説明

プロトン伝導性膜およびこれを用いた燃料電池

【課題】耐熱性、化学的安定性および寸法安定性に優れ、プロトン伝導を促進する水が構造内部から放出される100℃を越える温度および低湿度でも、プロトン伝導体として安定に作動させることができるプロトン伝導体の提供。
【解決手段】式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むことを特徴とするプロトン伝導性膜。


(Rは炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、H又はOH、Rは炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基、AはOH、炭素数1〜4のアルキル基、又は架橋に関与する−O−であり、m,mはそれぞれ1〜10の整数、nは1〜20の整数)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロトン移動を伴う各種電気化学デバイス、特に、燃料電池の電解質に適用することができるプロトン伝導性の多孔膜とこれを用いた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は携帯機器や自動車駆動用の電源として、また家庭用オンサイト発電機として期待されており、中でも最も出力が高い電解質に高分子材料を使用した高分子固体電解質形燃料電池が実用化および普及に向けて検討されている。これらの燃料電池の電解質としてはフッ素系ポリマーが主に使用されているが、耐熱性の改善やプロトン伝導性の向上を目的として炭化水素系ポリマー等の有機系ポリマー材料が提案されている。
【0003】
ところで、燃料電池は燃料由来の一酸化炭素等による電極触媒の被毒を低減する目的以外にも、高エネルギー効率化、発電に伴う廃熱の利用(コージェネレーション)をするため、作動温度を100℃以上にして運転することが求められている。
【0004】
しかしながら、有機系ポリマー材料は耐熱性が低く、作動温度を上げるとプロトン伝導性の低下、膨潤等の寸法変化、化学安定性の低下といった問題が生じる。そのため、現在の燃料電池の作動温度は有機系ポリマー材料が耐えられる温度の80℃とされ、作動温度をこれ以上に高温化することができなかった。
【0005】
そのため、有機系ポリマー材料にかわる電解質として、主骨格にケイ素−酸素共有結合による架橋構造を有し、架橋体構造中に炭素原子を含む有機無機複合構造体と固定アニオン基を導入した無機系ポリマー材料が提案されている。無機系ポリマー材料の中でも、耐熱性、化学安定性および寸法安定性に優れているため、シリカに代表されるポリシロキサン化合物が燃料電池用電解質として検討されているが、より一層のプロトン伝導性、機械的特性の改善が求められている(特許文献1、2)。
【0006】
そのため、分子量が大きな炭素原子を含む有機無機複合構造体を架橋導入したポリシロキサン材料(特許文献3)、ポリエチレンオキサイドを細孔形成剤に使用して微細な細孔を形成させたポリシロキサン材料(特許文献4)、界面活性剤を用いて11nm程度のメソ細孔を形成させたポリシロキサン材料(特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−165050
【特許文献2】特開2009−114046
【特許文献3】特許3679104号
【特許文献4】WO2004/070738
【特許文献5】特表2006−518405
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでに報告されている無機系ポリマー材料は100℃を越える温度や低湿度でのプロトン伝導度が十分ではなかった。そのため、これまでは実用化に適用できる十分なプロトン伝導性、および機械的特性を有し、かつ、化学安定性および寸法安定性に優れたプロトン伝導性膜はなかった。
【0009】
本発明は、耐熱性、化学安定性および寸法安定性を備え、電解質膜としての使用に耐えうる機械的特性を有し、かつ、100℃を越える温度でも安定したプロトン伝導が可能な新規なプロトン伝導性膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題に鑑み、本発明者らは、燃料電池用の電解質膜として十分な機械的特性を有するだけでなく、高温でも安定したプロトン伝導性を有する材料について鋭意検討を行った。その結果、ポリシロキサンを主成分とする無機−有機ハイブリッド材料を使用したプロトン伝導性に優れた材料を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とするプロトン伝導性膜である。
【0012】
【化1】

【0013】
(RはCH、C、C、C、C、H、OHから選ばれるいずれか、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。AはOH、CH、C、C、C、架橋に関与する−O−から選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。m,mはそれぞれ1〜10の整数、nは1〜20の整数)
【0014】
以下、本発明のプロトン伝導性膜について具体的に説明する。
【0015】
本発明のプロトン伝導性膜が含有するオルガノポリシロキサンは、以下の式(1)で表される。
【0016】
【化2】

