説明

ヘッドモーショントラッカ装置

【課題】 パイロット等の観察者があらゆる方向に向いても、観察者の頭部の動きを測定することができるヘッドモーショントラッカ装置を提供する。
【解決手段】 顔前部部材11と、頭部装着体12と、光学マーカー7、15とを有する頭部装着装置10と、少なくとも3個の光学マーカー7、15から出射された光線を立体視で検出するカメラ装置2と、カメラ装置2に対する光学マーカー7、15のそれぞれの現在位置であるマーカー位置情報を算出するマーカー位置情報算出部24と、カメラ装置2に対する頭部装着装置10の現在位置及び現在角度を含む相対情報を算出する相対情報算出部22とを備えるヘッドモーショントラッカ装置1であって、複数の光学マーカー7、15は、顔前部部材11に位置決めされて配置されている複数の顔前部部材発光部7と、頭部装着体12に位置決めされて配置されている複数の頭部装着体発光部15とからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学方式のヘッドモーショントラッカ装置(以下、HMT装置ともいう)に関し、例えば、ゲーム機や乗物等で用いられる頭部装着型表示装置付ヘルメットの現在位置及び現在角度(すなわち、現在の頭部位置及び頭部角度)を測定するHMT装置等に利用される。
【背景技術】
【0002】
時々刻々と変動する物体の現在位置や現在角度を正確に測定する技術は、様々な分野で利用されている。例えば、ゲーム機では、バーチャルリアリティ(VR)を実現するために、頭部装着型表示装置付ヘルメットを用いることにより、映像を表示することがなされている。このとき、頭部装着型表示装置付ヘルメットの現在位置や現在角度に合わせて、映像を変化させる必要がある。よって、頭部装着型表示装置付ヘルメットの現在位置や現在角度を測定するために、HMT装置が利用されている。
【0003】
また、航空機において、発見した目標を見失うことがないようにするため、頭部装着型表示装置付ヘルメットのバイザーに表示される照準と、バイザーを通して視認される目標とが対応した時にロックすることにより、ロックされた目標の位置を演算することが行われている。このとき、その目標の位置を演算するために、飛行体(航空機)の緯度、経度、高度、姿勢に加えて、飛行体に設定された相対座標系に対するパイロットの頭部位置及び頭部角度を測定している。このときに、HMT装置が利用されている。
【0004】
このような頭部装着型表示装置付ヘルメットに利用されるHMT装置としては、光学的に頭部装着型表示装置付ヘルメットの現在位置や現在角度を測定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。図6は、従来の頭部装着型表示装置付ヘルメットの側面図である。頭部装着型表示装置付ヘルメット50は、表示器(図示せず)と、表示器から出射される画像表示光を反射することにより、パイロット3の目に導くバイザー(顔前部部材)11と、ヘルメット(頭部装着体)12と、頭部装着体発光部(光学マーカー)15a〜15fとを有する。このような頭部装着型表示装置付ヘルメット50のヘルメット12の外周面上に、頭部装着体発光部15a〜15fを互いに離隔するようにして複数箇所に取り付け、これらの頭部装着体発光部15a〜15fの頭部装着型表示装置付ヘルメット50上における相対的な位置関係をHMT装置に予め記憶させておく。そして、これらの頭部装着体発光部15a〜15fを、設置場所が固定された2台のカメラで同時に撮影することで、所謂、三角測量の原理により、現在の少なくとも3個の頭部装着体発光部の相対的な位置関係を測定している。これにより、頭部装着型表示装置付ヘルメット50上に固定された3点の位置(3個の頭部装着体発光部の位置)を特定することで、頭部装着型表示装置付ヘルメット50の現在位置や現在角度を算出している。
【特許文献1】特表平9−506194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、設置場所が固定されたカメラ装置により、ヘルメット12に取り付けられた複数個の頭部装着体発光部15a〜15fを検出するときに、ヘルメット12の外周面全面に頭部装着体発光部15a〜15fを取り付けても、カメラ装置で頭部装着体発光部15a〜15fのうち3個未満の頭部装着体発光部しか検出することができないことがあった。例えば、図7に示すように、飛行体30に固定されたカメラ装置2では、頭部装着型表示装置付ヘルメット50を装着したパイロット3が天井を見たときに、3個未満の頭部装着体発光部しか検出することができなかった。つまり、頭部装着型表示装置付ヘルメット50の現在位置や現在角度を算出することができなくなることがあった。
