説明

プラズマ重合による表面の化学的官能化方法

本発明は、プラズマを用いて機能要素の化学的に官能化された表面および/または界面を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、化学的に活性なプラズマを用いて、化学的に官能化された機能要素の表面および/または界面の製造方法、ならびにこうして製造された機能要素に関する。
【0002】
多くの用途(例えば、工学、医学またはバイオテクノロジー)では、ある機能要素の表面の化学的、物理的または生物学的特性が、その要素のバルクの特性(Eigenschaften des Volumen)と異なることが望ましいか又は必須である。典型例を挙げると、機能要素のバルク材料(Volumenmaterialien)が安価、丈夫、および耐蝕性であって、なお表面が幅広い機能性(例えば、濡れ性、被覆性、接着性、摩擦特性、生物学的適合性、または個々の化学反応に対する作用)を保持すべきことがある。表面を官能化し得るバルク材料の典型的な例には、それぞれ各種の金属、半導体、ガラス、セラミックおよびポリマーがある。
【0003】
向上した濡れ性は、例えば、ヒドロキシル基またはカルボキシル基の導入により達成され得る。例えば、PVD(真空蒸着)によりポリマーをCrまたはAlなどの金属で強固に被覆可能とするためには、そのポリマー表面にカルボニル基を形成させる。接着物質には通常、望ましい付着性が要求され、それは例えば表面のヒドロキシル基、エポキシ基またはアミノ基により達成し得る。生化学的に中性の表面は、なかでもオリゴエチレングリコール鎖を用いた表面のコーティングにより達成し得る。生化学または医学面の多様な用途では、アミン、アルデヒド、エポキシドまたはカルボニルなどの反応性基を有する表面が形成される。更なる工程で、それらの基に生体分子、例えば、ペプチド、タンパクまたはヌクレオチドがグラフト化される。
【0004】
化学的官能化は、様々な方法、例えば、液体もしくはガス試薬での表面処理、塗装加工の場合のような別の材料からなる巨視的に厚い層の塗布、例えば非堆積性プラズマによるプラズマ法、プラズマ重合、または既知の方法の組み合わせも可能な多段階処理により実施することができる。
【0005】
表面官能化のための従来法には、本質的な限界および欠点がある。湿式化学では、表面処理の方法をいつくか組み合わせなければならない。例えば、ヒドロキシル基を有する表面にはいわゆるシラノ化学的手法を頻繁に利用できるが、大多数のポリマーに直接応用できるわけではない。厚い層の塗装には、粘着性および安定性の問題が解決されねばならず、被覆される機能要素の寸法は層によって異なる。表面は使用する液体によっては汚染される場合がある。しばしば不可欠の多段階加工に中和工程および中間洗浄が組み合わされる。
【0006】
前記の方法ならびに常圧気相処理、例えばプラスチック表面のフッ素化における更なる問題は、しばしば速乾性、易着火性、有毒性および高価な材料を比較的多量に使用し、そして廃棄しなければならないことである。
【0007】
様々な目的で多様な物質の表面の修飾に、低圧プラズマが近年ますます使用されている[1]。この処理技術の長所、なかでも、少量の化学物質の使用、集中的プロセス管理、不純物夾雑の防止、および多くの場合における迅速な処理は、しばしば低圧プラズマ技術関連の比較的高い投資コストを上回る。
【0008】
特にしばしば、ポリマー表面の「活性化」が行われ、その際にポリオレフィン類またはポリカーボネートなどの化学的に不活性なポリマーの表面に、非堆積性プラズマ、例えば、Arプラズマ、O2プラズマ、空気プラズマまたはN2プラズマの作用により、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基などの様々な化学的活性基の混合物が生成する。従って例えば、接着結合またはメタライゼーションにおける接着が確実に改善される。
【0009】
低圧プラズマ活性化の限界は、なかでも、すべての基材が活性化される訳ではないこと、生成する官能基が非常に基材依存的であること、および形成される表面がしばしば比較的長時間の安定性を欠くことに存する。同様のことが、大気圧プラズマによるプロセス管理で問題となるような大気圧下でのプラズマ活性化、例えば汎用コロナ法にも認められている。
【0010】
幾つかの応用分野、例えばバイオテクノロジー領域において、表面が本質的に1の特定の化学的官能基、例えば、アミノ基またはヒドロキシル基を有することが必須である。そこでは、典型的な堆積(重合)性プラズマが用いられる。
【0011】
プラズマ重合とは、あるプラズマ、典型的には低圧グロー放電中で有機出発物質が活性化され、そして被覆対象の基材にポリマー層が形成されるプロセスである[1]。この活性化とは、なかでも高エネルギータイプのプラズマ作用(通常、励起された準安定状態にある原子および分子との電子衝撃または相互作用)によって、出発物質の分子の化学結合が切断され、それによってラジカルが発生することを意味する。
【0012】
一般に、出発物質は、大気圧および室温において、多少なりとも揮発性の液体として存在する。連続排気されるプラズマ反応炉に蒸気状態の物質を供給し、場合によっては助剤(例えば希ガス)を添加し、圧を典型的には数十分の1ないし数百Paの範囲に調整し、放電によりプラズマを発生させ、それによってプラズマ重合が起きる。処理条件および前駆体分子(プラズマ重合のための出発物質はしばしば「モノマー」とも称され、従来の重合法とは異なるプラズマ重合法でも一定の質量で生成するポリマーの下位単位を構成する)の適切な選択によって、原則的に様々な官能基を有する実質的に基材非依存的な表面を被うことが可能となり、従ってある種の優れた機能を有する表面が得られる。
【0013】
