説明

プリプラ式射出装置

【課題】射出成形機の射出装置は、ペレット状の樹脂材料を可塑化する際に、該樹脂材料の熱劣化物や分解ガスの発生をより徹底して低減することを求められる。
【解決手段】本発明の射出装置は、射出装置をスクリュが後退しないプリプラ式射出装置で構成し、その可塑化シリンダの投入口中に存在する樹脂材料のレベルを低位に制御するとともに、給気手段と排気手段とによってその可塑化シリンダ中の樹脂材料に所望の飢餓率に合わせて供給量を制御したガス流体を加熱状態で通過させる。こうすることによって、その射出装置は、該樹脂材料をほぐれて緩んだ状態にするとともに樹脂材料の軟化を均等に行って、その後の可塑化における過剪断の発生を確実に防止する。そのうえ、本発明の射出装置は、特に飢餓状態を計量時間として検出してその計量時間を基準飢餓計量時間と比較判定して制御するので、連続成形中の飢餓率を所望の飢餓率に定量的に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパから供給されたペレット状の樹脂材料を可塑化シリンダの中で可塑化して、可塑化された溶融樹脂を射出シリンダから射出するプリプラ式射出装置に関し、特に、ペレット状の樹脂材料を可塑化するときに、その熱劣化を防止するとともに発生した揮発性ガス等を除去するプリプラ式射出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリプラ式射出装置1は、図1のように、プランジャ射出装置2と予備可塑化装置3とそれらを連結する連通部材4とを含む。予備可塑化装置3は、予備可塑化シリンダ31(以下、可塑化シリンダと称される。)と、図示省略されたスクリュ駆動装置によって回転駆動されるスクリュ32とを含む。可塑化シリンダ31の投入口31aは、投入管5(5a、5b)を経てホッパ6に連通する。ホッパ6には、空気輸送等の手段によって材料供給装置7からペレット状の樹脂材料8が供給される。しかして、投入口31aから供給された樹脂材料は、可塑化シリンダ31の中でバンドヒータによる加熱とスクリュ32の圧縮と回転による剪断発熱によって可塑化されて溶融する。そして、溶融した樹脂材料10がスクリュの回転によってプランジャ射出装置2に送り出される。
【0003】
プランジャ射出装置2は、射出シリンダ21の中で射出駆動装置22によって前後に駆動されるプランジャ23を含み、可塑化と同時に行われるプランジャ23の後退動作によって溶融樹脂材料9を計量し、プランジャ23の前進動作によってノズル24から射出する。射出時における、溶融樹脂10の射出シリンダ21から可塑化シリンダ31への逆流は、スクリュ32を僅かに前進させてその先端で連通部材4の連通路を塞ぐことによって防止される。したがって、スクリュ32は、可塑化の際にもっぱら回転するだけであり、この逆流を防止するときを除いて前後に移動することはない。
【0004】
このようなプリプラ式射出装置1において、特に可塑化スクリュ32は、図2に示されるような、根本から先端側に、フィードゾーン32a、コンプレッションゾーン32b、そしてメータリングゾーン32cを有する。そして、メータリングゾーン32cの溝深さがフィードゾーン32aの溝深さより浅く形成され、コンプレッションゾーン32bで溝深さが徐々に浅くなるように形成されている。それで、樹脂材料8は、フィードゾーン32aからコンプレッションゾーン32bの間でシリンダ外周のバンドヒータによって加熱されながら前方へ送られ、コンプレッションゾーン32bで圧縮されるとともに回転により混練されて剪断発熱を開始する。この剪断発熱は、樹脂材料同士、あるいはねじ溝やシリンダ内壁との間で局所的に発生する。
【0005】
この剪断発熱については、特にプリプラ式射出装置1でする剪断発熱は安定である。可塑化中にスクリュ32が後退しないので、樹脂材料の可塑化が始まるまでの、上記加熱や混練の履歴が一定であるからである。その他にも、プリプラ式射出装置1では、充填開始直後の速度圧力の制御が特に精密かつ確実にでき、その後の充填制御も精密確実にできる特徴がある。射出プランジャ23がインラインスクリュのようなチェックリングを有していないからである。
【0006】
しかしながら、このような射出装置であっても、例えば導光板やレンズ等の光学部品を成形するにはなお不十分である。この種の成形では、溶融樹脂に樹脂の炭化物や劣化変成物等のコンタミネーションの混入が全く許されないからである。また、融解する過程で発生した揮発性ガスや水蒸気も許されない。それが成形品表面の転写性を損ねたり金型表面を汚したりするからである。なお、このコンタミネーションは、成形品の中に黒点や変色物として混入する物質であり、可塑化の際にペレット状の樹脂材料がスクリュとシリンダ内壁との間で局部的に過大な圧縮力と剪断力を受けて、過剪断を生じて熱劣化あるいは変成した物質である。揮発性ガスは、樹脂材料やその改質のための添加物から発生する残留モノマーあるいは熱分解物等のアウトガスである。また、水蒸気は、樹脂材料の乾燥が不完全である場合に多く発生する。
【0007】
そこで、以下のような特許出願にその解決手段が提案されている。例えば、特許文献1(特許3905319号公報)や特許文献2(特許3701604号公報)では、樹脂材料の投入口側で樹脂材料の供給量を制限することによって、可塑化シリンダ中の投入口側の樹脂材料をぎっしり詰まっていない状態、すなわち飢餓的な状態にする射出装置が提案されている。このような射出装置によれば、樹脂材料とシリンダ内壁面との摩擦が低下して、剪断発熱の防止が図られる。また、上記特許文献1や2の射出装置には、加熱シリンダ内に負圧を発生させる負圧発生手段も用意されている。樹脂材料が飢餓的な状態になって粒間に隙間が生じたときに、空気と接触して酸化することを嫌うためである。これらの射出装置は、樹脂材料の投入口側だけで樹脂材料の供給量を制御している。また、負圧についても、投入口側で吸引するだけであり、加熱シリンダ内に流量制御しながら積極的にガスを通過させる技術思想を全く開示していない。
【0008】
なお、上記樹脂材料の供給に関連して、特許文献3(特開2006−116789号公報)には、樹脂材料の供給量の制御に関する装置が提案されている。その装置の材料供給制御は、可塑化に伴う計量の計量時間を検出して、その計量時間と目標の計量時間との差を所定範囲と判定して、その判定結果に従って樹脂材料の供給量を制御するものである。そのような装置によれば、供給量が計量時間に反映されるが、射出装置がインラインスクリュ射出装置であることから、射出の度に前後に移動するスクリュ溝の中の飢餓状態を、固定した投入口側での樹脂材料の供給制御によってのみ調整することになる。また、ガス流体が加熱シリンダ中に積極的に供給されることもない。
