説明

プローブ駆動装置、及びこの装置を備えた内挿型探傷装置

【課題】検査対象管内でプローブが引っ掛かったときにプローブや伝達軸に過負荷が加わることを防止するプローブ駆動装置及びこの装置を備えた内挿型探傷装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、検査対象管11に挿入してその内部でプローブ12に動力を伝達可能な伝達軸22と、検査対象管11の外部で伝達軸22を中心軸方向に移動するのを許容しながら保持する保持部材30と、保持部材30を駆動する駆動手段45と、伝達軸22が保持部材30に対して初期位置から中心軸方向に相対変位するのに伴い、弾発力を生成してこの弾発力によって伝達軸22を初期位置に戻す方向に付勢する付勢手段26と、伝達軸22の保持部材30に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったことを検知し、駆動手段45による保持部材30の駆動を停止させる変位検知手段50とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ等の検査対象管の内周面の探傷のために当該検査対象管内でプローブを管軸方向に駆動する駆動装置、及びこの装置を備えた内挿型探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内挿型の探傷装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この探傷装置は、図6に示されるように、長尺の検査対象管110の内周面112の割れや減肉等の傷を探傷するためのものである。内挿型探傷装置100は、検査対象管110の内周面112の探傷を行い、その結果を探傷信号として出力するプローブ101と、このプローブ101を検査対象管110内の所定位置に移動させるための駆動手段102と、プローブ101からの探傷信号を受信して傷の有無を判断する探傷部103と、を備える。
【0003】
具体的に、プローブ101は、検査対象管110の内周面112に電流を流してこの電流の変化を検出し、その結果を探傷信号として出力するセンサ104と、このセンサ104を内周面112に対向するように保持するホルダ105とを有する。駆動手段102は、プローブ101に動力を伝達するための伝達軸102aとこの伝達軸102aをその中心軸に沿って移動させる駆動部(図示省略)とを有する。この伝達軸102aは、検査対象管110に沿って延び、先端にプローブ101が接続され、基端側に駆動部が接続される。また、伝達軸102aは、検査対象管110の内径よりも小さな外径を有する中空の管状体であり、その内部には、プローブ101のセンサ104と探傷部103とを繋ぐ電線等が配設される。
【0004】
このように構成される探傷装置100では、以下のようにして検査対象管110の内周面112に対する探傷検査が行われる。
【0005】
管をその管軸周りに回転させることができる検査台115に検査対象管110が設置される。この状態でプローブ101が検査対象管110内に挿入され、検査対象管110内の検査位置まで駆動手段102により移動させられる。具体的に、プローブ101の検査対象管110内における管軸方向の移動は、駆動部が伝達軸102aを検査対象管110内に挿入し、又は引き出すことによって行われる。検査対象管110の検査位置までプローブ101が移動すると、センサ104から内周面112に電流が流され、これにより内周面112のセンサ104と対向する部位の探傷が行われる。この状態で検査台115によって検査対象管110がその管軸周りに回転させられると共に、センサ104が管軸方向に移動させられることにより、内周面112の全域に亘って探傷検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−292280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記の探傷装置100では、検査対象面(内周面112)とセンサ104との距離(リフトオフ)が大きいと傷等の検出能力が大きく低下する。そのため、ホルダ105は、センサ104が検査対象管面(内周面112)と近接した状態で検査対象管110内を移動するように構成されている。従って、検査対象管110の内周面112にゴミ等の異物や付着物が有る場合や、検査対象管110において局所的な内径の変化や肉厚の変化等が生じている場合、検査対象管110内を移動しているプローブ101がこれらに引っ掛かり易い。
【0008】
プローブ101が検査対象管110内で引っ掛かったときに、これを検知することなく駆動部が伝達軸102aを検査対象管110内へ挿入し、又は検査対象管110から引き出し続けると、伝達軸102やプローブ101に軸方向の過負荷が加わり、当該伝達軸102の座屈やプローブ101の損傷等が生じる。
【0009】