典型的には前駆体分子は、官能化される表面に官能基を既に有している。例えば、アクリル酸プラズマを用いてカルボキシル官能化表面が形成され、アリルアミンまたはジアミノシクロヘキサンを用いてアミノ官能化表面が形成され、アリルアルコールを用いてヒドロキシ官能化表面が形成される[2],[3]。例えば、常法によってアルデヒド官能基のあるプラズマ重合体を製造するためには、前駆体として炭素原子間に1以上のアルデヒド基と共に1以上の2重結合を有する分子(最も単純な例としてはアクロレイン)を選択すれば、続いてプラズマ中で慎重に重合させることができよう。
【0014】
前記の手法には、前駆体分子に存在する官能基がプラズマ作用により容易に破壊されるという大きな問題点がある。それを回避するために、最低のプラズマ出力密度および/または衝撃プラズマが用いられる。その結果、処理の遅延、層における非化学結合のオリゴマー部分の増大、架橋度の低下とそれによる層の安定性低下といった悪影響がしばしば生じる。十分な安定性とともに十分な出力密度を有する層を製造するためのプロセス変数(Prozessparametern)の選択が、極めて難しくなる。従って、諸工程の確立、別のプラズマ反応炉へのプロセス変換、および再現性の維持は、巨額の出費につながることが多い。
【0015】
従って、本発明の元にある技術的課題は、プラズマ作用による用いた前駆体分子の望ましい官能基の破壊を回避できる、機能要素の化学的に官能化された表面および/または界面を製造する方法を提供することである。
【0016】
本発明は、その元にある技術的課題を、プラズマを用いた機能要素の表面であって少なくとも1つの第2の官能基または更なる処理工程で誘導された基を有する化学的官能化表面の製造方法を提供することによって解決するものであり、その製造方法は、第1の工程a)において、少なくとも1つの第1の官能基を有するが第2の官能基は有しない第1の前駆体分子、特に該分子からなるか又は該分子を含む第1の物質を提供し;続く第2の工程b)において、プラズマ反応炉中で前記プラズマを発生させ;そして同時もしくはその後の第3の工程c)において、前記第2の官能基を有するプラズマ重合体を前記機能要素の表面に蒸着させ、その際、第1の官能基から第2の官能基への変換は、前記第1の前駆体分子の少なくとも1つの化学結合の開裂ならびにその結果の開裂結合部位での水素原子による後の停止が生じるか又はこの工程を含む。本発明はまた、その元にある課題を、プラズマ重合による表面の化学的官能化のための方法によっても解決するものであり、その際、第1の工程において、少なくとも1つの第1の官能基を有する第1の前駆体分子が最初に提供され、その第1の前駆体分子は官能基、すなわち第2の官能基を有せず、この第2の官能基は、前記機能要素の表面上に望まれるものであり、プラズマ重合法に続いてプラズマ重合体の、およびプラズマ重合体により生成する層の構成成分として機能要素の表面上に堆積される。本発明は、前記第1の前駆体分子の提供後の第2の工程において、特にはガス状態で、特にはその分子からなるか又はそれを含む第1の物質をプラズマ反応炉中に供給し、そこでプラズマ励起による通常の方法でプラズマ重合させることも企図され、その際、プラズマの作用の間に第1の官能基からそれとは異なる第2の官能基が部分的もしくはほぼ完全に形成され、それが第3の工程において同時もしくは後に機能要素の表面上にコーティングとして被覆されるプラズマ重合体の構成成分となる。従って、前記の方法により製造されたプラズマ重合体の表面およびバルク(Volumen)に見出される官能基は、少なくとも部分的、好ましくは主としてもしくはほぼ完全に前記の第2の官能基であり、前記プラズマ重合の工程b)で供給された第1の前駆体分子には存在しない。
【0017】
本発明による前記技術的課題の解決策は、なかでも、前記機能要素の被覆表面および/または界面上に存在すべき第2の官能基が望ましくない方法で離脱または改変され得ないように、これを第1の前駆体分子中に全く存在させないことである。むしろ、第1の前駆体分子には、ある基、すなわち第1の官能基が存在し、その官能基から特定の化学結合の開裂および続く水素原子による開裂結合の飽和によって所望の第2の官能基が生成する。
【0018】
プラズマ重合に利用される水素は、特にプラズマ中で比較的大量に存在し、また例えば各種ラジカル、すなわちイオンのH+、H-、H、H3+など高反応型で存在するため、末端停止に必要な水素をプラズマから取出すことができる(特定の反応機構に束縛されない)。
【0019】
本発明によれば、第1の前駆体分子とは、プラズマ重合プロセスに供給するために提供され、第1の化学的官能基を少なくとも1つ有するが第2の官能基は有しない分子と理解される。
【0020】
本発明のプラズマ重合中にコーティングとして機能要素の表面上に堆積されるプラズマ重合体は、第1の官能基とは異なる第2の官能基を少なくとも1つ有し、その第2の官能基は、望ましい化学官能基として機能要素の表面上に適用、すなわち結合されるべき基である。
【0021】
本発明に関連して、第3の官能基とは、第2の官能基と第3の分子との直接反応、または中間反応の終了後に生じるような、機能要素の表面に局在する基と理解される。この第3の官能基は、酸化または還元により第2の官能基から生成することが企図され得る。そのような第3の官能基は、化学的に反応性のある基、ある様式で化学的活性を示す分子であり、および/または特定の生化学的、生物学的特性もしくは他の特性、例えばある濡れ性または摩擦特性などを有する基であってもよい。
【0022】
本発明の範囲において、機能要素とは、特にプラスチック、ポリマー、半導体(例えば、シリコン、金属、セラミック、ガラスなど)からなる、いかなる被覆可能な立体または被覆可能な平面とも理解される。
【0023】
本発明は、好ましい態様において第1の前駆体分子に第1の官能基が2つ以上存在することを企図している。さらに好ましい態様では、この第1の前駆体分子が少なくとも2つの異なる第1の官能基を有することが企図されている。さらに好ましい態様では、本方法の工程a)において、互いに異なる第1の官能基により区別される複数の異なる第1の前駆体分子の混合物を使用することが企図されている。
