説明

プリプレグシート、配線基板及び実装構造体

【課題】本発明は、単繊維と樹脂部との接着強度を高める要求に応えるプリプレグシート、単繊維、配線基板及び実装構造体を提供するものである。
【解決手段】上記の課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかるプリプレグシート1は、細長形状の単繊維2と、単繊維2を被覆する樹脂部前駆体3aと、を備え、単繊維2は、その長手方向に沿った溝状の凹部C1を表面に有し、凹部C1の内面に樹脂部前駆体3aが接触していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグシートと、かかるプリプレグシートを用いて作製した配線基板と、かかる配線基板に電子部品を実装した実装構造体と、に関するものである。かかる実装構造体は電子機器に使用される。かかる電子機器は、各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器又はその周辺機器等である。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品が実装される配線基板が知られている。かかる電子部品は、半導体素子又はコンデンサ等である。かかる半導体素子は、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等である。
【0003】
かかる配線基板は、プリプレグシートを積層することにより形成される基体と、前記基体の上面又は下面に形成された導電層と、を備えた構成が知られている。
【0004】
かかるプレプリグシートは、特許文献1に、細長形状の単繊維と、前記単繊維を被覆する樹脂部前駆体と、を備えた構成が記載されている。かかる樹脂部前駆体は、配線基板にて樹脂部を構成する。
【0005】
しかしながら、単繊維の線膨張係数と樹脂部の線膨張係数とは異なる。従って、例えば、特許文献1のプリプレグシートを配線基板に適用すると、電子部品を配線基板に実装する際に行われるはんだリフロー時の加熱又は電子部品の発熱等により、配線基板に熱が印加された場合、単繊維と樹脂部との間に熱膨張の差が生じる。その結果、単繊維と樹脂部との境界に強い熱応力が印加され、単繊維と樹脂部とが剥離し、配線基板の信頼性が低下しやすくなる。
【特許文献1】特開2005−29912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、単繊維と樹脂部との接着強度を高める要求に応えるプリプレグシート、配線基板及び実装構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態にかかるプリプレグシートは、細長形状の単繊維と、前記単繊維を被覆する樹脂部前駆体と、を備え、前記単繊維は、その長手方向に沿った溝状の凹部を表面に有し、前記凹部の内面に前記樹脂部前駆体が接触していることを特徴とする。
【0008】
本発明の一形態にかかる配線基板は、細長形状の単繊維と、前記単繊維を被覆する樹脂部と、を有する基体と、前記基体の上面又は下面に形成された導電層と、を備え、前記単繊維は、その長手方向に沿った溝状の凹部を表面に有し、前記凹部の内面に前記樹脂部が接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態にかかるプリプレグシート、配線基板及び実装構造体によれば、単繊維と樹脂部との接着強度を高めることができる。その結果、信頼性に優れた配線基板及び実装構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の第1実施形態にかかるプリプレグシートを図1から図3に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すプリプレグシート1は、複数の細長形状の単繊維2と、単繊維2を被覆する樹脂部前駆体3aと、を備えている。
【0012】
複数の単繊維2は、プリプレグシート1内にて一方向にシート状に配列され、各々が糸状の構造を有している。その結果、プリプレグシート1の上面及び下面の平坦性を高めることができる。単繊維2は、例えば低熱膨張樹脂又は低熱膨張ガラス繊維等を含み、特に低熱膨張樹脂を含むことが望ましい。低熱膨張樹脂は、例えばポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂又は全芳香族ポリエステル樹脂等を用いても構わない。低熱膨張ガラス繊維は、Sガラス又はTガラス等を用いても構わない。
【0013】
単繊維2は、線膨張係数が低い材料から構成されていることが望ましい。単繊維2の長手方向(X方向)の線膨張係数は、−12ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。単繊維2の長手方向に直交する断面方向(XZ平面方向)の線膨張係数は、50ppm/℃以上110ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。なお、線膨張率は、ISO11359‐2:1999に準ずる試験方法により測定される。