【0009】
上記の負圧については、窒素ガスあるいは不活性ガスなどのガス流体をシリンダ内に強制的に通過させるために負圧を作用させる射出装置が、例えば特許文献4(特開2004−050415号公報)や本願の出願人が提唱した特許文献5(特開2004−322438号公報)などで提案されている。しかしながら、これらの装置は、流体ガスの流れによって揮発性ガス等を排気することだけを目的としている。このように不活性ガスを通過させる射出装置では、温度上昇した樹脂間から排気されるガス流体の熱を有効利用することが省エネ上有効である。このため、シリンダ内に供給した樹脂材料の予熱を再利用するシステムが特許文献6(特開2001−071363号公報)に提案されている。
【0010】
【特許文献1】特許3905319号公報
【特許文献2】特許3701604号公報
【特許文献3】特開2006−116789号公報
【特許文献4】特開2004−050415号公報
【特許文献5】特開2004−322438号公報
【特許文献6】特開2001−071363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、プリプラ式射出成形機に特化している本願の出願人には、上記インラインスクリュ式射出装置での上記作用効果を万全であると認めることには抵抗を感じる。インラインスクリュ式射出装置のスクリュが計量の度に後退することから、スクリュ中の飢餓的な供給状態を全く変動しないように制御することが不完全と思われるからである。また、樹脂材料の供給量を投入口でのみ制御して飢餓状態を所望の飢餓率に制御することにも、同じくスクリュが移動することによって、同様な意味で不完全さを感じる。
【0012】
特に前者についての本願の出願人の不安は、飢餓的な状態にある領域がスクリュ後退の度にホッパ下の投入口側に移動することと、射出でスクリュが前進するときにその領域が一気に前進することとから、スクリュ溝中の飢餓的な状態の領域の飢餓状態もそれに影響されることを危惧するからである。しかも、樹脂材料がスクリュの回転によってもっぱら前に送られるだけであることから、その飢餓状態がスクリュ中で後方側に向けてスクリュの移動による影響を打ち消すように是正されることがないことである。そのうえ、スクリュの射出動作そのものが、スクリュフライトとシリンダ内壁の間、特に材料投入口の隅角との間で樹脂材料の挟み込みを発生させて、樹脂材料の剪断を皆無にすると言う意味では不安を抱かざるを得ない。また、後者についての不安は、投入口でスクリュ溝中の樹脂材料の存在量を監視して樹脂供給量を制御する場合に、特にスクリュの移動が投入口での樹脂材料の詰まり具合に変動を引き起こすことから、そのような箇所での監視自体に不確かさを禁じ得ないことである。
【0013】
なお、計量時間によって樹脂供給量を判定することについては、そのような判定自体の不完全さを否定するものではない。しかしながら、もっぱら樹脂材料を前方に送るだけのスクリュ回転だけでは、移動するスクリュ中の飢餓状態の是正ができないことと相俟って、インラインスクリュ溝中の実質的な飢餓状態の変動を完全に抑えることに不完全さを懸念するものである。
【0014】
そこで、本発明は、以上記載した不安や懸念を徹底的に解決する射出装置を提唱するものであり、その樹脂材料の飢餓的な状態、すなわち樹脂材料のほぐれて緩んだ状態を安定にかつ確実に作り出す射出装置を提案するものである。しかも、樹脂材料の均一な加熱を同時に実現して、樹脂材料表面の軟化も促進する。また、本発明は、その飢餓状態を所望の飢餓率に維持することを定量的にそして安定に制御できる射出装置を提案するものである。そのうえ、本発明は、揮発性ガスの除去問題も同時に解決する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のプリプラ式射出装置は、上記課題を解決するために、ペレット状の樹脂材料をホッパから投入管を経て可塑化シリンダの投入口に落下させ、該可塑化シリンダの中で可塑化した溶融樹脂を射出シリンダで計量して、しかる後に該溶融樹脂を該射出シリンダから射出するプリプラ式射出装置において、該樹脂材料を該ホッパへ供給量を調整して供給する材料供給装置と、該ホッパ側から該投入管側への該樹脂材料の供給量を調整するとともに該ホッパ側と該投入管側とを該樹脂材料の供給時を除いて気密に区分する切り出し供給手段と、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管の下方位置で検出する投入管レベル検出器と、該可塑化シリンダ内の該樹脂材料の可塑化が始まる領域の手前の位置に形成された給気孔にガス流体を加熱状態で供給する給気手段と、該投入口側に開口した排気口から該ガス流体を吸引する排気手段と、そして、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管レベル検出手段の検出レベルを基準に調整するとともに、該可塑化シリンダ中の該樹脂材料の粒間を通過する該ガス流体の供給量を所定量に調整する、該プリプラ式射出装置の制御装置と、を備えて、該樹脂材料を飢餓的な状態にしてから可塑化する飢餓成形を行うときには、該制御装置が、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管レベル検出手段の該下方位置の検出レベルを基準に調整するとともに、該可塑化が始まる領域の手前から該投入管までの間に存在する該樹脂材料に、所望の飢餓率に応じた該所定量の該ガス流体を通過させて、該樹脂材料をほぐれて緩んだ状態にするとともに該ガス流体によって該樹脂材料の表面を軟化させて、しかる後に可塑化を開始する装置に構成される。
【0016】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置の前記プリプラ式射出装置の制御装置は、前記投入管中の前記樹脂材料の容積を前記投入管レベル検出手段の前記下方位置の検出レベルを基準に調整した充満状態で可塑化して計量した充満計量時間の、特定の飢餓状態で飢餓成形した飢餓計量時間に対する比をその特定の飢餓率として定義した上で、該樹脂材料を所望の飢餓率にて飢餓成形をするときには、まず、該充満計量時間に該飢餓率の逆比を積算した値を該比飢餓率に対応する基準飢餓計量時間として算出し記憶して、つぎに、該飢餓率に対応した前記所定量のガス流体を前記可塑化シリンダに供給して飢餓成形を行うとともに、そのときの実飢餓計量時間を該基準飢餓計量時間と比較判定することによって、該実飢餓成形の飢餓状態を監視する制御装置であっても良い。
