説明

プリクラッシュシステム

【課題】本発明は、想定される衝撃に対して効果的に備えることができるプリクラッシュシステムを提供する。
【解決手段】プリクラッシュシステム10は、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況のとき運転者Hが行う耐ショック姿勢に起因して自動車に作用する荷重を検出する耐ショック姿勢検出用センサ11〜14と、耐ショック姿勢検出用センサ11〜14によって検出された検出値に基づいて運転者Hが耐ショック姿勢であるか否かの判断をするとともに、乗員が耐ショック姿勢であると判断すると自動車20に搭載された安全装置24,25を作動させるコントローラ15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に衝撃が入力される可能性がある状況においてブレーキユニットなどの安全装置を作動するプリクラッシュシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の一例としての自動車には、当該自動車に衝撃が入力される可能性がある状況を判断して、自動車に搭載されているブレーキユニットなどの安全装置を作動させるプリクラッシュシステムが搭載されている。
【0003】
プリクラッシュシステムは、例えば自動車の前部に配置されるレーダーセンサなどのセンサを備えており、これらセンサによって検出されるデータに基づいて自動車に衝撃が入力される可能性がある状況を判断している。具体的には、自動車の前部に配置されたレーダーセンサによって障害物と自動車との距離を検出するなどしている。
【0004】
また、上記したように、プリクラッシュシステムは、自動車に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断すると、自動車に搭載されているブレーキユニットなどの安全装置を作動させることによって、乗員へ加わる衝撃が回避または軽減されるようにしている。
【0005】
具体的には、プリクラッシュシステムは、ブレーキユニットを作動させることによって、自動車を減速させる。また、プリクラッシュシステムは、同時にシートベルト巻き取りモータなどを作動させる。乗員は、プリクラッシュシステムによって作動される安全装置のアシストを受けながら、ブレーキペダルを踏み込んだりまたはステアリングなどを操作して、衝撃を回避もしくは軽減している。
【0006】
しかしながら、乗員によっては、衝撃が入力される可能性がある状況になると、ブレーキ操作やステアリング操作をすることなく、耐ショック姿勢をとることが考えられる。このような場合であっても、プリクラッシュシステムは、乗員の状態に関わらず、予め設定された判断基準(例えば、障害物と自車との相対速度及び位置関係の変化推移など)に従って安全装置を作動させる。
【0007】
上記のように、自動車に衝撃が入力される可能性がある状況をプリクラッシュシステムが判断する前に乗員が耐ショック姿勢をとってしまい、乗員がブレーキペダル操作やステアリング操作を適切に行わなかった場合、自動車はプリクラッシュシステムによって作動されるブレーキユニットによってのみ減速するとともにプリクラッシュシステムによって作動される他の安全装置によってのみ衝撃に備えることになる。
【0008】
このような場合では、自動車は充分に減速されなくなるとともに、乗員は充分に衝撃に備えることができなくなることが考えられる。
【0009】
このため、衝撃が入力される可能性がある状況を、レーダーセンサなどによって検出されたデータに基づいて判断するのではなく、運転者の身体反応例えば血圧や脈拍などの変化に基づいて衝撃が入力される可能性がある状況を判断することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−286264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、運転者の身体反応は、車内の環境、例えば車内の温度などに影響されることが考えられる。このため、衝撃が加わる可能性がある状況でないは場合であっても、衝撃が加わる可能性がある状況であると判断されてしまうことが考えられる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、想定される衝撃に対して効果的に備えることができるプリクラッシュシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプリクラッシュシステムは、車両に衝撃が入力される可能性がある状況のとき、乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出する耐ショック姿勢検出用センサと、前記耐ショック姿勢検出用センサによって検出された検出値に基づいて乗員が耐ショック姿勢であるか否かの判断をするとともに、乗員が耐ショック姿勢であると判断すると前記車両に搭載された安全装置を作動させる耐ショック姿勢判断用制御部と、を備える。