そこで、検査対象管内でプローブが引っ掛かったときにプローブや伝達軸に過負荷が加わることを防止するプローブ駆動装置、及びこの装置を備えた内挿型探傷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、検査対象管の内周面の探傷のためのプローブを当該検査対象管内で移動させる駆動装置であって、前記検査対象管に挿入して当該検査対象管の内部で前記プローブに動力を伝達可能な伝達軸と、前記検査対象管の外部で前記伝達軸をその中心軸方向に移動するのを許容しながら保持する保持部材と、前記保持部材を前記中心軸方向に駆動する駆動手段と、前記伝達軸が前記保持部材に対して所定の初期位置から前記中心軸方向に相対変位するのに伴い弾発力を生成してこの弾発力によって当該伝達軸を前記初期位置に戻す方向に付勢する付勢手段と、前記伝達軸の前記保持部材に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったことを検知し、その検知時に前記駆動手段による前記保持部材の駆動を停止させる変位検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このプローブ駆動装置によれば、伝達軸にプローブを取り付けてこのプローブを検査対象管内に挿入したときに、駆動手段によって保持部材を駆動することによって伝達軸を介してプローブに動力が伝達され、これによりプローブを検査対象管内において管軸方向に移動させることができる。即ち、伝達軸が保持部材に対して初期位置から相対変位すると付勢手段により伝達軸が初期位置に戻る方向に付勢されるため、駆動手段によって保持部材が駆動されることによって伝達軸が保持部材と共に前記中心軸方向に移動してプローブに動力が伝達される。
【0012】
そして、プローブが検査対象管内で引っ掛かった場合には、これに伴う伝達軸の保持部材に対する相対変位を変位検知手段が検知して駆動手段による保持部材の駆動を停止させることにより、伝達軸やプローブに中心軸方向の過負荷が加わるのを防止することができる。具体的に、プローブが検査対象管内で引っ掛かることにより伝達軸もその中心軸方向の移動が止まるが、この伝達軸を保持する保持部材は駆動手段によって駆動されているため移動を続けようとする。しかし、伝達軸の保持部材に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったときにこれを変位検知手段が検知して駆動手段による保持部材の駆動を停止させることにより、伝達軸やプローブに前記中心軸方向の過負荷が加わるのを防止することができる。
【0013】
さらに、伝達軸と保持部材とが相対変位可能であるため、プローブが検査対象管内で引っ掛かって伝達軸が急に止まることによる衝撃が前記相対変位によって効果的に吸収される。
【0014】
本発明に係るプローブ駆動装置においては、前記保持部材は、前記中心軸を回転中心とする前記伝達軸の回転を規制しつつ当該保持部材に対する前記中心軸方向の相対変位を許容するように前記伝達軸を保持すること、が好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、プローブが引っ掛かったときの衝撃を吸収するための伝達軸と保持部材との相対変位が可能でありながら、検査対象管の管軸周りの回転に伴うプローブの移動が規制されるため、検査対象管を管軸周りに回転させるだけでその内周面の周方向の探傷が可能となる。
【0016】
詳しくは、伝達軸と保持部材との相対変位が可能であるため、プローブが検査対象管内で引っ掛かって伝達軸が急に止まることによる衝撃を効果的に吸収することができる。また、伝達軸のその中心軸周りの回転が規制されることで、検査対象管を管軸周りに回転させたときにこの回転に伴ってプローブが周方向に移動するのが規制されて所定の位置に留まる。そのため、内部に電線等が配線された長尺な伝達軸自体を回転させるための機構や伝達軸に取り付けられたプローブを内周面に沿って周方向に回転させるための機構等を設けなくても、検査対象管を管軸周りに回転させるだけで内周面の周方向の探傷が可能となる。
【0017】
具体的には、例えば、前記伝達軸は、その中心軸方向における所定位置に固定された固定部材を有し、前記保持部材は、前記駆動手段により駆動される保持部材本体と、前記中心軸方向への前記固定部材と前記保持部材本体との相対変位可能に当該固定部材と当該保持部材本体とを連結する連結部と、を有してもよい。
【0018】
このように伝達軸に固定された固定部材が保持部材本体に連結されることにより、伝達軸のその中心軸周りの回転が規制される一方、連結部が相対変位可能に固定部材と保持部材本体とを連結しているため、保持部材本体と伝達軸との相対変位が可能となる。
【0019】
また、前記変位検知手段は、前記中心軸方向について予め定められた許容範囲から固定部材が逸脱したことを検知可能なセンサ手段と、この検知に基づき前記駆動手段を停止させる指示手段と、有し、前記予め定められた許容範囲には、前記伝達軸が初期位置のときの前記固定部材の位置が含まれること、が好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、保持部材本体に対して伝達軸が相対変位したときに、固定部材が前記予め定められた許容範囲から逸脱したことだけを検知するような簡易なセンサによって、プローブや伝達軸に加わる過負荷を防止することができる。即ち、固定部材が前記所定範囲から出たことを検知したときに駆動手段による保持部材の移動を停止させることにより、プローブや伝達軸への過負荷を防止することができる。
【0021】
また、前記保持部材本体には、前記伝達軸が前記中心軸方向に移動するのを許容しながら当該伝達軸を保持する軸受け部が設けられ、前記付勢手段は、前記軸受け部と前記固定部材との間に配置され、前記軸受け部と固定部材との間隔の変化に対応して弾性変形してその弾発力により前記軸受け部と固定部材との間隔が元に戻る方向に前記固定部材を付勢するのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、弾性体のような簡素な構成によって、保持部材本体が駆動手段により駆動されたときの動力を伝達軸に伝えることができ、且つプローブが検査対象管内で引っ掛かったときの衝撃を効果的に吸収することができる。
【0023】
具体的に、軸受け部と固定部材との間隔が狭まり、又は軸受け部と固定部材との間隔が広がったときに、弾性体が弾性変形してその弾発力によりこの軸受け部と固定部材との間隔が元に戻る方向に固定部材が付勢されることにより、保持部材本体に加えられた駆動力が付勢手段を介して伝達軸に伝わる。一方、プローブが検査対象管内で引っ掛かった場合には、段発力に逆らって保持部材本体と伝達軸とが相対移動するため、急激な相対変位が抑制されると共にプローブが引っ掛かったことによる衝撃が好適に吸収される。
