説明

プリフォームおよびプラスチックボトル

【課題】ブロー成形後にプラスチックボトルの底部先端の肉厚を厚くすることができ、輸送時等にプラスチックボトルの底部先端が潰れる不具合を防止することが可能な、プリフォームを提供する。
【解決手段】プリフォーム10は、口部11と、内径D1をもつ胴部20と、底部30とを備えている。底部30は、その断面形状において、半径R1をもつ外面中央部35と、半径R2をもつ外面周縁部36と有する外面31と、半径R3をもつ内面中央部37と、半径R4をもつ内面周縁部38と有する内面32とを有し、(a)R2<R1、(b)D1/2<R3<R1、および(c)R4<R3という関係を満たす。底部30の形状を扁平形状としたことにより、ブロー成形後にプラスチックボトルの底部先端の肉厚を厚くすることができ、加圧しているにも関わらず輸送時や搬送時にプラスチックボトルの底部先端が潰れる不具合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル用のプリフォームおよびプラスチックボトルに係り、とりわけプラスチックボトルの底部先端の強度を高める事が可能な、プリフォーム形状に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックボトルに使用される材料を削減し、ボトルを軽量化する事が望まれている。しかしながら、プラスチックボトルを軽量化していく際、強度不足が懸念事項となっている。プラスチックボトルの強度が低下した場合、積載時の荷崩れや自動販売機の詰り、多本だしが問題となる。
【0003】
これに対して、プラスチックボトルの強度不足を補う為に、内容液の充填後に液体窒素を加え、これによりボトル内を加圧する技術が用いられている。この場合、プラスチックボトルは加圧されてその内部が陽圧となるが、このときボトルの底部が反転するおそれがある。この為、プラスチックボトルに耐圧性を付与する必要がある。一般に内部が陽圧とされる場合、ペタロイド形状の底部を有するプラスチックボトルが用いられている。
【0004】
しかしながら、ペタロイド形状の底部は凹凸が大きい為、特に軽量化を図る為にプラスチックボトルを肉薄とする場合、その脚先が過延伸により白化してしまい、ブロー成形する事が難しくなる可能性がある。また、プラスチックボトルを肉薄とする事により、ペタロイド底部先端の肉厚も薄くなる。この為加圧しているにも関わらず輸送時や搬送時にプラスチックボトルの底部先端が潰れる場合がある。潰れ等によりプラスチックボトルが傾き、結果として荷崩れが発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−540185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、プラスチックボトルを肉薄とした場合であっても、ブロー成形後にプラスチックボトルの底部先端の肉厚を厚くする事ができ、ブロー成形性の向上と、加圧しているにも関わらず輸送時や搬送時にプラスチックボトルの底部先端が潰れる不具合とを防止する事が可能な、プリフォームおよびプラスチックボトルを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラスチックボトル用のプリフォームにおいて、口部と、口部に連結され内径D1をもつ胴部と、胴部に連結された底部とを備え、底部は、その断面形状において、半径R1をもつ外面中央部と、半径R2をもつ外面周縁部と有する外面と、半径R3をもつ内面中央部と、半径R4をもつ内面周縁部と有する内面とを有し、(a)R2<R1、(b)D1/2<R3<R1、および(c)R4<R3という関係を満たす事を特徴とするプリフォームである。
【0008】
本発明は、胴部は、口部側の大径部と、底部側の小径部とを有し、小径部の外径をD2とし、大径部の外径をD3とした場合、1.20<D3/D2<2.40という関係を満たす事を特徴とするプリフォームである。
【0009】
本発明は、胴部は、口部側の大径部と、底部側の小径部と、大径部と小径部との間に設けられ大径部側から小径部側に向けて縮径する傾斜部とを有し、大径部の長さをL1とし、傾斜部の長さをL2とし、小径部の長さをL3とした場合、L1≦L2<L3という関係を満たす事を特徴とするプリフォームである。
【0010】
