説明

プリント配線板およびそれを備えたモータまたは電気機器

【課題】部品がはんだ接合されたプリント配線板において、前記部品と前記プリント配線との接合面の閉じた狭小空間に、未硬化フラックス残渣が存在する場合、前記未効果フラックス残渣付着面の絶縁性能が低くなり、前記プリント配線板が短絡故障に至る可能性があるという課題があった。
【解決手段】プリント配線板の部品接合箇所に貫通穴を設け、前記貫通穴からフラックス含有溶剤を気化させて、前記フラックスの硬化を促進するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板のはんだ付け接合の周辺技術に属し、特に、フラット形状のセラミックもしくはエポキシ樹脂モールドパッケージの、プリント配線板との接合側表面に複数の平型電極を設けた部品(QFNパッケージ部品)の接合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器に用いられるプリント配線板は、絶縁性樹脂の基材上に銅箔パターンを印刷して配線したもので、銅箔間には、所望の抵抗値以上の絶縁性能が必要である。銅箔間の絶縁性能は、基材の樹脂および基材の表面の絶縁性能により維持される。前記、所望の絶縁性能とは、複数の銅箔の各々の間にて抵抗値100MΩ以上であることが一般的に望ましい。
【0003】
プリント配線板に、各種部品を接合する場合に広く用いられている方法として、リフローはんだ付け工法がある。前記リフローはんだ付け工法は、鉛や錫などのはんだ合金粒子をフラックスとともに揮発性溶剤で練りこんでペースト状にしたクリームはんだを、前記プリント配線板上の所望の箇所に印刷塗布して、塗付したクリームはんだ上に各種部品を乗せた後、リフロー炉と称する加熱炉を通過させて加熱、塗布したクリームはんだの合金粒子を溶融固化させて、前記部品電極と前記銅箔との接合が成される。
【0004】
その工程の中で、クリームはんだに含有する揮発性溶剤は、加熱により気化されてはんだ合金粒子とともに含まれていたフラックスも硬化されて、プリント配線板表面に付着するが、十分に硬化したフラックスは、前記プリント配線板の絶縁性能へ影響することはない。なお、フラックスの役割は、はんだ付けされるプリント配線板の銅箔や部品電極の金属表面の酸化膜を化学的に除去するものである。
【0005】
近年、機器の小型化や、省資源化の要請による使用材料の削減の観点から、プリント配線板の小型化が進んでおり、基板の多層配線、立体配線技術が著しい。一方、プリント配線板にはんだ接合される各種部品の小型化も、微細化技術の進展に伴い、著しい進行が見られる。特に、マイコンやICなど半導体集積回路部品のパッケージ技術においても、パッケージの端面に電極があるSOPやQFPパッケージに代わって、パッケージの裏側表面、すなわち、プリント配線板に接する面側に複数の電極を有するBGAやQFNパッケージの部品が登場し、世の中に広く普及しつつある(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のQFNパッッケージのような部品パッケージの裏面に複数の平型電極を有する部品をプリント配線板に、クリームはんだを用いて、はんだ接合する場合には、以下のような課題がある。
【0007】
前記QFNパッッケージのような部品パッケージの裏面に複数の平型電極を有する部品では、はんだ接合箇所が部品とプリント配線板に挟まれた極めて狭小な空間であるためクリームはんだに含有する溶剤の気化が不十分で未硬化のフラックス残渣が残る場合がある。
【0008】
図9は従来のプリント配線板101の課題を示す構成図である。基材に張った銅箔8と、部品4の電極6とは接合材料3(はんだ)で接合されている。部品4の電極6aは部品4の内部構造上必要な電極で、銅箔とは接合されていない。
【0009】
未硬化フラックス102は溶剤の気化が不十分であったため、図中のように電極間の残
渣として存在している。フラックスが未硬化、すなわち溶剤が含有されている場合には、残渣に含まれる分子やイオンには流動性があり、絶縁性能が低下するという不具合がある。
【0010】
前記フラックスに含まれる材料としては、高分子重合体であるポリマーやハロゲン族元素の臭素があげられる。これらの物質は、硬化したフラックスのクラック抑制や、はんだ合金の電極や銅箔への濡れ性向上のために広く用いられている。
【0011】
部品4が、モータ駆動装置などの場合、主電源電圧が高く、例えば商用電源AC200Vの整流電圧であることがあり、部品裏面の電極間にAC200Vの整流電圧に準じた高電圧が加わるため、前記電極間の未硬化フラックス残渣により絶縁性能が低下すると、前記電極間でリーク電流が発生して、遂には短絡故障に至るという課題があった。
【0012】
図10、図11は前記課題を示した図である。図10において、図中の銅箔8の左右に信号源104により、高電圧が作用している。残渣102により前記銅箔8の左右間の抵抗値が低下、すなわち絶縁性能が低下するため微小電流が流れ始め、ついには、火花103が発生して、該当部位および周辺を焼損するという故障に至る。