【0024】
このように軸受け部と固定部材との間に付勢手段が配置される場合、前記付勢手段は、取り外し可能に前記軸受け部と前記固定部材との間に配置されるのが好ましい。
【0025】
このように取り外し可能に配置されることによって付勢手段の交換が可能となり、弾発力を調整してプローブが引っ掛かったときに駆動手段が停止する負荷の大きさを調整することが可能となる。
【0026】
また、上記課題を解消すべく、本発明に係る内挿型探傷装置は、検査対象管の内周面の探傷検査のために当該検査対象管の内部に挿入可能なプローブと、上記いずれかのプローブ駆動装置と、前記プローブからの出力信号に基づいて前記検査対象管の内周面の傷の検出を行う探傷部と、を備えることを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、プローブを検査対象管内で駆動させているときに引っ掛かった場合には、プローブ駆動装置において変位検知手段が駆動手段による保持部材の駆動を停止させることにより、伝達軸やプローブに中心軸方向の過負荷が加わるのを抑止して、当該内挿型探傷装置の損傷を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上より、本発明によれば、検査対象管内でプローブが引っ掛かったときにプローブや伝達軸に過負荷が加わることを防止するプローブ駆動装置、及びこの装置を備えた内挿型探傷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る内挿型探傷装置の概略構成図である。
【図2】前記内挿型探傷装置の構成ブロック図である。
【図3】前記内挿型探傷装置の一部拡大平面図である。
【図4】前記内挿型探傷装置の一部拡大側面図である。
【図5】前記内挿型探傷装置において(A)は、検査対象管に挿入するときのプローブの引っ掛かりの検知を説明するための図であり、(B)は、検査対象管から引き出すときのプローブの引っ掛かりの検知を説明するための図である。
【図6】従来の内挿型探傷装置の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態に係る内挿型探傷装置は、図1及び図2に示されるように、パイプ等の長尺な検査対象管11の内部にプローブ12を挿入し、このプローブ12を検査対象管11の内部で駆動して内周面11aの全域に亘る探傷を行う。
【0032】
具体的に、内挿型探傷装置10は、プローブ12と、このプローブ12を駆動するためのプローブ駆動装置20と、プローブ12からの出力信号を解析して傷の検出を行う探傷部60と、探傷検査の際に検査対象管11を設置する設置部62とを備える。本実施形態の内挿型探傷装置10は、渦流探傷を行うための装置であるが、これに限定されず、プローブ12を検査対象管11に挿入して内周面11aの探傷を行う内挿型の探傷装置であれば、超音波探傷等の他の探傷方法を行う装置であってもよい。
【0033】
プローブ12は、検査対象管11の内周面11aの探傷検査のために当該検査対象管11の内部に挿入されるものである。本実施形態のプローブ12は、渦流探傷を行うためのプローブである。このプローブ12は、内周面11aに渦電流を発生させ、この発生した渦電流の変化を検出するセンサ部13と、このセンサ部13を保持するためのホルダ部14とを有する。
【0034】
センサ部13は、内周面11aに渦電流を発生させるための励磁コイル(図示省略)と、内周面11aに発生した渦電流の変化を検出するための一対の検出コイル(図示省略)とを備える。センサ部13は、これら一対の検出コイルを含むブリッジ回路により自己比較方式によって内周面11aの傷を検出し、その検出結果を出力信号として出力する。
【0035】
ホルダ部14は、検査対象管11に挿入可能な外形を有し、ホルダ部14が検査対象管11に挿入されたときに、センサ部13のセンサ面13aが内周面11aの検査対象部位に対向するように当該センサ部13を保持する部位である。また、ホルダ部14は、走査時(内周面11aに対してプローブ12が相対変位しているとき)において、センサ面13aと内周面11aとの距離(リフトオフ)が一定となるように構成される。このリフトオフが大きいと傷等の検出能力が大きく低下するため、ホルダ部14は、センサ面13aが内周面11aと近接した状態(本実施形態では、0.3mm程度)で検査対象管11内を移動するように構成されている。
【0036】
プローブ駆動装置20は、伝達軸22と、検査対象管11の外部で伝達軸22をその中心軸方向に移動するのを許容しながら保持する保持部材30と、この保持部材30の移動方向を案内するガイド手段40と、伝達軸22を支持する支持部材24と、保持部材30を伝達軸22の中心軸方向(以下、単に「中心軸方向」とも称する。)に駆動する駆動手段45と、伝達軸22を付勢する付勢手段26と、伝達軸22の保持部材30に対する相対変位を検知し、この検知に基づいて駆動手段45を制御する変位検知手段50と、を備える。
【0037】
伝達軸22は、検査対象管11に挿入して当該検査対象管11の内部でプローブ12に動力を伝達可能な軸である。この伝達軸22は、検査対象管11に沿って延びる軸部22aと、この軸部22aの中心軸方向における所定位置に固定される検出ブロック(固定部材)22bとを有する。
【0038】
