説明

プラズマ発生ノズルならびにそれを用いるプラズマ発生装置および滅菌装置

【課題】NOガスを生成するプラズマ発生ノズルにおいて、電極交換を容易にする。
【解決手段】同心状に配置される内側電極35および外側電極36を有し、導波管62を介して伝搬されるマイクロ波を内側電極35で受信することで電極35,36間にグロー放電を発生させ、電極35,36間に供給される空気をプラズマ処理してNOガスを生成するプラズマ発生ノズル31において、損耗する内側電極35を交換可能にするために、該内側電極35を、絶縁性を有する材料から成り、円筒状に形成される保持部材37によって保持する。そして、保持部材37の外周面と外側電極36の内周面との間を、処理されたガスが漏れないようにOリングなどの無端環状のシール部材373でシールするにあたって、そのシール部材373を保持部材37側の周方向に形成した凹溝3711に嵌め込むようにする。したがって、保持部材37ごとシール部材373を取り外せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ発生ノズルと、それを用いて二酸化窒素ガスを生成し、処理室を滅菌する滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用器具や食品包装材などの被処理物を処理室に収容し、高度に滅菌する滅菌装置や、或いは前記処理室がクリーンルームやアイソレータなどの場合で該処理室自体を滅菌処理する滅菌装置において、たとえば特許文献1には、前記被処理物の処理に窒素酸化物(NOx)ガスを用いることが示されている。詳しくは、特許文献1では、窒素ガスと酸素ガスとの混合気体をプラズマ発生室に導入し、その混合気体をプラズマ化して前記窒素酸化物ガスを生成し、その窒素酸化物ガスを食品に付着した大腸菌の殺菌用に用いている。
【0003】
しかしながら、前記窒素酸化物ガスによる滅菌効率は良いとは言えず、滅菌効率改善の要請があった。そこで本件出願人は、鋭意研究を重ねた結果、細菌類の滅菌に寄与するのは、前記窒素酸化物(NOx)のうち、実質的に二酸化窒素(NO)であることを見出し、特許文献2において、純度の高い二酸化窒素ガスを生成することができる方法、および該方法によって生成された二酸化窒素ガスを貯留する装置を提案している。
【0004】
その従来技術は、タンク内の空気をプラズマ発生ノズルに供給して前記二酸化窒素(NO)や窒素酸化物(NOx)を含んだガスを生成し、それらのガスの内、第1の触媒でNOxをNOに変換し、第2の触媒でNOを酸化してNOに変換する処理を、タンク内のガスを循環処理することで繰り返し行い、NOの濃度を高めるというものである。
【0005】
一方、そのような二酸化窒素(NO)や窒素酸化物(NO)を含んだガスを生成するプラズマ発生ノズルの構造およびそれを用いるプラズマ発生装置は、たとえば本件出願人による特許文献3に示されている。図10は、その従来技術によるプラズマ発生ノズル100を簡略化して示す断面図である。このプラズマ発生ノズル100は、導波管101に取付けられ、図示しないマイクロ波発生装置からのマイクロ波を受信して、ガス導入孔102から導入される空気を常圧下でプラズマ処理して、前記二酸化窒素(NO)や窒素酸化物(NOx)を含んだガスを生成し、ノズル先端の開口103から放射するものである。
【0006】
このため、該プラズマ発生ノズル100は、同心状に配置される内側電極111および外側電極112を有し、前記内側電極111において導波管101内に突出した一端111a側がアンテナとなって前記マイクロ波を受信することで、他端111b側の先端部と外側電極112の先端部との間に高周波の電界が印加され、グロー放電が生じてプラズマが発生する。ここで、前記同心状の内側電極111と外側電極112との内、導波管101に接続される外側電極については、損耗も少なく、ダストの除去、すなわち清掃程度のメンテナンスでよく、これに対して、マイクロ波を受信する内側電極111は、運転に伴う損耗が激しく、たとえば数百時間で交換の必要がある。そこで、前記内側電極111を交換可能にするために、該内側電極111は、絶縁性を有する材料から成り、円筒状に形成される保持部材113によって保持され、外側電極112の内周面から着脱自在とされている。
【0007】
その従来技術では、各種基板の表面クリーニングや表面改質などの用途が示されている。一方、前記クリーニングの内の滅菌処理を行う場合には、上述のように原料ガスとしては空気を用い、二酸化窒素(NO)を生成するが、この二酸化窒素(NO)は人体に有害である。そのため、現在では、導波管101からの処理後のガスの漏れを防止するために、図11のプラズマ発生ノズル121で示すように、保持部材113と外側電極112との間は、シール部材であるOリング114によって、気密にシールされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−162276号公報
【特許文献2】特開2010−202448号公報
【特許文献3】特開2008−300283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来技術では、前記Oリング114は、外側電極112の内周面に形成された凹溝112aに嵌め込まれている。一方、前記導波管101の天面には、点検口101aが形成され、前記内側電極111を保持部材113ごと引き抜いて、交換可能となっている。しかしながら、数回に1回でも、前記Oリング114を交換する必要が生じた場合には、外側電極112を導波管101の底板101dから取り外した後、ピンセット等の工具を用いて作業する必要があり、Oリング114が落下するなど、作業性が悪い。また、外側電極112を取り外した場合には、外側電極112と導波管101との間もOリング115による気密が解除されるので、再び気密を確認する作業が必要になる。このように、従来技術では、内側電極111の交換に伴い、シール部材の交換作業が必要になると、作業が非常に煩雑になる。
【0010】
本発明の目的は、内側電極の交換に伴うシール部材の交換を容易に行うことができるプラズマ発生ノズルならびにそれを用いるプラズマ発生装置および滅菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプラズマ発生ノズルは、棒状の内側電極と、筒状に形成される外側電極と、絶縁性を有すると共に、内周面および外周面を備えた筒状体であって、前記内周面側で前記内側電極を保持し、前記外周面側が前記外側電極の内周面に嵌り込むことで、前記外側電極の内周面と同心状に前記内側電極を配置するとともに、前記外周面における、前記外側電極の内周面に嵌り込む領域の一部に形成された、周方向に連続する凹溝を備えた保持部材と、前記凹溝に嵌め込まれ、前記保持部材の外周面と外側電極の内周面との間を気密にシールするシール部材とを含み、前記内側電極と外側電極との間に高周波の電界が印加されることで放電を生じさせてプラズマが発生され、両電極間に供給された原料ガスを、前記プラズマによって処理して放出することを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、外側電極の内周面内に同心状に配置される内側電極を有し、両電極間に高周波の電界が印加されることで放電を生じさせてプラズマを発生させ、両電極間に供給された原料ガスを、前記プラズマによって処理して放出するプラズマ発生ノズルにおいて、損耗する内側電極を交換可能にするために、該内側電極を、絶縁性を有する材料から成り、筒状に形成される保持部材によって保持し、前記外側電極の内周面から着脱自在とする。その保持部材の外周面と、外側電極の内周面との間は、処理されたガスが漏れないように気密にシールする必要があり、本発明では、Oリングなどの無端環状のシール部材や、Cリングなどの糸状のシール部材を使用するにあたって、そのシール部材が保持部材側に嵌め込まれるようにする。具体的には、前記円筒状の保持部材の外周面において、前記外側電極の内周面に嵌り込む領域の一部に、周方向に連続する凹溝を形成しておき、前記OリングやCリングなどのシール部材がその凹溝に嵌め込まれる。
【0013】
したがって、前記内側電極を保持部材ごと取り外すと、シール部材も保持部材に着いて取り外すことができ、該内側電極の交換に伴うシール部材の交換を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明のプラズマ発生ノズルでは、前記原料ガスは空気であり、前記プラズマ処理によって窒素酸化物ガスが生成されることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、窒素酸化物ガスは、滅菌などに使用され、人体に有害であるので、前記シールの必要性が高く、本発明が好適である。
【0016】