【0013】
または、本発明のプリクラッシュシステムは、車両と障害物との間の距離を検出するレーダーセンサと、前記レーダーセンサによって検出されたデータが予め設定された条件を満たすと、車両に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断して前記車両に搭載された安全装置を作動させる制御部と、車両に衝撃が入力される可能性がある状況のとき、乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両の所定の箇所に作用する荷重を検出する耐ショック姿勢検出用センサと、前記耐ショック姿勢検出用センサによって検出された検出値に基づいて乗員が耐ショック姿勢であるか否かを判断するとともに、前記制御部が前記安全装置を作動させる前に乗員が耐ショック姿勢であると判断すると、前記予め設定された条件による前記安全装置の作動時期よりも早い時期に前記安全装置が作動するように前記制御部を制御する耐ショック姿勢判断用制御部と、を備える。
【0014】
上記2つの形態の構成によれば、乗員の耐ショック姿勢を検出することによって、車両に衝撃が入力される可能性がある状況が、衝撃に備える乗員の反応である耐ショック姿勢に基づいて判断されるので、衝撃が入力される可能性がある状況が効果的に判断されるようになる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢判断用制御部は、乗員の耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重の変化に基づいて、乗員の耐ショック姿勢を検出する。
【0016】
乗員によっては、検出される荷重の大きさが異なることが考えら得るが、上記構成によれば、荷重の変化に基づいて耐ショック姿勢を判断するので、プリクラッシュシステムが汎用性を有するようになる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢検出用センサを複数備える。
【0018】
この構成によれば、複数の耐ショック姿勢検出用センサを用いることによって、耐ショック姿勢の判断の精度が向上する。
【0019】
上記形態のさらに好ましい形態では、前記耐ショック姿勢判断用制御部は、複数の前記耐ショック姿勢検出用センサのうち所定のセンサの検出した検出値の変化を大きくした値と当該所定の耐ショック姿勢検出用センサ以外のセンサの検出値の変化との総量が予め設定された閾値を超えると、乗員が耐ショック姿勢にあると判断する。
【0020】
この構成によれば、乗員の耐ショック姿勢に起因して特に荷重変動が大きい場所に設置される耐ショック姿勢検出用センサの検出結果を大きくするなどすることによって、乗員の耐ショック姿勢を検出しやすくなる。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両において運転席の近傍と助手席の近傍とにそれぞれ配置されて、前記運転席に座った乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出するとともに、前記助手席に座った乗員の耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出し、前記運転席の近傍に配置された耐ショック姿勢検出用センサが検出した検出値に基づく耐ショック姿勢の判断の基準は、前記助手席の近傍に配置された耐ショック姿勢検出用センサの検出値に基づく耐ショック姿勢の判断の基準よりも低い。
【0022】
この構成によれば、運転席と助手席とに着座する乗員の耐ショック姿勢を検出することによって、車両に衝撃が入力される可能性がある状況を精度良く判断することができる。さらに、運転者よりも助手席の乗員の方が比較的大きく動くことが予想されるが、運転席の近傍に設置される耐ショック姿勢検出用センサにおける耐ショック姿勢の判断基準が、運転席の近傍に設置される耐ショック姿勢検出用センサにおける耐ショック姿勢の判断基準よりも低いので、車両に衝撃が入力される可能性がない状況において助手席の乗員が大きく動いても当該動きが耐ショック姿勢であると判断されにくくなる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両に搭載されるハンドル軸に加わる荷重を検出する。
【0024】
ハンドル軸は、乗員の耐ショック姿勢に起因する荷重の変化が現れやすいので、この構成によれば、効果的に乗員の耐ショック姿勢が判断される。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両のフロアに設けられて前記乗員の踏力を検出する。
【0026】
乗員の踏力は、耐ショック姿勢に起因して変化しやすいので、この構成によれば、効果的に乗員の耐ショック姿勢が判断される。
【0027】
本発明の好ましい形態では、前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両に設けられるシートに加わる荷重を検出する。
