説明

プロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物、及びその製造方法と含有物

【課題】 副作用が弱く、いろいろな種類のプロテアーゼに対して優れたプロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物及びその含有物と、効率の良い製造方法を提供すること。
【解決手段】 ハチノコを原料として、それから得た水溶性の抽出物であって、プロテアーゼ阻害作用を有することを特徴とするハチノコ由来水溶性抽出物とする。特に300〜100,000の分子量を有するペプチドを有効成分として含有し、ペプチドがヘキサペプチド群であるものが有効である。食品製剤や抗炎症剤として提供してもよい。ハチノコにプロテアーゼ溶液を添加し、20〜40℃で、攪拌後、ろ過し、そのプロテアーゼ処理したろ液を、1〜10℃に冷却して放置後、ろ過して、水溶性抽出物を得てもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハチノコからプロテアーゼ阻害作用を有する水溶性抽出物を製造する方法と、それによって得られる抽出物、並びに、それを含有する食品製剤及び抗炎症剤等の含有物に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテアーゼ阻害剤は、炎症や痛みの際に生じるプロテアーゼを抑制することにより、痛みを抑制したり、組織の損傷を抑制することが可能である。
現在、プロテアーゼ阻害剤としては、化学合成された製品が医薬品として既に販売されているものの、生体を調整するには、作用が強力すぎるが故に、刺激性などの副作用が生じる危険性がある。
【0003】
さらに、プロテアーゼには、エステラーゼ、トリプシン、カゼイン分解酵素、マトリックスメタロプロテアーゼなどのように、種類が豊富であり、一つの物質よりも、いろいろな物質の混合物の方が、プロテアーゼ阻害のスペクトルの幅が広がるという利点がある。
【0004】
ハチノコは、ハチの幼虫であり、成育過程でプロポリスやミツロウにより保護されている。ハチノコは最近感染に対して優れた抵抗力を示し、その一部には、プロテアーゼ阻害作用が関与していると推察されている。
しかし、このハチノコを用いたプロテアーゼ阻害作用を有する水溶性抽出物は、単離されていない。
【0005】
プロポリスや植物由来のプロテアーゼ阻害剤に関する従来技術としては、特許文献1及び2がある。
【特許文献1】特開2004-161664
【特許文献2】特開2003-171307
【0006】
しかし、いずれの従来技術によっても、化学合成されたプロテアーゼ阻害剤は組織刺激性が高く、生体に悪影響を及ぼすという副作用の問題は解消されていない。また、化学合成されたプロテアーゼ阻害剤は阻害スペクトルが狭いという問題点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、副作用が弱く、いろいろな種類のプロテアーゼに対して優れたプロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物と、その抽出物を含有する食品製剤及び抗炎症剤等の含有物を提供すること、並びに、優れた阻害作用を有する物質をハチノコより効率良く製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のハチノコ由来水溶性抽出物は、ハチノコを原料として、それから得た水溶性の抽出物であって、プロテアーゼ阻害作用を有することを特徴とする。
特に、300〜100,000の分子量を有するペプチドを有効成分として含有するもの、更には、ペプチドがヘキサペプチド群であるものが有効である。
そのようなハチノコ由来水溶性抽出物を含有させて食品製剤や抗炎症剤として提供してもよい。
また、ハチノコ由来水溶性抽出物の製造方法は、ハチノコにプロテアーゼ溶液を添加し、20〜40℃で、攪拌後、ろ過し、そのプロテアーゼ処理したろ液を、1〜10℃に冷却して放置後、ろ過して、水溶性抽出物を得ることを特徴とする。