さらにまた、本発明のプラズマ発生装置は、前記のプラズマ発生ノズルと、マイクロ波発生装置と、前記プラズマ発生ノズルが取付けられ、前記マイクロ波発生装置からのマイクロ波を前記プラズマ発生ノズルに伝搬する導波管とを備え、前記外側電極は導波管と同電位に接続され、前記棒状の内側電極は前記導波管内に突出して前記マイクロ波を受信するアンテナとして機能する一端側と、前記外側電極との間で前記高周波の電界を発生し、前記グロー放電を生じさせる他端側とを有することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、マイクロ波発生装置からのマイクロ波が、導波管を介して前記プラズマ発生ノズルへ伝搬される場合に、内側電極と外側電極との間で処理されたガスが、前記シール部材によって、導波管側へ流入することを防止することができる。特に処理後のガスが人体に有害な前記二酸化窒素ガスである場合に、前記シール部材によって、該二酸化窒素ガスが導波管を介して外部に漏出するのを防止することができる。
【0018】
また、本発明のプラズマ発生装置では、前記保持部材の導波管内における少なくとも一部分は、把持部として、導波管において外側電極が取付けられる壁面とは反対側の壁面に延びて形成され、前記反対側の壁面には、前記保持部材に保持された内側電極が遊挿可能な点検口が形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、絶縁性を有し、円筒状に形成されて内側電極と一体化され、該内側電極を外側電極内に保持させる保持部材において、その導波管内における少なくとも一部分が内側電極より長く、導波管において外側電極が取付けられる壁面とは反対側の壁面側に延びて形成され、把持部とされる。一方、前記導波管の反対側の壁面には、前記保持部材に保持された内側電極が遊挿可能な大きさの点検口が形成される。
【0020】
したがって、前記点検口を開けると前記保持部材に保持された内側電極が交換可能になり、しかも前述のようにシール部材を該保持部材と一緒に交換することができるので、ノズル先端側から交換を行う場合に比べて、プラズマ発生ノズルを導波管から取外したりするような必要はなく、極めて容易に交換を行うことができる。また、作業者は、前記保持部材の延長された把持部を把持して、内側電極に手や工具で触れることなく、該内側電極を交換することができ、該内側電極への傷付きを防止することができるとともに、専用工具を用いることなく交換を行うことができる。
【0021】
さらにまた、本発明のプラズマ発生装置では、前記把持部は、絶縁性を有し、低誘電率の材料から成り、内部は前記内側電極を収容する筒形状に形成され、その筒形状の端部が前記点検口を閉塞する部材によって押圧されることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、前記把持部が、絶縁性を有し、マイクロ波の伝搬に影響を及ぼさない低誘電率の材料、たとえば空気に次いで誘電率が小さいテフロン(登録商標)や、ポリプロピレン、セラミックなどによって、内部に内側電極を収容する筒形状に形成される。そして、その筒形状の端部が前記点検口を閉塞する部材によって押え込まれることで、内側電極は常に所定の位置にセットされることになり、放電を安定させることができる。また、前記把持部が少し長い目に形成されることで、余剰分は前記筒形状の把持部の撓みによって吸収され、前記保持部材から内側電極を均一に押圧することができる。
【0023】
したがって、該把持部の長さを厳密に管理することなく、前記のように常に内側電極を所定の位置にセットすることができる。
【0024】
また、本発明のプラズマ発生装置では、前記内側電極におけるアンテナ先端部の少なくとも一部分は、前記把持部外に露出していることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、内側電極が把持部内に完全に埋込まれていると、アクシデントによって導波管内でプラズマ点灯が生じると、その点灯が生じるアンテナ先端部付近の把持部の材料が溶解してしまうのに対して、前記アンテナ先端部の一部分が前記把持部外に露出する(剥き出しとなっている)ことで、点灯はその部分で生じ、前記把持部の溶解を未然に防止することができる。
【0026】
さらにまた、本発明の滅菌装置は、前記のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生ノズルに前記原料ガスとして空気を供給する吸気部と、前記プラズマ発生ノズルで処理された2酸化窒素ガスが充填され、滅菌処理を行うべき処理室とを備えて構成されることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、滅菌処理を行うべき処理室を備え、該処理室に収容した被処理物を、或いは該処理室がクリーンルームやアイソレータ等の場合で該処理室自体を、それぞれ滅菌処理する滅菌装置において、前記処理室に滅菌処理用の二酸化窒素ガスを充填するガス供給源として、前述のプラズマ発生装置を用い、吸気部から、前記プラズマ発生ノズルに、原料ガスとして空気を供給する。
【0028】
したがって、原料ガスの取り扱いが容易であり、コストダウンを図ることができるとともに、人体に有害な二酸化窒素ガスを、必要な場所で、必要な量だけ作成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のプラズマ発生ノズルおよびそれを用いるプラズマ発生装置は、以上のように、外側電極の内周面内に同心状に配置される内側電極を有するプラズマ発生ノズルにおいて、損耗する内側電極を交換可能にするために、該内側電極を、絶縁性を有する材料から成り、筒状に形成される保持部材によって保持し、前記外側電極の内周面から着脱自在とするとともに、その保持部材の外周面と外側電極の内周面との間を、処理されたガスが漏れないようにOリングなどのシール部材でシールするにあたって、そのシール部材を保持部材側の周方向に形成した凹溝に嵌め込むようにする。
【0030】
それゆえ、前記内側電極を保持部材ごと取り外すと、シール部材も保持部材に着いて取り外すことができ、該内側電極の交換に伴うシール部材の交換を容易に行うことができる。
【0031】
さらにまた、本発明の滅菌装置は、以上のように、滅菌処理を行うべき処理室を備え、該処理室に収容した被処理物を、或いは該処理室がクリーンルームやアイソレータ等の場合で該処理室自体を、それぞれ滅菌処理する滅菌装置において、前記処理室に滅菌処理用の二酸化窒素ガスを充填するガス供給源として、前述のプラズマ発生ノズルを備えるプラズマ発生装置を用い、吸気部から、前記プラズマ発生ノズルに、原料ガスとして空気を供給する。
【0032】
それゆえ、原料ガスの取り扱いが容易であり、コストダウンを図ることができるとともに、人体に有害な二酸化窒素ガスを、必要な場所で、必要な量だけ作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の一形態に係る滅菌装置のブロック図である。
【図2】図1で示す滅菌装置におけるマイクロ波供給装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】前記滅菌装置の電気的な制御構成を示すブロック図である。
【図4】図3の制御装置による滅菌装置の制御動作を示すタイミングチャートである。
【図5】図4の各工程における第1〜第4ポンプの制御状態を示す表形式の図である。
【図6】図4の各工程における第1〜第8電磁弁の制御状態を示す表形式の図である。
【図7】プラズマ発生ノズルの縦断面図である。
【図8】前記プラズマ発生ノズルの斜視図である。
【図9】前記プラズマ発生ノズルにおける内側電極およびそれを保持する保持部材の斜視図である。
【図10】従来技術のプラズマ発生ノズルを簡略化して示す断面図である。
【図11】他の従来技術のプラズマ発生ノズルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明の実施の一形態に係る滅菌装置1のブロック図である。この滅菌装置1は、滅菌処理を行うべき処理室としてメインチャンバ11を備え、該処理室に収容した被処理物、たとえばメス、鉗子、カテーテルなどの医療用器具や、包装シート、トレイ、ボトルなどの食品包装材に、プラズマによって生成された滅菌剤を作用させて滅菌処理を施すための装置である。
【0035】
本実施形態では、空気を原料ガスとして、その空気を前記プラズマ処理することで生成された二酸化窒素(NO)ガスを前記滅菌剤として用いる例を示す。したがって、本実施の形態の滅菌装置1では、原料ガスの取り扱いが容易であり、コストダウンを図ることができるとともに、人体に有害な二酸化窒素ガスを、必要な場所で、必要な量だけ作成することができる。なお、処理室としては、クリーンルームやアイソレータ等の該処理室自体が滅菌処理されるものであってもよい。