【0028】
シートは、乗員の耐ショック姿勢に起因する荷重の変化が現れやすいので、この構成によれば、効果的に乗員の耐ショック姿勢が判断される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、想定される衝撃に対して効果的に備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の第1の実施形態に係るプリクラッシュシステムを、図1〜3を用いて説明する。図1は、本実施形態のプリクラッシュシステム10が搭載される自動車20の前部21を一部切り欠いて示す側面図である。図1に示すように、自動車20は、ハンドル装置22と、フットレスト23と、安全装置の一例としてブレーキユニット24とシートベルトユニット25と、運転席26となどを備えている。
【0031】
ハンドル装置22は、ハンドル軸22aとリム22bとを備えている。フットレスト23は、フロアパネルに設けられており、運転中などに運転席26に着座する運転者Hの足が載置される。
【0032】
自動車20は、プリクラッシュシステム10を備えている。図2は、プリクラッシュシステム10を示すブロック図である。図2に示すように、プリクラッシュシステム10は、ハンドル内蔵握力センサ11と、ハンドル軸感圧センサ12と、フットレスト踏力センサ13と、シートセンサ14と、コントローラ15と、ブレーキユニット24と、シートベルトユニット25とを備えている。
【0033】
図1に示すように、ハンドル内蔵握力センサ11は、リム22b内に内蔵されている。ハンドル内蔵握力センサ11は、圧力センサであって、乗員の一例としての運転者Hのリム22bの握りの強さを検出している。ハンドル内蔵握力センサ11は、本発明で言う耐ショック姿勢検出用センサの一例であって、後述されるコントローラ15に接続されている。ハンドル内蔵握力センサ11は、運転者Hによるリム22bの握りの強さを検出してこれをコントローラ15に送信する。
【0034】
ハンドル軸感圧センサ12は、ハンドル軸22aに設けられている。ハンドル軸感圧センサ12は、ひずみゲージであって、運転者Hよりハンドル軸22aに加わる荷重を検出している。ハンドル軸感圧センサ12は、本発明で言う耐ショック姿勢検出用センサの一例であって、後述されるコントローラ15に接続されている。ハンドル軸感圧センサ12は、ハンドル軸22aに加わる荷重を検出してこれをコントローラ15に送信する。
【0035】
フットレスト踏力センサ13は、フットレスト23に設けられている。フットレスト踏力センサ13は、圧力センサであって、フットレスト23に加わる荷重を検出している。フットレスト踏力センサ13は、本発明で言う耐ショック姿勢検出用センサの一例であって、後述されるコントローラ15に接続されている。フットレスト踏力センサ13は、運転者Hの踏力を検出してこれをコントローラ15に送信する。
【0036】
シートセンサ14は、運転席26の例えばシートバック26a内に内蔵されている。シートセンサ14は、圧力センサであって、シートバック26aに加わる荷重を検出している。シートセンサ14は、本発明で言う耐ショック姿勢検出用センサの一例であって、後述されるコントローラ15に接続されている。シートセンサ14は、運転席26に加わる荷重を検出してこれをコントローラ15に送信する。
【0037】
シートベルトユニット25は、ウェビング25aと、巻き取りモータ25bとを備えている。巻き取りモータ25bは、後述されるコントローラ15に接続されており、コントローラ15の制御によって駆動されてウェビング25aを巻き取る。
【0038】
ブレーキユニット24は、ブレーキペダル24aや自動ブレーキシステム24bとを備えている。自動ブレーキシステム24bは、ブレーキペダル24aが操作されなくても自動車20を減速するシステムである。自動ブレーキシステム24bは、後述されるコントローラ15に接続されている。自動ブレーキシステム24bは、コントローラ15の制御によって駆動される。
【0039】
エンジンECU16は、図示しないエンジンの運転状態を検出することによって、自動車20の車速を検出している。エンジンECU16は、後述されるコントローラ15に接続されており、検出した車速をコントローラ15に送信している。
【0040】
図2に示すとともに上記したように、コントローラ15は、ハンドル内蔵握力センサ11とハンドル軸感圧センサ12とフットレスト踏力センサ13とシートセンサ14とエンジンECU16とに接続されている。
【0041】
コントローラ15は、エンジンECU16が検出した車速が予め設定された値以上である場合、上記の各センサ11,12,13,14の検出結果に基づいて、運転者Hが耐ショック姿勢であるか否かを判断する。
【0042】
