プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体装置
【課題】プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性に優れたプリプレグを提供する。
【解決手段】本発明に係るプリプレグは、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグ40である。また、本発明に係るプリプレグにおいて、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在する。これにより、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性に優れるプリプレグを得ることができる。また、当該プリプレグを用いた金属張積層板、さらにこれらを用いて得られるプリント配線板並びに半導体装置を得ることができる。
【解決手段】本発明に係るプリプレグは、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグ40である。また、本発明に係るプリプレグにおいて、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在する。これにより、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性に優れるプリプレグを得ることができる。また、当該プリプレグを用いた金属張積層板、さらにこれらを用いて得られるプリント配線板並びに半導体装置を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板は、回路配線の微細化、並びに、スルーホール及びビア孔の縮小化が求められている。
スルーホール及びビア孔は、ドリルや、炭酸ガスレーザー等のレーザーを用いて形成されるが、特に小径の穴あけには、レーザーが用いられる。レーザーによる穴あけ加工では、穴を形成する絶縁層壁面の凹凸が大きい程、穴径や形状がばらつきやすく、加工の精度が低下してしまう。
プリント配線板の絶縁層は、プリプレグを1枚又は複数枚重ね合わせたものを加熱加圧することにより形成することができる。プリプレグは、一般的に、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に含有させてなるワニスをガラスクロス等の基材に含浸させ、これを加熱乾燥させることにより作製される。レーザー加工によって穴を形成する絶縁層壁面のうち、基材部分と樹脂組成物部分とで、レーザーによる溶融性に差がある。このため、基材の密度が小さく目が粗いと、穴径、形状がばらつきやすくなる傾向がある。一方、目の詰まった高密度の基材を用いることで、絶縁層のレーザーによる穴あけ加工性を向上させることができる(特許文献1、2)。
【0003】
また、プリント配線板上への部品実装の高密度化に対応するために、プリント配線板の熱膨張による反りを小さくして接続信頼性を確保することが求められている。半導体装置(半導体パッケージ)は、プリント配線板に半導体素子を搭載してなるが、半導体素子は、熱膨張率が3〜6ppm/℃であり、一般的な半導体パッケージ用プリント配線板の熱膨張率より小さい。そのため、半導体パッケージに熱衝撃が加わったときに、半導体素子と半導体パッケージ用プリント配線板の熱膨張率差により、半導体パッケージに反りが発生してしまう場合がある。この場合、半導体素子と半導体パッケージ用プリント配線板との間や、半導体パッケージと実装されるプリント配線板との間で接続不良が生じることがある。
熱膨張率が小さい絶縁性材料を絶縁層に用いることで、プリント配線板の熱膨張による反りを小さくすることができる。絶縁性材料となるプリプレグを低線膨張化するために、プリプレグの製造に用いられる樹脂組成物として、無機充填材を高充填化させたものが用いられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−38836号公報
【特許文献2】特開2000−22302号公報
【特許文献3】特開2009−138075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高密度の基材を用いてプリプレグを作製すると、基材への樹脂組成物の含浸性が劣り、特に充填材を多量に含有した樹脂組成物では、充填材が基材の繊維間に入り込めないため樹脂組成物の含浸が困難となる。また、含浸性を向上させるために、例えば充填材の含有量の低減等を行った場合、プリプレグが有する他の諸特性を維持することが困難となることがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、本発明の目的は、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性に優れたプリプレグを提供することである。また、本発明の目的は、当該プリプレグを用いた金属張積層板、さらにこれらを用いて得られるプリント配線板並びに半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグであって、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在するプリプレグが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性に優れるプリプレグを提供することができる。
また、本発明によれば、前記プリプレグ及び/又は前記プリプレグを用いて製造した金属張積層板を用いて、プリント配線板、及び、半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【図1】本発明の金属張積層板の製造方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の金属張積層板の製造方法の他の一例を示す概略図である。
【図3】実施例1で得られたプリプレグの断面図の写真である。
【図4】比較例4で得られたプリプレグの断面図の写真である。
【図5】実施例1で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真である。
【図6】比較例6で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真である。
【図7】図6で観察されるボイドの拡大図のSEM写真である。
【図8】図7で観察されるボイドの断面の拡大図のSEM写真である。
【図9】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図10】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図11】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図12】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置について詳細に説明する。
【0012】
1.プリプレグ
本発明のプリプレグは、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグである。また、繊維織布を構成するストランド中にはシリカ粒子が存在する。なお、ストランドとは、繊維織布を構成する繊維の束である。ストランドを後述する織り構造となるように織ることで、繊維織布が形成される。
本発明者は、ストランド中にシリカ粒子が存在するようプリプレグを形成した場合、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布への樹脂組成物の含浸性が向上させることができることを見出した。ここで、諸特性とは、例えば後述するプリント配線板の絶縁信頼性、プリプレグのレーザー加工性、またはプリプレグの低熱膨張性等である。
繊維織布への樹脂組成物の含浸性が良好である場合、得られるプリプレグにボイドが発生することを抑制できる。これにより、当該プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板において、絶縁信頼性の向上を図ることができる。
また、高密度の繊維織布を使用した場合においても、高い含浸性を得ることができる。このため、高密度の繊維織布を使用して、レーザー加工性に優れたプリプレグを形成することができる。
さらに、繊維織布への樹脂組成物の含浸性を向上させることで、繊維織布内に充填材を高充填することが可能となる。このため、プリプレグの低熱膨張化を図ることができる。これにより、当該プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板に反りが発生することを抑制することができる。従って、半導体装置における接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0013】
プリプレグを構成する樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂及び充填材を含む熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある。)である。
プリプレグを構成する樹脂組成物は、例えば平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を、充填材の1〜20質量%の割合で含有していることが好ましい。本発明者は、多量の充填材を含有する樹脂組成物を高密度の繊維織布に含浸させて得られるプリプレグであっても、前記充填材に1〜20質量%の割合で平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を含有させることにより、樹脂組成物の含浸性が良好となることを見出した。これは、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が繊維織布の繊維間、すなわちストランド内に入り込んで繊維間を広げるため、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子以外の充填材も繊維織布に入り込むことができるようになるからであると考えられる。このように、平均粒径5〜100nmのナノサイズのシリカ粒子を充填材として使用することで、ストランド中にシリカ粒子を有するプリプレグを得ることができる。
また、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の表面電位と、その他の充填材の表面電位との相違より、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子と前記充填材とが相互作用により引き付けられる。そのため、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が、前記充填材の周囲に存在することになり、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子がスペーサー的な作用を有する。このように、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が前記充填材の周囲に存在して、スペーサーとして作用することにより、前記充填材のファンデルワールス力による引き付け合う力を低減させ、凝集を防止する。これによって、前記充填材が、より高分散状態となり、流動性の低下を防止することができる。
前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子は、予め有機溶媒に分散したスラリーとして用いることが好ましい。これにより、充填材の分散性を向上することができ、その他の充填材を用いた際に生じる流動性の低下を抑制することができる。この理由は次のように考えられる。まず、ナノサイズのシリカのようなナノサイズの粒子は、凝集し易く、樹脂組成物に配合する際に2次凝集体等を形成してしまうことが多いが、スラリー状のものを用いることで、このような2次凝集を防止することができ、それによって流動性が低下するのを防止することができる。また、本発明に用いられる充填材は、凝集防止、および分散性を高めるため、予め表面処理を施されていることが好ましい。
なお、本発明において高密度の繊維織布とは、ヤーンの打込み本数を上げるだけでなく、繊維1本1本を均質に高開繊化し、扁平化により厚みを低減させるなどの処理をした繊維織布を意味する。高密度の繊維織布は、例えばかさ密度が1.05g/cm3以上である。これにより、より繊維1本1本の間に樹脂組成物を含浸させることができるため、更に充填材の高充填化を図ることができる。さらには、繊維織布上の樹脂量を十分確保できるため、プリプレグの上に銅箔を積層して銅張積層板とする時、または銅張積層板の表面の平滑化時の成形性を維持することができる。
【0014】
このように、本発明のプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好であるため、ボイドの発生が少ない。また、樹脂組成物中に多量の充填材が含有されているため、低熱膨張性であり、本発明のプリプレグを用いて得られるプリント配線板は反りが小さい。なお、本発明においてプリプレグの熱膨張性とは、プリプレグを硬化させた状態における熱膨張性を意味する。
また、本発明のプリプレグは、充填材を高充填化させたことにより、耐熱性に優れ、高剛性である。さらに、本発明のプリプレグを構成する繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であることが好ましい。かさ密度が1.05〜1.30g/cm3と高密度の繊維織布を用いることにより、プリント配線板の絶縁層として用いたときに、レーザー加工により、穴径および形状の精度が良く、且つ、繊維の突出を抑制した穴を形成することができる。
また、一般的に、充填材を多量に含有した樹脂組成物を用いて得られるプリプレグは、基材に対する樹脂組成物の含浸性が悪化することから、基材が樹脂組成物を均一の厚さで保持することが難しく、当該プリプレグを絶縁層に用いてプリント配線板を作成する際に、前記絶縁層が表面平滑性や導体層との密着性に劣り、微細配線加工が困難であるという問題点がある。これは、プリプレグを薄型化させると、さらに悪化する傾向がある。一方、本発明のプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好であるため、繊維織布が樹脂組成物を均一の厚さで保持することができ、表面平滑性や導体層との密着性は良好であり、さらに薄型化にも対応可能である。また、本発明のプリプレグは、充填材を多量に含有した樹脂組成物を用いることにより、高耐熱性、高剛性となる。
【0015】
まず、本発明に用いられる繊維織布について説明する。
本発明に用いられる繊維織布としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、アラミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂等の合成繊維、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる繊維織布が挙げられる。中でも、低熱膨張性、高剛性であり、寸法安定性に優れることから、ガラス繊維からなるガラス繊維織布が好ましい。
【0016】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、少なくともSiO2を50質量%〜100質量%、Al2O3を0質量%〜30質量%、CaOを0質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、特にTガラス(「Sガラス」と称される場合もある。)、Dガラス、Eガラス、NEガラス、石英ガラスよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のガラスを用いてなることが好ましく、中でも、Tガラス(Sガラス)、石英ガラス、Dガラスがより好ましく、低熱膨張性に優れ、高強度である点から、Tガラス(Sガラス)、石英ガラスがさらに好ましい。
なお、本発明において、Tガラス(Sガラス)とは、SiO2を62質量%〜65質量%、Al2O3を20質量%〜25質量%、CaOを0質量%〜0.01質量%、MgOを10質量%〜15質量%、B2O3を0質量%〜0.01質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0質量%〜1質量%の割合で含有した組成のガラスであり、Dガラスとは、SiO2を72質量%〜76質量%、Al2O3を0質量%〜5質量%、CaOを0質量%〜1質量%、MgOを0質量%〜1質量%、B2O3を20質量%〜25質量%、Na2O及びK2Oを合わせて3質量%〜5質量%の割合で含有した組成のガラスであり、Eガラスとは、SiO2を52質量%〜56質量%、Al2O3を12質量%〜16質量%、CaOを15質量%〜25質量%、MgOを0質量%〜6質量%、B2O3を5質量%〜10質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0〜0.8質量%の割合で含有した組成のガラスであり、NEガラスとは、SiO2を52質量%〜56質量%、Al2O3を10質量%〜15質量%、CaOを0質量%〜10質量%、MgOを0質量%〜5質量%、B2O3を15質量%〜20質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0質量%〜1質量%、TiO2を0.05質量%〜5質量%の割合で含有した組成のガラスであり、石英ガラスとは、SiO2を99.0質量%〜100質量%の割合で含有した組成のガラスである。
【0017】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、板状にした際のヤング率が50〜100GPa、板状にした際の引張強度が25GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が30N/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは、板状にした際のヤング率が80〜100GPa、板状にした際の引張強度が35GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が45N/25mm以上である。これにより、寸法安定性に優れたプリプレグが得られる。なお、前記ヤング率は、JIS R1602に準拠し、一般的に用いられる公知の3点曲げ試験機により測定される値であり、前記引張強度はJIS R3420に準拠し、一般的に用いられる公知の定速伸長形引張試験機により測定される値であり、前記長手方向の引張強度はJIS R3420に準拠し、ガラス繊維を織布にして、前記と同様の定速伸長形引張試験機により測定される値である。
なお、前記ヤング率の測定及び前記引張強度の測定において、「板状」とは、ガラス繊維と同じ組成のガラス組成物を厚さ0.5〜1.0mmのガラス板にした状態を意味する。また、前記長手方向の引張強度の測定において「長手方向」とは、経糸(縦糸)方向を意味する。
【0018】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、JIS R3102に準拠して測定される経糸方向の熱膨張係数が10ppm/℃以下であることが好ましく、特に3ppm/℃以下であることが好ましい。これによりプリント配線板の熱膨張による反りを小さくすることができる。
【0019】
前記繊維織布の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜140μmであり、さらに好ましくは20〜90μmである。これにより、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好となり、薄型化にも対応可能となる。
【0020】
前記繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であることが好ましく、特に1.10〜1.25g/cm3であることが好ましい。かさ密度が前記下限値未満であると、絶縁層のレーザー加工性に劣り、前記上限値を超えると繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化する。なお、繊維織布のかさ密度の調整は、経糸と横糸の打込み本数と、開繊・扁平処理した繊維の厚みを調整することによって行う。
【0021】
前記繊維織布は、特に限定されないが、通気度が1〜80cc/cm2/secであることが好ましく、3〜50cc/cm2/secであることが特に好ましい。通気度が前記下限値未満であると、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化し、前記上限値を超えると絶縁層のレーザー加工性に劣る。
【0022】
前記繊維織布は、特に限定されないが、坪量が10〜160g/m2であることが好ましく、15〜130g/m2であることが特に好ましい。坪量が前記下限値未満であると、プリプレグの低熱膨張性に劣り、前記上限値を超えると繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化したり、絶縁層のレーザー加工性に劣ったりする。
【0023】
また、前記繊維織布に用いられる繊維は、特に限定されないが、扁平率が1:2〜1:50であることが好ましく、1:5〜1:30であることが特に好ましい。繊維織布に用いられる繊維の扁平率が前記範囲内であることにより、さらに前記繊維織布への樹脂組成物の含浸性・濡れ性が優れるためスルーホール間の絶縁信頼性を向上、および絶縁層のレーザー加工性を向上させることができる。なお、本発明において扁平率とは、糸の厚さ:糸の幅で表わされる値である。
【0024】
また、前記繊維織布の織り構造は、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造等が挙げられ、中でもレーザー加工性、強度、ビア孔の層間絶縁信頼性に優れる点から、平織り構造が好ましい。
【0025】
次に、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂及び充填材を含む。前記充填材は、前記熱硬化性樹脂組成物の固形分の50〜85質量%の割合で含有される。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を前記充填材の1〜20質量%の割合で含有する。さらに、前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、硬化剤、カップリング剤等を含んでいてもよい。
【0026】
(充填材)
前記充填材は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を前記充填材全体の1〜20質量%の割合で含有する。
前記シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、VMC(Vaporized Metal Combustion)法、PVS(Physical Vapor Synthesis)法等の燃焼法、破砕シリカを火炎溶融する溶融法、沈降法、ゲル法等の方法によって製造したものを用いることができる。これらの中でもVMC法が特に好ましい。前記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ微粒子を形成させる方法である。前記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ微粒子の粒子径を調整できる。また、前記シリカ粒子としては、NSS−5N(トクヤマ(株)製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)等の市販品を用いることもできる。
【0027】
前記平均粒径5〜100nmシリカ粒子は、含浸性の点から、特に平均粒径10〜75nmであることが特に好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が5nm未満では、繊維織布の繊維間を広げることができず、また100nmより大きい場合は、繊維間に入り込むことができない場合があると考えられる。