ここで、ハチノコは10〜10000μmに破砕し、プロテアーゼは、中性プロテアーゼをハチノコ1容量に対して、0.03〜0.5倍量添加させることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、プロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物を用いるので、副作用が弱く、優れた抗炎症作用を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、本実施形態のプロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物は、ハチノコを原料とした抽出物である。
用いるハチノコは、スズメバチ、アシナガバチ、セイヨウミツバチ、在来種のミツバチ、ブラジルのキラービーなどの幼虫である。
ハチノコは、体内に栄養素を蓄積し、雌の場合、働き蜂又は女王蜂に、雄の場合、生殖対として生育される。その生育過程では種々の外敵から防御する必要がある。抗菌作用、抗炎症、抗ウイルス作用、抗原虫作用などの働きを有している。特に、炎症に対してはプロテアーゼが活性化される状況に対して、防御する働きがあるものが好ましい。
【0011】
阻害されるプロテアーゼは、エラスターゼ、コラゲナーゼ、トロンビン、アンジオテンシン変換酵素、レニン、カリクレイン、キニナーゼ、などであるが、エラスターゼ、コラゲナーゼは炎症時に、著しく作用が強いために、特に好ましい。
【0012】
得られるハチノコ抽出物は、水に対して溶解性を示す。抽出物1容量に対して水1〜100倍容量に対して溶解する。この溶解性により、吸収率が高く、また、製剤化されやすい特性を有する。
本実施形態の300〜100,000の分子量を有するペプチドを有効成分とするハチノコ由来水溶性抽出物は、プロテアーゼ阻害作用を呈する。
分子量は、300〜100,000であり、分子量400〜80,000は、好ましく、分子量600〜70,000は、より好ましい。
分子量は、物質の吸収と消化に関係しており、低分子であれば、吸収は良いものの、分解されるおそれがある。一方、分子量が大きいものは、分解には抵抗できるものの、吸収は良くない。
ハチノコ由来水溶性抽出物の分子量が300を下回る場合、分解が促進され、安定性に乏しい可能性がある。また、その分子量が100,000を上回る場合、吸収が低下するおそれがある。
【0013】
このハチノコ由来水溶性抽出物のペプチドは、トリペプチドからポリペプチドまで幅が広く、このうち、ヘキサペプチド群であるTyr−Asp−Ala−Lys−Gly−Asp、Tyr−Asp−Val−Lys−Gly−Asp、Tyr−Asp−Ile−Lys−Gly−Asp、Ala−Ala−Ala−Lys−Gly−Aspが好ましい。
さらに、上記のヘキサペプチド群のいずれかを含有するペプチドを含有するポリペプチドはプロテアーゼ阻害活性が持続され、酸及び塩基アミノ酸を含有することから水溶性が高く、ペプチドが分解されにくいため、より好ましい。
【0014】
次に、ハチノコにプロテアーゼ溶液を添加し、20〜40℃で、攪拌後、ろ過され、1〜10℃に放置された後、ろ過されるハチノコ由来水溶性抽出物の製造方法について説明する。
ハチノコは、雄又は雌のいずれでもよく、生のもの、加熱処理したもの、水で分散したもの、いずれでも、使用することができる。雑菌の増殖を抑制する目的から、加熱処理したものが好ましい。
ハチノコは、粉砕され、篩を通されたものが、抽出効率が良いことから、好ましく、ハチノコ粉砕物の大きさは、10〜10000μmが好ましい。
【0015】
プロテアーゼは、中性、酸性、塩基性プロテアーゼのいずれでも用いられ、中和工程の手間を省くため、中性プロテアーゼが好ましい。中性プロテアーゼとしては、熱に対する安定性の点から、プロテアーゼA、プロテアーゼN、プロテアーゼM、スミチームFP、スミチームLP、デナチームAPが好ましく、特に、処理能力が高い点から、プロテアーゼN、スミチームLPがより好ましい。これらのプロテアーゼは、組み合わせて用いることもできる。
【0016】
プロテアーゼの添加量は、ハチノコ1容量に対して、0.03〜0.5倍量が用いられ、0.05〜0.4倍量がより好ましく、0.08〜0.3倍量がさらに好ましい。
プロテアーゼの添加量が0.03を下回る場合、プロテアーゼ処理が十分に行われない場合があり、0.5倍量を上回る場合、プロテアーゼが高価であるため、経済的に価格が高くなるおそれがある。
【0017】
プロテアーゼ処理温度は、20〜40℃である。この処理温度が20℃を下回る場合、プロテアーゼによる処理が進行しないおそれがある。また、この処理温度が40℃を上回る場合、ハチノコが変質し、ペプチドとしての働きが低下するおそれがある。
