説明

プローブカード及びその製造方法

【課題】半導体チップに形成された複数の電極パッドに確実に接触させることが可能なプローブカードを提供すること。
【解決手段】プローブカード40の基板本体51には、第1の主面51aと第2の主面51bとの間を貫通する貫通孔52が形成されている。貫通孔52の第1の収容部52a内には弾性体56が形成され、第2の収容部52b内には、貫通電極54が形成されている。弾性体56の表面には配線55により貫通電極54と接続される配線57が形成されている。配線57の先端は、弾性体56の下面略中央に配置されている。そして、配線57の先端下面には、検査対象物10の電極パッド11と対応する位置に、その電極パッド11と電気的に接続される接触用バンプ41が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プローブカード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程は、半導体チップの電気的特性を検査する検査工程を含む。この工程に用いられる半導体検査装置は、ウェハ状態の半導体チップに形成された電極パッドと電気的に接続されるプローブ針を有している。半導体検査装置は、例えば、プローブ針を介して半導体チップに形成された回路に電気信号を供給するとともに、プローブ針を介して同回路から出力される信号を受け取り、この受け取った信号に基づいて回路の動作を検査することにより、半導体チップの良否を判定する。
【0003】
近年、半導体チップにおいては、素子の高集積化および処理信号数の増加によって、半導体チップに形成される電極パッドの数が増加(多ピン化)するとともに、電極パッドの狭ピッチ化が進んでいる。従って、個々の電極パッドにプローブ針を精度良く接触させることが難しくなっている。このため、基板に接続のための端子を複数形成し、複数の電極パッドに対する接続を一括して行うことが各種提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたコンタクトプローブは、プローブ本体と一体形成されたコンタクト用突起を有している。プローブ本体とコンタクト用突起は、異方性導電樹脂による樹脂成形によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−52779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体チップは、その表面にパシベーション膜が形成されている。そして、電極パッドは、パシベーション膜に形成された開口部から露出している。一方、上記特許文献1に開示されたコンタクト用突起は、樹脂成形により、四角錐や半球型に形成されている。このため、パシベーション膜から露出している電極パッドの大きさ(開口部の寸法)とパシベーション膜の膜厚との比(アスペクト比)によっては、コンタクト用突起を電極パッドに接触させることができないおそれがある。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、半導体チップに形成された複数の電極パッドに確実に接触させることが可能なプローブカード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、検査対象物の電気的検査を行う際に、前記検査対象物に形成された電極パッドと電気的に接続されるプローブカードは、前記検査対象物と対向配置される第1の主面と、前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する基板本体と、前記第1の主面と前記第2の主面との間を貫通する貫通孔と、前記貫通孔内であって前記第1の主面側に形成された弾性体と、前記貫通孔内であって前記第2の主面側に形成された貫通電極と、前記弾性体の表面に形成され、前記貫通電極と電気的に接続された配線と、前記弾性体上に形成され、前記配線と電気的に接続された接触用バンプと、を有する。この構成によれば、弾性体上に接触用バンプを設けることにより、検査対象物の電極パッドに接触させることができる。
【0009】