そこで、本発明は、パイロット等の観察者があらゆる方向に向いても、観察者の頭部の動きを測定することができるヘッドモーショントラッカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明のヘッドモーショントラッカ装置は、観察者の顔面を覆うように配置される透明な顔前部部材と、当該顔前部部材を保持するとともに、前記観察者の頭部に装着される頭部装着体と、光線を出射する複数の光学マーカーとを有する頭部装着装置と、少なくとも3個の光学マーカーから出射された光線を立体視で検出するカメラ装置と、前記カメラ装置で検出された光線に基づいて、前記カメラ装置に対する光学マーカーのそれぞれの現在位置であるマーカー位置情報を算出するマーカー位置情報算出部と、前記マーカー位置情報に基づいて、前記カメラ装置に対する頭部装着装置の現在位置及び現在角度を含む相対情報を算出する相対情報算出部とを備えるヘッドモーショントラッカ装置であって、前記複数の光学マーカーは、前記顔前部部材に位置決めされて配置されている複数の顔前部部材発光部と、前記頭部装着体に位置決めされて配置されている複数の頭部装着体発光部とからなるようにしている。
【0007】
ここで、「頭部装着体」としては、例えば、ヘルメット、ヘッドセット、ベルト等が挙げられる。
また、「顔前部部材」としては、顔正面を覆うように配置されるものが挙げられ、例えば、バイザー、コンバイナー、メガネ等が挙げられる。
さらに、「光学マーカー」としては、自発光するマーカーであればよく、お互いに異なる波長の赤外光を発光するLED(発光ダイオード)を有するものでもよく、互いに同じ波長の赤外光を発光するLEDを有するものでもよい。
【0008】
本発明のモーショントラッカ装置によれば、頭部装着装置の顔前部部材に、顔前部部材発光部を互いに離隔するようにして複数箇所に取り付けるとともに、頭部装着装置の頭部装着体の外周面上に、頭部装着体発光部を互いに離隔するようにして複数箇所に取り付ける。さらに、これらの発光部の頭部装着装置上における相対的な位置関係を予め記憶させておく。そして、これらの複数の発光部の内の少なくとも3個の発光部をカメラ装置で撮影することで、所謂、三角測量の原理により、現在の発光部の相対的な位置関係を測定する。例えば、飛行体に設置されたカメラ装置で、頭部装着装置を装着した観察者が正面を見ているときには、頭部装着体発光部を検出し、一方、頭部装着装置を装着した観察者が天井を見ているときには、顔前部部材発光部を検出する。これにより、頭部装着装置上に固定された少なくとも3点の位置(3個の発光部の位置)を特定することで、頭部装着装置の現在位置や現在角度を算出する。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明のモーショントラッカ装置によれば、観察者があらゆる方向に向いても、観察者の頭部の現在位置や現在角度を算出することができる。
【0010】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、上記の発明において、前記顔前部部材発光部は、前記光線を発光する表示素子を有するようにしてもよい。
【0011】
また、上記の発明において、前記顔前部部材発光部は、さらに光を透過しない遮光部材を有するようにしてもよい。
本発明によれば、遠方の目標を視認する場合に、その光が表示素子を透過することを防止し、視認性が低下せずに視認できる。
また、上記の発明において、前記顔前部部材発光部は、前記表示素子に電気を供給する透明電極を備え、前記透明電極は、電磁結合による非接触給電方式で電気が供給されるものであるようにしてもよい。
本発明によれば、観察者は重量による大きな負荷を受けることをより防止することができる。
また、上記の発明において、 前記表示素子は、赤外光を発光する発光ダイオードであるようにしてもよい。
【0012】
そして、上記の発明において、さらに、前記光学マーカーを点灯する点灯制御信号を出力するマーカー制御部を備え、前記マーカー制御部は、前記光学マーカーに点灯制御信号を無線方式で送信するようにしてもよい。