【0014】
樹脂部前駆体3aは、単繊維2同士の間に充填されるとともに、一方向に配列した単繊維2の上面及び下面を被覆するように形成されている。樹脂部前駆体3aは、未硬化の熱硬化性樹脂等を含む。熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリイミド樹脂又はポリフェニレエーテル樹脂等を含む。なお、熱硬化性樹脂の線膨張係数は、例えば10ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。また、未硬化とは、ISO472:1999に準ずるA‐ステージ又はB‐ステージのことをいう。
【0015】
次に、単繊維2について、より詳細に説明する。
【0016】
図3Aから図3Eに示すように、単繊維2は、その長手方向に沿った溝状の凹部C1を表面に複数有し、凹部C1の内面に樹脂部前駆体3aが接触している。複数の凹部C1は、前記長手方向に直交する断面の周回方向に沿って配列されている。これにより、単繊維2の表面積が増加するとともに、凹部C1内に樹脂部前駆体3aの一部を容易に充填できる。その結果、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの接触面積が増加するため、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの接着強度を高めることができる。なお、凹部C1は、単数であっても構わない。
【0017】
凹部C1の内面は、曲面からなることが望ましい。その結果、単繊維2の長手方向に応力が印加された場合、凹部C1の内面の一部に応力が集中することを抑制でき、単繊維2の機械的強度を高めることができる。
【0018】
単繊維2の長手方向に直交する断面積は、例えば27μm2以上192μm2以下に設定されていることが望ましい。また、凹部C1の深さは、例えば1μm以上5μm以下に設定されていることが望ましい。凹部C1の深さが、1μm以上であることにより、凹部C1内に樹脂部前駆体3aの一部が容易に充填される。また、凹部C1の深さが、5μm以下であることにより、単繊維2の機械的強度維持しつつ、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの接触面積を増加させることができる。なお、凹部C1の深さは、凹部C1の開口から凹部C1の底部までの距離のことをいう。また、凹部C1の幅は、例えば1μm以上3μm以下に設定されていることが望ましい。凹部C1の幅が、1μm以上であることにより、凹部C1内に樹脂部前駆体3aの一部が容易に充填される。また、凹部C1の幅が、3μm以下であることにより、単繊維2の機械的強度維持しつつ、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの接触面積を増加させることができる。なお、凹部C1の幅は、凹部C1の開口における前記周回方向への幅のことをいう。また、単繊維2は、溝状の凹部C1を3個以上12個以下有することが望ましい。また、隣接する凹部C1の底部同士の距離は、1μm以上8μm以下に設定されていることが望ましい。
【0019】
図2Cに示すように、隣接する単繊維2同士は、一方の単繊維2の溝状の凹部C1と、他方の単繊維2の隣接する溝状の凹部C1同士の間の領域と、が対応するように、配列されることが望ましい。その結果、隣接する単繊維2同士をより近づけて配列することができ、プリプレグシート1にて単繊維2の密度を高めることができる。これにより、プリプレグシート1を硬化させて形成される配線基板5の剛性の向上や熱膨張係数の低減が容易となる。また、隣接する単繊維2同士は、一方の単繊維2の溝状の凹部C1と、他方の単繊維2の隣接する溝状の凹部C1同士の間の領域と、によりアンカー効果を奏するため、単繊維2と、隣接する単繊維2同士の間に位置する樹脂部前駆体3aと、の接着強度を高めることができる。また、隣接する単繊維2同士はアンカー効果を奏するため、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの剥離により生じる単繊維2の位置ずれを低減できる。
【0020】
次に、本発明の第1実施形態にかかる配線基板を含む実装構造体を、図4に基づいて説明する。なお、本実施形態の配線基板は、上述したプリプレグシートを用いて作製される。
【0021】
図4に示す実装構造体4は、配線基板5と、配線基板5の上面にバンプ6を介してフリップチップ実装された電子部品7と、を含んで構成されている。
【0022】
配線基板5は、基体8と、基体8の上面及び下面に積層された複数の絶縁層9と、絶縁層9の上面及び下面に配置された複数の導電層10と、を含んで構成されている。
【0023】
基体8は、複数の繊維層11を積層した構造を有する。繊維層11は、上述したプリプレグシート1により形成される。繊維層11は、複数の細長形状の単繊維2と、単繊維2を被覆する樹脂部3bと、を備えている。
