説明

プロトンポンプインヒビターを包含する固形剤形およびそれから調製された懸濁剤

本発明は、固形の迅速ゲル化経口医薬剤形、ならびにそれから調製された水性懸濁剤に関し、該剤形は、多数の腸溶コーティングしたペレットに分配されている有効成分として酸感受性プロトンポンプインヒビター、および、キサンタンガムから選択されるゲル化剤、酸性pH調整剤およびバインダーと一緒に造粒された迅速に溶解する希釈剤を包含する懸濁調節顆粒からなる。懸濁調節顆粒は、水性媒質に懸濁すると、迅速に崩壊し、ゲル化し、これにより再現可能な、安定した粘度を有する均質で安定かつ強靭な懸濁液を形成する。さらに、本発明は、その改良製法およびヒトでの胃腸障害の予防を含む医療でのこのような処方物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形の迅速ゲル化経口医薬剤形、ならびにそれから調製された水性懸濁剤に関し、有効成分として多数の腸溶コーティングしたペレット中に分散されている酸感受性プロトンポンプインヒビターと懸濁調節顆粒とを包含している。さらに、本発明は、その改良製法およびヒトでの胃腸障害の予防を含む医療でのこのような処方物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
++−ATPアーゼインヒビターとしての効果を有するプロトンポンプインヒビター(以下「PPI」とも称する)化合物とは、例えば、一般名オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、テナトプラゾールおよびエソプラゾールで知られている化合物である。
【0003】
これらの活性物質は、哺乳動物およびヒトでの胃酸分泌を抑制するのに有用である。さらに一般的な意味で、これらの物質は、哺乳動物およびヒトでの胃酸関連疾患の予防および治療に使用することができ、これらの疾患には、例えば、逆流食道炎、胃炎、十二指腸炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍が含まれる。さらに、これらの物質は、胃酸抑制効果が望ましいその他の胃腸障害の治療に使用することができ、例えば、NSAID治療の患者、非潰瘍性消化不良の患者、症候性胃食道逆流疾患の患者、およびガストリノーマの患者に使用することができる。これらの物質は、集中治療状態の患者、急性上部胃腸管出血の患者、術前および術後の胃酸の酸アスピレーションの防止、またストレス潰瘍の予防、治療に使用することができる。さらに、これらの物質は、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、クローン病、喘息、喉頭炎、バレット症候群、睡眠時無呼吸症候群、睡眠障害、乾癬の予防、治療に有用であり、またHelicobacter感染症および上記疾患に関連する疾病の予防、治療にも有用である。
【0004】
しかし、これらの活性化合物は酸性および中性媒質での分解または変質を受け易い。分解は酸性化合物によって触媒作用を受け、アルカリ性化合物との混合物中で安定化される。活性化合物の安定性は、また、水分、熱、有機溶媒の含量および、ある程度は、光によっても影響される。
【0005】
経口剤形には、多くの患者にとっての重要な問題が残されている。それは、多くの患者が固形剤形を飲み込めないか、または飲み込みたがらないからである。この問題は主に小児および老人に生じるものである。これは患者の服薬遵守に影響を及ぼし、それ故、治療における問題点である。
【0006】
従来の錠剤に関連する飲み込みの難しさを回避する経口投与形態についてのニーズが多年にわたって認識されてきた。シロップ剤、エリキシール剤、スラリーを含むマイクロカプセル剤およびその他の新規な錠剤またはカプセル剤形が開発されてきた。薬理学的に活性な物質の経口投与のための代替的形態には、活性物質の水性媒質中の溶液または懸濁液の使用がある。
【0007】
即使用可能の懸濁液(または溶液)は、保存容量が一層大きくなり、また保存期間が限定されることが多く、冷蔵庫保存が必要なことに関連する欠陥を有していることに加えて、水性懸濁液で時々起こる特別な問題は、若干の固体粒子が投与に使用する容器の底に沈下する傾向が強いことである。このために、投与量の一部が容器内に残され、全投与量が経口投与経路に入らなくなることが起こりうる。時々経験する別の問題は、経鼻胃管による投与のための液体媒質中の粒子懸濁液を使用する場合、粒子が凝結もしくは凝集する傾向があり、このために粒子が使用管を通過しなくなることである。更に他の問題は、液体媒質が高過ぎる粘度または粘弾性を有しているときに、実用的な圧力で経鼻胃管を通して投与することができなくなることである。
【0008】
特に、プロトンポンプインヒビター、例えばオメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびランソプラゾールのような酸に不安定な化合物を投与する場合に、酸性環境(例えば、酸性胃液)との接触から防御する形態でプロトンポンプインヒビターを包含する容易かつ迅速に調製され、飲み込み容易な均質懸濁液を入手することが強く希望されている。加えて、懸濁液が胃管を経由して投与し得るかまたは飲み込みが可能であるのに適した粘弾性および粘度を有するのが望ましい。また、液状懸濁液処方物は、ある期間にわたって安定であるような一定の安定性を必要としている。
【0009】
水不溶性成分を包含するドライパウダー混合物として保存すべきものであり、そして即時調製均質懸濁剤として投与することが企図されている医薬製剤では、その他の課題/問題が出てくる。
【0010】
いくつかの先行技術での組成物では、長期間後に初めて最大の粘度レベルが得られる問題、即ち、懸濁液を調製してから通常患者に投与するまでの短期間の時間枠にわたって粘度が一定ではない問題がある。また乾燥粉末混合物から調製した懸濁液で安定な最大粘度を得るのに必要とされる時間に関して、バッチからバッチについてのばらつきがある問題がある。
乳糖含有食品に対する不耐性は共通した問題である。それ故、乳糖を含有する医薬品は、このようなヒトに問題を引き起こすことになる。
プロトンポンプインヒビターを包含する組成物に関する技術分野では、複数の提案がされていて、また処方物を迅速に分散および(または)溶解させる方法については別にいくつかの提案がされている。
【0011】
US5,731,002には、動物の胃酸関連疾患の治療をするようデザインされたペースト様ゲルのプロトンポンプインヒビターを包含する安定な、経口医薬組成物が記載されている。