このプロテアーゼ処理温度は、25〜38℃がより好ましく、30℃〜37℃はさらに好ましい。
【0018】
プロテアーゼ処理は、処理の効率的な実施のため、攪拌状態で行われる。攪拌速度は、10〜100回/分が好ましく、30〜80回/分がより好ましく、430〜70回/分がさらに好ましい。
【0019】
プロテアーゼ処理された後、ろ過される。ろ過は、ろ紙によるろ過が用いられ、時間が短縮できる点から吸引ろ過が好ましい。
ろ過されたろ液は、1〜10℃に保存される。この工程は、不安定な生成物を除外する目的がある。つまり、加熱状態では安定な物質が低温に放置された場合、析出する場合がある。
この温度での放置時間は、1〜12時間が好ましく、2〜10時間がより好ましく、3〜8時間がさらに好ましい。この放置時間が1時間を下回る場合、析出が十分でない場合がある。この放置時間が12時間を上回る場合、工程時間がながくなり、経済的に不利益である。
【0020】
放置された後、ろ過される。ろ過は、ろ紙によるろ過が用いられ、時間が短縮できる点から吸引ろ過が好ましい。
ろ過により得られたろ液は、液体のまま、濃縮液、凍結乾燥された状態でハチノコ由来水溶性抽出物を得る。容量を少なし、安定性を持続する点から、凍結乾燥が好ましい。さらに、凍結又は低温で保管されることは、安定性を維持する点から好ましい。
【0021】
次に、ハチノコ由来水溶性抽出物を含有する食品製剤について説明する。
この食品製剤は、前記のプロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物を有効成分としている。食品製剤中のハチノコ由来水溶性抽出物の割合は0.1〜30重量%であり、0.3〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましい。
この割合が0.1重量%を下回る場合、十分なプロテアーゼ阻害作用が発現されない可能性がある。また、この割合が30重量%を上回る場合、食品製剤として形態を維持できない可能性がある。
その場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、例えば、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤とすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、増量剤等を適宜添加してもよい。
【0022】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて経口摂取される。1日の摂取量は0.1〜10gが好ましく、0.3〜5gがより好ましく、0.5〜3gがさらに好ましい。1日の摂取量が、0.1gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の摂取量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。
【0023】
次に、ハチノコ由来水溶性抽出物を有効成分とする抗炎症剤について説明する。この抗炎症剤は、炎症に対して優れた抑制又は防御作用を発揮する。
医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
また、医薬部外品として皮膚清拭剤、歯磨き粉として用いられる。
【0024】
これらの抗炎症剤中における前記のハチノコ由来水溶性抽出物の含有量としては、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。前記のハチノコ由来水溶性抽出物の含有量が0.1重量%未満の場合には、含有量が少なすぎることから作用を十分に発揮することができない。また、20重量%を越える場合には、製剤の安定性に寄与している成分の含有量が相対的に低下する。
【0025】
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態のハチノコ由来水溶性抽出物によれば、副作用が弱く、優れたプロテアーゼ阻害作用を発揮することができる。
・ 本実施形態のハチノコ由来水溶性抽出物の製造方法によれば、プロテアーゼ阻害剤を効率良く製造することができる。