【0017】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置は、前記プリプラ式射出装置の制御装置が前記樹脂材料を前記所望の飢餓率にて連続して飢餓成形をするときには、連続成形中の前記実飢餓計量時間を上限値及び下限値と都度比較判定するとともに、その判定結果に応じて前記所定量の前記ガス流体の供給量を増減することによって、該飢餓率を該所望の飢餓率に維持する装置であっても良い。
【0018】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置の前記飢餓成形に移行する制御は、(a)最初に所望の飢餓率を設定し、(b)つぎに、前記ガス流体を通過させない状態で通常成形を行って、そのときの計量時間を充満計量時間として記憶し、(c)つぎに、該充満計量時間と該飢餓率とから前記基準飢餓計量時間を算出し、(d)つぎに、該所望の飢餓率に合わせた所定値に供給量を制御した前記ガス流体を前記可塑化シリンダ内に通過させながら飢餓成形を暫定的に行って、(e)そのときの飢餓計量時間を暫定飢餓計量時間として検出して該基準飢餓計量時間と比較判定して、(f)該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該基準飢餓計量時間に達しなかった場合に該ガス流体の供給量を所定量増加して該飢餓成形を再び行って、(g)やがて、該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該基準飢餓計量時間に達したときに該暫定飢餓計量時間を許容飢餓計量時間と比較判定して、(h)該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該許容飢餓計量時間を超えた場合に該ガス流体の供給量を所定量低減して該飢餓成形を再び行って、(i)やがて、該暫定飢餓計量時間の該基準飢餓計量時間との比較判定及び該暫定飢餓計量時間の該許容飢餓計量時間との比較判定が肯定されたときに、(j)該所定量のガス流体の増減調整を停止するとともに該ガス流体の供給量を現時の供給量に固定して、(k)その後、該ガス流体を該可塑化シリンダ内に通過させたままで連続飢餓成形に移行する制御であっても良い。
【0019】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置は、前記給気手段が、空気から窒素を分離してその窒素ガスを前記ガス流体として供給する窒素供給装置と、該窒素ガスを前記樹脂材料のガラス転移点温度に近い温度に加熱する加熱装置とを含むとともに、前記可塑化シリンダと前記導入管の間のベースブロックを、排気する該ガス流体を通過させる円筒空間を形成する2重筒体に構成して、該窒素供給装置から該加熱装置に該窒素ガスを送る配管を、該円筒空間に収容されたコイル状の熱交換配管に接続して、排気する該窒素ガスの熱を加熱前の該窒素ガスに熱交換するように構成されても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプリプラ式射出装置によれば、投入管中の樹脂材料の容積が該投入管レベル検出手段の低い位置の検出レベルを基準に調整された状態で、可塑化シリンダ中の、投入管の直下から可塑化が始まる領域の手前までの該樹脂材料を、ガス流体による樹脂材料の後方への押し戻そうとする作用とスクリュの回転作用とによって、互いに触れ合うか合わないかのほぐれて緩んだ状態に一旦ばらけさせて、そのような飢餓状態から圧縮を開始して可塑化を開始する。それで、ペレット同士やペレットとシリンダ内壁とが局部的に過大な圧縮圧力でこすれあうことがなくなり、結果局部的な過剪断が回避される。そのうえ、その樹脂材料粒間に加熱したガス流体を通過させて、樹脂材料表面をまんべんなく加熱して軟化させるために、過剪断の発生が防止される。以上の結果、樹脂材料の劣化の発生が徹底的に抑えられ、樹脂の加熱と揮発性ガス等の排気が確実に安定に行われる。しかも、このとき、特にガス流体が樹脂材料を後方に押し戻そうとするので、後退しないスクリュの回転作用との相乗作用によって、所望の飢餓状態は、安定かつ確実に後方側に向かって生成される。
【0021】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置の前記制御装置は、特に、前記樹脂材料を適度に充満させた状態で可塑化計量した充満計量時間の、特定の飢餓状態で可塑化計量した該基準飢餓計量時間に対する比を該特定の飢餓率として定義した上で、実際の充満計量時間と該飢餓率の逆比と積算した値を、前記比較判定のための前記基準飢餓計量時間とする。そして、飢餓成形中に検出した実飢餓計量時間を所望の飢餓率に対応した基準飢餓計量時間と比較判定して、該飢餓状態を該所望の飢餓率に維持する。それで、飢餓率をきわめて明確に定量的に把握でき、基準飢餓計量時間の算出はもちろん、実際の飢餓計量時間との比較判定もきわめて容易にする。そして、その判定結果にしたがってフィードバック制御することも容易にする。また、計量時間が上記基準飢餓計量時間も含めて定量的な数値であるから、制御項目としてだけでなく品質管理項目としても取り扱いやすいデータとなる。
【0022】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置は、所望の飢餓率で飢餓成形を連続して行うときに、実飢餓計量時間を上限値及び下限値と定量的に比較判定して、その結果に応じてガス流体の供給量を定量的に微調整するので、該飢餓率を維持する飢餓率の調整制御を速やかにかつ安定に行うことができる。しかも、ガス流体の供給量の調整は、樹脂材料のばらけた状態に速やかに反映されるだけでなく、樹脂材料の供給量の調整と違って射出量に全く悪影響を与えることはない。
【0023】
また、本発明の前記プリプラ式射出装置の前記飢餓状態に成形に移行する制御が、樹脂材料を適度に充満させた状態で可塑化計量した充満計量時間と所望の飢餓率から基準飢餓計量時間を算出し、所望の飢餓率に応じたガス流体を加熱して供給した後に暫定的な飢餓成形を所定回数行って、その暫定飢餓成形状態を暫定飢餓計量時間として検出して前記基準飢餓計量時間と比較判定して、その暫定飢餓計量時間がその基準飢餓計量時間を上回り、かつ上限許容値以下であるときに、所望の飢餓率の連続飢餓成形に移行する制御であるから、その移行制御は、その検出も判定も容易な定量的な計量時間を基準に確実にかつ速やかに行われる。そのうえ、その移行制御が樹脂材料の供給量を制御するのではなくガス流体の供給量を制御するので、調整が容易に確実にかつ速やかに反映される。