【0024】
本発明のさらに好ましい態様では、前記第1の前駆体分子は、ケトン類、第二アミン類、第二ホスフィン類、エーテル類、チオエーテル類、セレノエーテル類、エステル類、およびオキシラン類に対応する、チイラン類に対応する、またはアジリジン類に対応する二環式化合物からなる群から選択されることが企図されている。従って、本発明の第1の前駆体分子における第1の官能基は、好ましい態様において特に、ケト基、第二アミノ基、第二ホスフィン類、エーテル基、チオエーテル基、セレノエーテル基、エステル基、非末端オキシラン基、非末端チイラン基、または非末端アジリジン基である。
【0025】
本発明により形成される第2の官能基は、好ましくはアルデヒド、第一アミノ基、第一ホスフィン基、ヒドロキシル基、スルフヒドリルもしくはチオール基、セレノール基、カルボキシル基、末端オキシラン類、末端チイラン類、または末端アジリジン類である。
【0026】
本発明に基づく特に好ましい態様では、それぞれ各種のケト基からアルデヒド基が、第二アミノ基から第一アミノ基が、第二ホスフィン基から第一ホスフィン基が、エステル基からアルコール基が、チオエーテル基からチオール基が、セレノエーテル基からセレノール基が、エステル基からカルボキシル基が、および二環式のオキシラン類、チイラン類もしくはアジリジン類から、それぞれ対応する末端オキシラン類、チイラン類もしくはアジリジン類が形成される。
【0027】
本発明の特に好ましい態様では、第1の前駆体分子として環状分子構造を有する化合物、好ましくは環に2重結合がない化合物が使用される。有利には、その環状前駆体分子は3〜8個、好ましくは3〜5個の環原子、特に炭素原子、あるいは窒素原子、硫黄原子および/または酸素原子のようなヘテロ原子を有することが企図される。
【0028】
特に好ましい態様では、第1の前駆体分子として、ケトン類、特にはシクロケトン類、特に好ましくはシクロペンタノンが使用され、これによって、第2の官能基としてアルデヒド基を有する機能要素の官能化表面が形成されることが企図されている。
【0029】
さらに好ましい態様では、第1の前駆体分子としてエーテル類、好ましくは環状エーテル類、特に好ましくはテトラヒドロフランを使用することが企図されている。この好ましい態様において、第2の官能基としてヒドロキシル基を含む表面が形成される。
【0030】
さらに好ましい態様において、第1の前駆体分子として、チオエーテル類、好ましくは環状チオエーテル類、特にはテトラヒドロチオフェンが使用される。このさらに好ましい態様において、第2の官能基としてスルフヒドリル基を有する官能化表面が形成される。
【0031】
さらに好ましい態様において、本発明は、第1の前駆体分子として第二アミン類、好ましくは環状第二アミン類、特にはピロリジンもしくはピラゾリジンまたはイミダゾリンを用いる前記の方法に関する。このさらに好ましい態様では、第2の官能基として第一アミノ基を有する官能化表面が形成される。
【0032】
さらに好ましい態様において、本発明は、第1の前駆体分子としてエステル類、好ましくは環状エステル類、例えば、β−プロピオラクトンが企図される。このさらに好ましい態様において、第二官能基としてカルボキシル基を有する官能化表面が形成される。
【0033】
さらに好ましい態様において、本発明は、第1の前駆体分子として第二ホスフィンが用いられる前記の方法に関する。このさらに好ましい態様では、第2の官能基として第一ホスフィンを有する官能化表面が形成される。
【0034】
さらに好ましい態様において、本発明は、第1の前駆体分子としてセレノエーテル類が用いられる前記の方法に関する。このさらに好ましい態様では、第2の官能基としてセレノール基を有する官能化表面が形成される。
【0035】
さらに好ましい態様において、本発明は、二環式のオキシラン、アザリジンまたはチイランを用いる前記の本発明に関する。このさらに好ましい態様において、第2の官能基として対応する末端オキシラン類、アザリジン類またはチイラン類を有する官能化表面が形成される。
【0036】
さらに好ましい態様では、工程b)における第1の前駆体分子が、それ自体非重合性のガス、特に水素、アルゴンなどの希ガスとの混合物、または希ガス/水素混合物として使用されることが企図されている。本発明はさらに好ましい態様で、そのような混合物中における第1の前駆体分子のモル濃度が20ないし80%であることが企図されている。
【0037】
さらに好ましい態様では、b)において使用される第1の前駆体分子のガスが更に、全く官能基を発生しない少なくとも1種のプラズマ重合性の第2の出発物質を含むことが企図されている。その際、前記の官能基を有しないプラズマ重合不可能なガスに加えて、他に前記種類の非重合可能なガスも企図され得る。
【0038】
さらに好ましい態様では、全く官能基を生じないプラズマ重合不能な第2の出発物質がさらに、各種炭化水素、各種フッ化炭化水素、シロキサン類およびシラザン類からなる群から選択されるような前記の方法が企図される。好ましい態様では、更なるプラズマ重合可能な第2の出発物質は環状構造を取る。この環状構造のプラズマ重合可能な第2の出発物質はそのほか、炭素原子間に多重結合を有し得る。さらに好ましい態様において、この更なるプラズマ重合可能な第2の出発物質は、環状でなく炭素原子間に多重結合を有する物質であることも企図される。
【0039】
本発明のさらに好ましい態様において、プラズマ反応炉中の工程b)で必要なプラズマ励起は交流放電により生じるが、その交流周波数は好ましくはラジオ周波数領域であり、特には1ないし100MHzであることが企図される。
【0040】
さらに好ましい態様では、プラズマ反応炉中の工程b)でプラズマを発生させるための出力密度は、1つの電極の単位表面あたりで計算して、0.15ないし0.5W/cm2となることが企図される。
