説明

プローブカード

【課題】プローブに加える荷重を低く維持したまま、狭小の有効スペースでプローブのストローク長さを長くし、かつ、プローブが安定して伸縮動作することができるプローブカードを提供する。
【解決手段】本発明のプローブカード1のプローブ2においては、ばね部として、ドーナツ形状の楕円板状に形成された第1ビーム部4および第2ビーム部5が傾斜配置されている。また、プローブ2は、第1ビーム部4の上端部および第2ビーム部5の下端部をヒンジ部Hとして2個のビーム部を連結させ、シングルアームパンタグラフ形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカードに係り、特に、垂直方向に延在するプローブがアレイ配置されるプローブカードに好適に利用できるプローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プローブカードに用いられるプローブ(接触子とも言う。)については、主に、水平カンチレバー型プローブと、垂直型プローブとの2種類のプローブが挙げられる。そのうちの垂直型プローブのメリットは、アレイ配置できる点である(特許文献1を参照)。
【0003】
従来の垂直型プローブにおいては、プローブの高い耐久性と低い接点抵抗とを実現するため、低荷重と高ストロークとの両立が要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の垂直型プローブにおいては、最近のプローブの狭小化により各プローブ間のピッチ間距離およびプローブの有効スペースが小さくなったため、プローブに加える荷重を低く維持したまま、狭小の有効スペースでプローブのストローク長さを長くすることが難しくなってきたという問題が生じてきた。
【0006】
したがって、例えば数μm〜数十μm幅のプローブを150μm以下のピッチ間隔で配置する状況のようなプローブの有効スペースおよび各プローブ間のピッチ間距離が小さくなる場合であっても、低荷重および長いストローク長を実現し、かつ、安定して伸縮動作する新規な立体形状のプローブを提供する必要が生じてきた。
【0007】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、プローブに加える荷重を低く維持したまま、狭小の有効スペースでプローブのストローク長さを長くし、かつ、プローブが安定して伸縮動作することができるプローブカードを提供することを本発明の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明のプローブカードは、その第1の態様として、接続端子を有する配線板と、所定の幅を有する板形状にそれぞれ形成された第1ビーム部から第nビーム部(nは2以上の任意の整数である。)までの複数のビーム部を傾斜配置または水平配置し、かつ、配線板の接続端子に直接的または間接的に接続された第1ビーム部から第nビーム部までの各端部を各々のヒンジ部として複数のビーム部を順次連結させることにより、単独のまたは連続したシングルアームパンタグラフ形状またはZ字形状に形成されているばね部を有するプローブとを備えることを特徴としている。
【0009】
本発明の第1の態様のプローブカードによれば、プローブのばね部が単独のまたは連続したシングルアームパンタグラフ形状またはZ字形状に形成されているので、狭小の有効スペースでプローブのストローク長さを長くすることができる。また、プローブのばね部を構成する各ビーム部が所定の幅を有する板形状にそれぞれ形成されているので、プローブの収縮時にプローブが不必要に水平方向に動いてしまうことを防止することができる。
【0010】
本発明の第2の態様のプローブカードは、第1の態様のプローブカードにおいて、ビーム部は、多角形板、円形板、楕円形板その他の一端または両端の幅が中間部の幅よりも狭い板状に形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の第2の態様のプローブカードによれば、直線状に形成した各ビーム部を有するプローブよりもその弾性力を大きくすることができる。また、ビーム部の幅を変更することにより、プローブの弾性力の制御を容易にすることができる。
【0012】
本発明の第3の態様のプローブカードは、第2の態様のプローブカードにおいて、ビーム部は、ドーナツ形状に形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明の第3の態様のプローブカードによれば、各ビーム部の内部に設けられた孔の大きさによってプローブの弾性力の制御を容易にすることができる。
【0014】