検査対象物の電気的検査を行う際に、前記検査対象物に形成された電極パッドと電気的に接続されるプローブカードは、基板の第1の主面から、開口部側の第1の収容部と底部側の第2の収容部とを有する深穴を形成する工程と、前記第2の収容部内に電極を形成する工程と、基端が前記電極と接続され、先端が前記第1の主面上に配置された配線を形成する工程と、前記第1の収容部に弾性体を充填する工程と、前記基板を薄化して基板本体を形成し、前記深穴を貫通孔とする工程と、基端が前記第1の配線と接続され、先端が前記弾性体上に配置された第2の配線を形成する工程と、前記第2の配線上に、前記電極パッドと対応する接触用バンプを形成する工程と、を含む方法により製造される。この方法によれば、弾性体上に設けられた接触用バンプを有するプローブカードが容易に製造される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一観点によれば、半導体チップに形成された複数の電極パッドに確実に接触させることが可能なプローブカード及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】基板検査装置の概略構成図。
【図2】プローブカードの一部断面図。
【図3】(a)〜(e)はプローブカードの製造工程を示す模式図。
【図4】(a)〜(e)はプローブカードの製造工程を示す模式図。
【図5】(a)(b)は別のプローブカードの一部断面図。
【図6】(a)〜(h)は配線の別の形状を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して一実施形態を説明する。尚、添付図面は、構造の概略を説明するためのものであり、実際の大きさを表していない。
図1に示すように、検査対象物10を検査する半導体検査装置20は、テスタ21と、そのテスタ21に接続されたプローブ装置22とを有している。
【0013】
検査対象物10は、例えば複数個の半導体チップが形成された1枚の半導体ウェハであって、個々の半導体チップに切断される前の状態(ウェーハ状態)のものである。検査対象物10は、半導体チップの素子に接続される複数の電極パッド11を有している。また、検査対象物10には、パシベーション膜12が形成され、電極パッド11はパシベーション膜12に形成された開口部12aから露出している。
【0014】
プローブ装置22は、配線基板30とプローブカード40を含む。配線基板30は、プローブカード40と対向する主面に形成された複数の接続用バンプ31を有している。接続用バンプ31の材料は、例えば金スズ半田である。また、配線基板30は、接続用バンプ31をテスタ21と接続する配線(図示略)を有している。
【0015】
プローブカード40は、検査対象物10と対向される主面に形成された複数の接触用バンプ41を有している。複数の接触用バンプ41の材料は、ニッケル、銅、ニッケル合金、等である。複数の接触用バンプ41は、検査対象物10の電極パッド11と対応する位置に配置されている。また、プローブカード40は、配線基板30と対向する主面に形成された複数の配線42を有している。複数の配線42の材料は、銅、ニッケル、ニッケル合金、等である。複数の配線42は、配線基板30の接続用バンプ31と対応する位置に配置されている。複数の配線42は、対応する接続用バンプ31とそれぞれ接続されている。なお、複数の接触用バンプ41は、対応する複数の配線42とそれぞれ接続されている。
【0016】
[プローブカードの構成]
図2に示すように、プローブカード40は、基板本体51を有している。基板本体51は、検査対象物10の基板と同じ材料(ここではシリコン)により形成されている。尚、基板本体51の材料として、セラミック、ガラス、樹脂(例えば、絶縁樹脂)、金属(例えば、Cu)等を用いることができる。
【0017】
基板本体51には、検査対象物10と対向配置される第1の主面(図2において下側の面)51aと,第1の主面51aと反対側の面であって配線基板30と対向する第2の主面(図2において上側の面)51bとの間を貫通する複数の貫通孔52が形成されている。複数の貫通孔52は、検査対象物10に形成された複数の電極パッド11と対応する位置に形成されている。
【0018】
各貫通孔52は、第1の収容部52aと第2の収容部52bとから構成されている。第1の収容部52aは、第1の主面51aから所定の深さに形成されている。第1の収容部52aは、開口部の大きさが、底部よりも大きく、所謂拡開して形成されている。第2の収容部52bは、第1の収容部52aの底部から第2の主面51bまで延びるように形成されている。第2の収容部52bは、ほぼ筒状に形成されている。
【0019】
基板本体51の表面には絶縁膜53が形成されている。絶縁膜53は、例えばシリコン酸化膜である。絶縁膜53は、貫通孔52の内面にも形成されている。
