説明

プロジェクタ及び照明装置

【課題】装置全体の小型化を図りつつ、被投射面に表示影が投射されるのを抑え、画質の向上を図ることが可能なプロジェクタ及び照明装置を提供すること。
【解決手段】複数種の色光を含むレーザ光を射出する光源11R,11G,11Bと、照明光を生成する複数の回折光学素子12R,12G,12Bと、反射型光変調素子20R,20G,20Bと、第1偏光分離膜41及び第2偏光分離膜42を有し、複数の反射型光変調素子20R,20G,20Bにおいて変調された光を合成する色合成部30と、投射手段50とを備え、第1偏光分離膜41と第2偏光分離膜42とが交差して設けられ、回折光学素子12R,12G,12Bが、第1偏光分離膜41及び第2偏光分離膜42のうち光源11R,11G,11Bから射出された光が偏光分離される偏光分離膜と異なる偏光分離膜に入射しないように、色合成部30に複数の光束を入射させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投射型表示装置としては、小型化を図るために、複数種の色光をクロスダイクロイックプリズムにより合成し、スクリーンに投射する装置が提案されている。このクロスダイクロイックプリズムは、直角三角柱状のプリズムを4個、X状に接合することにより、例えば、赤色光を選択的に反射可能な第1波長選択膜と青色光を選択的に反射可能な第2波長選択膜がクロスして配置される。
このようなクロスダイクロイックプリズムは、4個の直角三角柱状のプリズムの一辺を一直線に揃えているため、4つの辺が重なり合う境界面がスクリーンに投射され画像の中心に映るという問題が生じる。そこで、第1偏光分離膜と第2偏光分離膜とをX状に交差させずに形成し色合成を行う複合プリズムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の複合プリズムは、図9に示すように、4つのプリズム101,102,103,104を接合したプリズムであり、XY平面に垂直で、かつ、XZ平面及びYZ平面に対して45°をなす第1偏光分離膜106が形成され、YZ平面に垂直で、かつ、XY平面及びXZ平面に対して45°をなす第2偏光分離膜107が第1偏光分離膜106と交差して形成されている。すなわち、このような複合プリズムは、クロスダイクロイックプリズムを形成するときに生じる4つの辺が重なり合う境界面は存在しない。
【特許文献1】国際公開第2004/068197号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の複合プリズムを用いた表示装置では、ZY平面の一端面111から矩形状の光Lを入射し、一端面111と反対の他端面112から光Lを射出する場合、他端面112に対向して液晶ライトバルブ115を配置されている。このとき、第1偏光分離膜106と第2偏光分離膜107とが交差して設けられているため、境界面となる第2偏光分離膜107を照明光が通過して液晶ライトバルブ115に入射することにより、第2偏光分離膜107が表示影Kとして被投射面に投射されてしまう。これにより、装置全体の小型を図ることは可能であるが、画質の低下を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、装置全体の小型化を図りつつ、被投射面に表示影が投射されるのを抑え、画質の向上を図ることが可能なプロジェクタ及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のプロジェクタは、複数種の色光を含むレーザ光を射出する光源と、前記複数種の色光のそれぞれの光路上に設けられ、前記光源から射出された光を回折し、照明光を生成する複数の回折光学素子と、該複数の回折光学素子により生成された照明光を変調するとともに反射する複数の反射型光変調素子と、前記回折光学素子及び前記反射型光変調素子から射出された光のうち少なくとも1種類の色光が入射するとともに、入射した光のうち一方向に振動する偏光光を透過させ、他方向に振動する偏光光を反射させる第1偏光分離膜及び第2偏光分離膜を有し、前記複数の反射型光変調素子において変調された光を合成する色合成部と、該色合成部により合成された光を被投射面に投射する投射手段とを備え、前記第1偏光分離膜と前記第2偏光分離膜とが交差して設けられ、前記回折光学素子により、前記光源から射出された光が前記第1偏光分離膜及び前記第2偏光分離膜のうち偏光分離される偏光分離膜と異なる偏光分離膜に入射しないように、前記色合成部に複数の光束を入射させることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るプロジェクタでは、光源から射出された複数種の色光は、それぞれ回折光学素子において回折され、例えば、第1偏光分離膜に入射し偏光分離され、反射型光変調素子に入射する。そして、入射した照明光は、それぞれ反射型光変調素子において変調されて色合成部に入射する。色合成部において合成された光は、投射手段により被投射面に投射される。