ここで、運転者Hの耐ショック姿勢について説明する。例えば自動車20が障害物100に衝突する可能性がある状況、具体的には、自動車20と障害物100との間の距離が短くなった場合などでは、運転者Hは、自動車20に衝撃が加わると判断すると、想定される衝撃に対して耐ショック姿勢をとる。
【0043】
耐ショック姿勢の一例としては、図1に二点鎖線で示すように、運転者Hがリム22bに倒れこむ姿勢がある。または、運転者Hがシートバック26aに向かってのけぞる姿勢がある。または、運転者Hは、フットレスト23をより一層踏み込む。または、運転者Hは、リム22bをより一層握りしめる。なお、ここで示される耐ショック姿勢は、一例である。
【0044】
上記のように、運転者Hが耐ショック姿勢を取ることによって、リム22bの握りの強さが急激に増加する。同様に、ハンドル軸22aに加わる荷重が急激に増加する。同様に、フットレスト23に加わる荷重が急激に増加する。同様に、シートバック26aに加わる荷重が急激に増加する。
【0045】
ここで、コントローラ15は、ハンドル軸感圧センサ12が検出した検出値の増加分とシートセンサ14が検出した検出値の増加分を、例えば2倍する。この点について詳細に説明する。
【0046】
運転者Hが上記のような耐ショック姿勢をとる場合、リム22bに向かって倒れこむか、もしくはシートバック26aに向かってのけぞることが比較的多い。コントローラ15は、車速が所定値以上である場合、ハンドル内蔵握力センサ11とフットレスト踏力センサ13との検出値の増加分と、ハンドル軸感圧センサ12とシートセンサ14との検出値の増加分を2倍したものと、の合計値が予め設定された閾値P1を越えたとき、運転者Hが耐ショック姿勢にあると判断する。コントローラ15は、本発明で言う耐ショック姿勢判断用制御部である。
【0047】
つまり、運転者Hが比較的取りやすい姿勢に起因する検出値の増加分、ここでは、ハンドル軸感圧センサ12の検出値の増加分とシートセンサ14の検出値の増加分とを2倍して用いることによって、効率よく運転者Hの耐ショック姿勢を検出することができるようになる。ハンドル軸感圧センサ12とシートセンサ14とは、本発明で言う所定のセンサの一例である。
【0048】
また、コントローラ15は、シートベルトユニット25に接続されている。コントローラ15は、運転者Hが耐ショック姿勢をとっていると判断すると、巻き取りモータ25bを作動させる。
【0049】
また、コントローラ15は、ブレーキユニット24に接続されている。コントローラ15は、運転者Hが耐ショック姿勢をとっていると判断すると、自動ブレーキシステム24bを作動させる。
【0050】
つぎに、自動車20の車速が予め設定された値以上であって、かつ、自動車20と障害物100との間隔が比較的狭くなった状態におけるプリクラッシュシステム10の動作を説明する。
【0051】
図3は、プリクラッシュシステム10の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、ステップST101では、エンジンECU16の検出結果に基づいて、車速が予め設定された所定速度以上であるか否かを判断する。車速が所定速度以上であるという仮定であるので、ステップST102に進む。
【0052】
ステップST102では、コントローラ15は、ハンドル内蔵握力センサ11とハンドル軸感圧センサ12とフットレスト踏力センサ13とシートセンサ14とが検出した検出値をモニターする。ついで、ステップST103に進む。
【0053】
ステップST103では、運転者Hが耐ショック姿勢をとっているか否かを判断する。なお、運転者Hが耐ショック姿勢をとったとする。この場合の耐ショック姿勢は、例えば、図1に2点鎖線で示すように、運転者Hがリム22bに倒れこむ姿勢であって、かつ、リム22bを一層強く握り締めるとともにフットレスト23を一層強く踏み込む姿勢である。それゆえ、運転者Hは、シートバック26aから離れる。それゆえ、ハンドル軸22aは、図中2点鎖線で示すようにたわむ。
【0054】
この結果、ハンドル内蔵握力センサ11が検出する検出値は、例えばT1増加する。同様に、ハンドル軸感圧センサ12が検出する検出値は、例えばT2増加する。同様に、フットレスト踏力センサ13が検出する検出値は、例えばT3増加する。なお、運転者Hは、シートバック26aから離れるので、シートセンサ14が検出する検出値の増加分は、0である。
【0055】
ついで、コントローラ15は、T1+(2×T2)+T3>P1であるか否かを判断する。T1+(2×T2)+T3>P1が成立すると、コントローラ15は、運転者Hが耐ショック姿勢にあると判断する。ついで、ステップST104に進む。
【0056】
ステップST104では、コントローラ15は、巻き取りモータ25bを作動させるとともに、自動ブレーキシステムを作動させる。この結果、自動車20は減速されるとともに、運転者Hは、運転席26に安定した姿勢で固定されるようになる。
【0057】