【0036】
滅菌装置1は、大略的に、メインチャンバ11と、サブチャンバ12と、吸気系統20と、ガス供給源30と、連係系統40と、排気系統50とを備えて構成される。前記の系統20〜50の適所には、第1〜第8電磁弁V1〜V8と、第1〜第4ポンプP1〜P4とが配置されている。
【0037】
メインチャンバ11は、前記の被処理物が収容される密閉空間を提供するチャンバであり、たとえばステンレス鋼などで構成され、高度の真空引きに対応できる耐圧構造を備えた大容量のチャンバである。図示は省略しているが、メインチャンバ11には被処理物を搬出入するためのドアが備えられ、その内部には、被処理物を積載するための処理トレイ等が適宜備えられている。
【0038】
メインチャンバ11には、前記二酸化窒素ガスの濃度を計測する第1濃度センサ111と、チャンバ内の圧力を検出する第1圧力センサ112とが備えられている。前記メインチャンバ11は、短時間で滅菌処理を完了するために、運転中は極めて高濃度、たとえば50000ppmの二酸化窒素ガスが充填されるので、前記第1濃度センサ111は、滅菌処理後に該メインチャンバ11を開放するにあたり、充分に濃度が下がったことの確認用に、その計測値が参照される。前記第1圧力センサ112は、メインチャンバ11内の減圧状態、すなわち減圧と、それに伴う乾燥状況を判断し、前記二酸化窒素ガスの充填開始の判断に使用されるセンサである。この他、メインチャンバ11には、温度センサ、湿度センサ、或いはオゾンセンサ等の各種物理量センサが備えられていてもよい。
【0039】
サブチャンバ12は、ガス供給源30と協働して、該ガス供給源30において常圧下で生成された前記二酸化窒素ガスを、その濃度を上げつつ蓄積するものであり、前記ガス供給源30と前記二酸化窒素ガスの循環経路を形成する。このサブチャンバ12は、前記メインチャンバ11と同様に、たとえばステンレス鋼などで構成され、高度の真空引きに対応できる耐圧構造を備えた比較的小容量のチャンバである。このサブチャンバ12内にも、二酸化窒素ガスの濃度を計測する第2濃度センサ121と、チャンバ内の圧力を検出する第2圧力センサ122とが備えられている。第2濃度センサ121の計測値は、たとえば前記二酸化窒素ガスがメインチャンバ11へ充填される規定の濃度に達した否かを確認するために参照される。
【0040】
吸気系統20は、吸気部を構成し、前記サブチャンバ12、もしくはサブチャンバ12およびメインチャンバ11の双方に乾燥した外気(空気)を導入させるための配管系統である。吸気系統20は、第1ポンプP1、エアドライヤ21、湿度センサ22、第1電磁弁V1、第1常圧配管201および第1真空配管202を含む。第1常圧配管201は、第1ポンプP1と第1電磁弁V1との間を接続する配管であり、その経路中にエアドライヤ21および湿度センサ22が配置されている。第1真空配管202は、第1電磁弁V1とサブチャンバ12との間を接続している。
【0041】
第1ポンプP1は、減圧状態にあるサブチャンバ12、もしくはサブチャンバ12およびメインチャンバ11の双方を常圧に戻すときに動作されるポンプである。第1ポンプP1は、外気を吸入し、第1常圧配管201および第1真空配管202を介してサブチャンバ12内に外気を送り込む。エアドライヤ21は、外気に含まれる水分を除去するもので、たとえば電熱ヒータを備えた乾燥装置が適用される。このエアドライヤ21を通過した空気は、ほぼ湿度がゼロとなる。湿度センサ22は、第1常圧配管201内を流通する空気の湿度を検出する。この湿度センサ22は、専らエアドライヤ21の故障検知のために用いられる。
【0042】
第1電磁弁V1は、第1ポンプP1の稼働時に連動して「開」とされるバルブである。すなわち、第1電磁弁V1は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12を含む系統を、外気圧と遮断する必要があるときに「閉」とされ、これを常圧に復帰させるときに「開」とされる。このため、第1電磁弁V1よりも吸気方向下流側は、真空引きに耐性を有する第1真空配管202が用いられている。
【0043】
ガス供給源30は、主に吸気系統20によりサブチャンバ12に導入された乾燥空気をプラズマで電離して、二酸化窒素ガスを生成する際に稼働される系統である。ガス供給源30は、第2電磁弁V2、第3電磁弁V3、プラズマ発生ノズル31、ガス流量計32、第2ポンプP2、第2真空配管301、第3真空配管302、および第2常圧配管303を含む。
【0044】
第2真空配管301の一端側はサブチャンバ12内に連通し、他端側は第2電磁弁V2を介して第2常圧配管303の一端側に接続されている。第3真空配管302の一端側はサブチャンバ12内に連通し、他端側は第3電磁弁V3を介して第2常圧配管303の他端側に接続されている。これにより、サブチャンバ12と連通する、第2真空配管301の一端側を起点として第3真空配管302の一端側に戻るループ管路が形成されている。本実施形態では、第2真空配管301側が、当該ループ管路内を流れる空気流の上流側となる。第2常圧配管303に対して、上流側から順に、プラズマ発生ノズル31、ガス流量計32および第2ポンプP2が配置されている。
【0045】
第2電磁弁V2および第3電磁弁V3は、サブチャンバ12が減圧状態にあるときに「閉」とされ、後述する常圧状態でのNOガス生成時および無害化処理時に「開」とされる弁である。このため、第2電磁弁V2および第3電磁弁V3とサブチャンバ12とを接続する配管として、第2真空配管301および第3真空配管302が適用されている。
【0046】
プラズマ発生ノズル31は、プラズマ(電離気体)を発生させるための電界集中部を提供する。第2常圧配管303を流通する原料ガスとしての空気(窒素および酸素を含むガス)は、該プラズマ発生ノズル31の前記電界集中部を通過することで電離され、NOガスやNOガスを含む窒素酸化物(NOx)ガスに変換される。このようなプラズマを発生させるために、本実施形態ではマイクロ波エネルギーが用いられている。当該マイクロ波エネルギーは、マイクロ波供給装置60から該プラズマ発生ノズル31に与えられる。このプラズマ発生ノズル31の詳しい構成については、後述する。
【0047】
図2は、マイクロ波供給装置60の構成を概略的に示すブロック図である。マイクロ波供給装置60は、マイクロ波エネルギーを発生すると共に、これをプラズマ発生ノズル31に供給するための装置であって、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置61と、前記マイクロ波を伝搬させる導波管62とを含む。この導波管62に、プラズマ発生ノズル31が取り付けられている。また、マイクロ波発生装置61と導波管62との間には、アイソレータ63およびカプラ64が備えられている。
【0048】
マイクロ波発生装置61は、たとえば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを含む。本実施形態では、たとえば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置61が好適に用いられる。
【0049】
導波管62は、アルミニウム等の非磁性金属からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置61により発生されたマイクロ波を、その長手方向に伝搬させる。アイソレータ63は、導波管62からの反射マイクロ波のマイクロ波発生装置61への入射を抑止する機器であり、サーキュレータ631とダミーロード632とを含む。サーキュレータ631は、磁力によって、マイクロ波発生装置61で発生されたマイクロ波を導波管62に向かわせる一方で、反射マイクロ波をダミーロード632に向かわせる。ダミーロード632は、反射マイクロ波を吸収して熱に変換する。カプラ64は、マイクロ波エネルギーの強度を計測する。
【0050】
なお、本実施の形態のマイクロ波供給装置60は、前記のマイクロ波の周波数に対して、マイクロ波発生装置61からプラズマ発生ノズル31までの距離等が適宜チューニングされて、前記プラズマ発生ノズル31でのマイクロ波の受信感度が最大となり、マイクロ波発生装置61側に反射するマイクロ波が最小となるように調整されている。しかしながら、部品のばらつき等に対するチューニングや、一層高精度なチューニングのために、前記プラズマ発生ノズル31に対して、上流側のチューナと、下流側のスライディングショートとの少なくとも一方が設けられてもよい。
【0051】