【0041】
さらに好ましい態様では、工程b)のプラズマ反応炉中の気圧は2〜200Pa、好ましくは10〜70Paであることが企図される。
【0042】
本発明はさらに一層好ましい態様において、工程c)に続く第3の分子による化学的、好ましくは湿式化学的処理により、前記機能要素の界面に形成された第2の官能基、特に例えば、アルデヒド基、ヒドロキシル基、第一アミン基、第一ホスフィン基、チオール基またはカルボキシル基が変換され、直接的または間接的に前記機能要素の表面で第2の官能基から第3の官能基が形成されることが企図される。
【0043】
本発明の好ましい態様において、前記第3の分子は、アミノ基含有分子、特には第一および第二アミン類、アンモニア、ヒドロキシルアミン類、ジアミン類、ヒドラジン類、ポリもしくはオリゴエーテルジアミン類、各種アミノ酸、各種ペプチド、各種タンパク、またはモノアミノ官能化ポリもしくはオリゴエチレングリコールであってもよい。
【0044】
本発明はまた、第3の分子が、表面に配置された第2の官能基、例えばアルデヒド基と反応し、それによって、第3の官能基が形成され、第2の官能基と反応する第3の各分子が少なくとも1つのアミノ基を有するような前記の好ましい種類の方法に関する。好ましい態様での反応により生じるシッフ塩基は、第3の分子をプラズマ重合体へ化学的に安定に結合させるために、化学的な還元、例えば水素化ホウ素アルカリの溶液、特にはNaBH4の溶液、好ましくはNaBH4のイソプロパノール溶液との後の反応によって第二アミノ基に変換される。
【0045】
さらに好ましい態様において、第2の官能基、特にはアルデヒド基ならびにケト基、および第3の分子へのNaCNBH3の添加により、単一の反応工程でシッフ塩基の形成および第二アミノ基へのその還元が行われる。
【0046】
本発明はまた、さらに好ましい態様において、第3の分子、すなわちヒドラジンもしくはジアミン類と第2の官能基、特にはアルデヒド基もしくはケト基との反応、好ましくはi)生成するシッフ塩基の、例えば水素化ホウ素アルカリ、特には水素化ホウ素ナトリウムの溶液、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムのイソプロパノール溶液の添加による後の還元、またはii)NaCNBH3を用いた同時反応を伴う、第3の官能基としてアミノ基を有する官能化表面が形成されるような前記の方法に関する。
【0047】
さらに好ましい態様において本発明は、ポリまたはオリゴエチレングリコールジアミン類の使用により、生化学反応を特に受けやすいアミノ基を有する親水性の表面または界面が形成されるような前記の方法に関する。さらに好ましい様式としては、好ましくは前記i)またはii)の下で、ポリまたはオリゴエチレングリコールジアミンと第2の官能基とで生成する化合物を還元することが企図され得る。
【0048】
さらに好ましい態様において本発明は、第2の官能基、特にはアルデヒド基もしくはケト基と、第3の分子としてのモノアミノ官能化ポリまたはオリゴエチレングリコールとの反応により、ポリまたはオリゴエチレングリコール官能化表面が形成されるような前記の方法に関する。前記i)またはii)の下での還元を後にまたは同時に実施することができる。
【0049】
さらに好ましい態様において本発明は、第2の官能基、特にはアルデヒド基またはケト基と、第3の分子、すなわちアンモニアまたはヒドロキシアミンとの反応によって、そして好ましくは、i)例えば、水素化ホウ素アルカリの溶液、特には水素化ホウ素ナトリウムの溶液、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムのイソプロパノール溶液を用いた反応生成物の後の還元、またはii)NaCNBH3の添加による同時還元をもって、アミノ官能化表面が形成される前記の方法に関する。
【0050】
本発明はまた、前記機能要素の表面上の第2の官能基、特にはアルデヒド基が酸化され、それによって生じる、カルボキシル基である第3の官能基を有する表面が形成されるような方法に関する。
【0051】
さらに好ましい態様において本発明は、前記表面上に生じた第2の官能基、例えばアルデヒド基またはケト基が酸化され、更なる官能基としてヒドロキシル基が生成する、すなわち単官能ヒドロキシル官能化表面が形成されるような方法に関する。
【0052】
さらに好ましい態様において本発明は、前記すべての方法のいずれか1つ、特には第1の分子としてエーテルを用いる方法、または生成されるアルデヒド基が後に還元され、得られた更なる官能基、特にはヒドロキシル基が表面上でいわゆるシラノ化学により、すなわち、シラン化合物を用いて変換される方法に関する。
【0053】
さらに好ましい態様において本発明は前記の方法を用いて製造される表面または界面に関し、従ってすなわち本発明はまた、本発明に基づく方法の1つによって製造可能な表面または界面に関する。
【0054】
さらに好ましい態様において本発明はまた、前記の方法により製造される機能要素、すなわち前記の方法のいずれか1つにより製造可能な機能要素にも関する。
【0055】
幾つかの特に好ましい態様の詳細な記載は以下の通りである。
【0056】
本発明による課題の解決には、前駆体分子として例えばシクロペンタノンが使用される。その分子には、アルデヒド基はないが、ケト基が存在する。理論に拘束されるものではないが、環のカルボニル基に隣接する化学結合は環の他の結合より弱く、従ってプラズマ中において、環はその位置で優先的に開裂するということである。開環により、まず、ジラジカルが生成する。酸素と結合した炭素原子の開裂した結合が、プラズマからの水素原子との反応により、または水素含有分子との反応により、水素原子により停止されると、アルデヒド基が生じ、次いでそれがプラズマ重合体に導入される。
