説明

プリコート式真空濾過装置

【課題】 従来のプリコート式真空濾過装置において、異物等が混入している廃水にも対応可能であると共に、掻取り刃の摩耗が濾過面の場所にかかわらず均一に生ずることで、真空濾過装置の運転効率を向上させること。
【解決手段】 原液槽36とフィルタドラム38とスクレーパ手段46(48)とを備えたプリコート式の真空濾過装置。フィルタドラム38は、外筒部58の内側に同心的に内筒部56を配し、内筒部56と外筒部58との円環状空間を仕切り板60で等分割して複数個の濾室62を形成する。該各濾室62には仕切り板60の回転方向側内側面の付近においては回転軸を兼ねる濾過主管64より分岐される枝管66に接続する。スクレーパ手段46は、濾過面に対して前進可能なホルダ78に薄肉の掻き取り刃48を先端部側逃げ可能に弾性押圧して支持して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液槽とフィルタドラムとスクレーパ手段とを備えたプリコート式真空濾過装置及び該濾過装置を用いた廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1のフローシートに示すような、廃水に凝集剤を添加して、廃水中に含まれる固形分を結合させ、大径化した後に固液分離する廃水処理システムにおいて、連続処理の要請がある。
【0003】
この連続処理の要請に際して、プリコートをせずに直接濾布で固形成分を捕獲するドラム式真空濾過装置が多用されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、直接濾布で固形成分を捕獲するドラム式の真空濾過装置では、安定して、高清澄度の濾液(処理水)を得難いという問題点があった。
【0005】
そこで、より高清澄度の濾液を得るために、スクレーパ装置を備えたプリコート式の真空濾過装置を使用することが考えられる(特許文献2参照)。
【0006】
しかし、汎用のスクレーパ装置では、たとえば、湿式集塵機発生水におけるワークやゴミの混入など粗大な異物が混入している場合、スクレーパ装置の掻取り刃の破損やプリコート層の破損が発生する。このため、そのような異物が混入した廃水処理には適していなかった。
【0007】
そこで、特許文献2の請求の範囲に記載の下記構成の掻取り刃を使用することが考えられる。
【0008】
「プリコート濾過機の円筒面に対向して支持台に取付けられたスクレーパ装置のホルダーに0.1〜0.6mmの薄鋼板よりなる掻き取り刃を押さえ金具により弾性支持したことを特徴とするプリコート濾過機におけるケーキのスクレーパ装置。」
しかし、掻取り刃が、薄くて弾性保持されている場合、下記のような問題点が発生することが分かった。
【0009】
これは、掻取り刃によって掻き取る箇所において、ドラム上に形成された固形分(廃水中の固形物による層およびプリコート層)の含水率が、一定でない場合、掻取り刃の摩耗量に差が生じ、掻取り性能の低下を招いたり、プリコート層を破損し濾過性能の低下を生じたりする。
【0010】
なお、特許文献3に記載されたプリコート式真空濾過装置は、フィルタドラムの上方から原液を供給するトップフィード型のもので、本発明の特許性に影響を与えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公昭51−23099号公報
【特許文献2】実公昭52−37916号公報、
【特許文献3】特開平8−38818号公報
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の真空濾過装置を適用する廃水処理装置の一例を示すフローシートである。
【図2】本発明を適用するプリコート式の真空濾過装置の原理説明図である。
【図3】本発明に適用する濾室分割タイプのフィルタドラムの作用説明のための側面モデル図(A)および正面モデル図(B)である。
【図4】本発明に適用するスクレーパ装置の全体正面図(A)及び掻取り刃保持部の拡大図(B)である。
【図5】本発明に適用するフィルタドラムと原液槽底部との間にパドル(ファンタービ形)の回転攪拌翼を配した真空濾過装置の側面モデル図(A)及び正面モデル図(B)である。
