対象の流体が流れる管路61内に、実施形態2に示したファブリック構造からなるプラズマ生成部8を複数層備えた構成である。
【0143】
第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との間に交流電圧を印加することで、両絶縁被覆線間の領域に1012cm−3を超える高イオン密度のプラズマPが生成され、このプラズマPによってプラズマ生成部8の表面に細かい渦巻き状にガス流Fが誘起される。そして、プラズマ部で生成された長寿命の励起種(例えば酸素プラズマ内のオゾン等)がガス流誘起層全体に分布する。このため、処理対象の流体がファブリック構造からなるプラズマ生成部8を通過することで、プラズマPおよび/またはガス流誘起層と流体とが接触し、プラズマPおよび/またはガス流誘起層と流体中の物質との間で生じる酸化、分解、吸着等の化学変化等によって処理対象の流体の改質処理が行われる。
【0144】
以上のように、本実施形態にかかる流体改質装置60は、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2とを含んでなるファブリック構造を有するプラズマ生成部8を備えている。
【0145】
これにより、第1絶縁被覆線1と第2絶縁被覆線2との接触部近傍においてプラズマを生成することができる。また、第1絶縁被覆線1および第2絶縁被覆線2に印加する電圧を制御することで、放電を時間的および空間的に容易に制御できる。そして、処理対象の流体が上記ファブリック構造を通過することにより、プラズマによって誘起された励起種と処理対象の流体とを接触させ、流体の浄化処理を容易に行うことができる。
【0146】
また、上記の構成によれば、大気圧下で安定してプラズマを生成できるので、大気圧下での流体浄化処理を容易に行える。
【0147】
また、本実施形態にかかる流体改質装置60は、ファブリック構造からなるプラズマ生成部8を複数層備えている。これにより、処理対象の流体とプラズマあるいはプラズマによって誘起されたガス流との接触機会を増やし、改質処理の効率を向上させることができる。なお、第1の導体線と第2の導体線とが絶縁層を介して互いに接触する接触部が3次元方向に分布したプラズマ生成部を用いた場合にも、略同様の効果が得られる。
【0148】
なお、処理対象の流体は、気体に限らず液体であってもよい。プラズマ生成部8を例えば水、アルコール等の溶液中に設置し、電圧印加を行うことで、水分子やアルコール分子に含まれる水素や酸素をプラズマ化させて液中でプラズマ生成を行うことができる。
【0149】
処理対象の流体が液体である場合には、プラズマ生成部8に気泡を内包させ、まず気泡内の気体(例えば、水素、酸素、窒素、希ガスなど)による気体放電を開始させてから液体物質(溶液物質)による放電に移行するようにしてもよい。これにより、溶液中に含まれる有機物などの汚染物質をプラズマにより分解処理できる。
【0150】
プラズマ生成部8に気泡を内包させる方法としては、例えば以下に示す3つの方法を用いることができる。
【0151】
第1の方法は、プラズマ生成部8を液面上で気体と接触させてから液中に含浸させる方法である。この際、プラズマ生成部8に接触させる気体は大気であってもよく、あるいは放電が開始しやすいヘリウム等の希ガス、あるいは活性ラジカルを作りやすい水素などであってもよい。
【0152】
第2の方法は、プラズマ生成部8の下方に泡を供給し、プラズマ生成部8に連続的に気泡を送り込む方法である。
【0153】
第3の方法は、液体中で電気分解を生じさせて気泡を生成する方法である。図20は、この場合の装置構成の一例を示す図である。この図に示すように、第1絶縁被覆線1に代えて絶縁被覆されていない導体線4を用いる。また、液体中に、第3電極72を配置する。そして、導体線4と第3電極72との間に第2電源71によって電圧を印加することで電気分解を生じさせ、導体線4の表面に気泡Bを生成する。これにより、プラズマ生成部8を構成する導体線4の表面に気泡Bを生じさせ、気体放電を開始させることができる。
【0154】
なお、本実施形態では、ファブリック構造を有するプラズマ生成部を用いた流体改質装置について説明したが、これに限らず、例えば実施形態1に示した撚線構造や組紐構造を有するプラズマ生成部を用いてもよい。
【0155】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、プラズマ生成を低電圧で安定して行うことができるので、各種プラズマ生成装置に適用できる。また、大気圧下でプラズマ生成を行うプラズマ生成装置に好適である。また、表面処理装置、表示装置、流体改質装置などに備えられるプラズマ生成装置に適用できる。
【符号の説明】
【0157】
1 第1絶縁被覆線
2 第2絶縁被覆線
3 電源
4、6 導体線
5、7 絶縁層
8 プラズマ生成部
10、20、20b プラズマ生成装置
11 金網
12 絶縁被覆線
21 支持部材
22 被処理物
30 表面処理装置
40 表示装置
41 表示部
43 アドレス電極線(第1絶縁被覆線)
44 絶縁線
45 表示電極線(第2絶縁被覆線)
46 絶縁線
60 流体改質装置
61 管路
71 第2電源