US5,840,737には、オメプラゾールまたはランソプラゾールを重炭酸塩とともに包含する組成物を用いる胃酸障害を治療する方法が記載されている。例えば、重炭酸ナトリウムまたはカリウムのような重炭酸塩の投与、特にヒトへの投与に関連する問題には、炭酸塩を胃で中和するときに、げっぷを起こすことがあげられる。胃食道逆流を有する患者では、げっぷが胃酸を上方へ移動させるので、その疾患を憎悪または悪化させることがある(Brunton,Agents for the control of gastric acidity and treatment of peptic ulcers, In:Goodman A.G,et al. The pharmacologic basis of therapeutics, p.907.(New York,1990))。さらに、重炭酸ナトリウムの摂取は代謝性アルカロージスをきたすことがある。
【0012】
さらに、同じパテントファミリーのその他の公開特許出願、例えば、US2002/0045646A1が存在し、この出願にはプロトンポンプインヒビターおよび緩衝剤を包含する固形の非腸溶性コーティングをした剤形の組成物を開示している。このファミリーの他の出願、US2003/118669、US2003/144306、US2003/191159、US2003/215527、US2004/048896およびUS2004/171646には、例えば、プロトンポンプインヒビターおよび緩衝剤を包含する液体経口医薬組成物およびプロトンポンプインヒビターの吸収を増大させる方法が開示されている。
【0013】
US2004/0005362A1(Taneja)およびUS2004/0082618A1(Taneja)には、腸溶性被膜でコーティングした酸に不安定な医薬および6.0以下のpHの液体ビヒクルを包含する医薬組成物が開示されている。同一発明者のその他の出願には、例えば、PPI(US2004/0081700A1)、または(US2004/0006109A1、US2004/0081671A1)液体ビヒクルのpHが6.5よりも大である原則的に同一の配合を包含する微粒を懸濁させるのに十分な粘度を持つ液体ビヒクルが開示されている。
【0014】
WO2004/004690A1(Taneja)には、酸に不安定な医薬および6.0未満のpHおよび微粒を懸濁するのに十分な粘度を有する液体懸濁剤を包含する腸溶性コーティングした微粒を有する液体剤形が開示されている。炭酸塩または重炭酸塩をこの剤形には使用することができる。
US2004/0022854A1には、添加剤が腸溶性層の形成(腸溶性コーティング)に適していない酸に不安定な活性化合物のための経口投与形態が開示されている。調製された活性化合物ユニットは、例えば、乳糖と共にサッシェ剤に処方することができ、または賦形剤を含有する炭酸塩と共に発泡組成物に処方することができる。
【0015】
EP1,232,746には、ゲル化剤または粘稠化剤を包含し、特定の粒子サイズ分布を有する少なくとも一種のキサンタンガム、増量剤、湿潤剤または界面活性剤および薬理学的に活性な物質を包含する分散容易な、ドライパウダー混合物組成物が記載されている。
US4,886,669には、医薬的に活性な薬剤、少なくとも一種の崩壊剤および膨潤可能な物質を包含する水分散性錠剤が記載されている。錠剤は水中で急速に崩壊して容易に飲み込める高粘度の均質な懸濁液を形成する旨記載されている。
【0016】
US5008117は、粘稠化剤または懸濁剤およびその他の賦形剤の迅速分散性および溶解性処方物の製造方法に関し、そこでは医薬マイクロカプセルが容易に分散しうる。プロトンポンプインヒビターは言及されていない。
EP0491910B1には、水に加えて医薬の懸濁液を生成するための固体医薬組成物が開示されている。この組成物は粘稠化剤または懸濁剤、酸、および炭酸塩または重炭酸塩を包含している。
US6,261,602には、水または水性媒質に迅速に懸濁化し得る医薬組成物の調製に使用することができる、医薬担体として有用な粒状組成物が記載されている。この組成物は、粘稠化剤および崩壊剤の混合物を湿潤剤として水性媒質を用いる湿式造粒または乾式造粒に付して粒状生成物を製造することからなる方法によって製造することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述した先行技術の組成物における不利な点を回避し、そして既述した問題点に対する解決策を提供するものである。さらに、本発明では、得られたビヒクル(懸濁液)の良好な粘度および粘弾性特性の結果として、胃管を介した投与に適した医薬ビヒクルを製造する手段が提供される。例えば、この意味で、それは、水の使用量が所定量の50%〜150%以内で変化しても、例えば、ほぼ同一の粘度を提供するのに十分丈夫なものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、多数の腸溶性コーティングしたペレットに分散された有効成分としての酸感受性プロトンポンプインヒビターおよび懸濁調節顆粒を包含する固体の迅速ゲル化経口医薬剤形に関する。
さらに、今や意外にも、プロトンポンプインヒビターを包含する腸溶性コーティングした多数のペレットと混合する特別の組成の顆粒を使用するのが有利であること、しかもこの顆粒は、水に懸濁すると、急速かつ再現可能で、所望のpH、所望の安定な粘度レベルおよび満足すべき粘弾性を有する水性ビヒクルを生じることが見出された。この顆粒は,以下「懸濁調節顆粒」(suspension modifying granulate)とも称する。さらには、この顆粒は重炭酸塩および炭酸塩を含んでいてはならない。本発明の一実施態様によれば、この顆粒を、乳糖を含まないようにする、すなわち、乳糖不耐症を持つ人々に耐性を持つようにすることができる。
【0019】
本発明の剤形では、粘稠で安定な懸濁液の急速な形成が可能である。投与前に、固形ドライ懸濁調節顆粒および腸溶性コーティングしたペレットを、水性液体、例えば水道水に溶解/懸濁させると、経口投与のための粘稠液体処方物が得られる。本発明の剤形を患者に投与する場合、製剤をできるだけ速く溶解/懸濁させ、同時に、薬理学的に活性な成分を含有する固体粒子の分配に関して、均質な懸濁液とすることが肝要である。従って、最終液体処方物は、たとえ用量が懸濁、粒状形態で構成されていても、事実上全部の用量が、安全で、信頼性および再現性がある方法で、口腔中(すなわち、経口投与経路の入り口)に送達されることを確実にしなければならない。
【0020】
有効成分が腸溶性コーティングされたペレットに含まれているときは、懸濁媒質が、有効成分を包含するペレットの腸溶性コーティング層の早期溶解を生じさせないpHを有していることが必要である。また、径鼻胃管を通した投与では、最終液体処方物に、適切で、かつ安定な粘度、粘弾性および懸濁粒子の凝集傾向が無いなどのような事柄が要望される。
【0021】
更に他の特徴は、懸濁液が小児での使用を目的とする細いチューブによる投与に適していることである。胃管なる表現は、径鼻胃管ならびに患者の胃に懸濁液または分散液を供給することを目的とするその他のチューブまたはシリンジを包含するものである。
【0022】
小児の治療に使用されるチューブが狭い内径を有することがあり、それにより不適当な性質を有する液体に対して敏感となって、投与に当たり高い背圧を生じるので、粘弾性および粘度特性が殊のほか重要となる。狭い内径を有するチューブの一例は、「Infant feeding tube,FT1606/105(CH/FG6−2.0mm外径、1.4mm内径)、Pennine Healthcare」である。