プリフォームを用いて作製されたプラスチックボトルであって、その底部先端肉厚が0.04mm〜0.25mmである事を特徴とするプラスチックボトルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、底部の断面形状は、半径R1をもつ外面中央部と、半径R2をもつ外面周縁部と有する外面と、半径R3をもつ内面中央部と、半径R4をもつ内面周縁部と有する内面とを有し、(a)R2<R1、(b)D1/2<R3<R1、および(c)R4<R3という関係を満たしている。このように底部の形状を扁平形状とした事により、延伸後にプラスチックボトル底部肉厚に相当するプリフォーム肉厚が厚くなる為、ブロー成形後にプラスチックボトルの底部先端の肉厚を厚くする事ができ、加圧しているにも関わらず輸送時や搬送時にプラスチックボトルの底部先端が潰れる不具合を防止する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるプリフォームを示す部分断面図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるプリフォームの底部を示す拡大断面図(図1のII部拡大図)。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態によるプリフォームにより作製されるプラスチックボトルを示す斜視図。
【図4】図4は、プリフォーム加熱する加熱装置を示す概略断面図。
【図5】図5は、プリフォームの比較例(比較例1)を示す部分断面図。
【図6】図6は、プリフォームの比較例(比較例2)を示す部分断面図。
【図7】図7(A)および(B)は、本発明の一実施の形態によるプリフォームにより作製されるプラスチックボトルの底部の別の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図4は本発明の一実施の形態を示す図である。
【0014】
まず、図1および図2により本実施の形態によるプリフォームの概要について説明する。
【0015】
図1に示すプリフォーム10は、開口部11aを有する口部11と、口部11に連結された胴部20と、胴部20に連結された底部30とを備えている。
【0016】
このうち口部11の外周には、プリフォーム10を2軸延伸ブロー成形してプラスチックボトル40(図3)を作製した後、図示しないキャップを螺合するためのねじ部16が設けられている。また、口部11の下部には、環状のサポートリング12が突設されている。
【0017】
胴部20は、口部11側の大径部21と、底部30側の小径部23と、大径部21と小径部23との間に設けられた傾斜部22とを有している。
【0018】
傾斜部22は、大径部21側から小径部23側に向けて徐々に縮径する形状からなっており、長さL2を有している。
【0019】
小径部23は円筒形状からなっており、大径部21の外径より小さい外径D2を有するとともに、長さL3を有している。また小径部23は、内径D1をもっている。なお、本明細書において、胴部20の内径とは、この小径部23における内径D1の事をいう。
【0020】
この場合、小径部23の外径D2と、大径部21の外径D3との間には、1.20<D3/D2<2.40という関係が成り立つ事が好ましく、1.30<D3/D2<1.85という関係が成り立つ事が更に好ましい。すなわち、本実施の形態におけるプリフォーム10の胴部20は、比較例として示す一般的なプリフォーム90の胴部92(図6参照)と比べて、中央側に向けてより縮径した形状からなっている。
【0021】
なお、D3/D2の値が2.40より小さいと、大径部21側から小径部23側に向けて徐々に縮径する角度が急にならない為、射出成形性が悪化したりショート等の不具合が発生したりすることを防止することができる。
【0022】
他方、D3/D2の値が1.20より大きいと、プリフォーム10を軽量化する事が容易となる。なお、大径部21に対して小径部23の直径が大きすぎる場合、ブロー成形前にプリフォーム10をヒーター52(後述する図4参照)で加熱する際、小径部23が相対的にヒーターに近づく事となる。この場合、小径部23が暖められすぎてしまうため、ブロー成形時に小径部23が延伸され易くなり、結果として、プラスチックボトル40の胴部42(図3)の肉厚が薄くなってしまう。
【0023】