【0028】
前記シリカ粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱法、および動的光散乱法等により測定することができる。前記平均粒径5〜100nmシリカ粒子の場合は、粒子を水中で超音波により分散させ、動的光散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒径とする。
【0029】
また、前記シリカ粒子は、特に限定されないが、疎水性であることが好ましい。これにより、シリカ粒子の凝集を抑制することができ、本発明の樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。また、熱硬化性樹脂とシリカ粒子との親和性が向上し、前記熱硬化性樹脂と前記シリカ粒子との表面の密着性が向上するため、機械強度に優れる絶縁層が得られる。
【0030】
シリカ粒子を疎水性にする方法としては、例えば、シリカ粒子を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法等が挙げられる。前記官能基含有シラン類としては公知のものを使用することができ、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシラン等が挙げられる。前記アルキルシラザン類としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。また、シリカ粒子に前記表面処理をすることにより、充填材の凝集防止、および分散性を高める効果も発揮する。
【0031】
前記シリカ粒子へ予め表面処理する官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の量は、特に限定しないが、前記シリカ粒子100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1重量部以上、3重量部以下が好ましい。官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の含有量が前記上限値を超えると、プリント配線板製造時において絶縁層にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、樹脂成分とシリカ粒子との結合力が低下する場合がある。
【0032】
前記シリカ粒子を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法は、特に限定されないが、湿式方式または乾式方式が好ましい。特に好ましくは湿式方式が好ましい。湿式方式の方が、乾式方式と比較した場合、前記シリカ粒子の表面へ均一に処理することができる。
また、前記表面処理は、比表面積の50%以上に行うことが好ましい。
【0033】
前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子は、充填材全体の1〜20質量%の割合で含有される。含有量が前記下限値未満であると、含浸性を向上させる効果が不充分となり、含有量が前記上限値を超えると、逆に含浸性の悪化や、プリプレグの成形性に劣る恐れがある。なお、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の含有量は、充填材全体の3〜15質量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明に用いられる充填材は、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の他に、特に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、平均粒径が100nmよりも大きいシリカ粒子等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH)、「擬」ベーマイトと通常呼ばれるベーマイト(すなわち、Al2O3・xH2O、ここで、x=1から2))、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等の無機充填材を含有することができる。前記無機充填材は、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらの中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、平均粒径が100nmよりも大きい球状シリカ粒子、タルク、焼成タルク、アルミナが好ましく、低熱膨張性、含浸性の点で特にベーマイト、平均粒径が100nmよりも大きい球状シリカ粒子、球状アルミナが好ましい。
【0035】
前述の平均粒径5〜100nmのシリカ粒子以外の無機充填材(以下、「その他の無機充填材」と称することがある。)としては、特に限定されないが、平均粒径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒径が多分散の無機充填材を用いることもできる。さらに、平均粒径が単分散及び/または多分散の無機充填材を、1種類または2種類以上併用することもできる。本発明において平均粒径が単分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以下であるものを意味し、多分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以上であるものを意味する。
前記その他の無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm〜5.0μmが好ましく、特に0.1μm〜3.0μmが好ましい。その他の無機充填材の粒径が前記下限値未満であると樹脂組成物の粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、樹脂組成物中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。尚、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所SALD−7000等の一般的な機器)を用いて測定することができる。
【0036】
さらに、小径孔の加工、孔の狭ピッチ加工、および細線加工をする場合は、前記その他の無機充填材は、粗粒カットされていることが好ましい。中でも45μm以上の粗粒カットをされていることが好ましく、20μm以上の粗粒カットをされているがさらに好ましく、10μm以上の粗粒カットをされていることが特に好ましい。尚、「粗粒カット」とは、その粒径以上の大きさの粗粒が排除されていることを意味する。
【0037】
また、本発明に用いられる充填材は、前記無機充填材以外にゴム粒子等の有機充填材なども含有することが好ましい。本発明で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
前記シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、及び二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。前記シリコーン粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学(株)製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0038】
本発明に用いられる充填材のうち、平均粒径が5〜100nmのシリカ粒子以外の充填材においても、凝集防止、および分散性を高めるため、予め表面処理を施されていることが好ましい。表面処理剤は、公知のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、表面処理は、比表面積の50%以上が好ましい。
【0039】
本発明に用いられる樹脂組成物中の充填材の含有量は、樹脂組成物全体の固形分基準で50〜85質量%であることが好ましく、特に65〜75質量%であることが好ましい。充填材含有量が前記上限値を超えると樹脂組成物の流動性が極めて悪く、プリプレグ製造の際の作業性に劣る。上記下限値未満であると熱膨張率が高く、絶縁層の強度が十分でない場合がある。
【0040】
(熱硬化性樹脂)
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が用いられ、通常は、エポキシ樹脂に他の熱硬化性樹脂を適宜組み合わせて用いられる。
【0041】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、実質的にハロゲン原子を含まないものが好ましい。ここで、「実質的にハロゲン原子を含まない」とは、エポキシ樹脂の合成過程において使用されたハロゲン系成分に由来するハロゲンが、ハロゲン除去工程を経ても尚、エポキシ樹脂に残存していることを許容することを意味する。通常、エポキシ樹脂中に30ppmを超えるハロゲン原子を含まないことが好ましい。
【0042】
前記実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4)-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、1,1,2,2−(テトラフェノール)エタンのグリシジルエーテル類、3官能、または4官能のグリシジルアミン類、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類のエポキシ樹脂を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上のエポキシ樹脂を併用することもできるし、1種類または2種類以上のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂のプレポリマーを併用することもできる。
これらエポキシ樹脂の中でも特に、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびアントラセン型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることにより、得られる積層板及びプリント配線板の吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。
また、これらのエポキシ樹脂の中でも、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を用いることにより、得られる積層板及びプリント配線板の耐熱性、低熱膨張性、および低熱収縮性を向上させることができる。
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(1)で示すことができる。
【0043】
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アラルキル基、ナフタレン基、又はグリシジルエーテル基含有ナフタレン基を表し、o及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつo又はmの何れか一方は1以上である。)
【0044】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の固形分基準で5〜60重量%とすることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると樹脂組成物の硬化性が低下したり、当該樹脂組成物を用いて得られるプリプレグ、またはプリント配線板の耐湿性が低下したりする場合がある。また、前記上限値を超えるとプリプレグ、またはプリント配線板の線熱膨張率が大きくなったり、耐熱性が低下したりする場合がある。前記エポキシ樹脂の含有量は、特に好ましくは樹脂組成物全体の固形分基準で10〜50重量%である。
【0045】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1.0×102〜2.0×104が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグの表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグの半田耐熱性が低下する場合がある。重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
本発明において、前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0046】
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、シアネート樹脂を含むことにより、難燃性を向上させ、熱膨張係数を小さくし、さらに、プリプレグの電気特性(低誘電率、低誘電正接)等を向上させることができる。
前記シアネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0047】
前記シアネート樹脂の種類としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂などを挙げることができる。
【0048】
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。
これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、および低熱膨張性に優れ、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、およびジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、および耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0049】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよい。また、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を2種以上併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応などにより、例えば3量化することで得られるものであり、樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
【0050】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の固形分基準で5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。シアネート樹脂の含有量が前記範囲内であると、より効果的にプリプレグの耐熱性及び難燃性を向上させることができる。シアネート樹脂の含有量が前記下限未満であるとプリプレグの熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの強度が低下する場合がある。
【0051】
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、5.0×102〜4.5×103が好ましく、特に6.0×102〜3.0×103が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると、プリプレグの表面にタック性が生じたり、機械的強度が低下したりする場合が有る。また、重量平均分子量が前記上限値を超えると、樹脂組成物の硬化反応が速くなり、導体層との密着性が悪化する場合がある。
本発明において、前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0052】
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、ビスマレイミド樹脂を含むことにより、耐熱性を向上させることができる。
前記ビスマレイミド樹脂としては、特に限定されないが、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。前記ビスマレイミド樹脂は、更に他のビスマレイミド樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。また、前記ビスマレイミド樹脂は、単独で用いてもよい。また、重量平均分子量の異なるビスマレイミド樹脂を併用したり、前記ビスマレイミド樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0053】
前記ビスマレイミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の固形分基準で1〜35重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。
【0054】
(硬化剤、硬化促進剤)
本発明に用いられる樹脂組成物は、硬化剤を併用しても良い。硬化剤としては、特に限定されず、例えば前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に用いられるフェノール系硬化剤、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物等を用いることができる。
【0055】
また、本発明に用いられる樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。前記硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、有機金属塩、3級アミン類、イミダゾール類、有機酸、オニウム塩化合物等が挙げられる。硬化促進剤としては、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
【0056】
(カップリング剤)
前記樹脂組成物は、更にカップリング剤を含有しても良い。カップリング剤は、熱硬化性樹脂と充填材との界面の濡れ性を向上させるために配合される。これにより、繊維織布に対して樹脂および充填材を均一に定着させ、プリプレグの耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
前記カップリング剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。これにより、充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによってプリプレグの耐熱性をより向上させることできる。
【0057】
前記カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると、充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合がある。また、含有量が前記上限値を超えると、反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0058】
(その他)
また、前記樹脂組成物には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、リン系、フォスファゼン等の難燃助剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0059】
本発明のプリプレグは、上述の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスを繊維織布に保持させた後、前記溶剤を除去することにより得られる。前記ワニスの調製方法は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂及び充填材を溶媒に分散したスラリーを調製し、当該スラリーにその他の樹脂組成物の成分を添加し、さらに前記溶媒を加えて溶解・混合させる方法が好ましい。これにより、充填材の分散性を向上させ、前記充填材に含まれる平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を繊維織布に入り込みやすくすることができ、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。
なお、本発明において熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有するとは、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる可溶性の樹脂等は溶剤に溶解し、不溶性の充填材等は溶剤に分散していることを意味する。
【0060】
前記溶媒としては、特に限定されないが、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(ANON)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。なお、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。
【0061】
前記ワニスが含む樹脂組成物の固形分(ワニスから溶剤を除いた成分)は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、樹脂組成物の繊維織布への含浸性が向上される。また、コーティング時の表面平滑性、厚みばらつき等を抑制することができる。
【0062】
前記ワニスを前記繊維織布に含浸させる方法は、例えば繊維織布をワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法、ワニスを基材に塗布・乾燥させて樹脂シートを作製し、当該樹脂シートを樹脂層が繊維織布に接するように配して圧着させる方法等が挙げられる。これらの中でも、繊維織布をワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。尚、繊維織布をワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。また、前記ワニスの溶剤を、例えば90〜180℃で、1〜10分間乾燥させることにより半硬化のプリプレグを得ることができる。
【0063】
前記プリプレグは、繊維織布からなる繊維織布層と、当該繊維織布層の両面に形成される樹脂組成物からなる樹脂層とで構成される。前記繊維織布層の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜140μmであり、さらに好ましくは20〜90μmである。前記樹脂層の厚み(片面のみの一層分の厚み)は、特に限定されないが、0.5〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることが特に好ましい。繊維織布層の厚み及び樹脂層の厚みが前記範囲内であることにより、導体層との密着性及び表面平滑性がさらに良好となる。
【0064】
前記プリプレグの全体厚みは、特に限定されないが、30〜220μmであることが好ましく、特に40〜165μmであることが好ましい。これにより、プリプレグの取り扱い性が良好で、薄型化にも対応可能となる。
【0065】
前記プリプレグにおいて、繊維織布を構成するストランド中には、ストランドを構成する繊維が延伸する方向において50μm以上の長さを有する空隙が存在しない。これにより、プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。さらには、繊維織布を構成するストランド中には、ストランドを構成する繊維が延伸する方向において20μm以上、特に10μm以上の長さを有する空隙が存在しないことが好ましい。
また、前記プリプレグにおいて、繊維織布を構成するストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、50cm−1以下である。この場合においても、プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。さらには、繊維織布を構成するストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、20cm−1以下、特に10cm−1以下であることが好ましい。
