説明

プロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法

【課題】 オレフィン重合用触媒を用いた多段連続気相重合法によるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、剛性/耐衝撃強度のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法の提供。
【解決手段】 プロピレン系重合体を多段連続気相重合法で製造するための反応装置であって、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御することを特徴とするプロピレン重合反応装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関し、更に詳しくは、オレフィン重合用触媒を用いたプロピレン系重合体の多段連続気相重合法において、剛性/耐衝撃強度のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン系ブロック共重合体を製造するプロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、安価で剛性及び耐熱性に優れた特性を有する反面、耐衝撃強度、特に低温における衝撃強度が弱いという問題があった。この点を改良する方法として、プロピレンとα−オレフィンまたはその他のオレフィンを段階的に重合させてブロック共重合体を生成させる方法が知られている。プロピレン系ブロック共重合体は、結晶性プロピレン重合体部と非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体部からなり、剛性が高く、かつ耐低温衝撃性に優れる成形品を調整することができる。このことから、自動車部品、家電部品等の用途に広く使用されている。
【0003】
ところで、自動車、家電用途に使用されるポリオレフィン製の成形品は、光沢が要求される用途がある一方、光沢が低い成形品は高級感があることから、低光沢が要求される用途がある。特に自動車内外装材用途においては、低光沢を呈する材料が望まれている。
【0004】
プロピレン系ブロック共重合体において、耐衝撃性の付与は主に非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体の含有量を多くすることで、また光沢の抑制は非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体の分子量およびα−オレフィンの含有量を高めることで成される。しかしながら、これらの方法はプロピレン系ブロック共重合体中のゲルを増加させ、多量のゲルは製品の外観を悪化させるばかりでなく、耐衝撃性をも低下させる要因となる。そもそも、ゲル発生の主因は、第1段重合工程において触媒成分の重合時間(重合槽内滞留時間)に分布を生じ、比較的短時間で重合槽から排出された粒子(ショートパス粒子)が第2段重合工程の重合槽に入ると、プロピレン/α−オレフィン共重合体の含量が多い粒子が生成する為であるから、回分法の採用により著しく低減できる。しかしながら、回分法は経済性および生産性の面で劣るという問題がある。
【0005】
多段連続気相重合法による低光沢を有するプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法としては、非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体の分子量やα−オレフィン含有量を高める方法(例えば、特許文献1、2参照)が開示されているが、第1段重合工程が完全混合槽にて実施されている為、ゲルの抑制という点で課題が残っている。一方、ゲルの抑制された重合方法として、横型反応器を用いる方法が知られている(例えば、特許文献3参照、以下、反応器は反応槽ともいう)。この方法では、反応槽内での滞留時間分布が狭く、ひとつの反応槽でショートパス粒子の低減が得られるため、ゲルの抑制という面では有利であるが、重合熱の除去を液プロピレンの蒸発潜熱で行なうため、反応器内部のガス組成が不均一となり、非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体の製造においては組成分布が生じ、光沢が高くなり易いという課題を有している。別の方法として、3つの反応槽を直列に接続して第1段重合工程を実施して、引き続きα−オレフィン含量を高めた共重合体成分を製造する方法(例えば、特許文献4参照)が開示されている。この方法では、ゲルの抑制に関しては改善されるが、多数の反応器を設置する必要があり、また第1段重合工程における滞留時間が長くなるため、触媒の能力が低下し、第2段重合工程において所望する量の共重合体を製造できない問題がある。
【0006】
一方、該プロピレン系ブロック共重合体を製造する上で、非晶性プロピレン/α−オレフィン共重合体の分子量も重要な因子であることは、先に示した特許文献1で述べられている。多段連続気相重合法において、重合器間の重合体の移送は圧送で行われる為、第1段重合工程の気相重合器内のガスも重合体に同伴して第2段重合工程に送られ、結果として第2段重合工程の気相重合器内のガス組成は第1段重合工程のそれに大きく影響される事になる。例えば、所望の分子量の重合体を得るために、分子量調節剤としては一般的に水素が多く使用されるが、第1段重合工程で低分子量の重合体を得るために水素を多く供給した場合、第2段重合工程で水素を供給せずに高分子量の共重合体を得ようとしても、第1段重合工程の反応器からの同伴ガス中の水素は必ず第2段重合工程の反応器に流入し、その結果第2段重合工程で生成できる共重合体の分子量側に限界ができる。
【0007】
この問題点を解決する方法としては、重合器間に設けられた受器で、不活性ガスにて同伴ガスを希釈し、水素のガス組成を下げた後第2段重合工程に移送する方法(例えば、特許文献5参照)が開示されているが、この方法では水素などの流入を完全に無くすことは出来ず、モノマー分圧変動の恐れがある。別の方法として、該受器へ重合体を受け入れた後、該受器中の同伴ガスを一旦排出し、再度プロピレンガス或いは不活性ガスで加圧して第2段重合工程へ移送する方法(例えば、特許文献6参照)が開示されている。これは、第2段重合工程への水素などの流入は極力抑えられる方法であるが、受器および配管内に残存している重合体を完全に移送し終わるまで、プロピレンガス或いは不活性ガスを該受器へ供給する必要があるため、過剰のプロピレンガス或いは不活性ガスが第2段重合工程へ流入し、モノマー分圧を変動させる恐れがある。更に別の方法として、受器を第2段重合工程の反応器よりも高い位置に設置して、加圧ガスとして第2段重合工程の循環ガスを使用する方法(例えば、特許文献7参照)が開示されていが、エチレン等のコモノマーを含む第2段重合工程の循環ガスを使用するため、受器および配管内で粘着性重合体を形成してしまう可能性があり課題を残している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−30127号公報
【特許文献2】特開2008−260546号公報
【特許文献3】特許2675919号公報
【特許文献4】特開2004−217896号公報
【特許文献5】特開昭57−65703号公報
【特許文献6】特開平3−65366号公報