軸部22aは、長尺な中空の管状体であり、検査対象管11の内径よりも小さな外径を有する。この軸部22aの先端(図1における左側端部)にはプローブ12が接続され、基部は、保持部材30によって保持されている。そして、軸部22aの内部には、プローブ12(詳しくはセンサ部13)から出力される出力信号を探傷部60に伝えるためにプローブ12と探傷部60とを接続する電線等が配設されている。
【0039】
検出ブロック22bは、金属製のブロックであり、軸部22aの基部(図1における右側端部)、詳しくは、保持部材30の一対の軸受け32,32の中間に位置し、軸部22aがその中心を貫通するように当該軸部22aに固定されている。
【0040】
保持部材30は、中心軸を回転中心とする伝達軸22の回転を規制しつつ当該保持部材30に対する中心軸方向の相対変位を許容するように伝達軸22を保持するものである。本実施形態の保持部材30は、伝達軸22の基部を保持する。具体的に、保持部材30は、図3及び図4にも示されるように、駆動手段45により駆動される駆動ステージ(保持部材本体)31と、駆動ステージ31に設けられる軸受け(軸受け部)32と、駆動ステージ31上で伝達軸22と駆動ステージ31とを連結する連結部34とを備えている。
【0041】
駆動ステージ31は、水平方向に広がる板状の部材であり、その上面31aに軸受け32と連結部34とが設けられ、下面31bにガイド手段40が設けられている。
【0042】
軸受け32は、伝達軸22が中心軸方向に移動するのを許容しながら当該伝達軸22を保持する部材である。本実施形態では、駆動ステージ31の上面31aに一対の軸受け32,32が中心軸方向に互いに間隔をおいて設けられる。これら一対の軸受け32,32は、その中間に検出ブロック22bが位置するように伝達軸22を駆動ステージ31上に保持する。尚、軸受け32は2個(一対)に限定されず、3個以上であってもよい。
【0043】
連結部34は、中心軸方向への検出ブロック22bと駆動ステージ31との相対変位可能に当該検出ブロック22bと当該駆動ステージ31とを連結する手段である。このような連結部34により検出ブロック22bと駆動ステージ31とが連結されることにより、伝達軸22のその中心軸周りの回転が規制される一方、中心軸方向の駆動ステージ31と伝達軸22との相対変位が可能となる。この連結部34は、ガイドレール35とガイドブロック36とを有する。
【0044】
ガイドレール35は、中心軸方向に延び、ガイドブロック36を中心軸方向に案内するための部材である。このガイドレール35は、駆動ステージ31上、詳しくは、駆動ステージ31の上面31aにおける伝達軸22の下側位置に固定されている。ガイドブロック36は、ガイドレール35に沿って(中心軸方向に)移動可能に当該ガイドレール35に取り付けられる部材である。このガイドブロック36の上端には、検出ブロック22bが連結されている。
【0045】
このような連結部34によって軸部22aに固定された検出ブロック22bが駆動ステージ31に連結されることにより、伝達軸22のその中心軸周りの回転が規制される一方、連結部34が中心軸方向の相対変位可能に検出ブロック22bと駆動ステージ31とを連結しているため、駆動ステージ31と伝達軸22との中心軸方向の相対変位が可能となる。尚、本実施形態の連結部34としては、リニアガイドが用いられるが、これに限定されない。
【0046】
ガイド手段40は、保持部材30(詳しくは駆動ステージ31)を中心軸方向に案内する手段であり、中心軸方向に延びるガイドレール41と、このガイドレール41に沿って移動可能に当該ガイドレール41に取り付けられるガイドブロック42とを有する。本実施形態では、ガイド手段として、リニアガイドが用いられる。具体的に、一対のガイドレール41,41が駆動ステージ31の幅(水平で且つ中心軸方向と直交する方向の駆動ステージ31の幅)と対応するような間隔となるよう平行に床等に配置される(図3参照)。駆動ステージ31の下面31bにおけるガイドレール41と対応する部位にガイドブロック42がそれぞれ取り付けられる。具体的には、駆動ステージ31の下面31bの四隅にガイドブロック42がそれぞれ取り付けられる。
【0047】
支持部材24は、保持部材30よりも設置部62側に設けられ、伝達軸22が中心軸方向に移動するのを許容しながら当該伝達軸22を支持する。この支持部材24が長尺な伝達軸22の先端側を支持することによって、駆動ステージ31がガイドレール41に沿って移動したときに、伝達軸22が撓ることなく中心軸方向に真っ直ぐ移動することができる。支持部材24は、伝達軸22の長さやその移動距離等に応じて1個又は複数個設けられる。
【0048】
駆動手段45は、駆動ステージ31がガイドレール41上を移動するために当該駆動ステージ31を駆動する手段である。本実施形態の駆動手段45は、モータ46と、このモータ46による回転駆動力を駆動ステージの移動方向である中心軸方向への駆動力に変換するためのギアとを有する。具体的に、駆動手段45は、回転駆動軸46aにピニオンギア46bが取り付けられたモータ46と、前記のピニオンギア46bに対応するラックギア47と、を有する。このラックギア47は、ガイド手段40のガイドレール41と平行に配置され、モータ46は、ピニオンギア46bがラックギア47と噛み合うように駆動ステージ31に配置される。
【0049】
尚、本実施形態の駆動手段45では、モータ46による回転駆動力を駆動ステージの移動方向である中心軸方向への駆動力に変換する機構としてラック&ピニオン機構が用いられるが、これに限定されず、例えば、ボールねじを用いた機構等であってもよい。
【0050】