なお、上述のストランド中における空隙の長さや数密度は、ストランド中に存在するシリカ粒子の平均粒径や繊維織布のかさ密度等を適宜調整することにより実現される。
【0066】
2.積層板
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグを硬化して得られることを特徴とする。また、本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されてなることが好ましい。
前記プリプレグは、1枚で用いても良いし、2枚以上積層した積層体を用いても良い。導体層が設置されてなる積層板(以下、「金属張積層板」と称することがある。)の場合は、上述のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られる。プリプレグを1枚で用いるときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ね、プリプレグを2枚以上積層した積層体を用いるときは、当該積層体の最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。
【0067】
前記金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。また、上記のような銅、銅系合金等の導体層をめっきにより形成してもよい。
【0068】
金属張積層板の製造の際、加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0069】
また、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図1に示す樹脂層付き金属箔を用いた金属張積層板の製造方法が挙げられる。まず、金属箔11に均一な樹脂層12をコーターで塗工した樹脂層付き金属箔10を準備する。次いで、繊維織布20の両側に、樹脂層付き金属箔10、10を、樹脂層12を内側にして配し(図1(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる。これにより、金属箔付きプリプレグ41を得る(図1(b))。次いで、金属箔付きプリプレグ41を直接加熱加圧成形することで、金属張積層板51を得ることができる(図1(c))。
【0070】
さらに、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図2に示す樹脂層付き高分子フィルムシートを用いた金属張積層板の製造方法も挙げられる。まず、高分子フィルムシート31に、均一な樹脂層32をコーターで塗工した樹脂層付き高分子フィルムシート30を準備する。次いで、繊維織布20の両側に樹脂層付き高分子フィルムシート30、30を、樹脂層32を内側にして配し(図2(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる。これにより、高分子フィルムシート付きプリプレグ42を得ることができる(図2(b))。次いで、高分子フィルムシート付きプリプレグ42の少なくとも片面の高分子フィルムシート31を剥離後(図2(c)では両面を剥離)、高分子フィルムシート31を剥離した面に金属箔11を配し(図2(d))、加熱加圧成形する。これにより、金属張積層板52を得ることができる(図2(e))。さらに、両面の高分子フィルムシートを剥離する場合は、前述のプリプレグ同様に、2枚以上積層することもできる。プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔または高分子フィルムシートを配し、加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。この様な製造方法で得られた金属張積層板は、厚み精度が高く、厚みが均一であり、更には表面平滑性に優れる。また成形歪の小さい金属張積層板を得ることができるため、当該製造方法により得られた金属張積層板を用い作製したプリント配線板、および半導体装置は、反りが小さく、反りばらつきも小さい。さらにプリント配線板、および半導体装置を、歩留り良く製造することができる。
【0071】
前記加熱加圧成形する条件としては、温度は、特に限定されないが、120〜250℃が好ましく、特に150〜220℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.5〜3MPaが好ましい。さらに必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0072】
図1〜2等の金属張積層板は、特に限定されないが、例えば、樹脂層付き金属箔を製造する装置及び金属張積層板を製造する装置を用いて製造される。
前記樹脂層付き金属箔を製造する装置において、金属箔は、例えば長尺のシート品を巻物形態にしたもの等を用い、これにより連続的に巻き出すことにより供給することができる。樹脂の供給装置により、樹脂ワニスが所定量連続的に金属箔上に供給される。ここで樹脂ワニスとしては、本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解、分散させた塗布液が用いられる。樹脂ワニスの塗工量は、コンマロールと、当該コンマロールのバックアップロールとのクリアランスにより制御することができる。所定量の樹脂ワニスが塗工された金属箔は、横搬送型の熱風乾燥装置の内部を移送し、樹脂ワニス中に含有される有機溶剤等を実質的に乾燥除去し、必要に応じて、硬化反応を途中まで進めた樹脂層付き金属箔とすることができる。樹脂層付き金属箔は、そのまま巻き取ることもできるがラミネートロールにより、樹脂層が形成された側に保護フィルムを重ね合わせ、当該保護フィルムがラミネートされた樹脂層付き金属箔を巻き取って、巻物形態の絶縁樹脂層付き金属箔を得ている。図1〜2等の製造方法を用いた場合、従来のワニスを含浸させる製造方法より、均一な樹脂量の制御、および面内厚み精度に優れるため、半導体素子を搭載した半導体装置の反りばらつきが小さく、歩留まりが向上する。
【0073】
また、この様な製造方法により金属張積層板を得た場合、繊維織布への樹脂組成物の含浸性を考慮する必要がある。充填材は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を用いることで、特に繊維基材への含浸性が向上するため、加熱加圧成形時に、金属張積層板内における樹脂組成物のフローを抑え、溶融樹脂の不均一な移動が抑制されるため、金属張積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
【0074】
3.プリント配線板
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグ及び/又は上記の積層板を内層回路基板に用いてなる。
または、本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグを内層回路上の絶縁層に用いてなる。
なお、内層回路基板に本発明のプリプレグ又は本発明の積層板を用いたプリント配線板の場合、内層回路基板内のプリプレグが硬化してできた層は絶縁層である。
【0075】
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。前記内層回路基板としては、例えば、本発明の積層板及び/又は本発明のプリプレグを用いてなるものを使用することができる。本発明の積層板を用いてなる内層回路基板としては、例えば、金属箔を有しない本発明の積層板にセミアディティブ法等により所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものや、本発明の金属張積層板の金属箔に所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
また、本発明のプリプレグを用いてなる内層回路基板としては、硬化樹脂等からなる絶縁性の支持体上にコンデンサ、抵抗、チップ等の電気/電子部品を搭載し、その上に本発明のプリプレグを積層し、加熱加圧硬化して得られた部品内蔵基板に、セミアディティブ法等により所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを用いることもできる。
さらに、本発明においては、このような本発明の積層板及び/又は本発明のプリプレグを用いてなる内層回路基板や、従来公知の内層回路基板の導体回路上に、さらに本発明のプリプレグを積層し、加熱加圧硬化させたものを内層回路基板とすることもできる。前記内層回路上の絶縁層としては、本発明のプリプレグを用いることができる。尚、前記内層回路上の絶縁層として、本発明のプリプレグを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明のプリプレグ又は積層板を用いてなるものでなくてもよい。
【0076】
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の金属張積層板を内層回路基板として用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
内層回路基板は、前記金属張積層板の片面又は両面に所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理することにより作製する。前記導体回路の形成方法は、特に限定されず、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により行うことができる。また、内層回路基板には、ドリル加工、レーザー加工等によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることができる。前記内層回路基板は、本発明の金属張積層板からなるため、特にレーザー加工によって、穴径、形状等の精度に優れたスルーホールを形成することができる。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
【0077】
次に、この内層回路基板に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形し、さらに加熱硬化することで絶縁層を形成する。具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを重ね合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形し、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0078】
次に、積層した絶縁層にレーザーを照射して、開孔部(ビア孔)を形成する。前記レーザーは、スルーホール形成に用いられるレーザーと同様のものを使用することができる。前記絶縁層は本発明のプリプレグからなるため、レーザー加工により、穴径、形状等の精度に優れた開孔部を形成することができる。
【0079】
レーザー照射後の樹脂残渣(スミア)等は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層導体回路層と下層導体回路層との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、デスミア処理を行うことで、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができるため、金属メッキ処理により絶縁層表面に導体層を形成したときに、絶縁層表面と導体層との密着性に優れる。尚、レーザー照射による開孔部形成の前に、絶縁層表面に導体層を形成してもよい。
【0080】
次に、開孔部及び絶縁層表面に金属メッキ処理を行い、導体層を形成する。前記絶縁層表面には、さらに前述の公知の方法等により導体回路形成を行う。なお、開孔部に金属メッキ処理を行い、導体層を形成することで、上層導体回路層と下層導体回路層との導通を図ることができる。
【0081】
さらに絶縁層を積層し、前記同様導体回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板では、導体回路形成後、最外層にソルダーレジスト膜を形成する。ソルダーレジスト膜の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、及び現像により形成する方法、又は液状レジストを印刷したものを露光、及び現像により形成する方法によりなされる。得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合は、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
【0082】
4.半導体装置
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
【0083】
半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダー等を用いて、プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例において用いた繊維織布は、JIS R3413に規定されるガラス繊維を、平織り製織された織布で、以下のガラス繊維織布A〜Lである。
A:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、44.5本、42本、開繊・扁平処理した厚み130μm、坪量155g/m2
B:Eガラス、DE150 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、46.5本、44本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
C:Tガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、65本、64本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
D:Dガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、65本、64本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
E:Tガラス、D450 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、59本、59本、開繊・扁平処理した厚み46μm、坪量53g/m2
F:Tガラス、BC1500 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、90本、90本、開繊・扁平処理した厚み20μm、坪量24g/m2
G:Tガラス、C1200 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、74本、77本、開繊・扁平処理した厚み25μm、坪量31g/m2
H:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、44.5本、42本、開繊・扁平処理した厚み115μm、坪量155g/m2
I:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、43本、40本、開繊・扁平処理した厚み145μm、坪量150g/m2
J:Tガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、59本、54本、開繊・扁平処理した厚み97μm、坪量100g/m2
K:Tガラス、D450 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、60本、47本、開繊・扁平処理した厚み50μm、坪量48g/m2
L:Tガラス、C1200 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、68本、72本、開繊・扁平処理した厚み27μm、坪量25g/m2
【0086】
実施例及び比較例において用いたワニスは、以下のワニス製造例1〜7によって、樹脂組成物を溶剤に含有・混合させて製造されたものである。
(ワニス製造例1)
エポキシ樹脂(DIC社製 HP−5000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を65重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は13質量%、球状シリカは87質量%であった。
【0087】
(ワニス製造例2)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)9重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)17重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン3重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)60重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は14質量%、ベーマイトは86質量%であった。
【0088】
(ワニス製造例3)
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000FH)20重量部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製 HP4032D)5重量部、シアネート樹脂(東都化成(株)製 SN485の誘導体、ナフトール型)17重量、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)7.5重量%、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を7重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)35.5重量部、シリコーン粒子(信越化学工業(株)製 KMP600、平均粒径5μm)7.5重量部、オクチル酸亜鉛0.01重量、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)0.5重量を、メチルエチルケトンに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は14質量%、球状シリカは71質量%、シリコーン粒子は15質量%であった。
【0089】
(ワニス製造例4)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)18.5重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)34.9重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン6.1重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を5重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)35重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)0.5重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は12.5質量%、ベーマイトは87.5質量%であった。
【0090】
(ワニス製造例5)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)2.80重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)5.27重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン0.93重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)80重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は11質量%、ベーマイトは89質量%であった。
【0091】
(ワニス製造例6)
エポキシ樹脂(DIC社製 HP−5000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を30重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を45重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は40質量%、球状シリカは60質量%であった。
【0092】
(ワニス製造例7)
エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を75重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は0質量%、球状シリカは100質量%であった。
【0093】
ワニス製造例1〜7に用いられる樹脂組成物の組成を表1に示す。なお、各成分の配合量は、重量部で示す。
【0094】
【表1】
【0095】
上記ガラス繊維織布及び上記ワニスを用いて、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板及び半導体装置を作製した。
【0096】
<実施例1>
(1)プリプレグの作製
製造例1で得られたワニスを厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材(以下、PET基材)上に流延塗布して、温度140℃で時間10分で溶剤を揮発乾燥させて、樹脂層の厚みが30μmになるようにした。前記樹脂層付き基材を、ガラス織布Aの両面に樹脂層がガラス織布に接するように配し、圧力0.5MPa、温度140℃で1分間の条件で真空加圧式ラミネーター(名機製作所社製MLVP−500)により加熱加圧して、樹脂組成物を含浸させた。これにより、両面にPET基材を有する厚み150μmのプリプレグ(樹脂層(片面):10μm、繊維織布層:130μm)得た。
【0097】
(2)金属張積層板の作製
前記プリプレグの両面にキャリア付き2μmの銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMT18Ex−2)を重ねて、圧力3MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形した。これにより、プリプレグが硬化してなる厚さ150μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板を得た。
【0098】
(3)多層プリント配線板絶縁層用プリプレグの作製
前記製造例1で得られたワニスをガラス織布(厚さ16μm、ユニチカ社製 Eガラス織布、E02Z、坪量17.5g/m2)に含浸し、180℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中の樹脂組成物が固形分基準で約78重量%のプリプレグ(厚み40μm)を得た。なお、前記ガラス織布は、かさ密度1.09g/cm3、通気度41cc/cm2/sec、扁平率(厚み:幅)1:16であった。また、前記ガラス織布は、板状にした際のヤング率が93GPa、板状にした際の引張強度が48GPa、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が90N/25mmのガラス繊維からなるものであった。
【0099】
(4)プリント配線板(内層回路基板)の製造
