説明

プリント配線板、このプリント配線板を備えた情報処理装置、及び、プリント配線板におけるEMI抑制方法

【課題】本発明は、GNDプレーンの共振周波数を高周波にシフトさせることにより、GNDプレーンのEMIが抑制されたプリント配線板、このプリント配線板を備えた情報処理装置、及び、プリント配線板のEMI抑制方法を提供する。
【解決手段】信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板10であって、グラウンド層の基板における共振点の位置に、誘電体部品18が、プリント配線板10が筐体5に収納される際に、この筐体5に対して接触可能なように設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNDプレーンの共振点の位置にGNDパッド、誘電体部品を備えたプリント配線板、このプリント配線板を備えた情報処理装置、及び、プリント配線板におけるEMI抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(Personal Computer)等の情報処理装置は、多くの電子部品が取り付けられたプリント配線板を搭載している。これらのプリント配線板は、限られたスペースにより多くの配線パターンを配置するために、グラウンド層、電源層、及び信号層等の複数の層が積層された多層化構造に形成されるのが一般的である。しかしながら、プリント配線板を多層化構造で形成することによって放射ノイズ(EMI;電磁妨害)が発生してしまうと言う問題も生じていた。
【0003】
そこで、プリント配線板と筐体との接続方法として、筐体GNDとプリント配線板GNDとがLC直列回路で接続されることにより、定在波及びLC共振による放射ノイズを抑制する方法が提案されている(例えば特許文献1)。この方法は、さらに筐体GNDとプリント配線板GNDとが複数接続されることにより、定在波の周波数を高周波に変更するものである。
【特許文献1】特開平10−190166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PC(Personal Computer)等の情報処理装置の小型化が進むのに伴い、プリント配線板の小型化も進められてきたため、従来問題にならなかったグラウンド(GND)プレーンのノイズが重要視されるようになってきた。そこで、プリント配線板において、EMIをはじめとするノイズの低減方法として、電源プレーンとGNDプレーンの対向面による共振解析を行い、その共振点にバイパスコンデンサを搭載する方法が用いられている。しかしながら、この方法は、GNDプレーンそのものの共振解析を考慮したものではない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、GNDプレーンの共振周波数を高周波にシフトさせることにより、GNDプレーンのEMIが抑制されたプリント配線板、このプリント配線板を備えた情報処理装置、及び、プリント配線板のEMI抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るプリント配線板は、信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板であって、前記グラウンド層の基板における共振点の位置に、誘電体部品が、プリント配線板が筐体に収納される際に、この筐体に対して接触可能なように設けられたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る情報処理装置は、信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板であって、前記グラウンド層の基板における共振点の位置に、誘電体部品が、プリント配線板が筐体に収納される際に、この筐体に対して接触可能なように設けられたプリント配線板が、筐体内部に、前記誘電体部品がこの筐体に接触するように収納されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るプリント配線板のEMI抑制方法は、信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板のEMI抑制方法であって、前記グラウンド層の基板の共振点を算出する算出ステップと、前記算出ステップにて算出された前記グラウンド層の基板の共振点の位置に、誘電体部品を、プリント配線板が筐体に収納される際に、この筐体に対して接触可能なように設置する第1の設置ステップと、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るプリント配線板、このプリント配線板を備えた情報処理装置、及び、プリント配線板のEMI抑制方法によると、筐体に固定するネジをGND共振の節としてGNDプレーンの基板のGND共振解析を行い、プリント配線板におけるGND共振点の位置にGNDパッドを設けて、その上に誘電体部品を搭載して、この誘電体部品と筐体とを接触させることにより新たなGND共振点の節を生成して、GNDプレーンの共振周波数を高周波にシフトさせることで、一般的な基板共振解析の手法をそのまま用いて、GNDプレーンの共振周波数を高周波側にシフトさせることができ、GNDプレーンのEMIノイズを低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