第2の収容部52b内には貫通電極54が形成されている。貫通電極54は、第2の収容部52bの開口部(第2の主面51b側の開口部)から第1の収容部52aまで延びるように形成されている。貫通電極54の材料は、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)である。貫通電極54は、絶縁膜53によって基板本体51から絶縁されている。なお、図2に示すプローブカード40の断面には、基板本体51や貫通電極54等を判りやすくするために、絶縁膜53のハッチングを省略している。
【0020】
貫通電極54は、配線55と接続されている。配線55は、貫通電極54の端部から、第1の収容部52aの内壁に沿って第1の収容部52aの底部から開口部まで延び、その開口部から第1の主面51a上を所定方向に沿って延びるように形成されている。即ち、配線55の基端は貫通電極54と接続され、配線55の先端は基板本体51の第1の主面51a上に配置されている。配線55の材料は、銅、金(Au)ニッケル(Ni)、ニッケル合金、白金(Pt)、等である。
【0021】
各第1の収容部52a内には、弾性体56が充填されている。弾性体56は、弾性を有する樹脂、例えばシリコーン樹脂である。
弾性体56の表面(図2において下面)には配線57が形成されている。配線57の基端は配線55と接続されている。配線57の先端は、弾性体56のほぼ中央に所定の形状(例えば、先端円弧状)に形成されている。配線57の材料は、配線55と同様に、銅、金、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、白金、等である。
【0022】
各配線57の基端の表面(図2において下面)には、接触用バンプ41がそれぞれ形成されている。接触用バンプ41は、検査対象物10の電極パッド11と対応する位置に形成されている。接触用バンプ41は、例えば、配線57の基端下面から下方に延びる円柱状に形成されている。接触用バンプ41の材料は、銅、金、ニッケル、ニッケル合金、ロジウム、等である。なお、接触用バンプ41は、貫通電極54と同軸上であって、その軸線方向に沿って延びるように形成されていることが好ましい。
【0023】
そして、接触用バンプ41の形状は、電極パッド11の露出している部分、パシベーション膜12の膜厚に応じて形成されている。例えば、電極パッド11上のパシベーション膜12の膜厚を10μmとすると、接触用バンプ41は直径が15μm、上下方向の長さが20μmに設定されている。
【0024】
上記のように構成されたプローブ装置22は、図示しない検査台上に固定された検査対象物10と平行に支持される。そして、プローブ装置22は、プローブカード40の接触用バンプ41が検査対象物10の電極パッド11に対向するように相互に位置決めされ、図2に一点鎖線で示すように、接触用バンプ41の先端が電極パッド11と接触される。
【0025】
接触用バンプ41は、検査対象物10の形状、詳しくは電極パッド11を露出させるパシベーション膜12の開口形状、膜厚に応じて形成されている。従って、パシベーション膜12が厚くなれば、それに応じて接触用バンプ41の上下方向の長さ、つまりアスペクト比が変更可能である。従って、接触用バンプ41を確実に電極パッド11に接触させることができる。また、パシベーション膜12の形状に応じて接触用バンプ41の形状を設定することができるため、検査対象物10の形状変更に容易に対応することができる。
【0026】
接触用バンプ41が電極パッド11に接触されると、その接触用バンプ41の直上には、弾性体56が配置されている。弾性体56は、弾性を有しているため、接触用バンプ41は、上下方向に変位可能である。従って、複数の接触用バンプ41の長さがばらついても、弾性体56が形成された第1の収容部52a内に接触用バンプ41入り込むことで、接触用バンプ41の長さのばらつきが弾性体56によって吸収され、各接触用バンプ41をそれぞれ電極パッド11に接触させることができる。
【0027】
また、プローブ装置22と検査対象物10とが相対的に傾いても、同様に各接触用バンプ41をそれぞれ電極パッド11に接触させることができる。つまり、プローブ装置22が傾いて支持されると、その傾きに応じて、先に電極パッド11と接触する接触用バンプ41が弾性体56が形成された第1の収容部52a内に入り込むことで、他の接触用バンプ41を電極パッド11に接触させることができるようになる。
【0028】
また、例えばプローブ装置22を押し下げることにより検査対象物10とプローブ装置22とを相対的に接近させると、弾性体56の弾性力によって接触用バンプ41が電極パッド11に向かって押圧されるため、接触用バンプ41と電極パッド11とを確実に電気的に接続することができる。
【0029】