【0024】
また、本発明の給気手段が、窒素供給装置から供給された窒素ガスの温度を樹脂材料のガラス転移点温度に近い温度に加熱する加熱装置に加えて、前記投入管下のベースブロックに形成された円筒空間の中に収容されたコイル状の熱交換配管を含み、排気する該窒素ガスをその円筒空間中で通過させる。それで、排気側の窒素ガスの熱が給気側の窒素ガスに効率よく交換され、給気側の窒素ガスが速やかに昇温されて省エネ効果も向上する。また、連通管内側が加温されて樹脂材料の予備的な加熱と乾燥も促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のプリプラ式射出装置(以下射出装置1と言う。)は、主要な構成において記述した図1と同様である。そこで、同様な構成要素についてはその説明が省略されるが、特に、樹脂材料を可塑化シリンダへ供給する材料供給手段と、その樹脂材料の粒間にガス流体を通過させる給気手段と排気手段とについては、以下の説明のように構成される。
【0026】
まず、材料供給手段の主要構成要素である材料供給装置7については、ホッパ6に樹脂材料8をその供給量を調整して供給する装置であれば良く、例えば、樹脂材料を空気輸送する装置が採用される。また、投入管5については、例えば、間歇的に開閉されるシャッタ装置9を境に、2個の透明なガラス等の部材5a、5bを含むように構成され、その上側の管5aの側面にシャッタレベル検出器11aが設けられ、下側の管5bの側面に投入管レベル検出器11bが設けられる。したがって、シャッタ9上に存在する樹脂材料の容積がシャッタレベル検出器11aによって、また、投入管5b中に存在する樹脂材料の容積が投入管レベル検出器11bによって検出される。シャッタ9は、それが閉じたときにその上側のホッパ側空間とその下側の投入口側空間とを気密に区分する。
【0027】
このような構成によって、シャッタ9上の樹脂材料の存在量(樹脂量)の減少をシャッタレベル検出器11aが検出したときに、材料供給装置7がホッパ6に樹脂材料を供給してそのシャッタ上に樹脂材料を補充する。また、投入管5b中の樹脂材料の存在量(樹脂量)の減少を投入管レベル検出器11bが検出したときに、シャッタ9が開いてシャッタ上の所定量の樹脂材料を投入管5b中に補充する。それで、投入管5b中の樹脂材料8の容積が投入管レベル検出器11bの検出レベルを基準に制御されて、その樹脂材料が投入管5bの中で満杯でない状態で適度に充満する。
【0028】
すなわち、本発明では、投入管レベル検出器11bができるだけ低い位置に設けられ、シャッタレベル検出器11aのシャッタ9に対する位置も低く配置されて、投入管中の樹脂量ができるだけ少なくかつ変動が小さくなるように制御される。こうすることによって、投入口31aに溜まる樹脂材料は適度に少量が充満するだけであり、満杯になった樹脂材料が、ガス流体の、シリンダ中の樹脂材料を押し戻す作用を阻害するような事態は発生させることはない。
【0029】
なお、上記シャッタ装置9は、樹脂材料を可変に切り出す材料供給装置であればよいことから、たとえば、仕切り板で定量に区画した複数の収容空間を可変に回転して樹脂材料を供給量可変に切り出す、従来公知のロータリフィーダなどで構成されても良い。その場合、区画された空間が定量であることから、シャッタレベル検出器11aに相当する装置は不要である。
【0030】
一方、ガス流体の給気手段110及び排気手段120は、つぎのように構成される。まず、給気手段110については、図1及び図2のように、可塑化シリンダ31側面に加熱ガス流体を供給するための給気孔31bが形成される。その給気孔の位置は、既述したように可塑化スクリュ32のフィードゾーン32aの投入口31a側から略1/2ないし1/3の長さの位置に対応し、樹脂材料8の可塑化が始まる領域の手前の、該樹脂材料のガラス転移点温度に加熱されつつある位置に相当する。そして、その給気孔31bに加熱ガス流体の給気手段110が接続される。
【0031】
排気手段120については、図1のように、投入管5bを支持するベースブロック12の内孔に開口してガス流体を吸引して排気する排気口12aが形成される。その排気口は、好ましくは投入管レベル検出器より下の位置で開口して、ガス流体を外部へ排気する排気手段120に連通する。ここで、開口位置が投入管5bより下位にあるのは、ガラス製の投入管5bに揮発性ガス等がヤニ状に付着するのを回避するためである。したがって、排気口12aは、通常樹脂材料の存在する領域に開口することから、樹脂の進入を防ぐためのそらせた狭い隙間として形成される。
【0032】
より具体的には、給気手段110は図3のように構成される。まず、ガス流体には、連続供給するために窒素ガスが使用される。このため、空気から窒素だけを通過させる分離膜を内蔵するガス発生装置111が採用される。つぎに、ガス流体の供給量を制御する流量制御装置112が用意される。その流量制御装置112は、例えば、空圧機器等で使用される流量制御弁である。そのつぎに、供給するガス流体の加熱又は非加熱のいずれかを選択するための三方向切換弁113が設けられる。ちなみに、非加熱側の配管ライン114は、成形運転を中断したときにガス流体の加熱を停止して冷気のみを送るために用意される。つぎに、加熱側の配管ライン115にガス流体を加熱する加熱装置116が用意される。この加熱装置は、ガス流体の温度をできるだけその樹脂材料のガラス転移点の温度近くに加熱制御するものである。このような加熱装置116は、可塑化シリンダ31の給気孔31bに給気配管117によって連通し、できるだけ給気孔31bに近い位置に配置される。
【0033】
また、排気手段120は、ベースブロック12の排気口12aからガス流体を吸引するガス吸引装置121を主要な構成要素として含む。その吸引装置121は、望ましくは真空度も調整可能な真空ポンプであり、流量制御装置112と協働してガス流体の供給量を調整する。また、排気手段120には、例えば集塵機122を含み、その装置によって吸引ガス中のペレット粉などのダストが除去される。また、排気手段120は、図示省略された湿式の廃ガス除去装置を含み、有害ガスを除去する。それらの装置は、ベースブロック12の内孔を外部に連通させる外部配管口12bに接続された排気配管123の途中に直列に配設される。
【0034】