前記チューナは、導波管62に突出可能なスタブを含み、反射マイクロ波が最小となるような調整、つまりプラズマ発生ノズル31でのマイクロ波エネルギーの消費が最大となる調整を行うための機器であり、前記カプラ64は、その調整の際に利用することができる。また、前記スライディングショートは、導波管62の遠端部を閉塞し、導波管62の管軸方向、すなわちマイクロ波の伝搬方向に移動することで、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整するための部材である。
【0052】
図1に戻って、ガス流量計32は、第2常圧配管303内を流通する気体の流量を計測する。第2ポンプP2は、NOガス生成時に、サブチャンバ12とガス供給源30のループ管路とで構成される一つの空間内において、ガスを循環させるためのポンプである。プラズマ発生ノズル31が動作している状態で該第2ポンプP2が稼働されると、サブチャンバ12から吸い出されたガスがプラズマ発生ノズル31を通過して前記サブチャンバ12に戻されることを繰り返し、こうしてサブチャンバ12に蓄積されているガスにおけるNOの濃度が徐々に上昇してゆくことになる。第2ポンプP2には、NOx等に耐性を持つ耐薬品性のポンプが用いられる。
【0053】
連係系統40は、メインチャンバ11とサブチャンバ12との間を連通させるための系統である。連係系統40は、第4電磁弁V4、第5電磁弁V5、第3ポンプP3、第4真空配管401および第5真空配管402を含む。
【0054】
第4真空配管401の一端(上流端)はサブチャンバ12に接続され、他端(下流端)はメインチャンバ11に接続されている。この第4真空配管401の上流側に第3ポンプP3が配置され、下流側に第4電磁弁V4が配置されている。第3ポンプP3は、耐薬品性のポンプであって、サブチャンバ12を真空引きする際、サブチャンバ12からNOガスをメインチャンバ11に導入(循環)して滅菌処理を行う際、およびメインチャンバ11内を排気して無害化処理する際に動作する。第4電磁弁V4は、この第3ポンプP3が動作する際に「開」とされる弁である。
【0055】
第5真空配管402の一端側(上流端)はメインチャンバ11に接続され、他端側(下流端)はサブチャンバ12に接続されている。第5真空配管402の中間部には、後述する第7真空配管502の下流端が合流している。第5電磁弁V5は、第7真空配管502の合流部よりも上流位置において、第5真空配管402に取り付けられている。この第5電磁弁V5は、滅菌処理を行う際、メインチャンバ11およびサブチャンバ12を常圧に復帰させる際に「開」とされる弁である。
【0056】
排気系統50は、滅菌処理に用いたNOガスを密閉空間内で無害化すると共に、無害化処理後のガスを外部に排気するための系統である。排気系統50は、HNO変換部51、フィルタ52、第6電磁弁V6、第7電磁弁V7、第8電磁弁V8、第4ポンプP4、第6真空配管501、前記第7真空配管502、第4常圧配管503および第5常圧配管504を含む。
【0057】
第6真空配管501の一端側(上流端)はメインチャンバ11に接続され、他端側(下流端)は第6電磁弁V6を介して第4常圧配管503の一端側(上流端)に接続されている。第4常圧配管503の他端側(下流端)は、第4ポンプP4を通して外部と連通している。この第4常圧配管503には、上流側から順に、HNO変換部51、フィルタ52および第8電磁弁V8が取り付けられている。第5常圧配管504の一端側(上流端)は、フィルタ52と第8電磁弁V8との間において第4常圧配管503に接続され、他端側(下流端)は第7電磁弁V7を介して第7真空配管502の一端側(上流端)に接続されている。第7真空配管502の他端側(下流端)は、前述のように第5真空配管402の中間部に接続されている。上記の第4常圧配管503および第7真空配管502が備えられている結果、第1電磁弁V1および第8電磁弁V8が「閉」とされれば、メインチャンバ11、排気系統50、連係系統40およびサブチャンバ12を、一つの密閉された空間とすることが可能となる。
【0058】
第6電磁弁V6は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の減圧時、無害化処理時およびその後の排気時に「開」とされる弁である。第7電磁弁V7は、無害化処理時にのみ「開」とされる弁である。第8電磁弁V8は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の減圧時と、無害化処理後の排気時とに「開」とされる弁である。第4ポンプP4は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12を真空引きする際に駆動される真空ポンプである。
【0059】
HNO変換部51は、滅菌処理後のガスに含まれるNOをHNOに変換する。この変換を行うために、HNO変換部51には、オゾン(O)を発生するオゾン発生器と、水(HO)を供給するための水分導入器とを備えている。こうして該HNO変換部51を通過するNOガスにOおよびHOが加えられることで、前記ガスはHNOを含むガスに化学的に変換される。
【0060】
フィルタ52は、ガス中のHNOを吸着するフィルタである。このフィルタ52としては、たとえばセラミック製のハニカム構造を備えた基材に、硝酸吸着性のコーティング層を施したフィルタを用いることができる。
【0061】
続いて、滅菌装置1の電気的な制御構成を図3に基づいて説明する。図1では図示を省略しているが、滅菌装置1は、当該滅菌装置1の動作を電気的に制御するための制御装置90を備えている。制御装置90は、情報処理等を行うCPU(中央演算処理装置)を備え、該滅菌装置1の動作制御を行うべくプログラミングされたソフトウェアが実行されることで、図3に示す機能部を具備するように動作する。制御装置90は、機能的に、全体制御部91、ポンプ制御部92、電磁弁制御部93、プラズマ制御部94、ロック制御部95およびドライヤ制御部96を備えている。
【0062】
全体制御部91は、滅菌装置1の全体的な動作モードを管理し、各個別の制御部92〜96に対して動作モードの変更および維持を通知する制御信号を与える。第1および第2濃度センサ111、121が計測するメインチャンバ11およびサブチャンバ12内のNOの濃度データ、第1および第2圧力センサ112、122が計測するメインチャンバ11およびサブチャンバ12内の圧力データは、全体制御部91に入力される。全体制御部91は、これらの濃度データおよび圧力データ、図略のタイマー装置から与えられるタイムデータ等に基づいて、滅菌装置1の動作モードを管理する。
【0063】
ポンプ制御部92は、前記動作モードに応じて、第1〜第4ポンプP1〜P4に対して、個別にポンプ動作の実行および停止を制御する制御信号を与える。電磁弁制御部93は、前記動作モードに応じて、第1〜第8電磁弁V1〜V8に対して、個別に弁を「開」または「閉」とする制御信号を与える。
【0064】
プラズマ制御部94は、マイクロ波供給装置60に、その起動または停止を制御する制御信号を与える。すなわちプラズマ制御部94は、プラズマ発生ノズル31においてプラズマを発生させる期間を制御する。
【0065】
ロック制御部95は、チャンバロック装置13の動作を制御する。チャンバロック装置13は、メインチャンバ11が備える被処理物の搬出入用の開閉ドアをインターロックする装置である(図1では図示省略)。メインチャンバ11の前記ドアは、被処理物に対する一連の滅菌処理工程中は、安全確保のために、このチャンバロック装置13でロックされる。
【0066】
ドライヤ制御部96は、エアドライヤ21のON−OFF動作を制御する。湿度センサ22が計測する湿度データは、ドライヤ制御部96に出力される。ドライヤ制御部96は、前記湿度データが、エアドライヤ21が動作障害を起こしていることを示す異常値であるとき、異常信号を全体制御部91に出力し、ユーザにその異常を報知させる。
【0067】
図4は、制御装置90による滅菌装置1の制御動作を示すタイミングチャートである。また、図5は、図4の各工程における第1〜第4ポンプP1〜P4の制御状態を示す表形式の図、同様に図6は、第1〜第8電磁弁V1〜V8の制御状態を示す表形式の図である。図5において○印はポンプが動作し、×印はポンプが停止している状態をそれぞれ示し、図6において○印は電磁弁が「開」とされ、×印は「閉」とされている状態をそれぞれ表している。なお、図4の横欄の一つの「工程の内容」欄と、図5および図6の最左縦欄の「工程」欄とがリンクしている。
【0068】
時刻T1は、ユーザにより滅菌装置1のスタートボタンが押下され、一連の滅菌処理工程が開始される時刻である。滅菌処理工程は、図4に示されているように、被処理物を真空乾燥させる第1乾燥工程、滅菌材としてのNOガスを生成する滅菌準備工程、被処理物をNOガスと接触させて被処理物を滅菌する滅菌工程、滅菌処理後に残留したNOガスを浄化する排ガス無害化工程、および被処理物を再度乾燥させる第2乾燥工程を含む。なお、時刻T1の前に、医療用器具などの被処理物がメインチャンバ11内に収容されているものとする。
