説明

プローブ、バイオチップおよびそれらの使用方法

本発明はヘアピンループを形成することができる無マークのポリヌクレオチドプローブの使用、前記プローブを含むバイオチップ、およびその使用方法に関する。本発明はさらに前記プローブおよびバイオチップを生産するための方法に関し、より詳しくは、本発明は、ポリヌクレオチド配列および場合によっては関連分子の操作と解析のための、前記無マークのプローブおよびバイオチップの使用に関する。さらに、本発明は、突然変異の解析、配列決定、選択的スプライシング変異体の検出、遺伝子発現の解析、対立遺伝子異常とヘテロ接合性喪失の解析、および前記有機体または前記有機体の残存物中に存在する全ての核酸の検出、のための前記プローブおよびバイオチップの調製および使用のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアピンループを形成できる無ラベルのポリヌクレオチドプローブの使用、前記プローブを含むバイオチップおよびその使用方法に関する。本発明はさらに、前記プローブおよびバイオチップの設計方法に関する。より詳細には、本発明はポリヌクレオチド配列および場合によっては関連した分子の操作および解析のための、前記無ラベルのプローブおよびバイオチップの使用に関する。さらに本発明は、突然変異の解析、配列決定、選択的スプライシング変異体の検出、遺伝子発現の解析、対立遺伝子不均衡およびヘテロ接合性喪失の解析、ならびに有機体または前記有機体から得られる残存物中に存在する核酸の検出のための前記プローブおよびバイオチップの調製方法および使用方法に関する。
【0002】
多くの異なる分子を含む試料中に存在する特定の分子の素性と存在度の迅速かつ正確な決定には、生物学および医学の分野で非常に関心が持たれている。特定の分子を検出するために多くのタイプのプローブおよび解析システム、例えば様々な核酸配列の検出を目指したプローブとバイオチップが創り出された。
【0003】
特定の核酸を検出するためのそのようなプローブの1つが、米国特許第5,118,801号に開示された「分子スイッチ」である。それはプローブの中心部分が標的配列とハイブリダイズする場合には、プローブの端と端が互いに相互作用することができないという原理に従って動作する。各分子スイッチプローブは2つの相補的末端を有しており、それは少なくとも10ヌクレオチドの長さであり、中心部分は15〜115ヌクレオチドの長さである。測定条件によって、開示されたプローブは「閉」と「開」の立体構造をとることができる。プローブが閉構造にあるときは、プローブの両端が互いにハイブリダイズして「ステム」を形成し、中心部分が「ループ」を形成する。開構造にあるときは、プローブの中心部分は、それに対してプローブが設計されている所定の相補的な標的配列とハイブリダイズする。この開構造が結果として、プローブの両端を解離させそれによって両端は互いに相互作用できなくなる。開示されたプローブの一端または両端が、プローブが所定の標的配列へハイブリダイズしたことを示す検出可能な信号を選択的に生成することに役立つ生物学的に機能的な核酸部分を含む。例えば、好ましい部分はRNAであって、それがRNA依存性RNAポリメラーゼにより指数関数的に複製され、放射性ヌクレオチドが複製物に取り込まれる。
【0004】
通常「分子ビーコン」と呼ばれる別の型のプローブは、上述のものと類似しており、米国特許第5,925,517号に開示されている(次も参照のこと:Tyagi et al.,1996,Nat Biotechnol. 14:303-308; Tyagi et al.,1998, Nat.Biotechnol.16:49-53; Matsuo T.1998, Biochimica Biophysica Acta. 1379:178-184; Sokol et al.1998, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:11538-11543; Leone et al.1998, Nucleic Acids Res.26:2150- 2155; Piatek et al.1998, Nat Biotechnol. 16:359-363; Kostrikis et at. 1998, Science 279:1228-1229; Giesendorf et al.1998, Clin.Chem.44:482-486; Marras et al.1999 Genet.Anal.14:151-156; Vet et at.1999, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 96:6394-6399)。分子ビーコンは、内部的に消光された蛍光団を有する分子であって、標的核酸に結合するとその蛍光が回復する。それらは、分子スイッチと同様に設計され,分子のループ部分が標的核酸分子に相補的なプローブ配列であり、ステムがプローブ配列の端にある相補的な「腕」配列のアニーリングによって形成される。1つの腕の端に蛍光部分が付着している。もう1つの腕の端に消光部分が付着している。標的分子が存在しない時には、この2つの部分が互いに非常に近接して、蛍光団の蛍光消光を引き起こす。プローブが完全に相補的な標的分子とハイブリダイズすると、分子ビーコンは立体構造変化をして、ステム部分が引き離されそのために蛍光団と消光団が互いに遠ざかる結果となる。これにより、分子ビーコンのその標的分子とのハイブリダイゼーションを、蛍光の出現を通じて検出できる。
【0005】
現在、バイオチップシステムが、複雑な試料中の特定の物質の検出および測定に、広く用いられている。そのようなシステムにおいては、試料中の標的物質の素性と存在度を、標的配列とその標的配列用に特別に設計したプローブとの結合レベルを測定することにより決定する。核酸バイオチップ技術においては、各プローブが所定の配列を有する一組の核酸プローブを、各プローブが所定の領域に固定されるようにして、固体支持体上に固定する。固定されたプローブの組、即ちバイオチップを試料と接触させ、固定されたプローブの配列と相補的な配列がプローブと会合できるように、例えばハイブリダイズ、アニールまたは結合するようにする。会合しなかった材料を除いたのち、会合した配列を検出し測定する。
【0006】
DNAバイオチップ技術が、多数の遺伝子転写物の発現レベルを同時にモニターすることを可能にした(例えば、Schena et al.,1995, Science 270:467-470; Lockhart et al., 1996, Nature Biotechnology 14:1675-1680; Blanchard et al.,1996, Nature Biotechnology 14:1649; Ashby et al., US Patent No.5,569,588 issued October 29,1996を参照のこと)。バイオチップ技術はまた、生物学的巨大分子の配列決定、フィンガープリント、およびマッピングに用いられてきた(US Patent No.6,270,961 issued August 7, 2001; US Patent No.6,025,136 issued February 15,2000; US Patent No.6,018,041 issued January 25, 2000; US Patent No.5,871,928 issued February 16, 1999; US Patent No.5,695,940 issued December 9, 1997)。DNAバイオチップには2つの主様式がある。これらの様式の1つにおいては、DNAバイオチップを、約数10塩基から数千塩基にわたるサイズのDNA断片を適当な表面に沈着させることによって調製する(例えば、DeRisi et al.,1996, Nature Genetics 14:457-460; Shalon et at, 5 1996, Genome Res. 6: 689-645; Schena et al., 1995, Proc. Natl.Acad.Sci. U.S.A. 93:10539-11286; and Duggan et al.,Nature Genetics Supplement 21:10-14参照)。例えば、ドットまたはメンブレンDNA/DNAハイブリダイゼーション(サザンブロッティング)などのブロット分析においては、核酸分子を例えば、初めにサイズによりゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロースまたはナイロンメンブレンなどのメンブレンフィルターに転写し固定して、単一のラベルされた配列とハイブリダイズさせる(例えば、Nicoloso, M. et al., 1989, Biochemical and Biophysical Research Communications 159:1233-1241; Vernier, P. et al. 1996, Analytical Biochemistry 235:1119、参照)。cDNAバイオチップは、全長のcDNA、EST(発現配列タグ)その他から得られたサイズが約0.6〜2.4kbの範囲のcDNA断片のポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)産物を適当な表面に沈着させることにより調製する(例えば、DeRisi et al., 1996, Nature Genetics 15 14:457-460; Shalon et al., 1996, Genome Res. 6:689-645; Schena et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:10539-11286; and Duggan et al., Nature Genetics Supplement 21:1014参照)。高密度オリゴヌクレオチドバイオチップと呼ばれる他のバイオチップ様式は、表面の所定の位置に所定の配列に相補的な数千のオリゴヌクレオチドを含む。これらのオリゴヌクレオチドは、表面のその場所で、例えばフォトリソグラフを用いて合成される(例えば、20 Fodor et al.1991, Science 251:767-773; Pease et al.,1994, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:5022-5026; Lockhart et al.,1996, Nature Biotechnology 14:1675; US Patent Nos.5,578,832; 5,556,752; 5,510,270; 5,445,934; 5,744,305; and 6,040,138 参照)。インサイツでのオリゴヌクレオチド合成のための、インクジェット技術を用いたバイオチップ生成方法もまた周知である(例えば、Blanchard,International Patent Publication WO98/4153,125,published September 24, 1998; Blanchard et al, 1996, Biosensors and Bioelectronics 11:687-690; Blanchard,1998,in Synthetic DNA Biochips in Genetic Engineering, Vol. 20, J.K. Setlow, Ed., Plenum Press, New York at pages 111-123 参照)。
【0007】
これらの技術的進歩にもかかわらず、この分野で高処理能力の遺伝子および遺伝子産物の特性決定(例えば、単一ヌクレオチド多型性(“SNP”)の検出、多数の連続的な単一または複数ヌクレオチドの挿入および/または欠失、遺伝子配列決定、遺伝子発現解析、選択的スプライシングの検出、ヘテロ接合性喪失の解析、および任意のヌクレオチド含有有機体またはその残存物の検出)に有用な改良されたバイオチップと方法の必要性が依然として存在する。現存するバイオチップに存在する幾つかの問題には、プローブのサイズおよび位置調整、全てのプローブに対する単一の測定条件が欠けていること、バイオチップにデッドスペースをもたらすG/C含量のために複数のプローブが必要なこと、各配列を検出するために複数のPCRオリゴヌクレオチドが必要なこと、および各標的をラベルする必要があることが含まれる。本発明は、これらの必要性に応えるものである。
【0008】
本発明は、無ラベルのヘアピンを形成することのできる核酸プローブ、本発明の複数のプローブを含むバイオチップおよびそれらの使用方法を目的とする。ヘアピンを形成できる各ポリヌクレオチドプローブは、各側端の互いに相補的な2つの配列に挟まれた標的特異的な配列を含む無ラベル一本鎖の核酸である。各プローブが2つの立体構造を取ることができる。1つの立体構造は、「閉」または「ヘアピン」構造であって、相補的なプローブ端が互いにハイブリダイズして「ステム」を形成し、一方標的特異的配列が「ループ」を形成する(標的特異的配列はプローブの他のどの部分ともハイブリダイズしない)。この閉構造は、他の相補的な配列が腕(ステムを形成するプローブの端)に結合するのを排除する。第2の立体構造は「開」構造であり、ループを作る標的特異的な部分が標的分子とハイブリダイズして、2つの相補的な端を互いに解離させる。この開構造は、2つの相補的な端が再アニーリングすることを排除して、この端に相補的な他の配列が前記の端とハイブリダイズするのを許す。好ましい実施態様において、標的とのハイブリダイゼーションを、「レポーター」分子を用いて検出する。これは、本発明のフリーのプローブ端の少なくとも1つにハイブリダイズするよう特別に設計されている。
【0009】
本発明の各ヘアピンプローブを、単一のヌクレオチド変異(例えば、単一ヌクレオチドの置換、欠失、または挿入)、または大きな挿入および欠失はもちろん、短い配列によって隔てられた数個のヌクレオチドの変異を有する特異的な標的分子を区別するように設計することができる。各ヘアピンプローブは、そのために特別に設計された標的とハイブリダイズするときは開となるよう設計されているので、標的を区別し検出することができる。この区別できる能力によって、1つの溶液中の複数の配列をスクリーニングすることができる。好ましい実施態様において、バイオチップが本発明の2以上のプローブを含み;標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドは、4℃の範囲以内で等しい融解温度を持つ。もう1つの好ましい実施態様において、標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドは、3℃の範囲以内で等しい融解温度を持つ。より好ましくは、標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドは、1℃の範囲以内で等しい融解温度を持つ。
【0010】
別の好ましい実施態様において、本発明による各プローブの標的特異的配列は、6〜30ヌクレオチドの長さであり、好ましくは10〜25ヌクレオチドの長さ、より好ましくは15〜20ヌクレオチドの長さである。好ましい実施態様において、本発明による各ヘアピンプローブのステムを含む末端のおのおのは、少なくとも10ヌクレオチドの長さから成り、好ましくは5〜9ヌクレオチドの長さである。
【0011】
したがって本発明は、無ラベルのヘアピンを形成することのできる核酸プローブであって、
(a)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;
(b)10ヌクレオチドより長さが短く、標的特異的配列の5’側にある第1腕;および
(c)10ヌクレオチドより長さが短く、標的特異的配列の3’側にある第2腕、
を含むヘアピンを形成することのできる核酸プローブに関する。ここで、標的特異的配列は前記プローブの他のどの部分とも相補的でなく;さらに第1腕と第2腕は互いに完全に相補的である。
【0012】
好ましい実施態様において、標的特異的配列は10〜25ヌクレオチドの長さで、より好ましくは15〜20ヌクレオチドである。好ましくは、標的特異的配列が標的分子とハイブリダイズするとき、プローブが開構造を取り、「レポーター」分子が第1または第2腕とハイブリダイズする。「レポーター」分子は10より少ないヌクレオチドを含み、第1腕または第2腕の核酸配列と完全に相補的である。「レポーター」分子は検出可能なマーカーを含む。検出可能なマーカーは、ヌクレオチド類似体、蛍光ラベル、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、ポリペプチド、電子豊富分子、酵素、または放射性同位元素である。好ましくは、Dtm (標的特異的配列と標的配列の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)と、第1と第2腕の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)との差)が10より大きく、より詳しくは15より大きい。あるいは、Dtmは10より低い。
【0013】
本発明はさらに、少なくとも1つの本発明のプローブと、少なくとも1つの「レポーター」分子を含む組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、無ラベルのヘアピンを形成することのできるプローブのバイオチップであって:
(a)基板;および
(b)少なくとも2つの本発明のプローブ、
を含むバイオチップに関する。
【0015】
好ましい実施態様においては、プローブが基板に付着している。あるいは、前記プローブがさらにリンカーを含み、前記リンカーによって基板に付着している。基板は、機能性ガラス表面、機能性プラスチック表面、機能性金属表面、伝導性金属表面、伝導性プラスチック表面、多孔性基材、多孔性金属、光ファイバー、ガラス繊維由来の基材、二酸化ケイ素、機能性脂質膜、リポソーム、または濾過メンブレンから成る。より詳しく言えば、機能性プラスチック表面がポリスチレンから成っていてもよく;機能性金属が白金、金、またはニッケルであってもよく;伝導性プラスチック表面が炭素ベースの基材でもよく、この基材が場合によってはポリマーでもよく;また多孔性基材がガラスであってもよい。ある実施態様において、各プローブの全ての第1腕は同一の配列を有する。したがって、同一の「レポーター」分子が各プローブとハイブリダイズする。好ましい実施態様において、標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドが、4℃の範囲以内で等しい融解温度を持ち、より好ましくは1℃以内である。好ましくは、標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドの融解温度と、標的特異的配列と標的特異的配列設計の対象でない分子との会合により形成されるハイブリッドの融解温度との差は、5℃以上であり、より好ましくは、8℃である。好ましい実施態様において、少なくとも2つのプローブのDtmが1℃以内の範囲で等しい。