【0013】
また、図11は、部品4の電極6aと、隣接する電極6との間に信号源104により、高電圧が作用した場合であり、前記電極6aは、部品4の構造上必要で、プリント配線板の銅箔との接合させる必要のない電極である。図10と同様、残渣103により前記電極6と6a間の抵抗値が低下、すなわち絶縁性能が低下するため微小電流が流れ始め、ついには、火花103が発生して、該当部位および周辺を焼損するという故障に至る。
【0014】
このような課題に対し、図11に示すように、クリームはんだが塗布される銅箔部(ランド部)に貫通バイアホールを設け、前記バイアホールの開口部周囲にリング状にソルダーレジストで膜を設けることで、前記クリームはんだが溶融した際に発生するガスを外部に排出するよう工夫した従来技術がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−105212号公報
【特許文献2】特開2010−245075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前記特許文献2では、電極間に存在する溶剤の気化ガスの排出には不十分であり、クリームはんだの塗布量が多かったり、ソルダーレジストのリングの外周から穴までの距離が短いと、クリームはんだがバイアホールに流れ込んで、前記バイアホールを塞いでガスの排出が十分に行われないという課題があった。
【0017】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、フラックス溶剤を十分気化させてフラックスを硬化させ、部品裏面電極間の絶縁性能の低下を防ぐことが出来るプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明のプリント配線板は、平面形状のパッケージ裏面周囲に複数の電極を配し、かつ少なくとも一つのアイランド状平型電極を設けた構造を有する部品が揮発性溶剤を含有する接合材料を用いて接合されるプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記部品の実装範囲内に、前記電極と相対する位置に銅箔による
ランドを設け、さらに前記部品の裏側の箇所の前記プリント配線板に張られた銅箔間の絶縁領域に、銅メッキ加工しない貫通穴を設けたものである。そして前記部品と前記プリント配線板を接合する過程において、前記揮発性溶剤を、前記部品が前記プリント配線板と接合する面の狭小空間から前記貫通穴を介して、外部へ気化、放出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、プリント配線板に空けた貫通穴によりフラックス溶剤を十分気化させてフラックスを硬化させ、部品裏面電極間の絶縁性能の低下を防ぐことが出来る。
【0020】
また、ハロゲン系元素を含まないフラックス溶剤を使用することで未硬化フラックス残渣が存在しても部品裏面電極間の絶縁性能を所望の値以上に維持することができる。
【0021】
また、ポリマーを含まないフラックス溶剤を使用することで未硬化フラックス残渣が存在しても部品裏面電極間の絶縁性能を所望の値以上に維持することができる。
【0022】
また、上記3つをすべて、もしくはいずれかを組み合わせることで部品裏面電極間の絶縁性能を所望の値以上に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1のプリント配線板の断面図
【図2】本発明の実施の形態2のプリント配線板の部品実装側からの平面図
【図3】本発明の実施の形態3のプリント配線板の部品実装側からの平面図
【図4】本発明の実施の形態4のプリント配線板の部品実装側からの平面図
【図5】本発明の実施の形態5のプリント配線板の部品実装側からの平面図
【図6】(a)本発明の実施の形態6のテストプリント配線板の断面図(b)本発明の実施の形態6のテストプリント配線板の銅箔間の温度と絶縁抵抗値の関係を示す特性図
【図7】(a)本発明のプリント配線板を内蔵した実施の形態7のモータの断面図(b)本発明のプリント配線板を内蔵した実施の形態7のモータの回路図(c)本発明のプリント配線板を内蔵した実施の形態7のモータの入力電力とプリント配線板の温度の関係を示す特性図
【図8】本発明のプリント配線板を内蔵したモータを送風用に供した実施の形態8のルームエアコンの内部構造図
【図9】従来例のプリント配線板の断面図
【図10】従来例のプリント配線板の電極6周辺での課題を示した図
【図11】従来例のプリント配線板の電極6a周辺での課題を示した図
【図12】従来例のプリント配線板のバイアホール周辺の図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、平面形状のパッケージ裏面周囲に複数の電極を配し、かつ少なくとも一つのアイランド状平型電極を設けた構造を有する部品が揮発性溶剤を含有する接合材料を用いて接合されるプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記部品の実装範囲内に、前記電極と相対する位置に銅箔によるランドを設け、さらに前記部品の裏側の箇所の前記プリント配線板に張られた銅箔間の絶縁領域に、銅メッキ加工しない貫通穴を設けたものである。
