説明

ヘリカルアイソレータ及びその製造方法

【課題】簡素な製造工程をもってワイヤロープを支持穴の部分で確実に固定可能なヘリカルアイソレータを得る。
【解決手段】ヘリカルアイソレータ11は、支持穴19が複数連設された一対の固定部材13,15と、前記各支持穴19の間を縫うように貫通しながら螺旋状に巻き回されたワイヤロープ17とを備える。塑性変形前の固定部材13,15は、中空断面を有している。ワイヤロープ17は、固定部材13,15の中空断面の塑性変形により支持穴19の内壁部分に密着して挟圧結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子機器や光学器械等の防護対象を振動エネルギから隔離するために用いられるヘリカルアイソレータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子機器や光学器械等の防護対象を振動エネルギから隔離するために、ヘリカルアイソレータと呼ばれるものが用いられる。
【0003】
このヘリカルアイソレータは、対向する壁部間を貫通する支持穴が複数連設された複数の固定部材と、前記各支持穴を貫通しながら螺旋状に巻き回されたワイヤロープと、を備えて構成される。ワイヤロープの螺旋状ループの形状を維持するために、前記支持穴の部分で前記ワイヤロープを固定する。この固定は、前記複数の固定部材のうち個々の固定部材を一対の挟持部材に分割し、これら一対の挟持部材のうち前記支持穴の部分に前記ワイヤロープを挟み込んだ状態で締結手段により締め付けることによって行われる(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のヘリカルアイソレータによれば、動的な変位が入力されると屈曲又は伸展を繰り返すワイヤロープが有する螺旋状ループの弾性作用によって振動エネルギを緩衝し、防護対象を振動エネルギから隔離することができる。
【0005】
しかしながら、一対の挟持部材のうち支持穴の部分にワイヤロープを挟み込んだ状態で締結手段により締め付ける従来のワイヤロープ固定技術では、その製造工程が煩雑であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,522,585号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、従来のワイヤロープ固定技術では、その製造工程が煩雑であった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、簡素な工程をもって製造可能なヘリカルアイソレータを得ることを目的として、対向する壁部間を貫通する支持穴が複数連設され少なくとも塑性変形前は中空断面の複数の固定部材と、前記各支持穴を貫通しながら螺旋状に巻き回されたワイヤロープと、を備えたヘリカルアイソレータであって、前記ワイヤロープは、前記固定部材の中空断面の塑性変形により該固定部材に挟圧結合されている、ことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、一対の挟持部材のうち支持穴の部分の間にワイヤロープを挟み込んだ状態で締結手段によって締め付ける従来のワイヤロープ固定技術と比較して、簡素な製造工程をもってワイヤロープを支持穴の部分で確実に固定可能なヘリカルアイソレータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係るヘリカルアイソレータの全体構成を示す斜視図である(実施例1)。
【図2】実施例1に係るヘリカルアイソレータの説明図であり、(A)は平面図、(B)は固定部材を上下方向に配置したときの図2(A)のII−II線に沿う断面図である(実施例1)。
【図3】実施例1に係るヘリカルアイソレータのうち支持穴周辺に注目した説明図であり、(A)は塑性変形前の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、(B)は塑性変形後の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図である(実施例1)。
【図4】実施例1に係るヘリカルアイソレータの製造方法を示す工程図である。
【図5】実施例2に係るヘリカルアイソレータのうち支持穴周辺に注目した説明図であり、(A)は塑性変形前の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、(B)は塑性変形後の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図である(実施例2)。
【図6】図5(B)の断面のうち符合60で示す点線で囲った部分を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