【0016】
本発明のある特定の実施態様は、汎用アドレス指定システムに関する。そのシステムでは、本発明の固定されたヘアピンプローブの標準化バイオチップを、標的分子を検出するための固定されていない標的特異的なヘアピン状または直鎖状プローブと共に用いる。
好ましくは、固定されていないプローブはヘアピン型である。
【0017】
本発明はまた、無ラベルの汎用アドレス指定システムであって、
(a)
(i)長さが6〜30ヌクレオチドの標的特異的配列;および
(ii)10〜50ヌクレオチドの長さで、前記標的特異的配列の5’端に結合されたタグ配列と呼ぶ配列、
を含む少なくとも2つの無ラベルの第1プローブを含み(ここで前記標的特異的配列は前記無ラベルプローブの他のどの部分とも相補的でない);
(b)本発明のバイオチップ、
を含むシステムに関する。
好ましくは、前記無ラベルの第1プローブは:
(i)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の5’側にある第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の3’側にある第2腕;および
(iv)10〜50ヌクレオチドの長さで、第1腕または第2腕に結合されたいわゆるタグ配列、
を含み、ここで、標的特異的配列が前記無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的ではなく;さらに第1腕および第2腕は互いに完全に相補的である。
【0018】
好ましくは、第1プローブの全ての第1腕は同一の配列を与える。
そうすると、同一の「レポーター」分子が第1および第2プローブの一方または他方とハイブリダイズできる。
【0019】
好ましくは、バイオチップは、無ラベルのヘアピンを形成することのできる少なくとも2つの第2プローブを含み、その第2プローブは:
(i)6〜30ヌクレオチドの長さの、第2標的に特異的な配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の5’側にある前記第2プローブの第2第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の3’側にある前記第2プローブの第2第2腕;および
(iv)第1腕または第2腕を基板に結合するリンカー、
を含む。第2プローブの前記標的に特異的な前記配列は、前記第2プローブのどの他の部分とも相補的ではなく;前記第2プローブの前記第1腕および前記第2腕は互いに完全に相補的であり;そしてさらに、前記タグに結合した腕配列により完成された第1プローブのうちの1つの前記タグ配列は、第2プローブのうちの1つの前記第2の標的配列と相補的である。
【0020】
本発明はまた、本発明のプローブとバイオチップの作製方法に関する。
【0021】
本発明はさらに、本発明のプローブとバイオチップの使用方法に関する。本発明の具体的な実施態様は、突然変異解析、配列決定、遺伝子発現解析、ヘテロ接合性喪失と対立遺伝子不均衡の解析、および任意の核酸を含む有機体またはそれの残存物の検出、を目的とする。
【0022】
本発明は核酸の検出方法であって、
(a)生体外で核酸試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップと接触させること;および、
(b)工程(a)の接触の結果開構造を取っている、バイオチップの少なくとも1つの前記プローブからの信号を検出すること;
を含む方法に関する。
【0023】
本発明はさらに、生体外で核酸試料中の遺伝的変異体を検出する方法であって、
(a)核酸試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップに接触させること(ここでバイオチップの少なくとも1つのプローブは、遺伝的変異体に特異的なプローブであり、前記遺伝的変異体と完全に相補的なループ領域を有する);および
(b)前記遺伝的変異体に特異的なプローブからの信号を検出すること(ここで工程(b)において検出される信号が核酸試料中に前記遺伝的変異体が存在することを示す)、
を含む方法に関する。
【0024】
好ましくは、検出される遺伝的変異体は単一ヌクレオチド多型である。
【0025】
本発明は、生体外で、任意の核酸を含む有機体またはその残存物を検出する方法であって、
(a)核酸試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップに接触させること(ここで、少なくとも1つのプローブは、有機体またはその残存物の核酸に特異的である);および
(b)前記プローブからの、核酸を含む有機体に特異的な信号を検出すること、
を含む方法に関する。なお工程(b)で検出される信号は、核酸を含む有機体またはその残存物の存在を示す。
【0026】
好ましくは、核酸を含む有機体はウイルスまたは細菌である。
【0027】
本発明はさらに、生体外で核酸試料中の遺伝子の選択的スプライシング産物を検出する方法であって、
(a)核酸試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップに接触させること(ここで、バイオチップの少なくとも1つのプローブは、遺伝子のエクソンに特異的であるかまたは2つのエクソンの接続部に特異的なプローブである);および
(b)遺伝子のエクソンに特異的な、または2つのエクソンの接続部に特異的なプローブからの信号を検出すること、
を含む方法に関する。なお工程(b)で検出される信号が、核酸試料中に遺伝子の選択的スプライシング産物が存在することを示す。
【0028】
好ましくは、核酸試料は、mRNAまたはcDNAを含む。
【0029】
本発明はまた、生体外でオリゴヌクレオチドの配列決定をする方法であって、
(a)オリゴヌクレオチドを含む試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップに接触させること;および
(b)バイオチップの少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む方法に関する。なお工程(b)で検出される信号を、オリゴヌクレオチドの配列の決定に使用する。
【0030】
好ましくは、前に記載された方法の工程(b)で検出される信号を、検出可能なマーカーでラベルされた1つの「レポーター」分子を用いて取得する。工程(a)の試料が、既に検出可能なマーカーでラベルされていてもよい。
【0031】
本発明はまた、対立遺伝子不均衡とヘテロ接合性喪失を生体外の核酸試料中で検出する方法であって、
(a)生体液または組織からの少なくとも2つの核酸試料からの1対のプライマーを用いて、少なくとも1つのマイクロサテライト型の染色体DNA領域を増幅すること(ここで、細胞または組織から得た少なくとも1つの試料は対立遺伝子不均衡またはヘテロ接合性喪失を有しておらず、さらにここで、各組織または流体が増幅中に区別してラベルされる。);
(b)前記プライマーを増幅後に除去すること;
(c)前記増幅産物を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップと接触させること(ここで、バイオチップの少なくとも1つのプローブが前記染色体DNA領域の増幅に用いたプライマーと相補的である。);および、
(d)前記バイオチップの少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む方法に関する。なおなお工程(d)で検出する信号を、核酸試料の1つの中の対立遺伝子不均衡またはヘテロ接合性喪失の存在を決定するために用いる。
【0032】
本発明は生物学的および医学的試料中の様々な分子の存在または不在を決定するための本発明のプローブのバイオチップを含むキットを目的としている。各キットは、本発明のプローブを含む少なくとも1つのバイオチップ、および特異的な標的分子を検出するために必要な1または数個の追加の試薬を含む。加えて、キットが1組の固定されていない本発明のプローブを含んでもよい。場合によっては、キットがさらに「レポーター」分子を含むこともできる。
【0033】
発明の詳細な説明
本発明は、無ラベルのヘアピンを形成することができるプローブ、複数個の本発明のプローブを含むバイオチップ、および本発明のプローブとバイオチップを調製し使用する方法に関する。それを以下に詳しく記載し、また実施例を挙げる。
【0034】
ヘアピンを形成することができるプローブ
本発明は、ヘアピンを形成することができるプローブのバイオチップであって、
(a)基板;および
(b)(i)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、標的特異的配列の5’側にある第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、標的特異的配列の3’側にある第2腕;および、
(iv)第1腕または第2腕を前記基板と連結するリンカー;
を含む、少なくとも2つのヘアピンを形成することができる無ラベルのプローブ、
を含むバイオチップに関する。ここで、標的特異的配列は前記無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的でない。さらに、各プローブの第1腕と第2腕とは互いに完全に相補的である。
【0035】
「無ラベル」とは、プローブが検出可能なマーカーを含まないことであると理解される。例えば、プローブが、プローブの直接検出を可能にするヌクレオチド類似物質、蛍光ラベル、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、ポリペプチド、電子豊富分子、酵素、または放射性同位元素を含まない。
【0036】
本発明の無ラベルヘアピンプローブの2つの例を図1Aと1Bに示す。本発明の目的のために、ヘアピンプローブは、標的特異的配列を有する6〜30ヌクレオチドの長さの、好ましくは10〜25ヌクレオチドの長さの、極めて好ましくは15〜20ヌクレオチドの長さの「ループ」101、および標的特異的配列の両側にある2つの端、即ち「腕」、を含む一本鎖核酸である。1つの腕102は標的特異的配列の3’端に結合していて、もう1つの腕103は標的特異的配列の5’端に結合している。好ましくは、各腕は他の腕のヌクレオチドと完全に相補的な10より少ないヌクレオチドを含む。より好ましくは、各腕は他の腕のヌクレオチドと完全に相補的な4〜9のヌクレオチドを含む。最も好ましくは、各腕は他の腕のヌクレオチドと完全に相補的な6〜8のヌクレオチドを含む。もし2以上のヘアピンプローブが同時に用いられるならば(例えばバイオチップ中で)全てのヘアピンプローブが同一の腕配列構成を有するように設計してもよい。
【0037】
本発明のヘアピンプローブは、また「リンカー」104を含んでもよい。ここで用いるように、リンカーとはヘアピンプローブの1腕に結合されている分子を指し、ヘアピンプローブのバイオチップを形成するために、ガラススライド(それに限られないが)などの基板105にヘアピンプローブを永久に固定する手段である。図1bに示すように、本発明のヘアピンプローブはまた「タグ」配列106を有してもよい。これは好ましくは、追加の5〜50ヌクレオチド、より好ましくは5〜20ヌクレオチドであり、また汎用アドレス指定システム中で使用することができる。そのような配列タグは、ヘアピンプローブを、タグまたはタグの一部と完全に相補的な固定されたバイオチップ配列とハイブリダイズさせることによって、バイオチップの特定の場所に「アドレス指定」するために使用することができる。
【0038】
ヘアピンプローブ設計
ヘアピンプローブを、一定濃度の塩、一定の温度、および一定濃度の1以上の付加的な化学物質、例えばホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、テトラメチルアンモニウムクロリドおよび界面活性剤など、と共に使用するように設計できる。ヘアピンプローブを用いるための一定の温度を、始めに標的特異的配列と標的分子の融解温度「Tm」を「最近傍」Tm計算方法によりMeltcalcソフトウエアを用いて計算して取得できる(Schutz, E. et al. 1999. Biotechniques 27:1218-1224.; Allawi H.T. et al. 1998. Biochemistry 37(8): 2170-9; Allawi H.T. et al. 1997. Biochemistry 36:10581-94; Peyret N. et al. 1999. Biochemistry 38:3468-77、参照)または(Oligo 6, Molecular Biology Insights, Inc., Cascade, CO.; Meltcalc, www.meltcalc.de、参照)。Meltcalcはミスマッチのあるまたはミスマッチのないオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの熱力学的融点を計算する表計算ソフトウエアである。Melcalcは様々な塩およびオリゴヌクレオチド濃度に基づいてオリゴヌクレオチドの融解温度を与える。標的と標的特異的配列の間に形成されるハイブリッドの好ましいTm(「標的特異的配列と標的分子の間に形成されるハイブリッドのTm」)が100nM標的特異的配列と100mM塩濃度において60±10℃であり、ナトリウム(NaCl)とマグネシウム(MgCl2)が好ましい塩である。
【0039】
2以上のヘアピンプローブを同時に使用するように設計するときは、標的特異的配列とヘアピンプローブの標的分子の会合により形成されるハイブリッドの各Tmが、全ての他のヘアピンプローブの標的特異的配列とその標的分子の会合により形成される完全なハイブリッドのTmとほぼ等しいことが好ましい。好ましくは、標的特異的配列と標的分子の会合により形成されるハイブリッドのTmの差が4℃以内である。より好ましくは、標的特異的配列と標的分子の会合により形成されるハイブリッドのTmの差が3℃以内である。さらにより好ましくは、標的特異的配列と標的分子の会合により形成されるハイブリッドのTmの差が2℃以内である。最も好ましくは、標的特異的配列と標的分子の会合により形成されるハイブリッドのTmの差が1℃以内である。標的特異的配列が標的分子と会合して形成するハイブリッドの各Tmの変化は、標的特異的配列の幾つかの操作によって得られる。例えば、標的特異的配列と標的分子間に形成されるハイブリッドのTmは、標的特異的配列中の塩基の数を変化させることにより増加させたり減少させたりすることができるが、これには限られない。標的分子に会合するヌクレオチド数が増加することによる標的特異的配列のヌクレオチド数の増加が、標的特異的配列が標的分子と会合して形成するハイブリッドのTmを増大させる。逆に、標的分子に会合するヌクレオチド数の減少による標的特異的配列のヌクレオチド数の減少が、標的特異的配列が標的分子と会合して形成するハイブリッドのTmを低下させる。標的特異的配列が標的分子と会合して形成するハイブリッドのTmを変更する他の手段を以下に述べる。
【0040】
一旦、標的と標的特異的配列間のハイブリッドのTmが許容範囲内にあるループ配列を設計すると、腕を互いに相補的になるように設計してループ配列に付加することができる。好ましくはステムのG/C含量は80%であり、好ましいTm値が40〜80℃である。いったん各プローブを設計した場合は、mfold (Zuker, M. mfold-2.3. fttp://snark.wustl.edu)を、ヘアピンプローブ内に余計な内部ループが存在せず、またステムのヌクレオチドの会合のみによりプローブがヘアピン構造をとっていることを証明するために使用する。各ループと測定に用いる他のヌクレオチド配列(例えば、解析されるものと異なるPCR産物、解析されるものと異なるcDNA)間に相同性が存在しないことを、次に検査する。全てのヘアピンプローブを各PCR産物とアラインメントすることは、LALIGN(http://fasta.bioch. virginia.edu/fasta/lalign.html)またはLFASTA(http://www.2.igh.cnrs.fr/fasta/lfasta-query.html)などのアラインメント手段を用いて実行する。
【0041】
解析する配列と相補的な各プローブに対して、ループのTmとステムのTmの間の差を次の式を用いて計算する:
Dtm=Tms−Tml,ここで、Tm=ステムTm、およびTml=ループTm、であり、Tmは先に記載した通りに決定する。より詳細には、ステムのTmはプローブの第1および第2腕が会合して形成するハイブリッドの融解温度(Tm)である。ループのTmは標的分子と標的特異的配列の間に形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)である。
【0042】
好ましい実施態様において、Dtmは各プローブに対して10より大きく、好ましい値は15に近く(例えば、12〜17の間、好ましくは13〜16または14〜16の間);例えば15に等しい。しかし、信号感度をプローブの識別能力よりも優先させなければならないような目的のためには、Dtmは10より低くてもよい。
【0043】
実験において同時に用いる1組のプローブ(より具体的にはプローブバイオチップとして)に対して、1組のプローブに対するDtm値の分布は10より大きい値の所に中心があり、好ましくは平均値が15で、標準偏差が5である。しかし、信号感度をプローブの識別能力よりも優先させなければならないような目的のためには、この平均Dtm値は10より小さく、標準偏差が5でもよい。
【0044】
1つの配列の2つの対立遺伝子(多型性または突然変異)を解析するために同時に使用する2つのプローブに対しては、これらのプローブのDtm値はできるだけ近くなければならない。1つの配列の2つの異なる対立遺伝子の解析に用いる2つのプローブのDtmは2の範囲内で等しく、好ましくは1の範囲内で等しい。これらのDtm値は好ましい値であり、ある場合、塩基組成が等しいDtm値を得るには適当でないような場合には、1対のプローブに対して<1または>2の範囲で許容できる。
