説明

ヘッドユニット、これを備えた吐出検査装置および液滴吐出装置

【課題】重量の増加を伴うことなく、流体部品のチューブ接続部分からの液漏れした機能液を適切に受けることができるヘッドユニット等を提供する。
【解決手段】インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド40の複数個と、複数個の機能液滴吐出ヘッド40をヘッド搭載部81に搭載したキャリッジプレート35と、キャリッジプレート35のヘッド搭載部81から外れたサイド延設部82の直上に配設され、各機能液滴吐出ヘッド40に機能液を供給する複数の流体部品と、サイド延設部82上で引き回され各流体部品と各機能液滴吐出ヘッド40とを接続する機能液チューブと、流体部品の直下に位置してキャリッジプレート35のサイド延設部82に窪入形成され、流体部品から液漏れした機能液を受ける溝状の受液部83と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドを複数搭載したヘッドユニット、これを備えた吐出検査装置および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の機能液滴吐出ヘッドを搭載したメインキャリッジ(ヘッドユニット)に、複数のタンクユニットおよび複数の圧力調整弁から成る機能液供給装置を搭載した液滴吐出装置が知られている(特許文献1参照)。このメインキャリッジは、支持プレート上に、複数の機能液滴吐出ヘッドと、複数の機能液滴吐出ヘッドに供給する機能液を貯留する複数のタンクユニットと、各機能液滴吐出ヘッドと各タンクユニットとを接続する供給チューブに介設された複数の圧力調整弁と、を搭載して構成され、タンクユニットから供給される機能液が、圧力調整弁で所定の水頭圧に調整されて機能液滴吐出ヘッドに自然流下するようになっている。また、メインキャリッジは、機能液供給装置に対し着脱自在に構成されている。
【特許文献1】特開2006−082538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来のメインキャリッジにおいて、各タンクユニットと供給チューブとの接続部分や各圧力調整弁と供給チューブとの接続部分となる継ぎ手に、接続不良が発生すると、この部分から機能液の液漏れが生じる。この場合、漏れた機能液は支持プレートの間隙から滴下し、構成部品を腐食させたり、ワークを損傷するおそれがある。かかる場合に、滴下した機能液を受液パンで受けることが考えられるが、単純に受液パンを設置するとメインキャリッジの重量が増し、メインキャリッジの移動における追従性が悪化することが想定される。
【0004】
本発明は、重量の増加を伴うことなく、各機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する各流体部品のチューブ接続部分からの、液漏れした機能液を適切に受けることができるヘッドユニット、これを備えた吐出検査装置および液滴吐出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のヘッドユニットは、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドの複数個と、複数個の機能液滴吐出ヘッドをヘッド搭載部に搭載したキャリッジプレートと、キャリッジプレートのヘッド搭載部から外れたサイド延設部の直上に配設され、各機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する複数の流体部品と、サイド延設部上で引き回され各流体部品と各機能液滴吐出ヘッドとを接続する機能液チューブと、流体部品の直下に位置してキャリッジプレートのサイド延設部に窪入形成され、流体部品から液漏れした機能液を受ける溝状の受液部と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、流体部品と機能液チューブとの接続部分等から機能液の液漏れが生じても、その直下のキャリッジプレートに窪入形成された受液部にて、滴下した機能液を受けることができる。このため、滴下した機能液により、構成部品の腐食やワークの損傷を防止することができる。また、機能液チューブを受液部の直上に位置させることで、流体部品下側の空間を広く確保でき、流体部品から延びる機能液チューブの引き回しの自由度が増す。このため、機能液チューブの無理な取り回しによる折れ曲がりを防止することができる。さらに、受液部が、キャリッジプレートのサイド延設部に窪入形成されているため、ヘッドユニット自身の重量が軽減されることはあっても、増加することはない。
【0007】
この場合、受液部は、上部で各機能液チューブの引き回し位置を規制する複数の溝部を、有していることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、複数の溝部が、流体部品に機能液チューブを取り付ける際のガイドとなるため、各機能液吐出ヘッドに対応する適切な位置に配設することができる。また、ヘッドユニットの移動に伴って、機能液チューブがふらつくことがなく、機能液チューブに無用な力が加わることがない。
【0009】