前記金属張積層板から、キャリア箔を剥離し、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.4mm、ビーム径約120μm、エネルギー7〜9mJ、ショット数6の条件で、φ100μmの貫通スルーホールを形成した。次いで、当該金属張積層板を、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に10分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に、無電解メッキ(上村工業社製、スルカップPEAプロセス)で上下銅箔間の導通を図った。
次いで、この無電解めっき層の表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、サンフォートUFG−255)をホットロールラミネーターにより貼り合わせた。次いで、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたガラスマスク(トピック社製)の位置を合わせた。次いで当該ガラスマスクを使用して、露光装置(小野測器EV−0800)にて露光した後、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、レジストマスクを形成した。次に、無電解めっき層を給電層電極として、電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm2、25分間行った。これにより、厚さ約20μmの銅配線のパターンを形成した。次に、剥離機を用いて、モノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)により、前記レジストマスクを剥離した。そして、給電層であるパターン形状以外の不要な銅箔および無電解めっき層をフラッシュエッチング(荏原電産社製SAC−702MとSAC−701R35の純水溶液)により除去して、L/S=20/20μmのパターンを形成した。
次いで、導体回路の粗化処理(メック社製、メックエッチボンド CZ−8100)を行った。当該粗化処理は、液温35℃、スプレー圧0.15MPの条件でスプレー噴霧処理し、銅表面に粗さ3μm程度の粗面化を施すことにより行われた。次いで、導体回路の表面処理(メック社製、メックエッチボンド CL−8300)を行った。当該表面処理では、液温25℃、浸漬時間20秒間の条件で浸漬して、銅表面に防錆処理を行った。このようにして、プリント配線板(内層回路基板)を作製した。
【0100】
(5)多層プリント配線板の製造
次に、前記で得られたプリント配線板を内層回路基板として、その両面に前記多層プリント配線板絶縁層用プリプレグとキャリア付き2μmの銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMT18Ex−2)を重ねて配し、積層真空積層装置を用いて積層し、温度200℃、圧力3MPa、時間120分間加熱硬化し、多層積層体を得た。次に、外層回路形成を、前記(4)プリント配線板(内層回路基板)の製造方法と同様に行い、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、多層プリント配線板を得た。
【0101】
前記多層プリント配線板は、半導体素子の半田バンプ配列に相当する接続用電極部にENEPIG処理を施した。ENEPIG処理は、[1]クリーナー処理、[2]ソフトエッチング処理、[3]酸洗処理、[4]プレディップ処理、[5]パラジウム触媒付与、[6]無電解ニッケルメッキ処理、[7]無電解パラジウムメッキ処理、[8]無電解金メッキ処理の工程で行われた。
【0102】
(6)半導体装置の製造
半導体装置は、ENEPIG処理を施されたプリント配線板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載し、次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。尚、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mmのサイズにルーターで個片化し、半導体装置を得た。
【0103】
<実施例2〜3、および比較例1〜6>
表4に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ150μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
【0104】
<実施例4〜6、および比較例7>
プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表5に記載の通りとした以外は、表5に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、プリプレグ、厚さ100μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー7〜9mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0105】
<実施例7、8、および比較例8>
実施例7及び比較例8は、プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表6に記載の通りとした以外は、表6に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ60μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
実施例8は、プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表6に記載の通りとした以外は、表6に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ(全体厚み30μm)、当該30μmのプリプレグを2枚積層し、硬化してなる厚さ60μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、内層回路基板、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー6〜8mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0106】
<実施例9、および比較例9>
プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表7に記載の通りとした以外は、表7に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ40μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー6〜8mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0107】
実施例および比較例で得られたプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)及び半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。また得られた評価結果を表4〜7に示す。
なお、後述するPKG反りの測定結果が金属張積層板の絶縁層の厚みに依存するため、金属張積層板の絶縁層の厚みが150μmの実施例および比較例の評価結果を表4に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが100μmの実施例および比較例の評価結果を表5に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが60μmの実施例および比較例の評価結果を表6に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが40μmの実施例および比較例の評価結果を表7に示した。
また、表4〜7中において、樹脂組成物中の充填材量(質量%)は、樹脂組成物全体を100質量%としたときの充填材量を示したものであり、充填材の組成(質量)%は、充填材全体を100質量%としたときの各成分の割合を示したものである。
【0108】
<評価方法>
(1)樹脂組成物の含浸性
前記実施例及び比較例で得られたプリプレグを170℃の温度で、1時間硬化後、断面(幅方向の断面部300mmの範囲について)をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、繊維内部におけるボイドの有無を評価した。ボイドは、画像上、繊維断面における白色粒状の点として観察される。
各符号は以下の通りである。
○:樹脂組成物が全て良好に含浸し、繊維内部にボイドがない場合
×:繊維内部にボイドがある場合
【0109】
(2)成形性
前記実施例及び比較例で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした後に、500mm×500mmの範囲をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、絶縁層(繊維織布層の表面にある樹脂層)の表面におけるボイドの有無を評価した。ボイドは、画像上、白色粒状の点として観察される。
各符号は以下の通りである。
○:ボイドなし
×:ボイドあり
【0110】
(3)吸湿半田耐熱性
前記実施例及び比較例で得られた金属張積層板を50mm×50mm角に切断したサンプルを用いて、JIS C-6481に基づいて、前記サンプルの片面の半分以外の全銅箔をエッチング除去し、プレシッヤークッカー試験機(エスペック社製)で121℃、2気圧で2時間処理後、260℃の半田槽に30秒間浸漬させて、外観変化の異常の有無を目視にて観察した。
各符号は以下の通りである。
○:異常がない場合
×:膨れ、剥がれがある
【0111】
(4)線熱膨張係数(CTE)(ppm/K)
線熱膨張係数(CTE)は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30〜300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50〜100℃におけるCTEを測定した。尚、サンプルは、各実施例および比較例で得られた金属張積層板の銅箔をエッチング除去したものを用いた。
【0112】
(5)レーザー加工性
前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、炭酸レーザー加工後の貫通スルーホールのクロス突出量、孔径の真円度を測定した。クロス突出量及び真円度の測定は、カラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製、装置名VK-9710)を用い、クロス突出量の測定は、レーザー入射側の孔の真上から観察して孔壁面からの突出長さを測定することによって行い、真円度の測定は、レーザー入射側の孔の真上から観察して、孔トップ径の長径と短径を測定し、長径÷短径を算出することによって行った。尚、サンプルは、前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、下記表2に示す炭酸ガスレーザー条件で、直径100μmの孔加工直後の基板を真上から観察し、貫通孔10個の平均値とした。
【0113】
【表2】
【0114】
各符号は以下の通りである。
○:クロス突出量が10μm以内、かつ真円度が0.85以上であった場合
△:クロス突出量が10μm以上、または真円度が0.85未満であった場合
×:クロス突出量が10μm以上、かつ真円度が0.85未満であった場合
【0115】
(6)貫通スルーホールの絶縁信頼性
前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、貫通スルーホール間の絶縁信頼性を評価した。
プリント配線板のスルーホール壁間0.1mm部分を用い、印加電圧10V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定で評価した。なお、測定は高度加速寿命試験装置(エスペック社製EHS−211(M)、AMIイオンマイグレーションシステム)を用いて行い、絶縁抵抗値が108Ω未満となる時点で終了とした。
各符号は以下の通りである。
◎:200時間を超えた。
○:100時間以上200以下であった。
△:50時間以上100時間未満であった。
×:50時間未満であった。
【0116】
(7)PKG反り
実施例および比較例で得られた半導体装置(14mm×14mm)を、温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220−MT100MT50)のサンプルチャンバーに半導体素子面を下にして設置し、上記測定機を用いて、半導体装置の室温(25℃)及び260℃での反りを測定した。反りの測定は、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。尚、測定範囲は、13mm×13mmサイズであった。
各符号は以下の表3の通りである。なお、PKG反りの測定は、金属張積層板の絶縁層の厚みに依存するので、金属張積層板の絶縁層の厚み別に、表3に示すように判定した。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】
【0122】
前記(1)樹脂組成物の含浸性の観察結果の代表例として、実施例1で得られたプリプレグの断面図の写真を図3に示し、比較例4で得られたプリプレグの断面図の写真を図4に示した。
図4からわかるように、比較例4では、樹脂組成物の含浸性が悪いため、繊維織布中にボイドが観察された。一方、図3からわかるように、実施例1では、樹脂組成物の含浸性が良好であるため、繊維織布中にボイドがなかった。
実施例1においては、ナノサイズのシリカ粒子がストランド中へ入り込むことにより、樹脂組成物の含浸性が向上したものと思われる。これに対し、比較例4では、ナノサイズのシリカ粒子を含有していないため、樹脂組成物の含浸性の向上を図ることができなかったことが分かる。
【0123】
前記(2)金属張積層板の成形性観察結果の代表例として、実施例1で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真を図5に示し、比較例6で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真を図6に示し、さらに図6で観察されるボイド(画像上で白色粒状の点)の拡大図のSEM写真を図7に示し、図7で観察されるボイドの断面の拡大図のSEM写真を図8に示した。図6、7、8からわかるように、比較例6では、金属張積層板を全面エッチングした表面にボイドが観察された。一方、図5からわかるように、実施例1では、全面エッチングした表面にボイドがなかった。
【0124】
図9〜12は、実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。図9は、ストランドの延伸方向と平行な断面を示している。図10〜12は、ストランドの延伸方向と垂直な断面を示している。
図9〜12に示すように、実施例1で得られたプリプレグにおいて、ストランド中にシリカ粒子が存在することが分かる。
【0125】
表4〜7に示す実施例1〜9では、良好なプリプレグ含浸性が得られた。また、他の諸特性についても、全て良好な結果が得られていることが分かる。これは、シリカ粒子が繊維織布を構成するストランド中に入り込む条件において、プリプレグの作成が行われたことに起因すると考えられる。
なお、ストランド中へのシリカ粒子の入り込みを制御する因子としては、例えばシリカ粒子の平均粒径、充填材中のシリカ粒子の含有量、樹脂組成物中の充填材の含有量、繊維織布のかさ密度等、様々なものが挙げられる。
【0126】
表4〜7からわかるように、実施例1〜9では、ワニスに含有される樹脂組成物が、充填材を当該樹脂組成物全体の50〜85質量%含有し、当該充填材のうち平均粒径が5〜100nmのシリカ粒子を1〜20質量%含有し、且つ、繊維織布のかさ密度が1.05〜1.30g/cm3であった。この場合、上記すべての評価項目において優れた評価結果となった。すなわち本実施例に係るプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性に優れ、低熱膨張性であり、プリント配線板の絶縁層として用いたときにレーザー加工性に優れ、レーザーにより形成された穴が、穴径および形状の精度が良く、且つ、繊維の突出を抑制した穴を形成することができることがわかった。さらに、本実施例に係るプリプレグは、吸湿半田耐熱性に優れることから、高耐熱性であり、成形性に優れることから、表面平滑性にも優れ、ひいては導体層との密着性に優れるといえる。また、本発明の半導体装置におけるPKG反りが小さいことから、本実施例に係るプリプレグは低熱膨張性であるとともに高剛性であることもわかる。
【0127】
比較例1および6においても、良好なプリプレグ含浸性を得た。
しかしながら、比較例1では、CTEおよびパッケージ反りにおいて良好な結果が得られなかった。これは、充填材の含有量が低いために樹脂組成物の樹脂成分のみがストランド内に入り込むことで、シリカ粒子がストランド中に入ることが抑制されてしまうためであると思われる。これにより、充填材を高充填化することができず、プリプレグのCTEが高くなり、パッケージ反りが発生したものと考えられる。
また、比較例6では、良好な結果が得られなかった。これは、かさ密度が低いことにより十分な量の樹脂組成物を含浸させることができために、樹脂組成物中に含まれるシリカ粒子についてもストランド中に入ることが抑制されてしまうことに起因すると思われる。また、繊維織布のかさ密度が小さいため厚い繊維基材となることから、プリプレグの表層の樹脂層の厚さが薄くなる。このため、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、CTEは良好なもののPKG反りが生じたものと考えられる。
【0128】
比較例4および7〜9では、プリプレグの含浸性について、良好な結果が得られなかった。比較例4および7〜9では、プリプレグを構成する樹脂組成物中にナノサイズのシリカ粒子が含有されていない。このため、シリカ粒子がストランド中へ入り込めず、樹脂組成物の含浸性の向上を図れなかったものと思われる。また、これにより、CTEおよびパッケージ反り等、他の諸特性においても良好な結果が得られなかった。
比較例7では、繊維織布のかさ密度が小さいことからレーザー加工性に劣り、含浸性が悪いことから貫通スルーホールの絶縁信頼性に劣る。また、比較的厚い繊維織布を用いたためプリプレグの樹脂層の厚さが薄くなり、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、PKG反りが生じた。
比較例8および9では、金属張積層板の絶縁層厚みが比較的薄いため、成形性、吸湿半田耐熱性、貫通スルーホールの絶縁信頼性には優れる。しかしながら、繊維織布のかさ密度が小さいため、レーザー加工性において良好な結果が得られなかった。
【0129】
比較例2、3、および5においても、プリプレグの含浸性について、良好な結果が得られなかった。また、他の諸特性についても、良好な結果は得られなかった。比較例2では、充填材の含有量が高すぎることから、樹脂組成物中におけるシリカ粒子の流動性が得られず、結果ストランド中へシリカ粒子の入り込みが抑制されたものと思われる。比較例3では、ナノサイズのシリカ粒子の含有量が高いため、ナノサイズのシリカ粒子が凝集してしまい、結果ストランド中へのシリカ粒子の入り込みが抑制されたものと思われる。比較例5では、繊維織布のかさ密度が大きいため、シリカ粒子がストランド中へ入り込むことが抑制されたものと思われる。
比較例5では、繊維織布のかさ密度が大きすぎるため、樹脂組成物の含浸性が悪く、吸湿半田耐熱性に劣り、レーザー加工性及び貫通スルーホールの絶縁信頼性にも劣っていた。
比較例6では、繊維織布のかさ密度が小さいため、レーザー加工性及び貫通スルーホールの絶縁信頼性に劣っていた。さらに、繊維織布のかさ密度が小さいため厚い繊維基材となることから、プリプレグの表層の樹脂層の厚さが薄くなる。このため、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、PKG反りが生じた。
【符号の説明】
【0130】
10 樹脂層付き金属箔
11 金属箔
12 樹脂層
20 繊維織布
30 樹脂層付き高分子フィルムシート
31 高分子フィルムシート
32 樹脂層
40 プリプレグ
41 金属箔付きプリプレグ
42 高分子フィルムシート付きプリプレグ
51 金属張積層板
52 金属張積層板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、積層板、プリント配線板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでいる。そのため、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板は、回路配線の微細化、並びに、スルーホール及びビア孔の縮小化が求められている。
スルーホール及びビア孔は、ドリルや、炭酸ガスレーザー等のレーザーを用いて形成されるが、特に小径の穴あけには、レーザーが用いられる。レーザーによる穴あけ加工では、穴を形成する絶縁層壁面の凹凸が大きい程、穴径や形状がばらつきやすく、加工の精度が低下してしまう。
プリント配線板の絶縁層は、プリプレグを1枚又は複数枚重ね合わせたものを加熱加圧することにより形成することができる。プリプレグは、一般的に、熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に含有させてなるワニスをガラスクロス等の基材に含浸させ、これを加熱乾燥させることにより作製される。レーザー加工によって穴を形成する絶縁層壁面のうち、基材部分と樹脂組成物部分とで、レーザーによる溶融性に差がある。このため、基材の密度が小さく目が粗いと、穴径、形状がばらつきやすくなる傾向がある。一方、目の詰まった高密度の基材を用いることで、絶縁層のレーザーによる穴あけ加工性を向上させることができる(特許文献1、2)。
【0003】
また、プリント配線板上への部品実装の高密度化に対応するために、プリント配線板の熱膨張による反りを小さくして接続信頼性を確保することが求められている。半導体装置(半導体パッケージ)は、プリント配線板に半導体素子を搭載してなるが、半導体素子は、熱膨張率が3〜6ppm/℃であり、一般的な半導体パッケージ用プリント配線板の熱膨張率より小さい。そのため、半導体パッケージに熱衝撃が加わったときに、半導体素子と半導体パッケージ用プリント配線板の熱膨張率差により、半導体パッケージに反りが発生してしまう場合がある。この場合、半導体素子と半導体パッケージ用プリント配線板との間や、半導体パッケージと実装されるプリント配線板との間で接続不良が生じることがある。
熱膨張率が小さい絶縁性材料を絶縁層に用いることで、プリント配線板の熱膨張による反りを小さくすることができる。絶縁性材料となるプリプレグを低線膨張化するために、プリプレグの製造に用いられる樹脂組成物として、無機充填材を高充填化させたものが用いられている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−38836号公報
【特許文献2】特開2000−22302号公報
【特許文献3】特開2009−138075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高密度の基材を用いてプリプレグを作製すると、基材への樹脂組成物の含浸性が劣り、特に充填材を多量に含有した樹脂組成物では、充填材が基材の繊維間に入り込めないため樹脂組成物の含浸が困難となる。また、含浸性を向上させるために、例えば充填材の含有量の低減等を行った場合、プリプレグが有する他の諸特性を維持することが困難となることがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、本発明の目的は、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性に優れたプリプレグを提供することである。また、本発明の目的は、当該プリプレグを用いた金属張積層板、さらにこれらを用いて得られるプリント配線板並びに半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグであって、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在するプリプレグが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性に優れるプリプレグを提供することができる。