【0045】
ヘアピンプローブの固定とバイオチップ
ヘアピンプローブを基板上に固定または包含させて、1以上の標的分子に対して配列特異性を有するヘアピンプローブのバイオチップなど(これに制限される訳ではないが)の製品を形成することができる。またヘアピンプローブをビーズまたはサブミクロンの粒子(これらに制限される訳ではないが)などの様々な基板に固定してもよい。各標的特異的ヘアピンプローブを、それを固定した後に、各ヘアピンプローブを他から区別している物理的、化学的、または光学的性質により特定することができる。プローブをまた、2次元システムまたは個別のアドレス指定システムを用いて、固体表面において直接合成できる。ヘアピンプローブの固定化が起こるために、ヘアピンプローブは、既に述べたように少なくとも1つの結合した部分、「リンカー」を含む。リンカーを有するヘアピンプローブはまた、リンカーに親和性を持ち基板に付着した部分によって固定されてもよい
【0046】
標的分子の検出を、好ましくは本発明のプローブのバイオチップを用いて行う。バイオチップは、支持体上の、例えば固体基板上の、位置をアドレス指定できる結合部位の組織体であって、そこで各ヘアピンプローブが支持体の表面上に固定される。好ましくは、本発明で用いる基板は、ヘアピンプローブの共有結合的固定に適した化学基を作るためにシラン処理により修飾されたガラスのスライドであるが、それに限られない。これらの基には第1級アミン、チオール、カルボキシル、またはアルデヒドがあるが、それらに限られない。固定化に有用な他の表面には、二酸化シリコン、ポリスチレンのようなプラスチックポリマーまたは金属表面またはガラス状カーボンのような伝導性支持体が有るが、それらに限られない。支持体は多孔質または非多孔質でよい。例えば、ヘアピンプローブをニトロセルロースまたはナイロンメンブレンもしくはフィルターに付着させてもよい。本発明の具体的な実施形態は、次のような無ラベルのヘアピンプローブを目標とする。即ち、基板が、アミノ化またはチオール化されたプローブと反応して共有結合リンクをつくることができる部分を保持する、シランによりシラン化して得られる機能性ガラス表面、アミノ化またはチオール化されたプローブと反応して共有結合リンクを作るのに適した官能基を化学的または電気化学的酸化などで作ることにより得られる機能性プラスチック表面、伝導性金属表面、伝導性プラスチック表面、多孔性基材(ガラスが好ましい)、多孔性金属、光ファイバー、ガラスファイバー由来の基材、二酸化ケイ素、機能性脂質膜、リポソーム、または濾過メンブレンから成る。より詳しくは、好ましい機能性プラスチック表面はポリスチレンであり;好ましい機能性金属表面は白金、金、またはニッケルであり;好ましい伝導性プラスチック表面は炭素ベースの基材で、この好ましい炭素基材はポリマーである。
【0047】
プローブの付着のためのそのような方法は周知である(例えば、Cass et al., eds., 1998, Immobilized Biomolecules in Analaysis, A practical approach, Ed., Oxford University Press, Great Clarendon Street, Oxford、参照)。
【0048】
ヘアピンプローブバイオチップを周知の方法のどれを用いても作製できる。しかし、生産されたバイオチップは一般に一定の性質を共有する。本発明のヘアピンプローブバイオチップは再現可能であり、所定のバイオチップの複数のコピーを生産し、容易に互いに比較できる。ヘアピンプローブのバイオチップへの固定は、通常の配列器による流体移動、または動電学的移動若しくは電気活性ポリヌクレオチドの電気的重合を通じて、またプローブを直接表面に化学的に結合させ、プローブを固形支持体に包含させる全ての方法により、または予め製造しておいたマスクのセットを用いるフォトリソグラフィ(この方法のために調製した修飾塩基を用いて)によるその場での合成、により得られる。本発明のバイオチップは、核酸ハイブリダイゼーションのために用いられる条件下で安定な材料から作製される。バイオチップは好ましくは小さく、例えば、1cm2〜25cm2の間であり、好ましくは1〜3cm2である。しかし、本発明ではより大きいバイオチップとより小さいバイオチップの両方を予想している。大きいバイオチップは、極めて多数の異なる標的を同時に評価するために好ましい。本発明のバイオチップ上のヘアピンプローブの密度は多様でよい。密度が、1cm2当たり数個(例えば、3,10、30)から100個の異なる(即ち同一でない)プローブの範囲であってもよいし、より高くてもよい。
【0049】
本発明において、ヘアピンプローブを、異なる標的配列特異性を持つ複数プローブのバイオチップとして固体表面に固定することができる。プローブの固定化を、各プローブの腕がそれ自身とまたは標的分子若しくは測定に用いられる他の物質と会合する能力をプローブが阻害しないようにして行う。上に指摘したように、本発明のプローブを、測定条件と相補的な核酸配列の存在・不存在に依存して2つの型の立体構造を取るように設計する。1つの構造が「閉」構造(ヘアピン)であり、この構造では両腕の配列は互いにハイブリダイズする。この構造は、これに都合の良い測定条件下、およびハイブリダイゼーション用プローブの標的特異的配列と会合する標的分子の不在のもとで得られる。第2の構造は「開」構造であり、腕の配列がハイブリダイズしていない。この立体構造は、標的特異的配列がそれの特異的標的と会合する時に検出できる。ヘアピンバイオチップを形成する好ましい方法は、一般にSchena et al., 1995, Science 270:467-470によって報告されているように、本発明のプローブをガラスプレートに直接接触させてまたは「印刷」して、表面に付着させることである。この方法はcDNAのバイオチップを調製するために特に有用である(DeRisi et al., 1996, Nature Genetics 14:457-460; Shalon et al., 1996, Genome Res. 6: 639-645; and Schena et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:10539-11286、参照)。バイオチップを作製する他の方法、例えばマスキングによるもの(Maskos and Southern, 1992, Nucl. Acids. Res. 20: 1679-1684)もまた用いることができる。原則として、上に指摘したように、いかなる型のバイオチップでも、例えば、ナイロンハイブリダイゼーションメンブレン上への「ドットブロット」(Sambrook, J. et al.,eds.,1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,New York、参照)であっても使用することができる。
【0050】
本発明のバイオチップは、オリゴヌクレオチド合成のためのインクジェット印刷装置によって、例えば、Blanchard, 国際公開WO98/41531, published September 24, 1998; Blanchard et al.,1996, Biosensors and Bioelectronics 11:687-690; Blanchard, 1998, in Synthetic DNA Biochips in Genetic Engineering, Vol. 20, J.K. Setlow, ed., Plenum Press, New York at pages 111-123; and US patent No. 6,028,189により記載された方法とシステムを用いて、製造できる。具体的には、そのようなバイオチップのヘアピンプローブを、好ましくは例えば、ガラススライド上に順次炭酸プロピレンなどの高表面張力溶媒の「微小液滴」中の個々のポリヌクレオチド塩基を順次沈着させることにより合成する。微小液滴は小さな体積(例えば100plまたはそれ以下、より好ましくは50plまたはそれ以下)を有し、バイオチップ上で互いに離れて(例えば、疎水的領域によって)、バイオチップの要素(即ち異なるプローブ)の位置を定義する円形の表面張力のウェルを形成する。ポリヌクレオチドのヘアピンプローブを、表面に共有結合的にヘアピンポリヌクレオチドの3’端または5’端で付着することができる。
【0051】
標的分子
本発明の方法と組成物により解析される標的分子には、核酸分子、特にメッセンジャーRNA(mRNA)分子、リボソームRNA(rRNA)分子、cRNA分子(即ち試験管内で転写してcDNA分子から調製するRNA分子)およびその断片などの(それらに限られないが)RNA分子が含まれる。本発明の方法と組成物によってさらに解析される標的分子には、ゲノムDNA分子、cDNA分子、およびオリゴヌクレオチド、EST、STS、マイクロサテライト配列などを含むそれらの断片などのDNA分子も含まれる。しかしそれらに限られない。本発明の方法と組成物によって解析される他の標的分子には、タンパク質、タンパク質を含む複合体、他の分子、およびDNAに親和性を有するそのような他の分子の複合体、例えば転写因子、DNA修復系のタンパク質、および抗−DNA抗体(それらに限られないが)、もまた含まれる(Fang, W. et al. 2000. Anal. Chem. 72:3280-5; Bar-Ziv, R. et al 2001.P.N.A.S. U.S.A. 98:9068-73; Hamaguchi, N. et al. 2001. Anal. Biochem. 294:126-31)。転写因子に対しては、ヘアピンプローブを、転写因子に対するどの推定上の親和性配列をヘアピンプローブのループ中に設計できるか、またどの配列が転写因子に対してより高い親和性を有するか、を決定するために使用することができた。
【0052】
標的分子はどのような供給源から得てもよい。例えば、標的分子は、有機体から単離されるゲノムまたはゲノム外のDNA分子、または有機体から単離されるmRNA分子のようなRNA分子、などの自然に存在する核酸分子でよい。あるいは、標的分子を合成してもよい。これらの標的分子は、例えばcDNA分子、またはPCRで合成されるポリヌクレオチド分子、試験管内転写で合成されるRNA分子などの生体内または試験管内で酵素的に合成される核酸分子でありうる。PCR法は周知であって、例えばInnis et al., eds.,1990, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press Inc., San Diego,CAに記載されている。標的分子の試料は例えばDNA、RNA分子、またはDNAとRNAのコポリマーを含んでもよい。本発明の標的分子は、特定の遺伝子、特定の遺伝子転写物、または特定の遺伝子転写物の断片(例えば、細胞中に発現される特定のmRNA配列またはそのようなmRNA配列由来の特定のcDNA配列)に対応している可能性がある。
【0053】
解析する標的分子を細胞から抽出した核酸から試験管内で調製することもできる。例えば、RNAを細胞から抽出できるし(例えば、全細胞RNA、ポリ(A)+メッセンジャーRNA、またはその断片)、またメッセンジャーRNAを全抽出RNAから精製できる。全RNAおよびポリ(A)+RNAの調製方法は周知であり、また一般に例えば上記のSambrook et al.によって記載されている。RNAは、本発明で興味ある様々なタイプの細胞から、チオシアン酸グアニジニウム細胞溶解とそれに続くCsCl遠心およびオリゴdT精製(Chirgwin et al.,1979, Biochemistry 18: 5294-5299)を用いて抽出できる。RNAはまた、細胞から、チオシアン酸グアニジニウム細胞溶解とそれに続くRNeasyカラム(Qiagen)による精製を用いて抽出できる。cDNAを、次に精製したmRNAから、例えばオリゴdTまたはランダムプライマーを用いて合成できる。標的分子は、精製したメッセンジャーRNAから、または細胞から抽出した全RNAから調製したcRNAでもよい。ここで用いるように、cRNAとは元のRNAと相補的なRNAであると定義する。抽出したRNAを次に増幅することができるが、それにはアンチセンスRNAの転写が開始できる方向にRNAポリメラーゼプロモーターとリンクされたプライマーを用いて二重鎖cDNAがRNAから合成される方法を用いる。アンチセンスRNA即ちRNAscを次に、二重鎖DNAscの第2鎖からRNAポリメラーゼを用いて転写できる(例えばU.S. Patent Nos. 5,891,636; 5,716,785; 5,545,522 and 6,132,997参照)。RNAポリメラーゼプロモーターを含んでいるオリゴdTプライマーを用いることができる。全RNAをcRNA合成の入力として用いることができる。T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を含んでいるオリゴdTプライマーを用いて第1鎖cDNAの合成を開始することができ、またランダムヘキサマープライマーを用いてMMLV逆転写酵素による第2鎖cDNA合成を開始することができる。この反応がT7 RNAポリメラーゼプロモーターを3’端に含む二重鎖cDNAを生成する。二重鎖cDNAを次に、T7 RNAポリメラーゼによってcRNAに転写することができる。合成された標的の濃度は、1μM〜50nMの濃度範囲で変化する可能性がある。PCRで合成された標的の濃度は、5ng/μl〜50ng/μlの間で変化する可能性がある。
【0054】
標的分子はPCRプライマーであるか、またはPCRプライマー中に含まれることができる。このように、本発明のプローブはPCR産物増幅の検出に使用できる。より具体的には、この検出がPCRの優れたネガティブブランクを構成する。これらのネガティブブランクを、ゲノムDNA無しで、しかしPCRに必要な試薬とプライマー対、少なくともヘアピンプローブの標的特異的配列と完全に相補的な配列を含むプライマー対の1つ、の存在下で配列を増幅することによって、実行する。
【0055】
本発明の方法と組成物で解析する標的分子は、検出できるようにラベルすることができるが、それが必要だとは限らない。例えば、cDNAを即ちヌクレオチド類似物質により直接ラベルできるし、または例えば第1配列を鋳型にして第2のラベルされたcDNA配列を作製することにより間接的にラベルできる。あるいは、二重鎖cDNAをcRNAに転写して、その転写中にラベルできる。検出可能なラベルは、例えばヌクレオチド類似物質を取り込ませることによる蛍光ラベルでもよい。本発明での使用に適した他のラベルには、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、検出可能なポリペプチド、電子豊富分子、検出可能な信号を基質に対する作用によって生成できる酵素、および放射性同位元素が含まれるが、これに限られない。好ましい放射性同位元素には32P,35S,14C,15Nおよび125Iが含まれるが、それらに限られない。本発明での使用に適した蛍光分子には、フルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、テキサス赤、5’カルボキシフルオレセイン(“FMA”)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシ−フルオレセイン(“JOE”)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシ−ローダミン(“TAMRA”)、6’カルボキシ−X−ローダミン(“ROX”)、HEX、TET、IRD40、およびIRD41が含まれるが、それらに限られない。本発明での使用に適した追加の蛍光分子にはさらに、シアニン色素(Cy3,Cy3.5およびCy5を含むが、それらに限られない)、BODIPY色素(BODIPY−FL,BODIPY−TM,BODIPY−630/650,およびBODIPY−650/670を含むが、それらに限られない)、およびALEXA蛍光色素(ALEXA−488,ALEXA−532,ALEXA−546,ALEXA−568,およびALEXA−594を含むが、それらに限られない)が含まれるがそれらに限られず、さらに当業者に周知の任意の他の蛍光色素も含まれる。本発明での使用に適した電子豊富インディケーター分子には、フェリチン、ヘモシアニン、および/またはコロイド状金が含まれるが、それらに限られない。あるいは、第1グループを標的分子と特異的に錯体形成させて、標的分子をラベルできる。共有結合的にインディケーター分子とリンクしまた第1グループに対して親和性がある第2グループを、標的分子を間接的に検出するために使用できる。そのような実施態様において、第1グループとして使用するのに適した化合物には、ビオチンおよびイミノビオチンが含まれるが、それに限られない。第2グループとして使用するのに適した化合物には、アビジンおよびストレプトアビジンが含まれるが、それに限られない。臭化エチジウムまたはsybrグリーンI色素のような蛍光性DNA挿入化学種もまた、標的ポリヌクレオチドとヘアピンプローブがハイブリダイズしたときの、またはヘアピンプローブと「レポーター」分子とのハイブリダイゼーション時の、信号の蛍光増加をモニターするために使用できる(下参照)。この実施形態は、特にハイブリダイゼーションのリアルタイムでの解析に適している可能性がある。
【0056】
好ましい実施態様において、しかし標的分子は無ラベルで、上述の検出できるラベルは「レポーター」分子に付着している(下参照)。
【0057】
ヘアピンプローブとの使用に利用可能なハイブリダゼーションの方法
本発明のヘアピンプローブは、標的分子をスクリーニングするために使用するときに、2つの二者択一の立体構造を取るように設計されている。これらの2つの立体構造、「閉」構造と「開」構造を図2に示す。図2Aおよび図2Bの両方が基板に連結されたヘアピンプローブを示す。
図2Aが閉構造のヘアピンプローブを示す。ヘアピンプローブの特定の標的が存在しないとき、プローブの腕が互いにハイブリダイズして「ステム」201を形成し、また標的特異的配列が「ループ」202を形成する。ヘアピンプローブの他の立体構造は可能でない。何故ならヘアピンプローブの腕は互いにのみハイブリダイズするように設計されているからである。ヘアピンプローブによってスクリーニングするための好ましい一定温度は、ループの標的特異的配列とその標的分子の会合により形成されるハイブリッドのTmより5〜10℃低い。この温度はプローブの長さ、およびループ構造中に付加的な突然変異が存在するかしないかに依存して変化する。より長いまたはより短い標的特異的配列またはステム配列を用いて、最適のハイブリダイゼーション温度を修正する。標的分子と会合したときヘアピンプローブが構造変化を受ける。ループ配列の一部が標的分子と会合(即ち、核酸の標的特異的配列とその標的核酸とのアニーリング)するとヘアピン構造を強制的に開に変える。