【0017】
(RはCH、C、C、C、C、H、OHから選ばれるいずれか、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。AはOH、CH、C、C、C、架橋に関与する−O−から選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。m,mはそれぞれ1〜10の整数、nは1〜20の整数)
【0018】
式(1)において、オルガノポリシロキサンはケイ素−炭素結合を有し、かつ、当該炭素と結合している酸素がないことが好ましい。これにより、プロトン伝導性膜の柔軟性が向上するだけでなく、シロキサン骨格が収縮・再配列し難くなる。これにより、プロトン伝導性膜の脆さが改善される。さらにオルガノポリシロキサン骨格中の構造体単位が炭素−酸素結合で架橋しないことにより、プロトン伝導性膜の耐熱性がさらに向上する。
【0019】
さらに、オルガノポリシロキサン中にケイ素−酸素結合の繰り返し単位を有することによって、オルガノポリシロキサン中の炭素−炭素結合を少なくすること、すなわち、式(1)中のmおよびmを小さくすることが好ましい。炭素−炭素結合の比率を減少することで化学安定性がさらに向上する。オルガノポリシロキサンがこのような構造をとることで、本発明のプロトン伝導性膜は柔軟性を損なわれず、柔軟性と高い化学安定性を両立することができる。
【0020】
上記の式(1)において、RはCH、C、C、C、C、OH、水素から選ばれるいずれかである。また、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかである。AはOH、CH、C、C、C、架橋に関与する−O−から選ばれるいずれかである。ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンが架橋しているため、Aのひとつ以上が架橋に関与する−O−である。架橋に関与する−O−が増えることでプロトン伝導性膜の強度が向上する。
【0021】
,mはそれぞれ1〜10であり、1〜5であることが好ましい。m,mが10を超えると化学安定性が低くなりやすい。また、同様な理由により、m,mの合計が10以下であることがより好ましい。
【0022】
nは1〜20であることが好ましい。nの値、およびm,mの値のいずれかがこの範囲を越えると、オルガノポリシロキサンの鎖長が長くなる。これにより、ポリシロキサンとの均一性が低下し、プロトン伝導性膜の脆さが改善されない。さらに、ガスがプロトン伝導性膜を透過し易くなり、3nmを超える粗大な細孔が形成されやすくなる。
【0023】
本発明のプロトン伝導性膜が含有するオルガノポリシロキサンは、Rが水素、Rがメチル基であることがより好ましく、下記の式(2)であることがさらに好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
(但し、nは1〜20の整数、AはOH、CH、C、C、C、架橋に関与する−O−から選ばれるいずれか)
【0026】
本発明のプロトン伝導性膜は、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのR、R及びA以外の炭素およびケイ素の合計比率がプロトン伝導性膜中の炭素、ケイ素及び酸素の全モル数に対して50mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることがより好ましく、20mol%以下であることが更に好ましく、10mol%以下であることが更により好ましく、5mol%以下であることが特に好ましい。
【0027】
オルガノポリシロキサンは、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのR、R及びA以外の炭素とケイ素の合計比率は、オルガノポリシロキサンの含有量の指標とすることができる。式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのR、R及びA以外の炭素とケイ素の合計比率が50mol%を超えると、プロトン伝導性膜中のオルガノポリシロキサンの割合が多くなりすぎる。そのため、プロトン伝導性膜の形状を維持することが困難になりやすい。一方、10mol%以下となるとプロトン伝導性膜の形状が安定する。さらに、5mol%以下になるとプロトン伝導性膜として、特に好ましい寸法安定性および柔軟性となる。
【0028】
一方、オルガノポリシロキサンの含有量が少ない場合はプロトン伝導性膜が脆くなりやすい。そのため、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのR、R及びA以外の炭素とケイ素の合計比率は1mol%以上であることが好ましく、2mol%以上であることがより好ましい。
【0029】
ここで、式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのR、R及びA以外の炭素とケイ素の合計比率は、例えば、29Si NMRによりケイ素−炭素の結合状態およびその割合を調べることで、オルガノポリシロキサンの主鎖中のケイ素を求めることができる。さらに、H NMR又は13C NMR若しくはその両者により炭素−水素の結合状態およびその割合を調べることで、オルガノポリシロキサン中の主鎖にある炭素を求めることができる。
【0030】
本発明のプロトン伝導性膜は、ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンを含有することが好ましく、ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンからなるプロトン伝導性シリカ膜であることがより好ましい。プロトン伝導性膜が、ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンを含むことで無機−有機ハイブリッド構造となる。これにより、膜の機械的特性、特に柔軟性が向上し、ポリシロキサン特有の脆さが改善される。これにより、割れやクラックの発生が抑制される。さらに、オルガノポリシロキサンは疎水基を有するため、メタノール等の親水性溶媒の透過を抑制することもできる。
【0031】
さらに、本発明のプロトン伝導性膜は、ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンが架橋した構造を有することが好ましい。ここで、本発明においてポリシロキサンとオルガノポリシロキサンとの架橋構造とは、オルガノポリシロキサンとポリシロキサンが少なくともひとつ以上の酸素−ケイ素結合を介して結合している構造のことをいう。ポリシロキサンとオルガノポリシロキサンが架橋構造をとることで、プロトン伝導性膜の柔軟性が向上すると共に、シロキサン骨格の収縮・再配列が抑止され、膜の脆さが改善される。これにより、寸法安定性を備えた柔軟かつ高強度な膜となる。
【0032】
なお、本発明において、ポリシロキサンとは、ケイ素−酸素結合からなる架橋構造を有する構造体であり、好ましくは、ケイ素−酸素結合からなる架橋構造を主骨格とし、かつ、主鎖および側鎖のいずれにも炭素原子を含まない骨格構造を有するケイ素化合物からなる構造体である。このように、ケイ素−炭素結合を有さないケイ素化合物をポリシロキサンの分子骨格とすることで、耐熱性、化学安定性、機械的特性および寸法安定性に優れたプロトン伝導性膜となる。
【0033】
また、本発明において、オルガノポリシロキサンとは、主鎖にケイ素−酸素結合およびケイ素−炭素結合を有する構造体であり、好ましくは、主鎖にケイ素−酸素結合およびケイ素−炭素結合、さらに、ひとつ以上の炭素−炭素結合を有するケイ素化合物からなる構造体である。ここで、オルガノポリシロキサンの主鎖とは、オルガノポリシロキサンに含まれる末端のケイ素と、他方の末端のケイ素とを直鎖状に繋ぐ結合から形成される分子骨格である。
【0034】
さらに、オルガノポリシロキサンは、炭素−酸素結合を含んでいないことが好ましい。炭素−酸素結合は熱に弱いため、これを含むとプロトン伝導性膜の耐熱性が低くなりやすい。
【0035】
本発明のプロトン伝導性膜は固定アニオン基を含有することが好ましい。固定アニオン基とは、プロトン解離性基を有した官能基であり、これを含有することにより、プロトン伝導性膜がより高いプロトン伝導性を発現する。
【0036】
本発明のプロトン伝導性膜は、含有する固定アニオン基が多いほどプロトン伝導性が向上する。そのため、固定アニオン基はプロトン伝導性膜に対して0.5meq/g以上であることが好ましく、0.6meq/g以上であることがより好ましく、0.9meq/gであることが更に好ましく、1.2meq/g以上とすることが更により好ましい。これにより、プロトン伝導性膜が0.1S/m以上の優れたプロトン伝導性を発現することができる。一方、固定アニオン基が多くなりすぎると水分を取り込んで膜が崩壊しやすくなるため、固定アニオン基量は3.0meq/g以下であることが好ましい。
【0037】
本発明のプロトン伝導性膜が含有する固定アニオン基は、下記化学式(化3)であることが好ましい。
【0038】
【化4】

【0039】
(但し、Rは直鎖アルキレン鎖、分枝アルキレン鎖、Cからなる群より選ばれた基、Xはプロトン解離性アニオン基、yは1〜5の整数、zは1〜10の整数)
【0040】
上記の式(3)において、固定アニオン基の末端にあるケイ素は3つのシロキサン結合(酸素−ケイ素結合)でプロトン伝導性膜と結合している。そのため、プロトン伝導性膜と固定アニオン基の結合が強固になり、固定アニオン基の脱離が起こり難くなる。これにより、熱水耐性や化学耐性が向上し、100℃を超える高温条件下においても高いプロトン伝導性を有する。固定アニオン基は、主にポリシロキサンに結合していることが好ましい。
【0041】
上記の式(3)において、Rは直鎖アルキレン鎖、分枝アルキレン鎖、Cおよびこれらの組合せであってもよく、直鎖アルキレン鎖であることが特に好ましい。yは1〜5が好ましく、yが5を超えた場合は固定アニオン基中の分子間隙間が大きくなる、もしくは、プロトン伝導性膜との結合が困難になりやすい。zは1〜10が好ましい。zの値はRの種類によって値が変わるため、Rが直鎖アルキレン鎖の場合にはz=1となり、Rが分枝アルキレン鎖の場合には、最大でアルキレン鎖の分枝の数となる。しかしながら、zが10を超えるとプロトン伝導性膜の親水性が顕著になるため、水を多量に含有して膜が崩壊し易くなる。Xはプロトン解離性を有する官能基であれば特に制限されないが、リン酸基、スルホン酸基であること好ましく、スルホン酸基であることが特に好ましい。そのため、上記の本発明のプロトン伝導性膜が含有する固定アニオン基は、Rがメチレン基、Xがスルホン酸基であることが好ましく、化学式(式(4))であることが特に好ましい。
【0042】
【化5】

【0043】
本発明のプロトン伝導性膜は、固定アニオン基がポリシロキサンと強固に結合しているため、高い熱水耐性を有し、例えば、120℃、48時間の煮沸による熱水処理後においても、熱水処理前の80%以上、好ましくは90%以上の固定アニオン基が残存し、熱水条件下においても高いプロトン伝導性を維持することができる。
【0044】
本発明のプロトン伝導性膜は、最頻細孔径が1.5nm以上3nm以下であることが好ましい。これにより、水や固定アニオン基を介したプロトン移動が容易になり、100℃以上の高温及び低加湿条件においてプロトン伝導度が高くなりやすい。プロトン移動が容易になる理由は必ずしも明らかではない。しかしながら、細孔の最頻細孔径が1.5nm以上3nm以下とすることで細孔内部での水の保持が容易になるためと考えられる。
【0045】
細孔内部には、表面シラノール基の影響を強く受ける状態の水、その影響は小さく、むしろ水分子同士の相互作用の影響を受ける状態の水、フリーの状態の水、の3つのタイプの水が存在していると考えられる。最頻細孔径が3nmを越えた場合には、シラノール基との相互作用や水分子同士の相互作用が弱くなり、最頻細孔径が1.5nm未満ではシラノール基との相互作用が強まると共に水分子同士が強い相互作用を及ぼす状態になり、いずれも不安定な状態の水となり、細孔内部に水を保持する能力が小さくなると考えられる。一方、最頻細孔径が1.5nm以上3nm以下では、細孔内部に水を安定に留まらせるに適したシラノール基との相互作用及び水分子同士の相互作用が発現し、100℃を越える温度でも安定に水が保持できるものと考えられる。
【0046】
本発明のプロトン伝導性膜の細孔の構造は、3次元的に規則性を持って配列した連続細孔であることが好ましい。これにより、プロトン伝導を促進する水チャンネルが形成されやすくなる。
【0047】
本発明のプロトン伝導性膜は、水を保持する能力が特に優れているため、高いプロトン電導性を有し、特に低湿度の状態、例えば30〜40RH%(相対湿度30%〜40%)においても、高いプロトン伝導性を示すことができる。
【0048】
本発明における最頻細孔径とは、窒素ガス吸着法によって求めた吸脱着等温曲線から算出される細孔分布曲線をプロットして求めた細孔直径の値、または小角X線散乱測定で得られる細孔径の値である。例えば、最頻細孔径が1.5nm〜3nmの場合、小角X線散乱測定では2θが2°未満のところに最大のピークが観測される。
【0049】
本発明のプロトン伝導性膜の膜厚は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、80μm以上150μm以下であることがより好ましく、50μm以上150μm以下であることが更に好ましく、50μm以上120μm以下であることが更により好ましい。膜厚がこの範囲で厚くなることで強度が高くなるため、クラック等が入りにくい膜となる。
【0050】
次に、本発明のプロトン伝導性膜の製造方法について説明する。
【0051】
本発明のプロトン伝導性膜は、少なくとも下記の式(5)の構造を有するオルガノポリシロキサンの前駆体を原料として用いる方法が好ましい。
【0052】
【化6】