・ 本実施形態のハチノコ由来水溶性抽出物を有効成分とする食品製剤によれば、副作用が弱く、抗炎症作用を発揮することができる。
・ 本実施形態のハチノコ由来水溶性抽出物を有効成分とする医薬品によれば、副作用が弱く、優れた抗炎症作用を発揮することができる。
【実施例】
【0026】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
中国産のハチノコ2kgを水で洗浄後、粉砕機で粉砕した。この粉砕物1.8kgに水5kgを添加し、さらに、プロテアーゼN180gを添加した。この懸濁液25℃で5時間、30回/分の速度で攪拌した。得られた溶液をろ紙(東洋濾紙社製、No2)で吸引濾過し、ろ液を得た。このろ液を5℃の恒温槽に入れて3時間放置した。さらに、ろ紙(東洋濾紙社製、No2)で吸引濾過し、ろ液を得た。このろ液を90℃で、5分間煮沸し、冷却した。この液を凍結乾燥機(東洋理工製)にて凍結乾燥し、粉末560gを得た。これをハチノコ由来水溶性抽出物とした。
【0027】
以下に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)及び核磁気共鳴装置(NMR)によるハチノコ由来水溶性抽出物の分析について説明する。
(試験例1)
本試験では、ハチノコ由来水溶性抽出物に含有されるペプチドを解析した。すなわち、ハチノコ由来水溶性抽出物をフォトダイオードアレイ(島津製作所製)を装着したHPLCに供し、まず、GPCによる解析を行った。
その結果、分子量300〜100,000の分画に、プロテアーゼ阻害作用のあるペプチドが存在することが判明した。プロテアーゼ阻害作用はヒト白血球より得られたエラスターゼに対する阻害作用を指標として測定した。
また、得られた分画をCAPCELLPACKC18カラムによるHPLCを実施し、さらに、NMR(バリアン製)による解析の結果、Tyr−Asp−Ala−Lys−Gly−Asp、Tyr−Asp−Val−Lys−Gly−Asp、Tyr−Asp−Ile−Lys−Gly−Asp、Ala−Ala−Ala−Lys−Gly−Aspの4ペプチドを同定した。
【0028】
以下に、カラゲニンを利用した抗炎症作用の実験について説明する。
(試験例2)
本試験は、カラゲニンによる浮腫が炎症のモデルとして実験例も豊富で、ヒトの炎症を反映している点から、実施した。
すなわち、7週齢SD系ラット(雄、SPF)を日本チャールズリバーより購入し、1週間、予備飼育を行い、異常の認められない動物を実験に用いた。ラットに10mg/kgのカラゲニンを足に筋肉注射した。同時に、実施例1で得られたハチノコ由来水溶性抽出物を水に溶解した溶液を10mg/kg及び100mg/kgの投与量で、経口投与した。カラゲニン投与部位の浮腫の体積を、3日目に測定した。なお、1群5引きの動物を用いた。
【0029】
その結果、ハチノコ由来水溶性抽出物を投与しない群の浮腫の体積は35±3cm3、ハチノコ由来水溶性抽出物10mg/kgを投与した群の浮腫の体積は21±4cm3、ハチノコ由来水溶性抽出物100mg/kgを投与した群の浮腫の体積は19±5cm3であり、ハチノコ由来水溶性抽出物を投与した群の浮腫の体積は有意に低下していた。
このことから、ハチノコ由来水溶性抽出物は、抗炎症作用があることを見出した。なお、動物にはハチノコ由来水溶性抽出物による副作用は認められなかった。
【0030】
以下に、ヒト単球を用いたリポホリサッカライド(LPS)による腫瘍壊死因子α産生を指標とした抗炎症作用実験について説明する。
(試験例3)
本試験では、ヒト単球がLPSによる炎症時に、腫瘍壊死因子αを放出することを指標とし、炎症モデルとして実験例も豊富である点から、実施した。
すなわち、健常人(3例)より、末梢血を採取し、遠心分離と付着法により、単球を採取した。この単球細胞104個をマイクロプレートに播種し、LPS 10マイクロg/ml及びハチノコ由来水溶性抽出物10μg/mlを添加し、37℃で、24時間培養した。培養上清を採取し、免疫抗体法(ジェンザイム、ヒト腫瘍壊死因子α測定キット)を用いて腫瘍壊死因子α量を測定した。
【0031】
その結果、無添加群の腫瘍壊死因子αは、350μg/mlであるのに対し、ハチノコ由来水溶性抽出物10μg/mlを添加した群の値は、130μg/mlとなった。
このことから、ハチノコ由来水溶性抽出物には、LPSによる炎症に対して抗炎症作用があることを見出した。なお、ハチノコ由来水溶性抽出物による細胞障害は認められなかった。