【0023】
本発明の剤形は室温、水中で先行技術の処方物よりも急速にゲル化して均質で安定な分散剤を生成する。かくして、本発明の剤形は、先行技術よりも短い時間で安定な粘度を生じ、そしてまた得られた粘度特性に関してこれらの剤形は堅牢である。
要するに、本発明の剤形は、二つの主要成分:即ち、懸濁調節顆粒および有効成分を包含する多数の腸溶性コーティングしたペレットからなる。
【0024】
懸濁調節顆粒は次のものを包含し;
−迅速に溶解する希釈剤
−ゲル化剤
−酸性pH調整剤
−バインダー、そして、
−場合によって崩壊剤
また、該顆粒は重炭酸塩および/または炭酸塩を含有していない。
【0025】
一つの特徴によれば、上記の懸濁調節顆粒は乳糖を含有していない。この更なる利点により、乳糖不耐性に苦しむ人々に適したものとなり、そしてこれらの人々を本発明の実施
態様によって治療することができる。
【0026】
本発明の特徴の一つは、迅速に溶解する希釈剤をゲル化剤と密接に/緊密に接触させることである。これは、ゲル化剤それ自体に比較して、極めて迅速なゲル化時間を与えるだけではなく、安定なゲルを極めて急速に生じるものである。甘味剤としても機能しうる的確な希釈剤の選定が本発明の一つの実施態様である。
【0027】
本発明の一つの特徴によれば、懸濁調節顆粒を水に懸濁させると、迅速な崩壊および安定で、かつ再現性のある粘度レベルへの急速なゲル化が、特定の製造方法によって達成される。この特徴によれば、該方法はゲル化剤および希釈剤/甘味剤を混合し、一緒に造粒し、ついで乾燥して低水分および/または低溶媒含量を得ることからなる。
【0028】
腸溶性コーティングされたペレットの製造は「発明の詳細な説明」の項に記載されているが、これらのペレットは一般にはWO9601624A1の指示に従って、サイズについての特別な要望を考慮して製造することができる。さらには、腸溶性コーティングしたペレットにはいかなる「オーバーコート(overcoat)」の必要も無い。
【0029】
本発明は、水性媒質中に例えばオメプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾールおよびランソプラゾールのような酸に不安定なプロトンポンプインヒビターを包含する腸溶性コーティングしたペレットを投与するための、また胃管を介して投与するための、安全にして、信頼性のある剤形を提供するものである。これは特に老人医学または小児科での治療に適切かつ有利である。
本発明の組成物は、広範囲の投薬量レベルおよび味隠蔽/改善剤および等張化剤のような添加剤の組入れも可能である。
【0030】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の一つの面は、多数の腸溶性コーティングしたペレットである一つの成分(I)と懸濁調節顆粒であるもう一つの成分(II)との混合物であって、かつこの」混合物が、例えば、サシェ(sachet)のような容器に分配されている剤形である。この混合物は、例えば水道水のような水性媒質に懸濁すると、迅速に崩壊し、ゲル化して、再現性があり、かつ安定な粘度を有する均質で、安定かつ堅牢な懸濁液を形成し、この懸濁液は患者が容易に飲み込めるかまたは例えば径鼻胃管により患者に容易に投与できる。即使用可能な液体処方物は本発明の更に他の面であり、即ち、この処方物は三種の成分、上記(I)および(II)の二つの成分および、加えて、液体媒質(III)を包含する。
【0031】
本発明の迅速ゲル化、即ち、本発明で得られる短いゲル化時間は、とりわけ、調製された懸濁液中の実質的に全部の腸溶性コーティングしたペレットが、液体媒質に懸濁されたままに残りそして、その調製に使用した容器(グラス、ビーカー)の底部には沈降しない前までに、要する時間についての効果と理解することができる。本発明の実施態様に要するゲル化時間は、実施例5に記載のごとく試験すると、一般には3分よりも短く、好ましくは2分未満である。
【0032】
剤形は重炭酸塩および/または炭酸塩を含有していない。本発明の一実施態様では、さらに乳糖を含有していない。「含有していない」とは、このような化合物が処方物に全く添加されていないことを意味する。組成物に使用された他の原料物質中に存在する痕跡量および該物質に付随する痕跡量はこの表現では考慮されていない。
【0033】
腸溶性コーティングしたペレット
有効成分を包含する腸溶性コーティングしたペレットは、最外側層が腸溶性コーティング層であるように製造される。このようなペレットは、ペレットのサイズについての特別
な要望を考慮して、例えばWO9601624A1に記載されているような当該技術で既知の方法に従って製造することができる。さらには、製造された腸溶性コーティングしたペレットには、いかなる「オーバーコート」の必要も無い。
【0034】
本発明の一つの態様によれば、腸溶性コーティングしたペレットの平均直径は直径0.2〜1.8mm、好ましくは直径0.4〜1.0mm、そして更に好ましくは直径0.5〜0.8mmである。
本発明の別の一つの態様では、腸溶性コーティングしたペレットは1.0〜1.4mm直径のサイズ範囲にある。
【0035】
腸溶性コーティングされたペレットは次の構造成分からなるものである;
・有効成分を包含するコア材料、
・場合によっては分離層またはサブコーティング層、および
・腸溶性コーティング層、
ただし、腸溶性コーティング層の上には追加のコーティング層は無い。
【0036】
コア材料
コア材料は、例えば、押出−球体化(extrusion−spheronization)、積層技術、例えば粉末−または溶液/懸濁液積層、噴霧乾燥、球形化、凝固技術、噴霧凝固技術のような当該技術で既知の方法によって製造することができる。コア材料は有効成分を包含し、そしてまたシード、バインダー、界面活性剤、増量剤、崩壊剤、アルカリ性添加剤またはその他の製薬的に許容し得る成分を単独でまたは混合物で包含していてもよい。
【0037】
有効成分
本発明の医薬処方物は、酸感受性プロトンポンプインヒビターまたはそのアルカリ性塩または単一エナンチオマーまたはそのエナンチオマーのアルカリ性塩を有効成分として包含する。単一エナンチオマー、ラセミ混合物(各エナンチオマーの50%)および二種のエナンチオマーの不等量混合物は本発明による医薬処方物に適している。
有効成分は、小型の腸溶性コーティングしたペレット/ビーズにおいて、場合によっては賦形剤と共に包含されている。
【0038】
本発明による新規な医薬組成物について、関心のある化合物/有効成分は、一般式Iの化合物、そのアルカリ性塩、その単一エナンチオマーの一種またはその単一エナンチオマーの一種のアルカリ性塩である:
【化1】

式中、
Het1
【化2】

であり、
Het2
【化3】

であり、
Xは
【化4】

であり、
ここで、