【0053】
(BはOR又はRであり(R;アルキル基)、RはCH、C、C、C、C、OH、Hらなる群より選ばれた基、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかより選ばれた基、mおよびmは1〜10の整数、nは1〜20の整数)
【0054】
式(5)は、構造のそれぞれの末端に架橋性アルコキシランのアルコキシシリル基を少なくとも一つ以上有し、オルガノポリシロキサンの前駆体とすることができる。また、式(5)において、Bはそれぞれ異なっていてもよく、少なくともひとつ以上のBがORであることが好ましく、両末端のBのひとつ以上がORであることがより好ましい。好ましいオルガノポリシロキサンの前駆体として、下記の式(6)を例示することができる。
【0055】
【化7】

【0056】
(BはOR又はRであり(R;アルキル基)、nは1〜20の整数)
【0057】
式(5)の構造を有するオルガノポリシロキサン前駆体は、ヒドロシリル化反応により製造することがより好ましく、SiH基を有する水素化ケイ素化合物(以下、単に「水素化ケイ素化合物」とする)とビニルシランとを触媒の存在下で反応させることで製造することがより好ましい。
【0058】
オルガノポリシロキサン前駆体は、ヒドロシリル化反応により製造する場合、水素化ケイ素化合物とビニルシランを原料として使用することが好ましい。
【0059】
水素化ケイ素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン等のポリジメチル水素シロキサン、1,1,3,3−テトラエチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタエチルテトラシロキサン等のポリジエチル水素シロキサン、1,1,3,3−テトラプロピルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタプロピルテトラシロキサン等のポリジプロピル水素シロキサン、1,1,3,3−テトラブチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサブチルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタブチルテトラシロキサン等のポリジブチル水素シロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニルトリシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニルテトラシロキサン等のポリジフェニル水素シロキサンのいずれか一種以上を挙げることができる。これらの水素化ケイ素化合物の中でも、ポリジメチル水素シロキサンを使用することが簡便であるため好ましい。
【0060】
ビニルシランとしては、ジメチルメトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジエチルメトキシビニルシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエチルエトキシビニルシラン又はジエトキシエチルビニルシラン等のいずれか一種以上であることが好ましい。トリエトキシビニルシラン又はジメチルエトキシビニルシラン若しくはその両者であることがより好ましい。
【0061】
なお、水素化ケイ素化合物及びビニルシランの原料は、反応に関与しない溶媒を用いて希釈した状態で使用してもよい。反応に関与しない溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の不活性溶媒を挙げることができる。これらの溶媒の使用量は目的とする原料濃度に合わせて適宜調整すればよい。
【0062】
触媒としては、白金−カーボン担持触媒、白金−アルミナ担持触媒、塩化白金酸、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とシクロビニルメチルシロキサンとの錯体、ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)−白金(II)等の白金触媒、ロジウム−カーボン担持触媒又はクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等のロジウム触媒が挙げられる。これらの触媒を使用することで、オルガノポリシロキサン前駆体を高い収率で得ることができる。
【0063】
さらに、好ましい触媒として、白金−カーボン担持触媒又は白金−アルミナ担持触媒を挙げることができる。白金−カーボン担持触媒又は白金−アルミナ担持触媒は反応終了後、反応液から容易に触媒を分離可能である。そのため、反応終了後のオルガノポリシロキサン前駆体中に残存する触媒量を低減できる。これにより、オルガノポリシロキサン前駆体の保存劣化が抑制できる。
【0064】
触媒の使用量は、水素化ケイ素化合物に対して0.01mol%以上5mol%以下であることが好ましく、0.05mol%以上1mol%以下であることがより好ましい。
【0065】
水素化ケイ素化合物に対して、0.01mol%以上とすることで反応が進行しやすくなり、工業的にも有利となりやすい。一方、水素化ケイ素化合物に対して、5mol%以下であれば副反応が抑制でき、ヒドロシリル化反応の反応選択率が高くなる。これにより、オルガノポリシロキサン前駆体の収率が高くなりやすい。触媒の使用量をこの範囲とすることで、高収率でオルガノポリシロキサン前駆体を製造することができる。
【0066】
オルガノポリシロキサン前駆体を製造する際の反応温度は、室温以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。反応温度を室温以上とすることで、反応速度が実用的な速度になる。また、反応速度を100℃以下とすることで、ヒドロシリル化反応の選択性が向上するだけでなく、β位でのヒドロシリル化反応の位置選択性が向上する。
【0067】
水素化ケイ素化合物とビニルシランの反応方法は、その反応が進行する方法であれば限定されない。好ましい反応方法として、水素化ケイ素化合物とビニルシランとの混合物中に触媒を混合する方法、触媒と水素化ケイ素化合物との混合物中にビニリシランを滴下する方法、又は触媒とビニルシランとの混合物中に水素化ケイ素化合物を滴下する方法を挙げることができる。
【0068】
なお、ヒドロシリル化反応によりオルガノポリシロキサン前駆体を製造する場合、ビニルシランのビニル基がシリル化される位置によって、オルガノポリシロキサン前駆体は3種類の構造異性体が得られる。
【0069】
上記の式(6)に示されるオルガノポリシロキサン前駆体は、ビニルシラン化合物のビニル基のβ,β’位が水素化ケイ素化合物によりシリル化された構造のオルガノポリシロキサン前駆体(以下、「β,β’−付加体」とする)である。
【0070】
ヒドロシリル化反応では、β,β’−付加体に加えて、α,β’位でシリル化されたオルガノポリシロキサン前駆体(以下、「α,β’−付加体」とする)、α、α’位でシリル化されたオルガノポリシロキサン前駆体(以下、「α,α’−付加体」とする)が得られる。
【0071】
オルガノポリシロキサン前駆体の構造異性体の比率は特に限定するものではない。得られるプロトン伝導性膜がより高い柔軟性を有するため、これらの構造異性体のうちβ、β’−付加体の含有比率が高いほうが好ましい。
【0072】
本発明のプルトン伝導性膜は、上記のオルガノポリシロキサン前駆体を使用して製造することが好ましい。より好ましい製造方法としては、例えば、ゾル−ゲル法を挙げることができる。
【0073】
ゾル−ゲル法により本発明のプロトン伝導性膜を製造する場合、原料として上記のオルガノポリシロキサン前駆体、ケイ素のアルコキシド、固定アニオン基前駆体および界面活性剤を加えたゾルを調製する。
【0074】
ケイ素のアルコキシドとして、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランを例示することができる。
【0075】
固定アニオン基前駆体として、トリエトキシメルカプトシランやトリメトキシメルカプトシランを例示することができる。
【0076】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンセチルエーテルやポリエチレン−ポリプロピレン−トリブロックコポリマー、陽イオン界面活性剤のセチルトリエチルアンモニウムブロマイドが例示される。これらの界面活性剤は、3次元的に自己集積するため、これらの界面活性剤を反応時に添加し、合成後に除去することで、3次元的に規則性を持って配列した連続細孔を持つ形状の膜を得ることができる。
【0077】
これらの原料を酸触媒存在下で加水分解を行い、得られたゾルを膜状にして乾燥後、加熱によって加水分解を促進した後、界面活性剤を除去する。界面活性剤を除去することにより、最頻細孔径が1.5〜3nmの細孔を形成させることができる。界面活性剤を除去する方法としては、形成させた細孔の規則性を保持した状態で除去することができればいかなる方法でも良く、例えば、加熱処理、溶媒抽出、酸溶解によって界面活性剤を除去する方法が例示できる。
【0078】
このような方法により、自立膜としてプロトン伝導性膜を得ることができる。
【発明の効果】
【0079】
本発明のプロトン伝導性膜は、耐熱性、化学安定性、機械的特性および寸法安定性を備えるため、広範囲の温度、湿度変化においてもクラック、変形などが発生しない。さらに、水の保持能力が極めて優れているため、100℃を越える温度や低湿度においても高いプロトン伝導性を安定に発現する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】オルガノポリシロキサン前駆体のH NMR測定結果(実施例1)