【0024】
単繊維2は、上述したプリプレグシート1が備えている単繊維2に対応しており、一方向にシート状に配列されている。単繊維2は、線膨張係数が低い材料から構成されていることが望ましい。このような単繊維2を用いることにより、配線基板5と電子部品7との線膨張係数の差が低減され、実装構造体4に熱が印加された時に、配線基板5と電子部品7との間に印加される熱応力を低減できる。
【0025】
隣接する繊維層11同士は、それぞれの単繊維2の長手方向が直交することが望ましい。その結果、配線基板5の平面(XY平面)にて、直交する2方向(X方向及びY方向)における線膨張係数の差が低減されるため、配線基板5と電子部品7との線膨張係数の差が低減される。
【0026】
樹脂部3bは、上述したプリプレグシート1が備えている樹脂部前駆体3aに対応しており、上述した樹脂部前駆体3aに含まれる未硬化の熱硬化性樹脂を硬化することにより、形成される。
【0027】
樹脂部3bは、凹部C1の内面に接触している。その結果、単繊維2と樹脂部3bとの接触面積が増加するため、単繊維2と樹脂部3bとの接着強度を高めることができる。これにより、基体8にクラックが生じる可能性を低減し、配線基板5の信頼性を高めることができる。
【0028】
また、基体8は、上下方向(Z方向)に貫通するスルーホールSが複数形成されている。スルーホールSの内壁には、スルーホール導体12が形成されている。複数のスルーホール導体12は、基体8の上面及び下面に形成された導電層10同士を電気的に接続している。スルーホール導体12は導電材料からなる。導電材料は、例えば銅、銀、ニッケル又はクロム等を含む。本実施形態においては、スルーホール導体12は、円筒状に形成されており、基体8の平坦性を担保するため、該円筒状の内部に絶縁体13が充填されている。なお、絶縁体13は、樹脂材料、フィラー、エラストマー、難燃剤及び硬化剤等を含む。樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂又はシアネート樹脂等を用いても構わない。また、フィラーとしては、例えば酸化ケイ素又は酸化アルミニウム等を用いても構わない。また、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー又はポリエステル系エラストマー等を用いても構わない。
【0029】
また、スルーホールSの内壁には、単繊維2と樹脂部3bとの間に生じる空隙が露出している場合があるが、本実施形態においては、単繊維2と樹脂部3bとが強固に接着されている。それ故、単繊維2と樹脂部3bとの剥離が抑制されるため、単繊維2と樹脂部3bとの剥離により基体8内に空隙が生じる可能性を低減できる。このため、スルーホール導体12を構成する導電材料が、大気中の水分等に溶解してかかる空隙に侵入し、隣接スルーホール導体12まで到達し、スルーホール導体12同士を短絡させる可能性を低減できる。これにより、配線基板5の電気的信頼性を高めることができる。
【0030】
絶縁層9は、接着層9aと樹脂層9bとを有する。
【0031】
接着層9aは、樹脂層9b同士又は樹脂層9bと基体8とを、強固に接着するためのものであり、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を含む。熱硬化性樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアネート樹脂、シリコン樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等を用いても構わない。熱可塑性樹脂としては、はんだリフロー時の加熱に耐える耐熱性を有する必要があることから、構成する材料の軟化温度が200℃以上であることが望ましく、例えば液晶ポリマー等を使用することが望ましい。なお、接着層9aの線膨張係数は、例えば15ppm/℃以上80ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。また、接着層9aは、厚みが例えば2μm以上20μm以下となるように設定されていることが望ましい。
【0032】
樹脂層9bは、配線基板5の機械的強度を向上させるためのものであり、基材を備えておらず、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂としては、弾性変形可能であって、耐熱性と硬さに優れた特性の材料を用いることが望ましい。この様な特性を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、又は全芳香族ポリエステル樹脂等を用いても構わない。また、熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂又は液晶ポリマー樹脂等を用いても構わない。そして、上記材料のなかでも、ポリイミドベンゾオキサゾール樹脂又はポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂を用いることが望ましい。ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂は、線膨張係数が−5ppm/℃以上5ppm/℃以下と小さい。このような低熱膨張樹脂を使用することによって、配線基板5と電子部品7との間の熱膨張の差を低減し、配線基板5と電子部品7との間の熱応力を低減できる。なお、樹脂層9bの厚みは、例えば2μm以上20μm以下となるように設定されていることが望ましい。