【0069】
第1乾燥工程は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内を高度に真空引きする排気工程と、一定時間だけ状態を維持する保持工程と、サブチャンバ12内にNOガスの生成原料となる乾燥空気を導入する吸気工程とからなる。
【0070】
制御装置90の全体制御部91は、時刻T1に、まずメインチャンバ11の開閉ドアのロック指示をロック制御部95に与える。これを受けてロック制御部95は、チャンバロック装置13を駆動し、メインチャンバ11の開閉ドアをインターロックする。併せて、上記排気工程の実行のため、動作モードを「排気モード」に設定し、各個別制御部92〜96にそのモード設定信号を通知する。
【0071】
排気モードが設定されると、ポンプ制御部92は、第3、第4ポンプP3、P4を動作させ、電磁弁制御部93は第4、第6、第8電磁弁V4、V6、V8を「開」とする。これら電磁弁のみが「開」とされることにより、サブチャンバ12から、第4真空配管401、メインチャンバ11、第6真空配管501および第4常圧配管503を連通して、第4ポンプP4に至る排気路が形成される。そして、第3、第4ポンプP3、P4の駆動によって、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内は真空引きされる。
【0072】
全体制御部91は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データを所定のサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T2で所定の真空度(図4では1Torrを例示)に達したと判定すると、全体制御部91は、上記保持工程の実行のため、動作モードを「保持モード」に設定する。
【0073】
保持モードは、第1〜第4ポンプP1〜P4の全てが停止され、第1〜第8電磁弁V1〜V8の全てが「閉」とされるモードである。なお、図5および図6では、この保持モードに対応する保持工程の状態の記載は省いている。したがって、保持モードが設定されると、ポンプ制御部92は、第3、第4ポンプP3、P4を停止させ、電磁弁制御部93は第4、第6、第8電磁弁V4、V6、V8を「閉」とする。全体制御部91は、時刻T2からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T3まで保持モードを維持する。この保持工程が一定時間継続されることで、メインチャンバ11内、ならびにそこに収容されている被処理物、およびサブチャンバ12の内部から充分に空気が抜け、それらが乾燥状態となる。また、前記保持工程が一定時間継続されることで、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内の真空状態が安定する。
【0074】
時刻T3になると、全体制御部91は、上記吸気工程の実行のため動作モードを「吸気モード」に設定する。吸気工程は、減圧下にあるサブチャンバ12内に乾燥空気を導入することを目的とするので、ポンプ制御部92は第1ポンプP1のみを動作させ、電磁弁制御部93は第1電磁弁V1のみを「開」とする。また、ドライヤ制御部96は、エアドライヤ21を稼働させる。かかる状態とされることで、第1ポンプP1により外部から吸引された空気が、エアドライヤ21で高度に乾燥されながら、第1常圧配管201と第1真空配管202とを通して、サブチャンバ12内に導入される。なお、第4、第5、第6電磁弁V4、V5、V6は、「閉」のままであるので、メインチャンバ11内は、この吸気工程の間(および次の滅菌準備工程の間)も乾燥工程が継続される。
【0075】
吸気モードの間、全体制御部91は、第2圧力センサ122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取り、サブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T4で常圧(760Torr)に達したと判定すると、全体制御部91は吸気モードを終了する。また、ドライヤ制御部96は、エアドライヤ21を停止させる。
【0076】
続いて、滅菌準備工程が実行される。この工程は、サブチャンバ12内を所定濃度の滅菌ガスで充満させるために、プラズマで空気を電離してNOガスを生成するプラズマ工程からなる。
【0077】
詳しくは、時刻T4で全体制御部91は、上記プラズマ工程の実行のため動作モードを「プラズマモード」に設定する。プラズマモードが設定されると、ポンプ制御部92は第2ポンプP2のみを動作させ、電磁弁制御部93は第2、第3電磁弁V2、V3を「開」とする。これにより、サブチャンバ12、第2真空配管301、第2常圧配管303および第3真空配管302で構成される一つの密閉空間が形成され、該密閉空間内を空気(NOガス)が循環可能となる。
【0078】
また、時刻T4の時点で、プラズマ制御部94はマイクロ波供給装置60を動作させる。これによりマイクロ波供給装置60はプラズマ発生ノズル31にマイクロ波エネルギーを供給し、該プラズマ発生ノズル31でプラズマが発生し、該プラズマ発生ノズル31を通過する空気はNOガスに変換される。この状態が継続されることで、サブチャンバ12内の空気は、徐々にNOガスに変換されてゆく。
【0079】
このプラズマモードの間、全体制御部91は、第2濃度センサ121からNOの濃度データをサンプリング周期毎に受け取り、サブチャンバ12のNO濃度を監視する。濃度データに基づき、時刻T5でNO濃度が所定値、たとえば前記50000ppmに達したと判定すると、全体制御部91はプラズマモードを終了する。これに伴い、プラズマ制御部94はマイクロ波供給装置60の動作を停止させ、次の滅菌工程に移る。或いは、プラズマモードでマイクロ波供給装置60を動作させたまま、滅菌工程に移ってもよい。
【0080】
滅菌工程は、常圧下でサブチャンバ12内に充満しているNOガスを、被処理物を収容し高真空下にあるメインチャンバ11内に、両チャンバの圧力差を利用して一気に導入すると共に、NOガスと被処理物とを充分な滅菌に適した一定時間だけ接触させる工程である。
【0081】
詳しくは、時刻T5で全体制御部91は、上記滅菌工程の実行のため動作モードを「循環モード」に設定する。循環モードが設定されると、ポンプ制御部92は第3ポンプP3のみを動作させ、電磁弁制御部93は第4、第5電磁弁V4、V5を「開」とする。これにより、メインチャンバ11とサブチャンバ12とは、第4真空配管401および第5真空配管402とで繋がれた、一つの密閉空間となる。この結果、減圧下のメインチャンバ11内には急激にNOガスが入り込み、チャンバ内の被処理物が良好にNOガスに曝される。たとえば被処理物がカテーテルのような細長いチューブであっても、そのチューブ内の微小空間にまでNOガスが行き渡る。したがって、被処理物の良好な殺菌を行い得る。
【0082】
NOガスのメインチャンバ11への導入が進むにつれ、メインチャンバ11とサブチャンバ12との圧力差は減少してゆく。そして、ある時刻T51で、両チャンバの圧力は平衡することになる。時刻T51以降は、専ら第3ポンプP3の動作によって、サブチャンバ12のNOガスがメインチャンバ11に送られる。したがって、この時刻T51までは、第5真空配管402でのガスの流れは逆方向となり、時刻T51からは、サブチャンバ12→第3ポンプP3→第4真空配管401→第4電磁弁V4→メインチャンバ11→第5電磁弁V5→第5真空配管402→サブチャンバ12の一方向の循環経路が形成される。全体制御部91は、時刻T5からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T6まで循環モードを維持する。
【0083】
なお、メインチャンバ11の容量に比べて、サブチャンバ12の容量が小さい場合、収容した被処理物の容量が小さく、NOガスが多く必要な場合、或いは滅菌工程でのNOガスの濃度を上げて短時間に処理したい場合などには、プラズマ制御部94は、前記滅菌準備工程の終了時点で停止していたマイクロ波供給装置60の動作を適宜再開させて、いわゆる追い炊きの機能を実現してもよく、或いは、前述のように滅菌準備工程からこの滅菌工程の間中、連続して、マイクロ波供給装置60を動作させるようにしてもよい。
【0084】
このような滅菌工程により、被処理物は滅菌された状態となるが、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内には、NOガスや、滅菌反応により生成された物質が残存している。これらを浄化するため、排ガス無害化工程が実行される。この工程は、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内を常圧に復帰させる復帰工程と、残留NOガスを浄化する浄化工程とからなる。