【図6】同じく揺動攪拌翼を配した真空濾過装置の側面モデル図(A)及び正面モデル図(B)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記にかんがみて、従来のプリコート式真空濾過装置において、異物等が混入している廃水にも対応可能であると共に、掻取り刃が薄くても摩耗が発生しがたく、真空濾過装置の運転効率を向上させることを本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決すべく、鋭意開発に努力をした結果、特許文献2に記載のスクレーパ装置を備えたプリコート式真空濾過装置において、ドラム構成を、特許文献1に記載の下記構成とすれば、生成するケーキ含水率を安定化することができ、掻取り刃が受ける掻取り抵抗が安定して掻取り刃の摩耗量に偏りがないことを知見して、下記構成の真空濾過装置に想到した。参照のため図符号を付す。
【0015】
原液槽36とフィルタドラム38とスクレーパ手段46(48)とを備えたプリコート式の真空濾過装置において、
フィルタドラム38は、外筒部58の内側に所定隙間をおいて同心的に内筒部56を配し、内筒部56と外筒部58との円環状空間を仕切板60で等分割して複数個の濾室62を形成するとともに、該各濾室62には仕切板60の回転方向側内側面の付近においては回転軸を兼ねる濾液主管64より分岐される枝管66が接続されている構成であり、また、
スクレーパ手段46は、フィルタドラム38の濾過面に対して前進可能なホルダー78に先端肉厚1mm未満の掻き取り刃48が先端部側逃げ可能に弾性押圧されて支持されている構成である、ことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のプリコート式真空濾過装置(以下単に「真空濾過装置」という。)の一実施形態について、廃水処理装置(廃水処理システム)の真空脱水装置に適用した場合について説明する。
【0017】
図1に廃水処理装置のフローシートの一例を示す。このフローシートは、研磨廃水、酸性廃水、フレキソインキ廃水等の廃水処理を想定したものである。
【0018】
基本構成として、廃液槽12と反応槽14と脱水装置(真空濾過装置)16とを備えている。そして、反応槽14には、アルカリ液槽18と無機凝集剤槽20とが付設されている。
【0019】
本実施形態では、アルカリ液槽18には、消石灰(Ca(OH))の水分散液を貯留し、無機凝集剤槽20には、硫酸バンド(Al(SO・nHO)、PAC(Al(OH)Cl6−n)等の水分散液を貯留する。なお、それらの各槽18、20は、攪拌機22、22を備えるとともに、各槽18、20と反応槽14との間には、供給ポンプを備えた供給配管26、26Aが配されている。
【0020】
上記廃液槽12は、前記研磨廃水等を貯留し、廃液槽12と反応槽14との間には、供給ポンプを備えた廃液供給配管28が配されている。
【0021】
反応槽14は、攪拌機22Aを備えている。そして、反応槽14の底部と脱水装置16との間には、原液(フロックを含んだ廃水:スラッジ)の供給ポンプを備えた原液の供給配管31が配されている。なお、必然的ではないが、原液供給パイプ31の途中に高分子凝集剤(薬液)の供給配管30が接続されている。
【0022】
そして、廃液(例えば、研磨廃水)が供給された反応槽14では、廃液のpHをアルカリ液にてアルカリ側に調節し、廃液中の微粒子をマイナスに荷電させる。その後、無機凝集剤を供給して攪拌することにより、凝集剤中のプラスの荷電が粒子のマイナスの荷電と反応し、粒子は互いにくっつきあうことで、フロック(凝集塊)が形成される。
【0023】
そして、フロックを含んだ廃水(スラッジ)を脱水装置(真空濾過装置)16へ供給する。ここで、スラッジに高分子凝集剤を添加(供給)することにより、含まれるフロックをさらに大径化できるとともにフロック強度(耐破壊強度)を増大させることができる。
【0024】
なお、高分子凝集剤としては、上記例示の廃液の場合、アニオン系のものを使用する。アニオン系高分子凝集剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解塩等をあげることができる。
【0025】