さらに、大径部21の長さL1と、傾斜部22の長さL2と、小径部23の長さL3との間で、L1≦L2<L3という関係を満たすことが好ましい。大径部21の長さL1と、傾斜部22の長さL2と、小径部23の長さL3とが上記関係を満たす事により、ブロー成形性及び射出成形性が良好になる。なお、L1>L2≧L3とした場合は大径部21から小径部23にわたる樹脂体積が増える為プリフォーム10を軽量化する事が難しくなるおそれがある。
【0024】
また、図1および図2に示すように、底部30は、その断面形状において、外面31と内面32とを有している。このうち外面31は、中央側に位置する外面中央部35と、外面中央部35の周縁側に位置し、外面中央部35に連続して延びる一対の外面周縁部36とからなっている。各外面周縁部36は、小径部23の外面下端に連続している。また、内面32は、中央側に位置する内面中央部37と、内面中央部37の周縁側に位置し、内面中央部37に連続して延びる一対の内面周縁部38とからなっている。各内面周縁部38は、小径部23の内面下端に連続している。
【0025】
図2に示すように、外面中央部35、外面周縁部36、内面中央部37および内面周縁部38は、それぞれ半径R1、半径R2、半径R3および半径R4の円弧からなっている。この場合、外面中央部35の半径R1は、外面周縁部36の半径R2より大きくなっており(R2<R1)、内面中央部37の半径R3は、内面周縁部38の半径R4より大きくなっている(R4<R3)。さらに、小径部23の内径D1、内面中央部37の半径R3、および外面中央部35の半径R1は、D1/2<R3<R1という関係を満たしている。
【0026】
すなわち、底部30は、その全体が一様に湾曲しているのではなく、底部30の中央部を相対的に平坦にする一方で、底部30の周縁部を相対的に大きく湾曲させた形状からなっている(扁平となっている)。したがって、本実施の形態におけるプリフォーム10の底部30は、比較例として示す一般的なプリフォーム90の底部93(図6参照)と比べて、上方(口部11側)に引っ込んだ形状となっている。
【0027】
さらに、外面中央部35の半径R1と外面周縁部36の半径R2とは、3.0≦R1/R2≦9.0という関係を満たすことが好ましく、4.5≦R1/R2≦7.0という関係を満たすことが更に好ましい。また、内面中央部37の半径R3と、内面周縁部38の半径R4とは、3.0≦R3/R4≦9.0という関係を満たすことが好ましく、4.5≦R3/R4≦6.0という関係を満たすことが更に好ましい。
【0028】
なお、R1/R2(R3/R4)の値が上記の値より大きいと、底部30のうち外面周縁部36の部分が直角に近くなるため、プリフォーム10を射出成形により製造する際、溶融プラスチックが胴部20側に流れにくくなる。これに対して、仮に溶融プラスチックの圧力を高めた場合、この圧力によって射出成形金型のインコアが中心軸から一方向にずれる為、胴部20の肉厚が周方向均一にならないおそれがある。他方、R1/R2(R3/R4)の値が上記の値より小さいと、外面周縁部36の部分における底部30の延伸倍率が大きくなり、ボトルの底部先端(例えば図3におけるペタロイド脚45)の肉厚を厚くするという効果が得られにくい。
【0029】
なお、図1において、プリフォーム10の全長L4を35mm〜140mmとすることが好ましい。この場合、小径部23の外径D2に対する、プリフォーム10の全長L4の割合(L4/D2)は、1.5≦L4/D2≦5.5とする事が好ましい。
【0030】
プラスチックボトルの底部先端肉厚が0.04mm〜0.25mmとする事ができ、従来より軽量化する事が出来る。
【0031】
なお、プリフォーム10の主材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましく、植物由来のバイオマス系プラスチック、例えばPLA(ポリ乳酸)を用いる事も可能である。
【0032】
次に、図3により、このようなプリフォーム10を2軸延伸ブロー成形する事により作製された、プラスチックボトルの一例について説明する。なお、上述したプリフォーム10を用いて作製されるプラスチックボトルは、これに限定されないことは勿論である。これに限定されず図7(A)、(B)の様なボトルもある。
【0033】
図3において、プラスチックボトル40は、口部41と、口部41下方に設けられた円筒状の胴部42と、胴部42に連続して設けられた底部43とを備えている。また口部41と胴部42との間に首部44が設けられている。首部44と胴部42との間には、肩部48が形成されている。
【0034】