【特許文献7】特開平7−118342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、オレフィン重合用触媒を用いたプロピレン系ブロック共重合体の多段連続気相重合法において、剛性/耐衝撃強度のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン系ブロック共重合体を製造するプロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、プロピレン系重合体を多段連続気相重合法で製造するための反応装置において、横型反応槽と、これに連結する完全混合槽とを、それぞれ少なくとも1槽以上具備してなり、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、両槽間を移送すべき重合体の量を制御するためのレベル計を有する受器が設けられるプロピレン重合反応装置を作製することにより、さらにはそれを用いてなるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法により、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系重合体を多段連続気相重合法で製造するための反応装置であって、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御することを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記完全混合槽は、主に循環ガスの顕熱を利用して重合熱の除去を行なう反応槽であることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記完全混合槽は、縦型撹拌槽、攪拌式流動床反応槽または流動床反応槽から選ばれる反応槽であることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明において、前記完全混合槽は、流動床反応槽であることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0015】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記横型反応槽は、L/Dが5以上(L:水平長手方向の長さ、D:内径)であることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0016】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、前記横型反応槽の直後に、受器を介して前記完全混合槽が設けられることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0017】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、前記受器は、前記横型反応槽の重合体抜き出し口の直下であって、かつ、前記完全混合槽の重合体入り口より高い位置に配置されることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0018】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、前記受器は、ガス導入弁及びガス排出弁を備えるものであることを特徴とするプロピレン重合反応装置が提供される。
【0019】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明のプロピレン系重合反応装置を用いて、オレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンの多段連続気相重合を行なうことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、前記横型反応槽においてプロピレンを単独重合又はプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が95重量%以上である重合体成分(A)を製造する第1段重合工程を行ない、引き続き、前記完全混合槽においてプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が70〜10重量%である共重合体成分(B)を製造する第2段重合工程を行なうことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の装置及び製造方法によれば、自動車外装材等に好適な、剛性/耐衝撃性のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン系ブロック重合体を効率良く製造出来る。加えて、連続気相重合方法であることから、より安価で品質的に安定したプロピレン系ブロック共重合体の供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明において、横型反応槽と攪拌式流動床反応槽を組み合わせたプロピレン重合反応装置のフローシートを表す概略図である。
【図2】図2は、本発明において、横型反応槽と縦型攪拌槽を組み合わせたプロピレン重合反応装置のフローシートを表す概略図である
【図3】図3は、本発明において、横型反応槽と流動床反応槽を組み合わせたプロピレン重合反応装置のフローシートを表す概略図である
【図4】図4は、本発明において、横型反応槽と流動床反応槽を組み合わせた場合の好ましい態様のプロセスフローおよび実施例で用いた製造方法のフローシートを表す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1、2 触媒成分供給配管
3、5 原料プロピレン補給配管
4、6 原料補給配管(水素・エチレンなど)
7 電子供与性化合物供給配管
10 横型反応槽(第1段重合工程)
11 気液分離槽
12 反応槽上流末端
13、23 未反応ガス抜出し配管
14 反応槽下流末端
15 凝縮器
16、26 圧縮器
17 原料液化プロピレン補給配管
18 原料混合ガス供給配管
20 完全混合槽(第2段重合工程)
25 循環ガスクーラー
30 受器(レベル計設置されている)
31 脱ガス槽
32、33 重合体抜出し配管
34 重合体供給配管
41 加圧ガス供給配管
42 ガス排出配管
W 重合体排出弁
X 重合体移送弁
Y ガス導入弁
Z ガス排出弁
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のプロピレン重合反応装置は、プロピレン系重合体を多段連続気相重合法で製造するための反応装置であって、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御することを特徴とする。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、前述のプロピレン重合反応装置を用いて、オレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンの多段連続気相重合を行なうことを特徴とする。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
<プロピレン重合反応装置>
本発明のプロピレン重合反応装置は、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御することを特徴とする。すなわち、本発明の製造装置は、少なくとも1槽以上の内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、少なくとも1槽以上の完全混合槽からなる重合反応装置及びレベル計を有する受器で構成されている。本発明における最小の反応槽の構成での装置の例を図1から図3に示す。
【0026】
<横型反応槽>
本発明のプロピレン重合反応装置を構成する横型反応槽としては、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽であれば公知の反応槽を使用することができる。一例として、図1〜3に示したような横型反応槽を使用することができる。
図1〜3において、少なくとも1槽用いられる、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽10は細長く、上流端12と下流端14を持ち、図1に示すように、一般的には水平位置で設置されている。軸8は反応槽10の下流端14の中へ延び、攪拌の為の翼が反応槽10内で取り付けられている。攪拌翼はポリマー粒子を反応槽10内でその中へ導入される他物質と混合する。