72 第3電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電体と、第2導電体と、上記第1導電体と上記第2導電体との間に備えられた少なくとも1層の絶縁層とを備えたプラズマ生成部を有し、上記第1導電体と上記第2導電体との間に電圧を印加することによってプラズマを生成するプラズマ生成装置であって、
上記第1導電体と上記第2導電体とは上記絶縁層を介して互いに接触しており、
上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触する接触部の周囲における、上記第1導電体と上記絶縁層との間、上記第2導電体と上記絶縁層との間、上記絶縁層同士の間のいずれか1つ以上に、プラズマ化する流体に晒された隙間が形成されており、
上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体とを含んでなるファブリック構造を有することを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触する接触部が3次元方向に分布した構成であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項3】
上記プラズマ生成部は、上記ファブリック構造の集合体によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ生成装置。
【請求項4】
上記プラズマ生成部は、外力を付与することによって形状を変形可能であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項5】
上記プラズマ生成部は、上記第1導電体、上記第2導電体、および上記絶縁層によって上記隙間が形成された構造を保持していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項6】
上記第1導電体における上記絶縁層との接触面、上記第2導電体における上記絶縁層との接触面、上記絶縁層における上記第1導電体との接触面、上記絶縁層における上記第2導電体との接触面、上記第1導電体と上記第2導電体との間に配置された複数の絶縁層のうちのいずれか1層以上の絶縁層における他の絶縁層との接触面、のうちのいずれか1つ以上が曲面であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項7】
上記隙間の少なくとも一部が、上記第1導電体と上記第2導電体とを結ぶ直線上に位置することを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項8】
上記第1導電体および上記第2導電体のうちの少なくとも一方は、上記絶縁層によって被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項9】
大気圧の気体をプラズマ化させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項10】
大気組成の気体をプラズマ化させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項11】
液体をプラズマ化させることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項12】
上記プラズマ生成部に気泡を供給する気泡供給手段を備えていることを特徴とする請求項11に記載のプラズマ生成装置。
【請求項13】
上記気泡供給手段は、
上記液体中で電気分解を生じさせることで上記気泡を生成することを特徴とする請求項12に記載のプラズマ生成装置。
【請求項14】
請求項1に記載のプラズマ生成装置を用いて被処理材の表面処理を行うことを特徴とする表面処理装置。
【請求項15】
請求項1に記載のプラズマ生成装置を用いて表示を行う表示装置であって、
線状部材からなる上記第1導電体および上記第2導電体をそれぞれ複数備え、
上記プラズマ生成部は、上記第1導電体と上記第2導電体と複数の絶縁線とからなるファブリック構造を有し、上記絶縁線によって区画された複数の画素領域を備え、各画素領域において上記第1導電体と上記第2導電体とが上記絶縁層を介して互いに接触していることを特徴とする表示装置。
【請求項16】
上記第1導電体、上記第2導電体、上記絶縁層のうちのいずれか1つ以上に、蛍光材料が塗布されていることを特徴とする請求項15に記載の表示装置。
【請求項17】
請求項1に記載のプラズマ生成装置を用いて流体の改質処理を行う流体改質装置であって、
上記流体中でプラズマを生成させて上記流体を改質処理することを特徴とする流体改質装置。






【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−104486(P2012−104486A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256827(P2011−256827)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【分割の表示】特願2006−313632(P2006−313632)の分割
【原出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】