また、この場合、受液部は、複数の溝部を連通する連通溝部を、更に有していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、連通溝部を介して複数の溝部が連通しているため、滴下した機能液滴を、複数の溝部の全体で受けることができ、機能液のオーバーフローを抑制することができる。
【0011】
さらに、この場合、受液部は、各機能液チューブに添設した複数のチューブ添設部材を、更に有していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、各機能液チューブに添うようにチューブ添設部材が設けられているため、漏れた機能液を各溝部に適切に導くことができると共に、機能液チューブの折れ曲がりを有効に防止することができる。
【0013】
また、さらに、流体部品が、圧力調整弁であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、機能液を、所定の水頭圧で各機能液滴吐出ヘッドに適切に供給をすることができる。
【0015】
本発明の吐出検査装置は、上記したヘッドユニットと、ヘッドユニットの複数個の機能液滴吐出ヘッドにおける多数の吐出ノズルから検査吐出を行なわせ、その着弾結果から前記多数の吐出ノズルの吐出性能を検査する吐出検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、滴下した機能液による構成部品の腐食および機能液チューブの無理な取り回しによる折れ曲がりを防止することができると共に、ヘッドユニット自身の重量が軽減されるため、検査精度の良好な吐出検査装置を提供することができる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置は、上記したヘッドユニットと、ワークに対し、ヘッドユニットを相対的に移動させながら複数個の機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出して描画を行う描画手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、滴下した機能液による構成部品の腐食、ワークの損傷および機能液チューブの無理な取り回しによる折れを防止できると共に、ヘッドユニットの軽量化により、描画品質の良好な液滴吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、有機EL装置の各画素となる発光層やカラーフィルタのフィルタエレメント等を形成するものである。
【0020】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース15上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、基板10をX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱23を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された一対のY軸支持ベース22上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、複数の機能液滴吐出ヘッド40が搭載された10個のキャリッジユニット4と、から成り、10個のキャリッジユニット4は、Y軸テーブル3に移動自在に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、チャンバ5の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド40に機能液を供給する3組のタンクユニット61を有する機能液供給ユニット6と、装置全体を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド40を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給されたR・G・B3色の機能液を吐出させ、基板10に所定の描画パターンが描画される。なお、キャリッジユニット4の個数は任意である。
【0021】
また、液滴吐出装置1には、フラッシングユニット71、吸引ユニット72、ワイピングユニット73、吐出性能検査ユニット74から成るメンテナンス装置7が設けられており、各ユニットを機能液滴吐出ヘッド40の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド40の機能維持・機能回復を図るようになっている。なお、図中の符号76は、基板10への描画結果を撮像するカメラユニットであり、X軸テーブル2の上方において、Y軸方向に移動自在に支持した2個の検査カメラ77で構成されている。
【0022】
実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2およびY軸テーブル3が交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませて、基板10の描画を行い、Y軸テーブル3およびメンテナンス装置7が交わる部分にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド40の機能維持・機能回復を行う。