反応槽10の上流部配管1および2より導入された触媒成分は、攪拌翼にてポリマー粒子と混合されながら、重合を開始する。重合の際、発生する重合熱は、頂部配管17から供給される原料液化プロピレンの蒸発潜熱により除去される。未反応のプロピレンガスは配管13にて反応系外へ出され、凝縮器15にてその一部分が凝縮され、気液分離槽11で液相と気相へ分離される。液相部は重合熱除去のため配管17へ導入され、気相部は、分子量調節のための水素等と混合され、反応槽10底部に設置された配管18を経由して供給される。
【0027】
本発明での必須の重合装置である横型反応槽が他の反応槽と大きく異なるところは、触媒成分が反応槽の上流部へ添加され、それが重合によりパウダー粒子として成長しながら、反応槽の下流側へ移動するという点にある。
そのため横型反応槽は、完全混合槽型の反応槽に比べ、滞留時間分布が狭く、特に反応槽出口付近に存在する比較的滞留時間の短い粒子(ショートパス粒子)の濃度は非常に少ないものとなる。よって、ゲルの低減を目的としている本発明においては、横型反応槽にて実施することが必須となる。
横型反応槽は、他の反応槽と比較して滞留時間分布が狭いという特徴を有しており、1槽で本発明が所望する効果を十分に達成できるが、更に反応槽の数を増やすことにより、更にその効果を高めることが出来る。
本発明における横型反応槽のL/Dは、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに一方、好ましくは10以下である。Lは反応槽の水平長手方向の長さ、Dは反応槽の内径を示す。L/Dが過小な場合は、十分な滞留時間分布の狭幅化は達成されないおそれがある。また、L/Dが過大な場合は、強度上攪拌軸を太くする必要があり、実反応容積が減少し生産性が低下するおそれがある。
【0028】
<完全混合槽>
本発明における「完全混合槽」とは、槽内にある物質が流入し、そして流出される場合、槽内の濃度と流出流れの濃度が等しいことを特徴とする反応槽を意味する。すなわち、完全混合槽は、槽内の温度や反応ガスの組成などが均一であるため、反応槽内で製造される物質の品質の均一性という点で有利である。
本発明のプロピレン系重合体の製造装置を構成する完全混合槽としては、上述のような完全混合槽であれば、公知の反応槽を使用することができる。プロピレンの重合装置として広く利用されている完全混合槽としては、縦型撹拌槽、攪拌式流動床反応槽、流動床反応槽が挙げられる。一例として、図1〜3に示したような完全混合槽を使用することができる。図1では完全混合槽として撹拌式流動床反応槽を、図2では縦型撹拌槽を、図3では流動床反応槽を使用した例を示す。
【0029】
本発明に用いられる完全混合槽としては、重合熱の除去を主として循環ガスの顕熱により除去することを特徴とする反応槽が好ましい。ここで、プロピレン系重合体の完全混合槽を用いた連続多段気相重合における反応ガス(反応帯域のガス)及び循環ガス(循環帯域のガス)は、前述した原料であるプロピレン、エチレンを含むα−オレフィン、水素、その他の原料である。
プロピレン系樹脂の気相製造プロセスでは、重合熱の除去を、主に原料液化プロピレンの蒸発潜熱で除去する様式(例えば、横型反応槽)、反応槽内の主として循環ガスの顕熱により除去する様式(例えば、攪拌式流動床反応槽や流動床反応槽)があるが、本発明においては主として循環ガスの顕熱を利用する様式が好ましい。重合熱の除去の方式が原料液化プロピレンの蒸発潜熱で行なうプロセスでは、反応槽底部よりプロピレン/α−オレフィン(例えばエチレンなど)ガス等が供給、反応槽上部より原料液化プロピレンが供給されるため、反応槽内部においてガス組成が不均一となり易く、そのため重合体粒子周りで共重合されるα−オレフィンの組成分布が生じることとなる。結果として、α−オレフィン含量が少ない成分が共重合体中に存在することとなり、最終製品の光沢を高くしてしまう。これを回避する為には、更にα−オレフィンの含有量を高くする必要があるが、過剰のα−オレフィンはゲル増加の要因となる。よって、本発明が所望する特性を発現するためには、反応槽内部の反応ガス組成の均一化が必須であり、その為には大量のガスを流通させて重合熱を除去する様式が好適である。
加えて、原料液化プロピレンの蒸発潜熱を重合熱の除去に利用するプロセスでは、必然的に反応ガス中のプロピレン濃度が高くなるため、後で説明する共重合体成分(B)中のα−オレフィン含量を高め難い欠点があるが、主として循環ガスの顕熱より熱の除去を行なうプロセスでは、その制約がなく、光沢の抑制という点では優れている。
【0030】
主として循環ガスによる重合熱を除去するプロセスとしては、攪拌式流動床反応槽、流動床反応槽が挙げられるが、本発明においては流動床式反応槽が、反応ガスの均一性および共重合体粒子の均一攪拌という観点からより望ましい。該反応槽の数は、特に制限はないが、循環ガスによる重合熱を除去する反応槽を少なくともひとつ以上有することが好ましい。
【0031】
本発明の装置の一例として、図3に完全混合槽として流動床反応槽を利用した装置のフロー図を示す。流動床反応槽20は縦に細長く、前段の工程で製造された重合体は、配管34より供給される。流動床反応槽20内の重合体は、該反応槽へ最小流動化速度以上の線速度で供給される原料プロピレンおよび水素やエチレンなどの他の原料ガスにて流動化され、重合反応が行われる。未反応の混合ガスは、未反応ガス抜き出し配管23より反応系外へ抜き出され、循環ガスクーラー25にて冷却され、流動化用ガスとして反応槽20へ供給される。
反応槽20にて製造された重合体は配管33及び脱ガス槽31を経由して、次工程へ移送される。
【0032】
<レベル計を有する受器>
本発明において、好ましくは横型反応槽から完全混合槽へ重合体を移送する際に、レベル計を有する受器が該反応槽間に設置され、使用される。本発明の一例として、図1〜3を用いて説明すると、受器30は横型反応槽の直下、かつ次反応槽重合体入り口より高い位置に配列されている。受器30に設置されるレベル計は、受器30内の重合体の量を測定するものであり、γ線式レベル計やアドミッタンス式レベル計などが例示できる。
受器30には、横型反応槽からの重合体抜き出し配管32、次反応槽への重合体供給配管34、加圧ガス供給配管41、ガス排出配管42が取り付けられ、そられ配管には重合体排出弁W、重合体移送弁Xが取り付けられ、好ましくは、さらに、ガス導入弁Y、ガス排出弁Zが取り付けられる。
【0033】
本発明が所望する効果を得るためには、水素等の分子量調節剤の次工程への流入を極力遮断し、かつ次工程反応槽内の反応ガス組成の変動を小さくする必要がある。そのため、該受器内に重合体とともに同伴したガスを可能な限り排除し、かつ該受器から重合体を排出する際、極力少量の加圧ガス量で重合体を排出する必要がある。受器を横型反応槽抜き出し口の直下、かつ流動床反応槽入り口より高い位置に配置するのは、同伴するガス量を極力少なくし、かつ配管内に残留する重合体の量を極力少なくするのに有効である。また受器へレベル計を設置して重合体の排出を制御することは、次工程へ過剰な加圧ガスが流入することを防止するのに効果がある。
【0034】
重合反応により反応槽内の重合体の量が設定量より増加すると、重合体排出弁Wが開き、所定量の重合体が受器30中に間欠的に導入される。該受器30中に重合体と共に同伴したガスは、ガス排出弁Zを開くことによりガス回収系(図示せず)に排出され、受器30の圧力が所定の値となった後、ガス排出弁Zが閉じられる。その後、加圧ガス導入弁Yを開いて、配管40より受器30に加圧ガスを導入し、次いで該弁Yを閉じる。次に、重合体移送弁Xを開いて受器30および移送管34中の重合体を加圧ガスによって次工程に移送する。受器30に設置されたレベル計により、受器30内の重合体量を計測し、該重合体の量が設定量以下となった後、重合体移送弁Xを閉じることにより重合体の移送操作の1サイクルが終了する。一連の処置は各遮断バルブの一連のシーケンス動作により自動的に実施される。
【0035】
<装置の構成>