【0025】
また本発明は、前記部品と前記プリント配線板を接合する過程において、前記揮発性溶剤を、前記部品が前記プリント配線板と接合する面の狭小空間から前記貫通穴を介して、外部へ気化、放出させることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記貫通穴の形状を、丸穴としたものである。
【0027】
また本発明は、前記貫通穴の形状を、長穴又はスリット形状としたものである。
【0028】
また本発明は、前記貫通穴の位置は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る一つ若しくは複数の電極のうち前記プリント配線板とは接合しない電極の在る位置に設け、前記プリント配線板とは接合しない電極が、前記部品の前記プリント配線板との反接合側に、前記貫通工穴を介して露出するようにしたものである。
【0029】
また本発明は、前記貫通穴の位置は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る一つ若しくは複数の電極のうち前記プリント配線板とは接合しない電極の在る位置に設けて、前記プリント配線板と接合する電極の一部分が、前記部品の前記プリント配線板との反接合側に、前記貫通穴を介して露出するようにしたものである。
【0030】
また本発明は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る複数の電極間、並びに前記電極の中で、前記プリント配線板とは接合しない箇所全てが、前記プリント配線板の反接合側に前記貫通穴を介して露出するようにしたものである。
【0031】
また本発明は、前記揮発性溶剤中には、第十七族(ハロゲン)系元素を含有しないことを特徴とする。
【0032】
また本発明は、前記揮発性溶剤中には、高分子重合体(ポリマー)を含有しないことを特徴とする。
【0033】
また本発明は、前記揮発性溶剤中には、第十七族(ハロゲン)系元素並びに高分子重合体(ポリマー)の双方とも含有しないことを特徴とする。
【0034】
また本発明は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る複数の電極間には、高電圧が印加されたものである。
【0035】
また本発明は、前記高電圧とは、DC40V以上、若しくは実効値40V以上の電圧である。
【0036】
また本発明は、上記に記載のプリント配線板を内蔵したモータまたは空調機器である。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1のプリント配線板の構成を示す断面図である。エポキシ樹脂などで代表される絶縁性材料の基材7の表面には銅箔8による印刷パターンが施されている。半導体集積回路に代表される部品4は平面形状のパッケージ裏面に複数の平型の電極6を備えており、前記銅箔8と前記電極6とは、接合材料(たとえばはんだ合金)3にて互いが接合されている。前記基材7には、前記銅箔8と前記電極6との非接合箇所に、貫通穴5を複数設けた構成である。なお電極6aは、基材7上のプリント配線とは接合する必要はないが、前記部品4の構造上存在する電極である。
【0038】
前記貫通穴5の作用について以下説明する。前記部品4の電極6と基材7上の銅箔8とのはんだ接合の過程において、まず、銅箔8の部品4の電極6と相対する箇所に、はんだペーストが印刷塗布される。その上に前記部品4を乗せた後、加熱炉を通過させることで、はんだペースト中の合金の粒子が溶融、冷却固化することで接合されて、前記部品4が実装される。
【0039】
前記はんだペーストには、主成分である合金粒子以外にフラックスおよび揮発性の溶剤2が含有しており、前記加熱の際に、貫通穴5を介して、前記溶剤2は、気化・放散せしめることにより、前記部品4と基材7とが接する面の空間には、未硬化フラックス残渣が残ることはない。
【0040】
従って、貫通穴5を設けた構成により、前記部品4と基材7とが接する側の複数の電極間の絶縁性能は所望の値以上に維持されるという作用・効果がある。前記所望の値とは、前記電極間電圧がDC40V以上、もしくは実効値40V以上の場合には、抵抗値100MΩ以上が望ましい。
【0041】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2のプリント配線板の構成を示す平面図である。プリント配線板1上には、部品4が実装されており、前記部品4と、前記プリント配線板1が接する裏面には、複数の平型の電極6が設けられており。前記電極6直下で銅箔8と図示しない接合材料を介して接合される。前記銅箔8は、前記電極6直下から前記部品4の外側へ延びて電気回路を形成している。アイランド状の平型の電極6a、6b、6c、6dは、部品4の構造上の必要性から設けられたものであり、部品4とプリント配線板1との接合強度を維持するため、比較的寸法の大きい6b、6c、6dは、銅箔と接合材料を介して接合している。