【0058】
相補的な腕同士のハイブリダイゼーションおよび、標的特異的配列の標的分子とのハイブリダイゼーションの間の競合が、標的特異的配列のその標的分子との完全な会合と、他の標的分子との不完全な会合とを区別するための鍵である。ヘアピンプローブが、そのために設計された(即ち完全適合の)標的分子に晒されたとき、標的特異的配列と標的分子の間の相互作用がステムの解離を引き起こし、それによってヘアピンプローブの立体構造を「開」の配置に変化させる。図2Bは、標的分子203と会合した結果「開」構造をとるヘアピンプローブを示す。標的特異的配列204は標的分子203の一部205とハイブリダイズする。本発明はヘアピンプローブと標的分子間の相互作用を含む場合には、ループの全体部分が全標的分子とまたは標的分子のより小部分とハイブリダイズすることが想定されている。この標的特異的配列204と標的分子203の間のハイブリダイゼーションは、標的分子全体を包含する必要はない。標的特異的配列204が標的分子203の部分205とハイブリダイズすると、プローブの腕、標的特異的配列の5’端側の腕206および標的特異的配列の3’端側の腕207、は解離してアクセス可能となり、「レポーター」分子と相互作用できる。
【0059】
ハイブリダイゼーションにおける標的核酸のプローブ配列に対する結合親和性は、試料中の様々な標的配列の配列類似性と、ハイブリダイゼーションの厳密性条件、即ちハイブリダイゼーション温度、塩濃度、および親和性を減少させる化学物質の存在、との両方に依存する。結合速度論もまた試料中の種々の核酸の相対濃度に依存する。存在度の低い種を標的とする(即ちそれに相補的な)、または極めて類似した(即ち相同の)配列を有する核酸を標的とするポリヌクレオチドプローブに対しては、そのような「クロスハイブリダイゼーション」が混入する可能性が有意にあり、ハイブリダイゼーション測定の結果を汚染させ混乱させ得る。例えば、クロスハイブリダイゼーションはSNPの検出において特に重要な関心事である。何故なら、検出されるべき配列(即ち特定のSNP)を唯1個のヌクレオチドが異なる他の配列から区別しなければならないからである。
【0060】
クロスハイブリダイゼーションを減少させる幾つかの手法が従来技術において工夫されてきており、本発明の方法に使用できる。クロスハイブリダイゼーションを、ハイブリダイゼーション中および/またはハイブリダイゼーション後の洗浄のいずれかのハイブリダイゼーション厳密性を調節することにより最小にすることができる。例えば、「高度厳密性」洗浄条件を採用して、検出された信号が特異的配列とヘアピンプローブの標的特異的配列との完全な適合を表すように、最も安定な二重鎖を除く全ての二重鎖を不安定化することができる。高度厳密性条件の例には、例えば5×SSC緩衝液、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS),1mM EDTA、65℃でのDNAのハイブリダイゼーション、および 0.1×SSC緩衝液/0.1%SDS中の洗浄(Ausubel et al.,eds.,1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol.1, Green Publishing Associates, Inc.,and John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, at p.2.10.3)が挙げられる。これらの洗浄は、標的特異的配列と標的分子間のハイブリッドのTmより5〜10℃低い温度で実行する。高度厳密性条件は、例えば10〜30ヌクレオチド当たり1のミスマッチがあるヌクレオチド配列の対立遺伝的変異体を検出することを可能にする。あるいは、「中度厳密性」または「低厳密性」洗浄条件も用いることができる。中度厳密性または低厳密性条件もまた周知である(例えば、Sambrook,J. et al.,eds., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, at pp. 9.47-9.51 and 11.55-11.61; Ausube let al., eds., 1989, Current Protocols in Molecular Biology, Vol I, Green Publishing Associates, Inc., John Wiley & Sons, Inc., New York, at pp. 2.10.1-2.10.16,参照)。中度厳密性洗浄条件の例には、例えば0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む0.2×SSC緩衝液中、42℃での洗浄(上記,Ausubel et al., 1989)が挙げられる。低厳密性洗浄条件の例には、例えば5×SSC緩衝液または0.2×SSC/0.1%SDS中、室温での洗浄(上記,Ausubel et al., 1989)が挙げられる。
【0061】
ヘアピン信号に対するクロスハイブリダイゼーションの寄与を、適当な対照プローブからの信号を差し引くことにより、モニターし除去することができる。例えば、クロスハイブリダイゼーションの寄与を測定するために、どの標的ともハイブリダイズしないヘアピンプローブを測定に用いることができる。この非特異的ハイブリダイゼーションを次に特異的ハイブリダイゼーション信号から差し引くことができる。
【0062】
クロスハイブリダイゼーションをまた、標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドのTmの間の弱い差異、即ち1℃以下の差異を有する複数の本発明のプローブを用いて減少させることもできる。反対に、標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドのTmの差が増すとき、即ち1℃より大きいときは、クロスハイブリダイゼーションがより重要な因子になる。そのような場合、既に述べたものと似た手法を採用することができて、各標的分子のスクリーニングに用いるヘアピンプローブの数を増すことができるし、またはこれらの手法の組み合わせを用いることもできる。
【0063】
1以上の独特な対照配列を用いて、どのヘアピンプローブが対照配列とハイブリダイズするかを分析することにより温度を決定できる。この対照配列は、5〜10個の異なるヘアピンプローブと相補的であり、それらは互いにループ配列の長さが異なり、それによってTmが異なる。例えば、1つのヘアピンプローブは、対照配列の中心に局在する8のヌクレオチドと相補的であり、標的と標的特異的配列間に形成されるハイブリッドのTmのハイブリダイゼーション温度が40℃である。もう1つのヘアピンプローブは、対照配列の12のヌクレオチドと相補的であり、標的と標的特異的配列間に形成されるハイブリッドが45℃のTmを有する。別のヘアピンプローブは、対照配列の異なる領域と相補的であり、また標的と標的特異的配列間に形成されるハイブリッドが異なるTmを有する。したがって、利用者が、配列対照とハイブリダイズするヘアピンプローブを同定し、それに基づいて測定温度を決定することができる。
【0064】
本発明は、標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドが、ほぼ4℃の範囲で等しい融解温度を有する、本発明のプローブのバイオチップに関するものである。
【0065】
本発明はまた、各プローブの標的特異的配列が標的分子と会合して形成する各ハイブリッドが、他の全てのプローブの標的特異的配列が標的分子と会合して形成する他の全てのハイブリッドと1℃以内で等しい融解温度を有する、本発明のプローブのバイオチップを目的とするものである。
【0066】
本発明はさらに、次の本発明のプローブのバイオチップを目的とする。そこでは標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドの各融解温度と、標的特異的配列と設計の対象ではない分子との会合の第2の融解温度との差が5℃以上である。標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドの各融解温度と、第2の融解温度との差は、何の制限も無ければ8℃以上でよい。
【0067】
レポーター分子
本発明はまた、プローブの腕の長さに等しい長さを含む核酸配列などの、1以上の付着しておらず、ラベルされたまたは無ラベルの「レポーター」分子を含む。本発明はこのように、「レポーター」分子がヘアピンプローブのいずれかとハイブリダイズできる本発明のプローブのバイオチップを目的とする。本発明のヘアピンプローブを「レポーター」分子と共に用いることができる。レポーター分子はプローブの開構造とのみハイブリダイズでき、それにより開構造と閉構造を区別して、標的分子がヘアピンプローブの標的特異的配列と会合するときにのみ信号を生成する。
【0068】
「レポーター」分子を、4〜10ヌクレオチド、好ましくは6ヌクレオチドまたはそれ以下のステム、および12〜20ヌクレオチドを含むループを持つループステム構造を有し、前記ループの標的特異的配列がヘアピンプローブの1つの腕と完全に相補的になるように設計することができる。
【0069】
「レポーター」分子を、ヘアピンプローブの1つの腕と完全に相補的な配列を含む直鎖構造を持つように設計することができる。
【0070】
本発明は、そこで、標的分子が標的特異的配列にハイブリダイズし、またさらに「レポーター」分子が第1または第2腕にハイブリダイズする、無ラベルのヘアピンプローブのバイオチップを目標にする。「レポーター」分子は、第1または第2腕のヌクレオチド配列と完全に相補的な好ましくは10より少ないヌクレオチドを含む。
【0071】
「レポーター」分子を分子の1端に結合した副溝結合部を持つように設計できる。レポーター分子のラベルは、3’および/または5’端を蛍光ラベルすることによって、標的配列のラベルについての記載と同様の方法で達成できる(上を参照)。
【0072】
試料が1つまたは一組のヘアピンプローブに曝露されると、ループがその標的配列と会合する結果、プローブの腕が相補的な「レポーター」分子にアクセスできるようになり、信号を生成できる。「レポーター」分子は、核酸配列、ペプチド核酸配列、ロックされた核酸、オリゴペプチド配列、タンパク質、または核酸配列に連結された酵素であってもよいが、それらに限られない。レポーター分子は好ましくは、「開」構造にあるときのみ本発明のプローブの腕に結合できる能力により特徴付けられる。レポーター分子は好ましくは、本発明のヘアピンプローブの1つの腕配列と、「開」構造にあるときのみ完全に相補的である少なくとも1つの配列を含む。「レポーター」分子は好ましくは、ヘアピンプローブの腕配列の1つと完全に相補的な少なくとも1つの配列を含む。レポーター分子を加えたときに、「レポーター」分子とヘアピンプローブの会合は、開構造にあるプローブの腕とのみ起こる。この開構造は、ヘアピンプローブのループとその特異的標的分子の会合の結果である。同一の基板上に固定されたヘアピンプローブのために、ヘアピンプローブが同一の腕配列を有するよう設計して、全てのヘアピンプローブとそれらの特異的標的分子との会合の解析のために唯1つの「レポーター」分子しか必要としないようにすることができる。
【0073】
図3は、「レポーター」分子が、どのように本発明のヘアピンプローブと会合して、ヘアピンプローブとその標的分子とのハイブリダイゼーションの際に信号を生成するかを示す。図3Aは「レポーター」分子がヘアピンプローブと会合する進行過程を示す。先ず、ヘアピンプローブ301が閉構造を取り、標的特異的配列の5’側にある腕302と標的特異的配列の3’側にある腕303とがハイブリダイズしてステム304を形成する。それに対してヘアピンプローブが設計された標的分子305(即ち核酸)へ曝露する過程306によって、標的特異的配列307が標的分子305とハイブリダイズする。これによってヘアピンプローブが開構造を取るようになり、ヘアピンプローブの腕302と303が互いに解離して「レポーター」分子にアクセスできるようになる。核酸を含む「レポーター」分子309の、開構造にある本発明のプローブへの付加308により、「レポーター」分子309が標的特異的配列の5’側の腕302とハイブリダイズする。それは「レポーター」分子309の一部が、標的特異的配列の5’側の腕302と相補的であるように設計されているからである。
【0074】
各ヘアピンプローブは2つの腕を有するので、2つの異なる「レポーター」分子を設計し、ヘアピンプローブが標的分子とハイブリダイズするときに信号を生成するために用いることができる。図3Bは、ヘアピンプローブの両腕310および311が2つのレポーター分子312および313とハイブリダイズしている本発明の開構造プローブを示す。2つの「レポーター」分子を使用し、1つの「レポーター」分子をヘアピンプローブの1つの腕と相補な核酸配列を有するように設計し、もう1つの「レポーター」分子をヘアピンプローブのもう1つの腕と相補な核酸配列を有するように設計するときは、「レポーター」分子を順次ヘアピンプローブに加えること、および「レポーター」分子を加える工程の間に洗浄工程を置くことが必要である可能性がある。これは、各「レポーター」分子が他の「レポーター」分子の配列と完全に相補的な核酸配列を含有しているからである。もし両方の「レポーター」分子をヘアピンプローブに同時に加えると、「レポーター」分子はヘアピンプローブとはもちろん、互いにハイブリダイズする可能性がある。
【0075】
「レポーター」分子は検出可能なマーカーを含むことができる。好ましくは「レポーター」分子は、ヌクレオチド類似物質、蛍光ラベル、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、ポリペプチド、電子豊富分子、酵素、または放射性同位元素であってよい。「レポーター」分子は、例えば、蛍光色素(図3A、3B、5B、および5CでFとして示す)でラベルされたヌクレオチド配列、またはそれが会合する腕に対する親和性が増すことになるような追加の修飾を有する無ラベルの配列でもよい。例えば、この修飾は、「レポーター」の3’または5’側に連結されたDNA副溝結合分子であるか、または特定の処理によってハイブリダイズしたDNA鎖との間で共有結合ができる「レポーター」の化学的修飾であってもよい。これらの修飾は全てホスホルチオ酸部分の「レポーター」分子のリン酸骨格への挿入を含めばよい(Cogoi, S. et al. 2001. Biochemistry 40:1135-43; Xodo, L. et al. 1994 Nucleic Acids Res. 22: 3322-30)。
【0076】
「レポーター」分子はまた質量分析器および飛行時間解析を用いて、その質量によって検出できる。例えば、基板上に固定され標的配列および「レポーター」分子とハイブリダイズした本発明のプローブを、1つの特定のプローブに対応する固体表面の個別の領域に質量分析器のレーザー源を向け、各「レポーター」分子の質量と相対存在度を収集することにより、直接質量分析器によって分析することができる。「レポーター」分子は、長さと質量を変えることができるし、また質量分析法で検出可能な幾つかの重さの知られた分子種に結合できる(Laken, S.J. et al. 1998. Nat Biotechnol. 16:1352-6; Little, D.P.et al.1997. Nat Med. 3: 1413-6; Little,D.P.1997. Eur.J.Clin.Chem.Clin Biochem.35:545-8; Braun,A.et al.1997.Clin. Chem.43:1151-8)。
【0077】
「レポーター」分子を、電位を与えたときに酸化還元電流を発生するフェロセンおよびコバルトセン誘導体のような電気化学的に活性のある分子と結合させることができる(Umek, R.M. et al. 2001, J.Mol.Diagn.3:74-84; Padeste, C. et al.2000, Biosens Bioelectron 15:431-8;Tsai,W.C. et al.1995, Analyst 120:2249-54)。「レポーター」分子はまた、電気触媒活性により、または電気化学的に不活性な基質を切断して電気化学的に活性のある生産物にすることにより、電気活性分子種を生成することのできる酵素であってもよい(Valat, C. et al. 2000. Analytica Chimica Acta 404:187-94; Oliver, B. et al. 1997 Anal. Chem. 69:4688-94; Limoges, B. 1996. Anal.Chem. 68:4141-48; Bourdillon, C. et al. 1996. J.Am.Chem.Soc.115:12264-69)。そのような「レポーター」分子のために、本発明のプローブを、二酸化ケイ素、黒鉛、ガラス状カーボン、酸化インジュウムセレン、金属表面またはプラスチックベースの伝導性ポリマーのような伝導性表面、あるいは、予め沈着した若しくは予め重合した伝導性材料の離散的領域を提供している非伝導性表面、に固定してもよい。この検出方法は、固体表面の検出器またはその一部の電気的重合を、信号電流または信号電位を検出する手段として使用することができる。
【0078】