そして、本実施形態では脱水装置16は、基本的には、図2に示すような原理を備えたプリコート式真空濾過装置を使用する。
【0026】
即ち、原液槽(濾過槽)36と、原液槽36に下側を浸漬させて配されるフィルタドラム38とを備えている。該フィルタドラム38の中心回転軸側と、真空ポンプ40を備えた気密分離槽(減圧室)42との間が濾液配管44で接続されている。
【0027】
そして、該フィルタドラム38は強制駆動により低速回転可能(例えば、0.5〜2min−1)とされ、該フィルタドラム38の回転方向に対面する側にスクレーパ手段(スクレーパ装置)の掻取り刃48が配されている。該スクレーパ手段は、掻取り刃48を所定速度で前進可能とされ、ケーキ49が付着したプリコート層50を連続的に剥離して常に新しいプリコート層50の表面を露出させる。こうして、安定した連続濾過を可能とし清澄度の高い処理水が得られるものである。なお、フィルタドラム38の外周面は、図2の部分拡大図に示す如く、例えば、金網や多孔板で形成された外筒部58の上面に濾布54を張設して形成されている。
【0028】
上記汎用のフィルタドラム38は、本実施形態では、下記構成とされている(図3参照)。
【0029】
特許文献1の第2柱から一部変更を加えて引用する。
【0030】
回転自在とするフィルタドラム38の内筒部56と外筒部58との間を仕切板60により複数個の均等な濾室62を区画形成すると共に各濾室62にはその仕切板60の回転方向内側面の付近においては回転軸を兼ねる濾液主管64より分岐された枝管66を続かせ、該フィルタドラム38をその下半部が槽内に位置するように原液槽(濾過槽)36を設置してある。
【0031】
フィルタドラム38は、外筒部58が金網で形成され、該金網にプリコート層50の支持体である濾布54が張設固定されている。フィルタドラム38の両側中央に設けられた回転軸を兼ねる濾液主管64はその中間部に駆動用のチェーンホイール68を取り付けるとともに端部は中空の回転継手を介して図示しないバキューム装置に接続させている。
【0032】
このように形成されたものは、先ず、原液槽36に所定濃度のプリコート液をプリコート槽(図示せず)から供給し、フィルタドラム38を低速回転させると同時にバキューム装置(真空ポンプ40)を駆動させる。このとき、内筒部56と外筒部58との間に仕切板60をもって区画形成されている複数個の均等な濾室62内は濾液主管から分岐された枝管66が続かせてある。
【0033】
このため、槽内に原液(プリコート液又は反応液)がない空のときは、均等に減圧されて外筒部58を通じ等量の大気を吸引するものである。
【0034】
次に、図示の如く、矢示方向に右回転する6個の濾室62よりなるフィルタドラム38の下半部を槽内に位置させて、槽内に原液(プリコート液又は反応液)を供給した場合の吸引作用は下記の如くになる。
【0035】
濾過ゾーンに相当する右下位置Aに至った濾室62はその表面に原液中の分散質を吸着させると共に濾室62中に濾液を吸引することになる。このとき、枝管66の吸引口部には未だ濾液が達しないので濾室62中に吸引された濾液は濾液主管64に送られることはない。
【0036】
こうして、フィルタドラム38が徐々に回動されて左下位置Bに至った濾室62bはその内部に吸引されている濾液が枝管66の吸引口部に達することとなるため枝管66、濾液主管64を経て濾液は徐々に吸引排出され、濾室62の外筒部58の表面には左下位置に置いて吸着されたケーキが剥離することのない程度に吸引力が働くことになる。
【0037】
次いで、左位置Cに回動されてきた濾室62においては内部の濾液が左下位置Bと同様枝管66の吸引部に達している。このため、枝管66、濾液主管64を経て濾液は更に排出され濾室62の表面上半部はこれに吸着されているケーキを介して大気と通じることとなる。このとき、枝管66の吸引口部が濾液中に位置しているため、該上半部の空気通過量は微量であり、他の濾室62に対する吸引力に悪影響を及ぼすことがない。
【0038】
更に、左上位置Dまで回動された濾室62は前記左位置Cと同様に左位置Cと左上位置Dにおいてケーキ中の水分は濾室62中に吸引されて乾燥ゾーンとしての働きをすることになる。このため、濾室62中の濾液量も減少する。
【0039】