本発明による多段連続気相重合法の安価で品質的に安定した重合体の提供に関しては、横型反応槽及び完全混合槽が受器を介して連結した装置であれば良く、設置順序に制約はない。設置順序については、横型反応槽−受器−完全混合槽、完全混合槽−受器−横型反応槽のどちらでも行なうことができる。また、本発明においては、一連の製造工程の中に、横型反応槽、受器及び完全混合槽が連結した装置が一組あればよく、この装置の前後に別の反応槽等を配置しても良い。具体的には、横型反応槽や主として循環ガスの顕熱を利用する反応槽のような追加の重合反応槽を、前段または後段に1又は複数設け、3槽以上の反応槽からなる装置を実現してもよい。
ただし、剛性/耐衝撃強度のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン系ブロック共重合体を製造する場合には、横型反応槽の直後に受器を介して完全混合槽を配置することが好ましい。
【0036】
本発明の装置においては、横型反応槽、完全混合槽等の反応槽以外の装置については、通常プロピレン系重合体の重合反応装置に用いられるものが使用できる。
【0037】
<プロピレン系ブロック共重合体の製造方法>
続いて、本発明における、プロピレン系ブロック共重合体、触媒等について詳しく説明する。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、前述のプロピレン重合反応装置を用いて、オレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンの多段連続気相重合を行なうことを特徴とする。好ましくは、本発明の重合工程は、第1段重合工程および第2段重合工程の二段階よりなり、より好ましくは、第1段重合工程および第2段重合工程はこの順序(第1段重合工程→第2段重合工程)で実施する。詳しくは、本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、第1段重合工程を少なくとも1槽以上の内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽で、第2段重合工程を少なくとも1槽以上の、完全混合槽であって、重合熱の除去を主として循環ガスの顕熱を利用する反応槽で実施する。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、好ましくは、横型反応槽においてプロピレンを単独重合又はプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が95重量%以上である重合体成分(A)を製造する第1段重合工程を行ない、引き続き、完全混合槽においてプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が70〜10重量%である共重合体成分(B)を製造する第2段重合工程を行なうことを特徴とする。
【0038】
<オレフィン重合用触媒>
本発明に用いられるオレフィン重合用触媒の種類としては、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022)が使用できる。プロピレン/α−オレフィン共重合体の分子量が高い方が光沢が抑制される方向であることから、一般的に重合時連鎖移動の少ないチーグラー・ナッタ触媒がより好ましい。チーグラー・ナッタ触媒は、チタン化合物として有機アルミニウム等で還元して得られた三塩化チタンまたは三塩化チタン組成物を電子供与性化合物で処理し更に活性化したもの(例えば特開昭47−34478、特開昭58−23806、特開昭63−146906)、塩化マグネシウム等の担体に四塩化チタンを担持させることにより得られるいわゆる担持型触媒(例えば、特開昭58−157808、特開昭58−83006、特開昭58−5310、特開昭61−218606)等が含まれる。これらの触媒は特に制限なく公知の触媒が使用可能である。
【0039】
また、助触媒として有機アルミニウム化合物を使用することができる。有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムエトキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド、メチルアルモキサン、テトラブチルアルモキサンなどのアルモキサン、メチルボロン酸ジブチル、リチウムアルミニウムテトラエチルなどの複合有機アルミニウム化合物などが挙げられる。また、これらを2種類以上混合して使用することも可能である。
【0040】
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することが出来る。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p−トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
【0041】
<予備重合処理>
本発明におけるオレフィン重合用触媒は、本重合で使用する前に予備重合処理して用いることが好ましい。本重合に先立って、予備重合処理により、予め少量のポリマーを触媒周囲に生成させることによって、触媒がより均一となり、微粉の発生量を抑えることができる。
【0042】
予備重合処理は、本重合に用いる有機アルミニウム化合物と同様の有機アルミニウム化合物の存在下で実施できる。使用する有機アルミニウム化合物の添加量は、使用する重合触媒成分の種類によって異なるが、通常、チタン原子1モルに対して有機アルミニウム化合物を好ましくは0.1〜40モル、より好ましくは0.3〜20モルの範囲で用いることができる。予備重合処理時の温度は、好ましくは−150℃〜150℃、より好ましくは0℃〜80℃である。予備重合処理の時間は、10分〜48時間が好ましい。予備重合処理量は、オレフィン重合用触媒成分1グラム当たり好ましくは0.1〜100グラム、より好ましくは0.5〜50グラムのα−オレフィン等のモノマーを重合させることができる。予備重合処理は、通常、不活性溶媒中で行われる。
【0043】
予備重合処理においては、必要に応じて本重合に用いる電子供与体と同様の電子供与体を用いることもできる。電子供与体が有機ケイ素化合物の場合、有機アルミニウム化合物1モルに対して0.01〜10モルの範囲で用いてもよい。
【0044】
オレフィン重合用触媒の予備重合処理に用いられるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテンなどに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げる事が出来る。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
これらは単独のみならず、他のα−オレフィンとの2種以上の混合物であってもよい。また、その重合に際して生成するポリマーの分子量を調節するために水素等の分子調節剤を併用することもできる。
【0045】
予備重合処理は、一般的に撹拌下に行なうことが好ましく、そのとき不活性溶媒を存在させることもできる。オレフィン重合用触媒の予備重合処理に用いられる不活性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイル等重合反応に著しく影響を及ぼすことがない不活性溶媒である。これらの不活性溶媒は1種の単独溶媒または2種以上の混合溶媒のいずれでもよい。これらの不活性溶媒の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物を取り除いた後で使用することが好ましい。
【0046】
予備重合処理は複数回行なっても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっていても良い。また、予備重合処理後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行なう事も出来る。予備重合処理を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0047】
<横型反応槽での重合>