付勢手段26は、伝達軸22と保持部材30(詳しくは、駆動ステージ31)とが中心軸方向に相対変位したときに伝達軸22を付勢する手段である。具体的に、付勢手段26は、伝達軸22が駆動ステージ31に対して所定の初期位置(図3の状態)から中心軸方向に相対変位することにより、この相対変位に伴って弾発力を生成する。そして、付勢手段26は、この相対変位に伴う弾発力によって伝達軸22を初期位置に戻す方向に付勢する。詳しくは、付勢手段26は、弾性体で構成される。そして、付勢手段26は、軸受け32と検出ブロック22bとの間に配置され、軸受け32と検出ブロック22bとの間隔の変化に対応して弾性変形し、その弾発力により軸受け32と検出ブロック22bとの間隔が元に戻る方向に検出ブロック22bを付勢する(図5(A)及び図5(B)参照)。また、付勢手段26は、取り外し可能に軸受け22と検出ブロック22bとの間に配置される。本実施形態では、一対の軸受け32,32の中間に検出ブロック22bが位置するように伝達軸22が軸受け32に保持されている。具体的には、付勢手段26は、検出ブロック22bを挟んで前側(図3及び図4において左側)と後側(図3及び図4において右側)とにそれぞれ配置される。ここで、初期位置とは、前側の軸受け32とその反対の側(後側)の軸受け32との中央に検出ブロック22bが位置するような伝達軸22と駆動ステージ31との相対位置のことをいう。
【0051】
本実施形態の付勢手段26としては、コイルバネが用いられている。各コイルバネ26は、その中心に伝達軸22の軸部22aが挿通された状態で配置される。本実施形態では、各コイルバネ26は、所定の長さ分だけ縮めた状態で検出ブロック22bと軸受け32との間に配置されている。尚、コイルバネ26は、縮めた状態で配置される必要はなく、本実施形態のように検出ブロック22bを挟んで前後に配置する場合には、自然状態で配置されてもよく、所定の長さ分だけ伸ばした状態で配置されてもよい。また、検出ブロック22bの一方側だけにコイルバネ26を配置するようにしてもよい。このように配置しても、検出ブロックが前後に移動することにより、コイルバネ26が伸ばされ若しくは縮められるため、コイルバネ26は、検出ブロック22bを元の位置に戻す方向に付勢する。
【0052】
ここで、付勢手段26としてのコイルバネの選定方法の一例について説明する。このコイルバネ26のバネ定数やバネの長さによって、当該内挿型探傷装置10における探傷検査の際に、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かったときの伝達軸22やプローブ12に加わる負荷の値が決まる。
【0053】
プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かった場合、伝達軸22は両端固定端の単純梁と考えることができる。一般に両端固定端の単純支持梁の座屈加重Pcrは、
【数1】

で表される。
【0054】
一方、検出ブロック22bの幅をWmetal、センサ51の検出幅(許容範囲(図3参照))をWsensorとすると、許容範囲から検出ブロック22bが逸脱するまでの距離Lは、
【数2】

と表される。長さLだけ圧縮されたコイルバネ26の弾性力Fは、
【数3】

と表される。仮に安全率を3とする場合には、
cr > 3F
を満たせば必要十分であり、
【数4】

を満たすようなバネ定数、バネ長さを持つコイルバネ26が選択される。尚、安全率とは極限応力と許容応力との比のことをいう。
【0055】
変位検知手段50は、伝達軸22の保持部材30に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったことを検知し、その検知時に駆動手段45による保持部材30の駆動を停止させる手段である。具体的に、変位検知手段50は、センサ(センサ手段)51と、このセンサ51から検知信号に基づき駆動手段45(詳しくは、モータ46)の駆動を停止させる制御部(指示手段)52とを有する。
【0056】
センサ51は、中心軸方向について予め定められた許容範囲(図3、図5(A)及び図5(B)参照)から検出ブロック22bが逸脱したことを検知可能なものである。この許容範囲は、伝達軸22が初期位置のときの検出ブロック22bの位置が含まれ、付勢手段26の弾発力や伝達軸22の強度等に基づいて設定される。
【0057】
具体的に、センサ51は、初期位置の検出ブロック22bと近接するように駆動ステージ31上に配置され、駆動ステージ31と伝達軸22との中心軸方向の相対変位によって検出ブロック22bが許容範囲から逸脱したときにこれを検知して検知信号を出力する。本実施形態のセンサ51は、非接触で検出ブロック22bが許容範囲から逸脱したことを検知する。具体手には、センサ51としては、近接センサが用いられる。このセンサ51は、検出ブロック22b側の端部において形成する高周波磁場を利用して、金属製の検出ブロック22bが許容範囲から逸脱したことを検知する。尚、センサ51は、非接触式に限定されず、接触式であってもよい。
【0058】
制御部52は、センサ51とモータ46(駆動手段45)とに接続され、モータ46の制御を行う。本実施形態では、制御部52としてパソコンが用いられる。具体的に、制御部52は、モータ46を制御することにより、検査対象管11に伝達軸22を挿入し、又は検査対象管11から伝達軸22を引き抜く。これにより、プローブ12の検査対象管11への出し入れや、検査対象管11の内周面11aの中心軸方向の走査が行われる。また、制御部52は、センサ51から出力された検知信号に基づきモータ46の駆動を停止させる。即ち、制御部52は、モータ46を駆動させて検査対象管11内でプローブ12を移動させているときに、センサ51からの検知信号を受信すると、モータ46を停止させる。
【0059】