次いで、右上位置Eまで回動された濾室62は内部の濾液が回転方向側に流動して枝管66の吸引口部は解放されて濾室62の表面より吸引する大気の量は若干増加する。このとき、濾室62の内部に残っている濾液が濾室62の表面の下方部分にある。このため、直接大気を吸引する濾室62eの表面の少なくとも他の濾室62に対する吸引力に余り悪影響を及ぼすことがなく、濾過ゾーンあたる右下位置Aや左下位置B等との真空バランスを良くしている。この右上位置Eに濾室62が回動されてきた際に、該濾室62の外周に掻取り刃48の先端を臨ませておくことにより左位置Cと左上位置Dよりなる乾燥ゾーンにおいて乾燥されたケーキが付着したプリコート層を剥離することができる。
【0040】
次いで、右位置Fまで濾室62が回動されてくると濾室62は前記右上位置Eと同様に作用する。このとき、濾室62の下方部は徐々に濾過槽中の原液に浸漬されてくることにより表面から吸引される大気量は右上位置Eにおける大気の吸引量よりもいっそう減少し、他の濾室62の吸引に対する悪影響は殆どないものとなる。
【0041】
このような過程を経てフィルタドラム38は、回動を続けることによって乾燥ゾーンである左位置Cや左上位置D或いは剥離ゾーンである右上位置E、剥離ゾーンと濾過ゾーンとの間に当たる右下位置Aや左下位置Bの真空効率は極めて高くなり、切替弁はなくても効率的な濾過作業を連続して行なうことができることとなる。
【0042】
次に、スクレーパ手段(スクレーパ装置)46の詳細について説明する(図4参照)。
【0043】
以下、特許文献2の第2〜3柱から編集上の変更を加えて以下に引用する。
【0044】
機枠72上に設けられた支持台74には、フィルタドラム38の外周面に形成されたプリコート層50に向かって移動できるスクレーパ装置46が傾斜して取り付けられている。
【0045】
スクリュー軸76が支持台に取り付けられた軸受に軸支されており、スクリュー軸76はプリコート層50に対して傾斜して取り付けられると共に該スクリュー軸76の先端にホルダー78が直角に固定されている。該ホルダー78の一端には切欠部80が設けられて該切欠部80にかみそり刃状の厚さ1mm以下(望ましくは0.1〜0.6mm)の薄鋼板よりなる掻取り刃48が載せられている。該掻取り刃48の全面はこれを押える突起部81をもつ山形状の弾性薄板よりなる押え金具82により切欠部80の面に保持される。該押え金具82は締付用ボルト84を締付けることにより掻取り刃48を押え金具82の先端部と突起部87の先端部により弾性支持して緊締しうるようになっている。なお、スクリュー軸76の雄ねじ部86は雌ネジ88を持つスリーブ90にねじ込まれている。該スリーブ90の外径部分はウォームホイール92にキー止めされている。ウォームホイール92はウォーム軸94をもつウォーム96に噛合う。ウォーム96とウォームホイール92とは軸受けと一体となったギヤーケース98内に収納されている。また、ウォーム軸94は図示されない係脱装置によりウォームホイール92に係脱自在になっている。さらに、スクリュー軸76の端部にはスクリュー軸76の前進を阻止するストッパ用カラー100が取り付けられ、スクリュー軸76に嵌められたスリーブ90にはハンドル99が取り付けられている。
【0046】
このように構成されたものは、ウォーム軸94を回転してウォーム96を回転させれば、スクリュー軸76はプリコート層50に向かってゆるやかに前進しケーキが付着したプリコート層を傾斜した掻取り刃48の刃先により薄く削りとることができる。この際、掻取り刃48の刃先部分は摩耗するが、掻取り刃48の厚さは0.1〜0.6mmと極めて薄いため、刃先部分が摩耗しても厚刃の場合に見られるような平坦部をもつ刃先になることがない。このためケーキ掻取り時に刃先に作用する摩擦抵抗は厚刃の場合より少なくてケーキ層の切削作用は余り変わらない。
【0047】
したがって、ケーキ掻取りにより露出したプリコート層には縞状の目詰まりが生ずることがなく、ホルダー78に取り付けられた掻取り刃48は長時間の使用に耐えることができる。
【0048】