ヘアピンプローブと標的分子との会合を検出できるもう1つの「レポーター」システムは、ポリメラーゼラベルシステムを用いるものである。図4はそのようなシステムがどのように機能するかを示す。図4Aは、追加の10〜20のヌクレオチド配列、即ちプローブの5’端の「プライマー」401、を有する閉構造のヘアピンプローブを示す。好ましくは、特定の検査条件下で用いられる全てのヘアピンプローブ上のプライマーが同一のヌクレオチド配列を持つように設計する。本発明はまた、ヘアピンプローブがその特異的標的配列とハイブリダイズするときに発生する信号間にもう一つのレベルの差異を加えるために、特定の検査条件下で様々なプライマーを使用することを含む。用いるどのプライマーに対しても、プライマーのヌクレオチド配列401を、全ての他のヘアピンプローブおよびポリメラーゼ反応物と配列相同性を有しないように制御する。好ましくは、プライマーは18〜20ヌクレオチドの長さを有し、融解温度が59℃±2℃である。プライマー401を、ポリメラーゼによる少なくとも1つのラベルされたヌクレオチドの取り込み開始のために用いる。標的特異的配列と標的分子が会合すると、標的特異的配列の5’腕とプライマーがポリメラーゼ反応の反応物にアクセスできる。重合反応を、DNAを変性させることなく、また使用するポリメラーゼに依存して37〜60℃で実行する。適当なポリメラーゼは、E.coliのDNAポリメラーゼI klenow断片、熱安定性Taqポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、および全ての入手できる自然のまたは遺伝子操作されたホットスタートを除くポリメラーゼ、である(Sambrook, J. et al. 1989. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, 5.44-5.47; Ausubel, F.M. et al. 1997. Current Protocols in Molecular Biology, vol.1. John Wiley & Sons,Inc.,New York,3.5.11-3.5.12)。
【0079】
図4Bは標的特異的配列の5’側にある腕402とプライマー401がアクセス可能でポリメラーゼ反応に参加できる、開構造にあるそのようなヘアピンプローブを示す。腕402の一部およびプライマー401と相補的な「レポーター」分子403が次にそれらの配列とハイブリダイズすることができる。図4Cはそのような腕402、プライマー401およびレポーター403のハイブリダイゼーションを示す。「レポーター」分子403は腕402の一部または全体と相補的であればよい。しかし、「レポーター」分子403はプライマー401全体と相補的であってはならない。腕402の一部およびプライマー401と相補性を有する「レポーター」分子403の部分は、プライマー401の3’端部分と会合してはならない、即ちその部分と相補的なヌクレオチドを有してはならない。好ましくは「レポーター」分子403のヌクレオチド配列は、それがハイブリダイズするプライマー401より1〜5ヌクレオチドだけ短い。この属性が、プライマー401のハイブリダイズしない配列404によって示され、ポリメラーゼがプライマー401に相補的なヌクレオチドを付加して「レポーター」分子403を伸長できるようにする。ポリメラーゼ405が「レポーター」分子403を伸長するときには(図4D参照)、ラベルされたヌクレオチド406が取り込まれて、標的特異的配列407の標的分子408とのハイブリダイゼーションを検出するための信号を生成する。
【0080】
汎用アドレス指定システム
本発明は、固定されていないヘアピンプローブを固定されたヘアピンプローブと組み合わせて用いるシステムもまた目的としている。汎用アドレス指定システム(universal addressing system "UAS")と呼ばれるこの生体外スクリーニングシステムは、使用者作製の固定されていないヘアピンプローブと共に使用するのに適した、予め作製された固定されたヘアピンプローブまたは直鎖状プローブのアレイの利点を提供し、したがって最終使用者がバイオチップを作製する手間を省く。例えば、UASは、固定されたヘアピンプローブの標的特異的配列が、特異的配列タグを有する固定されていないヘアピン状または直鎖状プローブと会合するように設計された、ヘアピンプローブの予め特定された一組を含む汎用のバイオチップを提供することができる。これが任意の検査条件で使用できる単一のバイオチップの構築を可能にする。検出対象の標的ヌクレオチドは、最初に固定されていないヘアピンまたは直鎖プローブの標的特異的配列により捕獲され、そのプローブは次に特異的配列のタグを介して固定されたヘアピンプローブと会合するように設計されている。
【0081】
好ましい実施態様において、UASは2組のヘアピンプローブを含む。「第1ヘアピン」と呼ぶ1つのヘアピンプローブは基板上に固定されておらず、またその3’または5’腕から伸びるタグを有する。タグは、基板上に固定されタグと部分的または全体として相補的な、6〜30ヌクレオチドの1本鎖核酸または「第2ヘアピン」と呼ぶヘアピンプローブとハイブリダイズできる。固定された部分が第2ヘアピンであるときには、第2ヘアピンの配列特異的配列は、タグ配列、タグ配列の一部、および/またはタグ配列の一部およびタグに隣接した腕の一部と相補的であればよい。タグの一部およびタグに隣接した腕の一部に対する標的特異的配列を有する第2ヘアピンプローブの使用により、標的特異的配列が標的分子に会合した第1ヘアピンプローブのみが第2ヘアピンプローブとハイブリダイズできることが保証されることになる。もし種々のタグ配列をUASと共に用いることになり、これを識別する必要があるならば、固定されたヘアピンプローブ上の相補的な標的特異的配列と特異的にハイブリダイズする他のタグとの間に完全な配列差異が存在するためには、第2ヘアピンのループ中央に位置する少なくとも2ヌクレオチドの差異が必要である。
【0082】
本発明はしたがって、無ラベルの汎用アドレス指定システムであって、
(a)(i)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;および
(ii)標的特異的配列の5’端に結合した10〜50ヌクレオチドの長さの「タグ」配列、
を含む少なくとも2つの無ラベルで直鎖状の第1プローブと、
(ここで標的特異的配列は前記無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的でない)
(b)ヘアピンを形成できる少なくとも2つの第2プローブであって、
(i)6〜30ヌクレオチドの長さの第2標的に特異的な配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで前記標的特異的配列の5’側にある前記第2プローブの第2第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで前記標的特異的配列の3’側にある前記第2プローブの第2第2腕;および、
(iv)第1または第2腕を基板に結合するリンカー、
を含む第2プローブ、
(ここで、第2プローブの前記標的に特異的な前記配列は前記第2プローブの他のどの部分とも相補的ではなく;前記第2プローブの前記第1腕および前記第2腕は互いに完全に相補的であり;またさらにここで、第1プローブの1つの前記タグ配列は第2プローブの1つの前記第2標的配列と相補的である。)
とを含むシステムを目的としている。
【0083】
好ましくは、本発明は無ラベル汎用アドレス指定システムであって、
(a)(i)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;および
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の5’側にある第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の3’側にある第2腕;
および
(iv)10〜50ヌクレオチドの長さで、第1腕または第2腕に結合した「タグ」配列、
を含む少なくとも2つの無ラベルのヘアピンを形成できる第1プローブと、
(ここで標的特異的配列は前記無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的ではなく;さらにここで、第1腕と第2腕は互いに完全に相補的であり);
(b)(i)6〜30ヌクレオチドの長さで、第2標的に特異的な配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の5’側にある前記第2プローブの第2第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の3’側にある前記第2プローブの第2第2腕;および、
(iv)第1または第2腕を基板に結合するリンカー、
を含む少なくとも2つのヘアピンを形成できる第2プローブ、
(ここで、第2プローブの前記標的に特異的な前記配列は前記第2プローブの他のどの部分とも相補的ではなく;前記第2プローブの前記第1腕および前記第2腕は互いに完全に相補的であり;またさらにここで、このタグに結合した腕配列で終わる第1プローブの1つの前記タグ配列は、第2プローブの1つの前記第2標的配列と相補的である)を含むシステムを目的としている。
【0084】
好ましい実施態様において、第1ヘアピンプローブの標的特異的配列は10〜25ヌクレオチドの長さ、より好ましくは15〜20ヌクレオチドである。
【0085】
好ましくは、第2ヘアピンプローブの標的特異的配列は10〜25ヌクレオチドの長さ、より好ましくは15〜20ヌクレオチドである。
【0086】
本発明はまた全ての第1腕が同一の配列を有する無ラベルの汎用アドレス指定システムも目的としている。
【0087】
それはさらに第2ヘアピンプローブの全ての第1腕が同一の配列を有する、無ラベルの汎用アドレス指定システムを目指している。
【0088】
本発明はまた同一のレポーター分子が本発明の第1プローブまたは第2プローブとハイブリダイズできる、無ラベルの汎用アドレス指定システムも目的としている。
【0089】
本発明の第2プローブの第1腕および本発明の第2プローブの第2腕は、「タグ」の一部およびこのタグに結合された第1または第2腕の一部が第2プローブの標的特異的配列と会合するときは解離することができる。
【0090】
本発明のある実施態様は、「タグ」が第2プローブの標的特異的配列と会合する無ラベルの汎用アドレス指定システムを目的としている。
【0091】
図5はどのようにUASの1実施態様が動作するかを示す。この実施態様において、第2ヘアピンプローブの標的特異的配列を、第1ヘアピンプローブのタグおよびタグに隣接した腕の一部とハイブリダイズするように設計する。図5Aは標的分子が存在しないときのUAS 501を示す。タグ503を有する第1ヘアピンプローブ502、およびリンカー506によって基板505に付着されている第2ヘアピンプローブ504が閉構造にある。図5Bは第1ヘアピンプローブがその標的507とラベルされた「レポーター」分子508と会合するときにどのようにして開構造取るかを示す。図5Cは、第2ヘアピンプローブ504の標的特異的配列510と、タグ503およびタグに隣接した腕509の一部でハイブリダイズした第1ヘアピンプローブ502を示す。次に標的分子の位置を基板上の「レポーター」分子の位置を検出することにより決定することができる。
【0092】
核酸の検出
本発明はまた、
(a)体外で核酸試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップと接触させること;および、
(b)工程(a)での接触に続いて開構造を取った、バイオチップの少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む核酸検出方法を目的としている。
【0093】
工程(b)における信号の検出が、好ましくは検出可能なマーカーでラベルされた「レポーター」分子を用いてできる。好ましくは、検出可能なマーカーはヌクレオチド類似物質、蛍光ラベル、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、ポリペプチド、電子豊富分子、酵素、または放射性同位元素である。
【0094】
好ましい実施態様において、工程(a)の核酸試料は予め検出可能なマーカーによりラベルされている。
【0095】
好ましくは、標的特異的配列が標的分子と会合して形成する全ての完全なハイブリッドが、4℃以内の範囲で、より好ましくは1℃以内の範囲で等しい融解温度を有する。標的特異的配列と標的配列の会合により形成されるハイブリッドの融解温度と、標的特異的配列と標的特異的配列設計の対象でない分子の会合により形成されるハイブリッドの第2融解温度との差は5℃以上であり、より好ましくは8℃である。
【0096】
突然変異解析
本発明は、対立遺伝子変異を生じる可能性のある複数のDNA配列を解析するためのヘアピンプローブのバイオチップを設計し使用する方法を提供する。特に、本発明はDNAの1つの配列上に複数の単一ヌクレオチド変異を生じている短いDNA断片上のハプロタイプ決定のための手法を提供する。この方法で解析可能な突然変異には、大きな挿入および欠失はもちろん、単一ヌクレオチド転換(または置換)、単一ヌクレオチドの欠失または挿入、または短い配列によって隔てられた複数の変異が含まれる。そのような突然変異の解析には1より多くの対立遺伝子特異的プローブが必要である可能性がある。各遺伝子変異において観察される対立性および解析に必要な信頼度に応じて、4つ迄の対立遺伝子特異的プローブを、単一転換解析のために設計し固定することができる。例えば、表1が肝核因子1タンパク質(“HNF1a”)(Linder, T. et al. 1999. Hum. Molec. Genet. 8:2001-8)をコードするTCF1遺伝子のコドン142において見出される転換の解析に用いることのできるヘアピンプローブの配列を与える。142CC CY5はStrNCbヘアピンプローブに対するCy5−ラベルされた標的分子であり、142CT CY5はStrNTbヘアピンプローブに対するCy5−ラベルされた標的分子である。太字はループ配列を表し、下線を引いた文字は突然変異部位の位置を示す。自然に起こる突然変異はC/T転換または相補的な鎖のG/A転換である。この可能性がある突然変異の解析に使用するために必要なヘアピンプローブは、Cを有するプローブのStrNCbおよびTを有するプローブStrNCTである。他の2つのヘアピンプローブ、StrNGbおよびStrNAb、を使用することができるが必要ではない。
【0097】
【表1】

【0098】
正確にマップされたゲノム配列を用いて、調査した領域の全ての多型変異が参照される。対立遺伝子決定のための解析が必要である変異に対して、一組のPCRプライマーを、当業者に周知の一般的指針を用いて設計することができる。対立遺伝的変異体を取り込む可能性のあるプライマー配列を回避し、またPCR反応の特異性と収率を最大するために、既知の多型性を含有するゲノム領域にあるプライマー対を設計しないように注意を払う。対立遺伝子決定を必要とする各突然変異に対して、少なくとも2つのヘアピンプローブを設計し、使用する。対立遺伝子変異の位置を、特異的ループ配列の中心にできるだけ近い場所に取る(図1の101参照)、しかし配列の特徴に応じて変化しうる。対立遺伝的変異体の位置がループの中心から遠い所にあるときは、標的特異的配列と、標的特異的配列と完全に相補的ではない標的分子が会合したときに形成されるハイブリッドのTmが低下する。
【0099】
同一の解析に用いるヘアピンプローブを設計するときには、標的特異的配列と標的分子の間のハイブリッドの全てのTmがほぼ1〜4℃以内で同一になるようにするために、標的特異的配列の長さの修正(上を参照)を行う。例えば、検出する対立遺伝子変異はループの中心から1〜10塩基であればよく、好ましくは2〜5塩基である。一旦全てのヘアピンプローブの標的特異的配列を、許容できる範囲の(上を参照)Tmを有するように設計すれば、次に他の対立遺伝子(ヘテロ二重鎖)とハイブリダイズする各ループのTmをMeltcalc(上を参照)を用いて計算する。完全なDNA二重鎖と不完全な二重鎖の間のTmの差異は可能な限り大きく保たれるが、標的特異的配列と完全には会合できない標的分子が会合して形成するハイブリッド、即ち少なくとも1つのミスマッチ塩基を持つハイブリッドのTmが、標的特異的配列と標的分子間のハイブリッドのTmよりも少なくとも5℃低い場合には、それは適切な区別をするのに十分であると考えられる。より好ましくは、標的特異的配列と完全には会合できない標的分子が会合したときに形成されるハイブリッドのTmは、標的特異的配列と標的分子間のハイブリッドのTmよりも少なくとも8℃低い。
【0100】
標的配列はゲノムDNA、またはラベルされた若しくは無ラベルのPCR増幅DNA配列でよい。ヌクレオチド数で表した検査される配列のサイズは、ハイブリダイゼーションプローブのループ部分と同じでよい。しかし検査される配列の最大サイズに関しては何の制限もなく、より大きなヌクレオチド数が好ましい。これらの二重鎖標的配列の各鎖を熱によって分離し、完全に適合する配列のみがそれに特異的な固定されたヘアピンプローブとハイブリダイズするように、個別の化学種としてまたは混合物としてヘアピンプローブのバイオチップとハイブリダイズさせることができる。
【0101】
1つの試料中で検出される各対立遺伝子の相対存在度を、各対立遺伝子に特異的な各プローブの相対信号を測定して決定することができる。例えば、1つの転換に対応する単一の2対立性に対しては、4つのヘアピンプローブのうちの2つ(それぞれ1つの対立遺伝子に対して1つの異なる塩基を持つ)がヘテロ接合体の試料に対して信号を出す。その対立遺伝子は固体表面上のヘアピンの位置によって決定することができる。ホモ接合体の試料に対しては、4つのヘアピンプローブのうちの唯1つが信号を出すに違いない。
【0102】
本発明はこのように生体外で核酸試料中の遺伝的変異体を検出する方法であって
(a)試料を、少なくとも2つのプローブを含む本発明のプローブのバイオチップに接触させること(ここでバイオチップの少なくとも1つのプローブは遺伝的変異体と完全に相補的なループを有する遺伝的変異体特異的な本発明のプローブである);および
(b)遺伝的変異体のヘアピンプローブからの信号を検出すること、
を含む方法を目的としている。なお工程(b)で検出される信号は核酸試料中に遺伝的変異体が存在することを示している。
【0103】
好ましくは、検出された遺伝的変異体は、単一ヌクレオチド多型性、1以上のヌクレオチドの欠失もしくは挿入、または1以上のヌクレオチドの重複である。
【0104】
好ましい実施態様において、「レポーター」分子がバイオチップの各ヘアピンプローブとハイブリダイズできる。工程(b)における信号の検出は、好ましくは検出可能なマーカーでラベルされた「レポーター」分子を用いて得られる。工程(a)の核酸試料は予め検出可能なマーカーでラベルしておいてもよい。
【0105】
配列決定