【化1】

【0057】
類似の方法で、本発明に記載された以下の物質が形成される。
【0058】
ピロリドンのような第二アミン類から第一アミン類:
【化2】

【0059】
テトラヒドロフランのようなエーテル類からアルコール類:
【化3】

【0060】
テトラヒドロチオフェン
【化4】

【0061】
のようなチオエーテル類からチオール類、
β-プロピオラクトンのようなエステル類からカルボキシル基:
【化5】

【0062】
または、各二環式化合物から対応する末端オキシラン類(反応5)、末端チイラン類(反応6)、アジリジン類(反応7)
【化6】

【化7】

【化8】

【0063】
モノマーの環状(例えばオキシランのような環状の第2の官能基の二環式)構造は、本発明の好ましい態様において有利である。そのような分子は、プラズマ中で線形構造の分子より急速に重合化するからである。さらに、環内の1つのみの化学結合の開裂によっては、炭素および水素だけからなる分子断片は生成せず、プラズマ重合体層中への組み込みに際して官能基の密度が低下する。
【0064】
前記場合のほとんどにおいて、第1の官能基のいずれかの部位、すなわち関連する原子、または基(シクロペンタノンのケト基またはテトラヒドロフランの酸素)における分子結合の開裂は、所望の機能、すなわち第2の官能基の生成をもたらす。環が大きければ大きいほど、開裂が他の部位で生じて所望の機能が得られない可能性が高くなる。従って、本発明によれば出来るだけ小さな分子が好適であり、例えば3〜8個の、特に3〜5個の環原子、特に、炭素、窒素、硫黄および/または酸素原子)を有する分子が好ましい。分子が小さい物質は一般に、高い蒸気圧を有するため、プラズマ反応炉への前記原子の導入が容易になる。
【0065】
環に2重結合が存在すると、それら結合部位で重合が生じるが、環の開裂は起きず、そして所望の第2の官能基も生じない。本発明による好ましい態様では、多重結合、特に、2重結合または3重結合を有しない前駆体分子が企図される。本発明による特に好ましい態様では、環の原子数が出来るだけ少ない、すなわち、例えば炭素またはヘテロ原子数3〜5、特に好ましくは炭素および/またはヘテロ原子数5の飽和環構造を有する前駆体分子も企図される。
【0066】
好ましい態様において説明されたような本発明は、望み通りに変換される第1の官能基を1つでなく複数(例えば2つ)含む第1の前駆体分子を使用することも企図される。例えば、第1の前駆体分子としてピラゾリジン分子に5つ存在する環結合の3位、または第1の前駆体分子としてイミダゾリン分子に5つ存在する環結合の4位での開裂が生じれば、中間産物の生成に至り、それからプラズマ重合体表面に固定された第一アミノ基が形成されることになる(反応8a、b)。さらに第二アミノ基が生成するかまたはアミン類の一部はヒドラジン基として存在する。プラズマ重合体の後での利用にとって、それは一般に関係ない。
【化9】

【0067】
個々の応用に際し、表面が様々な種類の化学的機能性を同時に含むことは有利である。本発明によるさらに好ましい態様において前記表面は、前記の前駆体分子が望ましい2種類の異なる官能基に対して様々な第1の官能基を同時に含むことによって可能となる。そこで、好ましい態様では、第1の官能基としてケト基および第二アミノ基を含む第1の前駆体分子としての2−ピロリドンから、第2の官能基としてアルデヒドおよび第一アミンの生成が生じ得る(反応9)。
【化10】

【0068】
原理的に同様の結果(表面における異なる化学官能基の同時存在)は、本発明の更なる態様において、様々な第1の官能基と様々な第1の前駆体分子との混合物のプラズマ重合によっても達成可能である。
【0069】
本発明に基づくさらに好ましい態様では、工程b)で生じるプラズマ重合の間、望ましい官能基を形成するための本発明による第1の前駆体分子以外にも更なる助剤を以下のように適用することがある。
【0070】
a.第1の出発物質、すなわち第1の前駆体分子との混合物としての希ガスまたはH2のような(それ自体)非重合性のガス。これらガスの混合は、プラズマの安定性およびプラズマ重合体特性に関して有利な作用を発揮し得る。
【0071】
b.第1の出発物質との混合物としてのそれ自体官能基を生成しない重合化剤(本明細書において第2の出発物質とも称す)。この場合、第1の出発物質、すなわち第1の前駆体分子(例えばシクロペンタノン)と第2の出発物質(例えばエタン)との混合比の調整により、第1の官能基の濃度を変更することができる。そのような第2の出発物質の例として、炭化水素、フッ素化炭化水素、シロキサンおよびシラザンがある。なかでも環状構造をとる物質、および/または炭素原子間に多重結合を有する物質を選択することが好ましい。
【0072】
c.本発明のさらに好ましい態様では、ポイントcと称して前記のような混合物中でプラズマが使用され、そこへ単独では非重合性のガス(ポイントbに記載したように)も混合される。
【0073】
さらに好適な形態は、従属請求項から得られる。
【0074】
本発明は、以下の例および添付の図面に基づいて詳しく説明する。
【0075】
例1:
第1の官能基としてケト基を有する第1の前駆体分子としてシクロペンタノンを用いて得られるアルデヒド官能化プラズマ重合体
平行平板プラズマ反応炉において、アース電極上に、被覆しようとし、プラズマ重合体を堆積させようとする機能要素(例えばケイ素またはアルミニウムからなる)を置く。炉を排気し、アルゴンとシクロペンタノン蒸気の混合物を供給する。その際、Arの流量は3sccmであり、シクロペンタノンの流量は10sccmであり、炉内の圧力は35Paに調節される。高周波電圧(周波数13.56MHz、出力60W)の印加によりプラズマを放射して、5分間持続する。それによって、基材上に薄い(約150nm)プラズマ重合体層が堆積される。この層を赤外分光法、およびX線電子分光法(ESCAまたはXPS)を用いて分析した。