簡素な製造工程をもってワイヤロープを支持穴の部分で確実に固定可能なヘリカルアイソレータを得るといった目的を、固定部材の中空断面の塑性変形により該固定部材にワイヤロープを挟圧結合することによって実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1に係るヘリカルアイソレータについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、実施例1に係るヘリカルアイソレータの全体構成を示す斜視図、図2は、実施例1に係るヘリカルアイソレータの説明図であり、(A)は平面図、(B)は固定部材を上下方向に配置したときの図2(A)のII−II線に沿う断面図、図3は、実施例1に係るヘリカルアイソレータのうち支持穴周辺に注目した説明図であり、(A)は塑性変形前の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、(B)は塑性変形後の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、図4は、実施例1に係るヘリカルアイソレータの製造方法を示す工程図である。
【0014】
一対の各固定部材に設けられる“対応する支持穴”は、実際には、固定部材の軸線方向にずれて配置されている。すなわち、一対の各固定部材間を螺旋形状に巻き回されるワイヤロープは、一の支持穴を通って次の支持穴に至る。このとき、前記一の支持穴と前記次の支持穴のように、前記ワイヤロープによって直接接続された支持穴同士が、前記の“対応する支持穴”に相当する。そこで、図2(A)、図3、及び後述の図4では、対応する支持穴の断面を両者共に表すために、切断線(II−II線)の切断位置を前記軸線方向にずらしてある。
【0015】
図1及び図2に示すように、実施例1に係るヘリカルアイソレータ11は、例えば電子機器や光学器械等の防護対象を振動エネルギから隔離するために用いられる。このアイソレータ11は、第1及び第2固定部材13,15と、前記第1及び第2固定部材13,15の間を渡って螺旋形状に巻き回されたワイヤロープ17と、を備える。
【0016】
前記第1及び第2固定部材13,15は、ワイヤロープ17が有する螺旋状のループ形状を維持すると共に、床等の基準側又は防護対象側に対する取付部としての機能を有する。
【0017】
前記第1及び第2固定部材13,15は、例えばアルミ合金等の可塑性を有する金属材料からなる。具体的には、この第1及び第2固定部材13,15は、例えばアルミ合金製の中空パイプを素材として形成される。塑性変形前の前記第1及び第2固定部材13,15は、断面楕円形状に形成されている。
【0018】
前記第1及び第2固定部材13,15のうち、一方の第1固定部材13には、対向する壁部間、つまり、長径方向の両壁部間を貫通する円筒形状の支持穴19が複数整列して空けられている。他方の第2固定部材15にも、前記と同様の支持穴19が複数整列して空けられている。ただし、前記複数の支持穴19は、必ずしも整列していることを要しない。
【0019】
前記第1及び第2固定部材13,15の構成はほぼ共通である。そこで、以下では、一方の第1固定部材13の構成を説明することによって、他方の第2固定部材15の構成の説明に代えるものとする。
【0020】
前記第1固定部材13の軸線方向両端には、基準側又は防護対象側に対する取り付けの際にボルト等の締結具が挿通される挿通孔21,23が開設されている。この挿通孔21,23にボルト等の締結具を挿通すると共に、基準側又は防護対象側の被取付部(不図示)に前記締結具を締結することによって、前記第1固定部材13を基準側又は防護対象側に取り付けることができる。
【0021】
前記と同様に、前記第2固定部材15の軸線方向両端には、基準側又は防護対象側に対する取り付けの際にボルト等の締結具が挿通される挿通孔25,27が開設されている。これら挿通孔25,27の使用方法は、前記挿通孔21,23と同様である。
【0022】
前記ワイヤロープ17は、防護対象に入力された三次元方向の振動エネルギを緩衝し、防護対象を振動エネルギから隔離するといった重要な役割を担う。前記ワイヤロープ17に動的な負荷が入力されると、前記第1及び第2固定部材13,15の間に巻き回された螺旋状ループの湾曲部17aが屈曲又は伸展を繰り返すことによって、防護対象を振動エネルギから隔離する。
【0023】
この役割を十全に果たすために、前記ワイヤロープ17は、例えばステンレス鋼(SUS304等)等の金属製線材を相互に螺旋状に縒り合わせてなる。
【0024】
前記ワイヤロープ17は、前記第1及び第2固定部材13,15のそれぞれに開設された前記複数の支持穴19の間を縫うように貫通しながら螺旋状に巻き回されている。
【0025】
前記支持穴19は、前記第1及び第2固定部材13,15に前記ワイヤロープ17を確実に固定するための重要な役割を担う。この役割を果たすために、前記支持穴19は、図2(B)等に示すように、断面楕円形状の前記第1及び第2固定部材13,15のうち、長径方向の両壁部間を貫通するように、塑性変形部29の内方に設けられている。