【0023】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、基板10を吸着セットすると共に、θ軸方向に補正可能な機構を有するセットテーブル11と、セットテーブル11をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダ12と、上記のフラッシングユニット71およびステージユニット75をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダ13と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダ12およびX軸第2スライダ13をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。
【0024】
Y軸テーブル3は、10個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した10個のブリッジプレート21と、10個のブリッジプレート21を両持ちで支持する10組のY軸スライダ(図示省略)と、一対のY軸支持ベース22上に設置され、ブリッジプレート21をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド40を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド40をメンテナンス装置7に臨ませる。なお、10個のキャリッジユニット4は、Y軸方向に個別に移動可能に構成されている。
【0025】
Y軸テーブル3に吊設された10個のキャリッジユニット4は、同一の形態を有しており、各キャリッジユニット4は、12個の機能液滴吐出ヘッド40を6個ずつ2群に分けて搭載したヘッドユニット30(図6参照)と、ヘッドユニット30をθ回転自在に支持するθ回転機構31と、θ回転機構31を介して、ヘッドユニット30をY軸テーブル3に支持させる昇降機構付の吊設部材32と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、その上方に上記3組のタンクユニット61に連なる3つのサブタンク34を収容したサブタンクユニット33が配設されており(実際には、Y軸テーブル3側に配設:図1および図2参照)、このサブタンク34から自然水頭を利用して各機能液滴吐出ヘッド40に機能液が供給されるようになっている。
【0026】
次に、図4ないし図6を参照して、各ヘッドユニット30について詳細に説明する。ヘッドユニット30は、12個の機能液滴吐出ヘッド40と、12個の機能液滴吐出ヘッド40が取り付けられた略方形のキャリッジプレート35と、キャリッジプレート35の両短辺部分に取り付けた左右一対のプレート支持部材36と、一対のプレート支持部材36の上端部に掛け渡され、上記のθ回転機構31に取り付けられるヘッド取付フレーム37と、キャリッジプレート35の両短辺側に位置して、各機能液滴吐出ヘッド40に機能液を供給する左右一対の配管接続アッセンブリ38と、ヘッド取付フレーム37上に配設され、吐出制御のために機能液滴吐出ヘッド40に接続する配線接続アッセンブリ39と、を備えている。
【0027】
12個の機能液滴吐出ヘッド40は、ヘッドユニット30に対し、6個ずつ左右に二分して組み付けられている。各組6個の機能液滴吐出ヘッド40は、それぞれR色、G色およびB色の3種類の機能液滴(インク液滴)を吐出する、3種類の機能液滴吐出ヘッド40を2個ずつ組み合わせて、且つ相互に階段状に位置ずれして配設されている。すなわち、各組6個の機能液滴吐出ヘッド40は、配色および配置において同一の配列パターンで配設されている。なお、各組内の同色の2つの機能液滴吐出ヘッド40は、そのノズル列46bがY軸方向に連続して1の部分描画ラインを構成している。さらに、1のヘッドユニット30内の2群間および隣接するヘッドユニット30間の2群間では、それぞれ各色の部分描画ラインは2部分描画ライン分、離れて配設されている。
【0028】
図7に示すように、機能液滴吐出ヘッド40は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針44を有する機能液導入部41と、機能液導入部41に連なる2連のヘッド基板42と、ヘッド基板42の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体43と、を備えている(図7(a))。
【0029】
機能液導入部41は、一対の接続針44を有しており、上記の配管接続アッセンブリ38から機能液の供給を受けるようになっている。また、ヘッド本体43は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部45と、複数の吐出ノズル47が形成されたノズル面46aを有するノズルプレート46と、を有している。ノズルプレート46のノズル面46aに形成された多数の吐出ノズル47は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列46bを構成しており、各ノズル列46bは、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル47で構成されている(図7(b)参照)。ヘッド基板42には、2連のコネクタ48が設けられており、各コネクタ48は、上記の各配線接続アッセンブリ39から延びるフレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して上記の制御装置に接続されている。そして、この制御装置から出力された駆動波形が各コネクタ48を介して各ポンプ部45(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル47から機能液が吐出される。なお、請求項に言う描画手段とは、X軸テーブル2、Y軸テーブル3、キャリッジユニット4(機能液滴吐出ヘッド40およびヘッドユニット30)および制御装置から構成されている。