プローブカード40は、基板本体51の第1の主面51a及び第2の主面51bと垂直な軸に沿って、接触用バンプ41と弾性体56と貫通電極54とが配置されている。そして、貫通電極54は、貫通孔52の第2の収容部52b内にあって移動不能に形成されている。従って、接触用バンプ41が第1の収容部52a内に進入すると、弾性体56が圧縮される。この弾性体56の圧縮によって、接触用バンプ41が電極パッド11に向かって押圧される。このため、接触用バンプ41と電極パッド11とが互いに確実に接続される。
【0030】
上記のように、検査対象物10に形成された複数の半導体チップの電極パッド11に接触用バンプ41をそれぞれ接触させて電気的に接続することができる。このため、複数の半導体チップに対する検査を並行して実施することができるため、個々の半導体チップを順次検査する場合と比べて、検査対象物10に係る検査時間を短縮することができる。
【0031】
また、基板本体51の材料として検査対象物10と同じ材料(シリコン)を用いることにより、プローブカード40と検査対象物10との間の熱膨張係数の差が緩和されるため、半導体チップに設けられた電極パッド11に接触用バンプ41を精度良く接触させることができる。また、検査により検査対象物10の温度を変更する場合には、その温度に応じて基板本体51が伸縮するため、接触用バンプ41と電極パッド11との相対的な位置ずれを抑えることができる。
【0032】
次に、上記のプローブカード40の製造工程を説明する。なお、基板本体51の材料をシリコンとした場合の製造工程について説明する。
先ず、図3(a)に示すように、シリコンウェハである基板61を用意する。基板61の厚みは、例えば725μm〜775μmである。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、基板61の第1の主面61a側に形成されたマスク(図示略)を用い、マスクの開口部を通して基板61を高アスペクト比エッチングにてエッチングを行い、基板61に深穴62を形成する。高アスペクト比エッチングには、例えば、ボッシュプロセスが用いられる。
【0034】
ボッシュプロセスは、シリコンの深堀りエッチング技術であり、具体的には、エッチング(エッチングステップ)とエッチング側壁保護(保護ステップ)とを繰り返し行うエッチング方法である。エッチングステップでは、六フッ化硫黄(SF)を用いて等方性エッチングを行い、保護ステップでは、テフロン(登録商標)系のガス(例えば、C)を用いて側壁を保護(横方向にエッチングが進行することを抑制)する。上記ボッシュプロセスでは、エッチングステップと保護ステップとを繰り返し行うため、ボッシュプロセスにより形成された深穴62の側面は、スキャロッピング形状(微細な凹凸の繰り返し)となる。そして、エッチングステップと保護ステップに用いるガスの比率等を調整することにより、表面側が拡開した第1の収容部62aと、基板61の主面と垂直な方向に沿って延びる第2の収容部62bとを形成する。
【0035】
なお、深穴62を他の方法、例えば反応性イオンエッチング(深堀りRIE:Deep Reactive Ion Etching)、異方性エッチング(例えばドライエッチング)と等方性エッチング(例えばウエットエッチング)の組合せ、により形成してもよい。また、水酸化カリウム(KOH)や水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)をエッチング液として半導体結晶の(111)面に対するエッチング速度を利用した結晶異方性エッチングによって第1の収容部62aを形成するようにしてもよい。
【0036】
次に、図3(c)に示すように、基板61の全面及び深穴62の内面に絶縁膜63を形成する。絶縁膜63は、例えば熱酸化により形成されたシリコン酸化膜である。なお、絶縁膜63を他の方法、例えば化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)により形成してもよい。
【0037】
次に、図3(d)に示すように、電解メッキ、無電解メッキ、導体ペースト充填、等の方法により、第2の収容部62b内に電極64を形成する。電解メッキの場合、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等によって形成したシード層を用いて電極64を形成する。
【0038】
次に、図3(e)に示すように、配線55を形成する。配線55の形成方法は、例えばセミアディティブ法、アディティブ法である。配線57は、開口部が設けられたマスク(図示略)を用いた物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)やメッキ、等により形成される。