さらに、上記の発明において、前記頭部装着体は、前記観察者の頭部に装着されるヘルメットであり、かつ、前記顔前部部材は、前記観察者の顔面を覆うように配置されるバイザーであるようにしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態であるHMT装置の概略構成を示す図であり、図2は、図1に示す頭部装着型表示装置付ヘルメットの側面図であり、図3は、図2に示すAを拡大した断面図であり、図4は、図3に示すB−B線の断面図である。本実施形態は、搭乗体30でパイロット3が着用する頭部装着型表示装置付ヘルメット10の現在位置及び現在角度を算出するものである。つまり、搭乗体30に設定された相対座標系(XYZ座標系)に対する、パイロット3が着用する頭部装着型表示装置付ヘルメット10に設定されたヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)の位置(Xh、Yh、Zh)及び角度(RLh、ELh、AZh)を算出する。なお、相対座標系(XYZ座標系)は、後述するカメラ装置2を基準として設定されたものであり、メモリ41の相対座標系記憶部43に記憶され、一方、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)は、後述する顔前部部材発光部群7及び頭部装着体発光部群15を基準として設定されたものであり、メモリ41のヘルメット座標系記憶部44に記憶されている。また、角度(RL)は、ロール方向(X軸に対する回転)の角度であり、角度(EL)は、エレベーション方向(Y軸に対する回転)の角度であり、角度(AZ)は、アジマス方向(Z軸に対する回転)の角度である。
【0015】
HMT装置1は、パイロット3の頭部に装着される頭部装着型表示装置付ヘルメット(頭部装着装置)10と、搭乗体30に取り付けられたカメラ装置2と、コンピュータにより構成される制御部20とから構成される。
搭乗体30は、パイロット3が搭乗する飛行体のコックピットであり、パイロット3が着席する座席30aを備える。
【0016】
頭部装着型表示装置付ヘルメット10は、表示器(図示せず)と、表示器から出射される画像表示光を反射することにより、パイロット3の目に導くバイザー(顔前部部材)11と、ヘルメット(頭部装着体)12と、顔前部部材発光部群7(7a〜7f)と、頭部装着体発光部群15(15a〜15h)と、送受信部16と、ヘルメット制御部17とを有する。なお、頭部装着型表示装置付ヘルメット10を装着したパイロット3は、表示器による表示映像とバイザー11の前方実在物とを視認することが可能となっている。
【0017】
ヘルメット制御部17は、後述する点灯制御信号に基づいて、顔前部部材発光部群7と頭部装着体発光部群15とを点灯させるものである。
送受信部16は、ヘルメット12の左部に取り付けられており、後述するマーカー制御部28から点灯制御信号を無線方式で受信するものである。また、送受信部16には、電磁結合による非接触給電方式(図示せず)で電気が供給される。
【0018】
頭部装着体発光部群15は、図2に示すように、互いに異なる波長の赤外光を発光する複数個の頭部装着体発光部15a〜15hが一定の距離を隔てるようにしてヘルメット12に取り付けられたものである。
1個の頭部装着体発光部15a〜15hは、赤外光を広げるように出射するマイクロレンズ(図示せず)と、赤外光を発光するLED(図示せず)と、LEDに電気を供給する電極(図示せず)とを、この順にパイロット3と反対側から有するように構成される。
【0019】
顔前部部材発光部群7は、図2〜図4に示すように、パイロット3の顔面の全面を覆うバイザー11内に、互いに異なる波長の赤外光を発光する複数個の顔前部部材発光部7a〜7fが一定の距離を隔てるようにして埋め込まれている。
1個の顔前部部材発光部7a〜7fは、赤外光を広げるように出射するマイクロレンズ13dと、赤外光を発光するLED(表示素子)13cと、LED13cに電気を供給する透明電極13bと、光を透過しない遮光部材13aとを、この順にパイロット3と反対側から有するように構成される。
遮光部材13aは、例えば、数十μm程度のマイクロレンズ部分の領域を覆う円板形状をしている。
透明電極13bは、LED13cに電気を供給するものである。
【0020】
マイクロレンズ13dは、曲面形状と平面形状とを有するものであり、曲面形状をパイロット3と反対側に、平面形状をパイロット3側にして配置されている。これにより、マイクロレンズ13dは、各LEDから発光されたそれぞれの赤外光をパイロット3と反対側に広げるように、出射させる。
また、マイクロレンズ13dは、パイロット3側から見ると、例えば、直径数十μmの円形状をしている。そして、マイクロレンズ13dは、遮光部材13aと位置合わせされて配置されている。これにより、バイザー11の前方からの光がマイクロレンズ13dを透過し、視認性が低下することを防止する。