なお、ガス流体が確実に可塑化シリンダ内を通過するように、給気手段110に加圧する装置、例えばポンプ(図示省略)を追加しても良い。また、可塑化シリンダ31の後端からの吸引を防止するために、例えば、グランドパッキン(図示省略)を着脱自在に装着しても良い。このグランドパッキンを含むシール機構は、ポンプ軸心周りでの流体の洩れを防ぐ従来公知の機構と同じで良いが、フライトを有するスクリュ交換のために、例えば、パッキン押さえが半割に構成される。
【0035】
射出装置1の動作全体を司る射出装置の制御装置(図示省略)は、当然ながら、公知のリニアスケール等の位置検出手段(図示省略)によって検出されたプランジャ23の位置から計量の開始と終了を検出して計量時間をカウントする。そして、その制御装置はその計量時間を格納している基準の計量時間データと比較判定して、後続する可塑化制御を調整する。
【0036】
以上説明したプリプラ式射出装置1は、通常の成形の他につぎのような飢餓成形を行う。すなわち、その飢餓成形は、スクリュ溝中の樹脂材料を、フィードゾーンではぎっしり詰まっていない状態、すなわち、樹脂同士が触れ合うか合わないかのほぐれて緩んだ状態に一旦ばらけさせて、つぎのコンプレッションゾーンでその状態から圧縮を開始して可塑化を開始するものである。この状態は、樹脂材料をスクリュで撹拌させた状態で樹脂材料間に流体ガスを通過させることによって作り出した飢餓状態であり、樹脂同士が強くこすれあうときに相互に逃げうる状態である。したがって、この飢餓状態は、後に説明されるように、樹脂材料の供給量のみを制御することによって作り出された、従来の飢餓状態ではない。そのうえで、その飢餓成形は、その飢餓状態にある樹脂材料の間に加熱したガス流体を通過させて、材料間に発生している水蒸気や揮発ガスを除去するとともに材料表面を均等に軟化する。
【0037】
より具体的には、スクリュ32の溝中のペレット材料は、フィードゾーン32aでのスクリュ32の回転作用とガス流体による後方への押し流し作用の相乗作用によって、各ペレット材料がほぐれるとともに軟化して、その状態で後続するコンプレッションゾーン32bに送られる。そして、そのコンプレッションゾーン32bでその状態から圧縮されて可塑化し始める。このとき、スクリュ32が後退しないことが、そのほぐれた状態を投入口31a側へ向けて積極的に作り出すとともにそのほぐれた状態を安定にする。
【0038】
このような飢餓状態からする可塑化では、コンプレッションゾーン32bで樹脂材料とシリンダ内壁、あるいはその材料同士がこすれあうときに、ほぐれた状態が樹脂材料相互の移動を可能にして、それらの間で局部的に過大に圧縮しあうことがなくなる。しかも、樹脂材料の表面が加熱ガス流体によってまんべんなく軟化しているので、接触箇所に過大な圧縮応力が発生することもない。しかして、その安定した飢餓状態と均一な軟化状態の相乗作用によって樹脂材料の過剪断が効果的に安定に回避されて、樹脂材料の劣化が従来以上に徹底的に抑えられる。
【0039】
なお、上記のような飢餓状態にしてからする可塑化では、樹脂材料の剪断発熱作用が低下して計量時間が伸びることになるが、その遅れは可塑化シリンダ中の飢餓の状態をよく反映する。そこで、本発明では、その計量時間が判定の基準として採用される。すなわち、本発明の射出装置の制御装置は、飢餓状態にした後でする可塑化計量の計量時間をその飢餓状態を表す計量時間として検出して、その計量時間を所望の飢餓率の可塑化状態で出現する基準飢餓計量時間と比較することによって現時の飢餓状態を判定するのである。そして、その後の飢餓成形でも同様な判定を繰り返して、飢餓状態がその所望の飢餓率に維持されているかを確認するのである。そして、より好ましくは、飢餓状態をその所望の飢餓率に維持するために供給しているガス流体の供給量をフィードバック制御するのである。このように、飢餓的な可塑化状態を計量時間によって定量的に比較判定することによって、その比較判定はもちろん、それに関係するフィードバック制御も以下のように明確な定量的な制御が可能になって、制御を容易にかつ安定に行うことができる。
【0040】
特に本発明では、その比較判定に使用される飢餓率が、適度に充満した状態で可塑化したときの計量時間と飢餓状態で可塑化したときの計量時間の比、すなわち充満計量時間と飢餓計量時間の比αで定義される。ここで、適度に充満した状態とは、既述したような、投入管5b中の樹脂材料8の容積が低い位置にある投入管レベル検出器11bの検出レベルを基準に制御されて投入管5bが樹脂材料で満杯に充満することがないように制御された状態である。この場合、飢餓状態から始めた可塑化の計量時間が上記したような適度の充満状態から始めた可塑化の計量時間より長いので、飢餓率は1以下の小さい数量、例えば0.9や0.8等となる。そこで、飢餓率αは、実際には%表示されて、例えば90%や80%等となる。そして、80%の飢餓率と90%の飢餓率とでは、前者の飢餓率が後者のそれより大きいと表現される。このような定義によって、飢餓率は、検出も算出も容易な、かつ取り扱いやすい数量として定量的に把握される。
【0041】
上記のような飢餓状態から可塑化して射出する制御、すなわち飢餓成形は、図4で示されるようなフローチャートに従って制御される。なお、そのフローチャートは、新規に飢餓率を設定してその飢餓状態に移行する制御を含むフィードバック制御である。当然ながら、そのフローチャートは、ある程度の予備的な成形が先に終了して、成形に最適な飢餓率も他の成形条件とともに既に求められているものに単純化されている。成形条件は、好ましくは、成形材料又は成形品形状の類型、要求精度等に合わせたデータとして予め射出装置の制御装置に格納されており、飢餓率もその成形条件の一項目として選択されるものである。このような射出装置1で先にテスト成形して最適な飢餓率を決めるとき、その飢餓状態に可塑化を実行する過程で当然このフローチャートを実施することになる。
【0042】
フローチャートの開始前に、投入口31a内に存在する樹脂材料の量は、既述したような、投入管レベル検出器11bの下方位置を基準に制御されて、投入管5b下方の少ない量に抑えられている。この樹脂量の制御は、既述したように、ガス流体の、シリンダ中の樹脂材料を緩めてほぐす作用を阻害しないようにするためである。このとき、特にスクリュが移動しないことも、その作用を安定にしている。
【0043】
この状態で、まず、射出装置の制御装置に所望の飢餓率αが制御装置の設定画面(図示省略)に設定されて(S01)、その飢餓率での飢餓成形に移行する制御が開始される。すると、制御装置は、上記の充満状態で所定回数の準備成形を行い(S02)、その状態で可塑化したときの計量時間を平均してその計量時間を充満計量時間T1として記憶する(S03)。そして、制御装置は、前記飢餓率と前記充満計量時間とから基準飢餓計量時間を算出して記憶する(S04)。ここで算出される基準飢餓計量時間は、既述した上記飢餓率の定義に従って(T1/α)として算出されたものである。