また、本発明によれば、前記プリプレグ及び/又は前記プリプレグを用いて製造した金属張積層板を用いて、プリント配線板、及び、半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0010】
【図1】本発明の金属張積層板の製造方法の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の金属張積層板の製造方法の他の一例を示す概略図である。
【図3】実施例1で得られたプリプレグの断面図の写真である。
【図4】比較例4で得られたプリプレグの断面図の写真である。
【図5】実施例1で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真である。
【図6】比較例6で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真である。
【図7】図6で観察されるボイドの拡大図のSEM写真である。
【図8】図7で観察されるボイドの断面の拡大図のSEM写真である。
【図9】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図10】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図11】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【図12】実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置について詳細に説明する。
【0012】
1.プリプレグ
本発明のプリプレグは、ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグである。また、繊維織布を構成するストランド中にはシリカ粒子が存在する。なお、ストランドとは、繊維織布を構成する繊維の束である。ストランドを後述する織り構造となるように織ることで、繊維織布が形成される。
本発明者は、ストランド中にシリカ粒子が存在するようプリプレグを形成した場合、プリプレグが有する諸特性を維持しつつ、繊維織布への樹脂組成物の含浸性が向上させることができることを見出した。ここで、諸特性とは、例えば後述するプリント配線板の絶縁信頼性、プリプレグのレーザー加工性、またはプリプレグの低熱膨張性等である。
繊維織布への樹脂組成物の含浸性が良好である場合、得られるプリプレグにボイドが発生することを抑制できる。これにより、当該プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板において、絶縁信頼性の向上を図ることができる。
また、高密度の繊維織布を使用した場合においても、高い含浸性を得ることができる。このため、高密度の繊維織布を使用して、レーザー加工性に優れたプリプレグを形成することができる。
さらに、繊維織布への樹脂組成物の含浸性を向上させることで、繊維織布内に充填材を高充填することが可能となる。このため、プリプレグの低熱膨張化を図ることができる。これにより、当該プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板に反りが発生することを抑制することができる。従って、半導体装置における接続信頼性を向上させることが可能となる。
【0013】
プリプレグを構成する樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂及び充填材を含む熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある。)である。
プリプレグを構成する樹脂組成物は、例えば平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を、充填材の1〜20質量%の割合で含有していることが好ましい。本発明者は、多量の充填材を含有する樹脂組成物を高密度の繊維織布に含浸させて得られるプリプレグであっても、前記充填材に1〜20質量%の割合で平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を含有させることにより、樹脂組成物の含浸性が良好となることを見出した。これは、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が繊維織布の繊維間、すなわちストランド内に入り込んで繊維間を広げるため、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子以外の充填材も繊維織布に入り込むことができるようになるからであると考えられる。このように、平均粒径5〜100nmのナノサイズのシリカ粒子を充填材として使用することで、ストランド中にシリカ粒子を有するプリプレグを得ることができる。
また、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の表面電位と、その他の充填材の表面電位との相違より、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子と前記充填材とが相互作用により引き付けられる。そのため、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が、前記充填材の周囲に存在することになり、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子がスペーサー的な作用を有する。このように、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子が前記充填材の周囲に存在して、スペーサーとして作用することにより、前記充填材のファンデルワールス力による引き付け合う力を低減させ、凝集を防止する。これによって、前記充填材が、より高分散状態となり、流動性の低下を防止することができる。
前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子は、予め有機溶媒に分散したスラリーとして用いることが好ましい。これにより、充填材の分散性を向上することができ、その他の充填材を用いた際に生じる流動性の低下を抑制することができる。この理由は次のように考えられる。まず、ナノサイズのシリカのようなナノサイズの粒子は、凝集し易く、樹脂組成物に配合する際に2次凝集体等を形成してしまうことが多いが、スラリー状のものを用いることで、このような2次凝集を防止することができ、それによって流動性が低下するのを防止することができる。また、本発明に用いられる充填材は、凝集防止、および分散性を高めるため、予め表面処理を施されていることが好ましい。
なお、本発明において高密度の繊維織布とは、ヤーンの打込み本数を上げるだけでなく、繊維1本1本を均質に高開繊化し、扁平化により厚みを低減させるなどの処理をした繊維織布を意味する。高密度の繊維織布は、例えばかさ密度が1.05g/cm3以上である。これにより、より繊維1本1本の間に樹脂組成物を含浸させることができるため、更に充填材の高充填化を図ることができる。さらには、繊維織布上の樹脂量を十分確保できるため、プリプレグの上に銅箔を積層して銅張積層板とする時、または銅張積層板の表面の平滑化時の成形性を維持することができる。
【0014】
このように、本発明のプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好であるため、ボイドの発生が少ない。また、樹脂組成物中に多量の充填材が含有されているため、低熱膨張性であり、本発明のプリプレグを用いて得られるプリント配線板は反りが小さい。なお、本発明においてプリプレグの熱膨張性とは、プリプレグを硬化させた状態における熱膨張性を意味する。
また、本発明のプリプレグは、充填材を高充填化させたことにより、耐熱性に優れ、高剛性である。さらに、本発明のプリプレグを構成する繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であることが好ましい。かさ密度が1.05〜1.30g/cm3と高密度の繊維織布を用いることにより、プリント配線板の絶縁層として用いたときに、レーザー加工により、穴径および形状の精度が良く、且つ、繊維の突出を抑制した穴を形成することができる。
また、一般的に、充填材を多量に含有した樹脂組成物を用いて得られるプリプレグは、基材に対する樹脂組成物の含浸性が悪化することから、基材が樹脂組成物を均一の厚さで保持することが難しく、当該プリプレグを絶縁層に用いてプリント配線板を作成する際に、前記絶縁層が表面平滑性や導体層との密着性に劣り、微細配線加工が困難であるという問題点がある。これは、プリプレグを薄型化させると、さらに悪化する傾向がある。一方、本発明のプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好であるため、繊維織布が樹脂組成物を均一の厚さで保持することができ、表面平滑性や導体層との密着性は良好であり、さらに薄型化にも対応可能である。また、本発明のプリプレグは、充填材を多量に含有した樹脂組成物を用いることにより、高耐熱性、高剛性となる。
【0015】
まず、本発明に用いられる繊維織布について説明する。
本発明に用いられる繊維織布としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、アラミド、ポリエステル、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂等の合成繊維、金属繊維、カーボン繊維、鉱物繊維等からなる繊維織布が挙げられる。中でも、低熱膨張性、高剛性であり、寸法安定性に優れることから、ガラス繊維からなるガラス繊維織布が好ましい。
【0016】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、少なくともSiO2を50質量%〜100質量%、Al2O3を0質量%〜30質量%、CaOを0質量%〜30質量%の割合で含有することが好ましく、特にTガラス(「Sガラス」と称される場合もある。)、Dガラス、Eガラス、NEガラス、石英ガラスよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のガラスを用いてなることが好ましく、中でも、Tガラス(Sガラス)、石英ガラス、Dガラスがより好ましく、低熱膨張性に優れ、高強度である点から、Tガラス(Sガラス)、石英ガラスがさらに好ましい。
なお、本発明において、Tガラス(Sガラス)とは、SiO2を62質量%〜65質量%、Al2O3を20質量%〜25質量%、CaOを0質量%〜0.01質量%、MgOを10質量%〜15質量%、B2O3を0質量%〜0.01質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0質量%〜1質量%の割合で含有した組成のガラスであり、Dガラスとは、SiO2を72質量%〜76質量%、Al2O3を0質量%〜5質量%、CaOを0質量%〜1質量%、MgOを0質量%〜1質量%、B2O3を20質量%〜25質量%、Na2O及びK2Oを合わせて3質量%〜5質量%の割合で含有した組成のガラスであり、Eガラスとは、SiO2を52質量%〜56質量%、Al2O3を12質量%〜16質量%、CaOを15質量%〜25質量%、MgOを0質量%〜6質量%、B2O3を5質量%〜10質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0〜0.8質量%の割合で含有した組成のガラスであり、NEガラスとは、SiO2を52質量%〜56質量%、Al2O3を10質量%〜15質量%、CaOを0質量%〜10質量%、MgOを0質量%〜5質量%、B2O3を15質量%〜20質量%、Na2O及びK2Oを合わせて0質量%〜1質量%、TiO2を0.05質量%〜5質量%の割合で含有した組成のガラスであり、石英ガラスとは、SiO2を99.0質量%〜100質量%の割合で含有した組成のガラスである。
【0017】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、板状にした際のヤング率が50〜100GPa、板状にした際の引張強度が25GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が30N/25mm以上であることが好ましく、より好ましくは、板状にした際のヤング率が80〜100GPa、板状にした際の引張強度が35GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が45N/25mm以上である。これにより、寸法安定性に優れたプリプレグが得られる。なお、前記ヤング率は、JIS R1602に準拠し、一般的に用いられる公知の3点曲げ試験機により測定される値であり、前記引張強度はJIS R3420に準拠し、一般的に用いられる公知の定速伸長形引張試験機により測定される値であり、前記長手方向の引張強度はJIS R3420に準拠し、ガラス繊維を織布にして、前記と同様の定速伸長形引張試験機により測定される値である。
なお、前記ヤング率の測定及び前記引張強度の測定において、「板状」とは、ガラス繊維と同じ組成のガラス組成物を厚さ0.5〜1.0mmのガラス板にした状態を意味する。また、前記長手方向の引張強度の測定において「長手方向」とは、経糸(縦糸)方向を意味する。
【0018】
前記ガラス繊維は、特に限定されないが、JIS R3102に準拠して測定される経糸方向の熱膨張係数が10ppm/℃以下であることが好ましく、特に3ppm/℃以下であることが好ましい。これによりプリント配線板の熱膨張による反りを小さくすることができる。
【0019】
前記繊維織布の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜140μmであり、さらに好ましくは20〜90μmである。これにより、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が良好となり、薄型化にも対応可能となる。
【0020】
前記繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であることが好ましく、特に1.10〜1.25g/cm3であることが好ましい。かさ密度が前記下限値未満であると、絶縁層のレーザー加工性に劣り、前記上限値を超えると繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化する。なお、繊維織布のかさ密度の調整は、経糸と横糸の打込み本数と、開繊・扁平処理した繊維の厚みを調整することによって行う。
【0021】
前記繊維織布は、特に限定されないが、通気度が1〜80cc/cm2/secであることが好ましく、3〜50cc/cm2/secであることが特に好ましい。通気度が前記下限値未満であると、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化し、前記上限値を超えると絶縁層のレーザー加工性に劣る。
【0022】
前記繊維織布は、特に限定されないが、坪量が10〜160g/m2であることが好ましく、15〜130g/m2であることが特に好ましい。坪量が前記下限値未満であると、プリプレグの低熱膨張性に劣り、前記上限値を超えると繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性が悪化したり、絶縁層のレーザー加工性に劣ったりする。
【0023】
また、前記繊維織布に用いられる繊維は、特に限定されないが、扁平率が1:2〜1:50であることが好ましく、1:5〜1:30であることが特に好ましい。繊維織布に用いられる繊維の扁平率が前記範囲内であることにより、さらに前記繊維織布への樹脂組成物の含浸性・濡れ性が優れるためスルーホール間の絶縁信頼性を向上、および絶縁層のレーザー加工性を向上させることができる。なお、本発明において扁平率とは、糸の厚さ:糸の幅で表わされる値である。
【0024】
また、前記繊維織布の織り構造は、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造等が挙げられ、中でもレーザー加工性、強度、ビア孔の層間絶縁信頼性に優れる点から、平織り構造が好ましい。
【0025】
次に、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂及び充填材を含む。前記充填材は、前記熱硬化性樹脂組成物の固形分の50〜85質量%の割合で含有される。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を前記充填材の1〜20質量%の割合で含有する。さらに、前記熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、硬化剤、カップリング剤等を含んでいてもよい。
【0026】
(充填材)
前記充填材は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を前記充填材全体の1〜20質量%の割合で含有する。
前記シリカ粒子としては、特に限定されないが、例えば、VMC(Vaporized Metal Combustion)法、PVS(Physical Vapor Synthesis)法等の燃焼法、破砕シリカを火炎溶融する溶融法、沈降法、ゲル法等の方法によって製造したものを用いることができる。これらの中でもVMC法が特に好ましい。前記VMC法とは、酸素含有ガス中で形成させた化学炎中にシリコン粉末を投入し、燃焼させた後、冷却することで、シリカ微粒子を形成させる方法である。前記VMC法では、投入するシリコン粉末の粒子径、投入量、火炎温度等を調整することにより、得られるシリカ微粒子の粒子径を調整できる。また、前記シリカ粒子としては、NSS−5N(トクヤマ(株)製)、Sicastar43−00−501(Micromod社製)等の市販品を用いることもできる。
【0027】
前記平均粒径5〜100nmシリカ粒子は、含浸性の点から、特に平均粒径10〜75nmであることが特に好ましい。シリカ粒子の平均粒子径が5nm未満では、繊維織布の繊維間を広げることができず、また100nmより大きい場合は、繊維間に入り込むことができない場合があると考えられる。
【0028】
前記シリカ粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱法、および動的光散乱法等により測定することができる。前記平均粒径5〜100nmシリカ粒子の場合は、粒子を水中で超音波により分散させ、動的光散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製、LB−550)により、粒子の粒度分布を体積基準で測定し、そのメディアン径(D50)を平均粒径とする。
【0029】
また、前記シリカ粒子は、特に限定されないが、疎水性であることが好ましい。これにより、シリカ粒子の凝集を抑制することができ、本発明の樹脂組成物中にシリカ粒子を良好に分散させることができる。また、熱硬化性樹脂とシリカ粒子との親和性が向上し、前記熱硬化性樹脂と前記シリカ粒子との表面の密着性が向上するため、機械強度に優れる絶縁層が得られる。
【0030】
シリカ粒子を疎水性にする方法としては、例えば、シリカ粒子を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法等が挙げられる。前記官能基含有シラン類としては公知のものを使用することができ、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシラン等が挙げられる。前記アルキルシラザン類としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。また、シリカ粒子に前記表面処理をすることにより、充填材の凝集防止、および分散性を高める効果も発揮する。
【0031】
前記シリカ粒子へ予め表面処理する官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の量は、特に限定しないが、前記シリカ粒子100重量部に対して0.01重量部以上、5重量部以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1重量部以上、3重量部以下が好ましい。官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類の含有量が前記上限値を超えると、プリント配線板製造時において絶縁層にクラックが入る場合があり、前記下限値未満であると、樹脂成分とシリカ粒子との結合力が低下する場合がある。
【0032】
前記シリカ粒子を予め官能基含有シラン類及び/又はアルキルシラザン類で表面処理する方法は、特に限定されないが、湿式方式または乾式方式が好ましい。特に好ましくは湿式方式が好ましい。湿式方式の方が、乾式方式と比較した場合、前記シリカ粒子の表面へ均一に処理することができる。
また、前記表面処理は、比表面積の50%以上に行うことが好ましい。
【0033】
前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子は、充填材全体の1〜20質量%の割合で含有される。含有量が前記下限値未満であると、含浸性を向上させる効果が不充分となり、含有量が前記上限値を超えると、逆に含浸性の悪化や、プリプレグの成形性に劣る恐れがある。なお、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の含有量は、充填材全体の3〜15質量%であることがより好ましい。
【0034】
本発明に用いられる充填材は、前記平均粒径5〜100nmのシリカ粒子の他に、特に限定されないが、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、平均粒径が100nmよりも大きいシリカ粒子等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、ベーマイト(AlO(OH)、「擬」ベーマイトと通常呼ばれるベーマイト(すなわち、Al2O3・xH2O、ここで、x=1から2))、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等の無機充填材を含有することができる。前記無機充填材は、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。これらの中でも水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、平均粒径が100nmよりも大きい球状シリカ粒子、タルク、焼成タルク、アルミナが好ましく、低熱膨張性、含浸性の点で特にベーマイト、平均粒径が100nmよりも大きい球状シリカ粒子、球状アルミナが好ましい。
【0035】
前述の平均粒径5〜100nmのシリカ粒子以外の無機充填材(以下、「その他の無機充填材」と称することがある。)としては、特に限定されないが、平均粒径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒径が多分散の無機充填材を用いることもできる。さらに、平均粒径が単分散及び/または多分散の無機充填材を、1種類または2種類以上併用することもできる。本発明において平均粒径が単分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以下であるものを意味し、多分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以上であるものを意味する。