このとき、光源から射出された光が、第2偏光分離膜に入射しないように、回折光学素子により複数の光束が生成される。また、第2偏光分離膜に入射し偏光分離される光は、第1偏光分離膜に入射しないように、回折光学素子により複数の光束が生成され、反射型光変調素子で合わさり、反射型光変調素子を照明する。
すなわち、本発明では、第1偏光分離膜と第2偏光分離膜とが交差していても、第1偏光分離膜において偏光分離され反射型光変調素子に入射する光に第2偏光分離膜が影として映し出されるのを抑えることができる。また、第2偏光分離膜において偏光分離され反射型光変調素子に入射する光に第1偏光分離膜が影として映し出されるのを抑えることができる。したがって、被投射面に表示影が投射されるのを抑えることができるため、画質の向上を図ることが可能となる。
また、色合成部により複数種の色光を合成するため、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0008】
また、本発明のプロジェクタは、1種類の色光に対して1つの前記回折光学素子が設けられ、前記回折光学素子により、前記光源から射出された光を複数の光束に分割し、前記色合成部に入射させることが好ましい。
【0009】
本発明に係るプロジェクタでは、1種類の色光に対して設けられた回折光学素子により、光源から射出された光を複数の光束に分割し、反射型光変調素子を照明する。すなわち、複数の回折光学素子を用いて複数の光束を生成する場合に比べて、部品点数が少なくて済むため、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0010】
また、本発明のプロジェクタは、1種類の色光に対して複数の前記回折光学素子が設けられ、前記光源から射出された光が前記複数の回折光学素子のそれぞれに入射し、前記複数の回折光学素子のそれぞれにおいて回折し生成された複数の光束を前記色合成部に入射させることが好ましい。
【0011】
本発明に係るプロジェクタでは、光源から射出された光を複数の回折光学素子にそれぞれ入射させる。そして、複数の回折光学素子のそれぞれにおいて回折し生成された複数の光束が色合成部に入射する。これにより、1つの回折光学素子により複数の光束を生成する場合に比べて、複数の回折光学素子を設けた方が、複数の光束を生成し易くなる。したがって、回折光学素子の回折パターンの設計が容易となる。
【0012】
また、本発明のプロジェクタは、前記光源が複数種の色光を含む白色光を射出し、前記光源から射出された白色光を前記複数種の色光ごとに分離する色分離部を備えることが好ましい。
【0013】
本発明に係るプロジェクタでは、光源から射出された白色光は、色分離部により複数種の色光に分離される。分離された各色光はそれぞれ回折光学素子において回折される。すなわち、白色光を射出する光源を用いることにより、各色光を射出する光源を備えなくて良いため、低コスト化を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明のプロジェクタにおいて、前記回折光学素子は、前記反射型光変調素子を照明する領域が重なるように照明光を生成することが好ましい。
【0015】
本発明に係るプロジェクタでは、複数の光束が反射型光変調素子を照明する際、回折光学素子は、反射型光変調素子を照明する領域が重なるように照明光を生成する。これにより、複数の光束間に確実に隙間が生じないようにすることが可能となる。
【0016】
また、本発明のプロジェクタは、前記反射型光変調素子に入射する照明光の照度分布に基づいて、前記反射型光変調素子での変調量を調整することが好ましい。
【0017】
本発明に係るプロジェクタでは、複数の光束を色合成部に入射させるため、複数の光束が反射型光変調素子を照明する際、複数の光束間に確実に隙間が生じないように重ならせる場合がある。例えば、このような場合、重なる部分が明るくなってしまうため、この部分の明るさを落とす必要が生じる。そこで、反射型光変調素子に入射する照明光の照度分布に基づいて、反射型光変調素子での変調量を調整する。これにより、重なる部分が過度に明るくなることがないため、鮮明な画像を被投射面に投射させることが可能となる。
【0018】
また、本発明のプロジェクタは、前記回折光学素子がホログラム素子であることが好ましい。
【0019】