【0044】
つぎに、制御装置は、所望の飢餓率の飢餓成形に移行する制御を開始するが、その前に飢餓率に応じた所定量のガス流体の供給を開始する(S05)。この所定量は、原則的に一定量として設定されるものであり、第一には飢餓率に相関する数量であり、第二には樹脂材料の材質(成形材料の物性)に、また、より好ましくは成形品形状の類型や品質要求度の程度に相関する量である。そして、その量は、成形条件データ中の1条件として予め制御装置に格納された条件表の中から選定されるものであると良い。実際、その所定量は、樹脂材料の上記コンタミネーションやアウトガス等の発生しやすさやそれが嫌われる程度に関係し、その程度が大きい場合により大きく設定される。
【0045】
つぎに、制御装置は、その所定量のガス流体を可塑化シリンダの中に常時通過させたままで可塑化を開始して、飢餓成形を暫定的に行う(S06)。このとき、スクリュ溝中に存在する樹脂材料がガス流体の通過とスクリュの回転によって投入口31a側に押し流されて、樹脂材料のぎっしり詰まった状態がほぐれ始める。そして、その状態で飢餓成形が所定回数行われ(S07)、最終回での可塑化に伴う計量時間が暫定飢餓計量時間T2として制御装置で記憶される(S08)。なお、ここでの所定回数は、上記と同様に、第一には飢餓率に相関する数量であり、第二には樹脂材料の材質(成形材料の物性)に、また、より好ましくは成形品形状の類型や品質要求度の程度に相関する量である。また、可塑化シリンダ中に存在し得る樹脂容積の、射出で可塑化する1回当たりの容積に対する比を基準に選定される数量であっても良い。
【0046】
つぎに、その暫定飢餓計量時間T2が目標の基準飢餓計量時間と比較される(S09)。その判定は、暫定飢餓計量時間T2と基準飢餓計量時間の比較である。通常、所定量のガス流体の供給量が予め用意されたデータテーブルから飢餓率に合わせて選定されるので、多くの場合、所定回数の飢餓成形の後の暫定飢餓計量時間T2が基準計量時間を超える。しかし、そう判定されない場合もある。
【0047】
その場合、ガス流体の供給量が所定量(あるいは所定割合)だけ増加されてから(S10)飢餓成形が暫定的に所定回数行われる(S11、S12)。飢餓の程度をさらに促進させるためである。そして、最終回での可塑化に伴う計量時間が暫定飢餓計量時間T2として制御装置で更新される(S13)。なお、このステップS12でカウントされる所定回数は上記のステップS07での回数より少ない。また、ステップS10でガス流体の供給量を増加する所定量(あるいは所定割合)も上記ステップS05における所定量より十分に小さく、数%の増加量である。この制御が所望の飢餓率にある程度近づいた後の制御であることから、それらの条件を大きくする必要がないからである。それらを逆に大きくすると、反って発散して収束しなくなる。
【0048】
このような成形の繰り返しによって飢餓状態が進行して、やがて所望の飢餓状態に到達してこの判定が肯定される(S09)。すなわち、そのほぐれた領域がフィードゾーン全体に進行して、可塑化が始まる直前までのすべての領域が所望の飢餓率以上のほぐれた状態になる。
【0049】
すると、つぎに、上限値としての許容飢餓計量時間を超えないかが判定される(S14)。この許容飢餓計量時間は、制御の行き過ぎを是正するものであり、上記のステップS09の基準飢餓計量時間を所定量上回る量として設定される。この所定量上回る量も、上記基準飢餓計量時間と同様に、第一には飢餓率に相関し、また第二には樹脂材料の材質(成形材料の物性)に、そして、より好ましくは成形品形状の類型や品質要求度の程度に相関する量であり、制御装置中の条件表の中から選定されるものであるが、簡易には、上記飢餓率に対応した基準飢餓計量時間とだけ組になったデータテーブルから選定されるものであっても良い。したがって、この所定量上回る量は、飢餓率が大きい場合に大きく設定されるが、飢餓率をより厳密に制御する場合において、オペレータによって別途に小さく設定できるものであっても良い。
【0050】
通常、ステップS09と同様に、このステップS14でも暫定飢餓計量時間T2が許容飢餓計量時間を超えることはあまりなく、飢餓状態がそのまま所望の飢餓率に落ち着くことが多い。しかしながら、その許容飢餓計量時間を超える場合も想定しておく必要がある。その場合、上記ステップS10からS13と類似した、ステップS15からS18の制御が行われる。これらの制御で異なるのは、ステップS15でガス流体の供給量が低減されることだけである。これらの制御での所定回数やガス流体供給量の所定量からの低減量も上記ステップS10ないしS13と同じく小さい量である。一旦所望の飢餓率に到達した後の制御であることからである。
【0051】
このような成形の繰り返しによって逆に飢餓状態が低減され、行き過ぎた飢餓率の状態が所望の飢餓状態に戻ってこの判定が肯定される(S14)。すると、制御装置は、飢餓率が所望の飢餓状態に収束したと判断して、後続する成形サイクルのためのガス流体の供給量をその時点の供給量に固定して(S19)、その後の連続飢餓成形を開始する(S20)。このとき供給される樹脂材料の量は、特に減量されることはなく、投入口31aに既述されたように過不足なく適度に存在するだけである。
【0052】
以上のようにして所望の飢餓率の飢餓成形に移行する場合には、その移行制御が、その検出も処理も容易な定量的な計量時間を基準にして行われる。そして、それらの計量時間のデータは、予め求められて制御装置に格納されて選択可能に用意しておくこともできる。それで、飢餓状態に成形に移行する制御が熟練した技術なしでも確実にかつ速やかに行われる。
【0053】
なお、上記ステップS05で供給されるガス流体の所定量は原則的に一定であるが、つぎのように段階的に漸増する量であっても良い。すなわち、その所定量は、最終的には既述の一定量になるが、段階的に増加するように変化するものであっても良い。それは、例えば5段階に分割されて、最初にその所定量の40%が供給され、つぎに30%が追加され、そして、20%、10%、5%と、追加量が一次関数的に変更されながら追加されるものである。また、最初に40%、つぎに20%追加、つぎに14.1%、つぎに1.19%、そして、1.09%と追加分が累乗根的に変更されながら追加されるものであっても良い。このように段階的に増加するように設定することによって、目標の飢餓状態に反って速やかにかつ安定に収束する場合もあるからである。