このように構成されるプリクラッシュシステム10は、運転者Hの耐ショック姿勢を検出することによって、自動車20に衝撃が加わる可能性がある状況であると判断する。つまり、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況が、衝突に備える乗員の反応に基づいて判断されるので、より効果的に衝撃が入力される可能性がある状況を判断することができる。それゆえ、想定される衝撃に対して効果的に備えることができる。
【0058】
また、複数の耐ショック姿勢検出用センサ、具体的にはハンドル内蔵握力センサ11とハンドル軸感圧センサ12とフットレスト踏力センサ13とシートセンサ14とを備えることによって、運転者Hの耐ショック姿勢を様々方向から判断することができるようになる。
【0059】
また、プリクラッシュシステム10は、各センサ11,12,13,14が検出した荷重の変化具体的には増加に基づいて、運転者Hの耐ショック姿勢を判断している。自動車20の通常運転時においては、運転者Hによって、各センサ11,12,13,14が検出する荷重の大きさは異なることが考えられるが、荷重の増加に基づいて耐ショック姿勢を判断することによって、プリクラッシュシステム10は、汎用性を有するようになる。
【0060】
また、比較的多いと思われる耐ショック姿勢に起因して荷重が作用するハンドル軸22aとシートバック26aとから検出される荷重の変化を2倍して用いることによって、運転者Hの耐ショック姿勢を効果的に判断することができるようになる。この点について、具体的に説明する。
【0061】
衝撃が入力される可能性がある状況以外の場合であっても、何らかの理由で運転者Hがリム22bを強く握たり、もしくはフットレスト23を強く踏み込んだりする場合が考えられる。このような場合であっても、比較的多いと思われる耐ショック姿勢に起因する荷重変化値を大きくしたものを判断に用いることによって、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況を効果的に判断することができる。
【0062】
また、耐ショック姿勢検出用センサとして、運転者Hがとると想定される耐ショック姿勢に起因する荷重の変化が現れやすい箇所、具体的にはリム22bとハンドル軸22aと、運転席26(シートバック26a)と、フットレスト23とにセンサを設けることによって、運転者Hの耐ショック姿勢を効果的に検出することができる。
【0063】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るプリクラッシュシステムを、図4〜6を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、プリクラッシュシステム10がさらにレーダーセンサ30などを備える点が、第1の実施形態と異なる。この点について具体的に説明する。
【0064】
図4は、本実施形態のプリクラッシュシステム10を備える自動車20の前部21を示す断面図である。図5は、本実施形態のプリクラッシュシステム10を示すブロック図である。図4,5に示すように、本実施形態のプリクラッシュシステム10は、さらに、レーダーセンサ30と、ECU31とを備える。
【0065】
図4に示すように、レーダーセンサ30は、自動車20の例えば前端に設置されている。レーダーセンサ30は、自動車20と障害物100との間の距離と相対速度を検出する。図5に示すように、レーダーセンサ30は、ECU31と接続されており、ECU31に検出結果を送信する。ECU31は、本発明で言う制御部である。
【0066】
ECU31は、シートベルトユニット25とブレーキユニット24とに接続されている。ECU31は、レーダーセンサ30の検出結果に基づいて、自動車20と図中2点鎖線で示される障害物100との間の距離が所定距離L1よりも小さくなると、自動車20の衝撃が入力される可能性がある状況であると判断して、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとを作動する。
【0067】
なお、本実施形態では、コントローラ15は、シートベルトユニット25とブレーキユニット24とには接続されておらず、ECU31に接続されている。コントローラ15は、衝撃が入力される可能性がある状況であるとECU31が判断する前に、運転者Hの耐ショック姿勢に基づいて自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断すると、ECU31に予め設定されている巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとの作動条件を変更する。
【0068】
具体的には、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとがより早い時期で作動するように、自動車20と障害物100との間の予め設定された所定距離をL1よりも大きいL2に変更する。このことによって、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとが通常よりも早い時期に作動開始する。
【0069】