ベンゾイミダゾール基部分中のNは、R6−R9で置換されている環炭素原子の一つが、場合によっては、置換基を有することなく、窒素原子と置換されていてもよいことを意味し;
1、R2およびR3は同一または異なって、水素、アルキル、場合によってフッ素で置換されているアルコキシ、アルキルチオ、アルコキシアルコキシ、ジアルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ハロゲン、フェニルおよびフェニルアルコキシから選択され;
4およびR5は同一または異なって、水素、アルキルおよびアリールアルキルから選択され;
6'は水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、アルキルまたはアルコキシであり;
6−R9は同一または異なって、水素、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、ハロアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、オキサゾリニル、ピロリルおよびトリフルオロアルキルから選択されるか、または隣接する基R6−R9は環構造を形成しこの環構造はさらに置換されていてもよいものとし;
10は水素またはR3と一緒になってアルキレン鎖を形成し;
11およびR12は同一または異なって、水素、ハロゲンおよびアルキルから選択されるものとする。
【0039】
上記の定義において、アルキル基、アルコキシ基およびそれらの部分は分枝鎖または直鎖C1−C9鎖であってよく、または環状アルキル基、例えばシクロアルキルを構成していてもよい。
【0040】
特に関心のある式Iによる化合物の例は以下の通りであり:
【化5】

【化6】

これらのものの互変異性体形態も包含される。
【0041】
本発明による経口医薬製剤のための好ましい化合物は、オメプラゾ−ル、オメプラゾールのマグネシウム塩またはオメプラゾールの(−)エナンチオマーのマグネシウム塩である。後者は一般名エソメプラゾールを有する。一つの実施態様によれば、有効成分はエソメプラゾールマグネシウム三水和物である。本発明の別の実施態様では、テナトプラゾールまたはその製薬上許容し得る塩、またはこれらのいずれかの単一エナンチオマーが活性薬物である。
本発明の別の態様によれば、化合物/有効成分は上述の化合物/有効成分のいずれか一つの水和形態である。
本発明の一つの態様では、製剤中の有効成分の量は、1mg〜100mg、2mg〜80mgまたは5mg〜50mgである。
【0042】
シード
有効物質と積層されるシードは、異なった酸化物、セルロース、有機ポリマーおよびその他の材料の単独または混合物での水不溶性シード、または異なった無機塩、糖類(乳糖
を除く)、ノンーパレイユおよびその他の材料の単独または混合物での水溶性シードであってよい。さらに、シードは凝集体、圧縮体などの形態の活性物質であってよい。
【0043】
バインダー
バインダーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコ−ル、ポリビニルアルコール、糖類(乳糖を除く)、デンプン、および凝集性を有するその他の製薬上許容し得る物質である。
【0044】
界面活性剤
界面活性剤を剤形に使用することができる。適当な界面活性剤は、製薬上許容し得る非イオン性界面活性剤例えばPolysorbate80またはイオン性界面活性剤例えばラウリル硫酸ナトリウムの群中に見出される。
【0045】
増量剤
増量剤を剤形に使用することができる。増量剤の例には例えばマンニトールおよびリン酸二カルシウムがあげられる。
【0046】
崩壊剤
崩壊剤を剤形に使用することができる。使用し得る崩壊剤の例には、例えば架橋したポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン(pregelatinized starch)、微結晶セルロースおよび架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウムがある。
【0047】
アルカリ性添加剤
本発明の一つの実施態様によれば、活性物質はアルカリ性の製薬上許容し得る物質と混和することができる。このような物質には、重炭酸塩または炭酸塩を除いた後、限定されるものではないが、例えばリン酸、クエン酸またはその他の適当な弱無機または有機酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの塩;制酸製剤に普通に使用される物質例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムおよび水酸化マグネシウム;有機pH緩衝性物質例えばトリヒドロキシメチルアミノメタン、塩基性アミンまたはアミノ酸およびそれらの塩またはその他の同様な製薬上許容し得るpH緩衝性物質から選択することができる。
【0048】
分離層またはサブコーティング層
分離層またはサブコーティング層は、適当な装置例えばコーティングパン、コーティング造粒機で、またはコーティングプロセスのための水および/または有機溶媒を使用する流動床装置で、コーティングまたは積層操作によって、コア材料に適用することができる。代替手段として、粉体被覆技術を使用して、分離層をコア材料に適用することができる。分離層のための材料は製薬上許容し得る化合物であり、例えば糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどを単独または混合物で使用する。添加剤、例えば可塑剤、着色剤、顔料、増量剤、粘着防止および帯電防止剤、例えばステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、ヒュームドシリカ、タルクおよびその他の添加剤も分離層に含めることができる。
【0049】
分離層は拡散遮断層として役立ち、またpH緩衝帯域として作用する。分離層のpH緩衝特性は、重炭酸塩または炭酸塩を除外した後、制酸処方物に通常使用されている化合物群から選択される物質を分離層に導入することによって更に強化することができ、これらの物質には例えば以下のものがある:酸化マグネシウム、水酸化物、水酸化アルミニウム
またはカルシウムまたはシリケート;複合アルミニウム/マグネシウム化合物、例えばMgO.Al23.2SiO2.nH2O、またはその他の製薬上許容し得るpH緩衝性化合物、例えばリン酸、クエン酸またはその他の適当な弱無機または有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩;または塩基性アミノ酸またはアミンおよびその塩を含む適当な有機塩基。タルクまたはその他の化合物を加えて層の厚さを増大させ、それによって拡散遮断層を強化することもできる。
【0050】
腸溶性コーティング層