また、掻取り刃48は弾性薄板よりなる押え金具82により弾性支持されている。このため、掻取り刃48は全体としてホルダー78に無理なく装着されてケーキ中に硬い塊状の異物が介在するような場合でも掻取り刃48は押え金具82の弾性作用により先端部分が微小変形して異物を乗り越え、又は掬いだすことができ、刃先はその先端部に加わる衝撃によって刃こぼれを起こすことはない。
【0049】
なお、掻取り刃48の厚さは前記の如く、0.1〜0.6mmとすることが望ましいが、掻取り刃48の材質によっては、0.05〜1mmの範囲まで可能である。
【0050】
さらに、本実施形態では、フィルタドラム38が前記の如く、吸引濾過圧を切替弁を使用せずに、安定した吸引圧で濾過可能としてあるため、プリコート層に付着するケーキの含水率が安定している。したがって、掻取り位置におけるケーキ付着プリコート層の表面強度の波打ち(変動)が小さい。このため、異物と干渉しない常態時において、掻取り刃の切削が円滑に行なわれ、また、掻取り刃の摩耗はドラムの位置に関わらず均等に生じることになり、掻き取り性能の低下やプリコート層の破損による濾過性能の低下を生じることがない。
【0051】
そして、本実施形態の更に望ましい形態は、上記構成において、原液槽36の底壁とフィルタドラム38との間に攪拌翼(攪拌手段)を配されているものとすることにある。
【0052】
この攪拌手段は、濾過槽(原液槽)36にフロックの沈降堆積を防止するために設置するものである。フロックの堆積は、濾過効率の低下を招く。
【0053】
攪拌手段としては、水平回転攪拌式(パドル式)(図5)、揺動攪拌式(揺りかご式)(図6)等が考えられる。
【0054】
水平回転攪拌式の場合は、フロックの沈降堆積を防止するには、パドル(回転翼)102の回転数を増大させる必要がある。しかし、回転数を増大させると、フロックが破壊して、フロック径が小さくなるため、フロックを捕獲するプリコート層を形成する濾過助剤の粒径を大きくできない。濾過助剤の粒径を大きくすることができれば、プリコート層の粒子間隙が大きくなって、濾過速度が増大する。ちなみに、従来の濾過助剤(例えば珪藻土)の汎用粒径は40μm程度であった。
【0055】
また、回転軸104の軸受け部を原液槽36内に設ける必要があり、液封シール構造とする必要がある。
【0056】
上記水平回転攪拌式に対して揺動攪拌式は、揺動レバーの原動軸を液外(フィルタドラムの回転軸部位)に設ける構造となる。このため、原液槽36内に軸支のためのシール構造が不要である。また、原液槽の底部に沿って、攪拌部材を緩やかに揺動させることにより、フロックを破壊せずに沈降防止が容易である。
【0057】
ここで、揺動攪拌翼の形態は、原液槽36の円弧状底部に沿って揺動する棒体、アングル体、帯板体であってもよいが、図6に示すような投影円弧状の面状枠体や面状多孔体の円弧状攪拌翼106とすることが望ましい。
【0058】
このとき、円弧状攪拌翼106と攪拌槽底面との隙間は、形成フロックの大きさによるが、例えば、1〜25mmとする。
【0059】
円弧状攪拌翼106の形態は、円弧状であれば特に限定されず、多孔板状でもよいが、一対の円弧状板の間を、等間隔で配した棒材やアングルや羽板で連結したものが、攪拌効果が得易くて望ましい。
【0060】
なお、円弧状攪拌翼106の揺動駆動は、図示しないが、原動機に連結された汎用の往復運度機構を使用して行なう。
【0061】
次に、上記攪拌装置を備えた真空濾過装置の使用態様について説明をする。
【0062】
1)プリコート操作
濾過助剤分散液を、原液槽36へポンプ供給する。なお、濾過助剤としては、特に限定されず、例えば、珪藻土やパーライト等を使用できる。
【0063】
そして、フィルタドラム38を低速回転(例えば、1min−1)させるとともに真空吸引(例えば、40kPa)し、さらに、円弧状攪拌翼106を揺動運動(往復運動)させる。このときの往復運動サイクルは、20〜50Hzとする。
【0064】
このとき、スクレーパ装置の掻取り刃48の先端は、フィルタドラム38の外周面からプリコート層50の設定厚み分を離した位置に静止させておく。
【0065】
円弧状攪拌翼106を往復揺動運動させることにより、大きな粒径の濾過助剤でも原液槽36の底部に堆積することない。また、フィルタドラム38の濾布面には、プリコート液に浸漬して入る状態で、前述の如く、高い吸引圧が作用する。このため、粒径の大きな濾過助剤を効率よくフィルタドラム38に張り付かせて、プリコート層が効率よく形成される。ここで、例えば、珪藻土の場合、40〜80μmの粒径のものを使用する。