【図2】オルガノポリシロキサン前駆体の29Si NMRの測定結果(実施例1)
【図3】オルガノポリシロキサン導入シリカ膜の29Si CP/MS NMRの測定結果(実施例1)
【図4】オルガノポリシロキサン導入シリカ膜の13C CP/MS NMRの結果(実施例1)
【図5】オルガノポリシロキサン導入シリカ膜のH CP/MS NMRの結果(実施例1)
【図6】熱水耐性評価前のプロトン伝導性膜の表面状態のSEM像(実施例1)
【図7】熱水耐性評価後のプロトン伝導性膜の表面状態のSEM像(実施例1)
【図8】プロトン伝導性膜の小角X線回折パターン(実施例1)
【図9】プロトン伝導性膜の低角X線回折パターン(実施例1)
【図10】C16EO10を用いて合成された3次元的に規則性を持って配列した細孔を有するシリカ材料のX線回折パターン(参考文献1)
【図11】実施例1のプロトン伝導性膜を使用した発電試験の結果 (○:80℃,88RT%、●:120℃,41RT%)
【図12】Nafion112(比較例1)を使用した発電試験の結果 (○:80℃,88RT%、●:120℃,41RT%)
【図13】120℃,30RT%におけるプロトン伝導性膜を使用したガス透過試験の結果(○:実施例2,●:実施例4)
【図14】80℃,88RT%におけるプロトン伝導性膜を使用した発電試験の結果 (○:実施例2,□:実施例4,●:比較例1)
【図15】120℃,41RT%におけるプロトン伝導性膜を使用した発電試験の結果(●:実施例4,□:比較例1)
【図16】オルガノポリシロキサン前駆体のガスクロマトグラフ(実施例9)
【実施例】
【0081】
以下、実施例において本発明の具体例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
(ガスクロマトグラフの測定)
合成後のオルガノポリシロキサン前駆体について、ガスクロマトグラフィーを評価した。測定装置にはGC−2014(島津製作所製)を用いた。また、測定条件は以下の様にした。
【0083】
カラム:キャピラリーカラムDB−5(0.25mmφ×30m、
膜厚0.25μm;J&W Scientific社製)
検出器:FID
カラムオーブン:50℃から300℃まで10℃/分で昇温した
希釈溶剤:ヘプタン又はヘキサン
内部標準物質:ドデカン
【0084】
(オルガノポリシロキサン前駆体の収率)
ガスクロマトフィーにより得られたピーク面積から、ビニルシラン反応率の指標となるビニルシランの転化率(以下、「ビニルシラン転化率」とする)、ヒドロシリル化反応の選択率(以下、「ヒドロシリル化選択率」とする)を求め、これらからオルガノポリシロキサン前駆体の収率を求めた。
【0085】
ビニルシラン転化率(%)は、反応後のビニルシランのピーク面積を基に内部標準(内部標準物質;ドデカン)法により定量した。一方、ヒドロシリル化選択率及び収率は、以下の式により求めた。なお、ヒドロシリル化選択率における原料のピーク面積には、原料及びそれに含まれる不純物のピーク面積を含んだ値である。
【0086】
(ヒドロシリル化選択率;%)=(オルガノポリシロキサン前駆体のピーク面積)
/{(合計ピーク面積)−(原料のピーク面積)}×100
(オルガノポリシロキサン前駆体の収率;%)
=(ビニルシランの転化率)×(ヒドロシリル化選択率)/100
【0087】
(オルガノポリシロキサン前駆体の評価)
ガスクロマトフィーにより得られたピーク面積から、オルガノポリシロキサン前駆体の各構造異性体の割合を、以下の様に求めた。
【0088】
(各構造異性体の割合;%)=(各構造異性体のピーク面積)
/(オルガノポリシロキサン前駆体のピーク面積)×100
【0089】
(固定アニオン基の定量)
プロトン伝導性膜を乳鉢で粉砕後、150℃で1時間乾燥して粉砕物を得た。得られた粉砕物0.1gに0.5mol/Lの塩化ナトリウム水溶液20mlを加え、1時間攪拌した後、フェノールフタレインを指示薬として、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、スルホン酸基量を算出し、固定アニオン基量(meq/g)を求めた。
【0090】
(プロトン伝導性膜の細孔評価)
プロトン伝導性膜の細孔はBET比表面積測定、透過X線小角散乱法測定及び低角X線回折測定で評価した。細孔の有無をBET比表面積測定で評価し、プロトン伝導性膜の細孔径を透過X線小角散乱法測定で評価し、細孔の規則性を低角X線回折測定により評価した。
【0091】
BET比表面積測定は、流動式比表面積自動測定装置(Micromeritics FlowSorb III)で行った。測定はN吸着1点法、N相耐圧を0.3として行った。なお、試料は、測定前にNガス気流下において150℃で1時間処理した。
【0092】
透過X線小角散乱法測定は、スペクトリス製X’Pert PRO MPD小角散乱測定装置にて、CuKαをX線源として測定を行った。出力45kV−40mA、ステップ幅は0.1deg.、発散スリット 1/32deg.、受光スリット0.05mmで、計測時間は100秒とした。得られた散乱強度プロファイルから細孔径を評価した。
【0093】
低角X線回折測定は、マックサイエンス製X線回折測定装置MXP3HFにて、CuKαをX線源として測定を行った。出力40kV−30mA、発散スリット0.5deg.、散乱スリット0.5deg.、受光スリット0.15mmとした。得られた回折ピークのプロファイルから細孔形状を評価した。
【0094】
(プロトン伝導性膜の熱水耐性の評価)
密閉可能なテフロン(登録商標)容器にプロトン伝導性膜0.1gと水30gを入れて、120℃で48時間加熱した。加熱前後のプロトン伝導性膜の固定アニオン基を定量し、熱水耐性を評価した。
【0095】
(プロトン伝導度の測定)
得られたプロトン伝導性膜の片面に、間隔を空けて4ヶ所金蒸着を行い、金電極として配置した。各電極に銀ペーストを使って白金リード線を取り付け、プロトン伝導度測定試料とした。これを、所定の温度および湿度に設定した恒温槽内で1時間保持した後、交流インピーダンス法によるプロトン伝導度測定を行った。
【0096】
測定は、周波数10mHz〜10MHzの範囲、印加電圧5〜200mVの範囲で、測定する電極を変えて電極間距離が異なる状態でのサンプルのインピーダンスを測定し、電極間距離とプロトン伝導性膜に由来する抵抗成分をグラフにプロットし、グラフの傾きからプロトン伝導度を算出した。
【0097】
(強度の評価)
プロトン伝導性膜の機械的特性評価として引張り強度を測定した。測定は、室温、大気中で1分間に50mmの速度でサンプルを引張り、サンプルが破断した際の荷重を記録し、これをサンプルの断面積で除した値を引張り強度とした。
【0098】
また、プロトン伝導性膜の曲げ強度を定性的に評価した。評価基準は次のとおりである。
【0099】
◎ … 曲げ可能、柔軟性優れる
○ … 曲げ可能、柔軟性有り
△ … 曲げ可能、柔軟性乏しい
× … 曲げ不可能
【0100】
(MEA、測定セルの作製)
発電試験およびガス透過測定に使用したMEAおよび測定セルを以下の様に作製した。
【0101】
40×40mm角のプロトン伝導性膜に5cm(正方形)の市販触媒電極を乗せ、温度150℃、圧力30kgf/cmで1分間1軸プレスしてMEAを作製した。市販電極の性状は下記のとおりである。
【0102】
市販電極:E−Tek社製−LT120ENS1
触媒:30wt% Pt/C
アイオノマー:ナフィオン
ガス拡散層:カーボンペーパー
サイズ:22.5mm×22.5mm×155μm
【0103】
作製したMEAを、JARI標準セル(日本自動車研究所)に4N・mのトルク圧で組み込み、測定セルを作製した。なお、ガスケットには150μmのポリエチレンナフタレートを用いた。
【0104】
(ガス透過測定)
測定セルをガス透過評価装置に組み込み、温度80℃,湿度30〜88%RH、および温度120℃,湿度30〜41%RHの条件でそれぞれ水素ガス透過性を評価した。測定は、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が推奨する手法に準じて実施した。なお、設定温度までは10℃/minで昇温・加湿した。
【0105】
(発電試験)
発電試験は、電流(I)負荷を変えてセル電圧(V)を測定する方法(I−V特性評価)で行い、負荷電流を設定後、一定時間放置後の定常値を記録する準定常法とした。
【0106】
なお、測定は大気開放系(常圧)で、アノードとカソードには水素ガスおよび酸素ガスをそれぞれ50ml/minで流した。放置時間は1分、次の1〜2分間の平均電圧をセル電圧として記録した。
【0107】
測定条件は、80℃,88%RH/露点77℃、および120℃,41%RH/露点94℃とした。
【0108】
実施例1
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
下記の式(7)の構造のH末端ポリジメチルシロキサン(数平均分子量500,n=5,商品名DMS−H03,Gelest社;以下、「DMSH03」とする)11.25g、トリエトキシビニルシラン(東京化成工業社製、試薬一級;以下、「TEVS」とする)9.52g、塩化白金酸6水和物(キシダ化学)0.26gを300mlのセパラブルフラスコに入れ、窒素気流下、70℃で2時間攪拌した。室温まで冷却後、窒素気流下で目開き0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターでろ過して固相を除去し、オルガノポリシロキサン前駆体を得た。
【0109】
【化8】