適当なコーティング技術を使用して、一層またはそれ以上の腸溶性コーティング層をコア材料または分離層で被覆されたコア材料に適用する。腸溶性コーティング層材料は水または適当な有機溶媒に分散または溶解することができる。腸溶性コーティング層重合体として、以下のものを一種またはそれ以上で、別個にまたは組み合わせて、例えば、メタクリル酸共重合体、セルロースアセトフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセトスクシネート、ポリ酢酸ビニルフタレート、セルロースアセトトリメリテート、カルボキシメチルエチルセルロース、セラックまたはその他の適当な腸溶性コーティング層重合体の溶液または分散体を使用することができる。
【0051】
腸溶性コーティング層は、所望の機械的性質、例えば腸溶性コーティング層の柔軟性および硬度を得るために、製薬上許容し得る可塑剤を含有する。このような可塑剤には、例えば、限定されるものではないが、トリアセチン、クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチルエステル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベートまたはその他の可塑剤がある。
【0052】
懸濁調節顆粒
懸濁調節顆粒は以下のものを包含する:
−迅速に溶解する希釈剤、
−ゲル化剤、
−酸性pH調整剤、
−バインダー、および
−場合によって崩壊剤、
そして、さらに、このものは重炭酸塩または炭酸塩(殊に、発泡を生じ得る成分)を含有していない。
【0053】
一つの実施態様によれば、懸濁調節顆粒は、迅速に溶解する希釈剤およびゲル化剤を一緒に混合しそして造粒し、その後乾燥する方法により製造される。
乾燥減量として測定した懸濁調節顆粒での最終水分含量は<3%(w/w)、好ましくは<1%(w/w)である。エタノールの最終含量は<0.2%(w/w)、好ましくは0.12%(w/w)未満である。
【0054】
懸濁調節顆粒を水道水に懸濁させると、安定にして、最高値に近い粘度が短時間で得られる。更には、得られた懸濁液は、塊がなく、顆粒から懸濁液を製造するときに患者が加える水が少なすぎてもまたは多すぎても、堅牢である。かくして、有効成分および懸濁調節顆粒の一回用量を所定量の水の50%〜150%に加えることができ、なお処方物の所望の性質が得られる。
【0055】
懸濁調節顆粒を水性媒質例えば水に加えて形成されるゲルは、3.0〜6.0log(mPas)=103〜106mPas、好ましくは3.6〜4.7log(mPas)=103.6〜104.7mPasの粘度を有している。
この粘度は、log(粘度)対log(回転速度(rpm))をプロットするときのライ
ンの粘度軸での切片において20℃で評価する。このラインは、最小二乗線形回帰を使用する線形フィットにより作成し、フィットしたラインの切片を測定する。粘度測定のための適当な装置を使用し、例えば、Physica DV−1P粘度計を使用し、測定形状寸法は直径18.7mm、長さ6.9mmのNo.2スピンドルであり、これを回転速度3.0、6.0、30および100rpmで運転し、そして安定な値が得られるまで(約1分)測定を行う。
懸濁調節顆粒を製造するための特別な製造方法を使用する場合、本発明の一面では、懸濁調節顆粒を水に懸濁させると、安定な、再現性のある粘度レベルへの迅速な崩壊および急速なゲル化が達成される。
【0056】
この製造方法は、次の工程IおよびIIを交換し得る選択肢を排除しないものとして、以下の順序で以下の工程を包含する;
I)ゲル化剤をpH調整剤、迅速に溶解する希釈剤および任意の崩壊剤と混合し;
II)バインダーをエタノールに溶解し;
III)工程I(代替的に、順序を交換すると、工程II)で得られた混合物を工程II(代替的に、順序を交換すると、工程I)で得られた溶液で湿潤し;
IV)ゲル化剤の殆どの各粒子が上記の迅速に溶解する希釈剤と密接/緊密に接触するように、工程IIIで得られた湿潤混合物を撹拌し;
V)工程IVからの撹拌された湿潤混合物を、乾燥減量として測定した懸濁調節顆粒中の最終水分含量が<3%(w/w)、好ましくは<1%(w/w)となるまで、乾燥し;
VI)工程Vで得られた乾燥顆粒を、顆粒の95%(w/w)以上が1.0mmの目を有する篩を通過するまで、粉砕または微粉砕する。
【0057】
本発明の一つの特徴は、迅速に溶解する希釈剤をゲル化剤と密接/緊密に接触させ、これによってゲル化剤それ自体と比較して極めて迅速なゲル化時間を生じるだけではなく、極めて急速に安定なゲルを生じるところにある。本発明の一実施態様は、甘味剤としても機能する適当な急速崩壊性希釈剤の選択にある。
ドライ懸濁調節顆粒の急速ゲル化は、一般には水例えば水道水に加えたときに、ゲル化が一般に十分なもの、即ち約10分以内で既に最高の入手可能なレベルの75%に到達している。最高粘度の90%またはそれ以上は一般には15分以内に到達する。比較のためには、実施例2の表を参照のこと。
【0058】
特に、本発明の単独懸濁調節顆粒を水に懸濁させ、軽く撹拌する場合には、水5mlに加えた懸濁調節顆粒で試験して、13分以内で最高の入手可能な粘度の75%以上に到達し、好ましくは10分以内に75%以上に到達している懸濁液を生じる。
水5mlに加えた1gの懸濁調節顆粒で試験して、30分以内で最高の入手可能な粘度の90%以上に、好ましくは25分以内で90%以上に到達する。
本発明の一実施態様によれば、懸濁調節顆粒(および腸溶性コーティングしたPPI包含ペレット)は乳糖を含有していない。
【0059】
ゲル化剤
ゲル化剤は、胃ゾンデ/径鼻胃管を通して投与するのに適したゲルを形成するように提供される。即ち、ゲル化剤は、水性媒質、例えば水に分散するときに形成されるゲルの適正な粘弾性ならびに適正な粘度を有するように選択される。これは小児または老人の治療において望まれる投与経路である。溶解時間もまたゲル化剤の選択に影響を及ぼすものである。本発明の適当なゲル化剤は性質の異なったキサンタンガムである。
【0060】
その他のゲル化剤も考えられるが、例えばある種のデンプン製品の場合、適当な濃度範囲は極めて限られてくる。例えば、変性コーンスターチおよびマルトデキストリンを含有するThick−It(登録商標)レギュラーが挙げられる。この製品は、懸濁調節顆粒
中のゲル化剤含量34〜48%に相当する(組成物の不適切に高い比率である)約6〜8%の狭い範囲でのみ使用すべきものである。
別の例はコーンスターチであり、これは迅速な膨潤を生じることが多いが、望ましくない粘弾性を有している。
カルボキシメチルセルロース(CMC)Naおよびカラジーナンのようなゲル化剤は、適当な粘弾性が欠如しているため、または得られた懸濁液を胃ゾンデを通して投与するには適当でない性質のために、本発明では使用することができない。
【0061】
よって、本発明でのゲル化剤はキサンタンガムのうちから選択される。
ゲル化剤の濃度は懸濁調節顆粒の0.6〜12%w/wである。好ましい実施態様では、ゲル化剤の濃度は1.8〜4.8%w/wである。患者の実用上の理由で、なおかつ粘弾性ゲルの適切な性質を有しているので、ゲル化剤濃度においてはこのような広い範囲を有することが適当である。