【0066】
なお、クラック防止のために、プリコート時、清水を供給する。
【0067】
2)凝集操作
廃液は凝集反応槽14のレベル計のL位置信号を受けてH位置になるまで、廃液槽12から凝集反応槽14に供給ポンプで供給する。
【0068】
反応槽14には、同時に、消石灰等のアルカリ液が、アルカリ液槽18から反応槽14へポンプ供給する。このアルカリ液の供給は、反応槽14内の廃液が、装備されたpH計で所定のアルカリ性となるまで攪拌しながら行なう。
【0069】
同時に反応槽14に無機凝集剤液を凝集剤槽20から、装備されたpH計で所定のpH(例えば、6.5〜7.5)となるまで攪拌しながらポンプ供給する。
【0070】
凝集剤の供給を行った後、攪拌を停止し、生成フロックを反応槽14底部に沈降させてもよいが、フロックを生成させながら、連続的に真空濾過装置16の原液槽36に同時的に供給してもよい。
【0071】
3)濾過操作
原液(スラッジ)は、原液槽36に装備されたL位置の信号を受けてH位置になるまで、反応槽14から原液槽36へ供給する。
【0072】
このとき、フィルタドラム38は、各濾室62を真空吸引するとともに、低速回転させる。また、スクレーパ装置46の掻取り刃48はプリコート層50の表面位置にあり、所定速度で前進するようになっている。このときの前進速度は、0.05〜0.15mm/minとする。
【0073】
なお、アニオン系の高分子凝集剤を、原液供給配管31途中で供給することが望ましい。このため、フロックは1〜5mmまで生長する。高分子凝集剤の添加量は、例えば、凝集後のSS濃度が4000mg/Lまでの廃液に対しては、1.0〜5.0mg/Lとする。
【0074】
高分子凝集剤の添加量が過多であると、余剰の高分子凝集剤の粘性により、濾過抵抗が増大し、過少であると、高分子凝集剤による添加効果、フロックの強度増大及び濾過助剤の大径化を可能とすることが困難となる。
【0075】
そして、フロックが成長した状態でも、揺りかご式の円弧状攪拌翼106により緩やかに揺動攪拌するため、フロックが沈降することがなく、フロックが破壊されることも殆どない。このときの、往復サイクルは20〜50Hzとする。
【0076】
そして、前述の如く、各濾室62の吸引圧は濾過に十分な真空度に維持されているため、良好にフロックがプリコート層に捕獲されてケーキとなる。
【実施例】
【0077】
本発明の効果を確認するために、比較例とともに行なった実施例について説明する。
【0078】
濾過処理設定時間:8h
<実験方法>
処理対象物は、鉄系金属部品の湿式流動バレル研磨(砥材:アルミナ系)により発生したバレル研磨廃水:4m(ss濃度:1200mg)とした。
【0079】
真空濾過装置の仕様は、下記のものを使用して行なった。
【0080】
原液槽・・・幅830mm×長さ524mm×高さ426mm、底面R:558mm
フィルタドラム・・・大きさ:600Φ×300L、濾過面積:0.5m2、回転速度:1min−1
パドル式・・・2枚板翼(長さ103mm×径110mm)を回転軸に90°の角度にて交互に取り付けたもの。
【0081】
揺りかご式・・・開き角度α:60°の円弧状板を4本のアングル(40mm×40mm×5mm)で両端の中間2本で連結させたもの(長さ(円弧側投影)600mm×幅432mm)。原液槽底部との隙間:20mm
(1)廃水の前処理
1)上記研磨廃水(廃液)を反応槽14に廃液槽12からポンプにより、該研磨水がpH:9〜10になるまで、攪拌しながら、消石灰を添加する。
【0082】
2)さらに、攪拌を継続しながら、中性になるまで無機系凝集剤である硫酸バンドを添加する。
【0083】
(2)真空濾過装置の前処理
1)原液槽36に、水0.15m及び、表1に示す各粒径の濾過助剤(珪藻土:新東ブレーター株式会社製FA2000またはFA6000)を入れる(FA2000:10kg、FA6000:7kg)。
【0084】
2)フィルタドラム38を回転(1min−1)させながら、真空ポンプ40を作動させることにより(吸引圧:300mmHg:39.6kPa)、ドラム周面にプリコート層(濾過助剤層:50mm)を形成する。このとき、攪拌装置も作動させた(パドル式:39min−1、揺りかご式:30Hz)。