さらに口部41外周には、図示しないキャップを螺合するためのねじ部46(上述したプリフォーム10のねじ部16に対応する)が設けられ、口部41外周のうちねじ部46下方部分には、外方に突出する環状のサポートリング47(上述したプリフォーム10のサポートリング12に対応する)が形成されている。
【0035】
底部43は、いわゆるペタロイド底形状をなしている。すなわち底部43は、周方向に等間隔に配置され下方へ突出する複数個のペタロイド脚45を有している。このペタロイド脚45の個数は、プラスチックボトル40を安定して正立させるという観点、および軽量化ボトルの成形性を良好にするという観点から、5個〜9個とする事が好ましい。
【0036】
このようなプラスチックボトル40のサイズ(容量)は限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良いが、例えば500ml〜600mlとすることができる。プラスチックボトル40の肉厚は、底部43のペタロイド脚45において0.04mm〜0.25mmとする事ができ、プラスチックボトル40の軽量化を図ることができる。
【0037】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用(プラスチックボトルの製造方法)について述べる。
【0038】
まずPET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂製ペレットを図示しない射出成形機に投入し、このペレットが射出成形機によって加熱溶融および加圧される。その後ペレットは加圧された溶融プラスチックとなって、プリフォーム10に対応する内部形状を有する射出成形金型内に射出される。
【0039】
所定時間の経過後、射出成形金型内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム10が形成される。その後、射出成形金型を分離し、射出成形金型内から図1に示すプリフォーム10を取り出す。
【0040】
プリフォーム10は、次にブロー成形機内の加熱部50において加熱される(加熱工程:図4参照)。この加熱工程において、プリフォーム10は、マンドレル51によって口部11を下方に向けた状態で搬送され、中心軸を中心に回転しながら、加熱装置50のヒーター52によって周方向に均等に加熱される。なお、符号53は、ヒーター52からの熱をプリフォーム10側に反射させるための反射板、符号54は、ヒーター52からの熱を加熱装置50外方へ逃がさないようにするための遮蔽部材である。なお、上述した加熱工程は1例であり、マンドレル51やブロー成形機の構造によっては口部11は上方に向けた状態で搬送されても良い。
【0041】
この加熱工程において、プリフォーム10は加熱部50のヒーター52によって例えば80℃〜140℃の温度に加熱される。
【0042】
ところで本実施の形態において、胴部20は、大径部21と小径部23と傾斜部22とを有し、小径部23の外径D2と大径部21の外径D3との間に、1.20<D3/D2<2.40という関係が成立している。したがって、図4において、小径部23は、大径部21や傾斜部22よりヒーター52から遠い位置にあり、加熱されにくい。このため小径部23は、大径部21や傾斜部22と比べて暖められにくく、その後のブロー成形工程において延伸されにくくなっている。
【0043】
一方、加熱工程の後、加熱されたプリフォーム10は、図示しない搬送装置によって図示しないブロー成形部に送られる。
【0044】
ブロー成形部に送られたプリフォーム10は、ブロー成形部のブロー成形金型内に挿着される。その後、プリフォーム10内に挿入された延伸ロッドからプリフォーム10内へ高圧エアを供給するとともに、延伸ロッドが伸長することによってプリフォーム10を延伸させ、2軸延伸ブロー成形が行なわれる(ブロー成形工程)。このようなブロー成形によって、図3に示すプラスチックボトル40が得られる。なおこのとき、プリフォーム10の底部30のうち外面周縁部36の部分が延伸して、主としてプラスチックボトル40のペタロイド脚45となる。
【0045】
ブロー成形工程で成形されたプラスチックボトル40は、エア搬送手段またはネック搬送手段により、ブロー成形部から図示しない充填機内に搬送される。
【0046】