本発明に係るプロジェクタでは、例えば、ガラス基板に計算機で計算して人工的に作成した凹凸構造が形成された計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram、以下CGHと称す。)を用いることができる。このCGHは回折現象を利用して入射光の波面を変換する波面変換素子である。特に位相変調型のCGHは入射光波のエネルギをほとんど失うことなく波面変換が可能である。このように、CGHは均一な強度分布や単純な形状の強度分布を発生させることができるので、反射型光変調素子を照射するのに好適に用いることができる。さらに、CGHは、回折格子の分割領域の自由な設定が可能であり、収差の問題が生じないので好適である。
また、ホログラム素子は、1つの光線を複数に分け、反射型光変調素子上で合わせることや、重ね合わせる照明光を生成し易いため、好適に用いることが可能となる。
【0020】
本発明の照明装置は、複数種の色光を含むレーザ光を射出する光源と、前記複数種の色光のそれぞれの光路上に設けられ、前記光源から射出された光を回折し、照明光を生成する複数の回折光学素子と、前記複数の回折光学素子により生成された照明光のうち少なくとも1種類の色光が入射するとともに、入射した光のうち一方向に振動する偏光光を透過させ、他方向に振動する偏光光を反射させる第1偏光分離膜及び第2偏光分離膜を有する偏光分離部とを備え、前記回折光学素子により、前記光源から射出された光が前記第1偏光分離膜及び前記第2偏光分離膜のうち偏光分離される偏光分離膜と異なる偏光分離膜に入射しないように、前記偏光分離部に複数の光束を入射させることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る照明装置では、光源から射出された複数種の色光は、それぞれ回折光学素子において回折され、例えば、第1偏光分離膜に入射し偏光分離される。このとき、光源から射出された光が、第2偏光分離膜に入射しないように、回折光学素子により照明光が生成される。また、第2偏光分離膜に入射し偏光分離された光が、第1偏光分離膜に入射しないように、回折光学素子により照明光が生成される。そして、偏光分離部の第1偏光分離膜及び第2偏光分離膜により偏光分離される。したがって、偏光分離部から射出される光に表示影が映し出されるのを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明に係るプロジェクタ及び照明装置の実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態のプロジェクタの全体構成を示す斜視図であり、図2は、色合成プリズムの斜視図であり、図3(a)は、第1偏光分離膜を透過、反射する光の光路を示す図であり、図3(b)は、第2偏光分離膜を透過する光の光路を示す図であり、図4は、回折光学素子の一例を示す模式図であって、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線断面矢視図であり、図5は、回折光学素子により生成される照明光を示す斜視図であり、偏光プリズム及び第1偏光分離膜を省略して示している。
【0023】
[一実施形態]
本発明のプロジェクタの一実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態においては、プロジェクタとして空間光変調装置で生成された画像情報を含む色光を投射系を介してスクリーン(被投射面)上に投射するフロント型の投射型プロジェクタを例に挙げて説明する。
【0024】
本実施形態のプロジェクタ1では、図1に示すように、反射型のスクリーン55を用い、スクリーン55の正面側からスクリーン55上に画像情報を含む光を投射する。
プロジェクタ1は、図1に示すように、照明装置10と、光変調装置20と、立方体形状の色合成プリズム(色合成部,偏光分離部)30と、投射レンズ(投射手段)50とを備えている。
【0025】
照明装置10は、光変調装置20を照明する装置であり、赤色照明装置10Rと、緑色照明装置10Gと、青色照明装置10Bとを備えている。赤色照明装置10Rは、赤色のレーザ光を射出するレーザ発光部(光源)11Rと、レーザ発光部11Rから射出された光を回折する回折光学素子12Rとを備えている。同様に、緑色照明装置10Gは、緑色のレーザ光を射出するレーザ発光部(光源)11Gと、回折光学素子12Gとを備え、青色照明装置10Bは、青色のレーザ光を射出するレーザ発光部(光源)11Bと、回折光学素子12Bとを備えている。なお、本実施形態では、赤色照明装置10Rから射出される光はP偏光光であり、緑色照明装置10Gから射出される光はS偏光光であり、青色照明装置10Bから射出される光はP偏光光である。
【0026】