【0026】
前記支持穴19は、塑性変形前の時点では、前記ワイヤロープ17を未だ支持していない。そこで、塑性変形前の支持穴に符号“19a”を付する一方、塑性変形後の支持穴に符号“19”を付する。これにより、以下の説明では、塑性変形前後の各時点における支持穴を区別して表すこととした。
【0027】
前記塑性変形部29とは、図3(A),(B)に示すように、前記第1及び第2固定部材13,15のうち、塑性変形前の支持穴19aに前記ワイヤロープ17を貫通させた状態で少なくともこの支持穴19aの部分を押し潰すことで塑性変形した部分をいう。この塑性変形によって、前記ワイヤロープ17は、塑性変形後の支持穴19の内壁部分に密着して挟圧結合される。
【0028】
詳しく述べると、塑性変形前の時点では、前記第1及び第2固定部材13,15のうち前記塑性変形部29の内方には、図3(A)に示すように、軸線方向(図3(A)の紙面に直交する方向)に沿って連続する断面楕円形状の中空室部30が形成されている。このように、塑性変形前の支持穴19aは、図3(A)に示すように、前記長径方向の中央付近に大きい前記中空室部30を有している。
【0029】
これに対し、塑性変形後の時点では、前記第1及び第2固定部材13,15のうち前記塑性変形部29の内方に注目すると、図3(B)に示すように、そのほとんどが押し潰されてごく小さい中空室部30aしか残っていない。これにより、塑性変形後の支持穴19は、図3(B)に示すように、前記長径方向の中央付近にごく小さい前記中空室部30aしか有していない。
【0030】
このように、塑性変形後では、支持穴19の内壁部分と前記ワイヤロープ17との接触面積が増大し、これに伴って同両者間の摩擦力も増大する。その結果、前記支持穴19の内壁部分で前記ワイヤロープ17を確実に挟圧結合することができる。
【0031】
次に、実施例1に係るヘリカルアイソレータ11の製造方法について説明する。
【0032】
まず、図3(A)及び図4に示すように、前記ワイヤロープ17を、前記第1固定部材13の空いている支持穴19aに貫通させた後、対向する第2固定部材15の空いている支持穴19aに貫通させる巻回し工程を繰り返し行う。この巻回し工程は、ワイヤロープ17の螺旋状ループが所定の数だけ形成されるまで継続される。
【0033】
前記巻回し工程後に、図3(B)及び図4に示すように、前記第1及び第2固定部材13,15の前記中空室部(本発明の”中空断面”に相当する。)30を押し潰すことで塑性変形させる塑性変形工程を実行する。この塑性変形工程は、例えば、前記第1及び第2固定部材13,15のそれぞれをプレス加工機(不図示)のパンチとダイの間にセットしてプレス加工処理を施すことで行われる。
【0034】
要するに、前記塑性変形部29は、その塑性変形後では、前記支持穴19の内壁部分が前記ワイヤロープ17と密着することによって、当該ワイヤロープ17を確実に挟圧結合する役割を果たす。
【0035】
前記支持穴19の内壁部分が前記ワイヤロープ17に密着すると、これら両者間の接触面積が増大し、これに伴って同両者間の摩擦力も増大する。特に、塑性変形前の支持穴19aの入口及び出口付近では、この支持穴19aの内壁部分と前記ワイヤロープ17との間隔が狭い。
【0036】
このため、前記第1及び第2固定部材13,15の全面にわたり均等な圧力を加えた塑性変形後の支持穴19の入口及び出口付近では、この支持穴19の入口から出口に至る中間部分(中空室部30が存在する部分)と比較して、かなり強い挟圧結合力が作用する。その結果、塑性変形後の支持穴19の入口及び出口付近では、かなり強い摩擦力が生じる。これにより、前記ワイヤロープ17の軸線方向のずれを確実に抑止することができる。
【0037】
上述のように構成された実施例1に係るヘリカルアイソレータ11によれば、前記支持穴19の内壁部分が前記ワイヤロープ17と密着することによって当該ワイヤロープ17を確実に挟圧結合することができる。
【0038】
従って、簡素な製造工程をもってワイヤロープ17を支持穴19の部分で確実に固定可能なヘリカルアイソレータを得ることができる。
【0039】
また、前記塑性変形工程において、前記第1及び第2固定部材13,15を、軸線方向に沿って全体的にカシメることで塑性変形させる構成を採用した場合、前記カシメ荷重が、前記第1及び第2固定部材13,15の円筒形状を潰す曲げモーメントとして作用する。このため、前記第1及び第2固定部材13,15のうち前記ワイヤロープ17の対応部分にのみ荷重を加えて局所的にカシメる場合と比べて、前記全体的なカシメを比較的小さい荷重で行うことができる。
【0040】
さらに、前記局所的なカシメでは、前記第1及び第2固定部材13,15のうち前記ワイヤロープ17の対応部分以外の部分にはカシメ荷重が働かない。このため、仮に、前記第1及び第2固定部材13,15のうち前記ワイヤロープ17の挟圧結合部分が、繰り返しの微振動等によって摩耗した場合、その挟圧結合力が失われてしまう。