【0030】
図4および図5に示すように、一対の配管接続アッセンブリ38は、キャリッジプレート35の両短辺側に位置しており、各プレート支持部材36に内側に向けて水平に取り付けた2枚の固定プレート51と、各固定プレート51上に立設した3つのバルブ取付プレート52と、計6つのバルブ取付プレート52に取り付けた6個の圧力調整弁53と、6個の圧力調整弁53と6個の機能液滴吐出ヘッド40を接続する6本の減圧供給チューブ54と、で構成されている。
【0031】
各圧力調整弁53は、大気圧基準で作動するダイヤフラム形式の減圧弁であり、その上流側(一次側)には、上記のサブタンク34に連なる上流コネクタ53aが設けられ、下流側(二次側)には、上記の減圧供給チューブ54が接続された下流コネクタ53bが設けられている。各組6個の圧力調整弁53は、キャリッジプレート35の長辺に平行な姿勢で且つ短辺方向に並べて配設されており、各圧力調整弁53の上流コネクタ53aは斜め上向きに、下流コネクタ53bは下向きにそれぞれ配設されている。この場合、各圧力調整弁53は、高さ方向において、キャリッジプレート35とヘッド取付フレーム37との間隙に収まるように配設されており、後述する個別供給チューブ55は、プレート支持部材36の外側から上流コネクタ53aに接続され、下流コネクタ53bに接続した上記の減圧供給チューブ54は、「U」字状に湾曲して延び機能液滴吐出ヘッド40に上側から接続されている(いずれも、図4参照)。
【0032】
ここで、図8を参照して、サブタンク34(サブタンクユニット33)から機能液滴吐出ヘッド40に至る配管接続アッセンブリ38廻りの機能液供給流路について、簡単に説明する。各色のサブタンク34には、3つの2分岐継手56を介して同色4本の個別供給チューブ55が接続されている。また、この同色4本の個別供給チューブ55は、片側2個ずつの圧力調整弁53の上流コネクタ53aに接続されている。さらに、各圧力調整弁53の下流コネクタ53bに接続された減圧供給チューブ54は、下流側で2分岐継手56を介して機能液滴吐出ヘッド40の2連の接続針44に接続されている。なお、本実施形態では、サブタンク34から各機能液滴吐出ヘッド40に至る各機能液供給流路において、複数の2分岐継手56を用いると共に、個別供給チューブ55および減圧供給チューブ54のチューブ長およびチューブ径を同一とし、圧力損失にばらつきが生じないようにしている。
【0033】
図4および図9に示すように、キャリッジプレート35は、ステンレス等の厚板で構成され、機能液滴吐出ヘッド40を搭載するヘッド搭載部81と、ヘッド搭載部81の両側に位置する一対のサイド延設部82と、で一体に形成されている。ヘッド搭載部81には、12個の機能液滴吐出ヘッド40を取り付けるための12個の装着開口88が形成され、また、その裏面には、ヘッドアライメント用の一対の基準ピン87が突設されている(図5(b)参照)。なお、機能液滴吐出ヘッド40は、そのヘッド本体43を、キャリッジプレート35に形成した装着開口88から下方に突出させ、下側からあてがったヘッド保持部材89を介してキャリッジプレート35に位置決め状態で固定されている(図5(b)および(c)参照)。
【0034】
一方、一対のサイド延設部82には、その直上に配設された配管接続アッセンブリ38(圧力調整弁53)から液漏れした場合に機能液を受けるための、一対の受液部83が、窪入形成されている。各受液部83は、それぞれ、キャリッジプレート35の両短辺部分に取り付けた左右の各プレート支持部材36とヘッド搭載部81との間に位置し、キャリッジプレート35の短辺に平行な平面視矩形の一体の溝として窪入形成されている。すなわち、各受液部83は、上記の6組の下流コネクタ53bと減圧供給チューブ54との接続部分および減圧供給チューブ54と2分岐継手56との接続部分(減圧供給チューブ54の接続部分)から液漏れが発生した場合にこれを受けられるように、減圧供給チューブ54の接続部分の直下に位置している。また、各受液部83は、キャリッジプレート35厚の略半分の深さに窪入形成されている。
【0035】
そして、上記の「U」字状に湾曲した減圧供給チューブ54は、その湾曲した部分を、受液部83の窪み内のセンターに臨むように引き回されて、2分岐継手56に接続されている。例えば、圧力調整弁53の下流コネクタ53bの部分(減圧供給チューブ54との接続部分)に液漏れが発生すると、漏れた機能液は減圧供給チューブ54を伝わって流下し、受液部83に受けられる。同様に、減圧供給チューブ54と2分岐継手56との接続部分から漏れた機能液も、減圧供給チューブ54を伝わって流下し、受液部83に受けられる。