本発明は、化学的分解とジデオキシヌクレオチドによる鎖終止を用いる配列決定方法の手動の調製工程を回避して、生体外でオリゴヌクレオチド試料のDNA配列を決定する方法を提供する。本発明は、各プローブの標的特異的配列が、同じバイオチップ上に固定されたもう1つのプローブの別の標的特異的配列の少なくとも一部と同一な配列を含むような、ヘアピンプローブおよびヘアピンプローブのバイオチップの設計と使用を含む。解析する配列のサイズに応じて、固定されたヘアピンプローブの標的特異的配列をさらに、長さが少なくともヘアピンプローブの標的特異的配列の長さに等しいオリゴヌクレオチド配列のいずれともハイブリダイズするように設計する。この方法により、予め決められた長さの全てのオリゴヌクレオチドを配列決定するためのバイオチップを設計することができる。試料の一部とヘアピンプローブとの間で起こるハイブリダイゼーションの検出をモニターすることができ、また本発明の記載とUnited States Patent Nos. 6,270,961; 6,025,136; 5,871,928; and 5,695,940の記載に従って配列が決定される。
【0106】
本発明はこのように、生体外でオリゴヌクレオチドを配列決定する方法であって、
(a)オリゴヌクレオチドを含有する試料を少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップと接触させること;および
(b)バイオチップの前記プローブの少なくとも1つからの信号を検出すること、
を含む方法を目的とする。なお工程(b)で検出する信号をオリゴヌクレオチドの配列決定に用いる。
【0107】
好ましい実施態様において、「レポーター」分子がバイオチップの各ヘアピンプローブとハイブリダイズできる。工程(b)の検出を、好ましくは検出可能なマーカーでラベルされた1つのレポーター分子を用いて行う。工程(a)の試料は予め検出可能なマーカーでラベルしておけばよい。
【0108】
遺伝子発現解析
本発明は、遺伝子発現解析のための本発明のヘアピンプローブおよび本発明のヘアピンプローブバイオチップの設計と使用の方法を提供する。
【0109】
この実施態様は、多数の異なる配列を相対存在度に関して解析する必要があるときに、無ラベルの核酸の差分発現解析に役立つ。解析するそれぞれの遺伝子に対して、少なくとも1つのヘアピンプローブを遺伝子の各エクソン部分に対して設計すればよい。
【0110】
本発明はまた、基板上に固定された少なくとも2つの本発明のプローブを含む本発明のプローブのバイオチップを目的とする。好ましい実施態様において、ステムの構造が少なくとも2つの各ヘアピンプローブで同一である。より好ましくは、「レポーター」分子がバイオチップの本発明の各プローブとハイブリダイズできる。
【0111】
細胞抽出物または組織試料から発現レベルをモニターするために、全RNA、mRNA、またはラベルされた若しくは無ラベルのcDNAおよびcRNAを、ヘアピンプローブまたはヘアピンバイオチップの標的配列として用いることができる。もしcDNAおよびcRNAが発現解析に使用されるならば、それらの標的配列を、逆転写中または追加のPCR工程中に取り入れることによって蛍光色素でラベルすることができる。
【0112】
差分発現解析において、様々な条件を比較することができる。これらの条件は、生理的ストレスもしくは分化段階、代謝経路の活性化、または薬物の転写に対する活性であり得る。例えば、細胞もしくは組織から抽出した無ラベルのmRNAもしくは全RNA、またはcDNAなどの核酸の2つのプールのおのおのを別々に、各条件に対して特異的に設計したヘアピンバイオチップと、またはUASによって解析するために特に設計した第1ヘアピンプローブの一組とハイブリダイズさせる処理をすることができる。
【0113】
選択的スプライシング産物の検出、および相対量の測定条件
本発明は、選択的スプライシング産物を解析する方法、あるいは各選択的スプライシング産物の同一の組織の異なる生理状態における相対量または各選択的スプライシング産物の同一遺伝子に対する異なる組織中での相対量を決定する方法を提供する。これの応用は、遺伝子産物が所定の経路中で相互作用すると考えられる多くの遺伝子の複数の変異体を解析するために有用である可能性がある。
【0114】
本発明はこのようにして、生体外で核酸試料中の遺伝子の選択的スプライシング産物を検出する方法であって、
(a)試料を、少なくとも2つの本発明のプローブを含み、少なくとも前記バイオチッププローブの1つが、遺伝子の1つのエクソンまたは2つのエクソンの接合部に特異的なプローブである本発明のバイオチップと接触させること;および
(b)エクソン特異的なプローブまたは2つのエクソンの接合部特異的なプローブからの信号を検出すること(ここで、工程(b)で検出される信号が、核酸試料中の遺伝子の選択的スプライシング産物の存在を示している)、
を含む方法を目的とする。
【0115】
好ましくは、核酸試料はmRNAを含む。
【0116】
ヘアピンプローブの標的特異的配列は、mRNAまたはcDNAに相補的であるように設計する。より好ましくは、それらを各標的配列について既知の様々なスプライシング産物に相補的であるように設計する。様々なスプライシング変異体をもたらす大きな欠失はもちろん単一のヌクレオチド欠失を、これらの変異に特異的な同一のヘアピンプローブのバイオチップにより検出できる。
【0117】
研究する遺伝子のそれぞれの推定上のまたは既知のエクソン配列が、遺伝子産物中におけるエクソン、エクソンの一部もしくは2つのエクソンの接合部の存在または不存在を検出するために設計された特異的なヘアピンプローブを持つことができる。ヘアピンプローブの設計を遺伝子発現解析の設計と同様に実施でき、また配列を基板上にアドレス指定するためにUASを使用できる。さらに、解析するmRNAまたはcDNAの長さもしくは組成の変異を、その標的特異的配列が解析領域の中心とハイブリダイズするように設計した幾つかのヘアピンプローブによって解析できる。2つのmRNA間のヌクレオチドの欠失または置換の解析は、例えば、標的特異的配列の中心の位置で1ヌクレオチドの差を有する2つのヘアピンプローブを設計することによって解析できる。
【0118】
これらのプローブの設計は、突然変異解析のために設計したプローブと同様である。mRNA中の大きな欠失の遺伝子検出のために、2つのヘアピンプローブ601および602の標的特異的配列をmRNA配列とハイブリダイズするように設計すればよい(図6)。第1ヘアピンプローブ601の標的特異的配列を、欠失して選択的スプライシング型となったmRNA603の領域604とハイブリダイズするように設計する。第2ヘアピンプローブ602の標的特異的配列を、欠失領域604の丁度5’および3’とハイブリダイズすることによって選択的スプライシング型605を検出するように設計することができる。これらのプローブの設計は、発現解析のために設計したプローブの設計と同様であり、バイオチップを次に、転写された同じ遺伝子のエクソンが存在するかしないかをスクリーニングするために使用できる。
【0119】
スプライシング変異体を差分解析するための手続きは、差分発現解析と同じである。ある生理状態にある2つの組織、または1つの組織もしくは2つの異なる組織の2つの生理状態に由来するmRNA、が別々にcDNAに逆転写されてラベルされる(各組織または状態に対して異なるラベルで)。2つの供給源から得たラベルされたcDNAは、混合してヘアピンプローブバイオチップとハイブリダイズさせるか、またはUASシステムのヘアピンプローブとハイブリダイズさせ、さらに第2ヘアピンのバイオチップとハイブリダイズさせる。
【0120】
本発明の好ましい実施態様において、「レポーター」分子がバイオチップの各ヘアピンプローブとハイブリダイズできる。工程(b)における検出は、好ましくは検出可能なマーカーでラベルした1つの「レポーター」分子を用いて行われる。工程(a)の試料は検出可能なマーカーで予めラベルしておくことができる。
【0121】
外来起源の分子を検出するためのヘアピンプローブ
本発明を、病原体、微生物、ウイルス、寄生生物、または遺伝的に修飾された有機体(“GMO”)中に見出される遺伝子修飾などの任意のヌクレオチドを含有する有機体またはそれの残存物から得られる分子の検出に、DNA、RNA、または、ヘアピンプローブと会合する他の任意の分子の検出を通じて、用いることができる。しかしそのような分子に限られない。本発明によれば、「任意のヌクレオチドを含有する有機体の任意の残存物」とは、例えば感染細胞中のウイルスDNAまたはそのウイルスDNAから産生されたmRNAなど(これに限られないが)の、別の細胞に侵入したヌクレオチドを含有する有機体から得られる任意の分子、またはその分子に由来する任意の分子を意味する。この応用が、外来起源の種々の分子を同一の試料中で検出する必要のあるとき、または生物学的試料中で遺伝的変異体を解析するために特に有用である。
【0122】
本発明はまた、生体外で任意の核酸を含有する有機体またはその残存物を検出する方法であって、
(a)核酸試料を少なくとも2つの本発明のプローブを含むバイオチップと接触させること(ここで、少なくとも1つの前記プローブが核酸を含む有機体またはその残存物にたいして特異的である);および、
(b)有機体の核酸に特異的なプローブからの信号を検出すること(ここで、工程(b)で検出される信号が核酸を含む有機体またはその残存物の存在を示す)、
を含む方法をも目的とする。
【0123】
核酸を含有する有機体は好ましくはウイルスまたはバクテリアである。
【0124】
本発明の好ましい実施態様において、「レポーター」分子がバイオチップの各ヘアピンプローブとハイブリダイズできる。工程(b)における検出を、好ましくは検出可能なマーカーでラベルされた1つのレポーター分子を用いて行う。工程(a)の試料は予め検出可能なマーカーでラベルしておくことができる。
【0125】
好ましい実施態様において、PCR反応によって増幅したcDNAはもちろん、全RNA、mRNA、またはラベルもしくは無ラベルcDNAを、検討する病原体、微生物、ウイルス、またはGMOが存在するかしないかを検出するために、ヘアピンプローブのバイオチップ上で用いることができる。解析すべき外来起源の各分子に対して、少なくとも1つのヘアピンプローブを、スクリーニングする有機体中で一貫したレベルで発現していることが知られている遺伝子の少なくとも1つのエクソン部分に対して設計する。
【0126】
ヘテロ接合性喪失および対立遺伝子不均衡の解析
本発明はさらに、染色体断片の欠失もしくは挿入によって引き起こされる対立遺伝子不均衡およびヘテロ接合性喪失を解析するための本発明のプローブと本発明のプローブのバイオチップの設計と使用のための方法を目的とする。
【0127】
これの応用が、染色体の切断点(breakpoint)が知られているまたは知られていない染色体欠失の解析に有用である。欠失が局在するそれらのDNA断片の破壊点は知られていないことが多く、また時には個体に特異的である(Mateo M.et al.(1999), AM.J.Path.,154(5), 1583-1589)。このタイプの遺伝子変化が、前立腺、胸部、ある型の大腸癌、および、あるリンパ腫などの癌で発見されている(Larsson C.M. et al.(2001), Molecular Diagnosis.,6(3),181-188)。
【0128】
本発明は、健康な細胞(例えば血液リンパ球)と腫瘍と推定される細胞(例えば、生検で得られる細胞、または尿、脳脊髄液、もしくは分泌液などの液体)の間のゲノム配列の比較を、本発明のプローブのバイオチップを解析手段として用い、差分解析の方法で行うことを目的とする。
【0129】
この解析方法は、周知の方法を用いてPCRによりマイクロサテライト配列を増幅すること、およびPCR産物を本発明のバイオチップ上でハイブリダイズさせることより成る。マイクロサテライト配列は高度に多型的な反復配列であり、規則的な間隔でゲノム中に存在しPCRプライマーを配置するために適当な配列を両側に持つ(Goldstein,D.and C.Schlotterer,eds.1999. Microsatellites: evolution and Applications. Oxford University Press)。欠失が存在しない場合にはこれらの領域を増幅し、欠失が存在するときはPCR産物の増幅が無いようにするために、増幅するマイクロサテライト配列を欠失の可能性のある領域中に選ぶ(マイクロサテライト配列および適当なPCRプライマーの選択には:Genome Database, http://www.gdb.org 参照)。本発明において、健康なおよび腫瘍と推定される細胞のマイクロサテライト配列を別々に増幅し、健康なおよび腫瘍の2つの型のそれぞれに対して異なるラベルがされたPCRプライマーを用いて、別々にラベルする。好ましくは、マイクロサテライトマーカーの複数回のPCR増幅(多重PCR)を利用する。病状と実行する解析に応じて、1個から数個のマイクロサテライト配列を増幅する。好ましいラベルのしかたは、健康な細胞から得たマイクロサテライトの増幅をCy3でラベルされた1つのプライマーと無ラベルの相補的プライマーとを用いて行い、腫瘍細胞から得たマイクロサテライトの増幅をCy5でラベルされた1つのプライマーと無ラベルの相補的プライマーとを用いて行うことである。次に、各マイクロサテライトマーカーから得られたPCR産物、健康な細胞に対するCy3ラベルPCR産物および腫瘍細胞に対するCy5ラベルPCR産物を、増幅後に残存している(PCR中に取り込まれずに)フリーのPCRプライマーを棄てるために処理する。PCRプライマーを棄てるいくつかの方法が考えられ、好ましいのは、exo/sap "ExoSAP-IT" キットのプロトコル(USB Corporation, 26111 Miles Road, Cleveland Ohio 44128, USA)による、エキソヌクレアーゼIおよびエビのアルカリホスファターゼ(exo/sap)を用いる方法である。
【0130】
この処理に続いて、マイクロサテライト配列の増幅産物を1つの溶液中に貯めて、本発明のプローブのバイオチップとハイブリダイズさせる。あるいは、この貯める工程をPCRプライマー除去工程の前に実行してもよい。本発明のバイオチップは少なくとも1つのプローブを含む。そのようなプローブは、少なくとも部分的にマイクロサテライト配列の増幅に用いるPCRプライマーの1つと相補的であり、また好ましい実施態様においては、プライマーの配列の1領域または全配列と完全に相補的である。本発明のバイオチップ上で幾つかの型のプローブを用いることができ、あるいは好ましくはリンカーを付加して修飾した本発明のヘアピンプローブ、またはUASシステムのプローブを用いることができる。好ましい方法においては、プローブ配列を本発明の特徴を用いて設計する。特に解析のために数個のプローブを数個のマイクロサテライト配列と共に用いるときには、プローブの標的特異的配列とそれに相補的な標的マイクロサテライト配列との全てのハイブリッドのTmが4℃の範囲で等しく、好ましくは1℃の範囲で等しい。同様に、数個のプローブを1つのバイオチップ上で用いる場合は、好ましい方法における全てのプローブの1つの腕は同一の配列を有することができる。数個のマイクロサテライト配列を解析するときに、もし1つのバイオチップ上に2以上のプローブが必要な場合は、それらのプローブは幾つかの型、即ち直鎖状および/またはヘアピン、および/またはUASシステムのプローブでもよい。
【0131】
好ましい方法において、UASシステムのプローブを、マイクロサテライト配列のPCRにおける増幅のネガティブ基準を与えるために用いる。これらのネガティブ基準は、健康なまたは腫瘍細胞のゲノムDNAが存在せず、しかしPCRに必要な試薬と1対のプライマー(少なくともその1つは、第2の固定されたプローブの標的特異的配列と完全に相補的な「タグ」配列を保有するUASシステムの第1直鎖状プローブである)が存在する条件でマイクロサテライト配列を増幅して取得する。
【0132】
健康なまたは腫瘍性と推定されるマイクロサテライト配列を増幅して得られるPCR産物がバイオチップのプローブとハイブリダイズするときは、バイオチップのプローブはPCR産物の端に局在するPCRプライマーとハイブリダイズする。細胞から得られるアンプリコンをCY3およびCY5で別々にラベルすることが、バイオチップの各プローブに対して、健康な細胞のPCR産物とプローブのハイブリダイゼーションによるCy3の発光から成る信号、および腫瘍性と推定される細胞のPCR産物とプローブのハイブリダイゼーションによるCy5の発光から成る信号を生成する。各ラベルに対する相対発光成分を測定して、健康な細胞および腫瘍細胞からのマイクロサテライト配列特異的なPCR産物の相対存在量を推定できる。マイクロサテライト配列は、マイクロサテライトを含有する領域中に欠失が起きたときは増幅されないので、欠失が起きたときには、(推定腫瘍細胞からの)Cy3発光が、(健康な細胞からの)Cy5発光と比較して減少するのが観測される。
【0133】
本発明において、マイクロサテライト配列増幅PCR産物の相対存在量の解析が、ハイブリダイゼーション後に、Cy3とCy5の相対発光値を内部較正曲線と比較することにより得られる。この較正曲線は、Y染色体(ヘテロ接合性マーカー)上に局在する欠失のないマイクロサテライトマーカーおよび他の染色体(ホモ接合性マーカー)上に局在する他の欠失のないマーカーから得られたDNAの、増幅と本発明のバイオチップのプローブとの競合ハイブリダイゼーションによって得られる。好ましい実施態様において、これらのマーカーの増幅は、両方の型の試料(健康なおよび推定腫瘍性細胞)を用いて、他のマイクロサテライトマーカーの増幅と同時に、上述のようにCy5とCy3による別々のラベルを利用して行う。ヘテロ接合性およびホモ接合性マーカーを増幅するために用いるDNAを、マイクロサテライトマーカー遺伝子型がわかっている(これらのマーカーに欠失を有しない)個体から得る健康な細胞および腫瘍細胞のDNA抽出物から、または雄の個体から得られるこのDNAの即興標本から、得ることができる。
【0134】
あるいは、較正曲線を、考慮する病状のために欠失していることのない2以上のマイクロサテライトマーカーのPCR増幅から構成することができる。これらのマーカーを、比較する各細胞型(健康細胞または推定腫瘍細胞)から抽出されたDNAを順次希釈して、他のマイクロサテライトマーカーの増幅と同時に、増幅する。解析の実行後に、グラフ上にプロットして較正曲線が得られる。グラフのX軸がCy3蛍光強度で、Y軸がCy5蛍光強度であり、各バイオチッププローブに対する両蛍光発光のそれぞれの値がマーカーの較正値に対応している。
【0135】
本発明の目的はまた、本発明のバイオチップからプローブおよびRT−PCR試薬を含む試薬までのキットであって、