本実施形態の制御部52は、設置部62の回転駆動部64にも接続され、検査台63に設置された検査対象管11をその管軸周りに回転させるためにこの回転駆動部64の制御も行う。これにより、検査対象管11の内周面の周方向の走査が可能となる。即ち、上記のように連結部34によって検査対象管11の管軸周りの回転に伴うプローブ12の移動が規制されるため、検査対象管11を管軸周りに回転させることによりその内周面11aの周方向の走査(探傷)が可能となる。具体的に、伝達軸22のその中心軸周りの回転が連結部34により規制されているため、検査対象管11を管軸周りに回転させたときにこの回転に伴ってプローブ12が周方向に移動するのが規制されて所定の位置に留まる。そのため、検査対象管11を管軸周りに回転させるだけで内周面11aの周方向の走査(探傷)が可能となる。
【0060】
探傷部60は、プローブ12(センサ部13)からの出力信号を解析することにより、検査対象管11の内周面11aの傷を検出し、これを出力する手段である。この探傷部60は、発振器、渦流探傷を行うためのブリッジ回路(センサ部13に配置される一対の検出コイルを除く)、各種信号を処理するCPU、解析結果を表示する表示手段、センサ部13の励磁コイルに交流電流を供給するための電源等を備える。
【0061】
設置部62は、伝達軸22がその中心軸に沿って前方に移動することにより検査対象管11に伝達軸22がその先端側から挿入される一方、この伝達軸22が後方に移動することにより検査対象管11から当該伝達軸22が引抜かれるように、検査対象管11を支持するものである。また、この設置部62は、設置された検査対象管11をその管軸を回転中心にして回転させることができる。具体的に、設置部62は、検査対象管11を支持する検査台63と、支持した検査対象管11をその管軸周りに回転させるために検査台63を駆動する回転駆動部64とを備える。
【0062】
検査台63は、回転ローラ65が取り付けられた複数本の回転ローラ軸66と、各回転ローラ軸66が軸芯回りに回転可能に当該回転ローラ軸66を保持する保持部材67とを有する。各回転ローラ軸66には、複数の回転ローラ65が間隔をおいて並ぶように取り付けられている。これら複数本の回転ローラ軸66は、検査対象管11の外周面に各回転ローラ65の回転面が当接するように、水平で且つ互いに平行となるように保持部材67に保持される。
【0063】
回転駆動部64は、検査台63の各回転ローラ軸66を回転駆動する部位である。具体的に、回転駆動部64は、制御部52からの指示信号に基づき、各回転ローラ65が同期して回転するように各回転ローラ軸66を駆動する。この回転駆動により、検査台63に設置された検査対象管11がその管軸周りに回転する。
【0064】
以上のような内挿型探傷装置10によれば、以下のようにして検査対象管11の内周面11aの探傷検査が行われる。
【0065】
検査台63に検査対象管11が設置される。そして、制御部52によりモータ46が駆動され、駆動ステージ31が前方に移動する。この駆動ステージ31の移動により、検出ブロック22bの前側のコイルバネ26が伸びると共に後側のコイルバネ26が縮み、これら各コイルバネ26の弾発力により元の位置に戻る方向に検出ブロック22bが付勢される。このとき、検出ブロック22bが許容範囲から逸脱しないようなコイルバネ26が選定されているため、駆動ステージ31は移動し続ける。これにより、駆動ステージ31と共に伝達軸22が前方に移動し、プローブ12が検査対象管11に挿入される。
【0066】
プローブ12が内周面11aの検査対象位置まで移動すると、プローブ12のセンサ部13が内周面11aに渦電流を生じさせ、この渦電流に基づいて内周面11aの探傷が行われる。このとき、制御部52によって回転駆動部64が制御され、検査台63の回転ローラ軸66を回転させることによって検査対象管11を回転させ、これにより内周面11aの周方向の走査が行われる。即ち、伝達軸22がその中心軸周りの回転を規制された状態で保持部材30に保持されているため、検査対象管11が回転してもプローブ12の位置が変わらず内周面11aだけが周方向に動き、これにより内周面11aの周方向の走査が行われる。また、制御部52によってモータ46が制御され、駆動ステージ31が前後させられてプローブ12が検査対象管内を中心軸方向に移動し、内周面11aの中心軸方向の走査が行われる。これら、制御部52によるモータ46と回転駆動部64との制御の組み合わせにより、検査対象管11の内周面11aの全域に亘る探傷が可能となる。
【0067】
プローブ12(センサ部13)による検査対象管11の内周面11aの走査が行われると、探傷部60は、センサ部13からの出力信号を受信してこれを解析する。そして、探傷部60は、内周面11aの傷の検出を行い、その結果を表示手段により表示する。
【0068】
このようにして内周面11aの検査対象となる領域全体の探傷が終わると、制御部52は、モータ46を制御して駆動ステージ31を後方に移動させる。このとき、駆動ステージ31の移動により、検出ブロック22bの前側のコイルバネ26が縮むと共に後側のコイルバネ26が伸び、これら各コイルバネ26の弾発力により元の位置に戻る方向に検出ブロック22bが付勢される。これにより、駆動ステージ31と共に伝達軸22が後方に移動し、プローブ12が検査対象管11から引き出される。プローブ12が引き出されると、検査台63から検査対象管11が降ろされ、検査対象管11の探傷検査が終了する。
【0069】
このような探傷検査において、検査対象管11にプローブ12を挿入するときやプローブ12を引き出すとき、又は内周面11aの走査を行うために検査対象管11内でプローブ12を中心軸方向に移動させているときに、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かる場合がある。これは、センサ部13のセンサ面13aと内周面11aとが近接した状態でプローブ12が検査対象管11内を移動するためである。このような場合、動き続けようとする駆動ステージ31とプローブ12の引っ掛かりによって動きが止まった伝達軸22との相対変位が所定の大きさとなったときに、センサ51がこれを検知し、検知時に検出信号を制御部52に向けて出力する。制御部52は、センサ51からの検知信号をトリガー信号としてモータ46の駆動を停止する。これにより駆動ステージ31が停止し、伝達軸22やプローブ12に加わる中心軸方向の負荷が抑えられ、伝達軸22の座屈やプローブ12の損傷等が防止される。