【0110】
H NMRおよび29Si NMRにより、得られたオルガノポリシロキサン前駆体はポリジメチルシロキサンの両末端に−CH−CH−結合を介して、トリエトキシシリル基が結合した化合物であることを確認した。H NMRの結果を図1に、29Si NMRの結果を図2にそれぞれ示した。
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体4.58g、テトラエトキシシラン(KBE−04、信越化学工業社製;以下、「TEOS」とする)4.17g、ポリオキシエチレンセチルエーテルのC1633(OCHCH10OH(以下、C16EO10と表記する;アルドリッチ製、Brij56)1.54gを300mlのセパラブルフラスコに入れ、15分間攪拌した。
【0111】
次に、エタノール(キシダ化学社製、試薬特級)1.07g、水1.82g、35%塩酸(キシダ化学社製、試薬特級)0.03gを混合調製した溶液を加えて、15分間攪拌した。攪拌後、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業社製試薬;以下、「MPES」とする)1.13gを加え、さらに30分間攪拌した。さらに、N−メチルピロリドン(東京化成工業社製、試薬特級)1.24gを加えて1時間攪拌した後、35%過酸化水素水(キシダ化学社製、試薬特級)0.77gを加えて1時間攪拌した。なお、上記反応は全て窒素気流下、30℃で行った。
【0112】
得られた原料ゾルの粘度を振動式粘度計で測定したところ、33mPa・s(22℃)であった。
【0113】
(プロトン伝導性膜の合成)
原料ゾル8mLを、テフロン(登録商標)製薄板上に170×170mm角に展開し大気中、室温で30分間放置してゲル化させた後、テフロン(登録商標)基板から剥離して、厚さ130μmの柔軟性のあるゲル状薄膜を得た。
【0114】
ゲル状薄膜を50×50mm角に切り出し、200℃で6時間、加熱処理した。加熱後の薄膜は44×44mm角で膜厚は115μmであった。
【0115】
得られた薄膜は、60%硝酸(キシダ化学社製、試薬特級)と35%過酸化水素水(キシダ化学社製、試薬特級)を重量比で1:1の割合で混合した混合溶液に浸漬して室温で4日間静置することによって、原料ゾル調製時に加えたC16EO10由来の成分を除去して細孔を形成させた。なお、浸漬時は薄膜と混合溶液を重量比で1:100とした。浸漬後、混合溶液から薄膜を取り出し、洗浄液のpHが6になるまで水洗を行い、50℃で乾燥して、オルガノポリシロキサンを20mol%を含有するプロトン伝導性膜を自立膜として得た。
【0116】
得られたプロトン伝導性膜の表面にはクラックや割れは発生しておらず、加熱後の状態を保持し、形状安定性に優れていることを確認した。
【0117】
なお、プロトン伝導性膜が含有する固定アニオン基は、原料にMPESを使用しているため、MPESのメルカプト基がスルホン酸基に変換されており、式(3)においてm=3、Xがスルホン酸基の固定アニオン基であった。また、29Si−NMR測定により、固定アニオン基中のSiは全てケイ素−酸素結合を形成していることを確認した。これにより、固定アニオン基(スルホン酸基)がポリシロキサンに強固に結合していることが分かった。
【0118】
また、29Si CP/MS NMR、13C CP/MS NMR、H CP/MS NMRの測定から、オルガノポリシロキサン前駆体の各構成成分に帰属されるスペクトルが確認できた。これらの結果から、得られたプロトン伝導性膜は、式(1)に示した構造体のオルガノポリシロキサンを含んでいることが分かった。29Si CP/MS NMRの結果を図3に、13C CP/MS NMRの結果を図4に、H CP/MS NMRの結果を図5にそれぞれ示した。
【0119】
(熱水耐性)
次に、得られたプロトン伝導性膜の熱水耐性の評価を行った。図6に熱水耐性評価前のプロトン伝導性膜の表面状態のSEM像を、図7に熱水耐性評価後のプロトン伝導性膜の表面状態のSEM像をそれぞれ示した。
【0120】
熱水耐性評価前後とも割れやクラックが認められなかった。また、熱水耐性評価前のプロトン伝導性膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は1.5meq/g、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は1.4meq/gで、熱水耐性評価前の93%のスルホン酸基量を保持し、熱水処理によるスルホン酸基の脱離がほとんどないことが分かった。合成したプロトン伝導性膜は、耐熱性、化学安定性に優れていることが分かった。
【0121】
(細孔の測定)
次に、得られたプロトン伝導性膜の細孔評価を行った。小角X線散乱パターン、低角X線回折パターンの結果をそれぞれ図8、図9に示した。
【0122】
小角X線散乱測定から、周期的構造に由来する2θが3.5°付近で散乱ピークが認められ、最頻細孔径が2〜3nmであることがわかった。また、低角X線回折測定の結果、本発明のプロトン伝導性膜は、Dongyuan Zhao et.al.,J.Am.Chem.Soc.,120,6024−6036(1998)(以下、参考文献1)と同様なX線回折パターンであった。参考文献1に記載されたX線回折パターンは、C16EO10を用いて合成した3次元的に規則性を持って配列した細孔を有するシリカ材料のものであり、本発明のプロトン伝導性膜の細孔が3次元的に規則性を持って配列していることを確認した。参考文献1に記載されたX線回折パターンを図10に示した。
【0123】
なお、水銀ポロシメーター測定により、得られたプロトン伝導性膜は1μmを超える細孔を有していないことが確認できた。
【0124】
(プロトン伝導度)
熱水耐性評価前後のプロトン伝導性膜の80℃,90%RHにおけるプロトン伝導度を測定した。
【0125】
熱水耐性評価前は0.14S/cm、熱水評価後は0.13S/cmであった。熱水耐性評価後のプロトン伝導度の低下は僅か7%で、本発明のプロトン伝導性膜は熱水処理後においても高いプロトン伝導性を維持していた。
【0126】
(機械的強度)
プロトン伝導性膜の引張り強度を評価した結果、250kg/cmであった。ポリシロキサンがオルガノポリシロキサンとの架橋構造を有ることで高い強度と柔軟性を有することを確認した。
【0127】
また、得られたプロトン伝導性自立膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。
【0128】
(ガス透過性および発電特性)
合成したプロトン伝導性膜を評価セルに組込み、ガス透過性を評価した。本発明のプロトン伝導性膜は、120℃の高温、および30RH%の低湿度の条件下においても水素透過係数が10−9 cm cm cm−2−1 cmHg−1オーダーと低い値を示した。これにより、本発明のプロトン伝導性膜は燃料電池の電解質として十分なガスバリア性を有していることが確認できた。結果を表1に示した。
【0129】
【表1】