【0033】
絶縁層9には、ビア孔Vが形成されており、ビア孔V内にはビア導体14が形成されている。ビア導体14は、絶縁層9の上面及び下面に配置された導電層10同士を電気的に接続する。また、ビア導体14は、例えば基体8の上面から配線基板5の上面に向かって、又は基体8の下面から配線基板5の下面に向かって、配線基板5の平面方向への断面積が大きくなるように形成されている。なお、ビア導体14は、導電材料により形成される。導電材料は、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等を含む。また、ビア導体14の線膨張係数は、例えば12ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。
【0034】
導電層10は、電気信号を伝達する信号層と、電子部品7に接続されるグランド層と、を含んで構成されている。導電層10は、基体8の上面及び下面に形成されており、スルーホール導体12と電気的に接続されている。また、導電層10は、絶縁層9の上面及び下面に形成されており、ビア導体14と電気的に接続されている。なお、導電層10は、導電材料により形成される。導電材料は、例えば銅、銀、金、ニッケル、クロム、チタン、モリブデン、タングステン又はジルコニウムあるいはこれらの合金等を含む。また、導電層10の線膨張係数は、例えば12ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定されていることが望ましい。
【0035】
電子部品7は、バンプ6を介して導電層10に電気的に接続されている。バンプ6の材料には、導電材料が用いられる。導電材料は、例えば銅、銀、亜鉛、錫、インジウム、ビスマス又はアンチモン等を含む。電子部品7としては、半導体素子又はコンデンサ等を用いても構わない。半導体素子としては、例えばIC若しくはLSI等を用いても構わない。半導体素子の材料としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等を用いても構わない。また、電子部品7の厚み寸法は、例えば0.1mmから1mmのものを使用することが望ましい。
【0036】
次に、上述したプリプレグシート1を用いた、上述した配線基板5を含む実装構造体4の製造方法を、図5から図15に基づいて説明する。
【0037】
まず、上述したプレプリグシート1を準備する。
【0038】
(1)図5A及び図5Bに示すように、細長形状の単繊維2を準備する。
【0039】
(2)図5C及び図5Dに示すように、単繊維2の側面の一部を押圧することにより、単繊維2に溝状の凹部C1を形成する。具体的には、例えば、以下のようにして、単繊維2の側面の一部を押圧する。まず、図6Aから図6Cに示すように、外周15axに窪み部Dを有し、窪み部Dがその周回方向に沿って形成されたローラ15aを2つ準備する。外周15axの窪み部Dを構成する表面は、その幅方向に沿って配列する凹凸を有し、該凹凸は、外周15axの周回方向に沿って延伸するように、形成されている。次に、図7Aから図8に示すように、それぞれの窪み部Dが組み合わさるように2つのローラ15a同士を当接させて、2つの窪み部Dにより、単繊維2の断面形状に対応する穴部Hを形成する。そして、穴部H内にて単繊維2を各ローラ15aに当接させて、各ローラ15aを回転させることにより、単繊維2を長手方向に移動させる。その結果、窪み部Dを構成する外周15axの一部が単繊維2の側面の一部を押圧し、単繊維2に溝状の凹部C1を形成することができる。このように、単繊維2の側面の一部を押圧して凹部C1を形成するため、単繊維2を構成する分子に損傷が生じる可能性を低減しつつ、凹部C1を形成できる。その結果、単繊維2の機械的強度を維持しつつ、凹部C1を形成できる。なお、ローラ15aを3つ以上用いて、穴部Hを形成しても構わない。
【0040】
また、単繊維2の側面の一部を押圧して凹部C1を形成するため、凹部C1を構成する単繊維2の一部の密度が、単繊維2の他の部位と比較して高くなる。その結果、凹部C1を構成する単繊維2の一部の硬度が、単繊維2の他の部位と比較して高くなるため、単繊維2の機械的強度を維持しつつ、凹部C1を形成することができる。なお、単繊維2の一部の硬度は、例えばマイクロインデンテーション法又はナノインデンテーション法等により、測定することができる。マイクロインデンテーション及びナノインデンテーション法は、微細な圧子を単繊維2に押し付けた際に生じる圧痕の面積を測定し、圧子を押し付ける加重と圧痕の面積とから、単位面積あたりの押し付け加重を求めることにより、硬度を測定する方法である。