つぎに、本実施形態のプリクラッシュシステム10の動作を説明する。図6は、プリクラッシュシステム10の動作を示すフローチャートである。図6に示すように、プリクラッシュシステム10は、ステップST101とステップST102との間に、自動車20と障害物100との間の距離と相対速度に基づいて自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況であるか否かを判断する工程を備えている。
【0070】
具体的には、ステップST101の後にステップST201に進む。ステップST201では、レーダーセンサ30の検出結果に基づいて、自動車20と障害物100との間の距離が予め設定された所定距離L1以下であるか否かが判断される。自動車20と障害物100との間の距離が予め設定された所定距離L1以下であると、ステップST202に進む。
【0071】
ステップST202では、ECU31は、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断して、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとを作動させる。
【0072】
ステップST201において、自動車20と障害物100との間の距離が予め設定された所定距離L1よりも大きい場合は、ステップST102に進む。
【0073】
また、本実施形態では、ステップST104に変えてステップST203が用いられる。ステップST203では、コントローラ15は、ECU31に予め設定されている、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとの作動開始条件である自動車20と障害物100との間の所定距離を、より大きいL2(L1<L2)に変更する。
【0074】
このように、ステップST203で、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとの作動開始条件である所定距離がL2に変更されることによって、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bが通常よりも早い時期に作動するようになる。
【0075】
本実施形態では、上記のように、レーダーセンサ30の検出結果に基づいて巻き取りモータ35bと自動ブレーキシステム24bとが作動される前であっても、運転者Hが耐ショック姿勢をとると、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bとが通常よりも早い作動するようになる。
【0076】
このため、第1の実施形態と同様に、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況を効果的に判断できるので、想定される衝撃に効果的に備えることができるようになる。さらに、自動車20がレーダーセンサ30を用いるシステムを元々備えるような場合に、当該システムを利用して運転者Hの耐ショック姿勢に基づいて安全装置を作動させるシステムを構成することができる。
【0077】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係るプリクラッシュシステムを、図7〜9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様な機能を有する構成は、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、助手席に着座する乗員の耐ショック姿勢を検出する耐ショック姿勢検出用センサが設置される点が、第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる点について具体的に説明する。
【0078】
図7は、本実施形態のプリクラッシュシステム10を備える自動車20を、一部切り欠いて示す平面図である。図8は、プリクラッシュシステム10を示すブロック図である。図7に示すように、本実施形態では、助手席50の周辺にも耐ショック姿勢検出用センサの一例として、助手席乗員用踏力センサ40と、助手席用シートセンサ41とを備えている。助手席乗員用踏力センサ40は、自動車20のフロアパネルにおいて助手席の乗員に対応する位置に設置されており、助手席に着座する乗員の踏力を検出する。助手席用シートセンサ41は、助手席50の例えばシートバック50aに設置されており助手席50に着座する乗員の荷重を検出する。
【0079】
つぎに、本実施形態のプリクラッシュシステム10の動作を説明する。図9は、プリクラッシュシステム10の動作を示すフローチャートである。図9に示すように、本実施形態では、助手席に着座する乗員の耐ショック姿勢を判断する工程を備えている。具体的には、ステップST301をさらに備えている。
【0080】
