説明

プリント基板

【課題】相互に離隔した複数のランド列を連続して引き半田により半田付けすることができる、新規な構造のプリント基板を提供すること。
【解決手段】実装部品16a, 16bのリード部20が挿通されるスルーホール12に設けられた複数のランド部14が整列配置されており、該ランド部14と該リード部20が引き半田により半田付けされるプリント基板10において、一群の前記整列された複数のランド部から構成された第一ランド列22aと第二ランド列22bを互いに離隔させて配設し、第一ランド列22aの終端側の端部と第二ランド列22bの始点側の端部との間に延出する中間ダミーランド部26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールに設けられたランド部に対して、実装部品のリード部が挿通されて半田付けされるプリント基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁基板の表面にプリント配線が形成されたプリント基板において、スルーホールを設けた複数のランド部を整列配置して設ける一方、それらスルーホールにプリント基板に実装されるリレーやコネクタ等の実装部品のリード部を挿通して半田付けすることにより、実装部品のリード部とプリント配線を半田を介して接続することが行われている。
【0003】
ところで、このようなプリント基板において、実装部品のリード部とランド部を効率的に半田付けするために、半田付け装置の加熱用こて部をスルーホールの整列方向に移動させつつ、連続して複数のランド部に対してリード部の半田付けを行う、所謂引き半田による半田付けを行うことが提案されている。例えば、特開2005−294480号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。このような引き半田によれば、複数のランド部に対する連続した半田付けが可能となることから、1つのランド部毎に半田付け装置で半田付けを行う所謂ロボット半田付けに比して、作業時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0004】
ところが、プリント基板上では、例えば実装部品毎に、複数のランド部によるランド列が複数構成されて、それら複数のランド列が相互に離隔して設けられている場合が多い。この場合、引き半田により複数のランド部とリード部を連続して半田付けを行う場合であっても、ひとつのランド列上で加熱用こて部を移動させて連続した半田付けを行った後、当該ランド列の引き半田の終点側の端部から加熱用こて部を一旦プリント基板上に引き上げて、他のランド列の引き半田の開始側の端部まで加熱用こて部を移動させて位置決めし、再度加熱用こて部をプリント基板上に載置させる必要がある。これにより、加熱用こて部の移動や制御が複雑となって、引き半田による半田付けの作業性の向上が十分に図れない場合があった。
【0005】
特に、ひとつのランド列の半田付け終了後にプリント基板から加熱用こて部を引き上げる際には、加熱用こて部に貯留された余剰半田が、プリント基板上に落下して、ボール状に残留する所謂半田ボールを形成する場合もあり、半田ボールが、プリント基板や他の実装部品の破損や故障の原因となるおそれもあった。
【0006】
さらに、加熱用こて部を一旦プリント基板上に引き上げた後、別のランド列の引き半田による半田付けを開始する際には、半田供給量不足等の問題が発生するおそれもあり、加熱用こて部の引き上げ、引き下げ作業に伴い、半田供給量や加熱用こて部の加熱状態の安定化を図ることが非常に難しくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−294480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、相互に離隔した複数のランド列を連続して引き半田により半田付けすることができる、新規な構造のプリント基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、スルーホールに設けられたランド部が複数整列配置されており、該複数のランド部の前記スルーホールに対して実装部品のリード部が挿通されて、前記ランド部と前記リード部が引き半田により半田付けされるプリント基板において、一群の前記整列配置された複数のランド部から構成された第一ランド列と、他の一群の前記整列配置された複数のランド部から構成された第二ランド列が、互いに離隔して配設されている一方、前記第一ランド列の前記引き半田における終点側の端部と、前記第二ランド列の前記引き半田における始点側の端部との間に延出する中間ダミーランド部が設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