本発明の一つの実施態様では、製造は150μよりも大きい平均粒子サイズを有するゲル化剤で達成される。
【0062】
迅速に溶解する希釈剤
希釈剤は希釈機能を有するが、甘味剤として機能してもよい。
希釈剤は、単糖類および二糖類ならびにこれらのいずれかの水和物からなる群から選択される。本発明の一つの態様によれば、好ましい希釈剤はグルコ−スまたはスクロースまたはこれらのいずれかの水和物である。本発明によれば、迅速に溶解するとは、物質2gを14℃でゆっくり連続撹拌しながら水10mlに溶解するときに、希釈剤の溶解時間が2分以下であることを意味する。この要件を特に充足していない希釈剤の一つはマンニトールである。
この製造方法の帰結として、本発明の懸濁調節顆粒は、得られた個々の顆粒粒子内また上に無作為に分散された迅速に溶解する希釈剤を有する。
【0063】
酸性pH調整剤
懸濁調節顆粒は水に懸濁させると3.0〜6.0の範囲、好ましくは3.0〜5.0の範囲、更に好ましくは3.5〜4.5の範囲のpHを有する懸濁液を形成する。
これは、適当な酸性pH調整剤を添加することによって達成し得る。この剤は単独酸性化合物または酸性およびアルカリ性化合物から選択された化合物の混合物から成るものであってよいが、但しいずれの炭酸塩も除外される。このようなpH影響性化合物の混合物は、該混合物を水に溶解/懸濁したときに、上述の通りの所望の(酸性)範囲内のpHを生じるように選択される。
適当な酸性化合物の非限定的な例は次の通りである:クエン酸、酒石酸およびリンゴ酸。酸性およびアルカリ性化合物から選択される化合物の混合物の非限定的な例は(所望の範囲内のpHを達成するのに適切な比率の)リン酸一ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムである。
【0064】
崩壊剤
ドライ懸濁調節顆粒に場合によって使用される崩壊剤は単独の崩壊剤またはその混合物であってよい。
適当な崩壊剤の非限定的な例は次の通りである:架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(Ac−Di−Sol(登録商標))およびアルファ化デンプン(Sta−Rx(登録商標)1500)。
【0065】
バインダー
本発明に従って使用される適当なバインダーは、水にまたエタノールに可溶性の重合体である。適当な重合体は選択された品質のヒドロキシプロピルセルロースである。バイン
ダーをヒドロキシプロピルセルロース(以下HPCとも称する)と選択すると、それは50〜90%の範囲の、更に好ましくは60〜81%の範囲のヒドロキシプロピル含量を有し、また5%濃度で試験して450mPas(cps)以下の粘度を有している。このような重合体には、例えばAqualonからのKlucel(登録商標)JFおよびKlucel(登録商標)LFが挙げられる。
本発明のこの態様でバインダーとして使用することが企図されているヒドロキシプロピルセルロースは、低置換ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPCとも称される)を包含していない。
本発明の懸濁調節顆粒のバインダーとゲル化剤との比率は、好ましくは1:2乃至1:3w/wである。
【0066】
剤形強度
特定の量の腸溶性コーティングしたプロトンポンプインヒビターおよび本発明の懸濁調節顆粒を単位サイズのサシェに充填することにより、異なった製品強度が得られる。本発明の一実施態様によれば、オメプラゾールマグネシウム三水和物を包含する腸溶性コーティングしたペレットを懸濁調節顆粒と一緒に単位サイズのサシェ中に充填する。
混合物の二つの成分のw/w比率、即ち、一方での腸溶性コーティングしたペレットを包含するプロトンポンプインヒビターと他方での(ドライ)懸濁調節顆粒との間の比率は1:1000乃至100:1000、好ましくは4:1000乃至80:1000、最も好ましくは8:1000乃至60:1000で変わり得る。
【0067】
一つのサシェでの腸溶性コーティングしたペレットの量
PPIを包含する腸溶性コーティングされたペレットは、腸溶性コーティングしたペレットの5%w/w乃至腸溶性コーティングしたペレットの40%w/wの薬物含量を有している。これは、一用量に対するペレットの最高理論量が、薬物の最高用量(本発明では100mg)が合計(100/0.05=)2000mgペレットとなる薬物の最高用量に対するペレット中の薬物の最小濃度が入手できる状況を考慮して、計算することができる。
ペレットの最小可能量は、反対の状況に対する同様な理論付けで、最高濃度から計算することができ、最低用量(本発明では1mg)からペレットの最少量(1/0.4=)2.5mgペレットが得られる。
本発明の好ましい実施態様では、腸溶性コーティングしたペレットの薬物含量は8〜30%w/wである。
【0068】
本発明による一サシェ中の腸溶性コーティングしたペレットの量は、2.5〜2000mgの範囲にあり、そして、本発明の好ましい実施態様では、一サシェ中の腸溶性コーティングしたペレットの量は、3〜1250mgの範囲にある。
本発明の別の実施態様では、腸溶性コーティングしたペレットの薬物含量を、以下の表に従って一つのサシェで意図される薬物の用量に適合させる。
【0069】
【表1】

【0070】
それで、本発明の一つの実施態様では、一つのサシェでの用量は1〜40mgであり、そして腸溶性コーティングしたペレットの薬物含量は8〜12%(w/w)である。
本発明の別の実施態様では、一つのサシェでの用量は>40mg〜70mgであり、そして腸溶性コーティングしたペレットの薬物含量は15〜25%(w/w)である。
本発明の更に別の実施態様では、一つのサシェでの用量は>70mg〜100mgであり、そして腸溶性コーティングしたペレットの薬物含量は25〜40%(w/w)である。
【0071】
即使用可能な液体処方物
使用前に、サシェの内容を所定量の水性液体にあける。撹拌後、粘稠な懸濁液が形成される。この液体処方物は本発明の別の態様であり、三種の主成分、即ちプロトンポンプインヒビターを包含する腸溶性コーティングしたペレット、(ドライ)懸濁調節顆粒および水性液体からなっている。
【0072】
水性液体の量は、懸濁調節顆粒の量の5倍であることを目標とするが、患者がこの液体量を50%から150%まで変えることが可能である。これは、即使用可能な液体処方物中の水性液体量が懸濁調節顆粒の量の2.5倍から7.5倍であることを意味する。
【0073】
本発明の一態様では、水性液体は水である。
ゲル化剤の濃度は懸濁液の0.1〜2%w/w(濃度で20倍の範囲)、好ましくは0.3〜0.8%w/wでなければならない。患者にとっての実用上の理由および粘弾性ゲルの適切な性質をなお維持していくのに、ゲル化剤の濃度でこのような広い範囲を有することが有利である。
【実施例】
【0074】
実施例1a
本発明による懸濁調節顆粒の製造
添加剤 含量(%)
キサンタンガム11K 2.5