また、光変調装置20は、赤色照明装置10Rから射出された光を画像情報に応じて光変調する2次元の反射型の赤色用液晶ライトバルブ20Rと、緑色照明装置10Gから射出された光を画像情報に応じて光変調する2次元の反射型の緑色用液晶ライトバルブ20Gと、青色照明装置10Bから射出された光を画像情報に応じて光変調する2次元の反射型の青色用液晶ライトバルブ20Bとからなる。
各液晶ライトバルブ20R,20G,20Bは、入射した光を反射させる反射画素電極(図示略)を有している。これにより、各液晶ライトバルブ20R,20G,20Bは、回折光学素子12R,12G,12Bから射出されたそれぞれの光を変調するとともに、色合成プリズム30に向かって反射させる。
【0027】
また、緑色照明装置10Gは、射出された光の光路が赤色照明装置10Rから射出された赤色光の光路に対して垂直になるように配置されている。そして、赤色照明装置10Rから射出された赤色光の光路上に、偏光プリズム14が配置されており、緑色照明装置10Gから射出された光の光路は、偏光プリズム14により、赤色光の光路と同一光路を進行する。なお、本実施形態では、偏光プリズム14は、P偏光光を透過し、S偏光光を反射する。また、偏光プリズム14と色合成プリズム30との間には、フィールドレンズ13aが配置されている。このフィールドレンズ13aにより、赤色照明装置10R,緑色照明装置10Gのレーザ発光部11R,11Gから射出された光が、赤色用液晶ライトバルブ20R,緑色用液晶ライトバルブ20Gに垂直に入射する。
また、青色照明装置10Bの回折光学素子12Bと色合成プリズム30との間には、フィールドレンズ13bが配置されている。このフィールドレンズ13bにより、青色照明装置10Bのレーザ発光部11Bから射出された光が、青色用液晶ライトバルブ20Bに垂直に入射する。
【0028】
色合成プリズム(色合成部)30は、赤色照明装置10R,緑色照明装置10G,青色照明装置10Bから射出された赤色光,緑色光,青色光を合成するプリズムである。この色合成プリズム30は、第1偏光分離膜41と、第1偏光分離膜41と交差して設けられた第2偏光分離膜42とを備えている。
第1偏光分離膜41及び第2偏光分離膜42は、P偏光(一方向に振動する偏光光)を透過させ、S偏光(他方向に振動する偏光光)を反射させる膜である。
また、投射レンズ50は、色合成プリズム30で合成された光をスクリーン55上に投射する装置である。
【0029】
次に、色合成プリズムの30の詳細について図2を参照して説明する。
色合成プリズム30は、図2に示すように、2つの三角錐形状のプリズム30a,30cと、2つの四角錐形状のプリズム30b,30dとが接合されて形成された立方体形状である。色合成プリズム30の1つの角部31を基準にし、XYZ座標軸を用いて表すと、色合成プリズム30のそれぞれの角部は、第1角部(x0、y0、z0)31、第2角部(x1、y0、z0)32、第3角部(x1、y1、z0)33、第4角部(x0、y1、z0)34、第5角部(x0、y0、z1)35、第6角部(x1、y0、z1)36、第7角部(x1、y1、z1)37、第8角部(x0、y1、z1)38となる。
第1偏光分離膜41は、XY平面に垂直で、かつ、XZ平面及びYZ平面に対して約45°をなす面、つまり、第5角部35、第6角部37、第3角部33、第4角部31によって構成される面に形成されている。また、第2偏光分離膜42は、YZ平面に垂直で、かつ、XY平面及びXZ平面に対して約45°をなす面、つまり、第5角部35、第6角部36、第3角部33、第4角部34によって構成される面に形成されている。
【0030】
赤色照明装置10Rは、図3(a)に示すように、色合成プリズム30の第5角部35、第1角部31、第4角部34、第8角部38によって構成される第1面39aに対向して配置されている。そして、レーザ発光部11R及びレーザ発光部11Gから射出された光は、第1偏光分離膜41に対して45°の角度で入射するようになっており、赤色光(P偏光光)は第1偏光分離膜41を透過し、緑色光(S偏光光)は第1偏光分離膜41を反射する。
青色照明装置10Bは、図3(b)に示すように、色合成プリズム30の第5角部35、第6角部36、第7角部37、第8角部38によって構成される第2面39bに対向して配置されている。そして、第2偏光分離膜42に対して45°で入射するようになっており、青色光(P偏光光)は第2偏光分離膜42を透過する。
【0031】
赤色用液晶ライトバルブ20Rは、図1に示すように、色合成プリズム30の第1面39aと反対の第3面39cに対向して配置されている。緑色用液晶ライトバルブ20Gは、色合成プリズム30の第8角部38、第7角部37、第3角部33、第4角部34によって構成される第4面39dに対向して配置されている。青色用液晶ライトバルブ20Bは、色合成プリズム30の第1角部31、第2角部32、第3角部33、第4角部34によって構成される第5面39eに対向して配置されている。