本発明に係る情報処理装置の第1実施形態について、添付図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る情報処理装置1の斜視図である。情報処理装置1は、一般的に用いられているノート型のPC(Personal Computer)等である。図1に示すように、情報処理装置1は、ユーザが指示を入力する際に押下されるキーを複数備えたキーボード2と、文字や画像等からなる画面を表示するためのディスプレイ3と、音声を出力するためのスピーカ4とが、外部に露出するように筐体5の内部に設けられている。
【0011】
また、情報処理装置1は、筐体5の内部に集積回路、抵抗器、コンデンサ等の様々な電子部品を備えたプリント配線板10を収納している。プリント配線板10は、グラウンド(GND)層、信号層、電源(VCC)層等の複数の基板が積層されることにより形成されていて、例えば、図2に示すように、表層10aから裏層10bに向かって、信号層11、電源層12、信号層13、信号層14、GND層15、信号層16の6層が順に積層されることにより形成されている。
【0012】
このようにプリント配線板が多層化構造によって形成されていると、小型化を実現することができるが、一方で、放射ノイズ(EMI;電磁妨害)が発生してしまうという問題が生じていた。そのため、EMIをはじめとするノイズの低減方法として、電源層のプレーン基板(電源プレーン)とGND層のプレーン基板(GNDプレーン)の対向面による共振解析を行って共振点を求め、その共振点にバイパスコンデンサを搭載する方法が用いられてきた。しかしながら、この方法ではGND層のプレーン基板そのものの共振解析を考慮できないため、GND層のプレーン基板のノイズの低減を行うことができなかった。
【0013】
そこで、本発明の情報処理装置1が備えるプリント配線板10は、図2に示すように、表層10aまたは裏層10b(図2では裏層10b)にGND層15にのみ電気的に接続されたGNDパッド17を設けるとともに、このGNDパッド17に接触するように誘電体部品18を搭載し、プリント配線板10が情報処理装置1に収納される際にこの誘電体部品18を筐体5に接触させることで、GND層15のプレーン基板におけるノイズを低減させている。
【0014】
プリント配線板10をこのように構成する手順を、図3乃至図7に基づいて説明する。図3に、情報処理装置1の筐体5に内蔵されるプリント配線板10の一例を示す。プリント配線板10の形状は任意であり、例えば、図3に示すように、全体的に鉤型をなす板状に形成されている。
【0015】
また、図4に、筐体5の内部に収納されている状態のプリント配線板10を示す。図4に示すように、プリント配線板10には、プリント配線板10を筐体5に対して固定するためのネジ19が複数設けられている。プリント配線板10を筐体5に対してネジ19で電気的に接続させることにより、筐体5の全体がグラウンドとしての機能を担っている。
【0016】
しかしながら、このようにプリント配線板10をネジ19で筐体5に接続した場合には、何らかの事態によりプリント配線板10のGND層15のプレーン基板が揺さぶられた場合に、プリント配線板10のネジ19が電源ゆれの節となって、プリント配線板10の全体が共振してしまう恐れがある。そして、ひどい場合には、このプリント配線板10におけるノイズが大きくなり過ぎて、EMIの基準を満たさなくなってしまうことも考えられる。
【0017】
そこで、GND層15のプレーン基板に対して共振解析を行うことによりGND層15のプレーン基板の共振の腹(共振点)を求めて、プリント配線板10におけるこの共振点の位置に誘電体部品18を設置する。そして、プリント配線板10を筐体5に収納する際に、この誘電体部品18を筐体5に接触させるようにして収納することにより、共振周波数を高周波にシフトさせてノイズを抑制することができる。共振解析の方法は、例えばGND層15のプレーン基板の形状やネジ19の設置位置等に基づいてシミュレーションを行う方法(例えばネジの位置を共振の節として共振解析する方法)等である。
【0018】
図5は、GND層15のプレーン基板に対する共振解析の結果を示す図である。図5において、共振点は×印で示されている。この共振点における共振周波数を高周波にシフトさせるためには、GND層15のプレーン基板を、この共振点において筐体5と電気的に接続させる必要がある。
【0019】
図6は、プリント配線板10に誘電体部品18を設置した状態を示す図である。図6に示すように、プリント配線板10の裏層10bにおいて、GND層15のプレーン基板に対する共振解析により求められた共振点の位置に、GND層15と電気的に接続されたGNDパッド17を設けるとともに、このGNDパッド17に接触するように誘電体部品18を搭載する。
【0020】
図7は、このようにして誘電体部品18が設けられたプリント配線板10を、筐体5の内部に収納した状態を示す図である。図7に示すように、プリント配線板10が筐体5の内部に収納されている間、誘電体部品18は筐体5と接触している。このように、高周波的にGND層15と筐体5との間に誘電体部品18が配置されることにより、GND層15のプレーン基板に新たに共振の節が生成されて、GND層15のプリント基板の共振周波数を高周波にシフトさせることができる。
【0021】