架橋ポリビニルピロリドン 2.5
水を含まないグルコース 93.8
ヒドロキシプロピルセルロースJF 1.0
無水クエン酸 0.164
黄色二酸化鉄染料 0.06
【0075】
ヒドロキシプロピルセルロースをエタノールに溶解する。溶液を残りの添加剤のドライ混合物に加えると湿潤塊が得られ、そしてこの塊を溶液の添加の間に造粒する。この湿潤塊を乾燥し、粉砕する(顆粒の最大5%>1mm)。
懸濁調節顆粒3gを水15mlに溶解し、そして液体処方物を60秒撹拌した。較正pHメーターを使用するガラス電極でpHを測定し、4.0であることが分かった。
【0076】
(比較)実施例1b
先行技術による懸濁調節顆粒
比較対照として、Wyeth Lederle市販品「Lanzo(登録商標)30mg、顆粒」(バッチ 3ET032、使用期限2006年7月およびバッチ 3ET010、使用期限2006年3月)を使用した。
この製品に使用した懸濁顆粒組成物(腸溶性コーティングしたペレットを除く)はSWEDISによるものである。
【0077】
添加剤 含量(%)
マンニトール 45.8
スクロース 45.8
キサンタンガム 3.5
架橋ポリビニルピロリドン 3.5
スルホコハク酸ジオクチルエステル 0.015
ステアリン酸マグネシウム 0.5
二酸化ケイ素 0.1
無水クエン酸 0.4
染料 0.05
着香剤 0.4
【0078】
実施例2:粘度測定
−実験条件:
本発明による実施態様:実施例1aに従って得られた懸濁調節顆粒3gを水15mlに溶解し、そして液体処方物を60秒間撹拌した。
先行技術サンプル(Lanzo(登録商標)30mg、顆粒):ランソプラゾール含有ペレットを実施例1bに記載の生成物の総固形分(5.7g)から除き、残りの粉末/顆粒(5.4g)に水30mlを加え、その後に液体処方物を60秒間撹拌した。
【0079】
両方のサンプルについて、更に1分後に粘度測定を開始した。
機器:Reologica Stresstech
測定原理:プレート/プレートp302mmスリットによる振動
測定パラメーター:周波数0.1Hz;応力0.07146Pa
【0080】
【表2】

【0081】
考察
ランソプラゾールの場合(実施例1b)、速溶性希釈剤(スクロース)を有してはいるが、懸濁顆粒処方物に添加すると、本発明で得られるゲル(実施例1a)と比較して(図1参照)、処方物は所望の一層短い時間内に安定なゲルを形成しない(図2および上記の表に示す結果を参照)。
緩溶解希釈剤を使用する結果として、合理的で、適切な時間内に、ゲル化が一層遅く、かつ粘度が連続増加する組成物が得られる。従って、本発明によって、飲み込むかまたは管を通して投与するのに適した粘度/粘弾性、例えば長時間にわたって一定の粘度を有し、また、投与する最終懸濁液に塊が存在することなく、迅速なゲル化時間を有し、乳糖を含まず、また重炭酸塩/炭酸塩を含まない組成物を得るための、いくつかの課題が本発明によって解決された。
【0082】
実施例3:エソメプラゾール−Mg−三水和物を包含する腸溶性コーティングしたペレットの製造
コア材料
エソメプラゾール−Mg三水和物 445g
糖球状シード 300g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 67g
Polysorbate80 9g
精製水 2100g
サブコーティング層
ヒドロキシプロピルセルロース 90g
タルク 340g
ステアリン酸マグネシウム 22g
精製水 3100g
腸溶性コーティング層
メタクリル酸コポリマータイプC,30%分散液 1270g
クエン酸トリエチルエステル 38g
モノーおよびジグリセリド 19g
Polysorbate80 2g
精製水 500g
【0083】
サスペンション積層は下部スプレー技術を使用する流動床装置で行った。エソメプラゾールは、溶解したバインダーおよび界面活性剤を含有する水サスペンションから糖球状シード上にスプレーした。糖球状シードの粒径は0.25〜0.35mmの範囲のものであった。
製造されたコア材料は、タルクおよびステアリン酸マグネシウムを含有するヒドロキシプロピルセルロース溶液を用いる流動床装置中でサブコーティング層で被覆した。腸溶性コーティング層は水分散液として流動床装置中で分離層で被覆されたペレットにスプレーした。
【0084】
実施例4:異なった用量強度の最終液体処方物の成分比率の例
【表3】

【0085】
実施例5:本発明の迅速ゲル化時間の実例
実施例4に従って40mg用量強度の最終処方物の入ったサッシェの内容物を表示上で所定の15ml量の水の入ったビーカーにあけた。
ついで、試料を15秒間撹拌し、次に開始から55秒まで静止状態に保った。その後、再び5秒間撹拌して活性薬物顆粒を懸濁液中に均一に分配した。
ついで、懸濁液を30秒間検査して腸溶性コーティングしたペレットの実質的に全部が懸濁液中に分配されたか否か、またはこれらのペレットがビーカーの底に集っているかどうかを測定した。
【0086】
ペレットが液体媒質に分配されてなくて、ビーカーの底に集っていたときは、プロセスを反復実施した(即ち、さらに25秒待ち、そして5秒撹拌し、即ち、2分まで、ついで30秒間検査し、ペレットの実質的に全部が液体媒質に分配されたままになっているまでを意味する)。ペレットが液体媒質に残ったままであるのに要した時間を記録した。
【0087】
以下の表のサンプルは、記述した方法で評価し、以下の結果を得た。
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施態様についての粘度対時間を示す(5サンプル)。
【図2】先行技術の実施態様についての粘度対時間を示す[Lanzo(登録商標)、4サンプル)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)多数の腸溶コーティングしたペレットに分配されている有効成分としての酸感受性プロトンポンプインヒビターおよび、II)顆粒を包含する、懸濁液を調製するのに適した固形の迅速にゲル化する顆粒混合物である経口医薬剤形であって、
該顆粒が、迅速に溶解する希釈剤、キサンタンガムから選択されるゲル化剤、酸性pH調整剤、バインダーおよび場合によって崩壊剤を包含する懸濁調節顆粒であり、そして該顆粒は重炭酸塩および/または炭酸塩を含有していないことを特徴とする上記医薬剤形。
【請求項2】
乳糖を含有していない請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
迅速に溶解する希釈剤およびゲル化剤を一緒に混合し、造粒し、それにより迅速に溶解する希釈剤が得られた顆粒粒子中におよび上に無作為に分配されている請求項1または2に記載の剤形。
【請求項4】
ゲル化剤の濃度が懸濁調節顆粒の0.6%乃至12%w/wである請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項5】
ゲル化剤の濃度が懸濁調節顆粒の1.8%乃至4.8%w/wである請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項6】