その後、充填機内でプラスチックボトル40内に飲料(内容物)が充填される。このようにして飲料が充填された後、プラスチックボトル40内に液体窒素等の不活性ガスが封入され、図示しないキャップによって密閉され、さらにラベル等が付される。キャップによって密閉されるまでの各工程が無菌状態である方が更に好ましい。このようにしてプラスチックボトル40と内容物とキャップとから構成される商品ボトルが製造される。
【0047】
ところで本実施の形態において、底部30の外面中央部35の半径R1、外面周縁部36の半径R2、内面中央部37の半径R3、内面周縁部38の半径R4および小径部23の内径D1は、(a)R2<R1、(b)D1/2<R3<R1、および(c)R4<R3という関係を満たしており、底部30が扁平形状となっている。このことにより、延伸後にプラスチックボトルの底部肉厚に相当するプリフォーム肉厚が厚くなる為、ブロー成形時に、外面周縁部36が外面中央部35より延伸しにくい形状となっている。したがって、ブロー成形後にプラスチックボトル40の底部43先端(すなわちペタロイド脚45の先端)の肉厚を厚くすることができ、加圧しているにも関わらず輸送時や搬送時に底部43先端が潰れる不具合を効果的に防止する事ができる。
【0048】
また本実施の形態において、上述したように、加熱部50内で、小径部23は大径部21および傾斜部22と比べてヒーター52から遠い位置にあり、大径部21および傾斜部22に比べて相対的に加熱されにくい。したがって、図5に示すブロー成形工程においては、大径部21および傾斜部22を十分に延伸する事ができ、プラスチックボトル40のうち、プラスチックボトル40全体の強度に影響が少なく、通常であれば延伸され難い肩部48を薄くする事ができる。
【0049】
他方、小径部23は、大径部21および傾斜部22に比べて加熱されない。したがって、ブロー成形工程において、小径部23の延伸量は、大径部21および傾斜部22の延伸量より抑えられる。この結果、プラスチックボトル40のうち、プラスチックボトル40全体の強度に与える影響が大きい胴部42の肉厚を重点的に厚くする事ができ、プラスチックボトル40全体の強度を保持する事ができる。
【0050】
このような作用効果は、とりわけプラスチックボトル40の肉厚を薄くして軽量化する場合(例えば500ml〜600mlのプラスチックボトル40用のプリフォーム10の重量を7g〜19gとする場合)に、顕著に得る事ができる。
【0051】
次に、本実施の形態の具体的実施例を説明する。
【0052】
まず、以下に挙げる7種類のプリフォーム(実施例1〜実施例5、および比較例1〜比較例2)を射出成形により作製した。
【0053】
(実施例1)
図1に示す本実施の形態によるプリフォーム10(実施例1)を作製した。このプリフォーム10(実施例1)において、外面中央部35の半径R1を0.83D1、R2を0.17D1、内面中央部37の半径R3を0.67D1、R4を0.17D1とした。また大径部21の外径D3の、小径部23の外径D2に対する比(D3/D2)を1.50とした。また、大径部21の長さL1と、傾斜部22の長さL2と、小径部23の長さL3との間で、L1≦L2<L3という関係を満たしている。また、プリフォーム10の重量は12gとした。
【0054】
(実施例2)
3を0.95D1としたこと、以外は実施例1と同様にして、プリフォーム10(実施例2)を作製した。
【0055】
(実施例3)
3を0.30D1としたこと、以外は実施例1と同様にして、プリフォーム10(実施例3)を作製した。
【0056】
(実施例4)
3/D2の値を1.20としたこと、以外は実施例1と同様にして、プリフォーム10(実施例4)を作製した。
【0057】
(実施例5)
3/D2の値を2.40としたこと、以外は実施例1と同様にして、プリフォーム10(実施例5)を作製した。
【0058】
(比較例1)
比較例として、図5に示すプリフォーム80(比較例1)を作製した。このプリフォーム80(比較例1)は、底部83が丸形状を有しており、その外面84および内面85がそれぞれ単一の半径の円弧から構成されていること、以外は実施例1と同様である。この場合、大径部の外径D3の、小径部の外径D2に対する比(D3/D2)を1.50である。なお図5において、符号81、82は、それぞれプリフォーム80の口部および胴部を示している。また、プリフォーム10の重量は12gとした。
【0059】
(比較例2)