本態用に従う構造とされたプリント基板においては、第一ランド列の終点側端部と第二ランド列の始点側端部の間に延出する中間ダミーランド部が設けられていることから、引き半田を行い、第一ランド列から第二ランド列へ加熱用こて部を移動する際に、加熱用こて部を中間ダミーランド部上をスライドさせて移動させることができる。それ故、加熱用こて部をプリント基板上に一旦引き上げて第二ランド列まで移動させる必要がなくなることから、引き半田による半田付けの作業性を向上させることができる。
【0011】
また、加熱用こて部を中間ダミーランド部上に載置して中間ダミーランド部に沿って移動させることができることから、余剰半田を中間ダミーランド部へ吸収させつつ、加熱用こて部の加熱温度や必要な量の半田を安定して維持することができ、第一ランド列の終点側での半田ブリッジの形成や、第二ランド列の始点側での半田不足等の問題の発生を有利に防止することができる。
【0012】
さらに、第一ランド列と第二ランド列の移動に際して、加熱用こて部をプリント基板上に引き上げる必要がないことから、加熱用こて部からの余剰半田の落下やそれによる短絡やプリント基板の破損等の問題の発生を未然に防止できる。
【0013】
なお、中間ダミーランド部は、第一ランド列の終点側端部と第二ランド列の始点側端部の間に延出するものであればよく、それらの間を直線的に延びるものや、屈曲乃至は湾曲等して延びるものの何れも含むものである。
【0014】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記第一ランド列と前記第二ランド列が、前記複数のランド部の整列方向において互いに間隔を空けて一直線上に整列配置されている一方、前記第一ランド列と前記第二ランド列の間に前記整列方向に延出する前記中間ダミーランド部が設けられているものである。
【0015】
本態様によれば、一直線上に整列配置された第一ランド列と第二ランド列の間に設けられた中間ダミーランド部が、整列方向で直線的に延び出している。それ故、引き半田の際の加熱用こて部を一直線上に沿って移動させるのみで、第一ランド列と第二ランド列を連続して半田付けすることができ、引き半田の作業の一層の安定化や効率化を図ることができる。
【0016】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のものにおいて、前記中間ダミーランド部の第一ランド列側の端部には、前記中間ダミーランド部の延出方向に交差する方向の両側に延び出す延出ランド部が連接して設けられているものである。
【0017】
本態様によれば、余剰半田が問題となり易い第一ランド列の終点側の端部に隣接して、中間ダミーランド部の延出ランド部が設けられている。それ故、第一ランド列の半田付けが終了した際に、加熱用こて部を中間ダミーランド部に移動させ、延出ランド部で速やかに余剰半田を吸収することができる。特に、延出ランド部は中間ダミーランド部の延出方向、即ち、加熱用こて部の移動方向に交差して延び出していることから、加熱用こて部に当接されて加熱されることとなる。これにより、延出ランド部に接触した余剰半田が比較的高温に保たれて、余剰半田を速やかに延出ランド部に吸収することができる。
【0018】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のものにおいて、前記ランド部と前記リード部が鉛フリー半田を用いた前記引き半田により半田付けされているものである。
【0019】
本態様によれば、加熱用こて部をプリント基板から引き上げることなく、中間ダミーランド部上をスライドさせて移動して第一ランド列と第二ランド列を連続して半田付けできることから、加熱用こて部の加熱状態や半田供給状態を安定させることができる。従って、融点の高い鉛フリー半田を用いた場合でも、第一ランド列と第二ランド列を安定した状態で連続して引き半田による半田付けを行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第一ランド列の終点側端部と第二ランド列の始点側端部の間に延出する中間ダミーランド部が設けられていることから、中間ダミーランド部を介して、第一ランド列の始点側端部から第二ランド列の終点側端部に亘って連続して引き半田による半田付けを行うことができ、半田付けの作業性を向上させることができる。さらに、加熱用こて部を中間ダミーランド部上に載置して中間ダミーランド部に沿って移動させることができることから、余剰半田を中間ダミーランド部へ吸収させつつ、必要な量の半田を安定して維持することができ、各ランド列と中間ダミーランド部間における半田ブリッジの形成等の不具合を有利に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態としてのプリント基板の表面側を示す要部拡大分解斜視図。