【0130】
次に、本発明のプロトン伝導性膜を使用して発電試験を行った。結果を図11に示した。
【0131】
本発明のプロトン電導性膜は80℃,88%RH、120℃,41%RHのいずれの条件においても良好な発電特性を示し、現行の燃料電池の作動条件だけでなく、高温かつ低湿度の条件でも作動できることを確認した。
【0132】
発電試験後、測定セルを解体してプロトン伝導性膜の状態を確認した。本発明のプロトン伝導膜は、形状変化やクラックは認められず、測定セルへ組込む前の状態を保持していた。
【0133】
比較例1
本発明のプロトン伝導性膜の代わりに、フッ素系樹脂膜であるNafion(登録商標)膜を用いた以外は実施例1と同様な方法で測定セルを作製し、発電試験を行なった。使用したNafion(登録商標)膜(Nafion(登録商標)112)の物性は下記のとおりである。
【0134】
スルホン酸基量:0.97meq/g
膜厚:50μm
【0135】
結果を図12に示した。
【0136】
Nafion(登録商標)膜は、80℃,88%RHでは本発明のプロトン伝導体と同等の性能を示したが、120℃,41%RHでは、小電流負荷で大幅な電圧低下が起こり、発電できなかった。
【0137】
さらに、発電試験後、測定セルを解体してNafion(登録商標)膜の状態を確認した。Nafion(登録商標)膜は膨潤し、さらに破損が発生しており、形状が変化していた。
【0138】
実施例2
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
原料としてDMSH03を257.8g、TEVSを190.3g(1.0mol)使用し、ヒドロシリル化触媒として白金−アルミナ(Pt5重量%;和光純薬工業社製、試薬一級)1.95g(白金換算で0.5mmol)を使用した。触媒を混合した後の原料に添加し、窒素雰囲気下、攪拌状態で50℃まで昇温した後、50℃で24時間反応させた。
【0139】
反応終了後、反応溶液を室温まで放冷し、目開き0.1μmのテフロン(登録商標)製メンブランフィルターでろ過した触媒を含む固相を除去して、オルガノポリシロキサン前駆体(DMSH03−TEVS)を得た。
【0140】
得られたオルガノポリシロキサン前駆体をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TEVSの転化率(ビニルシラン転化率)は98.7%、ヒドロシリル化選択率は97.3%であった。これより求められるオルガノポリシロキサン前駆体の収率は96.0%であった。
【0141】
また、得られたオルガノポリシロキサン前駆体はβ,β’−付加体が70.4%、α,β’−付加体が27.0%及びα,α‘−付加体が2.5%であった。
【0142】
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体18.96g、TEOS16.66gを250mlのテフロン(登録商標)製容器に入れて15分間攪拌した。そこに、エタノール15.83g、水27.01g、35%塩酸0.40gを混合調製した溶液を加えて15分間攪拌した。
【0143】
攪拌後、C16EO10を23.62g加えて、15分間攪拌した。攪拌後、MPES67.77gを加え、さらに30分間攪拌した。さらに、次にN−メチルピロリドン19.04gを加えて1時間攪拌した後、35%過酸化水素水11.20gを加えて1時間攪拌した。なお、上記反応は全て室温(22℃〜25℃)条件下で、なおかつ、容器を密閉して行った。
【0144】
得られた原料ゾルの粘度は15mPa・s(22℃)であった。
【0145】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間としたこと、及び、60%硝酸と35%過酸化水素水との混合溶液への浸漬を5日間とした以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを20mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0146】
得られたプロトン伝導性膜は、厚さ110μmの自立膜であった。得られたプロトン伝導性自立膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。プロトン伝導性自立膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.63meq/gであった。
【0147】
交流インピーダンス法によるプロトン伝導度測定の結果、80℃、90%RHで、0.11S/cmであった。低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻細孔径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。
【0148】
(ガス透過性および発電特性)
得られたプロトン伝導性膜を評価セルに組込み、ガス透過性を評価した。120℃の高温、および30RH%の低湿度の条件下においても水素透過係数が10−9 cm cm cm−2−1 cmHg−1オーダーと低い値を示し、高温低湿度環境においても十分なガスバリア性を有していることが確認できた。結果を図13に示した。
【0149】
次に、80℃,88%RHでの発電試験を行った。結果を図14に示した。合成したプロトン電導性膜は80℃,88%RHで良好な発電特性を示した。
【0150】
実施例3
(原料ゾルの合成)
実施例2で得られたオルガノポリシロキサン前駆体を14.22gとしたこと、TEOSを17.71gとしたこと、及び、MPESを37.48gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0151】
得られた原料ゾルの粘度は13mPa・s(22℃)であった。
【0152】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間としたこと、及び、60%硝酸と35%過酸化水素水との混合溶液への浸漬を5日間とした以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを15mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0153】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。
【0154】
プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は18m/gであり、細孔を形成していることが分かった。また、スルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.64meq./gであった。
【0155】
熱水耐性を調べた結果、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.34meq./gで、熱水耐性評価前の53%のスルホン酸基を保持していた。
【0156】
低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。
【0157】
実施例4
(原料ゾルの合成)
実施例2で得られたオルガノポリシロキサン前駆体を4.74gとしたこと、TEOSを19.79gをとしたこと、及び、MPESを22.08gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0158】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0159】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル状薄膜の60×60mm角に切り出して加熱処理を250℃で48時間としたこと、及び、60%硝酸と35%過酸化水素水との混合溶液への浸漬を5日間とした以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを5mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0160】
得られたプロトン伝導性膜は厚さ102μmの自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。
【0161】
プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は350m/gで、細孔が形成されていることが分かった。
【0162】
スルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.91meq./gであった。交流インピーダンス法によるプロトン伝導度測定の結果、80℃、90%RHで、0.13S/cmであった。
【0163】
熱水耐性を調べた結果、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.42meq/gで、熱水耐性評価前の46%のスルホン酸基を保持していた。
【0164】
(ガス透過性および発電特性)
得られたプロトン伝導性膜を評価セルに組込み、ガス透過性を評価した。120℃の高温、および30RH%の低湿度の条件下においても水素透過係数が10−9 cm cm cm−2−1 cmHg−1オーダーと低い値を示し、高温低湿度環境においても十分なガスバリア性を有していることが確認できた。結果を図13に示した。
次に、80℃,88%RHでの発電試験を行った。結果を図14に示した。合成したプロトン電導性膜は80℃,88%RHで良好な発電特性を示した。
【0165】
更に、120℃,41%RHでの発電試験を行った。高温かつ低湿度の条件でも作動できることを確認した。結果を図15に示した。
【0166】
なお、ここでの発電試験において、プロトン伝導性膜に関しては、膜と同成分のイオノマーを用いた触媒電極を使用した。
【0167】
実施例5
(原料ゾルの合成)
実施例2で得られたオルガノポリシロキサン前駆体を2.31gとしたこと、TEOSを9.89gをとしたこと、及び、MPESを5.52gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0168】
得られた原料ゾルの粘度は13mPa・s(22℃)であった。
【0169】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル状薄膜の60×60mm角に切り出して加熱処理を250℃で48時間としたこと、及び、60%硝酸と35%過酸化水素水との混合溶液への浸漬を5日間とした以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサン前駆体を5mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0170】
得られたプロトン伝導性膜は、厚さ80μmの自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。
【0171】
プロトン伝導性膜のBET比表面積は349m/gであり、細孔を形成していることが分かった。低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。また、スルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.56meq./gであった。交流インピーダンス法によるプロトン伝導度測定の結果、80℃、90%RHで、0.10S/cmであった。
【0172】
熱水耐性を調べた結果、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.33meq/gで、熱水耐性評価前の59%のスルホン酸基を保持していた。
【0173】
実施例6
(原料ゾルの合成)
実施例2で得られたオルガノポリシロキサン前駆体を4.62gとしたこと、TEOSを19.78gとしたこと、及び、MPESを15.46gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0174】
得られた原料ゾルの粘度は22mPa・s(22℃)であった。
【0175】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル化の放置時間を120分としたこと、ゲル状薄膜を60×60mm角に切り出し、250℃で48時間加熱処理したこと以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサン5mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0176】
得られたプロトン伝導性膜は、厚さ80μmの自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は36m/gで、細孔を形成していることが分かった。スルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.60meq/gで、交流インピーダンス法によるプロトン伝導度測定の結果、80℃、90%RHで、0.10S/cmであった。
【0177】
熱水耐性を調べた結果、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.52meq/gで、熱水耐性評価前の87%のスルホン酸基を保持していた。熱水耐性評価後のプロトン伝導度は、0.09S/cmで、処理前に対して90%のプロトン伝導度を保持していた。
【0178】
実施例7
ゲル状薄膜の加熱処理を120時間とした以外は実施例6と同様な方法により、オルガノポリシロキサン5mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0179】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。BET比表面積は267m/gであり、細孔を形成していることが分かった。低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。
スルホン酸基量は0.66meq/gで、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量は0.58meq/gで、熱水耐性評価前の88%のスルホン酸基を保持していた。
【0180】
実施例8
ゲル状薄膜の加熱処理を270℃、48時間とした以外は実施例6と同様な方法により、オルガノポリシロキサン5mol%を含有するプロトン伝導性膜を合成した。
【0181】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。BET比表面積は350m/gであり、細孔を形成していることが分かった。低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。
スルホン酸基量は0.70meq/gで、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量は0.63meq/gで、熱水耐性評価前の90%のスルホン酸基を保持していた。
【0182】
実施例9
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
原料として1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(和光純薬工業社製;以下、「TMDS」とする)134.3g(1.0mol)、TEVSを380.6g(2.0mol)使用したこと、ヒドロシリル化触媒として白金−アルミナ(Pt5重量%)3.9g(白金換算で1.0ミリモル)を使用したこと、及び、昇温した後の反応時間を8時間としたこと以外は実施例2と同様な方法でオルガノポリシロキサン前駆体を合成した。
【0183】