横型反応槽での重合は、好ましくは第1段重合工程であり、実質気相状態で、プロピレン単独、あるいはプロピレンとα−オレフィンとの混合物をオレフィン重合用触媒および必要に応じて電子供与体の存在下で、連続重合させて、結晶性のプロピレン重合体を製造する工程である。α−オレフィンとしてはエチレンが一般的である。この第1段重合工程では、プロピレン単独重合体またはα−オレフィン含量5重量%以下のプロピレン/α−オレフィン共重合体を形成させる。第1段重合工程で得られるプロピレン/α−オレフィン重合体中のα−オレフィン含量が5重量%を越えると、最終共重合体の剛性が低下するおそれがある。したがって、第1段重合工程では、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が95重量%以上である重合体成分(A)を製造することが好ましい。
【0048】
第1段重合工程における温度や圧力の様な重合条件は、本発明の効果を阻害しない限り任意に設定する事が出来る。具体的には、重合温度は好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、一方、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合圧力は大気圧以上、好ましくは600kPa以上、更に好ましくは1000kPa以上、特に好ましくは1600kPa以上であり、一方、好ましくは4200kPa以下、更に好ましくは3500kPa以下、特に好ましくは3000kPa以下を例示できる。ただし、重合圧力は重合温度におけるプロピレンの蒸気圧力より高く設定するべきではない。
滞留時間は重合槽の構成や製品インデックスに合わせて任意に調整する事が出来る。一般的には、30分から10時間の範囲内で設定される。
【0049】
第1段重合工程においては、水素などの分子量調節剤を用いて重合体のメルトフローレート(MFR)を制御することができる。
【0050】
<完全混合槽での重合>
完全混合槽での重合は、好ましくは第2段重合工程であり、プロピレンとα−オレフィンとの混合物を一つ以上の完全混合槽で重合させて、ゴム状重合体を製造する工程である。α−オレフィンとしては、エチレンが好ましい。この第2段重合工程ではプロピレン/α−オレフィンの重合比(重量比)が好ましくは70/30〜10/90、より好ましくは60/40〜40/90、特に好ましくは55/45〜30/70の割合であるプロピレンのゴム状重合体を製造する。α−オレフィンが30重量%以下では、プロピレン系ブロック共重合体の光沢が増加し、α−オレフィンが過剰な場合は、ゲルの増加やプロピレン系ブロック共重合体の引張り特性等の低下を招くおそれがある。また、この工程での重合量は、好ましくは全重合量の15重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは25重量%以上であり、一方、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。ゴム状重合体が過小な場合は、十分な衝撃強度が得られず、また過大な場合は、プロピレン系ブロック共重合体のパウダー流動性が著しく悪化し、系内への付着が発生するおそれがある。したがって、第2段重合工程では、第1段重合工程に引き続き、完全混合槽においてプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が70〜10重量%である共重合体成分(B)を製造することが好ましい。
第2段重合工程では、エチレンの他のコモノマーを共存させてもよい。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンを用いることができる。
【0051】
第2段重合工程における温度や圧力の様な重合条件は、本発明の効果を阻害しない限り任意に設定する事が出来る。具体的には、重合温度は好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、一方、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合圧力は大気圧以上、好ましくは600kPa以上、更に好ましくは1000kPa以上、特に好ましくは1600kPa以上であり、一方、好ましくは4200kPa以下、更に好ましくは3500kPa以下、特に好ましくは3000kPa以下を例示できる。ただし、重合圧力は重合温度におけるプロピレンの蒸気圧力より高く設定するべきではない。
滞留時間は重合槽の構成や製品インデックスに合わせて任意に調整する事が出来る。一般的には、30分から10時間の範囲内で設定される。
第2段重合工程で、分子量調節剤は、目的に応じて用いても用いなくても良い。
【0052】
さらに、必要に応じて第1工程重合槽からのショートパス粒子を選択的に、かつ効率的に失活させる目的で、特開2002−265516号公報等に例示される電子供与体を添加してもよい。
【0053】
<槽間の重合体の移送>
横型反応槽から主として循環ガスの顕熱による重合熱の除去を行なう反応槽への重合体の移送は、好ましくは第1段重合工程から第2段重合工程への重合体の移送であり、レベル計を有する受器にて実施される。該受器による移送の工程は、
a)第1段重合工程から重合体を間欠的に該受器に抜き出す工程、
b)該重合体に同伴して導入されたガスを該受器から排除する工程、
c)再度、該受器をプロピレンガス或いは不活性ガスにて昇圧する工程、
d)該受器中の重合体を第2段重合工程に導入する工程
から成ることが好ましい。
【0054】
工程a)において、1回の間欠抜き出し操作で抜き出される重合体の量は、該受器の容量の50容量%以上が望ましく、より好ましくは60容量%以上、90容量%以下、より好ましくは80容量%以下である。抜き出し量が過小な場合は、同伴するガス量が多くなり、また過大な場合は、工程b)にて抜き出された重合体の一部も排出系へ混入し、閉塞等のトラブルを引き起こすおそれがある。
重合体の抜き出しには第1段重合工程のガス成分の漏出を伴うので、該受器を第1段重合工程との連通を遮断した後落圧することにより前記漏出ガスを受器より排出する(工程b)。落圧は、好ましくは0.5MPa以下、より好ましくは0.2MPa以下である。次いで、該重合体を入れた受器をガスで昇圧する。昇圧に用いるガスとしては、触媒毒とならない不活性ガス、例えば窒素、炭素数1〜4の飽和炭化水素、あるいはプロピレン更にはこれらの混合物を用いることが出来る。好ましく用いられる昇圧用ガスとしてはプロピレン単ガスである。昇圧は、重合体の第2段重合工程への移送を容易にするため、第2段重合工程の重合圧力より高く、好ましくは0.2MPa以上高くすることが望ましい。受器は所定の値まで昇圧された後第2段重合工程と連通され、該重合体は第2段重合工程へ移送される。移送の際、受器内の重合体減衰量を該受器に設置されたレベル計で監視し、重合体の排出完了と同時に、該受器と第2段重合工程が遮断される。受器からの排出を完全にすべく過剰量の加圧用ガスを使用することは、移送配管内の残留を防ぐのに有用な方法であるが、過剰の加圧ガス使用は、第2段重合工程の反応ガス組成比を不安定にし、結果として共重合体中のαオレフィン含量の分布を広げることとなり光沢が上昇するため、本発明の目的においては望ましい方法ではない。本発明において、該受器は第2段重合工程反応器入り口より高い位置に配置されることにより、配管内の滞留を極力抑え、且つ加圧ガスとして不活性ガスあるいはプロピレン単ガスを用いることで付着成分の発生を抑制することができる。
上記一連の処置は各遮断バルブの一連のシーケンス動作により自動的に実施されるが、この一連のシーケンス(工程a→工程d)は、好ましくは15分以内、より好ましくは10分以内、更に好ましくは3分以内で実施されることが望ましい。一連のシーケンスが15分以上かかる場合、移送配管内で滞留している重合体による閉塞が発生するおそれがある。
【0055】
第1段重合工程と第2段重合工程間に設置される上記受器は、上記条件を満たせば複数台設置しても良い。
【0056】
<プロピレン系ブロック共重合体>