前記その他の無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm〜5.0μmが好ましく、特に0.1μm〜3.0μmが好ましい。その他の無機充填材の粒径が前記下限値未満であると樹脂組成物の粘度が高くなるため、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、樹脂組成物中で無機充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。尚、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所SALD−7000等の一般的な機器)を用いて測定することができる。
【0036】
さらに、小径孔の加工、孔の狭ピッチ加工、および細線加工をする場合は、前記その他の無機充填材は、粗粒カットされていることが好ましい。中でも45μm以上の粗粒カットをされていることが好ましく、20μm以上の粗粒カットをされているがさらに好ましく、10μm以上の粗粒カットをされていることが特に好ましい。尚、「粗粒カット」とは、その粒径以上の大きさの粗粒が排除されていることを意味する。
【0037】
また、本発明に用いられる充填材は、前記無機充填材以外にゴム粒子等の有機充填材なども含有することが好ましい。本発明で使用され得るゴム粒子の好ましい例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成(株)製)、メタブレンKW−4426(商品名、三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER−91(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK−500(平均粒子径0.5μm、JSR(株)製)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン(株)製)等が挙げられる。
前記シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であれば特に限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、及び二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。前記シリコーン粒子としては、KMP−605、KMP−600、KMP−597、KMP−594(信越化学(株)製)、トレフィルE−500、トレフィルE−600(東レ・ダウコーニング(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0038】
本発明に用いられる充填材のうち、平均粒径が5〜100nmのシリカ粒子以外の充填材においても、凝集防止、および分散性を高めるため、予め表面処理を施されていることが好ましい。表面処理剤は、公知のシランカップリング剤を用いることができ、例えば、エポキシシラン、アミノシラン、ビニルシラン、アクリルシラン、メルカプトシラン等が挙げられる。また、表面処理は、比表面積の50%以上が好ましい。
【0039】
本発明に用いられる樹脂組成物中の充填材の含有量は、樹脂組成物全体の固形分基準で50〜85質量%であることが好ましく、特に65〜75質量%であることが好ましい。充填材含有量が前記上限値を超えると樹脂組成物の流動性が極めて悪く、プリプレグ製造の際の作業性に劣る。上記下限値未満であると熱膨張率が高く、絶縁層の強度が十分でない場合がある。
【0040】
(熱硬化性樹脂)
前記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂等が用いられ、通常は、エポキシ樹脂に他の熱硬化性樹脂を適宜組み合わせて用いられる。
【0041】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、実質的にハロゲン原子を含まないものが好ましい。ここで、「実質的にハロゲン原子を含まない」とは、エポキシ樹脂の合成過程において使用されたハロゲン系成分に由来するハロゲンが、ハロゲン除去工程を経ても尚、エポキシ樹脂に残存していることを許容することを意味する。通常、エポキシ樹脂中に30ppmを超えるハロゲン原子を含まないことが好ましい。
【0042】
前記実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4)-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、1,1,2,2−(テトラフェノール)エタンのグリシジルエーテル類、3官能、または4官能のグリシジルアミン類、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類のエポキシ樹脂を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上のエポキシ樹脂を併用することもできるし、1種類または2種類以上のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂のプレポリマーを併用することもできる。
これらエポキシ樹脂の中でも特に、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂、およびアントラセン型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのエポキシ樹脂を用いることにより、得られる積層板及びプリント配線板の吸湿半田耐熱性および難燃性を向上させることができる。
また、これらのエポキシ樹脂の中でも、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂を用いることにより、得られる積層板及びプリント配線板の耐熱性、低熱膨張性、および低熱収縮性を向上させることができる。
ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂は、例えば下記一般式(1)で示すことができる。
【0043】
【化1】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、アラルキル基、ナフタレン基、又はグリシジルエーテル基含有ナフタレン基を表し、o及びmはそれぞれ0〜2の整数であって、かつo又はmの何れか一方は1以上である。)
【0044】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の固形分基準で5〜60重量%とすることが好ましい。含有量が前記下限値未満であると樹脂組成物の硬化性が低下したり、当該樹脂組成物を用いて得られるプリプレグ、またはプリント配線板の耐湿性が低下したりする場合がある。また、前記上限値を超えるとプリプレグ、またはプリント配線板の線熱膨張率が大きくなったり、耐熱性が低下したりする場合がある。前記エポキシ樹脂の含有量は、特に好ましくは樹脂組成物全体の固形分基準で10〜50重量%である。
【0045】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1.0×102〜2.0×104が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグの表面にタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグの半田耐熱性が低下する場合がある。重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
本発明において、前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0046】
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、シアネート樹脂を含むことにより、難燃性を向上させ、熱膨張係数を小さくし、さらに、プリプレグの電気特性(低誘電率、低誘電正接)等を向上させることができる。
前記シアネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0047】
前記シアネート樹脂の種類としては特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂などを挙げることができる。
【0048】
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。
これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、および低熱膨張性に優れ、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、およびジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、および耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
【0049】
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよい。また、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を2種以上併用したり、前記シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応などにより、例えば3量化することで得られるものであり、樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
【0050】
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の固形分基準で5〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量%である。シアネート樹脂の含有量が前記範囲内であると、より効果的にプリプレグの耐熱性及び難燃性を向上させることができる。シアネート樹脂の含有量が前記下限未満であるとプリプレグの熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの強度が低下する場合がある。
【0051】
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、5.0×102〜4.5×103が好ましく、特に6.0×102〜3.0×103が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であると、プリプレグの表面にタック性が生じたり、機械的強度が低下したりする場合が有る。また、重量平均分子量が前記上限値を超えると、樹脂組成物の硬化反応が速くなり、導体層との密着性が悪化する場合がある。
本発明において、前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算の重量分子量として特定することができる。
【0052】
前記樹脂組成物は、特に限定されないが、ビスマレイミド樹脂を含むことにより、耐熱性を向上させることができる。
前記ビスマレイミド樹脂としては、特に限定されないが、N,N'−(4,4'−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスマレイミド樹脂が挙げられる。前記ビスマレイミド樹脂は、更に他のビスマレイミド樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。また、前記ビスマレイミド樹脂は、単独で用いてもよい。また、重量平均分子量の異なるビスマレイミド樹脂を併用したり、前記ビスマレイミド樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
【0053】
前記ビスマレイミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の固形分基準で1〜35重量%であることが好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。
【0054】
(硬化剤、硬化促進剤)
本発明に用いられる樹脂組成物は、硬化剤を併用しても良い。硬化剤としては、特に限定されず、例えば前記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合は、エポキシ樹脂の硬化剤として一般的に用いられるフェノール系硬化剤、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物等を用いることができる。
【0055】
また、本発明に用いられる樹脂組成物は、必要に応じて硬化促進剤を添加することができる。前記硬化促進剤は、特に限定されないが、例えば、有機金属塩、3級アミン類、イミダゾール類、有機酸、オニウム塩化合物等が挙げられる。硬化促進剤としては、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
【0056】
(カップリング剤)
前記樹脂組成物は、更にカップリング剤を含有しても良い。カップリング剤は、熱硬化性樹脂と充填材との界面の濡れ性を向上させるために配合される。これにより、繊維織布に対して樹脂および充填材を均一に定着させ、プリプレグの耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
前記カップリング剤は、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。これにより、充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによってプリプレグの耐熱性をより向上させることできる。
【0057】
前記カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると、充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合がある。また、含有量が前記上限値を超えると、反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0058】
(その他)
また、前記樹脂組成物には、必要に応じて、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、リン系、フォスファゼン等の難燃助剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0059】
本発明のプリプレグは、上述の熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有したワニスを繊維織布に保持させた後、前記溶剤を除去することにより得られる。前記ワニスの調製方法は、特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂及び充填材を溶媒に分散したスラリーを調製し、当該スラリーにその他の樹脂組成物の成分を添加し、さらに前記溶媒を加えて溶解・混合させる方法が好ましい。これにより、充填材の分散性を向上させ、前記充填材に含まれる平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を繊維織布に入り込みやすくすることができ、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。
なお、本発明において熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有するとは、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる可溶性の樹脂等は溶剤に溶解し、不溶性の充填材等は溶剤に分散していることを意味する。
【0060】
前記溶媒としては、特に限定されないが、前記樹脂組成物に対して良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン(ANON)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。なお、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。
【0061】
前記ワニスが含む樹脂組成物の固形分(ワニスから溶剤を除いた成分)は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。これにより、樹脂組成物の繊維織布への含浸性が向上される。また、コーティング時の表面平滑性、厚みばらつき等を抑制することができる。
【0062】
前記ワニスを前記繊維織布に含浸させる方法は、例えば繊維織布をワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法、ワニスを基材に塗布・乾燥させて樹脂シートを作製し、当該樹脂シートを樹脂層が繊維織布に接するように配して圧着させる方法等が挙げられる。これらの中でも、繊維織布をワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、繊維織布に対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。尚、繊維織布をワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。また、前記ワニスの溶剤を、例えば90〜180℃で、1〜10分間乾燥させることにより半硬化のプリプレグを得ることができる。
【0063】
前記プリプレグは、繊維織布からなる繊維織布層と、当該繊維織布層の両面に形成される樹脂組成物からなる樹脂層とで構成される。前記繊維織布層の厚みは、特に限定されないが、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは、10〜140μmであり、さらに好ましくは20〜90μmである。前記樹脂層の厚み(片面のみの一層分の厚み)は、特に限定されないが、0.5〜20μmであることが好ましく、2〜10μmであることが特に好ましい。繊維織布層の厚み及び樹脂層の厚みが前記範囲内であることにより、導体層との密着性及び表面平滑性がさらに良好となる。
【0064】
前記プリプレグの全体厚みは、特に限定されないが、30〜220μmであることが好ましく、特に40〜165μmであることが好ましい。これにより、プリプレグの取り扱い性が良好で、薄型化にも対応可能となる。
【0065】
前記プリプレグにおいて、繊維織布を構成するストランド中には、ストランドを構成する繊維が延伸する方向において50μm以上の長さを有する空隙が存在しない。これにより、プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。さらには、繊維織布を構成するストランド中には、ストランドを構成する繊維が延伸する方向において20μm以上、特に10μm以上の長さを有する空隙が存在しないことが好ましい。
また、前記プリプレグにおいて、繊維織布を構成するストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、50cm−1以下である。この場合においても、プリプレグを絶縁層に用いたプリント配線板の絶縁信頼性を向上させることができる。さらには、繊維織布を構成するストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、20cm−1以下、特に10cm−1以下であることが好ましい。
なお、上述のストランド中における空隙の長さや数密度は、ストランド中に存在するシリカ粒子の平均粒径や繊維織布のかさ密度等を適宜調整することにより実現される。
【0066】
2.積層板
次に、積層板について説明する。
本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグを硬化して得られることを特徴とする。また、本発明の積層板は、前記本発明に係るプリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されてなることが好ましい。
前記プリプレグは、1枚で用いても良いし、2枚以上積層した積層体を用いても良い。導体層が設置されてなる積層板(以下、「金属張積層板」と称することがある。)の場合は、上述のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られる。プリプレグを1枚で用いるときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ね、プリプレグを2枚以上積層した積層体を用いるときは、当該積層体の最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。
【0067】
前記金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。また、上記のような銅、銅系合金等の導体層をめっきにより形成してもよい。
【0068】
金属張積層板の製造の際、加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0069】
また、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図1に示す樹脂層付き金属箔を用いた金属張積層板の製造方法が挙げられる。まず、金属箔11に均一な樹脂層12をコーターで塗工した樹脂層付き金属箔10を準備する。次いで、繊維織布20の両側に、樹脂層付き金属箔10、10を、樹脂層12を内側にして配し(図1(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる。これにより、金属箔付きプリプレグ41を得る(図1(b))。次いで、金属箔付きプリプレグ41を直接加熱加圧成形することで、金属張積層板51を得ることができる(図1(c))。
【0070】
さらに、本発明の金属張積層板を製造する別の方法として、図2に示す樹脂層付き高分子フィルムシートを用いた金属張積層板の製造方法も挙げられる。まず、高分子フィルムシート31に、均一な樹脂層32をコーターで塗工した樹脂層付き高分子フィルムシート30を準備する。次いで、繊維織布20の両側に樹脂層付き高分子フィルムシート30、30を、樹脂層32を内側にして配し(図2(a))、真空中で加熱60〜130℃、加圧0.1〜5MPaでラミネート含浸させる。これにより、高分子フィルムシート付きプリプレグ42を得ることができる(図2(b))。次いで、高分子フィルムシート付きプリプレグ42の少なくとも片面の高分子フィルムシート31を剥離後(図2(c)では両面を剥離)、高分子フィルムシート31を剥離した面に金属箔11を配し(図2(d))、加熱加圧成形する。これにより、金属張積層板52を得ることができる(図2(e))。さらに、両面の高分子フィルムシートを剥離する場合は、前述のプリプレグ同様に、2枚以上積層することもできる。プリプレグを2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔または高分子フィルムシートを配し、加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。この様な製造方法で得られた金属張積層板は、厚み精度が高く、厚みが均一であり、更には表面平滑性に優れる。また成形歪の小さい金属張積層板を得ることができるため、当該製造方法により得られた金属張積層板を用い作製したプリント配線板、および半導体装置は、反りが小さく、反りばらつきも小さい。さらにプリント配線板、および半導体装置を、歩留り良く製造することができる。
【0071】
前記加熱加圧成形する条件としては、温度は、特に限定されないが、120〜250℃が好ましく、特に150〜220℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.5〜3MPaが好ましい。さらに必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
【0072】
図1〜2等の金属張積層板は、特に限定されないが、例えば、樹脂層付き金属箔を製造する装置及び金属張積層板を製造する装置を用いて製造される。