【0041】
これに対し、前記全体的なカシメでは、前記第1及び第2固定部材13,15の軸線方向に沿ってカシメ荷重が全体的に働き、同カシメ荷重が働かない部分は存在しない。このため、前記ワイヤロープ17の挟圧結合部分が仮に摩耗したとしても、前記第1及び第2固定部材13,15が全体として発揮する弾性効果によって、その挟圧結合力の低下を可及的に抑制することができる。
【0042】
従って、前記全体的なカシメ荷重を施した塑性変形工程を採用した場合、前記ワイヤロープ17の挟圧結合部分が仮に摩耗したとしても、前記ワイヤロープ17の挟圧固定状態を可及的に維持することができる。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2に係るヘリカルアイソレータについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
図5は、実施例2に係るヘリカルアイソレータのうち支持穴周辺に注目した説明図であり、(A)は塑性変形前の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、(B)は塑性変形後の支持穴周辺の図2(A)のII−II線に沿う断面図、図6は、図5(B)の断面のうち符合60で示す点線で囲った部分を拡大して示す説明図である。
【0045】
実施例1に係るヘリカルアイソレータ11と、実施例2に係るヘリカルアイソレータ51との主な相違点は、後者では、第1及び第2固定部材57,59は、前記ワイヤロープ17の側を指向して突出する突出部55を中空室部50の内壁に有する点である。
【0046】
従って、実施例1に係るヘリカルアイソレータ11と、実施例2に係るヘリカルアイソレータ51との間で共通の部材には共通の符合を付し、その重複した説明を省略する。これと同時に、比較対象となる実施例1,2間の相違点に着目し、同相違点を中心に説明する。
【0047】
実施例1に係るヘリカルアイソレータ11では、塑性変形前の中空室部30は、図3(A)に示すように、特段の突起等を有していない。これに対し、実施例2に係るヘリカルアイソレータ51では、塑性変形前の中空室部50は、図5(A)に示すように、前記ワイヤロープ17の側を指向して突出する突出部55を、その内壁に有している。
【0048】
塑性変形前の時点では、前記第1及び第2固定部材57,59のうち前記塑性変形部29の内方には、図5(A)に示すように、軸線方向(図3(A)の紙面に直交する方向)に沿って連続する断面楕円形状の中空室部50が形成されている。また、この中空室部50の内壁には、前記第1又は第2固定部材57,59の軸線方向に沿って、縦断面が略U次形状の連続する突条部よりなる突出部55が一体に設けられている。これにより、塑性変形前の支持穴53aは、図5(A)に示すように、前記長径方向の中央付近に大きい前記中空室部50を有している。
【0049】
これに対し、塑性変形後の時点では、前記第1及び第2固定部材57,59のうち前記塑性変形部29の内方に注目すると、図5(B)に示すように、塑性変形前に存在していた前記中空室部50(図5(A)参照)が、前記突出部55の存在によって全て押し潰されて消滅している。これと同時に、前記突出部55には、図6(B)に示すように、対面する前記ワイヤロープ17の外周壁に形成された螺旋条部分17bがしっかりと食い込み、当該突出部55が当該螺旋条部分17bと一体化することで一体化部61が形成されている。
【0050】
ここで、前記ワイヤロープ17はステンレス鋼製であるのに対し、前記第1及び第2固定部材57,59はアルミ合金製である。前者のステンレス鋼は後者のアルミ合金よりも硬い。このため、前記ワイヤロープ17と前記突出部55とが相互に合体した前記一体化部61の形成は、前記した素材の硬度の差に従ってなされる。
【0051】
要するに、図6に示すように、前記ワイヤロープ17の螺旋条部分17bの狭間17cに、前記突出部55が潰れてしっかりと食い込むことによって、前記一体化が実現される。この一体化は、程度の大小の差はあるものの、前記ワイヤロープ17の螺旋条部分17bと、前記支持穴19,53の内壁との接合部分の全てにおいて具現化される。これにより、前記ワイヤロープ17の軸線方向のずれを確実に抑止することができる。
【0052】
次に、実施例2に係るヘリカルアイソレータ51の製造方法について説明する。
【0053】
まず、図4及び図5(A)に示すように、前記ワイヤロープ17を、前記第1固定部材57の空いている支持穴53aに貫通させた後、対向する第2固定部材59の空いている支持穴53aに貫通させる巻回し工程を繰り返し行う。この巻回し工程は、ワイヤロープ17の螺旋状ループが所定の数だけ形成されるまで継続される。
【0054】