【0070】
具体的に、例えば、プローブ12を前方に移動させているときに、このプローブ12が検査対象管11内で引っ掛かった場合、伝達軸22の動きが止まってもモータ46の駆動により駆動ステージ31が動き続けようとするため、図5(A)に示されるように、コイルバネ26の弾発力に逆らって検出ブロック22bが駆動ステージ31の後方側に移動する。このとき、駆動ステージ31と伝達軸22とが相対変位可能であるため、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かって伝達軸22が急に止まることによる衝撃が効果的に吸収される。
【0071】
検出ブロック22bが予め定められた許容範囲を逸脱して駆動ステージ31の後方側に移動すると、この逸脱をセンサ51が検知し、この検知時に検知信号を制御部52に出力する。制御部52は、これをトリガー信号としてモータ46の駆動を停止させる。これにより、駆動ステージ31も停止し、プローブ12や伝達軸22に過負荷が加わるのが抑制される。
【0072】
一方、プローブ12を後方に移動させているときに、このプローブ12が検査対象管11内で引っかかった場合には、図5(B)に示されるように、コイルバネ26の弾発力に逆らって検出ブロック22bが駆動ステージ31の前方側に移動する。そして、検出ブロック22bが予め定められた許容範囲を逸脱して駆動ステージ31の前方側に移動すると、この逸脱をセンサ51が検知し、この検知時に検知信号を制御部52に出力する。制御部52は、これをトリガー信号としてモータ46の駆動を停止させる。これにより、駆動ステージ31も停止し、プローブ12や伝達軸22に過負荷が加わるのが抑制される。
【0073】
以上のような内挿型探傷装置10によれば、プローブ12を検査対象管11に挿入したときに、モータ46によって駆動ステージ31を駆動することによって伝達軸22を介してプローブ12に動力が伝達され、これによりプローブ12を検査対象管11内において管軸方向に移動させることができる。即ち、伝達軸22が駆動ステージ31に対して初期位置から相対変位するとコイルバネ26により伝達軸22が初期位置に戻る方向に付勢されるため、モータ46によって駆動ステージ31が駆動されることによって伝達軸22が駆動ステージ31と共に中心軸方向に移動してプローブ12に動力が伝達される。そして、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かった場合には、これに伴う伝達軸22の駆動ステージ31に対する相対変位をセンサ51が検知して制御部52がモータ46による駆動ステージ31の駆動を停止させる。これにより、伝達軸22やプローブ12に中心軸方向の過負荷が加わるのを防止することができる。さらに、伝達軸22と駆動ステージ31とが相対変位可能であるため、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かって伝達軸22が急に止まることによる衝撃が前記の相対変位によって効果的に吸収される。
【0074】
また、内挿型探傷装置10において駆動ステージ31上に軸受け32と連結部34とにより伝達軸22が保持されることにより、プローブ12が引っ掛かったときの衝撃を吸収するための伝達軸22と駆動ステージ31との相対変位が可能でありながら、検査対象管11の管軸周りの回転に伴うプローブ12の周方向の移動が規制されるため、検査対象管11を管軸周りに回転させるだけでその内周面の周方向の探傷を行うことができる。詳しくは、伝達軸22と駆動ステージ31との相対変位が可能であるため、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かって伝達軸22が急に止まることによる衝撃を効果的に吸収することができる。また、軸部22aに固定された検出ブロック22bが駆動ステージ31に連結部34によって連結されることにより、伝達軸22のその中心軸周りの回転が規制される。そのため、検査対象管11を管軸周りに回転させたときにこの回転に伴ってプローブ12が周方向に移動するのが規制されて所定の位置に留まる。従って、内部に電線等が配線された長尺な伝達軸22自体を回転させるための機構や伝達軸22に取り付けられたプローブ12を内周面11aに沿って周方向に回転させるための機構等を設けなくても、検査対象管11を管軸周りに回転させるだけで内周面11aの周方向の走査(探傷)が可能である。
【0075】
また、コイルバネ(弾性体)26のような簡素な構成によって、駆動ステージ31がモータ46により駆動されたときの動力を伝達軸22に伝えることができ、且つプローブ12が検査対象管11内で引っ掛かったときの衝撃を効果的に吸収することができる。具体的に、軸受け32と検出ブロック22bとの間隔が狭まり、又は軸受け32と検出ブロック22bとの間隔が広がったときに、コイルバネ26が弾性変形してその弾発力によりこの軸受け32と検出ブロック22bとの間隔が元に戻る方向に検出ブロック22bが付勢されることにより、駆動ステージ31に加えられた駆動力がコイルバネ26を介して伝達軸22に伝わる。一方、プローブ12が検査対象管11内で引っ掛かった場合には、段発力に逆らって駆動ステージ31と伝達軸22とが相対移動するため、急激な相対変位が抑制されると共にプローブ12が引っ掛かったことによる衝撃が好適に吸収される。