【0036】
ところで、減圧供給チューブ54(個別供給チューブ55も同じ)は、分子レベルで気体非透過性を有する材料で形成されているため、剛性が高く、いったん屈曲させてしまうと白化して使用できなくなってしまう。一方、上述のように、圧力調整弁53との位置関係から、減圧供給チューブ54は狭いスペースの中で「U」字状に湾曲して配管する必要がある。このため、減圧供給チューブ54が他の部品と干渉しない構造とすること、および減圧供給チューブ54の圧力調整弁53への接続における作業スペースを十分確保することが、求められる。この点において本実施形態の受液部83では、受液部83がキャリッジプレート35に窪入形成されているため、減圧供給チューブ54の接続部分から液漏れした機能液を受けられると共に、受液部83の窪み部分を減圧供給チューブ54の引き回すための空間として使用することができる。これにより、減圧供給チューブ54の取付作業を行い易く、取付作業時の減圧供給チューブ54の折れ曲がりを有効に防止することができる。
【0037】
次に、図10を参照して、受液部83の第2実施形態について説明する。この実施形態の受液部83は、各減圧供給チューブ54の数に対応し、各減圧供給チューブ54を取り付ける際のガイドとなるように複数(片側6個)の溝部84で、構成されている。各溝部84は、減圧供給チューブ54の「U」字状に湾曲した引き回し部分に対応しており、減圧供給チューブ54の径より僅かに大きい溝幅と、「U」字状の湾曲形状に倣った溝底形状を有している。各減圧供給チューブ54は、溝部84に遊嵌するように「U」字状に引き回して配管される。これにより、減圧供給チューブ54の接続部分から液漏れした機能液を受けられると共に、減圧供給チューブ54のふらつきを防止することができる。
【0038】
さらに、図11に示すように、第3実施形態の受液部83は、減圧供給チューブ54の接続部分から液漏れした機能液のオーバーフローを抑制するために、上記の複数の溝部84と、この複数の溝部84を相互に連通させる連通溝部85と、で構成されている。すなわち、第3実施形態の受液部83は、外側半部の複数の溝部84と内側半部の連通溝部85と、で一体に形成されている。これにより、減圧供給チューブ54のふらつきを防止することができると共に、液漏れした機能液のオーバーフローを抑制することができる。
【0039】
またさらに、図12に示すように、第4実施形態に係る受液部83は、上記実施形態と同様の複数の溝部84および連通溝部85と、各溝部84から立ち上がるように設けたチューブ添設部材86と、で構成されている。各チューブ添設部材86は、「U」字状に湾曲し引き回された減圧供給チューブ54の下流コネクタ53b側の部位が添うような湾曲形状に形成されている。また、各チューブ添設部材86は、キャリッジプレート35に対し別部材で構成され、接着等により各溝部84に固着されている。これにより、減圧供給チューブ54の接続部分から液漏れした機能液を、チューブ添設部材86を伝って各溝部84に導くことができると共に、減圧供給チューブ54の折れ曲がりを有効に防止することができる。
【0040】
以上の構成によれば、ヘッドユニット30におけるキャリッジプレート35のサイド延設部82に、減圧供給チューブ54の接続部分から液漏れした機能液を受けるための受液部83が窪入形成されているため、液漏れした機能液を適切に受けることができる。これにより、滴下した機能液による構成部品やの腐食、ワークの損傷および減圧供給チューブ54の無理な取り回しによる折れ曲がりを防止することができる。また、受液部83が窪入形成されている分、ヘッドユニット30の軽量化を図ることができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る吐出検査装置について説明する。この吐出検査装置は、12個の機能液滴吐出ヘッド40を組み込んだ単一のヘッドユニット30の吐出性能を検査するものである。
【0042】
図13に示すように、吐出検査装置90は、機台91と、機台91上の全域に広く載置され、ヘッドユニット30を搭載した描画検査装置92と、ヘッド吸引装置94およびヘッドワイピング装置95を有するヘッドメンテナンス装置93と、装置全体を統括制御する制御コンピュータ(図示省略)と、を備えている。また、吐出検査装置90は、内部を温度管理されたクリーンブースを構成するチャンバ装置(図示省略)内に収容されている。描画検査装置92は、ヘッドユニット30に搭載した複数の機能液滴吐出ヘッド40から検査シートS上に機能液滴を吐出させ、吐出した機能液滴の着弾位置を検査する。
【0043】
描画検査装置92は、機台91上に載置されると共に主走査方向の移動軸を構成するY軸移動テーブル96と、Y軸移動テーブル96を跨いで配設され、副走査方向の移動軸を構成するX軸移動テーブル97と、X軸移動テーブル97に設けたメインキャリッジ98と、を備えている。メインキャリッジ98には、ヘッドユニット30が着脱自在に垂設されると共に、ヘッドユニット30に機能液を供給する機能液供給装置99が搭載されている。また、X軸移動テーブル97には、メインキャリッジ98とは別にカメラ装置101が設けられている。一方、Y軸移動テーブル96には、アライメントマスク103を保持したアライメントテーブル102と、吐出される機能液滴の着弾対象となる検査シートSを吸着保持するシート吸着テーブル104と、が設けられている。