−前立腺癌、腎臓癌、および膀胱癌
−乳癌
−大腸癌
−肺癌
−デュシェンヌ筋障害のような遺伝病および後天性疾患における大きな欠失の存在の解析、
における対立遺伝子不均衡を解析するためのキットをを目的とする。
【0136】
ヘアピンバイオチップキット
本発明はさらに、試料中の標的分子の存在を検出するために用いるキットを提供する。そのようなキットは一般にそのような測定を行うための2以上の構成要素を含む。そのような構成要素には、ヘアピンプローブのバイオチップおよび選ばれた標的分子を検出するために必要な試薬の供給品が含まれる。あるいは、キットはUASで用いるような固定されたおよび/または固定されていないプローブおよび試薬を含んでもよい。好ましいキットは、ヘアピンプローブのバイオチップ、一組の固定されていないヘアピンプローブ、および/または「レポーター」分子、および1以上の追加の試薬を含む。別の好ましいキットは、直鎖プローブのバイオチップ、1組の固定されていないヘアピンプローブおよび/または「レポーター」分子、および1以上の追加の試薬を含む。
【実施例】
【0137】
標的DNAと固定されたヘアピンプローブのハイブリダイゼーション
以下の実施例は本発明の説明のために示すのであって、いかなる形であれ本発明の制限を意図したものではない。特に、ここで以下に示す実施例は、ヘアピンバイオチップの標的配列検出のための使用を記述する。
【0138】
核酸分子
TCF2遺伝子のエクソン2中のコドン137の突然変異は、重症の腎不全を伴うII型糖尿病表現型をもたらす75塩基対の欠失である(Linder, T.et al.1999. Hum. Moles. Genet. 8:2001-8)。この実施例で用いる標的配列は、TCF2遺伝子のエクソン2中のコドン137の欠失した配列の266〜290位置に対応する。図7Aは、エクソン2中のコドン137の突然変異の位置を示す。太字括弧の部分、塩基276〜350が突然変異個体の欠失部位を表す。図7Bが、突然変異が起こるときのエクソン2の配列を示す。
【0139】
この実施例で用いた標的配列、Tg2X2C137M1、図7C、は、図7Bの太字配列の相補的配列、即ちネガティブ鎖である。図7Dに示すヘアピンプローブの標的特異的配列2X2C137M1は、突然変異した標的配列の中央の、標的配列と完全に相補的な18ヌクレオチドを選んで設計した。次の研究のために設計した「レポーター」分子を図7Eに示す。これは1Mナトリウム塩および1μMオリゴヌクレオチド溶液を用いると融解温度が23℃である。2X2137M1ヘアピンプローブのステム構造は72℃のTmを持つ。ヘアピンプローブの標的特異的配列を、標的特異的配列と標的分子間に形成されるハイブリッドが60℃±2℃のTmを持つように、100mMナトリウムおよび100mMオリゴヌクレオチド濃度でパラメーター設定してMeltcalcソフトウエアを用いて設計した(Tg2X2C137M1/2X2C137M1二重鎖のTm=60.8℃)。
【0140】
Meltcalcソフトウエアをオリゴヌクレオチド・ハイブリダイゼーションの熱力学的融点予測に用いた。このソフトウエアは、塩濃度、DMSO、およびオリゴヌクレオチド濃度が変化する場合を通して、Tmを設定することができる。これらの実施例のヘアピンプローブを、0.1mMナトリウム塩濃度および0.1mMオリゴヌクレオチド濃度を用いて設計した。ヘアピンプローブの各腕の自分自身との会合を、mfoldを用いパラメーターを、折り畳み温度37℃、1Mナトリウム、マグネシウムなし、オリゴマー補正型、5%部分最適化および折り畳み計算の上限50、として評価する。mfoldで計算した全てのヘアピンプローブは、上のパラメーターを用いると、6ヌクレオチドの最大連続ステム長および65〜72℃のTmを有する。標的分子と、野生型および突然変異体の標的特異的配列の間の完全に相補的なハイブリッドのTmは60℃であって、少なくとも5℃の、完全なハイブリダイゼーションと不完全なハイブリダイゼーションの間のDTmを持ち、また各ステムが65〜72℃のTmを持つ。
【0141】
ヘアピンプローブの固定
5’端にアミノリンカーを持つように合成された全てのヘアピンプローブを、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(“NHS”)で活性化されたガラススライド(NoAb Diagnostics, Mississauga, Ontario, Canada)上に、スライドと共に供給されるスポット用緩衝液を用い、45分間30℃下湿度室中でスポットした。残ったNHS基を、やはりスライドと共に供給されるブロック溶液を用い室温で30分間不活性化した。スライドを次に、0.1M塩化ナトリウムを含むクエン酸緩衝液pH7で洗浄し、またミリQ水ですすいだ。
【0142】
標的配列のハイブリダイゼーション
固定したヘアピンプローブの各バイオチップを、50%ホルムアミドを含む6XSSC中のCy5−ラベル標的配列Tg2X2C137M1 400nM溶液20μlで処理した。各スライドの上にカバーグラスを置き、標的配列溶液を室温で1時間置いてハイブリダイズさせた。各バイオチップを次に4×SSCで5分間すすぎ、その次に0.1×SSCで2分間すすいだ。最後に、各スライドを、バイオチップスキャナー(Axon Instrument, Inc.,Union City, California, USA)により、Cy5およびCy3の両方の励起および発光波長を用いて、撮像した。
【0143】
図8は、Cy5ラベル標的配列のハイブリダイゼーション後のCy5およびCy3の蛍光強度を示す。各値は各ヘアピンプローブの5回重複スポットの平均である。このスクリーニングに用いた10のヘアピンプローブは、TCF2遺伝子の異なるエクソンに位置する5つの異なる突然変異の解析のために設計されている。2X2C137M1(図8の“137M1”)のみが標的Tg2X2C137M1と完全に相補的である。対照は、5’端をCy3でラベルされ、3’端をアミノリンカーで修飾された直鎖状の一本鎖配列である。対照は、スポットの位置決めであり、またスポットの質の対照である。Cy5ラベル標的配列に結び付いたCy5信号は、事実上標的の完全に相補的な配列、2X2C137M1ヘアピンプローブのループに対応するスポット上のみに観測された。
【0144】
レポーター分子のハイブリダイゼーション
標的分子とのハイブリダイゼーションに続いて、固定されたヘアピンプローブの各バイオチップを、50%ホルムアミドを含む6×SSC緩衝液中のCy3ラベル「レポーター」分子の1μM溶液20μlで処理した。各スライドの上にカバーグラスを置き、「レポーター」分子溶液を室温で1時間置いてハイブリダイズさせた。各バイオチップを次に4×SSCで5分間、2回すすぎ、その次に0.1×SSCで2分間すすいだ。各スライドを、バイオチップスキャナーによって、Cy5およびCy3の両方の励起および発光波長を用いて、撮像した。
【0145】
図9は、Cy3ラベル「レポーター」分子のハイブリダイゼーションの、5重複測定に基づくCy5とCy3の平均蛍光強度を示す。Cy3ラベル「レポーター」分子のハイブリダイゼーションに結び付いたCy3信号は、事実上Cy5ラベルTg2X2C137M1配列がそれの完全な相補物、即ち2X2C137M1ヘアピンプローブとハイブリダイズするスポット上のみに観測された。結果は、「レポーター」分子が好んで開プローブとハイブリダイズし、また開プローブは、標的分子が、標的特異的配列を含むヘアピンプローブとハイブリダイズするときにのみ見出されることを示す。
【0146】
ヘアピンプローブの特異性
ヘアピンプローブと標的分子の間の非特異的結合は、ハイブリダイゼーションの条件を変えることにより減少する可能性がある。図8において、Cy5ラベル標的と151M1プローブとの間の非特異的相互作用が明確に観察される。図9では、Cy3ラベル「レポーター」分子と全てのヘアピンプローブの間の明らかな相互作用が、2X2C137M1ヘアピンプローブを別にして観察される。非特異的相互作用を除く1つの方法は追加の洗浄によるものである。図9は、追加の洗浄によってCy5ラベル標的配列と151M1ヘアピンプローブ間の非特異的結合が減少することを示す。非特異的結合を減少させるもう1つの方法はより厳しい条件を用いることである。図10は、15〜30分間4×SSC緩衝液を用い、「レポーター」分子のTm +5℃である28℃下でのより厳しい洗浄が、どのようにレポーター分子と2X2C137M1ヘアピンプローブを除く全てのヘアピンプローブの間の大部分の非特異的結合を除去するかを示す。
【0147】
ヘアピンプローブによる単一ヌクレオチドの識別
表IIは、肝臓リパーゼ(“LIPC”)、コレステリルエステル転移酵素タンパク質(“CEPT”)、リポタンパク質リパーゼ(“LPL”)、およびTCF1に対する遺伝子中の突然変異を解析するために設計した16のヘアピンプローブの配列を示す。表IIにまとめたのは、各ヘアピンプローブの名前、遺伝子名と各ヘアピンプローブのコドン配列との対応、および標的配列とハイブリダイズしたときに各ヘアピンプローブが有するミスマッチの数と型である。ヘアピンプローブの標的特異的配列は、特定の標的分子に完全に適合する即ち相補的であるか、または完全には相補的ではなく1つまたは2つのミスマッチを有するか、または「−」で示したように標的分子に全く相補的でないか、のいずれかである。ヘアピンプローブを、単一ヌクレオチド多型を有する標的配列と相補的な18〜24ヌクレオチドのループ配列を選択することにより設計した。全てのSNP変異体はループの中心に、多型部位の両側に9〜11のヌクレオチドを有するように置かれた。その特異的標的配列とハイブリダイズした各野生型および突然変異型SNP変異体のループのTmを、Meltcalcソフトウエアにより、100mMナトリウムおよび100mMオリゴヌクレオチド濃度でパラメーターを設定して、62±2℃となるように設計した。ヘアピンの配列を1以上のヌクレオチドをループの各の端に加えるおよび/または取り除くことにより調整して、60℃のTmに達し、ヘテロ二重鎖とホモ二重鎖の間の融解温度の変化が少なくとも5℃であるようにした。
【0148】
ヘアピンプローブの固定化を上記のように行った。固定されたプローブの各バイオチップを、1Mナトリウム緩衝液20μl、400nM Cy3ラベルM19標的および400nM Cy5ラベル142CCの溶液20μlで、1時間6×SCC緩衝液中20℃で、カバーグラスで覆って処理した。バイオチップを次に4×SSCで5分間すすぎ、その次に0.1×SSCで2分間洗浄した。バイオチップを、Cy5およびCy3の両方の励起および発光波長を用い、光電子倍増管(“PMT”)を600×600倍にして、上記のように撮像した。
【0149】
図11はCy5ラベルおよびCy3ラベル標的配列のハイブリダイゼーション後の5回重複測定に対する平均のCy5およびCy3蛍光強度を示す。Cy3信号がM19標的のハイブリダイゼーションに対応し、またCy5信号が142CC標的のハイブリダイゼーションに対応する。部分的または完全に標的配列と相補的なヘアピンプローブのみが、低厳密度条件で標的配列とハイブリダイズしたときに信号を発生することができた。ホモ二重鎖をヘテロ二重鎖から識別するために、各バイオチップを20分間6×SSC緩衝液中50℃で洗浄し、続いて6×SSCですすぎ、次にCy5とCy3の蛍光を、600×600倍のPMTで再スキャンした。
【0150】
図12は、各バイオチップに対してより厳密な洗浄を行った後の、5回重複測定に対する平均のCy5およびCy3蛍光強度を示す。ラベルされた標的と完全に相補的であるヘアピンプローブ、StrM19GおよびStrNCb、が最高のハイブリダイゼーションを有する。単一のミスマッチを有するヘアピンプローブが次に高いハイブリダイゼーションのレベルを持ち、2つのミスマッチを有するプローブが最低のハイブリダイゼーションレベルを持つ。ハイブリダイゼーションのこの識別は、ヘアピンプローブと標的配列の間の完全な相補性のより高い安定性によって得られる。
【0151】
【表2】

【0152】
ヘアピンプローブ設計の例
表IIIに示したプローブをシャルコー−マリー−ツース病に冒された個体中で起こっている突然変異を解析するために設計した。
【0153】
シャルコー−マリー−ツース病は最も出現頻度が高い末梢神経系の遺伝病である。それは本質的に複遺伝子性であり、一群の知覚性および運動性神経障害によって特徴付けられる(http://molgen-www.uia.ac.be/CMTMutations/CMT.cfm)。
【0154】
分子レベルでは、現在14の遺伝子が、その突然変異によってシャルコー−マリー−ツース病の出現の原因となることが知られている。それらの中で、突然変異が優性である末梢ミエリンタンパク質遺伝子(PMP22)、ミエリンタンパク質ゼロ遺伝子(MPZ)、およびコネクソン32遺伝子(GJB1)を、この実施例で以下に表示する5つの突然変異解析用のプローブを設計するために用いる。
【0155】
【表3】

【0156】
プローブ設計を、「発明の詳細な説明」中のプローブ設計の項の記載に従って実施した。
【0157】
これらの工程は:
1− 突然変異型および野生型プローブのループとステム配列を設計し、また完全なお
よび不完全なハイブリッドのTmをMeltcalcで計算すること
2− プローブに腕(ステム)を加え、構造をチェックし、またヘアピンプローブのTmをMfoldで計算すること
3− プローブとそのそれぞれの標的のアラインメントを行い、またヘアピンプローブと非相補的な標的との間の相同性の欠如を確かめること、
である。
【0158】
これらの突然変異を解析するために設計した全てのプローブを表IIIに一覧として挙げる。これらのプローブを次の手順によってバイオチップを設計するために使用する:
【0159】
各プローブを5’にアミノリンカーを付して合成する(Sigma Genosys, UK)。これらのプローブをMicrogrid II Bioroboticsスポッターを用いて活性化されたガラススライド(Genescore, France)上にスポットした。スポットすると、ガラス基板とアミノ化したプローブ端の間に共有結合連結が形成される。各スポットを5重に生成した。
【0160】
そのようなバイオチップを、表IIIのプローブと完全に相補的で、5’を蛍光色素(Cyanin 3, Sigma Genosys)でラベルされた一組のオリゴヌクレオチド標的(表IV)とハイブリダイズさせた。
【0161】
【表4】

【0162】
2つの異なるバイオチップについて2組の実験を行った。第1チップを野生型対立遺伝子(WT、表IV(a))に対応する全ての標的とハイブリダイズさせた。第2チップを突然変異対立遺伝子(MT、表IV(a))に対応する全ての標的とハイブリダイズさせた。
【0163】
【表5】

【0164】
【表6】

【0165】
これらの各ハイブリダイゼーションに対して条件を:6×SSC緩衝液中の100nM標的、1M NaCl、1時間室温でハイブリダイズ、バイオチップ当たり20μlの標的、5重試行の平均値、GSI lumonicsスキャナーによるスキャン、レーザーと500×500のPMT、に設定した。
【0166】
各野生型および突然変異のプローブの蛍光強度の中央値を走査後に解析し、各プローブの識別比(Rd)を計算するために使用した。
【0167】
プローブの識別比(Rd)は:
Rd=完全なハイブリッドの蛍光強度/不完全なハイブリッドの蛍光強度
と定義する。
【0168】
ここで、完全なハイブリッドの蛍光強度=注目しているヘアピンプローブと完全に相補的な標的のハイブリダイゼーションで測定される強度(例えば、標的CiS26LWのヘアピンプローブNeu1S26LW6とのハイブリダイゼーション、または標的CiS26LMのヘアピンプローブNeu1S26LM6とのハイブリダイゼーション)および、不完全なハイブリッドの蛍光強度=ミスマッチが1つある標的のハイブリダイゼーションで測定される蛍光強度(例えば、標的CiS26LWのヘアピンプローブNeu1S26LM6とのハイブリダイゼーション、または標的CiS26LMのヘアピンプローブNeu1S26LW6とのハイブリダイゼーション)である。
【0169】
プローブの識別比(Rd)は次の意味を持つ:
【0170】
例えば、あるヘアピンプローブに対する10のRdは、このヘアピンと完全に相補的な標的とのハイブリダイゼーションが、最初の標的と1塩基の差異を持つ標的とのハイブリダイゼーションに比較して10倍大きい信号を発生することを意味する。
【0171】
これらのRd値を、各ヘアピンプローブのループとステムのTmの計算値と共に表Vに示す。
【0172】
Dtmパラメーターもまた、これらのプローブのそれぞれについてDtm=ステムのTm−ループのTm、として計算している。このパラメーターがプローブの識別の「相対能力」を表す。Dtmが高い(ステムのTmが高く、ループのTmが低い)ほど、高い相同性がある2つの配列を識別する能力が高い。
【0173】
全てのこれらの値をグラフ(図14)に表すが、これはDtmの進展と識別比Rdの関係を示している。
【0174】
【表7】

【0175】
RdとDtmの間のこの関係を、所望の解析に対して適当な構成と長さを有するプローブの設計において、ループとステムを選定するために用いることができる。例えば、全てのプローブの設計に10のRdが必要であるならば、Dtm値を9に選ぶことになる。
【0176】
ヒトゲノムDNA試料の突然変異解析結果の例
この実施例は、具体的には、シャルコー−マリー−ツース病の原因となる突然変異の1つである遺伝子PMP22のエクソン3のW140突然変異の野生型対立遺伝子の解析を目的とする。
【0177】
配列が表IIIに与えられている全てのヘアピンプローブがバイオチップ上に固定されている。
【0178】
PMP22遺伝子のエクソン3のゲノムDNAをプライマー対を用いてPCR増幅した。プライマー対の1つは5’端が、蛍光性シアニン3分子でラベルされている。
【0179】
PCRを次のように実行した:健康な個体から得た100ngのDNAをPCRキット(High fidelity expand PCR, Roche)と共に用い、メーカーのプロトコルおよび特定のPCRプライマーを用いて40サイクルを行った。ネガティブ基準(ゲノムDNAを欠くPCRウエル)も、PCRの実行中に含めた。
【0180】
PCR産物をアガロースゲル上の電気泳動によって検査し、PCR産物の長さおよびネガティブ基準に対する汚染の欠如を確認した。増幅したDNAをマイクロカラム(Quiaquick, Qiagen)で精製した後に、260nmのUV吸収によって定量した。