前記樹脂層付き金属箔を製造する装置において、金属箔は、例えば長尺のシート品を巻物形態にしたもの等を用い、これにより連続的に巻き出すことにより供給することができる。樹脂の供給装置により、樹脂ワニスが所定量連続的に金属箔上に供給される。ここで樹脂ワニスとしては、本発明の樹脂組成物を溶剤に溶解、分散させた塗布液が用いられる。樹脂ワニスの塗工量は、コンマロールと、当該コンマロールのバックアップロールとのクリアランスにより制御することができる。所定量の樹脂ワニスが塗工された金属箔は、横搬送型の熱風乾燥装置の内部を移送し、樹脂ワニス中に含有される有機溶剤等を実質的に乾燥除去し、必要に応じて、硬化反応を途中まで進めた樹脂層付き金属箔とすることができる。樹脂層付き金属箔は、そのまま巻き取ることもできるがラミネートロールにより、樹脂層が形成された側に保護フィルムを重ね合わせ、当該保護フィルムがラミネートされた樹脂層付き金属箔を巻き取って、巻物形態の絶縁樹脂層付き金属箔を得ている。図1〜2等の製造方法を用いた場合、従来のワニスを含浸させる製造方法より、均一な樹脂量の制御、および面内厚み精度に優れるため、半導体素子を搭載した半導体装置の反りばらつきが小さく、歩留まりが向上する。
【0073】
また、この様な製造方法により金属張積層板を得た場合、繊維織布への樹脂組成物の含浸性を考慮する必要がある。充填材は、平均粒径5〜100nmのシリカ粒子を用いることで、特に繊維基材への含浸性が向上するため、加熱加圧成形時に、金属張積層板内における樹脂組成物のフローを抑え、溶融樹脂の不均一な移動が抑制されるため、金属張積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
【0074】
3.プリント配線板
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグ及び/又は上記の積層板を内層回路基板に用いてなる。
または、本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグを内層回路上の絶縁層に用いてなる。
なお、内層回路基板に本発明のプリプレグ又は本発明の積層板を用いたプリント配線板の場合、内層回路基板内のプリプレグが硬化してできた層は絶縁層である。
【0075】
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。前記内層回路基板としては、例えば、本発明の積層板及び/又は本発明のプリプレグを用いてなるものを使用することができる。本発明の積層板を用いてなる内層回路基板としては、例えば、金属箔を有しない本発明の積層板にセミアディティブ法等により所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものや、本発明の金属張積層板の金属箔に所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
また、本発明のプリプレグを用いてなる内層回路基板としては、硬化樹脂等からなる絶縁性の支持体上にコンデンサ、抵抗、チップ等の電気/電子部品を搭載し、その上に本発明のプリプレグを積層し、加熱加圧硬化して得られた部品内蔵基板に、セミアディティブ法等により所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを用いることもできる。
さらに、本発明においては、このような本発明の積層板及び/又は本発明のプリプレグを用いてなる内層回路基板や、従来公知の内層回路基板の導体回路上に、さらに本発明のプリプレグを積層し、加熱加圧硬化させたものを内層回路基板とすることもできる。前記内層回路上の絶縁層としては、本発明のプリプレグを用いることができる。尚、前記内層回路上の絶縁層として、本発明のプリプレグを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明のプリプレグ又は積層板を用いてなるものでなくてもよい。
【0076】
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の金属張積層板を内層回路基板として用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
内層回路基板は、前記金属張積層板の片面又は両面に所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理することにより作製する。前記導体回路の形成方法は、特に限定されず、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により行うことができる。また、内層回路基板には、ドリル加工、レーザー加工等によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることができる。前記内層回路基板は、本発明の金属張積層板からなるため、特にレーザー加工によって、穴径、形状等の精度に優れたスルーホールを形成することができる。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
【0077】
次に、この内層回路基板に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形し、さらに加熱硬化することで絶縁層を形成する。具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを重ね合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形し、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0078】
次に、積層した絶縁層にレーザーを照射して、開孔部(ビア孔)を形成する。前記レーザーは、スルーホール形成に用いられるレーザーと同様のものを使用することができる。前記絶縁層は本発明のプリプレグからなるため、レーザー加工により、穴径、形状等の精度に優れた開孔部を形成することができる。
【0079】
レーザー照射後の樹脂残渣(スミア)等は、過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層導体回路層と下層導体回路層との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、デスミア処理を行うことで、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができるため、金属メッキ処理により絶縁層表面に導体層を形成したときに、絶縁層表面と導体層との密着性に優れる。尚、レーザー照射による開孔部形成の前に、絶縁層表面に導体層を形成してもよい。
【0080】
次に、開孔部及び絶縁層表面に金属メッキ処理を行い、導体層を形成する。前記絶縁層表面には、さらに前述の公知の方法等により導体回路形成を行う。なお、開孔部に金属メッキ処理を行い、導体層を形成することで、上層導体回路層と下層導体回路層との導通を図ることができる。
【0081】
さらに絶縁層を積層し、前記同様導体回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板では、導体回路形成後、最外層にソルダーレジスト膜を形成する。ソルダーレジスト膜の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、及び現像により形成する方法、又は液状レジストを印刷したものを露光、及び現像により形成する方法によりなされる。得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合は、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
【0082】
4.半導体装置
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンプを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
【0083】
半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダー等を用いて、プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
実施例及び比較例において用いた繊維織布は、JIS R3413に規定されるガラス繊維を、平織り製織された織布で、以下のガラス繊維織布A〜Lである。
A:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、44.5本、42本、開繊・扁平処理した厚み130μm、坪量155g/m2
B:Eガラス、DE150 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、46.5本、44本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
C:Tガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、65本、64本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
D:Dガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、65本、64本、開繊・扁平処理した厚み95μm、坪量121g/m2
E:Tガラス、D450 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、59本、59本、開繊・扁平処理した厚み46μm、坪量53g/m2
F:Tガラス、BC1500 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、90本、90本、開繊・扁平処理した厚み20μm、坪量24g/m2
G:Tガラス、C1200 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、74本、77本、開繊・扁平処理した厚み25μm、坪量31g/m2
H:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、44.5本、42本、開繊・扁平処理した厚み115μm、坪量155g/m2
I:Tガラス、E110 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、43本、40本、開繊・扁平処理した厚み145μm、坪量150g/m2
J:Tガラス、E225 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、59本、54本、開繊・扁平処理した厚み97μm、坪量100g/m2
K:Tガラス、D450 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、60本、47本、開繊・扁平処理した厚み50μm、坪量48g/m2
L:Tガラス、C1200 1/0のグラスファイバーヤーンを用い、経糸と横糸の25mmあたりの打込み本数が、68本、72本、開繊・扁平処理した厚み27μm、坪量25g/m2
【0086】
実施例及び比較例において用いたワニスは、以下のワニス製造例1〜7によって、樹脂組成物を溶剤に含有・混合させて製造されたものである。
(ワニス製造例1)
エポキシ樹脂(DIC社製 HP−5000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を65重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は13質量%、球状シリカは87質量%であった。
【0087】
(ワニス製造例2)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)9重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)17重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン3重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)60重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は14質量%、ベーマイトは86質量%であった。
【0088】
(ワニス製造例3)
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000FH)20重量部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製 HP4032D)5重量部、シアネート樹脂(東都化成(株)製 SN485の誘導体、ナフトール型)17重量、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)7.5重量%、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を7重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)35.5重量部、シリコーン粒子(信越化学工業(株)製 KMP600、平均粒径5μm)7.5重量部、オクチル酸亜鉛0.01重量、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)0.5重量を、メチルエチルケトンに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は14質量%、球状シリカは71質量%、シリコーン粒子は15質量%であった。
【0089】
(ワニス製造例4)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)18.5重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)34.9重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン6.1重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を5重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)35重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)0.5重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は12.5質量%、ベーマイトは87.5質量%であった。
【0090】
(ワニス製造例5)
エポキシ樹脂として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)2.80重量部、ビスマレイミド樹脂(ケイアイ化成工業社製 BMI−70)5.27重量部、4,4'−ジアミノジフェニルメタン0.93重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を10重量部、ベーマイト(河合石灰社製 BMB、平均粒径0.5μm)80重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、ジメチルホルムアミドに含有・混合させた。次いで、高速撹拌装置を用い撹拌して不揮発分70重量%となるように調整し、樹脂ワニスを調製した。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は11質量%、ベーマイトは89質量%であった。
【0091】
(ワニス製造例6)
エポキシ樹脂(DIC社製 HP−5000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、シリカ粒子(トクヤマ社製 NSS−5N、平均粒径70nm)を30重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を45重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は40質量%、球状シリカは60質量%であった。
【0092】
(ワニス製造例7)
エポキシ樹脂(日本化薬社製 NC−3000)を6重量部、フェノールノボラック型シアネート樹脂(ロンザ社製 PT30)12重量部、フェノール系硬化剤(明和化成社製 MEH−7851−4L)を6重量部、球状シリカ(アドマテックス社製 SO−31R、平均粒径1.0μm)を75重量部、エポキシシラン(信越化学工業社製 KBM−403E)1.0重量部を、メチルエチルケトン中に含有・混合させ、高速撹拌装置を用い撹拌して、エポキシ樹脂組成物が固形分基準で70重量%のワニスを得た。なお、ワニスに含有・混合させた樹脂組成物に含まれる充填材全体を100質量%とすると、当該充填材に含まれるシリカ粒子は0質量%、球状シリカは100質量%であった。
【0093】
ワニス製造例1〜7に用いられる樹脂組成物の組成を表1に示す。なお、各成分の配合量は、重量部で示す。
【0094】
【表1】
【0095】
上記ガラス繊維織布及び上記ワニスを用いて、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板及び半導体装置を作製した。
【0096】
<実施例1>
(1)プリプレグの作製
製造例1で得られたワニスを厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材(以下、PET基材)上に流延塗布して、温度140℃で時間10分で溶剤を揮発乾燥させて、樹脂層の厚みが30μmになるようにした。前記樹脂層付き基材を、ガラス織布Aの両面に樹脂層がガラス織布に接するように配し、圧力0.5MPa、温度140℃で1分間の条件で真空加圧式ラミネーター(名機製作所社製MLVP−500)により加熱加圧して、樹脂組成物を含浸させた。これにより、両面にPET基材を有する厚み150μmのプリプレグ(樹脂層(片面):10μm、繊維織布層:130μm)得た。
【0097】
(2)金属張積層板の作製
前記プリプレグの両面にキャリア付き2μmの銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMT18Ex−2)を重ねて、圧力3MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形した。これにより、プリプレグが硬化してなる厚さ150μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板を得た。
【0098】
(3)多層プリント配線板絶縁層用プリプレグの作製
前記製造例1で得られたワニスをガラス織布(厚さ16μm、ユニチカ社製 Eガラス織布、E02Z、坪量17.5g/m2)に含浸し、180℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中の樹脂組成物が固形分基準で約78重量%のプリプレグ(厚み40μm)を得た。なお、前記ガラス織布は、かさ密度1.09g/cm3、通気度41cc/cm2/sec、扁平率(厚み:幅)1:16であった。また、前記ガラス織布は、板状にした際のヤング率が93GPa、板状にした際の引張強度が48GPa、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が90N/25mmのガラス繊維からなるものであった。
【0099】
(4)プリント配線板(内層回路基板)の製造
前記金属張積層板から、キャリア箔を剥離し、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.4mm、ビーム径約120μm、エネルギー7〜9mJ、ショット数6の条件で、φ100μmの貫通スルーホールを形成した。次いで、当該金属張積層板を、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に10分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に、無電解メッキ(上村工業社製、スルカップPEAプロセス)で上下銅箔間の導通を図った。
次いで、この無電解めっき層の表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、サンフォートUFG−255)をホットロールラミネーターにより貼り合わせた。次いで、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたガラスマスク(トピック社製)の位置を合わせた。次いで当該ガラスマスクを使用して、露光装置(小野測器EV−0800)にて露光した後、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、レジストマスクを形成した。次に、無電解めっき層を給電層電極として、電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm2、25分間行った。これにより、厚さ約20μmの銅配線のパターンを形成した。次に、剥離機を用いて、モノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)により、前記レジストマスクを剥離した。そして、給電層であるパターン形状以外の不要な銅箔および無電解めっき層をフラッシュエッチング(荏原電産社製SAC−702MとSAC−701R35の純水溶液)により除去して、L/S=20/20μmのパターンを形成した。
次いで、導体回路の粗化処理(メック社製、メックエッチボンド CZ−8100)を行った。当該粗化処理は、液温35℃、スプレー圧0.15MPの条件でスプレー噴霧処理し、銅表面に粗さ3μm程度の粗面化を施すことにより行われた。次いで、導体回路の表面処理(メック社製、メックエッチボンド CL−8300)を行った。当該表面処理では、液温25℃、浸漬時間20秒間の条件で浸漬して、銅表面に防錆処理を行った。このようにして、プリント配線板(内層回路基板)を作製した。
【0100】
(5)多層プリント配線板の製造
次に、前記で得られたプリント配線板を内層回路基板として、その両面に前記多層プリント配線板絶縁層用プリプレグとキャリア付き2μmの銅箔(三井金属鉱業社製、マイクロシンMT18Ex−2)を重ねて配し、積層真空積層装置を用いて積層し、温度200℃、圧力3MPa、時間120分間加熱硬化し、多層積層体を得た。次に、外層回路形成を、前記(4)プリント配線板(内層回路基板)の製造方法と同様に行い、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、多層プリント配線板を得た。
【0101】
前記多層プリント配線板は、半導体素子の半田バンプ配列に相当する接続用電極部にENEPIG処理を施した。ENEPIG処理は、[1]クリーナー処理、[2]ソフトエッチング処理、[3]酸洗処理、[4]プレディップ処理、[5]パラジウム触媒付与、[6]無電解ニッケルメッキ処理、[7]無電解パラジウムメッキ処理、[8]無電解金メッキ処理の工程で行われた。
【0102】
(6)半導体装置の製造
半導体装置は、ENEPIG処理を施されたプリント配線板上に半田バンプを有する半導体素子(TEGチップ、サイズ10mm×10mm、厚み0.1mm)を、フリップチップボンダー装置により、加熱圧着により搭載し、次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。尚、前記半導体素子の半田バンプは、Sn/Pb組成の共晶で形成されたものを用いた。最後に14mm×14mmのサイズにルーターで個片化し、半導体装置を得た。
【0103】
<実施例2〜3、および比較例1〜6>
表4に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ150μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
【0104】