また、投射レンズ50は、色合成プリズム30の第4面39dと反対の第6面39fに対向して配置されている。
【0032】
回折光学素子12R,12G,12Bの詳細について図4を参照して説明する。
回折光学素子12R,12G,12Bは、例えば石英(ガラス)、透明な合成樹脂等、レーザ光を透過可能な材料で形成されている。本実施形態の回折光学素子12R,12G,12Bは、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)である。
回折光学素子(ホログラム素子)12R,12G,12Bは、照明領域設定機能、拡散光生成機能(照度均一化機能)、及び拡大照明機能を有する。照明領域設定機能を有する回折光学素子12R,12G,12Bは、入射した光を回折させ、液晶ライトバルブ20の入射端面を照明する照射光を生成する。また、拡散光生成機能を有する回折光学素子12R,12G,12Bは、所定の領域の少なくとも一部の照度を均一化する。
【0033】
図4において、回折光学素子12R,12G,12Bは、その表面に複数の矩形状の凹部(凹凸構造)12Mを有している。凹部12Mは、互いに異なる深さを有している。また、凹部12Mどうしの間の複数の凸部も互いに異なる高さを有している。
そして、凹部12Mどうしのピッチd及び凹部12Mの深さ(凸部の高さ)tを含む回折光学素子12R,12G,12Bの表面条件を適宜調整することにより、回折光学素子12R,12G,12Bに所定の機能(照明領域設定機能、拡散光生成機能、及び拡大照明機能)を持たせることができる。その表面条件を最適化する設計手法としては、例えば反復フーリエ法など、所定の演算手法(シミュレーション手法)が挙げられる。
【0034】
なお、回折光学素子12R,12G,12Bとしては、矩形の凹部12Mを有するものに限られず、互いに異なる方向を向く平面を組み合わせた表面を有するものであってもよい。例えば、回折光学素子12R,12G,12Bとしては、斜面を有する三角形状の凹部を有する、いわゆる、ブレーズ型のものであってもよい。また回折光学素子12R,12G,12Bとしては、図4に示したような矩形状の凹部12Mを有する領域と、三角形状の凹部を有する領域とのそれぞれを有するものであってもよい。そして、その表面条件を最適化することにより、所望の機能を有する回折光学素子12R,12G,12Bを形成することができる。
【0035】
本実施形態では、レーザ発光部11R,11G,11Bから射出された光を回折光学素子12R,12G,12Bにより2つの三角形状の照明光に分割する。ここで、赤色照明装置10Rにより照明される赤色用液晶ライトバルブ20Rを例に挙げて説明する。
赤色照明装置10Rの回折光学素子12Rは、図5に示すように、第2偏光分離膜42に入射しないような照明光を生成する。その結果、回折光学素子12Rにより生成される照明光は、色合成プリズム30の第1面39aの第2偏光分離膜42により分けられる2つの領域B1,B2より小さい。そして、回折光学素子12Rから射出され領域B1を通過し、第1偏光分離膜41を透過した光は、赤色用液晶ライトバルブ20Rの入射端面20aの対角線によって分けられる領域A1を照明する。また、回折光学素子12Rから射出され領域B2を通過し、第1偏光分離膜41を透過した光は、赤色用液晶ライトバルブ20Rの入射端面20aの対角線によって分けられる領域A2を照明する。そして、2つに分割された照明光の照明領域は、赤色用液晶ライトバルブ20Rの入射端面20aの対角線上で接触するようになっている。なお、図5では、回折光学素子12Rにおいて回折し、領域B1を通過し、赤色用液晶ライトバルブ20Rの領域A1を照明する照明光のみ示している。
また、緑色照明装置10Gの回折光学素子12Gから射出された2つに分割された照明光についても同様であり、第1偏光分離膜41を反射した照明光の照明領域は、緑色用液晶ライトバルブ20Gの入射端面20aの対角線上で接触するようになっている。さらに、上述したフィールドレンズ13aにより、各回折光学素子12R,12Gにより生成された光を第2偏光分離膜42に入射させないように光路を制御することが可能である。
【0036】
青色照明装置10Bの回折光学素子12Rは、図1に示すように、第1偏光分離膜42に入射しないような照明光を生成する。その結果、回折光学素子12Bにより生成される照明光は、色合成プリズム30の第2面39bの第1偏光分離膜41により分けられる2つの領域C1,C2より小さい。これにより、回折光学素子12Bにより生成された照明光は、第1偏光分離膜41に入射することはない。そして、回折光学素子12Bから射出され第2偏光分離膜42を透過した2つに分割された照明光の照明領域も赤色用液晶ライトバルブ20Rを照明するときと同様に、青色用液晶ライトバルブ20Bの入射端面20aの対角線上で接触するようになっている。さらに、上述したフィールドレンズ13bにより、各回折光学素子12Bにより生成された光を第1偏光分離膜41に入射させないように光路を制御することが可能である。