【0039】
次に、図4(a)に示すように、例えばシリコーン樹脂の真空印刷により、第1の収容部62aに弾性体56を充填する。
次に、図4(b)に示すように、配線57を形成する。配線57の形成方法は、例えばセミアディティブ法、アディティブ法である。配線57は、開口部が設けられたマスク(図示略)を用いた物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)やメッキ、等により形成される。次に、例えばメッキにより、配線57上に接触用バンプ41を形成する。
【0040】
次に、バックグラインドによって基板61を第2の主面61b側から研削し、図4(c)に示すように、深穴62を貫通孔52とするように基板61を薄化する。この研削工程により薄化された基板61の厚みは、例えば200μmである。このため、図3(b)に示す工程において、深穴62は、薄化された基板61の厚みよりも深く形成される。
【0041】
次に、図4(d)に示すように、例えば低温CVDにより、基板61の下面(研削面)にシリコン酸化膜からなる絶縁膜65を形成する。この絶縁膜65と上記工程により形成された絶縁膜63により、図2に示す絶縁膜53が構成される。これにより、図2に示すように、貫通孔52を有する基板本体51が形成されるとともに、貫通孔52の第1の収容部52a内に充填された弾性体56と、第2の収容部52b内に固定された貫通電極54が形成される。
【0042】
次に、図4(e)に示すように、基板本体51の第2の主面51bに配線42を形成する。配線42の形成方法は、例えばセミアディティブ法、アディティブ法である。配線42は、開口部が設けられたマスク(図示略)を用いた物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)やメッキ、等により形成される。
【0043】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)プローブカード40の基板本体51には、第1の主面51aと第2の主面51bとの間を貫通する貫通孔52が形成されている。貫通孔52は第1の収容部52aと第2の収容部52bにより構成されている。第1の収容部52a内には弾性体56が形成され、第2の収容部52b内には、貫通電極54が形成されている。弾性体56の表面には貫通電極54と配線55により接続される配線57が形成されている。配線57の第2端部は、弾性体56の下面に配置されている。そして、配線57の第2端部下面には、検査対象物10の電極パッド11と対応する位置に、その電極パッド11と電気的に接続される接触用バンプ41が形成されている。接触用バンプ41は、検査対象物10の形状、詳しくは電極パッド11を露出させるパシベーション膜12の開口形状、膜厚に応じて柱状に形成されている。従って、パシベーション膜12が厚くなれば、それに応じて接触用バンプ41の上下方向の長さ(高さ)、つまりアスペクト比が変更可能である。従って、接触用バンプ41を確実に電極パッド11に接触させることができる。また、パシベーション膜12の形状に応じて接触用バンプ41の形状を設定することができるため、検査対象物10の形状変更に容易に対応することができる。
【0044】
(2)接触用バンプ41の直上には、弾性体56が配置されている。弾性体56は、弾性を有しているため、接触用バンプ41は、上下方向に変位可能である。従って、複数の接触用バンプ41の長さがばらついても、弾性体56が形成された第1の収容部52a内に接触用バンプ41入り込むことで、接触用バンプ41の長さのばらつきが弾性体56によって吸収され、各接触用バンプ41をそれぞれ電極パッド11に接触させることができる。
【0045】
(3)プローブ装置22と検査対象物10とが相対的に傾いても、各接触用バンプ41をそれぞれ電極パッド11に接触させることができる。つまり、プローブ装置22が傾いて支持されると、その傾きに応じて、先に電極パッド11と接触する接触用バンプ41が弾性体56が形成された第1の収容部52a内に入り込むことで、他の接触用バンプ41を電極パッド11に接触させることができるようになる。
【0046】
また、例えばプローブ装置22を押し下げることにより検査対象物10とプローブ装置22とを相対的に接近させると、弾性体56の弾性力によって接触用バンプ41が電極パッド11に向かって押圧されるため、接触用バンプ41と電極パッド11とを互いに確実に電気的に接続することができる。
【0047】