以上のように、本発明により、剛性/耐衝撃性のバランスに優れ、加えてゲルの発生および光沢が抑制されたプロピレン系ブロック重合体を効率良く製造出来る。加えて、連続気相重合方法であることから、前述の特性を持つ品質的に安定したプロピレン系ブロック共重合体が、より安価で供給可能となる。
本発明により得られるプロピレン系ブロック共重合体は、上記の通り、剛性/耐衝撃性のバランスに優れ、かつゲルの発生が少なく、光沢が抑制されるという特性を持つため、射出成形分野や押出し成形分野で用いられ、特に自動車用材料に好適である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例1、2及び比較例5は図4に示した装置にて実施した。本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
【0058】
(各種物性測定法)
a)MFR(単位:g/10分):JIS−K6921の方法に従い、230℃、21.18Nの条件で測定した。
b)α−オレフィン含有率(第2段重合工程の重合比率、重量%):赤外線吸収スペクトル法により測定した。
c)ゲル:光沢の測定に用いた射出成形品を、蛍光灯下、目視にて観察しゲル発生量を比較した。評価は、
◎(僅か)<○(少ない)<△<×(多い)
で行った。
【0059】
(機械物性測定方法)
a)曲げ弾性率(MPa):JIS K7203に準拠して測定した。
b)アイゾット衝撃値:JIS K7110に準拠して測定した。
c)光沢:JIS Z8741に準拠して測定した。
【0060】
(実施例1)
1)固体触媒成分(オレフィン重合用触媒)の調製
撹拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸−n−ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2hr反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体触媒成分のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体触媒成分のTi含量は2.7wt%、Mg含有量は18wt%であった。また、固体触媒成分の平均粒径は33μmであった。
【0061】
2)固体触媒成分の予備重合処理
内容積20リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、ヘキサン17.7リットル、トリエチルアルミニウム100.6mmol、ジイソプロピルジメトキシシラン15.1mmol、前項で調整した固体触媒成分120.4gを室温で加えた後、30℃まで加温した。次いで、攪拌しながらプロピレン240.8gを3時間かけて供給し、予備活性化処理を行った。分析の結果、固体触媒1g当たりプロピレン1.9gが反応していた。
【0062】
3)第1段重合工程
図4に示したフローシートによって説明する。攪拌羽根を有する横形重合器(L/D=5.2、内容積100リットル)に上記予備活性化処理(予備重合処理)した固体触媒を0.53g/hr、有機アルミ化合物としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメトキシシランを、Al/Mgモル比が6、Al/Siモル比が6となるよう、それぞれ24mmol/h、3.9mmol/hにて、連続的に供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPa、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、重合器内の気相中の水素濃度を表1に示した水素/プロピレンモル比に維持するように、水素ガスを循環配管2より連続的に供給して、第1段重合体のMFRを調節した。
【0063】
反応熱は配管3から供給する原料液化プロピレンの気化熱により除去した。重合器から排出される未反応ガスは配管13を通して反応槽系外で冷却、凝縮させて配管17にて重合器10に還流した。
生成した第1段重合の重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の60容量%となる様に配管32を通して重合器10から間欠的に抜き出し、第2段重合工程の重合器20に供給した。第1段重合工程から第2段重合工程への重合体の移送は、以下のバルブシーケンス動作に基づいて実施した。
a)第1段重合反応槽内の粉面の上昇を感知して弁Wが開き、受器30の容積に対し60容積%まで受入れる、
b)弁Wを閉じた後、弁Zを開け、受器30の圧力が0.1MPaとなるまで排ガスする、
c)弁Zを閉じた後、弁Yを開けプロピレンガスにて受器30を2.2MPaまで加圧する、
d)弁Xを開け受器中の重合体を第2段重合工程へ導入し、受器に設置されたレベル計が
5容量%を示した後、1秒後に弁Xを閉める。
この時、配管32から重合体の一部を間欠的に採取して、MFRおよび触媒単位重量当たりの重合体収量を測定する試料とした。MFRは145g/10分であった。触媒単位重量当たりの重合体収量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP法)により測定した重合体中のMg含有量から算出した。Mg含有量は、7.2ppmであった。
【0064】
4)第2段重合工程
第1段重合工程に引き続き、内容積2000リットルの流動床式反応槽にて第2段重合工程の重合を実施した。反応温度60℃で、圧力2.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.3となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/エチレンのモル比で0.13となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して0.4倍モルになるように供給した。第2反応槽で重合したパウダーは、空塔速度が0.40m/secとなるように流動させ、また、反応槽内のパウダー保有量が、平均して30kgとなるように1回約2Kgずつ間欠的に、5〜10分に1回ベッセルに抜き出し、更に別のベッセルに移送し、そこでは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止、残留ガスをパージさせ、プロピレン系ブロック共重合体を得た。
【0065】
得られたプロピレン系ブロック共重合体の一部はMFRの測定、および赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン含有量の測定、ICP法による重合体中のMg含量の測定による共重合体の生成量、各種機械物性およびゲルの測定に供した。MFRは34g/10分、第2段重合工程で製造された第2段重合体の重合比率は、得られたプロピレン系ブロック共重合体全体を基準として27重量%、また、第2段重合体中のエチレンの重合比は、第2段重合工程で重合された重合体を基準として37重量%であった。
更に、得られたプロピレン系ブロック共重合体4kgにフェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を2.0g、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを2.0g、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを2.0g添加し、およびタルクを12g加え、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、室温下にて2分間混合し、混合物をスクリュウ径40mmの押出造粒機を用いて造粒した。次いで、造粒物からテストピースを射出成形機を用いて溶融樹脂温度250℃、金型温度50℃で作成した。得られたテストピースを湿度50%、室温23℃の室内で72時間状態調整して機械物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