【0054】
この場合、最終的に増加した所定量は、上記ステップS05で供給されるガス流体の所定量に等しくなる。また、各段階での所定量も、所望の飢餓率に到達するまでの成形回数が必要以上に増加しないように、最終の飢餓率の大きさに比例する大きさに設定される。そして、上記段階数に等しい所定回数の成形が繰り返されて最終回の暫定飢餓計量時間T2が記憶される。この段階数は、上記5段階に限るものではなく、成形条件によって異なるように設定される。また、各段階を複数回ずつ繰り返して、より確実に所望の飢餓率に到達するようにしても良い。投入されてから可塑化されるまでのシリンダ中を移動する樹脂材料の容積が複数のショット分を含むからである。
【0055】
また、上記ステップS14からS18は、実際には省略されても良い。多くの場合、ガス流体の所定量が適切に設定されればステップS13での判定が肯定され、そのままステップS14での判定も肯定されるからである。そのうえで、つぎに説明される連続飢餓成形で飢餓率の調整制御を行えば、その連続成形において飢餓状態をその所望の飢餓率に維持することは容易である。
【0056】
後続する連続飢餓成形では、通常多くの場合にその連続成形がその飢餓率でそのまま継続される。一旦調整された後の飢餓成形では、投入口31aでの樹脂量の制御、移動しないスクリュの回転制御、そして所定温度、所定供給量のガス流体の供給制御が相乗的に作用して、その飢餓率が安定に維持されるからである。
【0057】
しかしながら、その飢餓率が変動する場合に備えることも現実には必要である。そこで、その連続成形では、好ましくは、図5のフローチャートのような飢餓率調整制御が行われる。すなわち、その連続成形は、連続飢餓成形中に実飢餓計量時間T3を都度算出し(S21、S22)、その計量時間T3を下限値又は上限値と比較して判定を行い(S23、S24)、そのような成形を予定した成形回数に到達するまで続けるものである(S25)。そして、その実飢餓計量時間T3が下限値を下回った場合には、ガス流体の供給量が所定量増加されて樹脂材料のほぐれた状態が増強される一方(S26)、その実飢餓計量時間T3が上限値を上回った場合にガス流体の供給量が所定量低減されて樹脂材料のほぐれた状態が低減される(S27)。
【0058】
このようなフィードバック制御は、実際には、飢餓率が経時的に一方向に外れて行く現象を防止する。このとき、飢餓率の調整制御は、樹脂材料の増減でなくガス流体の供給量の増減によって行われる。それで、樹脂材料のほぐれた状態を後方側に進展させて積極的にかつ速やかに調整することができ、結果、飢餓率を速やかに確実に微調整することができる。しかも、成形の基本量である射出量に悪影響を与えることなく調整できる。このような制御は、従来のように樹脂材料の供給量を投入口側だけで調整する場合に、かつスクリュが後退する場合にはここまで徹底できない制御である。
【0059】
なお、この連続運転中の飢餓率の調整制御は、飢餓状態が一旦所望の飢餓率に達した後の制御であることから、1回の供給量の調整に対して複数回分可塑化を繰り返して判定するものとする。このことは、投入後可塑化開始前の樹脂材料がシリンダ中に数サイクル分存在するためである。したがって、上記の速やかに微調整と言う表現が、1回の調整で飢餓率を調整できるということを意味するわけではないが、プリプラ式射出装置のスクリュが移動しないこと等により、また、スクリュ自体が比較的短いことと相俟って、その微調整は充分に速やかと言えるものである。
【0060】
また、上記連続成形中における微調整のために増減するガス供給量の所定量は、飢餓率調整用の供給量として別途に設定されるが、既述した所定量のデータテーブルと同様に予め用意された選択可能なデータであっても良い。そして、飢餓計量時間の上限値と下限値も基準飢餓計量時間に対して近い値に設定されて、比較的狭い範囲にて厳格に飢餓状態の調整が行えるようにしても良い。また、このときの飢餓率の変動が従来通りに品質管理データとして残されるので、その計量時間データは品質管理上の取り扱いやすい定量的なデータとして利用できる。
【0061】
以上のプリプラ射出装置において、特に、給気手段110は、窒素供給装置111から加熱装置116にガス流体を送る配管の途中を熱交換器の中に通すことが好ましい。そこで、例えば図3のように、三方弁113から加熱装置116に向かう配管115の一部を熱交換器として構成する。この場合、利用する熱交換する熱源は、ペレット状樹脂材料の粒間を通過してきた高温のガス流体の熱であり、既述した排気口12aから排気される流体ガスの熱である。そのため、図3のように、投入管5(図示省略)を取り付けるベースブロック12が2重筒体に構成されるとともにそれらの間に円筒空間12cが形成される。そして、その円筒空間12cの中にコイル状の熱交換配管115aが内蔵され、その熱交換配管115aが上記配管115に連通するように構成される。円筒空間12cは、内側で排気口12aを介して投入口31a側に連通し、外側で外部配管口12bから排気配管123に連通するように構成される。このような構成によって、コイル状の熱交換配管115aが熱交換器として構成される。このような実施形態でも、投入口31a側に向かって開口する排気口12aは、通常樹脂材料の存在する領域に開口する。それで、排気口12aが既述されたようにそらせた狭い隙間として形成されて樹脂の進入が防がれる。
【0062】
このような構成によって、排気側の高温のガス流体がその排気口12aから円筒空間12c、そして外部配管口12bへと流れる一方、供給側のガス流体が熱交換コイル117aを流れる。それで、排気側のガス流体の熱が供給側のガス流体に吸収されて、給気側のガス流体が加熱装置116で加熱される前に予備加熱される。このような構成によって、加熱の熱効率が上昇することはもちろんベースブロック12内の温度も上昇して、樹脂材料の予備的な加熱と乾燥も促進される。そのうえ、樹脂材料の加熱をできるだけ可塑化直前に行うべきと言う原則も守られる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のプリプラ式射出装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明のプリプラ式射出装置の可塑化シリンダに形成された材料投入口と、可塑化スクリュのスクリュ溝深さとの位置関係を示す断面図である。
【図3】本発明の可塑化シリンダにガス流体を通過させる給気手段と排気手段、該可塑化シリンダの給気孔、及び投入管側の排気口を示す概略構成図である。