なお、図8に示すように、プリント配線板10において、GND層15のプレーン基板と誘電体部品18とをバネ等の弾性体21で接続することにより、設計の自由度を向上させても良い。すなわち、この場合のプリント配線板10は、弾性体21を伸ばした状態のときには誘電体部品18がGNDパッド17の外部に大きく突出するが、弾性体21を縮めた状態のときには誘電体部品18がGNDパッド17の外部にあまり突出しない、あるいは誘電体部品18の全体または一部がGNDパッド17の内部(すなわちプリント配線板10の内部)に収納されるように構成される。これにより、誘電体部品18がセラミック等の硬い物質であって、プリント配線板10から大きく飛び出ている場合であっても、プリント配線板10を筐体5の内部にコンパクトに収納させることができ、プリント配線板10または情報処理装置1の設計の自由度が向上する。
【0022】
本発明に係るプリント配線板10、このプリント配線板10を備えた情報処理装置1、及び、プリント配線板10のEMI抑制方法によると、プリント配線板10を筐体5に固定するネジ19をGND共振の節としてGND層15のプレーン基板のGND共振解析を行い、プリント配線板10のGND共振点の位置にGNDパッド17を設けて、このGNDパッド17に接触するように誘電体部品18を搭載し、この誘電体部品18が筐体5に対して接触するようにしてプリント配線板10を筐体5の内部に収納することにより、新たなGND共振点の節を生成して、GND層15のプレーン基板の共振周波数を高周波にシフトさせることで、一般的な基板共振解析の手法をそのまま用いて、GND層15のプレーン基板の共振周波数を高周波側にシフトさせることができ、GND層15のEMIノイズを低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るプリント配線板を備えた情報処理装置を示す斜視図。
【図2】本発明に係るプリント配線板を示す断面図。
【図3】本発明に係るプリント配線板を示す概略図。
【図4】本発明に係るプリント配線板が情報処理装置の筐体の内部に収納されているときのプリント配線板の状態を示す概略図。
【図5】本発明に係るプリント配線板におけるGND層のプレーン基板に対する共振解析結果を示す図。
【図6】本発明に係るプリント配線板のGND層のプレーン基板の共振点に誘電体部品が設けられた状態を示す概略図。
【図7】本発明に係るプリント配線板が情報処理装置の筐体の内部に収納されているときに、GNDプレーンの共振点の位置に誘電体部品が設けられた状態を示す概略図。
【図8】本発明に係るプリント配線板において、GND層と誘電体部品との間に弾性体が設けられた状態を示す概略図
【符号の説明】
【0024】
1…情報処理装置,2…キーボード,3…ディスプレイ,4…スピーカ,5…筐体,10…プリント配線板,11、13、14、16…信号層,12…電源(VCC)層,15…グラウンド(GND)層,17…グラウンド(GND)パッド,18…誘電体部品,19…ネジ,20…共振点,21…弾性体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板であって、
前記グラウンド層の基板における共振点の位置に、誘電体部品が、プリント配線板が筐体に収納される際に、この筐体に対して接触可能なように設けられたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記グラウンド層の基板における共振点の位置にグラウンドパッドが設けられ、
前記誘電体部品は、前記グラウンドパッドに接触するように設けられたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記誘電体部品は、前記グラウンド層に対して弾性体で接続されることにより設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載のプリント配線板が、筐体内部に、前記誘電体部品がこの筐体に接触するように収納されたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
信号層、グラウンド層、及び電源層が積層されることにより形成されたプリント配線板のEMI抑制方法であって、
前記グラウンド層の基板の共振点を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにて算出された前記グラウンド層の基板の共振点の位置に、誘電体部品を、プリント配線板が筐体に収納される際に、この筐体に対して接触可能なように設置する第1の設置ステップと、
を行うことを特徴とするプリント配線板のEMI抑制方法。
【請求項6】
前記第1の設置ステップを行う前に、前記グラウンド層の基板の共振点の位置にグラウンドパッドを設置する第2の設置ステップを行うとともに、
前記第1の設置ステップにて、誘電体部品を、前記グラウンドパッドに接触するように設置することを特徴とする請求項5記載のプリント配線板のEMI抑制方法。
【請求項7】
前記第1の設置ステップにて、誘電体部品を、前記グラウンド層に対して弾性体で接続させることにより設置することを特徴とする請求項5または6に記載のプリント配線板のEMI抑制方法。
【請求項8】
前記算出ステップにて、前記グラウンド層の基板の形状、及び前記グランド層の基板に固定されているネジの設置位置に基づいて、前記グラウンド層の基板の共振点を算出することを特徴とする請求項5記載のプリント配線板のEMI抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−73900(P2010−73900A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239897(P2008−239897)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】