【0085】
詳しくは、時刻T6になると、全体制御部91は、上記復帰工程の実行のため動作モードを「復帰モード」に設定する。復帰モードが設定されると、ポンプ制御部92は第1ポンプP1を新たに動作させ、第3ポンプP3の運転を継続させる。電磁弁制御部93は、第1、第4電磁弁V1、V4を「開」とする。この結果、減圧状態にあるメインチャンバ11及びサブチャンバ12内に、第1常圧配管201、第1真空配管202および第4真空配管401を介して外気が導入される。
【0086】
復帰モードの間、全体制御部91は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T7で両チャンバ内が常圧に達したと判定すると、全体制御部91は復帰モードを終了する。
【0087】
時刻T7で全体制御部91は、浄化工程の実行のために動作モードを「浄化モード」に設定する。浄化モードが設定されると、ポンプ制御部92は、第2、第3ポンプP2、P3を動作状態とし、電磁弁制御部93は、第2、第3、第4、第6、第7電磁弁V2、V3、V4、V6、V7を「開」とする。このとき、第1電磁弁V1と第8電磁弁V8とは「閉」とされているので、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内の密閉性は確保されている。
【0088】
一方で、メインチャンバ11、排気系統50、連係系統40、サブチャンバ12および循環系統30を通る、一つの循環経路が形成されることになる。すなわち、メインチャンバ11を起点とすると、順次、HNO変換部51およびフィルタ52が取り付けられている排気系統50内の配管、第7真空配管502、第5真空配管402、サブチャンバ12およびNO変換部33が取り付けられている循環系統30の配管、そして第4真空配管401を経由してメインチャンバ11に戻る、密閉された循環経路が形成される。
【0089】
本実施形態では、このような密閉された循環経路(密閉空間)の内部で無害化処理を行う。すなわち、第2、第3ポンプP2、P3の駆動によって、前記循環経路内において気流が発生し、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内の残留NOガスは、HNO変換部51およびフィルタ52を通過する。これにより、残留NOガスは前述のように一旦HNOを含むガスに変換された後、フィルタ52でHNOが吸着され、低濃度のNOおよびHNOを含むガスとなる。その後、この低濃度ガスはサブチャンバ12に入り、さらに循環系統30などに残存するNOガスなどとともに、第4真空配管401を経てメインチャンバ11に戻る。
【0090】
以上のようなサイクルが繰り返され、残留NOガスは徐々に浄化されてゆく。浄化モードの間、全体制御部91は、第1、第2濃度センサ111、121からNOの濃度データをサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11およびサブチャンバ12のNO濃度を監視する。濃度データに基づき、時刻T8でNO濃度が所定値以下に低下したと判定すると、全体制御部91は浄化モードを終了する。
【0091】
最後に、第2乾燥工程が実行される。この工程は、滅菌処理後の被処理物を乾燥させるとともに、メインチャンバ11およびサブチャンバ12内を掃気し、かつ残留物を除去するための工程であって、排気工程、保持工程および復帰工程とからなる。これらの各工程は、先に説明したものと同じ動作の工程である。
【0092】
すなわち、時刻T8で全体制御部91は、上記排気工程の実行のため動作モードを「排気モード」に設定する。これに伴い、ポンプ制御部92は、第2ポンプP2に代えて第4ポンプP4を新たに動作させ、第3ポンプP3の運転を継続させる。電磁弁制御部93は、第4、第6、第8電磁弁V4、V6、V8を「開」とする。これにより、メインチャンバ11およびサブチャンバ12は真空引きされる。このとき、第4ポンプP4からは、浄化後の無害な気体が排出される。なお、この「排気モード」の際、第2、第3電磁弁V2、V3を「閉」とすることで、真空に対する耐性が比較的弱いプラズマ発生ノズル31を保護することができる。
【0093】
全体制御部91は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T9で所定の真空度に達したと判定すると、全体制御部91は、上記保持工程の実行のため、動作モードを「保持モード」に設定する。これにより、第1〜第4ポンプP1〜P4の全てが停止され、第1〜第8電磁弁V1〜V8の全てが「閉」とされる。
【0094】
全体制御部91は、時刻T9からタイマー装置に計時を開始させ、所定時間が経過する時刻T10まで保持モードを維持する。この保持工程が一定時間継続されることで、被処理物が乾燥状態とされ、またメインチャンバ11およびサブチャンバ12の内部が清浄化される。
【0095】
時刻T10になると、全体制御部91は動作モードを「復帰モード」に設定する。復帰モードが設定されると、ポンプ制御部92は、第1、第3ポンプP1、P3を動作させ、電磁弁制御部93は第1、第4、第5電磁弁V1、V4、V5を「開」とする。この結果、減圧状態にあるメインチャンバ11およびサブチャンバ12内に外気が導入される。
【0096】
復帰モードの間、全体制御部91は、第1、第2圧力センサ112、122から圧力データをサンプリング周期毎に受け取り、メインチャンバ11およびサブチャンバ12の圧力を監視する。圧力データに基づき、時刻T11で両チャンバ内が常圧に達したと判定すると、全体制御部91は復帰モードを終了する。さらに、ロック制御部95を介してチャンバロック装置13を駆動し、メインチャンバ11の開閉ドアのインターロックを解除する。この解除によって、ユーザは被処理物をメインチャンバ11から取り出せるようになる。
【0097】
図7はプラズマ発生ノズル31の縦断面図であり、図8は斜視図である。先ず、このプラズマ発生ノズル31は、上述のように導波管62に取付けられ、マイクロ波発生装置61からのマイクロ波を受信する。そして、前述の図11で示すプラズマ発生ノズル121と同様に、導波管62の管軸方向とは直交方向に並んで、すなわち前記マイクロ波発生装置61から等距離で、2本の内側電極35が配置され、ガス生成能力が強化されている。したがって、図7において、マイクロ波の伝搬方向は紙面に垂直(厚み)方向である。そして、外側電極36は、後述するようにして前記2本の内側電極35を保持しており、ビス71によって導波管62に取付けられる。導波管62がアース電位とされる結果、外側電極36もアース電位とされる。
【0098】
導波管62は、前述のようにアルミニウム等の非磁性金属からなり、断面矩形の長尺管状に形成されている。そして、導波管62の遊端部はビス65で固着された端板66で閉塞されている。端板66は、マイクロ波の漏洩を防ぎ、プラズマ発生ノズル31側への不要マイクロ波の反射を防止するために、マイクロ波を吸収する磁性金属からなる。しかしながら、前述のようにプラズマ発生ノズル31の位置が適切にチューニングされており、該端板66で吸収するマイクロ波は微小で、吸収による不所望な温度上昇を招くようなことはない。導波管62において、プラズマ発生ノズル31より上流側には、図示していないが、前述のように、カプラ64が設けられている。
【0099】
導波管62の基端部には、鍔状の継ぎ手部材67が取付けられる。この継ぎ手部材67は、管軸方向の断面がL字状に形成され、そのL字の一方の辺67aがビス68によって導波管62に固着され、他方の辺67bが六角穴付きボルト69によって、前記サーキュレータ631に固着される。こうして、前記マイクロ波発生装置61からのマイクロ波がプラズマ発生ノズル31に伝播されるようになっている。
【0100】
図7および図8の例では、前記鍔状の継ぎ手部材67は、加工性を向上するために、半割れ状に形成され、半割れの2つがビス70によって接合されて構成されている。しかしながら、このような継ぎ手部材67の構造を始め、導波管62に対するサーキュレータ631および端板66の取付け構造については、適宜選択されればよい。
【0101】
外側電極36の外形は円筒状に形成され、その一直径線上に形成された2つの収納孔361内に、該収納孔361と同心状に、前記内側電極35がそれぞれ収納される。内側電極35は、保持部材37によって保持され、前記収納孔361の内周面から着脱自在とされている。収納孔361には、管継手363を介して前記第2電磁弁V2からの第2常圧配管303に連通されるガス供給孔362が形成されている。
【0102】