ステップST103において運転者Hが耐ショック姿勢をとっていないと判断されると、ステップST301に進む。ステップST301では、コントローラ15は、助手席乗員用踏力センサ40と助手席用シートセンサ41との検出結果に基づいて、助手席の乗員が耐ショック姿勢をとっているか否かを判断する。
【0081】
なお、助手席の乗員の耐ショック姿勢を判断する基準である、助手席乗員用踏力センサ40と助手席用シートセンサ41とが検出する荷重の変化の合計の閾値P2は、運転者H用に設定された閾値P1よりも大きく設定されている。
【0082】
助手席の乗員が耐ショック姿勢をとっていると判断されるとステップST104に進み、巻き取りモータ25bと自動ブレーキシステム24bが作動される。
【0083】
本実施形態では、第1の実施形態の効果に加えて、助手席の乗員の耐ショック姿勢を判断することによって、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況において例えば運転者Hがよそ見などすることによって耐ショック姿勢を取れなかった場合であっても、効果的に自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況を判断することができるようになるので、想定される衝撃に対して備えることができる。
【0084】
また、助手席の乗員の耐ショック姿勢を判断するための閾値P2が、閾値P1よりも大きく設定されているので、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況以外で助手席の乗員がその姿勢を動かすような場合であっても、自動車20に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断されることが少なくなる。
【0085】
つぎに、本発明の第4の実施形態に係るプリクラッシュシステムを、図10,11を用いて説明する。なお、第2,3の実施形態と同様な機能を有する構成は同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の構成は、第2の実施形態で説明された構成に、第3の実施形態で説明された助手席に着座する乗員の耐ショック姿勢を検出する耐ショック姿勢検出用センサを組み合わせた構成である。図10は、本実施形態のプリクラッシュシステム10を示すブロック図である。
【0086】
本実施形態のプリクラッシュシステム10の動作を説明する。図11は、プリクラッシュシステム10の動作を示すフローチャートである。本実施形態のプリクラッシュシステム10は、第2の実施形態で説明されたステップST103とステップST203との間に、第3の実施形態で説明されたステップST301の工程を備えている。
【0087】
ステップST103において運転者Hが耐ショック姿勢にないと判断されると、ステップST301に進む。ステップST301では、助手席乗員用踏力センサ40と助手席用シートセンサ41との検出結果より助手席の乗員が耐ショック姿勢であるか否かが判断される。助手席乗員用踏力センサ40と助手席用シートセンサ41とが検出した荷重の変化の合計がP2以上であると、助手席の乗員が耐ショック姿勢にあると判断されてステップST203に進む。
【0088】
本実施形態では、第2,3の実施形態の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプリクラッシュシステムが搭載される自動車の前部を一部切り欠いて示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態のプリクラッシュシステムを示すブロック図。
【図3】図2に示されたプリクラッシュシステムの動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るプリクラッシュシステムが搭載される自動車の前部を一部切り欠いて示す側面図。
【図5】本発明の第2の実施形態のプリクラッシュシステムを示すブロック図。
【図6】図5に示されたプリクラッシュシステムの動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の第3の実施形態のプリクラッシュシステムを備える自動車を一部切り欠いて示す平面図。
【図8】本発明の第3の実施形態のプリクラッシュシステムを示すブロック図。
【図9】図8に示されたプリクラッシュシステムの動作を示すフローチャート。
【図10】本発明の第4の実施形態のプリクラッシュシステムを示すブロック図。
【図11】図10に示されたプリクラッシュシステムの動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0090】