比較例として、図6に示すプリフォーム90(比較例2)を作製した。このプリフォーム90(比較例2)において、底部93が丸形状を有しており、その外面94および内面95がそれぞれ単一の半径の円弧から構成されている。また、D3/D2の値は1.10であった。この場合、底部93の外面94の半径R1の、小径部23の内径D1に対する比(R1/D1)は0.56となる。なお図7において、符号91、92は、それぞれプリフォーム90の口部および胴部を示している。また、プリフォーム90の重量は24gとした。
【0060】
この結果、実施例3、5のプリフォーム10については、プリフォーム10を射出成形により作製する際、賦形性が悪化した。これに対して、射出成形時における溶融プラスチックの射出圧を強くしたところ、プリフォーム10の肉厚が周方向に偏ってしまった(偏肉という)。
【0061】
実施例3、5以外のプリフォームは、良好な射出成形性を有していた。
【0062】
その後、それぞれのプリフォーム10、80、90を加熱部50を用いて加熱し(図4参照)、次いで、加熱された各プリフォーム10、80、90をブロー成形部により2軸延伸ブロー成形することにより、図3に示すペタロイド底形状を有するプラスチックボトル40を作製した。
【0063】
この結果、実施例4のプリフォーム10、ならびに比較例1のプリフォーム80を用いて作製したプラスチックボトル40は、底部43が過延伸により白化してしまった。
【0064】
実施例1、実施例2のプリフォーム10および比較例2のプリフォーム90は、良好なブロー成形性を有していた。
【0065】
各ボトルに30℃の緑茶を充填し、ボトル内圧が80kPaになる様に液体窒素を添加し閉栓した。そのボトルを使用して積載テストを実施し荷崩れの有無を検証した。
【0066】
実施例1および比較例2のボトルは、荷崩れも無く良好であった。一方、実施例2のボトルは底部先端肉厚が0.03mmと薄肉化されていた為荷崩れが発生した。
【0067】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0068】
【表1】

【符号の説明】
【0069】
10 プリフォーム
11 口部
12 サポートリング
16 ねじ部
20 胴部
21 大径部
22 傾斜部
23 小径部
30 底部
31 外面
32 内面
35 外面中央部
36 外面周縁部
37 内面中央部
38 内面周縁部
40 プラスチックボトル
50 加熱部
80、90 プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックボトル用のプリフォームにおいて、
口部と、
口部に連結され内径D1をもつ胴部と、
胴部に連結された底部とを備え、
底部は、その断面形状において、半径R1をもつ外面中央部と、半径R2をもつ外面周縁部と有する外面と、半径R3をもつ内面中央部と、半径R4をもつ内面周縁部と有する内面とを有し、
(a)R2<R1
(b)D1/2<R3<R1、および
(c)R4<R3
という関係を満たす事を特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
胴部は、口部側の大径部と、底部側の小径部とを有し、
小径部の外径をD2とし、大径部の外径をD3とした場合、
1.20<D3/D2<2.40
という関係を満たす事を特徴とする請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
胴部は、口部側の大径部と、底部側の小径部と、大径部と小径部との間に設けられ大径部側から小径部側に向けて縮径する傾斜部とを有し、
大径部の長さをL1とし、傾斜部の長さをL2とし、小径部の長さをL3とした場合、
1≦L2<L3
という関係を満たす事を特徴とする請求項1または2記載のプリフォーム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載のプリフォームを用いて作製されたプラスチックボトルであって、その底部先端肉厚が0.04mm〜0.25mmである事を特徴とするプラスチックボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78887(P2013−78887A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219932(P2011−219932)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】