本発明の第4の態様のプローブカードは、第1から第3のいずれか1の態様のプローブカードにおいて、プローブの接触部として接触対象となる電極パッドに接触するビーム部の接触箇所は、電極パッドと平行に形成されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の第4の態様のプローブカードによれば、電極パッドとの接触面積を大きくすることができる。
【0016】
本発明の第5の態様のプローブカードは、第1から第4のいずれか1の態様のプローブカードにおいて、プローブは、配線板の接続端子と第1ビーム部との間において配線板から第1ビーム部を電極パッドの配設側に嵩上げする嵩上台を有していることを特徴としている。
【0017】
本発明の第5の態様のプローブカードによれば、第1傾斜ビーム部が配線板に底付きしてしまうことを抑制することができる。
【0018】
本発明の第6の態様のプローブカードは、第5の態様のプローブカードにおいて、プローブは、嵩上台から水平方向に延在して形成されており、嵩上台と第1ビーム部の下端とを接続する水平ビーム部を有していることを特徴としている。
【0019】
本発明の第6の態様のプローブカードによれば、嵩上台と第1傾斜ビーム部との間に水平ビーム部が介在するので、プローブの弾性変形の挙動制御を容易に行なうことができる。
【0020】
本発明の第7の態様のプローブカードは、第1から第6のいずれか1の態様のプローブカードにおいて、プローブは、上下方向に隣位する各ビーム部の各端部の間を接続しており、柱状に形成されている垂直接続部を有していることを特徴としている。
【0021】
本発明の第7の態様のプローブカードによれば、各ビーム部の間に垂直接続部が介在することによって各ビーム部との間から界面剥離することを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のプローブカードによれば、プローブのばね部を構成するビーム部の形状、それらの段組形状などを上記の通りにしたので、プローブに加える荷重を低く維持したまま、狭小の有効スペースでプローブのストローク長さを長くし、かつ、プローブが安定して伸縮動作することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のプローブカードの一例を示す斜視図
【図2】本実施形態のプローブカードの一例を示す斜視図
【図3】本実施形態のプローブの一例を示す斜視図
【図4】本実施形態のプローブの一例を示す斜視図
【図5】本実施形態のプローブにおいて垂直接続部を形成した状態の一例を示す斜視図
【図6】本実施形態のプローブの製造方法をA〜Gの順に示す斜視図および断面図
【図7】本実施形態のプローブの製造方法における嵩上台の形成工程の一例を示す断面図
【図8】本実施形態のプローブの製造方法における嵩上台および水平ビーム部の形成工程の一例を示す断面図
【図9】本実施形態のプローブの製造方法において嵩上台、水平ビーム部および第1傾斜ビーム部の接合方法の一例を示す断面図
【図10】本実施形態のプローブの製造方法において第1傾斜ビーム部、垂直接続部および第2傾斜ビーム部の接合方法の一例を示す断面図
【図11】他のプローブの一例を示す斜視図
【図12】他のプローブの一例を示す斜視図
【図13】他の実施形態のプローブの一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のプローブカードをその一実施形態により説明する。
【0025】
本実施形態のプローブカード1は、例えば図1に示すように、接続端子3aを有する配線板3およびプローブ2を備えている。
【0026】
本実施形態のプローブ2は、複数のビーム部(例えば4、5など)で構成されたばね部を有する。このばね部においては、図1または図2に示すように、第1ビーム部4から第nビーム部(nは2以上の任意の整数である。)(部品番号は5、6、またはNである。)までの複数のビーム部が傾斜配置または水平配置されている。傾斜配置されたビーム部を例えば図1に示すように第2傾斜ビーム部5と称し、水平配置されたビーム部を例えば図3に示すように第2水平ビーム部6と称する。また、このばね部は、配線板3の接続端子3aに接続された第1ビーム部4から第nビーム部Nまでの各端部を一体形成された各々のヒンジ部H(図1参照)として複数のビーム部を順次連結させることにより、シングルアームパンタグラフ形状に形成されている。このばね部は、図3または図4に示すように、Z字形状に形成されていても良い。また、ばね部のシングルアームパンタグラフ形状またはZ字形状は、図1または図3に示すように単独であっても良いし、図2または図4に示すように連続しても良い。
【0027】