前記巻回し工程後に、図4及び図5(B)に示すように、前記第1及び第2固定部材57,59の前記中空室部50を押し潰すことで塑性変形させる塑性変形工程を実行する。この塑性変形工程は、例えば、前記第1及び第2固定部材57,59のそれぞれをプレス加工機(不図示)のパンチとダイの間にセットしてプレス加工処理を施すことで行われる。
【0055】
上述の手順で製造された実施例2に係るヘリカルアイソレータ51によれば、前記塑性変形工程において、前記ワイヤロープ17を上方及び下方から挟圧する前記突出部55が潰れて、当該ワイヤロープ17の螺旋条部分17bの狭間17cにしっかりと食い込む。その結果、前記突出部55が前記螺旋条部分17bと相互に一体化することによって、前記第1及び第2固定部材57,59に前記ワイヤロープ17を確実に挟圧結合する。
【0056】
前記一体化部61によって、前記ワイヤロープ17と塑性変形後の支持穴53の内壁部分との接触面積が飛躍的に増大し、これに伴って前記両者間の摩擦力も飛躍的に増大する。その結果、前記支持穴53の内壁部分で前記ワイヤロープ17を確実に挟圧結合することができる。
【0057】
従って、簡素な製造工程をもってワイヤロープ17を支持穴の部分で確実に固定可能なヘリカルアイソレータを得ることができる。
[その他]
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うヘリカルアイソレータもまた、本発明における技術的範囲の射程に包含される。
【0058】
例えば、本発明の実施例中、塑性変形前の前記第1及び第2固定部材13,15の断面形状は、楕円形状である例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。塑性変形前の前記第1及び第2固定部材13,15の断面形状として、例えば、円形形状、矩形形状、または楕円の長軸方向中央部分で相対する円弧が直線に置き換わった扁平楕円形状など、いかなるものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 実施例1に係るヘリカルアイソレータ
13 実施例1に係る第1固定部材(固定部材)
15 実施例1に係る第2固定部材(固定部材)
17 ワイヤロープ
19a 実施例1に係る塑性変形前の支持穴
19 実施例1に係る塑性変形後の支持穴
29 塑性変形部
30 実施例1に係る中空室部(中空断面)
50 実施例2に係る中空室部(中空断面)
51 実施例2に係るヘリカルアイソレータ
53a 実施例2に係る塑性変形前の支持穴
53 実施例2に係る塑性変形後の支持穴
55 突出部
57 実施例2に係る第1固定部材(固定部材)
59 実施例2に係る第2固定部材(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する壁部間を貫通する支持穴が複数連設され少なくとも塑性変形前は中空断面の複数の固定部材と、
前記各支持穴を貫通しながら螺旋状に巻き回されたワイヤロープと、
を備えたヘリカルアイソレータであって、
前記ワイヤロープは、前記固定部材の中空断面の塑性変形により該固定部材に挟圧結合されている、
ことを特徴とするヘリカルアイソレータ。
【請求項2】
対向する壁部間を貫通する支持穴が複数連設され少なくとも塑性変形前は中空断面の複数の固定部材と、
前記各支持穴を貫通しながら螺旋状に巻き回されたワイヤロープと、
を備えたヘリカルアイソレータの製造方法であって、
前記固定部材の前記支持穴に前記ワイヤロープを貫通させて螺旋状に巻き回す巻回し工程と、
前記巻回し工程後に前記固定部材の前記中空断面を押し潰すことで塑性変形させる塑性変形工程とを備え、
前記ワイヤロープは、前記塑性変形工程によって前記固定部材に挟圧結合されている、
ことを特徴とするヘリカルアイソレータの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のヘリカルアイソレータの製造方法であって、
前記塑性変形前の前記固定部材は、前記ワイヤロープの側を指向して突出する突出部を前記中空断面の内壁に有する、
ことを特徴とするヘリカルアイソレータの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のヘリカルアイソレータであって、
前記塑性変形前の前記固定部材は、断面楕円形状であり、
前記支持穴は、前記固定部材の長径方向両壁部間を貫通するように形成されている、
ことを特徴とするヘリカルアイソレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64244(P2011−64244A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214295(P2009−214295)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000236665)不二ラテックス株式会社 (82)
【Fターム(参考)】