第1段重合工程での水素/プロピレン比、第2段重合工程での水素/エチレン比、エチレン/プロピレン比およびエタノール/TEA比を変えた以外、およびプロピレン系ブロック共重合体を造粒する際、タルクを除いた以外は実施例1に準拠して実施した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
攪拌羽根を有する横形重合器(L/D=5.2、内容積100リットル)を2個連結してなる連続反応装置を用いて重合を行った。
まず、第1反応槽に実施例1記載の予備活性化処理(予備重合処理)した固体触媒を0.45g/hr、有機アルミ化合物としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメトキシシランを、Al/Mgモル比が6、Al/Siモル比が6となるよう、それぞれ20mmol/h、3.3mmol/hにて、連続的に供給した。反応温度65℃、反応圧力2.2MPa、攪拌速度35rpmの条件を維持しながら、重合器内の気相中の水素濃度を表1に示した水素/プロピレンモル比に維持するように、水素ガスを連続的に供給して、第1段重合体のMFRを調節した。生成した第1段重合の重合体は、重合体の保有レベルが反応容積の60容量%となる様に間欠的に抜き出し、第2段重合工程の重合器に供給した(第1段重合工程)。なお、第1段重合工程から第2段重合工程への重合体の移送は、受器(30)に設置されたレベル計を使用し、実施例1記載の受器(30)バルブシーケンス動作に基づいて実施した。MFRは76g/10分であった。
第1段重合工程に引き続き、横形重合器(L/D=5.2、内容積100リットル)にて第2段重合工程の重合を実施した。重合温度60℃で、圧力2.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.32となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/エチレンのモル比で0.13となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して0.3倍モルになるように供給した。第2反応槽で重合したパウダーは、重合体の保有レベルが反応容積の60容量%となる様に間欠的に抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン系ブロック共重合体を得た(第2段重合工程)。
得られたプロピレン系ブロック共重合体の一部はMFRの測定、および赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン含有量の測定、各種機械物性およびゲルの測定に供した。MFRは32g/10分、第2段重合工程で製造された第2段重合体の重合比率は、得られたプロピレン系ブロック共重合体全体を基準として28重量%、また、第2段重合体中のエチレンの重合比は、第2段重合工程で重合された重合体を基準として37重量%であった。
得られたプロピレン系ブロック共重合体4kgにフェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を2.0g、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを2.0g、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを2.0g添加し、およびタルクを12g加え、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、室温下にて2分間混合し、混合物をスクリュウ径40mmの押出造粒機を用いて造粒した。次いで、造粒物からテストピースを射出成形機を用いて溶融樹脂温度250℃、金型温度50℃で作成した。得られたテストピースを湿度50%、室温23℃の室内で72時間状態調整して機械物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
第1段重合工程での水素/プロピレン比、第2段重合工程での水素/エチレン比、エチレン/プロピレン比およびエタノール/TEA比を変えた以外、およびプロピレン系ブロック共重合体を造粒する際、タルクを除いた以外は比較例1に準拠して実施した。結果を表1
に示す。
【0069】
(比較例3)
1)固体触媒成分(オレフィン重合用触媒)の調製
実施例1に準じて固体触媒成分を調整した。
2)固体触媒成分の予備重合処理
撹拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、固体触媒成分100g導入した。四塩化ケイ素を50ml加え、90℃で1hr反応を行ない、その後、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した後、ジメチルジビニルシランを30ml、ジイソプロピルジメトキシシランを30ml、トリエチルアルミニウムを80g添加し、40℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。再度、精製したn−ヘプタンを導入して、固体触媒成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、トリエチルアルミニウムを10g添加し、280gのプロピレンを4hrかけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って予備活性化処理(予備重合処理)した固体触媒成分を得た。分析の結果、固体触媒1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。
【0070】
3)重合
内容積2000リットルの流動床式反応槽を2個連結してなる連続反応装置を用いて重合を行った。まず第1反応槽で、重合温度65℃、プロピレン分圧2.0MPa、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.27となるように連続的に供給するとともに、有機アルミ化合物としてトリエチルアルミニウムをAl/Mgモル比が6となるよう、25mmol/hにて、連続的に供給した。固体触媒はポリマー重合速度が12kg/時になるように供給した。第1反応槽で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)は、空塔速度が0.35m/secとなるように流動させ、また、反応槽内のパウダー保有量が、平均して30kgとなるように1回約2Kgずつ間欠的に、5〜10分に1回ベッセルに抜き出した後、更に第2反応槽に移送した(第1段重合工程)。なお、第1段重合工程から第2段重合工程への重合体の移送は、受器(30)に設置されたレベル計を使用し、実施例1記載の受器(30)バルブシーケンス動作に基づいて実施した。MFRは135g/10分であった。触媒単位重量当たりの重合体収量は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP法)により測定した重合体中のMg含有量から算出した。Mg含有量は、8.4ppmであった。
第1段重合工程に引き続き、内容積2000リットルの流動床式反応槽にて第2段重合工程の重合を実施した。第2反応槽では、重合温度60℃で、圧力2.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.32となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.10となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して0.8倍モルになるように供給した。第2反応槽で重合したパウダーは、空塔速度が0.40m/secとなるように流動させ、また、反応槽内のパウダー保有量が、平均して30kgとなるように1回約2Kgずつ間欠的に、5〜10分に1回ベッセルに抜き出した後、更に別のベッセルに移送し、そこでは、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止、残留ガスをパージさせ、プロピレン系ブロック共重合体を得た(第2段重合工程)。