<実施例4〜6、および比較例7>
プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表5に記載の通りとした以外は、表5に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にして、プリプレグ、厚さ100μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー7〜9mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0105】
<実施例7、8、および比較例8>
実施例7及び比較例8は、プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表6に記載の通りとした以外は、表6に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ60μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
実施例8は、プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表6に記載の通りとした以外は、表6に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ(全体厚み30μm)、当該30μmのプリプレグを2枚積層し、硬化してなる厚さ60μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、内層回路基板、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー6〜8mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0106】
<実施例9、および比較例9>
プリプレグ作製時に、樹脂層付き基材の樹脂層の厚みを表7に記載の通りとした以外は、表7に示す繊維織布およびワニスの製造例により得られたワニスを用いて、実施例1と同様にプリプレグ、厚さ40μmの絶縁層の両面に銅箔を有する金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)、多層プリント配線板および半導体装置を得た。
尚、プリント配線板の貫通スルーホール形成は、炭酸ガスレーザー(三菱電機社製、ML605GTX3−5100U2)を用いて、アパーチャーφ1.1mm、ビーム径約110μm、エネルギー6〜8mJ、ショット数6の条件で行われ、直径100μmの貫通スルーホールを形成した。
【0107】
実施例および比較例で得られたプリプレグ、金属張積層板、プリント配線板(内層回路基板)及び半導体装置について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。また得られた評価結果を表4〜7に示す。
なお、後述するPKG反りの測定結果が金属張積層板の絶縁層の厚みに依存するため、金属張積層板の絶縁層の厚みが150μmの実施例および比較例の評価結果を表4に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが100μmの実施例および比較例の評価結果を表5に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが60μmの実施例および比較例の評価結果を表6に示し、金属張積層板の絶縁層の厚みが40μmの実施例および比較例の評価結果を表7に示した。
また、表4〜7中において、樹脂組成物中の充填材量(質量%)は、樹脂組成物全体を100質量%としたときの充填材量を示したものであり、充填材の組成(質量)%は、充填材全体を100質量%としたときの各成分の割合を示したものである。
【0108】
<評価方法>
(1)樹脂組成物の含浸性
前記実施例及び比較例で得られたプリプレグを170℃の温度で、1時間硬化後、断面(幅方向の断面部300mmの範囲について)をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、繊維内部におけるボイドの有無を評価した。ボイドは、画像上、繊維断面における白色粒状の点として観察される。
各符号は以下の通りである。
○:樹脂組成物が全て良好に含浸し、繊維内部にボイドがない場合
×:繊維内部にボイドがある場合
【0109】
(2)成形性
前記実施例及び比較例で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした後に、500mm×500mmの範囲をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、絶縁層(繊維織布層の表面にある樹脂層)の表面におけるボイドの有無を評価した。ボイドは、画像上、白色粒状の点として観察される。
各符号は以下の通りである。
○:ボイドなし
×:ボイドあり
【0110】
(3)吸湿半田耐熱性
前記実施例及び比較例で得られた金属張積層板を50mm×50mm角に切断したサンプルを用いて、JIS C-6481に基づいて、前記サンプルの片面の半分以外の全銅箔をエッチング除去し、プレシッヤークッカー試験機(エスペック社製)で121℃、2気圧で2時間処理後、260℃の半田槽に30秒間浸漬させて、外観変化の異常の有無を目視にて観察した。
各符号は以下の通りである。
○:異常がない場合
×:膨れ、剥がれがある
【0111】
(4)線熱膨張係数(CTE)(ppm/K)
線熱膨張係数(CTE)は、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、4mm×20mmの試験片を作製し、温度範囲30〜300℃、10℃/分、荷重5gの条件で2サイクル目の50〜100℃におけるCTEを測定した。尚、サンプルは、各実施例および比較例で得られた金属張積層板の銅箔をエッチング除去したものを用いた。
【0112】
(5)レーザー加工性
前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、炭酸レーザー加工後の貫通スルーホールのクロス突出量、孔径の真円度を測定した。クロス突出量及び真円度の測定は、カラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製、装置名VK-9710)を用い、クロス突出量の測定は、レーザー入射側の孔の真上から観察して孔壁面からの突出長さを測定することによって行い、真円度の測定は、レーザー入射側の孔の真上から観察して、孔トップ径の長径と短径を測定し、長径÷短径を算出することによって行った。尚、サンプルは、前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、下記表2に示す炭酸ガスレーザー条件で、直径100μmの孔加工直後の基板を真上から観察し、貫通孔10個の平均値とした。
【0113】
【表2】
【0114】
各符号は以下の通りである。
○:クロス突出量が10μm以内、かつ真円度が0.85以上であった場合
△:クロス突出量が10μm以上、または真円度が0.85未満であった場合
×:クロス突出量が10μm以上、かつ真円度が0.85未満であった場合
【0115】
(6)貫通スルーホールの絶縁信頼性
前記実施例及び比較例で得られたプリント配線板(内層回路基板)を用い、貫通スルーホール間の絶縁信頼性を評価した。
プリント配線板のスルーホール壁間0.1mm部分を用い、印加電圧10V、温度130℃湿度85%の条件で、連続測定で評価した。なお、測定は高度加速寿命試験装置(エスペック社製EHS−211(M)、AMIイオンマイグレーションシステム)を用いて行い、絶縁抵抗値が108Ω未満となる時点で終了とした。
各符号は以下の通りである。
◎:200時間を超えた。
○:100時間以上200以下であった。
△:50時間以上100時間未満であった。
×:50時間未満であった。
【0116】
(7)PKG反り
実施例および比較例で得られた半導体装置(14mm×14mm)を、温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220−MT100MT50)のサンプルチャンバーに半導体素子面を下にして設置し、上記測定機を用いて、半導体装置の室温(25℃)及び260℃での反りを測定した。反りの測定は、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。尚、測定範囲は、13mm×13mmサイズであった。
各符号は以下の表3の通りである。なお、PKG反りの測定は、金属張積層板の絶縁層の厚みに依存するので、金属張積層板の絶縁層の厚み別に、表3に示すように判定した。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】
【0122】
前記(1)樹脂組成物の含浸性の観察結果の代表例として、実施例1で得られたプリプレグの断面図の写真を図3に示し、比較例4で得られたプリプレグの断面図の写真を図4に示した。
図4からわかるように、比較例4では、樹脂組成物の含浸性が悪いため、繊維織布中にボイドが観察された。一方、図3からわかるように、実施例1では、樹脂組成物の含浸性が良好であるため、繊維織布中にボイドがなかった。
実施例1においては、ナノサイズのシリカ粒子がストランド中へ入り込むことにより、樹脂組成物の含浸性が向上したものと思われる。これに対し、比較例4では、ナノサイズのシリカ粒子を含有していないため、樹脂組成物の含浸性の向上を図ることができなかったことが分かる。
【0123】
前記(2)金属張積層板の成形性観察結果の代表例として、実施例1で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真を図5に示し、比較例6で得られた金属張積層板の銅箔を全面エッチングした表面の写真を図6に示し、さらに図6で観察されるボイド(画像上で白色粒状の点)の拡大図のSEM写真を図7に示し、図7で観察されるボイドの断面の拡大図のSEM写真を図8に示した。図6、7、8からわかるように、比較例6では、金属張積層板を全面エッチングした表面にボイドが観察された。一方、図5からわかるように、実施例1では、全面エッチングした表面にボイドがなかった。
【0124】
図9〜12は、実施例1で得られたプリプレグの繊維織布を構成するストランドの一部を示す断面図のSEM写真である。図9は、ストランドの延伸方向と平行な断面を示している。図10〜12は、ストランドの延伸方向と垂直な断面を示している。
図9〜12に示すように、実施例1で得られたプリプレグにおいて、ストランド中にシリカ粒子が存在することが分かる。
【0125】
表4〜7に示す実施例1〜9では、良好なプリプレグ含浸性が得られた。また、他の諸特性についても、全て良好な結果が得られていることが分かる。これは、シリカ粒子が繊維織布を構成するストランド中に入り込む条件において、プリプレグの作成が行われたことに起因すると考えられる。
なお、ストランド中へのシリカ粒子の入り込みを制御する因子としては、例えばシリカ粒子の平均粒径、充填材中のシリカ粒子の含有量、樹脂組成物中の充填材の含有量、繊維織布のかさ密度等、様々なものが挙げられる。
【0126】
表4〜7からわかるように、実施例1〜9では、ワニスに含有される樹脂組成物が、充填材を当該樹脂組成物全体の50〜85質量%含有し、当該充填材のうち平均粒径が5〜100nmのシリカ粒子を1〜20質量%含有し、且つ、繊維織布のかさ密度が1.05〜1.30g/cm3であった。この場合、上記すべての評価項目において優れた評価結果となった。すなわち本実施例に係るプリプレグは、繊維織布に対する樹脂組成物の含浸性に優れ、低熱膨張性であり、プリント配線板の絶縁層として用いたときにレーザー加工性に優れ、レーザーにより形成された穴が、穴径および形状の精度が良く、且つ、繊維の突出を抑制した穴を形成することができることがわかった。さらに、本実施例に係るプリプレグは、吸湿半田耐熱性に優れることから、高耐熱性であり、成形性に優れることから、表面平滑性にも優れ、ひいては導体層との密着性に優れるといえる。また、本発明の半導体装置におけるPKG反りが小さいことから、本実施例に係るプリプレグは低熱膨張性であるとともに高剛性であることもわかる。
【0127】
比較例1および6においても、良好なプリプレグ含浸性を得た。
しかしながら、比較例1では、CTEおよびパッケージ反りにおいて良好な結果が得られなかった。これは、充填材の含有量が低いために樹脂組成物の樹脂成分のみがストランド内に入り込むことで、シリカ粒子がストランド中に入ることが抑制されてしまうためであると思われる。これにより、充填材を高充填化することができず、プリプレグのCTEが高くなり、パッケージ反りが発生したものと考えられる。
また、比較例6では、良好な結果が得られなかった。これは、かさ密度が低いことにより十分な量の樹脂組成物を含浸させることができために、樹脂組成物中に含まれるシリカ粒子についてもストランド中に入ることが抑制されてしまうことに起因すると思われる。また、繊維織布のかさ密度が小さいため厚い繊維基材となることから、プリプレグの表層の樹脂層の厚さが薄くなる。このため、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、CTEは良好なもののPKG反りが生じたものと考えられる。
【0128】
比較例4および7〜9では、プリプレグの含浸性について、良好な結果が得られなかった。比較例4および7〜9では、プリプレグを構成する樹脂組成物中にナノサイズのシリカ粒子が含有されていない。このため、シリカ粒子がストランド中へ入り込めず、樹脂組成物の含浸性の向上を図れなかったものと思われる。また、これにより、CTEおよびパッケージ反り等、他の諸特性においても良好な結果が得られなかった。
比較例7では、繊維織布のかさ密度が小さいことからレーザー加工性に劣り、含浸性が悪いことから貫通スルーホールの絶縁信頼性に劣る。また、比較的厚い繊維織布を用いたためプリプレグの樹脂層の厚さが薄くなり、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、PKG反りが生じた。
比較例8および9では、金属張積層板の絶縁層厚みが比較的薄いため、成形性、吸湿半田耐熱性、貫通スルーホールの絶縁信頼性には優れる。しかしながら、繊維織布のかさ密度が小さいため、レーザー加工性において良好な結果が得られなかった。
【0129】
比較例2、3、および5においても、プリプレグの含浸性について、良好な結果が得られなかった。また、他の諸特性についても、良好な結果は得られなかった。比較例2では、充填材の含有量が高すぎることから、樹脂組成物中におけるシリカ粒子の流動性が得られず、結果ストランド中へシリカ粒子の入り込みが抑制されたものと思われる。比較例3では、ナノサイズのシリカ粒子の含有量が高いため、ナノサイズのシリカ粒子が凝集してしまい、結果ストランド中へのシリカ粒子の入り込みが抑制されたものと思われる。比較例5では、繊維織布のかさ密度が大きいため、シリカ粒子がストランド中へ入り込むことが抑制されたものと思われる。
比較例5では、繊維織布のかさ密度が大きすぎるため、樹脂組成物の含浸性が悪く、吸湿半田耐熱性に劣り、レーザー加工性及び貫通スルーホールの絶縁信頼性にも劣っていた。
比較例6では、繊維織布のかさ密度が小さいため、レーザー加工性及び貫通スルーホールの絶縁信頼性に劣っていた。さらに、繊維織布のかさ密度が小さいため厚い繊維基材となることから、プリプレグの表層の樹脂層の厚さが薄くなる。このため、成形性、吸湿半田耐熱性に劣り、PKG反りが生じた。
【符号の説明】
【0130】
10 樹脂層付き金属箔
11 金属箔
12 樹脂層
20 繊維織布
30 樹脂層付き高分子フィルムシート
31 高分子フィルムシート
32 樹脂層
40 プリプレグ
41 金属箔付きプリプレグ
42 高分子フィルムシート付きプリプレグ
51 金属張積層板
52 金属張積層板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグであって、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在するプリプレグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中には、前記ストランドを構成する繊維が延伸する方向において50μm以上の長さを有する空隙が存在しないプリプレグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、50cm−1以下であるプリプレグ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であるプリプレグ。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中に存在する前記シリカ粒子の平均粒径は、5〜100nmであるプリプレグ。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂および充填材を含み、
前記充填材は、前記樹脂組成物の固形分に対し50〜85質量%の割合で含有されるプリプレグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプリプレグにおいて、
前記充填材は、前記シリカ粒子を前記充填剤に対し1〜20質量%の割合で含有するプリプレグ。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
全体厚みが30〜220μmであるプリプレグ。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランドは、少なくともSiO2を50〜100質量%、Al2O3を0〜30質量%、CaOを0〜30質量%の割合で含有するガラス繊維により構成されるプリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグにおいて、
前記ガラス繊維は、Tガラス、Sガラス、Dガラス、Eガラス、NEガラス、石英ガラスよりなる群から選ばれる少なくとも一種類のガラスを用いてなるプリプレグ。
【請求項11】
請求項9または10に記載のプリプレグにおいて、
前記ガラス繊維は、板状にした際のヤング率が50〜100GPa、板状にした際の引張強度が25GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が30N/25mm以上であるプリプレグ。
【請求項12】
請求項9ないし11いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記繊維織布の通気度は、1〜80cc/cm2/secであるプリプレグ。
【請求項13】
請求項1ないし12いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記シリカ粒子は、官能基含有シラン類またはアルキルシラザン類により表面処理が施されているプリプレグ。
【請求項14】
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。
【請求項15】
請求項14に記載の積層板において、
前記プリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されている積層板。
【請求項16】
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグ、もしくは請求項14または15に記載の積層板を内層回路基板に用いてなるプリント配線板。
【請求項17】
請求項16に記載のプリント配線板において、
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグが、前記内層回路基板上に絶縁層として設けられているプリント配線板。
【請求項18】
請求項16または17に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【請求項1】
ストランドにより構成される繊維織布に樹脂組成物を含浸させてなるプリプレグであって、前記ストランド中にはシリカ粒子が存在するプリプレグ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中には、前記ストランドを構成する繊維が延伸する方向において50μm以上の長さを有する空隙が存在しないプリプレグ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中における、直径が50μm以上である空隙の数密度は、50cm−1以下であるプリプレグ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記繊維織布のかさ密度は、1.05〜1.30g/cm3であるプリプレグ。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランド中に存在する前記シリカ粒子の平均粒径は、5〜100nmであるプリプレグ。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂および充填材を含み、
前記充填材は、前記樹脂組成物の固形分に対し50〜85質量%の割合で含有されるプリプレグ。
【請求項7】
請求項6に記載のプリプレグにおいて、
前記充填材は、前記シリカ粒子を前記充填剤に対し1〜20質量%の割合で含有するプリプレグ。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
全体厚みが30〜220μmであるプリプレグ。
【請求項9】
請求項1ないし8いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記ストランドは、少なくともSiO2を50〜100質量%、Al2O3を0〜30質量%、CaOを0〜30質量%の割合で含有するガラス繊維により構成されるプリプレグ。
【請求項10】
請求項9に記載のプリプレグにおいて、
前記ガラス繊維は、Tガラス、Sガラス、Dガラス、Eガラス、NEガラス、石英ガラスよりなる群から選ばれる少なくとも一種類のガラスを用いてなるプリプレグ。
【請求項11】
請求項9または10に記載のプリプレグにおいて、
前記ガラス繊維は、板状にした際のヤング率が50〜100GPa、板状にした際の引張強度が25GPa以上、繊維織布にした際の長手方向の引張強度が30N/25mm以上であるプリプレグ。
【請求項12】
請求項9ないし11いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記繊維織布の通気度は、1〜80cc/cm2/secであるプリプレグ。
【請求項13】
請求項1ないし12いずれか1項に記載のプリプレグにおいて、
前記シリカ粒子は、官能基含有シラン類またはアルキルシラザン類により表面処理が施されているプリプレグ。
【請求項14】
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグを硬化して得られる積層板。
【請求項15】
請求項14に記載の積層板において、
前記プリプレグの少なくとも一方の外側の面に導体層が設置されている積層板。
【請求項16】
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグ、もしくは請求項14または15に記載の積層板を内層回路基板に用いてなるプリント配線板。
【請求項17】
請求項16に記載のプリント配線板において、
請求項1ないし13いずれか1項に記載のプリプレグが、前記内層回路基板上に絶縁層として設けられているプリント配線板。
【請求項18】
請求項16または17に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−167256(P2012−167256A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9112(P2012−9112)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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