尚、上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・図2に示すように、第1の収容部52aを、底部に対して開口部が拡開するように形成したが、貫通電極54と配線57とを互いに接続する配線55を形成することができればよく、第1の収容部52aの形状を適宜変更してもよい。
【0048】
・図5(a)に示すように、接触用バンプ41を、隣接する貫通孔52に形成した貫通電極54と接続するように、配線55,57を形成するようにしてもよい。これにより、接触用バンプ41の配置位置と、接続用のバンプ31(図2参照)が接続される配線42の配置位置とを、それぞれ任意の位置とする、つまり配置の自由度を高くすることが可能となる。
【0049】
・図5(b)に示すように、基板本体51の第2の主面51bに、多層配線層71を形成してもよい。なお、第1の主面51aに多層配線を形成することも可能である。多層配線層71は、例えばビルドアップ法により配線層と絶縁層を積層して形成される。多層配線層71を形成することにより、接触用バンプ41の配置位置と、接続用のバンプ31(図2参照)が接続される配線42の配置位置とを、それぞれ任意の位置とする、つまり配置の自由度を高くすることが可能となる。
【0050】
・絶縁膜として、シリコン酸化膜(SiO)以外に、シリコン窒化膜(SiN)などを形成するようにしてもよい。また、複数種類の絶縁膜、例えばシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを積層するようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態における製造工程を適宜変更してもよい。例えば、図4(b)に示す配線57と接触用バンプ41を形成する工程を、絶縁膜65を形成する工程(図4(d))、又は薄化する工程(図4(c))の後に実施するようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態において、弾性体56の形状、弾性体56の表面に形成された配線57の形状を適宜変更してもよい。
例えば、図6(a)に示すように、配線57は、基端部(図6(a)において左端)が絶縁膜53上に配置され、先端部が弾性体56のほぼ中央に配置された平面視長方形状に形成してもよい。先端が円弧状に形成した場合も同様であるが、このように配線57を形成した場合、弾性体56の少なくとも一部が露出している。従って、露出した弾性体56の部分は、接触用バンプ41を図1,図2に示す電極パッド11に対して押圧接触させる際に、接触用バンプ41の移動によって変形する弾性体56の逃げ場所となる。これにより、配線57に加わる負荷を低減することができる。
【0053】
また、図6(b)に示すように、弾性体56の表面中心を通り、両端が絶縁膜53上に配置されるように配線57を形成するようにしてもよい。なお、絶縁膜53上に配置される端部の数は、3つ以上としてもよい。例えば、図6(c)に示すように、弾性体56の中心から3つの方向に沿って延び、各端部が絶縁膜53上に配置される配線57としてもよい。また、図6(d)に示すように、弾性体56の中心から4つの方向に沿って延び、各端部が絶縁膜53上に配置される配線57としてもよい。これらの配線57は、図1,図2に示す電極パッド11に押圧する接触用バンプ41の倒れ込みを防止することができる。
【0054】
また、配線57の形状は直線状に限定されない。例えば、図6(e)に示すように、渦巻き状の配線57としてもよい。この場合、配線57は、基端から先端までの長さが、直線状に形成した配線よりも長くなるため、接触用バンプ41の移動(図面表裏方向の移動)に対してかかる応力が少なくなり、配線57にかかる負荷を低減することができる。
【0055】
また、図6(f)に示すように、弾性体56の表面全体を覆うように配線57を形成してもよい。この場合、線状に配線を形成する場合と比べ、配線57の厚さを薄くすることができる。
【0056】
また、図6(g),図6(h)に示すように、弾性体56の表面形状を矩形状、つまり図2に示す第1の収容部52aを矩形状に形成してもよい。そして、このように形成した弾性体56に対し、弾性体56の中心から互いに直交する2つの方向に沿って延びるように配線57を形成してもよい。この場合、図6(g)に示すように、配線57が延びる方向を、矩形状に形成された弾性体56表面の対向する辺と直交する方向としてもよい。また、図6(h)に示すように、矩形状に形成された弾性体56表面の対角方向に沿って配線57を形成してもよい。なお、表面が矩形状に形成された弾性体56に対し、配線57の形状を、図6(a)〜図6(c),図6(e),図6(f)等に示す形状としてもよい。
【0057】