【0042】
丸穴5aを複数の電極6の間、及び、アイランド状の平型の電極6a、6b、6c、6dの周辺に多数個設けてプリント配線板1を貫通している。プリント配線板1を貫通する前記丸穴5aを設けた構成により、実施の形態1同様に未硬化フラックス残渣が残ることは無く、前記部品4と基材7とが接する面の複数の電極間の絶縁性能は所望の値以上に維持されるという作用・効果がある。
【0043】
前記丸穴5aが、丸穴形状であるので、NCドリルで所望の箇所に任意に貫通させることができ、プリント配線板1の加工が容易になるという実施の形態2独自の効果がある。
【0044】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3のプリント配線板の構成を示す平面図である。図3は、図2に示す実施の形態2と比較して、貫通穴の形状が異なる以外は同一である。図3において、複数の電極間に溝状に設けたスリット5bは貫通穴を形成している。プリント配線板1を貫通する前記スリット5bを設けた構成により、実施の形態1同様に未硬化フラックス残渣が残ることは無く、前記部品4と基材7とが接する面の複数の電極間の絶縁性能は所望の値以上に維持されるという作用・効果がある。
【0045】
前記スリット5bが、スリット形状であるので、隣接する電極間の互いの最小距離の箇所は、すべて貫通穴による空間になるので、未硬化フラックス残渣がプリント配線板の表面に残る余地がなくなるので、複数の電極間の絶縁性能が所望の値に容易に維持できるという実施の形態3独自の効果がある。
【0046】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4のプリント配線板の構成を示す平面図である。図4は、図2に示す実施の形態2と比較して、電極6aを、プリント配線板1の部品実装面の反対側に完全に露出するような角穴5cを新たに設けた以外は同一である。
【0047】
図4において、電極6aは、部品4の構造上必要な電極であって、プリント配線板の銅箔に接合する必要はない。前記電極6aは、図中上方の電極6と極めて近い位置にあり、実施の形態2の丸穴5aを、前記6aの四方に設けても、プリント配線板の基材が連続す
る箇所が残り、未硬化フラックス残渣がプリント配線板の表面に残る余地があるので、前記のように、角穴5cを設けたことで、電極6aの全てと、隣接する電極6の一部は、貫通穴による空間になるので、未硬化フラックス残渣がプリント配線板の表面に残る余地がなくなり、複数の電極間の絶縁性能が所望の値に容易に維持できるという実施の形態4独自の効果がある。
【0048】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5のプリント配線板の構成を示す平面図である。図5は、図2に示す実施の形態2と比較して、複数の電極6の間及び、アイランド状の平型の電極6a、6b、6c、6dを、プリント配線板1の部品実装面の反対側に完全に露出するような全抜き穴5dを一体で設けた以外は同一である。
【0049】
図5において、平型の電極6a、6b、6c、6dは、部品4の構造上必要な電極であって、プリント配線板の銅箔に接合する必要はない。前記のように、全抜き穴5dを設けたことで、6の各電極間および6a,6b,6c,6dの周囲は、すべて貫通穴による空間になるので、未硬化フラックス残渣がプリント配線板の表面に残る余地がなくなり、複数の電極間の絶縁性能が所望の値に容易に維持できるという実施の形態5独自の効果がある。
【0050】
(実施の形態6)
図6は、本発明の実施の形態6の(a)、(b)は、プリント配線板1の絶縁抵抗の温度特性の測定図と特性図である。図6(a)において、プリント配線板1の部品4の電極6と銅箔8とをはんだ接合した部分には、銅箔上にクリームはんだを塗布し、前記クリームはんだ上に部品4を載せた後、加熱・溶融固化したものである。前記部品4とはんだ3で囲まれた、図中左右の銅箔8のギャップ間には未硬化フラックス102が残渣となって付着している。前記銅箔8の両端には、メガ(絶縁抵抗計)12が接続されている。
【0051】
図6(b)は、前記メガ12で計測した銅箔間の抵抗値の温度特性を示したもので、フラックス溶剤の異なる3種類のクリームはんだペーストを使用した場合のそれぞれの特性をしめしたものである。なお、図6(b)の温度とは、未硬化フラックス102及びその周辺温度とする。
【0052】
図中の実線Aは、フラックス溶剤にハロゲン系元素とポリマー材双方を含有しないもの、1点鎖線Bは、ハロゲン系元素を含有しないもの、2点鎖線Cは、ポリマー材を含有しないもの、破線Dは、ハロゲン系元素、ポリマー材のいずれも含有したものである。
【0053】
Rmaxは、抵抗値100MΩ以上の値、例えば、前記メガ12の計測限界値5000MΩとする。前記実線Aは、部品4の上限温度Tmaxまで、温度に係わらず一定値Rmaxを安定的に維持し、B,C,Dの順に、ある変移温度T3、T2、T1に達すると抵抗値が減じてしまう。