【0041】
また、単繊維2の長手方向は単繊維2の分子鎖の伸長方向と平行であるため、単繊維2は分子鎖の伸長方向に沿って押圧される。このため、単繊維2の分子鎖が波状に乱れるとともに切断される可能性を低減する。その結果、単繊維2のほつれを低減し、単繊維2の機械的強度を維持しつつ、凹部C1を形成することができる。
【0042】
単繊維2を部分的に押圧する際、単繊維2を加熱しつつ押圧することが望ましい。加熱により単繊維2の硬度が低下するため、押圧による単繊維2の損傷を低減するとともに、単繊維2に容易に凹部C1を形成することができる。また、単繊維2が低熱膨張樹脂を含む場合、加熱により単繊維2の硬度が低下し易いため、単繊維2に容易に凹部C1を形成することができる。
【0043】
(3)図9A及び図9Bに示すように、単繊維2を一方向に配列させて、敷き詰めることにより、単繊維シート16を形成する。ここで、単繊維2を一方向に配列させる際、単繊維2に振動を与えつつ配列させることが望ましい。これにより、隣接する単繊維2同士を、一方の単繊維2の溝状の凹部C1と、他方の単繊維2の隣接する溝状の凹部C1同士の間の領域と、が対応するように、配列させることができる。その結果、隣接する単繊維2同士の間にアンカー効果を奏するため、単繊維シート16における単繊維2の位置ずれを低減できる。なお、単繊維2を一方向に配列させた後、単繊維2に振動を与えることにより、隣接する単繊維2同士を、一方の単繊維2の溝状の凹部C1と、他方の単繊維2の隣接する溝状の凹部C1同士の間の領域と、が対応するように、配列させても構わない。
【0044】
(4)図9Cから図9Dに示すように、単繊維シート16に樹脂部前駆体3aを含浸し、樹脂部前駆体3aを単繊維2の凹部C1の内面に接触させる。このようにして、プリプレグシート1を作製することができる。
【0045】
次に、上述したプリプレグシート1を用いて、上述した配線基板5を含む実装構造体4を作製する。
【0046】
(5)図10A及び図10Bに示すように、複数のプリプレグシート1を積層し、加熱加圧する。複数のプリプレグシート1は、隣接するプレプリグシート1同士の単繊維2の長手方向が直交するように、積層されることが望ましい。加熱加圧は、例えば加熱プレス機等を用いて行われる。プリプレグシート1の積層体を加熱する温度は、樹脂部前駆体3aに含まれる熱硬化性樹脂の硬化開始温度以上、かかる熱硬化性樹脂の熱分解温度未満に設定されていることが望ましい。その結果、樹脂部前駆体3aに含まれる未硬化の熱硬化性樹脂が硬化するため、積層されたプリプレグシート1同士を接着できる。以上のようにして、基体8を作製できる。
【0047】
ここで、かかる熱硬化性樹脂が硬化することにより、樹脂部前駆体3aが樹脂部3bとなり、プリプレグシート1が繊維層11となる。なお、基体8の厚みは、例えば0.3mm以上1.5mm以下に設定されていることが望ましい。また、熱分解温度とは、ISO11358:1997に準ずる熱重量測定において、樹脂の質量が5%減少する温度のことをいう。
【0048】
(6)図11Aに示すように、基体8に、上下方向に貫通したスルーホールSを形成する。スルーホールSは、例えばドリル加工又はレーザー加工等により、形成される。また、スルーホールSは、数個形成されることが望ましい。また、スルーホールSの幅は、例えば0.1mm以上1mm以下に設定されていることが望ましい。
【0049】
(7)図11Bに示すように、基体8の表面に導電材料を被着させて、導電材料層17を形成する。導電材料層17は、スルーホールSの内壁面にて、円筒状のスルーホール導体12を構成する。かかる導電材料層17は、例えば無電解めっき法により形成される。
【0050】
ここで、単繊維2と樹脂部3aとが剥離する可能性が低減されていると、スルーホール導体12を形成する際、単繊維2と樹脂部3aとが剥離して生じる空隙に、導電材料が侵入することを抑制できる。その結果、かかる導電材料が、スルーホール導体12同士を短絡させる可能性を低減できる。
【0051】
(8)図12Aに示すように、円筒状のスルーホール導体12の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体13を形成する。
【0052】
(9)図12Bに示すように、導電材料を絶縁体13の露出部に被着させて、導電材料層17を絶縁体13の露出部に形成する。かかる導電材料は、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等により被着される。
【0053】
(10)図13Aに示すように、導電材料層17をパターニングし、導電層10を形成する。導電材料層17のパターニングは、従来周知のフォトリソグラフィー技術等を用いて行われる。
【0054】