・上記実施形態は、ウェハ状態の半導体チップを検査するために用いられるプローブカード40に具体化したが、個辺化された半導体チップを検査するために用いられるプローブカードに具体化してもよい。
【0058】
・検査対象物として上記の半導体ウェハ以外に、複数の端子を有するもの、例えば半導体パッケージとしてもよい。
・接触用バンプ41の表面に金層等の金属層を設けてもよい。金層は、例えばめっきにより形成される。例えば、接触用バンプ41を銅とした場合、接触用バンプ41の先端に設けられる金属層は、例えば、ニッケル層と金層、ニッケル層とパラジウム層と金層、である。なお、金層は、金属層の最表層に設けられることが好ましい。金属層を設けることにより、接触用バンプ41と電極パッド11との接触抵抗を低減することができる。
【0059】
・接触用バンプ41の形状を適宜変更してもよい。例えば、検査対象物10の形状に応じて、アスペクト比が低い場合に、例えば半球状や略球状としてもよい。
・接続用バンプ31をプローブカード40側に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 検査対象物
11 電極パッド
30 配線基板
40 プローブカード
41 接触用バンプ
42 配線
51 基板本体
51a,51b 主面
52 貫通孔
52a,52b 収容部
54 貫通電極
56 弾性体
55,57 配線
62 深穴
62a,62b 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の電気的検査を行う際に、前記検査対象物に形成された電極パッドと電気的に接続されるプローブカードであって、
前記検査対象物と対向配置される第1の主面と、前記第1の主面と反対側の第2の主面を有する基板本体と、
前記第1の主面と前記第2の主面との間を貫通する貫通孔と、
前記貫通孔内であって前記第1の主面側に形成された弾性体と、
前記貫通孔内であって前記第2の主面側に形成された貫通電極と、
前記弾性体の表面に形成され、前記貫通電極と電気的に接続された配線と、
前記弾性体上に形成され、前記配線と電気的に接続された接触用バンプと、
を有することを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記配線は、前記弾性体の一部を露出するように形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
前記弾性体は、前記貫通孔の前記第1の主面側に形成された第1の収容部内に充填され、前記第1の収容部は、前記第1の主面側の開口部が拡開されたテーパ状に形成され、前記接触用バンプは、前記第1の収容部の内側面に形成された配線を介して前記貫通電極と接続される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記弾性体の表面に形成された前記接触用バンプは、前記弾性体が形成された貫通孔と隣接する貫通孔に形成された貫通電極と電気的に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項5】
前記第2の主面には、前記貫通電極と接続され、配線基板と電気的に接続される配線が形成されたことを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一項に記載のプローブカード。
【請求項6】
検査対象物の電気的検査を行う際に、前記検査対象物に形成された電極パッドと電気的に接続されるプローブカードの製造方法であって、
基板の第1の主面から、開口部側の第1の収容部と底部側の第2の収容部とを有する深穴を形成する工程と、
前記第2の収容部内に電極を形成する工程と、
基端が前記電極と接続され、先端が前記第1の主面上に配置された第1の配線を形成する工程と、
前記第1の収容部に弾性体を充填する工程と、
前記基板を薄化して基板本体を形成し、前記深穴を貫通孔とする工程と、
基端が前記第1の配線と接続され、先端が前記弾性体上に配置された第2の配線を形成する工程と、
前記第2の配線上に、前記電極パッドと対応する接触用バンプを形成する工程と、
を含むことを特徴とするプローブカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−198194(P2012−198194A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13247(P2012−13247)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】