【0076】
図1には、前記層の赤外線吸収スペクトル(狭角入射で記録)を示す。約1680から1770cm-1の範囲における強い吸収帯は、高濃度のカルボニル基を示す。その吸収帯は1740cm-1での最小値および約1710cm-1での肩を有し、2つの型のカルボニル基の存在を示唆する。このプラズマ重合体において、1740cm-1での吸収ピークは高濃度のアルデヒド基を、および1710cm-1での肩は比較的低濃度のケト基を示す。約3250cm-1で最小値を有する広い吸収ピークは、推定されるように、ある数のアルコール基に起因する。1160cm-1でのピークは、推定されるように、アルコール基またはエーテル基に関連する。
【0077】
表1は、ESCAを用いた表面分析の結果を示す。酸素原子に対して3または4の結合を有する炭素(カルボキシル、エーテル、カーボネート)は認められなかった。アルデヒドまたはケト基、およびアルコールまたはエーテル基が存在する。
【表1】

【0078】
本発明に基づく、第1の官能基としてのケト基の適用は、前記機能要素上の第2の官能基として望ましいアルデヒド基を含むプラズマ重合層の効率的形成に至る。前記の第2の官能基として望ましいアルデヒド基のほか、比較的少量の非変換の第1の官能基、すなわちケト基も見出される。
【0079】
例2:
湿式化学的に誘導されるアルデヒド官能化プラズマ重合体
例1に記載されたように、第1の前駆体分子からシクロペンタノンを生じる、第2の官能基として主にアルデヒド基を有するプラズマ重合体は続いて、以下に記載するように湿式化学的に誘導されたが、その際に第3の分子を用いることによって、使用した機能要素の表面上に第3の官能基が与えられた。このような誘導の目的は、プラズマ重合体の表面上の反応性アルデヒド基(第2の官能基)のさらなる証明を提供することであった。他の目的は、特異的な生化学的特性を有する表面を形成させることであった。
【0080】
2.1 ヒドラジン誘導:表面上における第3の官能基、すなわちアミノ基の形成
2種類の溶液を調製する。ヒドラジン溶液Bは、酢酸緩衝液(水100mlに対して酢酸ナトリウム820mg)中の第3の分子としてのヒドラジンの10mM溶液である。酢酸の添加によってpH値を6.9に調節する。還元性溶液Aは、飽和NaBH4イソプロパノール溶液である。
【0081】
例1で得られたコーティングを、室温にて1時間溶液Bと接触させ、イソプロパノールで洗浄し、そして20分間溶液Aと接触させる。その後、前記コーティングをイソプロパノールで洗浄し、水で何回も洗浄する。
【0082】
予期される反応は以下の通りである。
【0083】
溶液Bにおいて、−HC=O + H2N−NH2 → −HC=N−NH2
反応10
(ヒドラゾン形成)。反応10は、場合によっては逆行する。
【0084】
溶液Aにおいて、−HC=N−NH2 + NaBH4 → −HC−NH−NH2
反応11
および
>C=O + NaBH4 → >CHOH
反応12
反応11に従って形成されるヒドラジン基は加水分解に対して安定である。反応12において、非反応性のケト基およびアルデヒド基は、化学的に極めて不活性なアルコール基に変換される。
【0085】
前記の反応を証明し、官能基による官能化の安定性を検証するために、試料表面をpH値4.0にて酢酸中で12時間保持し、水中で3分間超音波洗浄(化学結合してないヒドラジンまたはヒドラゾンを除去するため)した後、ESCAにより調べた。窒素の測定量は0.7原子パーセントであった。表面のみが反応に利用可能であると仮定し、ESCA法による解析能を考慮すると、高密度充填のアミノ基、すなわち望ましい第3の官能基で占有された表面の占有率(表面全体を100%として)は約5〜10%であった。
【0086】
2.2 ヒドロキシアミンの誘導:表面上での第3の官能基(すなわちアミノ基)の生成
使用する溶液Hは、25mlのH2Oに第3の分子として塩酸ヒドロキシルアミン1gを含んでいる。その溶液のpH値をKOHで7.5に調節する。
【0087】
例1で得られたプラズマコーティングを室温にて前記溶液Hと100分間接触させてから、イソプロパノールで洗浄し、溶液Aで1時間洗浄する。その後、場合によっては化学結合していない窒素化合物を除去するために、前記コーティングをイソプロパノールで洗浄し、水で何回か洗浄し、水中で2.5時間静置する。次いで、試料をESCAにより調べた。
【0088】
望ましい反応は以下の通りである。
【0089】
溶液Hにおいて、−HC=O + H2N−OH → −HC=N−OH
反応13
(オキシム形成)。
【0090】
溶液Aにおいて、−HC=N−OH + NaBH4 → −HC−NH2
反応14
および反応12の後の残存カルボニル基の還元。
【0091】
窒素の総測定量は1.4原子パーセントであり、その値は約25%の表面占有率に相当する。その際、表面上に化学結合した第3の官能基(すなわちアミノ基)の更なる検出を行った場合、約15%の窒素がイオン化されたアンモニウムの状態にあった。
【0092】
2.3 ジアミノ-オリゴエチレングリコールの誘導:表面での第3の官能基、すなわちアミンの生成
使用するジェファミン(Jeffamine)ED−600(CAS No.65605−36−9、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich))は、分子鎖の両端にアミノ官能基を有し、分子量が約600のオリゴエチレングリコール(OEG)である。それは室温にて液体である。
【0093】
例1で得られたコーティングを、第3の分子としてのジェファミンED−600と室温にて60分間接触させ、イソプロパノールで洗浄し、溶液Aと40分間接触させ、続いてイソプロパノールで洗浄し、水で何回か洗浄した。試料表面をESCAにより分析した。
【0094】
予期される反応は以下の通りである。
【0095】