【0044】
この描画検査装置92では、カメラ装置101により、アライメントマスク103の着弾位置基準となるマークを画像認識すると共に、ヘッドユニット30の複数の機能液滴吐出ヘッド40から検査吐出した着弾ドットを画像認識し、両認識結果を比較することで、各機能液滴吐出ヘッド40(吐出ノズル47)の吐出性能を検査するようになっている。
【0045】
本実施形態の吐出検査装置90に搭載されたヘッドユニット30は、上記の液滴吐出装置1に搭載したヘッドユニット30と同一構造のものである。したがって、上記した圧力調整弁53、減圧供給チューブ54および受液部83等の構造も全く同一であり、この部分の説明は省略する。
【0046】
このようにキャリッジプレート35に一対の受液部83を形成したヘッドユニット30を吐出検査装置90に搭載して、その吐出性能の検査を行う場合にも、液漏れした機能液を適切に受けることができる。したがって、滴下した機能液による構成部品やの腐食や減圧供給チューブ54の無理な取り回しによる折れ曲がりを有効に防止することができると共に、ヘッドユニット30の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】ヘッドユニットの外観斜視図である。
【図5】ヘッドユニットの平面図および側面図である。
【図6】機能液滴吐出ヘッドの配色パターンの説明図である。
【図7】ヘッドユニットに搭載した機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図8】サブタンクから機能液滴吐出ヘッドへの機能液の供給系統図である。
【図9】第1実施形態に係るキャリッジプレートの外観斜視図である。
【図10】第2実施形態に係るキャリッジプレートの外観斜視図およびキャリッジプレートのサイド延設部の拡大斜視図である。
【図11】第3実施形態に係るキャリッジプレートの外観斜視図およびキャリッジプレートのサイド延設部の拡大斜視図である。
【図12】第4実施形態に係るキャリッジプレートの外観斜視図およびキャリッジプレートのサイド延設部の拡大斜視図である。
【図13】実施形態に係る吐出検査装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:液滴吐出装置、10:基板、30:ヘッドユニット、35:キャリッジプレート、40:機能液滴吐出ヘッド、53:圧力調整弁、54:減圧供給チューブ、83:受液部、84:溝部、85:連通溝部、86:チューブ添設部材、90:吐出検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドの複数個と、
前記複数個の機能液滴吐出ヘッドをヘッド搭載部に搭載したキャリッジプレートと、
前記キャリッジプレートの前記ヘッド搭載部から外れたサイド延設部の直上に配設され、前記各機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する複数の流体部品と、
前記サイド延設部上で引き回され前記各流体部品と前記各機能液滴吐出ヘッドとを接続する機能液チューブと、
前記流体部品の直下に位置して前記キャリッジプレートの前記サイド延設部に窪入形成され、前記流体部品から液漏れした機能液を受ける溝状の受液部と、を備えたことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記受液部は、上部で前記各機能液チューブの引き回し位置を規制する複数の溝部を、有していることを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記受液部は、前記複数の溝部を連通する連通溝部を、更に有していることを特徴とする請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記受液部は、前記各機能液チューブに添設した複数のチューブ添設部材を、更に有していることを特徴とする請求項2または3に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記流体部品が、圧力調整弁であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットの前記複数個の機能液滴吐出ヘッドにおける多数の吐出ノズルから検査吐出を行なわせ、その着弾結果から前記多数の吐出ノズルの吐出性能を検査する吐出検査手段と、を備えたことを特徴とする吐出検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかに記載のヘッドユニットと、
ワークに対し、前記ヘッドユニットを相対的に移動させながら前記複数個の機能液滴吐出ヘッドから機能液滴を吐出して描画を行う描画手段と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−254953(P2009−254953A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105336(P2008−105336)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】