【0054】
前記破線Dの特性は、従来のプリント配線板に使用しているクリームはんだであり、C又はB又はAの特性をしめすクリームはんだを使用することで、従来のプリント配線板に使用しているクリームはんだを使用した場合に比べ、より高温でも高い抵抗値を維持できるという実施の形態6独自の効果がある。
【0055】
また、実施の形態1又は2又は3又は4又は5の各種貫通穴を設けたプリント配線板のはんだ付けに、実施の形態6のクリームはんだを使用しても、より一層の効果が期待できる。
【0056】
(実施の形態7)
図7(a)、(b)、(c)は、実施の形態6のプリント配線板1を内蔵したモータ13の構造図、回路図、特性図である。図7(a)において、固定子15は、積層鉄心14に、複数相の巻線Lを施して、樹脂モールドしたものであり、前記固定子15に、回転子16、プリント配線板1を収めてブラケット19で蓋をした構造を有している。前記回転子16は、シャフト20に永久磁石18を施したヨーク21と軸受け17を設けた構造である。前記プリント配線板1上には部品4がはんだ付け実装され、前記部品4の裏面には貫通穴5が複数、設けられている。
【0057】
図中の部品4のはんだ付けに使用されるクリームはんだのフラックス溶剤は、実施の形態6に示すようなハロゲン系元素を含まないものであってもよいし、ポリマー系材を含まないものであってもよいし、又ハロゲン系元素、ポリマー材のいずれも含まないものであってもよい。また図中の貫通穴5の形状は、実施の形態2又は3又は4又は5記載のいずれでもよい。
【0058】
図中の部品4は、インバータICであり、直流電圧を複数相の交流電圧へ変換して、巻線Lへ印加する機能を有したものである。
【0059】
図7(b)は、直流電源23が、モータ13と、電力計22を介して接続された回路図である。前記電力計22により、前記モータ13への入力電力Pin(W)が計測できる。
【0060】
図7(c)は、入力電力Pin(W)と、プリント配線板1の部品4と接する面および其の周辺温度の温度上昇との関係を示した特性図である。図7(c)を用い、本発明の実施の形態6のプリント配線板を用いたモータの入力電力の上限について以下説明する。
【0061】
図7(c)において、Pin=0(W)で前記温度は、雰囲気温度Taと一致している(T=Ta(℃))。続いてモータ13の巻線Lに電圧が印加されて、入力電力Pinが増大するとともに、前記温度も増大する。しかしながら、温度が増大すると、実施の形態6の図6(b)に示すように、絶縁抵抗が減り始める変移温度に達する。前記変移温度は、部品4をプリント配線板1に接合する際に使用したクリームはんだのフラックス溶剤含有材料によりT1、T2、T3のように変わる。絶縁抵抗が低下すると、図示しない部品4の裏面の電圧の異なる銅箔間で本来流れない電流が発生してプリント配線板1の部品4は、正常に機能せず故障状態になる。
【0062】
図7(c)のa,b,cは、それぞれ部品4のはんだ付けに使用されるクリームはんだのフラックス溶剤がハロゲン系元素、ポリマー材のいずれも含まないもの、ハロゲン系元素を含まないもの、ポリマー材を含まないものの入力電力の上限を意味し、dはハロゲン系元素、ポリマー材のいずれも含むもの従来のプリント配線板での入力電力の上限を意味するものである。
【0063】
dに比べ、c,b,aの順に、入力電力Pinの上限はより大きなPinを許容するという効果がある。なお、実施の形態1又は2又は3又は4又は5のプリント配線板を用いて、部品4のプリント配線板に接する面のフラックスが十分硬化していれば、前記aと同様の効果が得られる。
【0064】
(実施の形態8)
図8(a)、(b)は、実施の形態8の24の構造図、および家屋内の部屋28に、前記ルームエアコンディショナー室内機24を設置した場合の平面図である。図8(a)は前記24の内部構成を示したもので、熱交換器25、シャフトにクロスフローファン26
を設けた実施の形態7のモータ13、電装BOX27を主要な構成要素としている。一方、図8(b)は、図8(a)の前記ルームエアコンディショナー室内機24を、壁面に設けた部屋28の平面図である。
【0065】
実施の形態7のモータを、前記ルームエアコンディショナー室内機24に用いることにより、従来例のプリント配線板を内蔵したモータに比べ、実施の形態7の図7(c)に示すようにより大きい電力の入力が可能であるため、より広い部屋の空気を調整することが可能になる。
【0066】
図8(b)のXの範囲が、従来例のプリント配線板を内蔵したモータを使用したルームエアコンディショナー室内機の空気調整可能な部屋の範囲を示したものであり、前記範囲Xに比べより広い範囲Yは、本発明の実施の形態8のルームエアコンディショナー室内機の空気調整可能な部屋の範囲を示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、プリント配線板が高温環境下に曝される場合や、実装される部品の温度上昇が大きく、前記部品がプリント配線板と接する面が高温になる場合が好適であり、特に、モータ駆動装置が具現化したプリント配線板をモータ内部に設けた利用や、前記モータを、熱交換器など他の発熱装置を同一筐体内に収めた機器、例えば、ルームエアコンなど空気調節器に使用した利用方法が好適である。その他一般の電気機器にも利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 プリント配線板