(11)図13B及び図14Aに示すように、導電層10上に、接着層9aを介して樹脂層9bを貼り合わせる。貼り合わせは、加熱加圧により行われる。加熱加圧は、例えば加熱プレス機を用いて、行われる。以上のようにして、接着層9aと樹脂層9bとから成る絶縁層9を形成することができる。
【0055】
(12)図14Bに示すように、絶縁層9にビア孔Vを形成し、ビア孔V内に導電層10の少なくとも一部を露出させる。ビア孔Vの形成は、例えばYAGレーザー装置又は炭酸ガスレーザー装置を用いる。ビア孔Vは、樹脂層9bの上面に対して、垂直方向からレーザー光が照射されることによって形成される。なお、ビア孔Vは、レーザー光の出力を調整することによって、樹脂層9bの上面から基体8の上面に向かって開口幅が狭くなるように形成することができる。
【0056】
(13)図15Aに示すように、ビア孔Vにビア導体14を形成し、絶縁層9の上面に導電層10を形成する。ビア導体14及び導電層10は、従来周知のセミアディティブ法、サブトラクティブ法又はフルアディティブ法等により形成され、なかでもセミアディティブ法により形成されることが望ましい。以上のようにして、配線基板5を作製することができる。
【0057】
なお、(11)から(13)の工程を繰り返すことにより、多層配線の配線基板5も作製できる。
【0058】
(14)図15Bに示すように、配線基板5に電子部品7をバンプ6を介してフリップチップ実装することにより、実装構造体4を作製できる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態にかかる単繊維を含むプリプレグシートを図16に基づいて詳細に説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成に関しては、記載を省略する。
【0060】
図16Aから図16Dに示すように、単繊維2は、その長手方向に沿った溝状の凹部C2を側面に複数有し、凹部C2は、その底部に前記長手方向に沿って配列された沈降部2vと隆起部2wを有する。樹脂部前駆体3aは、凹部C2の内面に接触している。このため、単繊維2の表面積が増加するとともに、前記長手方向及び前記周回方向にアンカー効果を奏する。その結果、単繊維2と樹脂部前駆体3aとの接着強度を高めることができる。なお、凹部C1は、単数であっても構わない。
【0061】
単繊維2の長手方向に直交する断面積は、例えば27μm以上192μm以下に設定されていることが望ましい。また、凹部C2の沈降部vの深さは、例えば1μm以上5μm以下に設定されていることが望ましい。また、凹部C2の隆起部wの深さは、例えば1μm以上5μm以下に設定されていることが望ましい。また、凹部C2の沈降部vと凹部C2の隆起部wとの深さの差は、例えば1μm以上3μm以下に設定されていることが望ましい。
【0062】
また、複数の凹部C2は、第1凹部C2aと第2凹部C2bとを有し、第1凹部C2aの沈降部2vと第2凹部C2bの隆起部2wとが、前記周回方向にて対応していることが望ましい。その結果、単繊維2の前記長手方向に直交する断面はその外周に沈降部v及び隆起部wを有するため、単繊維2の前記長手方向に直交する断面積の最小値が増加し、単繊維2の機械的強度を高めることができる。また、第1凹部C2aと第2凹部C2bは、前記周回方向に沿って交互に配列されていることが望ましい。
【0063】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、上述した本発明の実施形態は、電子部品7を配線基板5の上面にフリップチップ実装した構成に関して説明したが、電子部品7を配線基板5の上面にワイヤボンディング実装しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるプリプレグシートの斜視図である。
【図2】図2Aは、図1に示すプリプレグシートの厚み方向への断面図であり、図2Bは、図1に示すプリプレグシートの厚み方向への、図2Aに示す断面と直交する断面図であり、図2Cは、図2Bに示す単繊維のY1部分の拡大図である。
【図3】図3Aは、本発明の第1実施形態にかかる単繊維の斜視図であり、図3Bは、図3Aに示す単繊維のY2部分の拡大図であり、図3Cは、図3Bに示す単繊維の長手方向に直交する断面図であり、図3Dは、図3Cに示す単繊維のX1‐X1線における断面図であり、図3Eは、図3Cに示す単繊維のX2‐X2線における断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる実装構造体の厚み方向への断面図である。
【図5】図5Aは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する斜視図であり、図5Bは、図5Aに示す実装構造体の製造工程を説明するY3部分の拡大図であり、図5Cは、図5に示す実装構造体の製造工程を説明する斜視図であり、図5Dは、図5Cに示す実装構造体の製造工程を説明するY4部分の拡大図である。