【図2】図1に示すプリント基板の裏面側を示す要部拡大平面図。
【図3】本発明に係るプリント基板を構成するランド部の一例を示す拡大平面図。
【図4】本発明に係るプリント基板を構成するダミーランド部の一例を示し、(a)がランド整列方向一端側のダミーランド部の拡大平面図、(b)がランド部整列方向他端側のダミーランド部の拡大平面図。
【図5】本発明に係るプリント基板を構成する中間ダミーランド部の一例を示す拡大平面図。
【図6】本発明に係るプリント基板を構成するランド部及び中間ダミーランド部を用いた引き半田の様子を示す拡大断面図であって、図2のVI−VI断面図に相当する図。
【図7】本発明に係るプリント基板を構成するランド部を用いた引き半田の様子を示す拡大断面図であって、図2のVII−VII断面図に相当する図。
【図8】本発明に係るプリント基板を構成する中間ダミーランド部の別例を示す拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
先ず、図1および図2には、本発明の第一の実施形態としてのプリント基板10の要部が、表面側および裏面側から示されている。プリント基板10は、公知の絶縁材料で形成された略矩形平板状の基板表面に、図示しないプリント配線が形成されたものである。プリント基板10の側縁部には、側縁部に沿って整列配置された複数のスルーホール12が貫通形成されている。各スルーホール12の内周面上およびプリント基板10の表面側および裏面側の開口周縁部に亘って銅箔等の導体からなるランド部14が一体的に形成されており、図示しないプリント配線に電気的に接続されている。なお、図1には、ランド部14を構成する表面ランド部14aが示されている一方、図2には、ランド部14を構成する裏面ランド部14bが示されている。
【0024】
プリント基板10に実装されるコネクタ等の実装部品16a,16bは、樹脂台座18に貫通固定された複数のリード部20を有しており、これらリード部20の先端部が、プリント基板10の表面側からスルーホール12に挿通されてプリント基板10の裏面側に突出された状態で、樹脂台座18がプリント基板10上に載置されるようになっている。そして、プリント基板10の裏面側から、複数のリード部20とランド部14を引き半田により半田付けされることにより、実装部品16a,16bがプリント基板10に実装されるようになっている。
【0025】
図2に示すように、引き半田による半田付けが行われるプリント基板10の裏面側には、実装部品16aのリード部20が挿通される第一ランド列22aと、実装部品16bのリード部20が挿通される第二ランド列22bが、ランド部14の整列方向において互いに離隔して一直線上に配設されている。各ランド列22a,22bは、スルーホール12に設けられてそれぞれ一群の整列配置された複数のランド部14によって構成されている。
【0026】
第一ランド列22aと第二ランド列22bの整列方向において、両端側に位置する各裏面ランド部14bの整列方向外方には、それら裏面ランド部14bに隣接してダミーランド部24a,24bがそれぞれ設けられている。また、第一ランド列22aと第二ランド列22bの整列方向において、第一ランド列22aと第二ランド列22bの間には、整列方向に延出する中間ダミーランド部26が設けられている。なお、各裏面ランド部14bや、ダミーランド部24a,24bおよび中間ダミーランド部26の周囲は、公知のソルダレジスト層28で被覆されている。
【0027】
図3に裏面ランド部14bの拡大平面図を示す。裏面ランド部14bは、平面視で略矩形の外形形状を有しており、裏面ランド部14bの整列方向(図3中左右方向)に直交する方向(図3中上下方向)で両側に延び出す一対の延出ランド部30a,30bが連接して設けられた構造とされている。延出ランド部30a, 30bは、略一定の幅寸法で延び出しており、平面視で略矩形の外形形状を有している。
【0028】
裏面ランド部14bと延出ランド部30a, 30bの連接部分には絞り部32a,32bが設けられている。この絞り部32a,32bは、裏面ランド部14bの整列方向(図3中左右方向)における長さ寸法が延出ランド部30a, 30bの延出方向外方に向かって次第に小さくされており、その最小長さ寸法:L2がスルーホール12の外径:L1よりも大きく設定された構成とされている。そして、絞り部32a,32bの最少長さ寸法:L2を維持して延出ランド部30a,30bが外方に延び出しているのである。なお、スルーホール12の外縁から延出ランド部30a,30bの延出端部までの長さ寸法:L3は、スルーホール12の外形寸法:L1以上とされている。