【0076】
尚、本発明のプローブ駆動装置、及びこの装置を備えた内挿型探傷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
上記実施形態では、軸受け32と連結部34とにより駆動ステージ31上に伝達軸22が保持されているが、これに限定されない。例えば、軸受け32が伝達軸22のその中心軸周りの回転を規制しつつ駆動ステージ31と伝達軸22との中心軸方向の相対変位を許容するように当該伝達軸22を保持できれば、連結部34がなくてもよい。また、連結部34が、軸受け32がなくても伝達軸22を駆動ステージ31上に保持できれば、軸受け32がなくてもよい。
【0078】
付勢手段26の具体的構成は限定されない。本実施形態では、コイルバネが用いられているが、他の弾性体であってもよい。
【0079】
センサ51の具体的な設置位置は限定されない。本実施形態では、一対の軸受け32,32の間に位置する検出ブロック22bの近傍に配置されているが、例えば、伝達軸22の保持部材30に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったことを検知可能であれば伝達軸22から離れた位置に設置されてもよい。
【0080】
また、探傷は、プローブ12の検査対象管11内への挿入方向の移動時のみに行われることに限定されず、プローブ12の検査対象管11内からの引抜き方向の移動時に行われてもよい。前記挿入方向と引抜き方向との両方向への移動時にそれぞれ探傷が行われることにより、探傷結果の再現性を確認することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
10 内挿型探傷装置
11 検査対象管
11a 内周面
12 プローブ
20 プローブ駆動装置
22 伝達軸
26 コイルバネ(付勢手段)
30 保持部材
34 連結部
45 駆動手段
50 変位検知手段
60 探傷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象管の内周面の探傷のためのプローブを当該検査対象管内で移動させる駆動装置であって、
前記検査対象管に挿入して当該検査対象管の内部で前記プローブに動力を伝達可能な伝達軸と、
前記検査対象管の外部で前記伝達軸をその中心軸方向に移動するのを許容しながら保持する保持部材と、
前記保持部材を前記中心軸方向に駆動する駆動手段と、
前記伝達軸が前記保持部材に対して所定の初期位置から前記中心軸方向に相対変位するのに伴い弾発力を生成してこの弾発力によって当該伝達軸を前記初期位置に戻す方向に付勢する付勢手段と、
前記伝達軸の前記保持部材に対する初期位置からの相対変位が所定の大きさになったことを検知し、その検知時に前記駆動手段による前記保持部材の駆動を停止させる変位検知手段と、を備えることを特徴とすることを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブ駆動装置において、
前記保持部材は、前記中心軸を回転中心とする前記伝達軸の回転を規制しつつ当該保持部材に対する前記中心軸方向の相対変位を許容するように前記伝達軸を保持することを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブ駆動装置において、
前記伝達軸は、その中心軸方向における所定位置に固定された固定部材を有し、
前記保持部材は、前記駆動手段により駆動される保持部材本体と、前記中心軸方向への前記固定部材と前記保持部材本体との相対変位可能に当該固定部材と当該保持部材本体とを連結する連結部と、を有することを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のプローブ駆動装置において、
前記変位検知手段は、前記中心軸方向について予め定められた許容範囲から固定部材が逸脱したことを検知可能なセンサ手段と、この検知に基づき前記駆動手段を停止させる指示手段と、有し、
前記予め定められた許容範囲には、前記伝達軸が初期位置のときの前記固定部材の位置が含まれることを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のプローブ駆動装置において、
前記保持部材本体には、前記伝達軸が前記中心軸方向に移動するのを許容しながら当該伝達軸を保持する軸受け部が設けられ、
前記付勢手段は、前記軸受け部と前記固定部材との間に配置され、前記軸受け部と固定部材との間隔の変化に対応して弾性変形してその弾発力により前記軸受け部と固定部材との間隔が元に戻る方向に前記固定部材を付勢することを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプローブ駆動装置において、
前記付勢手段は、取り外し可能に前記軸受け部と前記固定部材との間に配置されることを特徴とするプローブ駆動装置。
【請求項7】
検査対象管の内周面の探傷検査のために当該検査対象管の内部に挿入可能なプローブと、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプローブ駆動装置と、
前記プローブからの出力信号に基づいて前記検査対象管の内周面の傷の検出を行う探傷部と、を備えることを特徴とする内挿型探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−232187(P2011−232187A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103043(P2010−103043)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】