【0021】
ここで、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)は、原点及び各座標軸の方向を任意に定めることができるが、本実施形態では図2に示すように、原点を頭部装着体発光部15aの位置とし、前方方向をX’軸方向とし、前方方向に垂直方向をY’軸方向とし、X’軸方向及びY’軸方向に垂直方向をZ’軸方向とするように定義するように、後述するヘルメット座標系記憶部44に設定されている。また、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)上での複数個の頭部装着体発光部15a〜15hと複数個の顔前部部材発光部7a〜7fとの位置関係(初期データ)も、ヘルメット座標系記憶部44に記憶されている。これにより、後述する三角測量の手法で、現時点における少なくとも3個の発光部の位置を算出し、初期データを参照することで、頭部装着型表示装置ヘルメット10の現在位置及び現在角度が、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)を用いて表現されるようになっている。
【0022】
カメラ装置2は、第一カメラ2aと第二カメラ2bとからなり、頭部装着型表示装置付ヘルメット10の立体視が可能な一定の距離(d)を隔てるとともに、第一カメラ2aと第二カメラ2bと結ぶ軸が床面と平行となるように、搭乗体30に設置されている。これにより、第一カメラ2aで撮影された第一画像が作成されるとともに、第二カメラ2bで撮影された第二画像が作成されることになる。
これにより、第一画像及び第二画像中に映し出されている頭部装着体発光部15a〜15h及び/又は顔前部部材発光部7a〜7fの位置により、第一カメラ2aからの方向角度(α)と第二カメラ2bからの方向角度(β)とを算出し、第一カメラ2aと第二カメラ2bとの間の距離(d)を用いることにより、所謂、三角測量の手法で、第一画像及び第二画像中に映し出されている頭部装着体発光部15a〜15h及び/又は顔前部部材発光部7a〜7fのカメラ装置2(2a、2b)に対する位置を算出できるようにしてある(図5参照)。
このとき、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fの位置を、空間座標で表現することができるようにするために、カメラ装置2に固定され、カメラ装置2とともに移動する座標系である相対座標系(XYZ座標系)を用いる。なお、相対座標系(XYZ座標系)の具体的な原点位置やXYZ軸方向の説明については後述する。
これにより、相対座標系(XYZ座標系)において、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fの内の少なくとも3個の発光部の位置座標が表現できれば、カメラ装置2に対する3個の発光部の位置座標が特定されるので、3個の発光部が位置決めされて取り付けられている頭部装着型表示装置付ヘルメット10の位置(Xh、Yh、Zh)及び角度(RLh、ELh、AZh)は、相対座標系(XYZ座標系)に対する、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)の位置及び角度を用いて表現できるようになる。なお、頭部装着型表示装置付ヘルメット10の位置(Xh、Yh、Zh)は、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)の原点である頭部装着体発光部15aの現在の位置座標で表現することとする。
【0023】
制御部20は、図1に示すように、CPU21、メモリ41等からなるコンピュータにより構成され、各種の制御や演算処理を行うものである。CPU21が実行する処理を、機能ブロックごとに分けて説明すると、マーカー制御部28と、相対情報算出部22と、マーカー位置情報算出部24と、映像表示部25とを有する。
また、メモリ41には、制御部20が処理を実行するために必要な種々のデータを蓄積する領域が形成してあり、相対座標系(XYZ座標系)を記憶する相対座標系記憶部43と、ヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)を記憶するヘルメット座標系記憶部44とを有する。
【0024】