上記のように構成されたプラズマ発生ノズル31によれば、内側電極35が、その上端部351で導波管62を伝搬するマイクロ波を受信すると、アース電位の外側電極36との間に電位差が生じる。特に、内側電極35の下端部352と外側電極36の下端縁368との近傍に電界集中部が形成されるようになる。かかる状態で、前記ガス供給孔362から酸素分子と窒素分子とを含むガス(空気)が供給されると、ガスが励起されて内側電極35の下端部352付近においてプラズマ(電離気体)が発生し、ノズル364から吐出される。前記プラズマは、NOx(主にNO,NO)とフリーラジカルとを含んでいる。また、このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。生成されたNOx(NO,NO)の内、不安定なNOは、時間経過に伴い、NOに安定して、前記サブチャンバ12に蓄積されてゆく。
【0103】
前記外側電極36の基端側には、図示しない冷却水管を保持する冷却孔366が形成されている。その冷却水管には、管継手367を介して、前記ダミーロード632と並列または直列に、冷却水が供給される。
【0104】
また、外側電極36の先端側には、図8で示すように、六角穴付きボルト381によって、センサユニット38が取付けられる。センサユニット38も、外形は大略円筒状に形成されており、前記収納孔361に対応した2つのガス孔382を一直径線上に有するとともに、そのガス孔382の配置される直径線とは直交する直径線上に、図示しないセンサ孔を有する。2つのセンサ孔からは、対応するガス孔382に連通する検知孔が形成されており、その検知孔を通して、センサ孔に配置された光センサが、プラズマの点滅を検知することができる。図7および図8では、センサ孔に配置された光センサを封止するブロック383が現れている。
【0105】
前記外側電極36の収納孔361から、センサユニット38のガス孔382にかけては、それらの内周面を保護する保護管384が設けられている。その保護管384は、筒状の誘電体からなり、石英ガラス、セラミック、テフロン(登録商標)等のパイプを用いることができる。この保護管384を設けることで、内側電極35の先端と外側電極36との間で、不所望なアーク放電(異常放電)の発生を防止することができるとともに、前記収納孔361からガス孔382の内周面をプラズマから保護(腐蝕の防止)しつつ、前記センサ孔側へのガスの漏洩を防止することができる。
【0106】
前記保護管384は、前記内側電極35の先端部からガス孔382の全長にかけて形成され、前記外側電極36とセンサユニット38との境界では、拡径されたフランジ3841が形成されている。このフランジ3841が、外側電極36側の段差365およびセンサユニット38側の段差385によって挟み込まれることで、保護管384は、その軸方向へのずれが防止、すなわち前記外側電極36の収納孔361側へ不所望に入り込まないようになっている。
【0107】
前記外側電極36の導波管62側の対向面において、収納孔361の周囲には突条386が形成されており、その突条386の外周部に嵌め込まれたOリング387が前記外側電極36と導波管62との間に挟み込まれることによって、外側電極36と導波管62との連結面からのガスの漏洩が防止されている。同様に、センサユニット38のガス孔382の周囲には凹溝388が形成されており、その凹溝388に嵌り込むOリング389が前記外側電極36とセンサユニット38との間に挟み込まれることによって、外側電極36とセンサユニット38との連結面からのガスの漏洩が防止されている。
【0108】
前記センサユニット38の先端側には、集束器39が取付けられる。この集束器39は、円形ホーン形状に形成され、前記2本の保護管384から吐出されたガスを集束して、細い管径のガス管391へ供給する。ガス管391は、前記ガス流量計32への第2常圧配管303に連通される。
【0109】
このため、集束器39は、大径のセンサユニット38側の外周フランジ392部分が、六角穴付きボルト393によって、センサユニット38に取付けられる。集束器39のセンサユニット38側の端部において、内部開口394の周囲には、凹溝395が形成されており、その凹溝395に嵌り込むOリング396が前記センサユニット38と集束器39との間に挟み込まれることによって、センサユニット38と集束器39との連結面からのガスの漏洩が防止されている。
【0110】
一方、集束器39のガス管391側の端部には、拡径されたフランジ397が形成されており、ガス管391側の対応するフランジ398と接合され、それらのフランジ397,398の外周部が図示しない締結部材によって連結される。
【0111】
図9は、前記保持部材37に保持された内側電極35の斜視図である。内側電極35は、良導電性の金属の棒状部材からなり、図7で示すように、その上端部351の側が導波管62の内部に所定長さだけ突出している。上述のように、この突出した上端部351は、導波管62内を伝搬するマイクロ波を受信するアンテナ部として機能し、下端部352が前記外側電極36との間でグロー放電を行う。
【0112】
そして、前記内側電極35の上端部351側が、上述のように保持部材37によって保持される。保持部材37は、絶縁性を有し、低誘電率な材料であるポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂材料や、セラミック等からなり、前記内側電極35の上端部351を保持する保持部371と、筒状に形成され、導波管62を越えて延びる把持部372とが一体成型されて構成される。
【0113】
前記外側電極36の収納孔361において、導波管62側には段差部369が設けられ、該段差部369で保持部371が支持されることで、内側電極35は外側電極36とは絶縁された状態で、着脱自在に支持される。こうして、上述のように同心状に配置される内側電極35および外側電極36を有し、両電極35,36間に高周波の電界を印加することでグロー放電を生じさせてプラズマを発生させ、両電極35,36間に供給された原料ガスを前記プラズマによって処理して放出するプラズマ発生ノズル31において、損耗する内側電極35を交換可能に形成することができる。
【0114】
注目すべきは、図9で示すように、筒状に形成される保持部材37の外周面において、前記外側電極36の段差部369の内周面に嵌り込む保持部371には、周方向に連続する凹溝3711が形成され、その凹溝3711に、シール部材373が嵌め込まれていることである。すなわち、上述のように、内側電極35を外側電極36から着脱自在に構成するにあたって、内側電極35を保持する保持部材37の外周面と、外側電極36の内周面との間は、処理されたガスが漏れないように気密にシールする必要があり、そのシール部材373を保持部材37側に嵌め込むようにする。
【0115】
このように構成することで、内側電極35を保持部材37ごと取り外すと、シール部材373も保持部材37に着いて取り外すことができ、該内側電極35の交換に伴うシール部材373の交換を容易に行うことができる。特に、原料ガスが空気であり、プラズマ処理によってNOガスが生成される場合には、該NOガスは、滅菌などに使用され、人体に有害であるので、前記シールの必要性が高く、本発明が好適である。
【0116】
ここで、前記外側電極36の収納孔361において、前記内側電極35の下端部352に対応する部分は、該下端部352と同心円状となるために、円筒状に形成される。しかしながら、前記段差部369より上方の上端部351に対応する部分は、任意の形状に形成されてもよい。たとえば、角筒状に形成された場合、保持部371も、それに対応して角筒状に形成されればよい。
【0117】
また、図9の例では、シール部材373には、Oリングなどの無端環状のシール部材が用いられているけれども、Cリングなどの線状のシール部材が用いられてもよい。特に、前記Cリングなどの無端環状でない、すなわち切れ目のあるシール部材が用いられる場合、その切れ目が周方向の異なる位置となるように、複数のシール部材を隣接して設けるようにしてもよい。
【0118】
また、内側電極35に高周波の電界を発生させるために、本実施の形態では、導波管62を介してマイクロ波が伝播されているが、内側電極35が1つで、かつ高周波電界のパワーが小さくて済む場合には、同軸ケーブルが用いられてもよい。しかしながら、導波管62を用いる場合、内側電極35と外側電極36との間で処理されたガスが、前記シール部材373によって、導波管62側へ流入することを防止することができ、特に処理後のガスが人体に有害な前記のNOガスである場合に、前記シール部材373によって、該NOガスが導波管62を介して外部に漏出するのを防止することができる。
【0119】