ビーム部(例えば4)は、所定の幅を有する板形状にそれぞれ形成されている。このビーム部(例えば4)は、多角形板、円形板、楕円形板その他の一端または両端の幅が中間部の幅よりも狭い板状に形成されていることが好ましい。また、このビーム部(例えば4)は、ドーナツ形状に形成されていることがなお好ましい。
【0028】
ビーム部の接触箇所(例えば5a、6a、Na)は、図1、図3または図4に示すように、プローブ2の接触部として接触対象となる電極パッド(図示せず)に接触する。このビーム部の接触箇所(例えば5a、6a、Na)は、電極パッドと平行に形成されていることが好ましい。
【0029】
第1傾斜ビーム部4は、配線板3の接続端子3aに対して直接的に接続されていても良いし、間接的に接続されていても良い。例えば、プローブ2は、図2または図4に示すように、配線板3の接続端子3aと第1ビーム部4との間に、金属製の嵩上台8を有していても良い。この嵩上台8は、配線板3から第1ビーム部4を電極パッドの配設側(上方)に嵩上げするものであって、第1傾斜ビーム部4と配線板3の接続端子3aとを間接的に接続する。
【0030】
また、プローブ2は、図3または図4に示すように、水平ビーム部9を有していても良い。この水平ビーム部9は、嵩上台8から水平方向に延在して形成されており、嵩上台8と第1ビーム部4の下端とを接続するものである。
【0031】
さらに、プローブ2は、図5に示すように、垂直接続部25を有していても良い。垂直接続部25は、柱状に形成されており、上下方向に隣位する各ビーム部の各端部の間、例えば、第1傾斜ビーム部4の上端と第2ビーム部5(または6)の下端との間に介在している。
【0032】
本実施形態のプローブカード1のプローブ2は種々の方法で形成することができる。例えば、本実施形態のプローブ2は、必須の工程として、図6Aに示すような穴10aの内部に第1傾斜ビーム部4がめっき形成される第1レジストめっき型の形成、図6Bに示すような第1傾斜ビーム部4のめっき形成、図6Cに示すような第1レジストめっき型の除去、図6Dに示すような上面が平らな第1レジスト埋込台座の形成、図6Eに示すような穴15aの内部に第2傾斜ビーム部5がめっき形成される第2レジストめっき型の形成、図6Fに示すような第2ビーム部5(または6)のめっき形成および図6Gに示すようなレジストの除去を経て、形成される。
【0033】
また、本実施形態のプローブ2は、任意の追加工程として、図7に示すような第1レジストめっき型の形成前に嵩上台8用レジストめっき型20および嵩上台8のめっき形成、図8および図9に示すような第1レジストめっき型の形成前に水平ビーム部9用レジストめっき型21および水平ビーム部9めっきの形成ならびに図10に示すような垂直接続部25のめっき形成を経て、形成されていても良い。
【0034】
次に、本実施形態のプローブカード1の作用を説明する。
【0035】
本実施形態のプローブカード1において、プローブ2のばね部は、例えば図1に示すように、複数のビーム部4、5を上下に段組することにより、単独の(または図2のように連続した)シングルアームパンタグラフ形状(または図3または図4に示すZ字形状)に形成されている。そのため、狭小の有効スペースでプローブ2のストローク長さを長くすることができる。
【0036】
前述の各ビーム部(例えば4、5)は、所定の幅を有する板形状にそれぞれ形成されている。そのため、図11または図12に示すような直線状またはC形状のビーム部(例えば4、5)を組み合わせてなるプローブ2とは異なり、プローブ2の収縮時にプローブ2が不必要に水平方向に動いてプローブの伸縮動作の挙動を乱してしまうことを防止することができる。
【0037】
また、ビーム部は、図13に示すように、多角形板、円形板、楕円形板その他の一端または両端の幅が中間部の幅よりも狭い板状に形成されていることが好ましい。この場合、図11または図12に示すような幅の狭い線状またはC形状のビーム部(例えば4、5)を有するプローブ2よりもその弾性力を大きくすることができる。また、ビーム部の中間部の幅を上下両端の幅よりも大きくすることにより、プローブ2のばね部の収縮量に応じて弾性力を大きくさせるといったようなプローブ2の弾性力の制御を容易にすることができる。
【0038】
特に、図1から図4に示すように、ビーム部がドーナツ形状に形成されていることがより好ましい。こうすれば、各ビーム部の内部に設けられた孔の大きさによってプローブ2に印加された低荷重により生じるプローブ2の弾性力を減少方向に調整することが容易になるので、プローブ2の全幅を大きくしてもプローブ2が生じる弾性力を小さくすることができる。これにより、プローブ2の全幅の拡大によるプローブ2の収縮方向への挙動安定性を向上させるとともに、プローブ2の弾性力の制御を容易にすることができる。