ジェファミンED−600中で、−HC=O + H2N−CH2−(C24O)x−CH2−NH2 → −HC=N−CH2−(C24O)x−CH2−NH2
反応15
(場合によっては加水分解に不安定なシッフ塩基の形成)。
【0096】
溶液Aにおいて、−HC=N−CH2−(C24O)x−CH2−NH2 +NaBH4 → −HC−NH−CH2−(C24O)x−CH2−NH2
反応16
(シッフ塩基の安定な第二アミンへの還元)
および反応12の後の残存カルボニル基の還元。
【0097】
誘導体形成の目的は、第3の官能基として柔軟な、親水性の、アミノ基末端を有するOEG鎖が存在する表面であって、そのために生化学反応が特によく進行する表面を与えることである。
【0098】
ESCA分析の結果によれば、表面は40%がアミノOEGで被われ(表面全体を100%として)、高密度で垂直に伸びたOEG鎖で被われていることが分かる。
【0099】
さらに、前記で被覆された表面において接触角を測定した。その前進角(Vorrueck-Winkel)は44°であり、後退角(RueckzugWinkel)は27°であった。非誘導シクロペンタノンプラズマ重合体での対応する値は、それぞれ71°および57°である。表面の明らかな親水性は、その表面がOEGで修飾されたことを裏付ける証拠である。
【0100】
例3
第1の官能基としてエーテル基を有する第1の前駆体分子としてテトラヒドロフランを用いて得られるアルコール官能化プラズマ重合体
前記プラズマ重合体を出発物質としてテトラヒドロフランの使用下で堆積させる。堆積は、例1で記載したときと同様のプラズマ反応炉中で実施される。Arの流量は3sccmであり、テトラヒドロフランの流量は10sccmであり、炉の圧は35Pa、RF出力は60W、蒸着時間は4分であった。
【0101】
前記プラズマ重合体層をIR分光法によって分析した。図2は、IR吸収スペクトル(狭角入射で記録)を示す。3260cm-1における非常に強い吸収帯および1062cm-1でのピークは、生じた第2の官能基としての高濃度アルコール基を示唆する。その他、カルボニル基(1716cm-1での吸収帯)が存在している。
【0102】
例4
第1の官能基として第二アミノ基を有する第1の前駆体分子としてピロリジンを用いて得られるアミノ官能化プラズマ重合体
前記プラズマ重合体を出発物質としてピロリジンの使用下で堆積させる。堆積は、例1に記載したときと同様のプラズマ反応炉中で実施される。Arの流量は3sccmであり、ピロリジンの流量は10sccmであり、炉内の圧力は50Pa、RF出力は60W、堆積時間は4分であった。
【0103】
前記プラズマ重合体層をIR分光法によって分析した。図3は、IR吸収スペクトル(狭角入射で記録)を示す。3325、2190および1627cm-1における強いピークはすべて、生じた第2の官能基としての第一アミノ基の存在に起因する。
【0104】
例5
アミノ官能化表面:表面における第3の官能基、すなわち第一アミノ基の生成
例1に基づくシクロケトンプラズマ重合により得られるプラズマ重合層表面上の第2の官能基としてのカルボニル基は、第3の分子としてアンモニア溶液を用いてシッフ塩基に変換される。
【0105】
−HC=O + H3N → −HC=NH
反応17
シッフ塩基は、反応17に続くNaBH4溶液によるか又は反応と並行するアンモニア溶液へのNaCNBH3の添加により、望ましい第3の官能基としての第一アミノ基へ還元される。
【0106】
例6
シラノ化学による表面官能化:表面での第3の官能基の生成
例1または例3で使用した場合のように、シクロケトン類または環状エーテル類など第1の前駆体分子のプラズマ重合によって、ヒドロキシル基と同様にカルボニル基(アルデヒド基およびケト基)といった第2の官能基を有する表面が生じる。例えばNaBH4溶液またはLiAlH4溶液を用いるカルボニル基のアルコール基への還元により、広範に単官能性アルコールで官能化された表面が形成され、続いて表面は通常のシラノ化学的手法[4]により更なる官能化が可能となる。
【0107】
例7
カルボキシル官能化表面:表面での第3の官能基、すなわちカルボキシル基の生成
例1に基づいて得られるシクロケトンプラズマ重合体表面のアルデヒド基は、第3の官能基としてのカルボニル基に酸化可能である。この酸化は、例えばKMnO4溶液またはH2Cr27溶液により実施することができる。
【0108】
文献
[1] Plasma polymerization / H. Yasuda. - Orlando : Academic Press, 1985.
[2] Retention of alcoholic, carboxylic and epoxy groups by polymerisation of the respective precursors in pulsed glow discharges. / C. Oehr et al. In: Proc. 14th International Symposium on Plasma Chemistry, Vol. IV (1999).
[3] Plasma-aminofunctionalisation of PVDF-microfiltrationmembranes: Comparison of the in plasma modifications with a grafting method using ESCA and an amino-selective fluorescent probe. / M. Mueller, C. Oehr - Surface and Coatings Technology, v. 116-119, p. 802-807 (1999).
[4] Bioconjugate techniques / G.T. Hermanson. - San Diego : Academic Press, 1996.