懸濁調節顆粒が水に懸濁されると3.0〜6.0の範囲のpHを有する懸濁液を形成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項7】
懸濁調節顆粒が水に懸濁されると3.0〜5.0の範囲のpHを有する懸濁液を形成する請求項1〜5のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項8】
懸濁調節顆粒中のバインダーとゲル化剤との比が、1:2乃至1:3w/w、である請求項1〜7のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項9】
懸濁調節顆粒中の迅速に溶解する希釈剤が、単糖類および二糖類ならびにこれらのいずれか一つの水和物からなる群から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項10】
懸濁調節顆粒中の迅速に溶解する希釈剤が、グルコースおよびスクロースならびにこれらのいずれか一つの水和物から選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項11】
酸感受性プロトンポンプインヒビターがオメプラゾ−ルまたはオメプラゾールのマグネシウム塩である請求項1〜10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項12】
酸感受性プロトンポンプインヒビターがエソメプラゾール、そのアルカリ性塩またはそれらのいずれかの水和形態である請求項1〜10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項13】
酸感受性プロトンポンプインヒビターがテナトプラゾール、その製薬上許容し得る塩またはこれらのいずれか一つの単一エナンチオマーである請求項1〜10のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項14】
腸溶コーティングしたペレットが、次の構造成分:有効成分を含有するコア材料、サブコーティング層、腸溶コーティング層からなり、そして腸溶性コーティング上に追加のコーティング層を有していない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項15】
腸溶コーティングしたペレットが、直径で平均直径0.2〜1.8mmを有している請求項1〜14のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項16】
腸溶コーティングしたペレットが、直径で平均直径0.4〜1.0mmを有している請求項1〜14のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の剤形を包含するサシェ。
【請求項18】
有効成分の量が1mg〜100mgである請求項17に記載のサシェ。
【請求項19】
有効成分の量が1mg〜40mgである請求項17に記載のサシェ。
【請求項20】
水性液体および請求項1〜19のいずれか1項に記載の剤形を包含する即使用可能な液体処方物。
【請求項21】
水性液体の量が、懸濁調節顆粒の量の2.5倍乃至7.5倍までである請求項20に記載の液体処方物。
【請求項22】
懸濁調節顆粒が、水性液体に懸濁させ、撹拌すると、13分以内に最大入手可能な粘度の75%以上に到達する懸濁液を生じる請求項20に記載の液体処方物。
【請求項23】
懸濁調節顆粒が、水性液体に懸濁させ、撹拌すると、10分以内に最大達成可能な粘度の75%以上に到達する懸濁液を生じる請求項20に記載の液体処方物。
【請求項24】
懸濁調節顆粒が、水性液体に懸濁させ、撹拌すると、30分以内に最大達成可能な粘度の90%以上に到達する懸濁液を生じる請求項20に記載の液体処方物。
【請求項25】
懸濁調節顆粒が、水性液体に懸濁させ、撹拌すると、25分以内に最大達成可能な粘度の90%以上に到達する懸濁液を生じる請求項20に記載の液体処方物。
【請求項26】
水性液体が水である請求項20〜25のいずれか1項に記載の剤形。
【請求項27】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の剤形に使用される懸濁調節顆粒の製造方法において、該方法は、迅速に溶解する希釈剤およびゲル化剤を一緒に混合しそして造粒し、その後乾燥することを含み、それにより迅速溶解性希釈剤が得られた顆粒粒子の中および上に無作為に分配されていることを特徴とする上記方法。
【請求項28】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の剤形に使用される懸濁調節顆粒の製造方法であって、次の工程IおよびIIは交換し得る選択肢を排除しないものとして、以下の順序で以下の工程:
I)ゲル化剤をpH調整剤、迅速に溶解する希釈剤および任意の崩壊剤と混合し;
II)バインダーをエタノールに溶解し;
III)工程I(代替的に、順序を交換すると、工程II)で得られた混合物を工程II(代替的に、順序を交換すると、工程I)で得られた溶液で湿潤し;
IV)ゲル化剤の殆どの各粒子が上記の迅速に溶解する希釈剤と密接/緊密に接触するように、工程IIIで得られた湿潤混合物を撹拌し;
V)工程IVからの撹拌された湿潤混合物を、乾燥減量として測定した懸濁液調節顆粒中の最終水分含量が<3%(w/w)、好ましくは<1%(w/w)となるまで、乾燥し;
VI)工程Vで得られた乾燥顆粒を、顆粒の95%(w/w)以上が1.0mmの目を有する
篩を通過するまで、粉砕または微粉砕する;
を包含する、上記方法。
【請求項29】
工程I)およびII)を逆の順序で使用する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
胃酸関連疾患の治療を必要とする患者に請求項1〜26のいずれか1項に記載の経口医薬剤形を投与することからなるヒトの胃酸関連疾患を治療する方法。
【請求項31】
治療を必要とする患者が小児または老人である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
胃腸疾患の治療における請求項1〜26のいずれか1項に記載の医薬剤形の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−525433(P2008−525433A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548145(P2007−548145)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/SE2005/001972
【国際公開番号】WO2006/068596
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】