【0085】
(3)濾過処理
1)反応槽14で生成させたスラッジを、原液ポンプを作動させて、反応槽14から原液供給配管31を介して原液槽36へ供給する。なお、実施例3では、原液供給配管31の途中で高分子凝集剤(新東ブレーター株式会社製ハイパークリアC−30)を20g添加する。
【0086】
2)フィルタドラム38を低速回転(1min−1)させながら、真空ポンプ40を作動させること(吸引圧:300mmHg:39.6kPa)により、真空濾過を行なう。
【0087】
この際、スクレーパ送り用モータを作動させて、掻取り刃(スクレーパ)48を前進させる(送り速度:0.07mm・min−1)。同時に、パドル102又は揺動攪拌翼106を作動させる(パドル式:39min−1、揺りかご式:30Hz)。
【0088】
また、各実施例および比較例で使用した真空濾過装置は、自社製実験用装置において、フィルタドラム構造、掻取り刃板厚、攪拌手段を表1に示すものとした。
【0089】
(4)試験結果
各実施例・比較例・参照例の試験結果を表1に示す。
【表1】

【0090】
表1から、本発明の望ましい態様の各実施例は、濾過完了時間が短くて済むことが確認できた。
【0091】
なお、参照例は、攪拌手段を配しないため、本実施例では濾過できなかったが、廃液が沈降性でない場合は、実施可能である。
【符号の説明】
【0092】
12 廃液槽
14 反応槽
16 脱水装置(真空濾過装置)
36 原液槽
38 フィルタドラム
48 掻取り刃
50 プリコート層
54 濾布
56 フィルタドラムの内筒部
58 フィルタドラムの外筒部
60 濾室の仕切板
62 分割濾室
102 パドル形攪拌翼
106 円弧板状攪拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液槽とフィルタドラムとスクレーパ手段とを備えたプリコート式の真空濾過装置において、
前記フィルタドラムは、外筒部の内側に所定隙間をおいて同心的に内筒部を配し、該内筒部と前記外筒部との円環状空間を仕切り板で等分割して複数個の濾室を形成するとともに、該各濾室には前記仕切り板の回転方向側内側面の付近においては回転軸を兼ねる濾液主管より分岐される枝管が接続されている構成であり、また、
前記スクレーパ手段は、前記フィルタドラムの濾過面に対して前進可能なホルダーに先端肉厚1mm未満の掻取り刃が先端部側逃げ可能に弾性押圧されて支持されている構成である、
ことを特徴とするプリコート式真空濾過装置。
【請求項2】
前記原液槽の底壁と前記フィルタドラムとの間に攪拌翼が配されていることを特徴とする請求項1記載のプリコート式真空濾過装置。
【請求項3】
前記攪拌翼が、前記フィルタドラムと同心円状に配される揺動運動可能な円弧状翼とされ、さらに、前記原液槽の底壁上面が該円弧状翼の下面側が沿う円弧面とされていることを特徴とする請求項2記載のプリコート式真空濾過装置。
【請求項4】
前記フィルタドラムの外周面に形成されるプリコート層が平均粒子径40〜80μmの濾過助剤からなることを特徴とする請求項3記載のプリコート式真空濾過装置。
【請求項5】
廃水に薬剤を添加してフロックを形成する反応凝集装置と、該反応凝集装置からのフロック含有液をケーキと清澄水とに濾過分離する濾過分離装置とを備えた廃水処理システムにおいて、
前記濾過分離装置が請求項1、2、3又は4記載のプリコート式真空濾過装置であることを特徴とする廃水処理システム。
【請求項6】
前記反応凝集装置の反応槽から前記プリコート式真空濾過装置の原液槽への原液供給配管の途中に高分子凝集剤供給手段を備えていることを特徴とする請求項5記載の廃水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−234325(P2010−234325A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87283(P2009−87283)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】