[5] Multifunctional thrombo-resistant coating and methods of manufacture / US Patent 5342693。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、例1に基づくシクロペンタノンプラズマ重合体のIR吸収スペクトル。
【図2】図2は、例3に基づくテトラヒドロフランプラズマ重合体のIRスペクトル。
【図3】図3は、例4に基づくピロリジンプラズマ重合体のIRスペクトル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いて、少なくとも1つの第2の官能基もしくは該基から誘導される基により化学的に官能化された表面を有する機能要素を製造するための方法であって、
第1の工程a)において、少なくとも1つの第1の官能基を有するが前記第2の官能基は有しない第1の前駆体分子もしくは該分子からなる第1の物質を提供し、
第2の工程b)において、プラズマ反応炉中で前記プラズマを発生させ、そして、
第3の工程c)において、前記第2の官能基を有するプラズマ重合体を前記機能要素の表面に堆積させ、その際、前記第1の官能基から第2の官能基への変換が、前記第1の前駆体分子の少なくとも1つの化学結合の開裂、ならびにその後の、生じた開裂結合部位の水素原子による停止を含む該方法。
【請求項2】
前記第1の前駆体分子において、前記第1の官能基が2つ以上存在する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の前駆体分子が、少なくとも2つの異なる第1の官能基を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の前駆体分子が、ケトン類、第二アミン類、第二ホスフィン類、エーテル類、チオエーテル類、セレノエーテル類、エステル類、二環式アジリジン類、二環式オキシラン類または二環式チイラン類からなる群から選択される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の前駆体分子が、環状分子構造を有する化合物、好ましくは環に2重結合がない環状分子構造を有する化合物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記の環状前駆体分子が、3ないし5個の環原子を有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の前駆体分子として、ケトン類、特にはシクロケトン類、さらに好ましくはシクロペンタノンを用い、アルデヒド官能化表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の前駆体分子として、エーテル類、好ましくは環状エーテル類、特に好ましくはテトラヒドロフランを用い、ヒドロキシル官能化表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の前駆体分子として、チオエーテル類、好ましくは環状チオエーテル類、特に好ましくはテトラヒドロチオフェンを用い、スルフヒドリル官能化表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の前駆体分子として、第二アミン類、好ましくは環状第二アミン類、特に好ましくはピロリジンを用い、第一アミノ基で官能化された表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の前駆体分子として、エステル類、好ましくは環状エステル類を用い、カルボキシル基で官能化された表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の前駆体分子として、第二ホスフィンを用い、第一ホスフィンで官能化された表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の前駆体分子として、セレノエーテル類を用い、セレノール基で官能化された表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の前駆体分子として、二環式オキシラン類、二環式チイラン類または二環式アザリジン類を用い、末端オキシラン類、末端チイラン類または末端アザリジン類で官能化された表面を製造する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程b)において、前記第1の前駆体分子または前記第1の物質を、それ自体非重合性のガスとの混合物として用いる請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物中における前記第1の前駆体分子または前記第1の物質のモル濃度が、20ないし80%である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記非重合性のガスとして、水素、希ガス、好ましくはアルゴン、または希ガス−水素混合物を使用する請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記工程b)で使用される第1の物質に、それ自体官能基を形成しない少なくとも1種のプラズマ重合性の第2の出発物質を追加的に混合する請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記追加の少なくとも1種のプラズマ重合性出発物質が、炭化水素類、フッ化炭化水素類、シロキサン類およびシラザン類からなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記追加の少なくとも1種のプラズマ重合性出発物質が、環化されたものであるか、および/または炭素原子間に多重結合を有する請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記工程a)において、それぞれ異なる第1の官能基を有する複数の異なる第1の前駆体分子からなる混合物を用いることを特徴とする請求項1ないし20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記工程b)におけるプラズマ反応炉中のプラズマ励起が、放電、好ましくは交流放電により生じ、交流周波数が好ましくはラジオ周波数領域であり、特には約1〜100MHzである請求項1ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記工程b)でプラズマを発生させるための出力密度が、電極の一方の単位表面あたりで計算して、0.15〜0.5W/cm2である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記工程b)のプラズマ反応炉中のガス圧が、2〜200Pa、好ましくは10〜70Paである請求項1ないし23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記工程c)に続いて、前記表面上に形成された前記第2の官能基を、第3の分子との化学反応、好ましくは湿式化学反応により、直接又は更なる中間工程を経て少なくとも1つの第3の官能基に変換する請求項1ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の官能基特にはアルデヒド基またはケト基と反応する前記第3の分子が、アミノ化合物である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項26に記載の反応により生成した化合物、すなわち生成したシッフ塩基を、化学的に還元する請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記還元を、水素化ホウ素アルカリの溶液、特にはNaBH4の溶液、特に好ましくはNaBH4のイソプロパノール溶液を用いて行う請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記シッフ塩基の生成および該塩基の化学的還元が、前記第3の分子を含む反応溶液へのNaCNBH3の添加により該溶液中で同時に生じる請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の官能基、特にはアルデヒド基もしくはケト基と、第3の分子、すなわちヒドラジンもしくはジアミン類との反応、好ましくは請求項27または29に従って生成したシッフ塩基の後のまたは同時の還元によってアミノ官能化表面が形成される請求項25または26に記載の方法。
【請求項31】
前記第3の分子として、オリゴエチレングリコールジアミン類の使用により、生化学反応に特に好適なアミノ基を有する親水性表面が形成される請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第3の分子、すなわちモノアミノ官能化ポリまたはオリゴエチレングリコールと前記第2の官能基との反応、好ましくは請求項27ないし29に従う反応生成物との後のまたは同時の還元により、ポリまたはオリゴエチレングリコール官能化表面が形成される請求項25または26に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の官能基、特にはアルデヒド基またはケト基と、第3の分子、すなわちアンモニアまたはヒドロキシアミンとの反応、好ましくは請求項27ないし29に従う反応生成物の後のまたは同時の還元により、アミノ官能化表面が形成される請求項25または26に記載の方法。
【請求項34】
前記第3の分子が、アミノ酸、ペプチドまたはタンパクであることを特徴とする請求項25ないし29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の官能基、特にはアルデヒド基および/またはケト基の酸化により、カルボキシル官能化表面が形成される請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の官能基、特にはアルデヒド基および/またはケト基の酸化により、更なる単官能性ヒドロキシル官能化表面が形成される請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記表面において、前記第2のまたは第3の官能基、特にはヒドロキシル基をシラン化合物と更に反応させる請求項1、好ましくは請求項8または36に記載の方法。
【請求項38】
請求項1ないし37のいずれか1項に記載の方法を用いて製造された少なくとも1つの界面および/または表面を有する機能要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−521945(P2008−521945A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541813(P2007−541813)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012451
【国際公開番号】WO2006/056390
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(597159765)フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー. (68)
【Fターム(参考)】