なお、相対座標系(XYZ座標系)は、原点及び各座標軸の方向を任意に定めることができるが、本実施形態では、図5に示すように、第二カメラ2aから第一カメラ2bへの方向をY軸方向とし、Y軸方向に垂直かつ前方方向をX軸方向とし、Y軸方向に垂直かつ天井に垂直で下向き方向をZ軸方向とするように定義し、原点を第一カメラ2aと第二カメラ2bとの中点として定義するように相対座標系記憶部43に設定されている。
また、ヘルメット座標系記憶部44には、予め、初期のマーカー位置情報として、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fのヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)上におけるそれぞれの相対的な位置関係が記憶されている。
【0025】
マーカー制御部28は、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fを点灯させる点灯制御信号を送受信部16に出力するとともに、カメラ装置2で赤外光を検出させる制御を行うものである。
マーカー位置情報算出部24は、カメラ装置2に対する、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fのそれぞれの現在位置であるマーカー位置情報を算出する制御を行うものである。
具体的には、カメラ装置2に発光部が撮影されれば、発光部のカメラ装置2に対する位置は、第一カメラ2aと第二カメラ2bとに撮影された第一画像と第二画像中に映し出されている発光部の位置を抽出し、さらに第一カメラ2aからの方向角度(α)と第二カメラ2bからの方向角度(β)とを抽出し、第一カメラ2aと第二カメラ2bとの間の距離(d)を用いることにより、三角測量の手法で算出する。このように、カメラ装置2に撮影されている少なくとも3個の発光部のカメラ装置2に対する位置について算出する。このとき、第一画像及び第二画像に少なくとも3個の発光部が撮影されればよく、3個の発光部の位置が特定できれば、予め、初期データとして頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fの相対的な位置関係が記憶されているので、他の発光部の現在位置も算出することができる。
【0026】
相対情報算出部22は、マーカー位置情報に基づいて、カメラ装置2(XYZ座標系)に対するパイロット3の頭部位置(Xh、Yh、Zh)及び頭部角度(RLh、ELh、AZh)を含む相対情報を算出する制御を行うものである。
具体的には、カメラ装置2に対する少なくとも3個の発光部の位置座標であるマーカー位置情報と、ヘルメット座標系記憶部44に記憶されている初期データとを比較することにより、頭部装着体発光部15a〜15h及び顔前部部材発光部7a〜7fが位置決めされて取り付けられているヘルメット座標系(X’Y’Z’座標系)の位置(Xh、Yh、Zh)及び角度(RLh、ELh、AZh)を算出する。
【0027】
映像表示部25は、パイロット3の頭部位置(Xh、Yh、Zh)及び頭部角度(RLh、ELh、AZh)を含む相対情報に基づいて、表示器から映像表示光を出射する制御を行うものである。これにより、パイロット3は、表示器による表示映像を視認することになる。
【0028】
以上のように、HMT装置1によれば、例えば、飛行体の天井に設置されたカメラ装置2で、頭部装着型表示装置付ヘルメット10を装着したパイロット3が正面を見ているときには、3個の頭部装着体発光部15a、15b、15eを検出し、一方、頭部装着型表示装置付ヘルメット10を装着したパイロット3が天井を見ているときには、1個の頭部装着体発光部15aと2個の顔前部部材発光部7a、7dを検出する。したがって、パイロット3があらゆる方向に向いても、パイロット3の頭部位置(Xh、Yh、Zh)及び頭部角度(RLh、ELh、AZh)を算出することができる。
また、顔前部部材発光部7a〜7fには透明電極13bが用いられているため、パイロット3の視界を狭めたり妨げたりすることはなく、頭部装着型表示装置付ヘルメット10を装着したパイロット3の広範囲の視界を確保することができる。
【0029】
(他の実施形態)