【図4】本発明の連続飢餓成形に移行する制御のフローチャート図である。
【図5】本発明の連続飢餓成形における飢餓率調整制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0064】
1 プリプラ式射出装置
5 投入管
6 ホッパ
7 材料供給装置
8 樹脂材料
9 溶融樹脂
10 切り出し供給手段(シャッタ装置)
11b 投入管レベル検出器
12 ベースブロック
12a 排気口
12c 円筒空間
21 射出シリンダ
31 可塑化シリンダ
31a 投入口
31b 給気孔
110 給気手段
111 窒素供給装置
112 流量制御装置
115a 熱交換配管
116 加熱装置
120 排気手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状の樹脂材料をホッパから投入管を経て可塑化シリンダの投入口に落下させ、該可塑化シリンダの中で可塑化した溶融樹脂を射出シリンダで計量して、しかる後に該溶融樹脂を該射出シリンダから射出するプリプラ式射出装置において、該樹脂材料を該ホッパへ供給量を調整して供給する材料供給装置と、該ホッパ側から該投入管側への該樹脂材料の供給量を調整するとともに該ホッパ側と該投入管側とを該樹脂材料の供給時を除いて気密に区分する切り出し供給手段と、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管の下方位置で検出する投入管レベル検出器と、該可塑化シリンダ内の該樹脂材料の可塑化が始まる領域の手前の位置に形成された給気孔にガス流体を加熱状態で供給する給気手段と、該投入口側に開口した排気口から該ガス流体を吸引する排気手段と、そして、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管レベル検出手段の検出レベルを基準に調整するとともに、該可塑化シリンダ中の該樹脂材料の粒間を通過する該ガス流体の供給量を所定量に調整する、該プリプラ式射出装置の制御装置と、を備えて、該樹脂材料を飢餓的な状態にしてから可塑化する飢餓成形を行うときには、該制御装置が、該投入管中の該樹脂材料の容積を該投入管レベル検出手段の該下方位置の検出レベルを基準に調整するとともに、該可塑化が始まる領域の手前から該投入管までの間に存在する該樹脂材料に、所望の飢餓率に応じた該所定量の該ガス流体を通過させて、該樹脂材料をほぐれて緩んだ状態にするとともに該ガス流体によって該樹脂材料の表面を軟化させて、しかる後に可塑化を開始することを特徴とするプリプラ式射出装置。
【請求項2】
前記プリプラ式射出装置の制御装置は、前記投入管中の前記樹脂材料の容積を前記投入管レベル検出手段の前記下方位置の検出レベルを基準に調整した充満状態で可塑化して計量した充満計量時間の、特定の飢餓状態で飢餓成形した飢餓計量時間に対する比をその特定の飢餓率として定義した上で、該樹脂材料を所望の飢餓率にて飢餓成形をするときには、まず、該充満計量時間に該飢餓率の逆比を積算した値を該比飢餓率に対応する基準飢餓計量時間として算出し記憶して、つぎに、該飢餓率に対応した前記所定量のガス流体を前記可塑化シリンダに供給して飢餓成形を行うとともに、そのときの実飢餓計量時間を該基準飢餓計量時間と比較判定することによって、該実飢餓成形の飢餓状態を監視することを特徴とする請求項1記載のプリプラ式射出装置。
【請求項3】
前記プリプラ式射出装置の制御装置が前記樹脂材料を前記所望の飢餓率にて連続して飢餓成形をするときには、連続成形中の前記実飢餓計量時間を上限値及び下限値と都度比較判定するとともに、その判定結果に応じて前記所定量の前記ガス流体の供給量を増減することによって、該飢餓率を該所望の飢餓率に維持することを特徴とする請求項2記載のプリプラ式射出装置。
【請求項4】
前記飢餓成形に移行する制御は、(a)最初に所望の飢餓率を設定し、(b)つぎに、前記ガス流体を通過させない状態で通常成形を行って、そのときの計量時間を充満計量時間として記憶し、(c)つぎに、該充満計量時間と該飢餓率とから前記基準飢餓計量時間を算出し、(d)つぎに、該所望の飢餓率に合わせた所定値に供給量を制御した前記ガス流体を前記可塑化シリンダ内に通過させながら飢餓成形を暫定的に行って、(e)そのときの飢餓計量時間を暫定飢餓計量時間として検出して該基準飢餓計量時間と比較判定して、(f)該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該基準飢餓計量時間に達しなかった場合に該ガス流体の供給量を所定量増加して該飢餓成形を再び行って、(g)やがて、該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該基準飢餓計量時間に達したときに該暫定飢餓計量時間を許容飢餓計量時間と比較判定して、(h)該比較判定で該暫定飢餓計量時間が該許容飢餓計量時間を超えた場合に該ガス流体の供給量を所定量低減して該飢餓成形を再び行って、(i)やがて、該暫定飢餓計量時間の該基準飢餓計量時間との比較判定及び該暫定飢餓計量時間の該許容飢餓計量時間との比較判定が肯定されたときに、(j)該所定量のガス流体の増減調整を停止するとともに該ガス流体の供給量を現時の供給量に固定して、(k)その後、該ガス流体を該可塑化シリンダ内に通過させたままで連続飢餓成形に移行する制御であることを特徴とする請求項2記載のプリプラ式射出装置。
【請求項5】
前記給気手段が、空気から窒素を分離してその窒素ガスを前記ガス流体として供給する窒素供給装置と、該窒素ガスを前記樹脂材料のガラス転移点温度に近い温度に加熱する加熱装置とを含むとともに、前記可塑化シリンダと前記導入管の間のベースブロックを、排気する該ガス流体を通過させる円筒空間を形成する2重筒体に構成して、該窒素供給装置から該加熱装置に該窒素ガスを送る配管を、該円筒空間に収容されたコイル状の熱交換配管に接続して、排気する該窒素ガスの熱を加熱前の該窒素ガスに熱交換することを特徴とする請求項1記載のプリプラ式射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149354(P2010−149354A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329117(P2008−329117)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(301056270)株式会社ソディックプラステック (35)
【Fターム(参考)】