得られたプロピレン系ブロック共重合体の一部はMFRの測定、および赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン含有量の測定、各種機械物性およびゲルの測定に供した。MFRは30g/10分、第2段重合工程で製造された第2段重合体の重合比率は、得られたプロピレン系ブロック共重合体全体を基準として26重量%、また、第2段重合体中のエチレンの重合比は、第2段重合工程で重合された重合体を基準として38重量%であった。
得られたプロピレン系ブロック共重合体4kgにフェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を2.0g、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトを2.0g、中和剤として、ステアリン酸カルシウムを2.0g添加し、およびタルクを12g加え、高速攪拌式混合機(ヘンシェルミキサー)を用いて、室温下にて2分間混合し、混合物をスクリュウ径40mmの押出造粒機を用いて造粒した。次いで、造粒物からテストピースを射出成形機を用いて溶融樹脂温度250℃、金型温度50℃で作成した。得られたテストピースを湿度50%、室温23℃の室内で72時間状態調整して機械物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例4)
第1段重合工程での水素/プロピレン比、第2段重合工程での水素/エチレン比、エチレン/プロピレン比およびエタノール/TEA比を変えた以外、およびプロピレン系ブロック共重合体を造粒する際、タルクを除いた以外は比較例3に準拠して実施した。結果を表1に示す。
【0072】
(比較例5)
受器(30)の弁(B)作動シーケンスにおいてレベル計作動を使用せず、受器(30)の圧力が2.1MPaとなった時点で閉めるようにした以外は実施例1に準拠して実施した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、本発明の製造方法の特定事項である、「内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御する装置」との要件を満たさない方法である比較例1〜5で得られたものは、光沢が高く、あるいはゲルの発生が多いプロピレン系ブロック共重合体であるのに比べて、本発明の製造方法の実施例によるポリプロピレン系ブロック共重合体組成物は、光沢とゲルの発生が抑制されたプロピレン系ブロック共重合体である事が分かる。
具体的には実施例1と比較例1の比較において、第2段重合工程を「完全混合槽型反応槽」とすることで、光沢が抑制されることが分かる。また、実施例1と比較例3の比較において、第1段重合工程を「内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽」とすることで、ゲルの発生が抑制されることが分かる
実施例1と比較例5では、いずれも「内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備される装置」にてプロピレン/α−オレフィン共重合体成分を製造する例であるが、第1段重合工程から第2段重合工程へ重合体を移送する際、レベル計を使用せず、受器の圧力変化にてシーケンス作動させた例である。この場合、第2段重合工程における反応ガス組成の乱れ(変動)が大きくなり、結果としてプロピレン系ブロック共重合体の光沢が上昇することが分かる。これは、第2段重合工程にて、より均一な反応ガス組成が得られる「完全混合槽型反応槽」を採用したにもかかわらず、その重合体移送工程において反応ガス組成の乱れを生じさせ、結果、プロピレン系ブロック共重合体中のエチレン含有量の分布が広くなったためである。
従って、実施例1及び2により、本発明の特定事項である、重合装置の使用、各重合工程でのプロセスを規定すること、および本発明で開示された重合体の移送方法の使用で、光沢およびゲル発生の抑制という点で、優れた結果が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の製造方法は、光沢とゲルの発生を抑制されたプロピレン系ブロック共重合体が得られることから、外観の優れた射出成形品や押し出し成形品を得ることが可能である。加えて、連続気相重合方法であることから、より安価で品質的に安定したプロピレン系ブロック共重合体の供給が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体を多段連続気相重合法で製造するための反応装置であって、内部に水平軸回りに回転する撹拌機を有する横型反応槽と、該横型反応槽に連結する完全混合槽とが、それぞれ少なくとも1槽以上具備され、かつ、横型反応槽と完全混合槽との間には、レベル計を有する受器が設けられ、両槽間を移送すべき重合体の量を制御することを特徴とするプロピレン重合反応装置。
【請求項2】
前記完全混合槽は、主に循環ガスの顕熱を利用して重合熱の除去を行なう反応槽であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項3】
前記完全混合槽は、縦型撹拌槽、攪拌式流動床反応槽又は流動床反応槽から選ばれる反応槽であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項4】
前記完全混合槽は、流動床反応槽であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項5】
前記横型反応槽は、L/Dが5以上(L:水平長手方向の長さ、D:内径)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項6】
前記横型反応槽の直後に、受器を介して前記完全混合槽が設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項7】
前記受器は、前記横型反応器の重合体抜き出し口の直下であって、かつ、前記完全混合槽の重合体入り口より高い位置に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項8】
前記受器は、ガス導入弁及びガス排出弁を備えるものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレン重合反応装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロピレン重合反応装置を用いて、オレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンの多段連続気相重合を行なうことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記横型反応槽においてプロピレンを単独重合又はプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が95重量%以上である重合体成分(A)を製造する第1段重合工程を行ない、引き続き、前記完全混合槽においてプロピレンとα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)とを共重合して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が70〜10重量%である共重合体成分(B)を製造する第2段重合工程を行なうことを特徴とする請求項9に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−116971(P2011−116971A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245319(P2010−245319)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】