このようにして、各回折光学素子12R,12G,12Bにおいて回折し、分割された2つの照明光は、各液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの入射端面20a上で合わさり矩形状の照明光となる。この照明光は、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの画像形成領域の全面を照明する光となっている。また、2つに分割された光は重ならないように、回折光学素子12R,12G,12Bの凹部12Mが形成されている。
【0037】
次に、以上の構成からなる本実施形態のプロジェクタ1を用いて、スクリーン55に画像を投射する方法について説明する。
赤色照明装置10Rから射出されたP偏光の赤色光は、回折光学素子12Rにおいて2つの光に分割され、偏光プリズム14を透過する。そして、赤色光は、色合成プリズム30の第2偏光分離膜42に入射せずに、図3(a)に示すように、第1偏光分離膜41を透過して第3面39cから射出され(図3(a)に示す一点鎖線)、赤色用液晶ライトバルブ20Rを照明する。赤色用液晶ライトバルブ20Rに入射した光は、画像情報に応じて変調され、再び、色合成プリズム30に入射し赤色用液晶ライトバルブ20Rで変調されS偏光に変換された成分の光は第1偏光分離膜41で反射して、色合成プリズム30の第6面39fから射出される。
【0038】
緑色照明装置10Gから射出されたS偏光の緑色光は、回折光学素子12Gにおいて2つの光に分割され、偏光プリズム14で反射する。そして、緑色光は、色合成プリズム30の第2偏光分離膜42に入射せずに、図3(a)に示すように、第1偏光分離膜41を反射して第4面39dから射出され(図3(a)に示す二点鎖線)、緑色用液晶ライトバルブ20Gを照明する。緑色用液晶ライトバルブ20Gに入射した光は、画像情報に応じて変調され、再び、色合成プリズム30に入射し緑色用液晶ライトバルブ20Gで変調されP偏光に変換された成分の光は第1偏光分離膜41を透過して、色合成プリズム30の第6面39fから射出される。
青色照明装置10Bから射出されたP偏光の青色光は、回折光学素子12Bにおいて2つの光に分割され、色合成プリズム30に入射する。そして、青色光は、色合成プリズム30の第1偏光分離膜41に入射せずに、図3(b)に示すように、第2偏光分離膜42を透過して第5面39eから射出され、青色用液晶ライトバルブ20Bを照明する。青色用液晶ライトバルブ20Bに入射した光は、画像情報に応じて変調され、再び、色合成プリズム30に入射し青色用液晶ライトバルブ20Bで変調されS偏光に変換された成分の光は第2偏光分離膜42で反射して、色合成プリズム30の第6面39fから射出される。
このように、色合成プリズム30において赤色光,緑色光,青色光は合成され、投射レンズ50によりスクリーン55に拡大投射される。
【0039】
以上より、本実施形態に係るプロジェクタ1では、回折光学素子12R,12Gは、赤色照明装置10R,緑色照明装置10Gから射出された赤色光,緑色光が第2偏光分離膜42に入射しないように照明光を生成する。これにより、各液晶ライトバルブ20R,20Gに第2偏光分離膜42が影として映し出されるのを抑えることが可能となる。また、回折光学素子12Bは、青色照明装置10Bから射出された光が第1偏光分離膜41に入射しないように照明光を生成する。これにより、青色用液晶ライトバルブ20Bに第1偏光分離膜41が影として映し出されるのを抑えることが可能となる。したがって、色合成プリズム30において色合成され、スクリーン55に表示影が投射されるのを抑えることができるので、画質の向上を図ることが可能となる。
【0040】
さらに、1種類の色光に対して設けられた回折光学素子12R,12G,12Bにより、レーザ発光部11R,11G,11Bから射出された光を2つの光束に分割し、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bを照明する構成であるため、複数の回折光学素子を用いて2つの光束を生成する場合に比べて、装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態では、回折光学素子12R,12G,12Bにより、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの領域A1,A2が重ならないように照明する照明光を生成したが、図6に示すように、重なるように照明光を生成しても良い。