【図6】図6Aは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する斜視図であり、図6Bは、図6Aに示す実装構造体の製造工程を説明するY5部分の拡大平面図である。図6Cは、図6Bに示す実装構造体の製造工程を説明するX3‐X3線における断面図である。
【図7】図7Aは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する斜視図であり、図7Bは、図7Aに示す実装構造体の製造工程を説明する、ローラの回転軸に垂直な平面図である。
【図8】図8は、図7Bに示す実装構造体の製造工程を説明するY6部分の拡大図の、X4‐X4線における断面図である。
【図9】図9Aは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向への断面図であり、図9Bは、図9Aに示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向への、図9Bに示す断面と直交する断面図である。図9Cは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向への断面図であり、図9Dは、図9Cに示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向への、図9Cに示す断面と直交する断面図である。
【図10】図10A及び図10Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図11】図11A及び図11Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図12】図12A及び図12Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図13】図13A及び図13Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図14】図14A及び図14Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図15】図15A及び図15Bは、図4に示す実装構造体の製造工程を説明する断面図である。
【図16】図16Aは、本発明の第2実施形態にかかる単繊維の拡大斜視図であり、図16Bは、図16Aに示す単繊維の長手方向に直交する断面図であり、図16Cは、図16Bに示す単繊維のX5‐X5線における断面図であり、図16Dは、図16Bに示す単繊維のX6‐X6線における断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 プリプレグシート
2 単繊維
3a 樹脂部前駆体
3b 樹脂部
4 実装構造体
5 配線基板
6 バンプ
7 電子部品
8 基体
9 絶縁層
9a 接着層
9b 樹脂層
10 導電層
11 繊維層
12 スルーホール導体
13 絶縁体
14 ビア導体
15a ローラ
15ax 外周
16 単繊維シート
17 導電材料層
C1 凹部
S スルーホール
V ビア孔
D 窪み部
H 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状の単繊維と、
前記単繊維を被覆する樹脂部前駆体と、
を備え、
前記単繊維は、その長手方向に沿った溝状の凹部を表面に有し、前記凹部の内面に前記樹脂部前駆体が接触していることを特徴とするプリプレグシート。
【請求項2】
請求項1に記載のプリプレグシートにおいて、
前記凹部は複数存在することを特徴とするプリプレグシート。
【請求項3】
請求項2に記載のプリプレグシートにおいて、
前記複数の凹部は、その底部に前記長手方向に沿って配列された沈降部と隆起部を有することを特徴とするプリプレグシート。
【請求項4】
請求項3に記載のプリプレグシートにおいて、
前記複数の凹部は、第1凹部と第2凹部とを有し、
前記第1凹部の沈降部と前記第2凹部の隆起部とが、前記周回方向にて対応していることを特徴とするプリプレグシート。
【請求項5】
細長形状の単繊維と、前記単繊維を被覆する樹脂部と、を有する基体と、
前記基体の上面又は下面に形成された導電層と、
を備え、
前記単繊維は、その長手方向に沿った溝状の凹部を表面に有し、前記凹部の内面に前記樹脂部が接触していることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項5に記載の配線基板と、
前記配線基板の上面に搭載され、前記導電層と電気的に接続している電子部品と、
を具備することを特徴とする実装構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−56479(P2010−56479A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222757(P2008−222757)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】