【0039】
また、例えば、図1の第2ビーム部5(または6)の上端のように、ビーム部の接触箇所(例えば5a、6a、Na)は、電極パッドと平行に形成されていることが好ましい。これにより、電極パッドとの接触面積を大きくすることができる。
【0040】
また、プローブ2は、図2または図4に示すように、嵩上台8を有していることが好ましい。嵩上台8を形成することにより、第1傾斜ビーム部4が配線板3に早期に底付きしてしまうことを抑制することができる。
【0041】
嵩上台8を形成する場合、プローブ2には水平ビーム部9が形成されていることが好ましい。水平ビーム部9が変形してもビーム部の接触箇所(例えば5a、6a、Na)の位置が左右にずれることが少ないので、プローブ2の弾性力を水平ビーム部9の追加により制御しつつ、プローブ2の弾性変形の挙動制御を容易に行なうことができる。
【0042】
さらに、このプローブ2には、図5に示すように、垂直接続部25が形成されていることが好ましい。各ビーム部(例えば4、5)の間に垂直接続部25が介在することによって各ビーム部(例えば4、5)の間から界面剥離することを防止することができる。
【0043】
すなわち、本実施形態のプローブカード1によれば、プローブ2のばね部を構成するビーム部の形状、それらの段組形状などを上記の通りにしたので、プローブ2に加える荷重を低く維持したまま、狭小の有効スペースでプローブ2のストローク長さを長くし、かつ、プローブ2が安定して伸縮動作することができるという効果を奏する。
【0044】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 プローブカード
2 プローブ
3 配線板
4 第1傾斜ビーム部
5 第2傾斜ビーム部
6 第2水平ビーム部
7 第3傾斜ビーム部
8 嵩上台
9 水平ビーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端子を有する配線板と、
所定の幅を有する板形状にそれぞれ形成された第1ビーム部から第nビーム部(nは2以上の任意の整数である。)までの複数のビーム部を傾斜配置または水平配置し、かつ、前記配線板の接続端子に直接的または間接的に接続された前記第1ビーム部から前記第nビーム部までの各端部を各々のヒンジ部として前記複数のビーム部を順次連結させることにより、単独のまたは連続したシングルアームパンタグラフ形状またはZ字形状に形成されているばね部を有するプローブと
を備えることを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記ビーム部は、多角形板、円形板、楕円形板その他の一端または両端の幅が中間部の幅よりも狭い板状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプローブカード。
【請求項3】
前記ビーム部は、ドーナツ形状に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のプローブカード。
【請求項4】
前記プローブの接触部として接触対象となる電極パッドに接触する前記ビーム部の接触箇所は、前記電極パッドと平行に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプローブカード。
【請求項5】
前記プローブは、前記配線板の接続端子と前記第1ビーム部との間において前記配線板から前記第1ビーム部を前記電極パッドの配設側に嵩上げする嵩上台を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプローブカード。
【請求項6】
前記プローブは、前記嵩上台から水平方向に延在して形成されており、前記嵩上台と前記第1ビーム部の下端とを接続する水平ビーム部を有している
ことを特徴とする請求項5に記載のプローブカード。
【請求項7】
前記プローブは、上下方向に隣位する前記各ビーム部の各端部の間を接続しており、柱状に形成されている垂直接続部を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプローブカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−137292(P2012−137292A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94148(P2009−94148)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】