【0029】
次に、図4(a),(b)にダミーランド部24a,24bの拡大平面図を示す。ダミーランド部24a,24bは、裏面ランド部14bと同様、平面視で略矩形の外形形状を有している。ダミーランド部24a,24bは実装部品のリード部20と接続されないことから、スルーホール12は設けられていない。また、ダミーランド部24a,24bには、裏面ランド部14bの整列方向となる図4中の左右方向に直交する方向(図4中上下方向)で両側に延び出す一対の延出ランド部34a,34bが連接して設けられている。
【0030】
また、ダミーランド部24a,24bと延出ランド部34a, 34bの連接部分には、裏面ランド部14bの場合と同様の絞り部32a,32bがそれぞれ設けられている。そして、絞り部32a,32bにより小さくされた長さ寸法:L4(図4中左右方向)を維持して、延出ランド部34a,34bが外方に延び出しており、平面視で略矩形の外形形状を有している。なお、本実施形態では、延出ランド部34a, 34bの長さ寸法:L4は、裏面ランド部14bの延出ランド部30a,30bの長さ寸法:L2と略同一に設定されている。
【0031】
図4(a)に示すように、第一ランド列22aの裏面ランド部14bの整列方向において、後述する引き半田による半田付けの際の始点となる端部(図2中左端)の裏面ランド部14bの整列方向外方に隣接して設けられたダミーランド部24aには、整列方向外方(図2,図4中左側)に延び出す延出ランド部34cが絞り部32a,32bを介して連接されている。一方、図4(b)に示すように、第二ランド列22bの裏面ランド部14bの整列方向において、後述する引き半田による半田付けの際の終点となる端部(図2中右端)の裏面ランド部14bの整列方向外方に隣接して設けられたダミーランド部24bには、整列方向外方(図2,図4中右側)に延び出す延出ランド部34cが絞り部32a,32bを介して連接されている。延出ランド部34c,34cは、いずれも絞り部32a,32bにより小さくされた長さ寸法:L4(図4中上下方向)を維持して、裏面ランド部14bの整列方向外方となる図2,図4中の左右両側にそれぞれ延び出しており、平面視で略矩形の外形形状を有している。
【0032】
さらに、図5に中間ダミーランド部26の拡大平面図を示す。中間ダミーランド部26は、第一ランド列22aの引き半田における終点側の端部と第二ランド列22bの引き半田における始点側の端部との間を、それらの整列方向に沿って延出する平面視略長手矩形状の外形形状を有している。この中間ダミーランド部26は実装部品のリード部20と接続されないことから、ダミーランド部24a,24bと同様に、スルーホール12は設けられていない。ここで、中間ダミーランド部26の長さ寸法:L5は任意に設定可能であるが、好ましくは、図2に示すように、裏面ランド部14bの整列方向において、隣接する裏面ランド部14b間と同様の隙間寸法:wを両側に残し、第一ランド列22aおよび第二ランド列22bの間の全長に亘って延びる長さであることが好ましい。
【0033】
また、中間ダミーランド部26には、第一ランド列22a側の端部において、中間ダミーランド部26の延出方向となる図5中の左右方向に交差する方向(図5中上下方向)で両側に延び出す一対の延出ランド部36a,36bが連接して設けられている。なお、延出ランド部36a,36bの裏面ランド部14bの整列方向に対する交差角度:αは、裏面ランド部14bに設けられる延出ランド部30a,30bと同様に、好ましくは、30°〜150°、より好ましくは60°〜120°、更に好ましくは90°(直交)とされる。交差角度:αが150°以上となると、第一ランド列22a側の端部との間で、半田に表面張力が充分に作用せず、半田が適切に分断されずに半田ブリッジを形成してしまうおそれがあり、その一方、交差角度:αが30°以下となると、第一ランド列22a側の端部と中間ダミーランド部26との離隔距離が大きくなり、半田がプリント基板10上に落下するおそれがあるからである。なお、本実施形態では、裏面ランド部14bの整列方向に対する延出ランド部36a, 36bの延出方向の交差角度:αが90°とされており、延出ランド部36a,36bに付着する半田と第一ランド列22aの終点側の端部に付着する半田との距離が適切に確保されるようになっている。
【0034】