得られたオルガノポリシロキサン前駆体をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TEVSの転化率(ビニルシラン転化率)は97.9%、ヒドリシリル化選択率は96.6%であった。これより求められるオルガノポリシロキサン前駆体の収率は94.6%であった。
【0184】
また、得られたオルガノポリシロキサン前駆体は、β,β’−付加体(1,3−ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン)が76.8%、α,β−付加体(1−メチルトリエトキシシリルメチル−3−トリエトキシシリルエチルテトラメチルジシロキサン)が20.3%、及びα,α’−付加体(1,3−ビス(メチルトリエトキシシリルメチル)テトラジシロキサン)が2.9%であった。
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体1.37gを使用したこと、TEOSを9.89gとしたこと、及び、MPESを4.43gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0185】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0186】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを使用したこと、ゲル化の放置時間を240分としたこと、及びゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間としたこと以外は実施例1と同様な方法により、オルガノポリシロキサン5mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0187】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は533m/gで細孔を形成していることが分かった。スルホン酸基量は1.00meq/gであった。
【0188】
実施例10
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
原料として1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン(Gelest社製)208.5g(1.0mol)、TEVS380.6g(2.0mol)を使用したこと、ヒドロシリル化触媒として白金−アルミナ(Pt5重量%)3.9g(白金換算で1.0ミリモル)を添加したこと、及び昇温後の反応時間を5時間とした以外は実施例2と同様な方法でオルガノポリシロキサン前駆体を得た。
【0189】
得られたオルガノポリシロキサン前駆体をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TEVSの転化率(ビニルシラン転化率)は98.6%であり、ヒドリシリル化選択率は95.6%であった。これより求められるオルガノポリシロキサン前駆体の収率は94.3%であった。
【0190】
また、得られたオルガノポリシロキサン前駆体は、β,β’−付加体が63.8%、α,β’−付加体が28.3%、及びα,α’−付加体が2.9%であった。
【0191】
次に、オルガノポリシロキサンを5mol%含むプロトン伝導性膜を下記方法により合成した。
【0192】
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体1.56gを使用したこと、TEOSを9.89gとしたこと、及び、MPESを4.65gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0193】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0194】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを使用したこと、ゲル化の放置時間を240分としたこと、及びゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間としたこと以外は実施例1と同様な方法により、プロトン伝導性膜を得た。
【0195】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は564m/gで細孔を形成していることが分かった。スルホン酸基量は0.62meq/gであった。
【0196】
実施例11
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
原料として、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサン(Gelest社製)355.5g(1.0mol)、TEVS380.6g(2.0mol)を使用したこと、ヒドロシリル化触媒として白金−アルミナ(Pt5重量%)3.9g(白金換算で1.0mmol)を添加したこと、及び昇温後の反応時間を6時間とした以外は実施例2と同様な方法によりオルガノポリシロキサン前駆体(OMTS−TEVS)を得た。
【0197】
得られたオルガノポリシロキサン前駆体をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、TEVSの転化率(ビニルシラン転化率)は99.6%であり、ヒドリシリル化選択率は97.3%であった。これより求められるオルガノポリシロキサン前駆体の収率は96.9%であった。
【0198】
また、得られたオルガノポリシロキサン前駆体はβ,β’−付加体が76.1%、α,β’−付加体が22.3%、及びα,α’−付加体が1.6%であった。
【0199】
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体1.84gを使用したこと、TEOSを9.89gとしたこと、及び、MPESを4.87gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0200】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0201】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを使用したこと、ゲル化の放置時間を240分としたこと、及びゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間としたこと以外は実施例1と同様な方法により、オルガノポリシロキサン5mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0202】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。プロトン伝導性自立膜のBET比表面積は465m/gで細孔を形成していることが分かった。スルホン酸基量は0.80meq/gであった。
【0203】
実施例12
(原料ゾルの合成)
オルガノポリシロキサン前駆体として実施例9で得られたオルガノポリシロキサン前駆体(TMDS‐TEVS)の2.73g、実施例10で得られたオルガノポリシロキサン前駆体(HMTS‐TEVS)の1.56gを使用したこと、TEOSを3.65gとしたこと、及び、MPESを2.72gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0204】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0205】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、及び、ゲル状薄膜の加熱処理を200℃とした以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを20mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0206】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。得られたプロトン伝導性自立膜のスルホン酸基量は1.05meq/gであった。
【0207】
実施例13
(原料ゾルの合成)
オルガノポリシロキサン前駆体として実施例9で合成したオルガノポリシロキサン前駆体(TMDS‐TEVS)の1.37g、実施例10で合成したオルガノポリシロキサン前駆体(HMTS‐TEVS)の3.11gを使用したこと、TEOSを3.65gとしたこと、及び、MPESを2.85gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0208】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0209】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル化の際の放置時間を120分としたこと、及びゲル状薄膜を60×60mm角に切り出して200℃で48時間加熱処理したこと以外は実施例1と同様な方法により、オルガノポリシロキサンを20mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0210】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。得られたプロトン伝導性自立膜のスルホン酸基量は1.02meq/gであった。
【0211】
実施例14
(原料ゾルの合成)
オルガノポリシロキサン前駆体として実施例9で得られたオルガノポリシロキサン前駆体(TMDS‐TEVS)を1.56g、実施例10で得られたオルガノポリシロキサン前駆体(HMTS‐TEVS)を1.56g、実施例11で得られたオルガノポリシロキサン前駆体(OMTS‐TEVS)を1.64gを使用したこと、TEOSを3.65gとしたこと、及び、MPESを2.99gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0212】
得られた原料ゾルの粘度は10mPa・s(22℃)であった。
【0213】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを用いたこと、ゲル化の放置時間を120分としたこと、ゲル状薄膜を60×60mm角に切り出し、200℃で48時間加熱処理したこと以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを20mol%を含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0214】
得られたプロトン伝導性膜は自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;○)。得られたプロトン伝導性自立膜のスルホン酸基量は0.99meq/gであった。
【0215】
実施例15
(オルガノポリシロキサン前駆体の合成)
原料として、DMSH03257.8g、ジメチルエトキシシラン(東京化成工業社製、試薬特級;以下、「DMEVS」とする)130.3g(1.0モル)を使用したこと、ヒドロシリル化触媒として白金−アルミナ(Pt5重量%)1.95g(白金換算で0.5ミリモル)を添加したこと以外は実施例2と同様な方法により、オルガノポリシロキサン前駆体(DMSH03−DMEVS)を得た。
【0216】
得られたオルガノポリシロキサン前駆体をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、DMEVSの転化率(ビニルシラン転化率)は99.6%であり、ヒドリシリル化反応の選択率は98.5%であった。これより、オルガノポリシロキサン前駆体の収率は98.1%であった。
【0217】
また、得られたオルガノポリシロキサン前駆体は、β,β’−付加体が86.7%、α,β’−付加体が13.3%であり、α,α’−付加体は検出されなかった。
【0218】
(原料ゾルの合成)
得られたオルガノポリシロキサン前駆体3.93gを使用したこと、TEOSを19.79gとしたこと、及び、MPESを22.03gとしたこと以外は実施例2と同様の方法により、原料ゾルを得た。
【0219】
得られた原料ゾルの粘度は12mPa・s(22℃)であった。
【0220】
(プロトン伝導性膜の合成、性能評価)
得られた原料ゾルを使用したこと、ゲル状薄膜の加熱処理を250℃で48時間加熱処理したこと以外は実施例1と同様な方法でオルガノポリシロキサンを5mol%含有するプロトン伝導性膜を得た。
【0221】
得られたプロトン伝導性膜は、厚さが106μmの自立膜であった。当該プロトン伝導性膜は柔軟性があり、クラックや割れは無かった(強度の官能評価;◎)。プロトン伝導性自立膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.73meq/gであった。
【0222】
熱水耐性を調べた結果、熱水耐性評価後の膜のスルホン酸基量(固定アニオン基量)は0.64meq/gで、熱水耐性評価前の87%のスルホン酸基を保持していた。
【0223】
比較例2
本発明のプロトン伝導性膜との比較として、オルガノポリシロキサンで架橋していないポリシロキサンからなり、3次元細孔を持つシリカ膜を合成した。
【0224】
(シリカ膜の合成)
テトラエトキシシラン17.35gに、水5.05g、エタノール3.40g、35%塩酸0.09gを混合し、テフロン(登録商標)製密閉容器にて1時間撹拌した。次に、この溶液にC16EO10を5.00gを加えて1時間撹拌した。次に、この溶液に1−ビニル‐2−ピロリドン4.63gを加えて1時間撹拌した後に、水0.80gを加えてさらに1時間撹拌してゾルを得た。
【0225】
得られたゾルを、テフロン(登録商標)シート上に100×100mmのサイズに3mlを展開して、室温大気中で放置してゲル化させた。得られた厚さ103μmのゲル膜をテフロン(登録商標)シートから剥離し、50×50mm角に切り出し、電気炉を用いて500℃で2時間、大気気流中で焼成してシリカ膜を得た。得られたシリカ膜は35×35mm角で膜厚は72μmであった。
【0226】
このシリカ膜を、1,3−プロトンスルトンを24wt%含有するトルエン溶液の200g中で、107〜110℃の温度で12時間撹拌しながら加熱処理を行い、スルホン酸基の導入処理を行った。加熱処理後、トルエン、エタノールの順で洗浄し、60℃で一晩乾燥してスルホン酸基(固定アニオン基)導入シリカ多孔膜を得た。滴定値から求めたスルホン酸基の導入量は0.87meq/g−1であった。
【0227】
また、29Si NMRの結果、固定アニオン基中のSiはSi−O結合以外にもSi−OH結合を形成していることが分かった。
【0228】
上記のスルホン酸基導入シリカ膜の小角X線散乱測定の周期的構造に由来する2θが3.5°付近での散乱ピークと低角X線回折測定の回折パターンから、2〜3nmに最頻径を持ち、細孔が3次元的に規則性を持って配列していることが分かった。
【0229】
(性能評価)
得られたシリカ膜の熱水耐性評価、強度測定、プロトン伝導度測定を行った。80℃,90%RHにおけるプロトン伝導度は、0.07S/cmと低い値を示した。得られたプロトン伝導性膜にはクラックや割れは無かった。しかしながら、当該プロトン伝導性膜はに柔軟がなく、曲げ官能試験では曲げることができなかった(強度の官能評価;×)。引っ張り強度は20kg/cmであり、本発明のプロトン伝導性膜の1/10以下の強度であった。ポリシロキサンのみからなる本比較例のシリカ膜は強度と柔軟性が低かった。
【0230】
熱水耐性評価後のスルホン酸基(固定アニオン基)量は0meq/gであり、熱水耐性評価によって導入したスルホン酸基は全て脱離し、さらに、形状も元の状態が維持されず薄片状になり、熱水耐性が低いことが分かった。
【0231】
このように、本発明のプロトン伝導性膜は高温、低湿状態でも発電可能な状態を維持し、優れた発電性能を示し、かつ、化学的安定性、機械的特性、寸法安定性にもすぐれていることがわかった。
【0232】
実施例および比較例のプロトン伝導性膜の膜強度及び固定アニオン基量を表2に、特性を表3に示した。
【0233】
【表2】