上述したHMT装置1では、カメラ装置2は、搭乗体30の前方に設置されている構成としたが、カメラ装置2は、搭乗体30の天井に下向きとなるように設置されているような構成としてもよい。つまり、本発明によれば、パイロットがあらゆる方向に向いても、パイロットの頭部位置(Xh、Yh、Zh)及び頭部角度(RLh、ELh、AZh)を算出することができ、これにより、カメラ装置の設置場所の自由度が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のHMT装置は、例えば、ゲーム機や乗物等で用いられる頭部装着型表示装置付ヘルメットの現在位置及び現在角度を検出するものとして、利用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態であるHMT装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す頭部装着型表示装置付ヘルメットの側面図である。
【図3】図2に示すAを拡大した断面図である。
【図4】図3に示すB−B線の断面図である。
【図5】相対座標系の設定を説明するための図である。
【図6】従来の頭部装着型表示装置付ヘルメットの側面図である。
【図7】従来のHMT装置を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ヘッドモーショントラッカ装置(HMT装置)
2 カメラ装置
3 パイロット(観察者)
7 顔前部部材発光部(光学マーカー)
10 頭部装着型表示装置付ヘルメット(頭部装着装置)
11 バイザー(顔前部部材)
12 ヘルメット(頭部装着体)
15 頭部装着体発光部(光学マーカー)
22 相対情報算出部
24 マーカー位置情報算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の顔面を覆うように配置される透明な顔前部部材と、当該顔前部部材を保持するとともに、前記観察者の頭部に装着される頭部装着体と、光線を出射する複数の光学マーカーとを有する頭部装着装置と、
少なくとも3個の光学マーカーから出射された光線を立体視で検出するカメラ装置と、
前記カメラ装置で検出された光線に基づいて、前記カメラ装置に対する光学マーカーのそれぞれの現在位置であるマーカー位置情報を算出するマーカー位置情報算出部と、
前記マーカー位置情報に基づいて、前記カメラ装置に対する頭部装着装置の現在位置及び現在角度を含む相対情報を算出する相対情報算出部とを備えるヘッドモーショントラッカ装置であって、
前記複数の光学マーカーは、前記顔前部部材に位置決めされて配置されている複数の顔前部部材発光部と、前記頭部装着体に位置決めされて配置されている複数の頭部装着体発光部とからなることを特徴とするヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項2】
前記顔前部部材発光部は、前記光線を発光する表示素子を有することを特徴とする請求項1に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項3】
前記顔前部部材発光部は、さらに光を透過しない遮光部材を有することを特徴とする請求項2に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項4】
前記顔前部部材発光部は、前記表示素子に電気を供給する透明電極を備え、
前記透明電極は、電磁結合による非接触給電方式で電気が供給されるものであることを特徴とする請求項2又は3に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項5】
前記表示素子は、赤外光を発光する発光ダイオードであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項6】
さらに、前記光学マーカーを点灯する点灯制御信号を出力するマーカー制御部を備え、
前記マーカー制御部は、前記光学マーカーに点灯制御信号を無線方式で送信することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。
【請求項7】
前記頭部装着体は、前記観察者の頭部に装着されるヘルメットであり、かつ、
前記顔前部部材は、前記観察者の顔面を覆うように配置されるバイザーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のヘッドモーショントラッカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−109319(P2009−109319A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281495(P2007−281495)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】