2 溶剤
3 接合材料(はんだ)
4 部品
5 貫通穴
5a 丸穴
5b スリット
5c 角穴
5d 全抜き穴
6,6a,6b,6c,6d 電極
7 基材
8 銅箔
13 モータ
24 ルームエアコンディショナー室内機
102 未硬化フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状のパッケージ裏面周囲に複数の電極を配し、かつ少なくとも一つのアイランド状平型電極を設けた構造を有する部品が揮発性溶剤を含有する接合材料を用いて接合されるプリント配線板であって、
前記プリント配線板は、前記部品の実装範囲内に、前記電極と相対する位置に銅箔によるランドを設け、さらに前記部品の裏側の箇所の前記プリント配線板に張られた銅箔間の絶縁領域に、銅メッキ加工しない貫通穴を設けたプリント配線板。
【請求項2】
前記部品と前記プリント配線板を接合する過程において、前記揮発性溶剤を、前記部品が前記プリント配線板と接合する面の狭小空間から前記貫通穴を介して、外部へ気化、放出させることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
前記貫通穴の形状を、丸穴とした請求項1または2記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記貫通穴の形状を、長穴又はスリット形状とした請求項1または2記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記貫通穴の位置は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る一つ若しくは複数の電極のうち前記プリント配線板とは接合しない電極の在る位置に設け、前記プリント配線板とは接合しない電極が、前記部品の前記プリント配線板との反接合側に、前記貫通穴を介して露出するようにした請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記貫通穴の位置は、前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る一つ若しくは複数の電極のうち前記プリント配線板とは接合しない電極の在る位置に設けて、前記プリント配線板と接合する電極の一部分が、前記部品の前記プリント配線板との反接合側に、前記貫通穴を介して露出するようにした請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る複数の電極間、並びに前記電極の中で、前記プリント配線板とは接合しない箇所全てが、前記プリント配線板の反接合側に前記貫通穴を介して露出するようにした請求項3または4記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記揮発性溶剤中には、第十七族(ハロゲン)系元素を含有しないことを特徴とする請求1から7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
前記揮発性溶剤中には、高分子重合体(ポリマー)を含有しないことを特徴とする請求1から7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項10】
前記揮発性溶剤中には、第十七族(ハロゲン)系元素並びに高分子重合体(ポリマー)の双方とも含有しないことを特徴とする請求1から7のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項11】
前記部品の前記プリント配線板に接する面に在る複数の電極間には、高電圧が印加された請求項1から10のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項12】
前記高電圧とは、DC40V以上、若しくは実効値40V以上の電圧である請求項11記載のプリント配線板。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載のプリント配線板を内蔵したモータまたは電気機
器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−4651(P2013−4651A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132973(P2011−132973)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】