10…プリクラッシュシステム、11…ハンドル内蔵握力センサ(耐ショック姿勢検出用センサ)、12…ハンドル軸感圧センサ(耐ショック姿勢検出用センサ)、13…フットレスト踏力センサ(耐ショック姿勢検出用センサ)、14…シートセンサ、15…コントローラ(耐ショック姿勢判断用制御部)、20…自動車(車両)、22a…ハンドル軸、26…運転席、30…レーダーセンサ、31…ECU(制御部)、40…助手席乗員用踏力センサ(耐ショック姿勢検出用センサ)、41…助手席用シートセンサ(耐ショック姿勢検出用センサ)、50…助手席、100…障害物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に衝撃が入力される可能性がある状況のとき、乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出する耐ショック姿勢検出用センサと、
前記耐ショック姿勢検出用センサによって検出された検出値に基づいて前記乗員が耐ショック姿勢であるか否かの判断をするとともに、乗員が耐ショック姿勢であると判断すると前記車両に搭載された安全装置を作動させる耐ショック姿勢判断用制御部と
を具備することを特徴とするプリクラッシュシステム。
【請求項2】
車両と障害物との間の距離を検出するレーダーセンサと、
前記レーダーセンサによって検出されたデータが予め設定された条件を満たすと、前記車両に衝撃が入力される可能性がある状況であると判断して前記車両に搭載された安全装置を作動させる制御部と
を備えるプリクラッシュシステムであって、
車両に衝撃が入力される可能性がある状況のとき、乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両の所定の箇所に作用する荷重を検出する耐ショック姿勢検出用センサと、
前記耐ショック姿勢検出用センサによって検出された検出値に基づいて前記乗員が耐ショック姿勢であるか否かを判断するとともに、前記制御部が前記安全装置を作動させる前に前記乗員が耐ショック姿勢であると判断すると、前記予め設定された条件による前記安全装置の作動時期よりも早い時期に前記安全装置が作動するように前記制御部を制御する耐ショック姿勢判断用制御部と、
を具備することを特徴とするプリクラッシュシステム。
【請求項3】
前記耐ショック姿勢判断用制御部は、乗員の耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重の変化に基づいて、乗員の耐ショック姿勢を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項4】
前記耐ショック姿勢検出用センサを複数備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項5】
前記耐ショック姿勢判断用制御部は、複数の前記耐ショック姿勢検出用センサのうち所定のセンサの検出した検出値の変化を大きくした値と当該所定の耐ショック姿勢検出用センサ以外のセンサの検出値の変化との合計値が予め設定された閾値を超えると、前記乗員が耐ショック姿勢にあると判断することを特徴とする請求項4に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項6】
前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両において運転席の近傍と助手席の近傍とにそれぞれ配置されて、前記運転席に座った乗員が行う耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出するとともに、前記助手席に座った乗員の耐ショック姿勢に起因して前記車両に作用する荷重を検出し、
前記運転席の近傍に配置された耐ショック姿勢検出用センサが検出した検出値に基づく耐ショック姿勢の判断の基準は、前記助手席の近傍に配置された耐ショック姿勢検出用センサの検出値に基づく耐ショック姿勢の判断の基準よりも低いこと特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項7】
前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両に搭載されるハンドル軸に加わる荷重を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項8】
前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両のフロアに設けられて前記乗員の踏力を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。
【請求項9】
前記耐ショック姿勢検出用センサは、前記車両に設けられるシートに加わる荷重を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリクラッシュシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−74302(P2008−74302A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257466(P2006−257466)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】