そして、中間ダミーランド部26と延出ランド部36a, 36bの連接部分には、裏面ランド部14bの場合と同様の絞り部32a,32bがそれぞれ設けられている。そして、絞り部32a,32bにより小さくされた長さ寸法:L6(図5中左右方向)を維持して、延出ランド部36a,36bが外方に延び出しており、平面視で略矩形の外形形状を有している。なお、本実施形態では、延出ランド部36a,36bの長さ寸法:L6は、裏面ランド部14bに連接された延出ランド部30a,30bの長さ寸法:L2と略同一に設定されている。
【0035】
次に、このような構造とされた本実施形態のプリント基板10を用いた半田付けの方法について図6及び図7を用いて説明する。図6には、図2に示されたプリント基板10において、引き半田が行われる様子が模式的に表されており、図2のVI−VI断面図に相当する図である。
【0036】
先ず、半田付けに先立って、図示しない半田付け装置に電力が供給されて、加熱用こて部38が、半田供給部40から供給される糸状の半田42を溶融するに十分な程度まで加熱される。なお、本実施形態においては、半田42として鉛フリー半田が採用されている。また、引き半田を行うに際して、加熱用こて部38は、図6の矢印Sが示す移動方向、即ち、図2中の左側から右側に向かって移動されて、リード部20とランド部14が連続的に半田付けされることとなる。ここで、加熱用こて部38の温度や移動速度、半田供給量等は、溶融半田42をランド部14間で適切に分断して、後述する半田フィレット44が良好に形成されるように適宜調整されている。
【0037】
加熱が完了した加熱用こて部38は、先ず、第一ランド列22aの端部に位置する裏面ランド部14bに隣接して設けられた、ダミーランド部24a上に載置され、半田供給部40から供給された適量の半田42が溶融されて加熱用こて部38の端部に到達する半田付け開始状態となるまで、ダミーランド部24a上で待機される。
【0038】
その後、適量の半田42を半田供給部40から加熱用こて部38に供給して溶融しつつ、加熱用こて部38を移動方向に移動することで、移動方向に整列配置されたランド部14とリード部20を順次半田付けされることとなる。即ち、加熱用こて部38が各裏面ランド部14b上を通過する際に、加熱用こて部38から溶融された半田42がスルーホール12に供給されて、スルーホール12に半田42が充填されることにより、半田フィレット44が形成される。これにより、各ランド部14が各リード部20と半田付けされることとなる。
【0039】
このように、加熱用こて部38が、始点側のダミーランド部24aから移動方向に移動しつつ、各ランド部14に半田42を供給して第一ランド列22aを通過する。その後、加熱用こて部38は、図6に示すように、第一ランド列22aの引き半田における終点側の端部と第二ランド列22bの引き半田における始点側の端部との間に延出する中間ダミーランド部26に到達する。ここで、各ランド列22a, 22bと中間ダミーランド部26は一直線上に整列配置されていることから、加熱用こて部38の移動方向及び移動速度が一定に維持された状態で連続して引き半田が行われる。そして、加熱用こて部38は、中間ダミーランド部26を経て第二ランド列22bを通過した後、終点側のダミーランド部24bに至って引き半田が完了する。この際、第一ランド列22aの場合と同様に、加熱用こて部38が各裏面ランド部14b上を通過する際に、加熱用こて部38から溶融された半田42によりスルーホール12が充填されて、各ランド部14が各リード部20と半田付けされることとなる。
【0040】
第二ランド列22bを通過した加熱用こて部38は、最後に第二ランド列22bの端部に位置する裏面ランド部14bに隣接して設けられたダミーランド部24b上に載置される半田付け終了状態とされた後、プリント基板10から引き上げられることとなる。
【0041】
次に、図7には、加熱用こて部38の移動方向に直交する方向での引き半田の様子が示されており、図2のVII−VII断面図に相当する図である。図7に示されるように、加熱用こて部38には、リード部20が挿通可能とされた先端凹溝46が設けられている。それ故、引き半田を行う際に、リード部20が先端凹溝46を通過できるため、加熱用こて部38の移動に際して、リード部20と加熱用こて部38の干渉が回避されるようになっている。
【0042】
また、裏面ランド部14bの整列方向に直交する方向(図7中左右方向)には延出ランド部30a, 30bが延び出して設けられている。即ち、延出ランド部30a,30bは、引き半田の際の加熱用こて部38の移動経路上に設けられていることから、引き半田に際して加熱用こて部38の先端面がこの延出ランド部30a,