【0032】
以下に、ハチノコ由来水溶性抽出物を含有する食品製剤について説明する。
(実施例2)
実施例1で得られたハチノコ由来水溶性抽出物0.2g、異性化糖3g、食用セルロース1.8g、アスコルビン酸0.01g及び食用香料0.1gの比率で混合した。これを常法により粉末化し、顆粒上の食品製剤を得た。
【0033】
(試験例4)
実施例2で得られた食品製剤を使用して、健常者3例を対象に単球培養による抗炎症試験を行った。すなわち、実施例2で得られた食品製剤を摂取する前と後で、単球のLPS刺激による腫瘍壊死因子α産生について調べた。
すなわち、まず、事前に末梢血を採取し、単球を用いたLPSし劇による腫瘍壊死因子α産生力を測定した。
さらに、食品製剤3粒を一日3回、7日間摂取した。最終摂取後、同様に、LPS刺激による腫瘍壊死因子α産生力を測定した。
その結果、食品製剤摂取前の腫瘍壊死因子α産生力は、450μg/mlであるのに対し、食品製剤摂取後の値は、290μg/mlであり、LPS刺激による腫瘍壊死因子α産生力が低下していた。このことから、食品製剤は予防的に抗炎症作用を呈することが判明した。
【0034】
以下に、ハチノコ由来水溶性抽出物を含有する抗炎症剤について説明する。
(実施例3)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g及び消毒用エタノール10gを溶解した。得られた溶液に、実施例1で得られたハチノコ由来水溶性抽出物0.2g及び精製水70gを添加した。これらを溶解した後、冷却してパップ性の抗炎症剤を得た。
【0035】
(試験例5)
実施例3で得られたパップ性の抗炎症剤による抗炎症作用を調べた。すなわち、まず、塗布前に、末梢血を採取し、単球を用いたLPSし劇による腫瘍壊死因子α産生力を測定した。
ついで、パップ性の抗炎症剤を花粉症患者5例に塗布した。塗布後、同様に、LPS刺激による腫瘍壊死因子α産生力を測定した。
その結果、パップ性の抗炎症剤の使用前の腫瘍壊死因子α産生力は、平均410μg/mlであるのに対し、食品製剤摂取後の腫瘍壊死因子α産生力は、210μg/mlであり、LPS刺激による腫瘍壊死因子α産生力が低下していた。このこのとから、パップ性の抗炎症剤は花粉症患者に抗炎症作用を呈することが判明した。なお、患者にはパップ性の抗炎症剤による副作用は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によると、比較的簡易な方法によって効率良く、副作用が弱く、プロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物を得ることができる。これによって、食品製剤や抗炎症剤などとして利用に供せるので、産業上利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテアーゼ阻害作用を有するハチノコ由来水溶性抽出物。
【請求項2】
300〜100,000の分子量を有するペプチドを有効成分として含有する
請求項1に記載のハチノコ由来水溶性抽出物。
【請求項3】
ペプチドがヘキサペプチド群である
請求項2に記載のハチノコ由来水溶性抽出物。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のハチノコ由来水溶性抽出物を含有する
ことを特徴とする食品製剤。
【請求項5】
請求項1ないし3に記載のハチノコ由来水溶性抽出物を含有する
ことを特徴とする抗炎症剤。
【請求項6】
ハチノコにプロテアーゼ溶液を添加し、20〜40℃で、攪拌後、ろ過し、
そのプロテアーゼ処理したろ液を、1〜10℃に冷却して放置後、ろ過して、水溶性抽出物を得る
ことを特徴とするハチノコ由来水溶性抽出物の製造方法。
【請求項7】
ハチノコは10〜10000μmに破砕し、
プロテアーゼは、中性プロテアーゼをハチノコ1容量に対して、0.03〜0.5倍量添加させる
請求項6に記載のハチノコ由来水溶性抽出物の製造方法。


【公開番号】特開2006−160625(P2006−160625A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351105(P2004−351105)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】