すなわち、2つの光により照明される領域A1,A2の間に、確実に隙間が生じないように、2つの照明光を重ならせる。この場合、重なる領域A3の強度が強くなるため、入射光の照度分布に基づいて、領域A3に対応する各液晶ライトバルブ20R,20G,20Bの画素の変調量を調整すれば良い。これにより、重なる部分が過度に明るくなることがないため、鮮明な画像をスクリーン55に投射させることが可能となる。また、照明される領域が重なっている場合に限らず、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bに入射する照明光の照度分布に基づいて、液晶ライトバルブ20R,20G,20Bでの変調量を調整しても良い。
また、光源として、赤色照明装置10R,緑色照明装置10G,青色照明装置10Bを用いた構成としたが、白色のレーザ光を射出する照明装置を用いてダイクロイックミラー(色分離手段)等で色分離させた構成であっても良い。
また、偏光プリズム14は、ワイヤーグリッド構造を有する偏光分離素子であっても良い。
また、一方向に振動する光を射出するレーザ発光部11R,11G,11Bを用いたが、照明装置20R,20G,20Bが偏光変換素子を有し、偏光変換素子により、一方向に振動する光に変換しても良い。
【0042】
[一実施形態の変形例]
図1に示す一実施形態では、1種類の色光に対して1つの回折光学素子12R,12G,12Bを設けたが、複数の回折光学素子62a,62bを設けても良い。このような変形例について、図7を参照して説明する。なお、本変形例では、赤色照明装置60Rを例に挙げて説明する。
本変形例の赤色照明装置60Rは、図7に示すように、2つのレーザ発光部(光源)61a,61bと、レーザ発光部61a,61bに対応して設けられた回折光学素子62a,62bとを備えている。各回折光学素子62a,62bにおいて回折された光は、三角形状の照明光である。すなわち、各回折光学素子62a,62bにより生成される照明光は、第1面39aの第2偏光分離膜42により分けられる2つの領域B1,B2より小さい。これにより、一実施形態と同様に、各回折光学素子62a,62bから射出される光は、第2偏光分離膜42に入射せずに赤色用液晶ライトバルブ20Rを照明する。
また、回折光学素子62a,62bと色合成プリズム30との間には、フィールドレンズ63が配置されている。このフィールドレンズ63の有効径は、回折光学素子62a,62bのそれぞれにおいて回折した光を取り込める大きさとなっている。
【0043】
以上より、本変形例では、2つの回折光学素子62a,62bのそれぞれにおいて回折された光が色合成プリズム30に入射する。これにより、1つの回折光学素子により複数の光束を生成する場合に比べて、2つの回折光学素子62a,62bを設けた方が、複数の光束を生成し易くなる。したがって、回折光学素子62a,62bのパターン形状の設計が容易となる。
【0044】
なお、2つのレーザ発光部61a,61bを備えたが、図8に示すように、1つのレーザ発光部71を備えた構成であっても良い。この構成では、レーザ発光部71から射出された赤色光の光路上に回折光学素子62aを備え、レーザ発光部71から射出された赤色光をビームスプリッタ72及び反射ミラー73を用いて分離して、回折光学素子62bに赤色光を入射させる。これにより、レーザ発光部71の数が上述した変形例に比べて少なくて済むため、装置の小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した光源及び色合成プリズムを用いた照明装置をプロジェクタに限らず、レーザ加工機、露光装置のようなレーザ光を用いたすべての光学系に適用が可能である。
また、液晶ライトバルブを備えずに、例えば、画像情報を含むスライド(ポジフィルム)の面を照明装置で照明し、スクリーン上に画像情報を含む光を投射する、所謂スライドプロジェクタに、上述の実施形態の照明装置を適用することも可能である。
また、上記実施形態において、フロント投射型のプロジェクタ(画像表示装置)を例に挙げて説明したが、背面投射型のプロジェクタ(リアプロジェクタ)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクタの概略構成図である。
【図2】図1の色合成プリズムを示す斜視図である。
【図3】図1の色合成プリズムを通過する色ごとの光路を示す斜視図である。
【図4】図1の回折光学素子の構成を示す要部断面図である。
【図5】図1の照明装置から射出される光の照明領域を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るプロジェクタの変形例を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るプロジェクタの変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るプロジェクタの他の変形例を示す平面図である。