一方、導波管62において、外側電極36が取付けられる壁621とは反対側の壁622には、前記保持部材37に保持された内側電極35が遊挿可能な点検口623が形成されている。前記点検口623には、ビス624によって口金625が固定されており、その口金625にビス626によってキャップ部材627が取付けられることで、前記点検口623が閉塞されるとともに、保持部材37の把持部372の端部3721が押圧固定される。
【0120】
そして、作業者が前記把持部372を把持し、保持部材37および内側電極35を前記口金625および点検口623を遊挿させ、前記保持部371を収納孔361の段差部369に嵌め込んだ後、前記把持部372の端部3721をキャップ部材627で抑えつつ、ビス626を口金625に螺着することで、前記保持部材37の保持部371が段差部369に押え込まれてゆく。こうして、内側電極35は常に所定の位置にセットされることになり、放電を安定させることができる。
【0121】
ここで、前記把持部372が耐熱性樹脂材料からなる場合、該把持部372を少し長い目に形成しておくことで、余剰分は前記筒形状の該把持部372の撓みによって吸収され、前記保持部材37から内側電極35を均一に押圧することができる。これによって、該把持部372の長さを厳密に管理することなく、前記のように常に内側電極35を所定の位置にセットすることができる。
【0122】
これに対して、内側電極35の取り外し時は、作業者は、前記把持部372の端部3721に形成された孔3722に、図示しない針状のフックなどを引っ掛け、引き抜くことで、前記シール部材373の摩擦によって前記保持部371が段差部369の内周面に強固に密着していても、前記内側電極35および保持部材37を取り外すことができる。
【0123】
このように構成することで、前記点検口623を開けると前記保持部材37に保持された内側電極35が交換可能になり、しかも前述のようにシール部材373を該保持部材37と一緒に交換することができるので、外側電極36を導波管62から取外したりするような必要はなく、極めて容易に交換を行うことができる。また、作業者は、前記保持部材37の把持部372を把持して、内側電極35に手や工具で触れることなく、該内側電極35を交換することができ、該内側電極35への傷付きを防止することができるとともに、専用工具を用いることなく交換を行うことができる。
【0124】
ところで、前記内側電極35において、アンテナとなる上端部351が把持部372内に完全に埋込まれていると、アクシデントによって導波管62内でプラズマ点灯が生じると、その点灯が生じるアンテナ先端部付近の把持部372の材料が溶解してしまう。そこで本実施の形態では、前記アンテナとなる上端部351の一部分を前記把持部372外に露出させている(剥き出しとなっている)。これによって、プラズマ点灯はその露出させた部分で生じさせ、前記把持部372の溶解を未然に防止することができる。
【0125】
さらにまた、前記キャップ部材627には、図7で示すように、前記把持部372の前記筒形状によって形成される内部空間3723を外部へ開放する通気孔6271が形成されている。これによって、マイクロ波の受信およびそれによるプラズマの点灯によって内側電極35が高温になっても、前記通気孔6271が高温で膨張した空気の排出孔となり、前記筒形状の把持部372内の圧力が異常に上昇することを防止することができ、該把持部372の変形を防止することができるとともに、内側電極35がセンサユニット38側に抜け落ち(飛び出し)てしまうことも防止できる。
【0126】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記(1)〜(4)の変形実施形態を取ることができる。
【0127】
(1)上記実施形態では、マイクロ波供給装置60およびプラズマノズル31を用いて、空気をプラズマ化することで滅菌ガスを生成する例を示した。これに代えて、2つの電極35,36間にアーク放電を生じさせることでプラズマを発生させる方法を採用してもよい。
【0128】
(2)上記実施形態では、無害化処理の際、残留NOガスをサブチャンバ12に付設されているガス供給源30に循環させる例を示した。これに代えて、無害化処理時には第2電磁弁V2および第3電磁弁V3を「閉」とし、ガス供給源30には残留NOガスが流通されないようにしてもよい。あるいは、残留NOガスがサブチャンバ12に循環されないようにし、メインチャンバ11と排気系統50との間だけで残留NOガスを循環させ、これを浄化するようにしてもよい。
【0129】
(3)上記実施形態では、メインチャンバ11内を減圧した状態で滅菌処理を行う例を示したが、常圧で滅菌処理を行うようにしてもよい。
【0130】
(4)上記実施形態では、メインチャンバ11とサブチャンバ12とが1:1で設けられる例を示した。これに代えて、1つのサブチャンバ12から複数のメインチャンバ11に滅菌ガスを供給可能な構成としてもよい。逆に、1つのメインチャンバ11に複数のサブチャンバ12から滅菌ガスを供給する構成としてもよい。この場合、異種の滅菌ガスを各サブチャンバ12から供給することもできる。
【符号の説明】
【0131】
1 滅菌装置
11 メインチャンバ
12 サブチャンバ
20 吸気系統
30 ガス供給源
31 プラズマ発生ノズル
35 内側電極
36 外側電極
361 収納孔
37 保持部材
371 保持部
3711 凹溝
372 把持部
373 シール部材
38 センサユニット
384 保護管
39 集束器
40 連係系統
50 排気系統
51 HNO変換部
52 フィルタ
60 マイクロ波供給装置
61 マイクロ波発生装置
62 導波管
623 点検口
63 アイソレータ
64 カプラ
90 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の内側電極と、
筒状に形成される外側電極と、
絶縁性を有すると共に、内周面および外周面を備えた筒状体であって、前記内周面側で前記内側電極を保持し、前記外周面側が前記外側電極の内周面に嵌り込むことで、前記外側電極の内周面と同心状に前記内側電極を配置するとともに、前記外周面における、前記外側電極の内周面に嵌り込む領域の一部に形成された、周方向に連続する凹溝を備えた保持部材と、
前記凹溝に嵌め込まれ、前記保持部材の外周面と外側電極の内周面との間を気密にシールするシール部材とを含み、
前記内側電極と外側電極との間に高周波の電界が印加されることで放電を生じさせてプラズマが発生され、両電極間に供給された原料ガスを、前記プラズマによって処理して放出することを特徴とするプラズマ発生ノズル。
【請求項2】
前記原料ガスは空気であり、前記プラズマ処理によって窒素酸化物ガスが生成されることを特徴とする請求項1記載のプラズマ発生ノズル。
【請求項3】
前記請求項1または2記載のプラズマ発生ノズルと、
マイクロ波発生装置と、
前記プラズマ発生ノズルが取付けられ、前記マイクロ波発生装置からのマイクロ波を前記プラズマ発生ノズルに伝搬する導波管とを備え、
前記外側電極は導波管と同電位に接続され、
前記棒状の内側電極は前記導波管内に突出して前記マイクロ波を受信するアンテナとして機能する一端側と、前記外側電極との間で前記高周波の電界を発生し、前記グロー放電を生じさせる他端側とを有することを特徴とすることを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項4】
前記保持部材の導波管内における少なくとも一部分は、把持部として、導波管において外側電極が取付けられる壁面とは反対側の壁面に延びて形成され、
前記反対側の壁面には、前記保持部材に保持された内側電極が遊挿可能な点検口が形成されていることを特徴とする請求項3記載のプラズマ発生装置。
【請求項5】
前記把持部は、絶縁性を有し、低誘電率の材料から成り、内部は前記内側電極を収容する筒形状に形成され、その筒形状の端部が前記点検口を閉塞する部材によって押圧されることを特徴とする請求項4記載のプラズマ発生装置。
【請求項6】
前記内側電極におけるアンテナ先端部の少なくとも一部分は、前記把持部外に露出していることを特徴とする請求項4または5記載のプラズマ発生装置。
【請求項7】
前記請求項3〜6のいずれか1項に記載のプラズマ発生装置と、
前記プラズマ発生ノズルに前記原料ガスとして空気を供給する吸気部と、
前記プラズマ発生ノズルで処理された2酸化窒素ガスが充填され、滅菌処理を行うべき処理室とを備えて構成されることを特徴とする滅菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−256437(P2012−256437A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127359(P2011−127359)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(310017552)株式会社サイアン (17)
【Fターム(参考)】