30bに当接される。それ故、延出ランド部30a, 30bは加熱用こて部38によって加熱されることとなる。ここで、延出ランド部30a,30bは、スルーホール12の外径寸法以上の長さ寸法:L3で延び出しており、加熱用こて部38の先端面の全領域が当接するに十分な大きさとされている。また、図7に示すように、この延出ランド部30a, 30bの略全体に亘って半田42が吸収されており、半田フィレット44が、図6に示す整列方向に比して大きく延び広がって形成されている。
【0043】
なお、図2に示されるように、ダミーランド部24a,24bに設けられた一対の延出ランド部34a,34bや、中間ダミーランド部26に設けられた一対の延出ランド部36a,36bも、裏面ランド部14bの整列方向に直交する方向(図7中左右方向)に延び出して設けられていることから、これらも加熱用こて部38の移動に際して、加熱用こて部38の先端面に当接されて加熱されることとなる。
【0044】
上述の如き構成とされた本実施形態に係るプリント基板10においては、第一ランド列22aの終点側端部と第二ランド列22bの始点側端部の間に延出する中間ダミーランド部26が設けられていることから、中間ダミーランド部26を介して第一ランド列22aの始点側端部から第二ランド列22bの終点側端部に至るまで連続して引き半田を行うことができる。それ故、第一ランド列22aと第二ランド列22bの間で引き半田を一旦中断し、加熱用こて部38をプリント基板10上に引き上げて第二ランド列22bまで移動させる等の作業が不要となり、引き半田による半田付けの作業性を向上させることができる。
【0045】
また、加熱用こて部38を中間ダミーランド部26上に載置して中間ダミーランド部26の延出方向に沿って移動させることができることから、余剰半田を中間ダミーランド部26へ吸収させつつ、加熱用こて部38の加熱温度や必要な量の半田を安定して維持することができ、第一ランド列22aの終点側での半田ブリッジの形成や、第二ランド列22bの始点側での半田不足等の問題の発生を有利に防止することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、中間ダミーランド部26が、第一ランド列22aと第二ランド列22bの間に設けられて、これらが一直線上に整列配置されていることから、引き半田の際の加熱用こて部38をランド部14の整列方向に沿って直線的に移動させるという簡易な動作のみで、第一ランド列22aと第二ランド列22bを連続して半田付けすることができ、引き半田の作業の一層の安定化や効率化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、余剰半田が問題となり易い第一ランド列22aの終点側の端部に隣接して、中間ダミーランド部26の延出ランド部36a,36bが設けられている。それ故、第一ランド列22aの半田付けが終了した際に、加熱用こて部38を中間ダミーランド部26に移動させ、延出ランド部36a,36bで速やかに余剰半田を吸収することができる。特に、延出ランド部36a,36bは中間ダミーランド部26の延出方向、即ち、加熱用こて部38の移動方向に直交して延び出していることから、加熱用こて部38に当接されて加熱されることとなる。これにより、延出ランド部36a,36bに接触した余剰半田が比較的高温に保たれて、余剰半田を速やかに延出ランド部36a,36bに吸収することができる。
【0048】
加えて、第一ランド列22aから第二ランド列22bに移る際に引き半田作業を中断することなく、加熱用こて部38を中間ダミーランド部26上でスライドさせて、第一ランド列22aの始点側端部から第二ランド列22bの終端側端部に至るまで連続して半田付けできることから、加熱用こて部38の加熱状態や半田供給状態を安定させることができる。従って、融点の高い鉛フリー半田を用いた場合でも、第一ランド列22aから第二ランド列22bに亘って安定した状態で連続して引き半田による半田付けを行うことができ、半田粘度の低下による半田供給不足等の問題の発生を有利に防止できる。
【0049】
また、本実施形態に係るプリント基板10においては、引き半田により半田付けされる複数の整列配置された裏面ランド部14bに対して、整列方向に直交する方向に延び出す延出ランド部30a,30bが連接されている。それ故、加熱用こて部38から供給された半田42の量が過剰な場合には、余剰半田が速やかに延出ランド部30a,30bに濡れ広がることで吸収されて、余剰半田が隣接する裏面ランド部14b,14b間で繋がって半田ブリッジを形成する等の不具合を回避できる。さらに、引き半田の際に加熱用こて部38で延出ランド部30a, 30bが加熱されることから、裏面ランド部14b上に供給された半田42を比較的高温に維持することができて、半田42自体の粘性が上昇することを防止乃至は低減することができる。それ故、延出ランド部30a, 30bに速やかに余剰半田を吸収でき、表面張力により隣接する半田フィレット44,44が良好に分断されることとなり、半田ブリッジ等の不具合の発生を効果的に防止できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されるものではなく、例えば以下に例示の如き種々の変更が可能である。なお、以下の説明において前記実施形態と類似の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0051】