【0234】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0235】
本発明のプロトン伝導膜は、100℃を越える温度や低湿度においてもプロトン伝導性として安定に作動させることが可能であり、高温、低湿状態でも安定に作動する燃料電池が構成可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるオルガノポリシロキサンを含むことを特徴とするプロトン伝導性膜。
【化1】

(RはCH、C、C、C、C、H、OHから選ばれるいずれか、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。AはOH、CH、C、C、C、架橋に関与する−O−から選ばれるいずれかであり、それぞれが異なっていてもよい。m,mはそれぞれ1〜10の整数、nは1〜20の整数)
【請求項2】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサンにおけるR、R及びA以外の炭素およびケイ素の合計比率が、プロトン伝導性膜中の炭素、ケイ素及び酸素の全モル数に対して50mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のプロトン伝導性膜。
【請求項3】
1.5nm以上3nm以下の最頻細孔径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプロトン伝導性膜。
【請求項4】
以下の式(3)で表される固定アニオン基を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【化2】

(Rは直鎖アルキレン鎖、分枝アルキレン鎖、Cからなる群より選ばれた基、Xはプロトン解離性アニオン基、yは1〜5の整数、zは1〜10の整数)
【請求項5】
Xがスルホン酸基、リン酸基のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のプロトン伝導性膜。
【請求項6】
固定アニオン基を0.5meq/g以上含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプロトン伝導性膜。
【請求項7】
以下の式(5)に示す化合物を原料として使用することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
【化3】

(BはOR又はRであり(R;アルキル基)、RはCH、C、C、C、C、OH、Hからなる群より選ばれた基、RはCH、C、C、C、Cから選ばれるいずれかより選ばれた基、mおよびmは1〜10の整数、nは1〜20の整数)
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載のプロトン伝導性膜を含むことを特徴とする電極。
【請求項9】
請求項8に記載の電極を含むことを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−228288(P2011−228288A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68536(P2011−68536)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】