【図9】従来の照明装置により照明される色合成プリズムを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1…プロジェクタ、10…照明装置、11R,11G,11B,61a,61b,71…レーザ発光部(光源)、12R,12G,12B,62a,62b…回折光学素子、20R…赤色用光変調装置(反射型光変調素子)、20G…緑色用光変調装置(反射型光変調素子)、20B…青色用光変調装置(反射型光変調素子)、30…色合成プリズム(色合成部)、41…第1偏光分離膜、42…第2偏光分離膜、50…投射レンズ(投射手段)、55…スクリーン(被投射面)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の色光を含むレーザ光を射出する光源と、
前記複数種の色光のそれぞれの光路上に設けられ、前記光源から射出された光を回折し、照明光を生成する複数の回折光学素子と、
該複数の回折光学素子により生成された照明光を変調するとともに反射する複数の反射型光変調素子と、
前記回折光学素子及び前記反射型光変調素子から射出された光のうち少なくとも1種類の色光が入射するとともに、入射した光のうち一方向に振動する偏光光を透過させ、他方向に振動する偏光光を反射させる第1偏光分離膜及び第2偏光分離膜を有し、前記複数の反射型光変調素子において変調された光を合成する色合成部と、
該色合成部により合成された光を被投射面に投射する投射手段とを備え、
前記第1偏光分離膜と前記第2偏光分離膜とが交差して設けられ、
前記回折光学素子が、前記第1偏光分離膜及び前記第2偏光分離膜のうち前記光源から射出された光が偏光分離される偏光分離膜と異なる偏光分離膜に入射しないように、前記色合成部に複数の光束を入射させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
1種類の色光に対して1つの前記回折光学素子が設けられ、
前記回折光学素子により、前記光源から射出された光を複数の光束に分割し、前記色合成部に入射させることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
1種類の色光に対して複数の前記回折光学素子が設けられ、
前記光源から射出された光が前記複数の回折光学素子のそれぞれに入射し、
前記複数の回折光学素子のそれぞれにおいて回折し生成された複数の光束を前記色合成部に入射させることを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記光源が複数種の色光を含む白色光を射出し、
前記光源から射出された白色光を前記複数種の色光ごとに分離する色分離部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記回折光学素子は、前記反射型光変調素子を照明する領域が重なるように照明光を生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記反射型光変調素子に入射する照明光の照度分布に基づいて、前記反射型光変調素子での変調量を調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記回折光学素子がホログラム素子であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
複数種の色光を含むレーザ光を射出する光源と、
前記複数種の色光のそれぞれの光路上に設けられ、前記光源から射出された光を回折し、照明光を生成する複数の回折光学素子と、
前記複数の回折光学素子により生成された照明光のうち少なくとも1種類の色光が入射するとともに、入射した光のうち一方向に振動する偏光光を透過させ、他方向に振動する偏光光を反射させる第1偏光分離膜及び第2偏光分離膜を有する偏光分離部とを備え、
前記回折光学素子により、前記光源から射出された光が前記第1偏光分離膜及び前記第2偏光分離膜のうち偏光分離される偏光分離膜と異なる偏光分離膜に入射しないように、前記偏光分離部に複数の光束を入射させることを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−86025(P2009−86025A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252232(P2007−252232)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】