【0181】
遺伝子PMP22のエクソン3のPCRから得たCy3ラベルDNA1.4μgを1時間室温でヘアピンプローブのバイオチップ上でハイブリダイズさせた。
【0182】
ハイブリダイゼーションに続いてバイオチップをスキャンして、結果を図15に表した。
【0183】
これらの結果は、PCR産物が主に相補的なプローブ、または1塩基の差を有するプローブ(プローブNeu6W140RM4およびNeu6W140RM4)にハイブリダイズされることを示している。Rdは6.61(WT/MTプローブ信号)である。
【0184】
この解析に与えられた遺伝子型はW140R突然変異に対する野生型ホモ接合体であって、検査した個体の「健康」表現型に対応する。
【0185】
引用文献
ここでの文献の引用は、そのような文献が本発明の先行技術であることの承認であると解してはならない。
【0186】
当業者にとって明らかなように、本発明の精神と展望から離れることなく、本発明の多くの修正または変形をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1A】図1Aはヘアピンプローブの実施態様を示す。
【図1B】図1Bはヘアピンプローブの実施態様を示す。
【図2A】図2Aは固定されたヘアピンプローブの異なる立体構造を示す。
【図2B】図2Bは固定されたヘアピンプローブの異なる立体構造を示す。
【図3A】図3Aはヘアピンプローブが標的配列にハイブリダイズするときに、どのようにして信号が生成されるかを示す。
【図3B】図3Bはヘアピンプローブが標的配列にハイブリダイズするときに、どのようにして信号が生成されるかを示す。
【図4A】図4Aは、ヘアピンプローブとポリメラーゼによるラベルシステムを用いた標的の検出を示す。
【図4B】図4Bは、ヘアピンプローブとポリメラーゼによるラベルシステムを用いた標的の検出を示す。
【図4C】図4Cは、ヘアピンプローブとポリメラーゼによるラベルシステムを用いた標的の検出を示す。
【図4D】図4Dは、ヘアピンプローブとポリメラーゼによるラベルシステムを用いた標的の検出を示す。
【図5A】図5Aは、汎用アドレス指定システムを示す。
【図5B】図5Bは、汎用アドレス指定システムを示す。
【図5C】図5Cは、汎用アドレス指定システムを示す。
【図6】図6は、あるmRNA、このmRNAの変異体、およびヘアピンプローブの標的であるこのmRNAの領域の配列を示す。
【図7】図7は、ヘアピンプローブがどのように標的および「レポーター」分子と相互作用するかを示すために用いられる核酸配列を示す。
【図8】図8は、ラベルされた標的配列とヘアピンプローブのハイブリダイゼーション後の蛍光強度の棒グラフである。
【図9】図9は、ラベルされた標的配列のヘアピンプローブとの、次に「レポーター」分子との、連続したハイブリダイゼーション後の蛍光強度の棒グラフである。
【図10】図10は、ラベルされた標的配列のヘアピンプローブとの、次に「レポーター」分子との連続したハイブリダイゼーション、それに続く非特異的結合の除去の後の、蛍光強度の棒グラフである。
【図11】図11は、いくつかのラベルされた標的とヘアピンプローブのハイブリダイゼーション後の蛍光強度の棒グラフである。
【図12】図12は、図11よりストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのいくつかのラベルされた標的とヘアピンプローブのハイブリダイゼーション後の蛍光強度の棒グラフである。
【図13A】図13Aは、ヘテロ接合性喪失および対立遺伝子不均衡の解析方法について、試料をPCR増幅する工程からバイオチップ上でのPCR産物のハイブリダイゼーションまでを示す。 5’端を蛍光ラベル(Cy5)でラベルされ、マイクロサテライト配列1301のセンス鎖の3’端に存在するPCRプライマー1302を、マイクロサテライト配列1301のアンチセンス鎖の3’端にある無ラベルのプライマー1303と共に用いて、健康な細胞1304から抽出したゲノムDNA試料中のこのマイクロサテライト配列を増幅し、PCR産物1305を産生する。 5’端を蛍光ラベル(Cy3)でラベルされ、マイクロサテライト配列1301のセンス鎖の3’端に存在するPCRプライマー1307を、マイクロサテライト配列1301のアンチセンス鎖の3’端にある無ラベルプライマー1308と共に用いて、腫瘍性と推定される細胞1309から抽出したゲノムDNA試料中のこのマイクロサテライト配列を増幅し、PCR産物1310を産生する。
【図13B】図13Bは、ヘテロ接合性喪失および対立遺伝子不均衡の解析方法について、試料をPCR増幅する工程からバイオチップ上でのPCR産物のハイブリダイゼーションまでを示す。 プローブバイオチップを、図13Aの増幅工程1304と1309から得たPCR産物を含む混合物と接触1315させる。プローブバイオチップを、同一形態で共にリンカー1313を介して基板1312に固定されている2個のヘアピンプローブ1311および1314と共に示す。これら2つのプローブの標的特異的配列1319は、PCR産物1316および1317に含まれるセンスPCRプライマー配列1318と完全に相補的である。PCR産物1316はCy5でラベルされ、PCR産物1317はCy3でラベルされている。PCR産物1316はPCR産物1305(図13A)を変性して得られ、PCR産物1317はPCR産物1310(図13A)を変性して得られる。
【図14】図14は、ステムとループのTm差(Dtm)の関数としての、ヘアピンプローブの識別比(Rd)を示す。
【図15】図15は、PMP22遺伝子のエクソン3の増幅によるPCR産物のヘアピンプローブバイオチップ上でのハイブリダイゼーション後の、蛍光強度の棒グラフである。







【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)長さが6〜30ヌクレオチドの標的特異的配列;
(b)長さが10ヌクレオチドより短く、標的特異的配列の5’側にある第1腕;および
(c)長さが10ヌクレオチドより短く、標的特異的配列の3’側にある第2腕、
を含む無ラベルのプローブ(ここで、標的特異的配列は無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的でなく;また第1腕と第2腕とは互いに完全に相補的である)。
【請求項2】
標的特異的配列が10〜25ヌクレオチドの長さである、請求項1のプローブ。
【請求項3】
標的特異的配列が15〜20ヌクレオチドの長さである、請求項2のプローブ。
【請求項4】
標的分子が標的特異的配列とハイブリダイズするときは、前記プローブが「開」コンホメーションをとり、また「レポーター」分子が第1腕または第2腕とハイブリダイズすることができる請求項1〜3のいずれか1項のプローブ。
【請求項5】
「レポーター」分子が、第1腕または第2腕の核酸配列と完全に相補的である10より少ないヌクレオチドを含む、請求項4のプローブ。
【請求項6】
「レポーター」分子が検出可能なマーカーを含む、請求項4の無ラベルのプローブ。
【請求項7】
検出可能なマーカーが、ヌクレオチド類似物質、蛍光ラベル、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補助因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン酸化合物、ポリペプチド、電子豊富分子、酵素、または放射性同位元素である、請求項6のプローブ。
【請求項8】
Dtm(標的特異的配列と標的分子の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)と、第1腕と第2腕の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)との差)が10より大きい、請求項1〜7のいずれか1項のプローブ。
【請求項9】
Dtmが15に等しい、請求項8のプローブ。
【請求項10】
Dtm(標的特異的配列と標的分子の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)と、第1腕と第2腕の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)との差)が10より低い、請求項1〜7のいずれか1項のプローブ。
【請求項11】
基板、および少なくとも2つの請求項1〜7のいずれか1項のプローブを含むプローブバイオチップ。
【請求項12】
プローブが基板に付着している、請求項11のプローブ。
【請求項13】
前記プローブがさらにリンカーを含み、前記リンカーにより基板に付着している、請求項12のバイオチップ。
【請求項14】
基板が、機能性ガラス表面、機能性プラスチック表面、機能性金属、伝導性金属表面、伝導性プラスチック表面、多孔性基材、多孔性金属、光ファイバー、ガラス繊維由来の基材、二酸化ケイ素、機能的脂質膜、リポソーム、または濾過膜から成る、請求項13のバイオチップ。
【請求項15】
機能性プラスチック表面がポリスチレンである、請求項14のプローブバイオチップ。
【請求項16】
機能性金属が白金、金、またはニッケルである、請求項14のプローブバイオチップ。
【請求項17】
伝導性プラスチック表面が炭素ベースの基材である、請求項14のプローブバイオチップ。
【請求項18】
炭素ベースの基材がポリマーである、請求項14のプローブバイオチップ。
【請求項19】
多孔性基材がガラスである、請求項14のプローブバイオチップ。
【請求項20】
全ての第1腕が同一の配列を有する、請求項11のプローブバイオチップ。
【請求項21】
1つのレポーター分子が各プローブとハイブリダイズすることができる、請求項20のプローブバイオチップ。
【請求項22】
標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドが、4℃の範囲以内で等しい融解温度を持つ、請求項11〜21のいずれか1項のプローブバイオチップ。
【請求項23】
標的特異的配列と標的分子の会合により形成される全ての完全なハイブリッドが、1℃の範囲以内で等しい融解温度を持つ、請求項22のプローブバイオチップ。
【請求項24】
標的特異的配列と標的分子の会合により形成されるハイブリッドの融解温度と、標的特異的配列と標的特異的配列設計の対象でない分子との会合により形成されるハイブリッドの融解温度との差が、5℃以上である、請求項11〜23のいずれか1項のプローブバイオチップ。
【請求項25】
前記融解温度間の差が8℃以上である、請求項24のプローブバイオチップ。
【請求項26】
少なくとも2つのプローブのDtm(標的特異的配列と標的分子の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)と、第1腕と第2腕の会合により形成される完全なハイブリッドの融解温度(Tm)との差)が1℃の範囲以内で等しい、請求項11〜25のいずれか1項のプローブバイオチップ。
【請求項27】
無ラベルの汎用アドレス指定システムであって:
(a)(i)長さが6〜30ヌクレオチドの標的特異的配列;および(ii)前記標的特異的配列の5’端または3’端に結合されたタグ配列;を含む少なくとも2つの無ラベルの固定されていない第1プローブ;および
(b)基板および少なくとも2つの固定された請求項11〜26のいずれか1項の第2プローブを含むバイオチップ、
を含むシステム(ここで、各第1プローブのタグ配列は、各プローブ毎に異なり、また第2プローブの1つの標的特異的配列と相補的である)。
【請求項28】
請求項27の無ラベルの汎用アドレス指定システムであって、前記無ラベルの第1プローブが:
(i)6〜30ヌクレオチドの長さの標的特異的配列;
(ii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の5’側にある第1腕;
(iii)10ヌクレオチドより短い長さで、前記標的特異的配列の3’側にある第2腕;
(iv)10〜50ヌクレオチドの長さで、第1腕または第2腕に結合されたタグ配列、
を含むシステム(ここで、標的特異的配列が前記無ラベルのプローブの他のどの部分とも相補的ではなく;また第1腕および第2腕は互いに完全に相補的である)。
【請求項29】
第1プローブ全ての第1腕が同一の配列を有する、請求項28の汎用アドレス指定システム。
【請求項30】
第2プローブの全ての第1腕が同一の配列を有する、請求項27〜29のいずれか1項の汎用アドレス指定システム。
【請求項31】
同じレポーター分子が第1プローブまたは第2プローブとハイブリダイズすることができる、請求項29〜30のいずれか1項の汎用アドレス指定システム。
【請求項32】
請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップおよび1以上の試薬を含むキット。
【請求項33】
1組の、請求項1〜10のいずれか1項の固定されていないプローブをさらに含む請求項32のキット。
【請求項34】
レポーター分子をさらに含む、請求項32または33のキット。
【請求項35】
核酸を検出する方法であって:
(a)核酸試料を、生体外で請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムに接触させること;および、
(b)バイオチップまたは汎用アドレス指定システムの、工程(a)における接触の後に開コンホメーションを取った少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む方法。
【請求項36】
核酸試料中の遺伝的変異体を生体外で検出する方法であって:
(a)試料を請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムに接触させること(ここで、バイオチップまたは汎用アドレス指定システムの少なくとも1つのプローブが遺伝的変異体に特異的なプローブである);および、
(b)遺伝的変異体に特異的なプローブからの信号を検出すること(ここで、工程(b)において検出される信号は核酸試料中に遺伝的変異体が存在することを示す)、
を含む方法。
【請求項37】
検出される遺伝的変異体が単一ヌクレオチド多型である、請求項36の方法。
【請求項38】
生体外で、任意の核酸を含む有機体またはその残存物を検出する方法であって:
(a)核酸試料を、請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムに接触させること(ここで、少なくとも1つの前記プローブが、有機体またはその残存物の核酸に特異的である);および
(b)有機体の核酸に特異的なプローブからの信号を検出すること、
を含む方法(ここで、工程(b)において検出される信号が核酸を含む有機体またはその残存物が存在することを示す)。
【請求項39】
核酸を含む有機体がウイルスまたは細菌である、請求項38の方法。
【請求項40】
生体外で核酸試料中の遺伝子の選択的スプライシング産物を検出する方法であって:
(a)試料を、請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムに接触させること(ここで、バイオチップまたは汎用アドレス指定システムの少なくとも1つのプローブは、遺伝子のエクソンに特異的または2つのエクソンの接続部に特異的なヘアピンプローブである);および
(b)遺伝子のエクソンに特異的または2つのエクソンの接続部に特異的なヘアピンプローブからの信号を検出すること(ここで、工程(b)で検出される信号は、核酸試料中に遺伝子の選択的スプライシング産物が存在することを示す)、
を含む方法に関する。
【請求項41】
核酸試料がmRNAまたはcDNAを含む、請求項40の方法。
【請求項42】
生体外でオリゴヌクレオチドの配列決定をする方法であって:
(a)オリゴヌクレオチドを含む試料を、請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムに接触させること;および
(b)バイオチップの少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む方法(ここで、工程(b)で検出される信号は、オリゴヌクレオチドの配列の決定に使用される)。
【請求項43】
工程(b)における検出が、検出可能なマーカーでラベルされたレポーター分子を用いて得られる、請求項35〜42のいずれか1項の方法。
【請求項44】
工程(a)の試料が、既に検出可能なマーカーでラベルされている、請求項35〜42のいずれか1項の方法。
【請求項45】
核酸試料中の対立遺伝子不均衡とヘテロ接合性喪失を生体外で検出する方法であって:
(a)生体液または組織からの少なくとも2つの核酸試料からの1対のプライマーを用いて、少なくとも1つのマイクロサテライト型の染色体DNA領域を増幅すること(ここで、生体液または組織からの試料の少なくとも1つが対立遺伝子不均衡またはヘテロ接合性喪失を有さず、また、各組織または生体液が増幅中に異なってラベルされる);
(b)前記プライマーを増幅後に除去すること;
(c)前記増幅産物を、請求項11〜26のいずれか1項のバイオチップまたは請求項27〜31のいずれか1項の汎用アドレス指定システムと接触させること(ここで、バイオチップまたは汎用アドレス指定システムの少なくとも1つのプローブが、前記染色体DNA領域の増幅に用いたプライマーと相補的である);および、
(d)前記バイオチップの少なくとも1つのプローブからの信号を検出すること、
を含む方法(ここで、工程(d)で検出される信号を、核酸試料の1つの中に対立遺伝子不均衡またはヘテロ接合性喪失が存在することを決定するために用いる)。

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

image rotate

image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2006−520206(P2006−520206A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505716(P2006−505716)
【出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000586
【国際公開番号】WO2004/083225
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505345808)
【氏名又は名称原語表記】VALAT,CHRISTOPHE
【Fターム(参考)】