上記実施形態においては、第一ランド列22aと第二ランド列22bは一直線上に整列配置されていたが、各ランド列は必ずしも一直線上に整列していることを要しない。例えば、図8に示すように、各ランド列の整列方向が互いに異なる直線上にある場合、中間ダミーランド部48のように各ランド列の間をそれらの整列方向に傾斜して延出するものを設けてもよい。また、各ランド列間を湾曲して延びる中間ダミーランド部50を設けて、互いに直交するランド列間で連続して引き半田が行われるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、中間ダミーランド部26に連接された延出ランド部36a, 36bは、整列方向に直交する方向の両側に延び出して設けられていたが、プリント基板10の空きスペース等を考慮して、整列方向に直交する方向の片側にのみ延出ランド部が設けられるようにしてもよい。
【0053】
加えて、裏面ランド部14bや延出ランド部30a, 30b,34a,34b,34c,36a,36b、ダミーランド部24a, 24bや中間ダミーランド部26の具体的形状は上記実施形態のものに限定されず、本発明の目的を達成することができる限り任意の形状のものが採用可能である。例えば、ダミーランド部24a、24bの延出ランド部34a,34b,34cの長さ寸法:L4や中間ダミーランド部26の延出ランド部36a,36bの長さ寸法:L6は、裏面ランド部14bの延出ランド部30a,30bの長さ寸法:L2と同等である必要はなく、プリント基板の空きスペースや余剰半田の量等を考慮して、より小さく又は大きくすることも可能である。また、延出ランド部30a, 30b,34a,34bの裏面ランド部14bの整列方向に対する交差角度も適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
10:プリント基板、12:スルーホール、14:ランド部、16a, b:実装部品、20:リード部、22a:第一ランド列、22b:第二ランド列、26:中間ダミーランド部、36a, b:延出ランド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールに設けられたランド部が複数整列配置されており、該複数のランド部の前記スルーホールに対して実装部品のリード部が挿通されて、前記ランド部と前記リード部が引き半田により半田付けされるプリント基板において、
一群の前記整列配置された複数のランド部から構成された第一ランド列と、他の一群の前記整列配置された複数のランド部から構成された第二ランド列が、互いに離隔して配設されている一方、
前記第一ランド列の前記引き半田における終点側の端部と、前記第二ランド列の前記引き半田における始点側の端部との間に延出する中間ダミーランド部が設けられていることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記第一ランド列と前記第二ランド列が、前記複数のランド部の整列方向において互いに間隔を空けて一直線上に整列配置されている一方、前記第一ランド列と前記第二ランド列の間に前記整列方向に延出する前記中間ダミーランド部が設けられている請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記中間ダミーランド部の第一ランド列側の端部には、前記中間ダミーランド部の延出方向に交差する方向の両側に延び出す延出ランド部が連接して設けられている請求項1又は2に記載のプリント基板。
【請求項4】
前記ランド部と前記リード部が鉛フリー半田を用いた前記引き半田により半田付けされている請求項1〜3の何れか1項に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−8726(P2013−8726A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138560(P2011−138560)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】