説明

ベシクル組成物およびその製造方法並びにベシクル組成物配合化粧料

【課題】
べたつきがなくさっぱりとした感触でありながら、安定性に優れ、薬剤や美容成分等の有効成分を肌に効果的に浸透させ、優れた肌への効果をもたらすことのできるベシクルの安定性を高める技術を提供すること。
【解決手段】
リン脂質、ショ糖脂肪酸エステルおよびアシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質の1種又は2種以上と、水溶性高分子とを含有するベシクル組成物であって、ベシクル形成の際に水溶性高分子を存在せしめ、かつ高圧処理することにより得られることを特徴とするベシクル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル組成物およびその製造方法並びにそのベシクル組成物配合化粧料に関し、更に詳細には、ベシクル形成時にベシクルの膜形成物質と水溶性高分子を存在せしめると共に、高圧処理することにより得られるベシクル組成物およびその製造方法並びにそのベシクル組成物配合化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤の多層膜からなるベシクルは、その膜間に薬剤や美容成分などの有効成分を内包することが可能なため、生体への有効成分の担持体として従来より化粧品等として利用されてきた。
【0003】
このベシクルは通常、ベシクル主成分と目的薬剤を溶媒に分散した後、超音波処理することによって調製されていた。しかしながら、ベシクル本体が界面活性剤から構成されるため、ベシクルそのものの安定性は界面活性剤のもつ分子間力に頼るものであった。そのためベシクルは外的環境の影響を受けやすく、安定性に優れるベシクルの調製が望まれていた。
【0004】
ベシクルの安定性を上げるための技術としては、ベシクルの調製時に、特殊な界面活性剤を利用する方法(特許文献1)、種々の界面活性剤を複合的に利用する方法(特許文献2)、調製後のベシクルの外相部に水溶性高分子を大量に添加する方法(特許文献3)等が知られていた。
【0005】
しかしながら、種々の界面活性剤を複合的に利用するだけではまだ安定性に問題があり、また、外相部に高分子を添加する方法は、外相部の高分子特有のべとつきがある等、感触面での問題があった。またさらに、ベシクル自体が界面活性剤であるために起こる現象として、これを配合した製品自体の系の安定性が悪くなるといった問題もあった。
【特許文献1】特開2006−124378号公報
【特許文献2】特開平7−285827号公報
【特許文献3】特開2001−342108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、使用に際してのべたつき等感触面での問題がなく、また、系の安定性を保つことができ、薬剤や美容成分等の有効成分を効果的に浸透させ肌への高い効果をもたらすことのできるベシクルの安定性を高める技術の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため研究を行った結果、ベシクル形成時にベシクルの膜形成物質と共に水溶性高分子を存在せしめ、更に高圧処理して調製し、高分子をベシクル内に存在させることにより、ベシクルの安定性が向上し、使用時のべたつきがなく、肌に浸透していく感じ(浸透感)や肌がしっとりして保湿される感じ(保湿感)、肌への美容効果に優れたものが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステルおよびアシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質の1種又は2種以上と、水溶性高分子とを含有するベシクル組成物であって、ベシクル形成の際にベシクルの膜形成物質と共に水溶性高分子を存在せしめ、かつ高圧処理することにより得られることを特徴とするベシクル組成物である。
【0009】
また本発明は、前記のベシクル組成物を配合するベシクル組成物配合化粧料である。
【0010】
更に本発明は、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステルおよびアシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質の1種又は2種以上と水溶性高分子とを水性媒体中で高圧処理することを特徴とするベシクル組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のベシクル組成物は、電解質存在下や、ベシクルの外相の粘度が低いといったベシクルの安定性には劣悪な外的環境の下でも安定に存在することが可能である。
【0012】
従って本発明のベシクル組成物およびこれを配合した化粧料は、安定性、特に低粘度領域における安定性に優れ、肌への適用時は、べたつかずさっぱりとした良好な感触でありながら、薬剤等の有効成分は内在して保持される為、その貯留性(長期安定性)、徐放性に優れ、肌への浸透感や保湿感、肌への美容効果にも優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のベシクル組成物は、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、アシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質と水溶性高分子とを含有する。
【0014】
この膜形成物質のリン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、アシルアミノ酸金属塩としては、いずれも特に制限はないが、リン脂質としては、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。また、ショ糖脂肪酸エステルは、C12〜C22の炭素鎖をもつショ糖脂肪酸エステルが好ましく、具体的にはショ糖ステアリン酸、ショ糖ラウリン酸等が挙げられる。また、アシルアミノ酸金属塩は、C12〜C22の炭素鎖をもつアシルアミノ酸金属塩が好ましく、具体的にはN−ラウロイル−Lグルタミン酸ナトリウム、N−ステアロイル−Lグルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。これら膜形成物質は1種又は2種以上用いることができ、これらの中でも特にリン脂質が肌への親和性の高さから好ましい。
【0015】
上記の膜形成物質の市販品としては、水素添加大豆リン脂質(ワイエムシイ社製)、DKエステルS−L18A、同S−160等のDKエステルシリーズ(第一工業製薬社製)アミソフトHS−11P等のアミソフトシリーズ(味の素社製)等を挙げることができる。また膜形成物質の配合量は、0.01〜5質量%(以下、単に%で示す)が好ましく、0.1〜2%が特に好ましい。この範囲であれば、界面活性剤特有のべたつきが軽減されベシクルの効果が発揮される。
【0016】
一方、本発明の水溶性高分子としては、一般に化粧料や皮膚外用剤に用いられるものであれば、特に制限はなく、植物や微生物等の天然由来であるか、合成、或いは半合成であるかなど、その由来や製法も特に問わず、キサンタンガム、1,3−1,6−βグルカン、カラギーナン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸アミド等のアクリル酸系高分子、ヒアルロン酸、コラーゲン、ポリメタクロイルオキシエチルホスホコリン等のリン脂質ポリマー等が用いられる。このうちより好ましいものとしては、キサンタンガム、1,3−1,6−βグルカン、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン脂質ポリマーが挙げられる。
【0017】
上記水溶性高分子の市販品としては、GRINSTED XANTHAN CLEAR80(DANISCO社製)、CARBOPOL940、同1342(グットリッチケミカル社製)、セピゲル305(SEPPIC社製)、LIPIDURE HM−600(日本油脂社製)等を挙げることができる。この水溶性高分子の配合量は、0.001〜1%が好ましい。
【0018】
また、上記膜形成物質と水溶性高分子の配合は、1:0.005〜1:1の質量比の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、ベシクルの安定性が十分に保たれべたつきも少なく好ましい。
【0019】
本発明のベシクル組成物中に含有させる有効成分としては、美白、保湿、抗炎症、老化防止等、肌に対して有効に働くものであれば特に制限はないが、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、アルコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸ナトリウム等のアスコルビン酸類、アルブチン等の美白剤、ビタミン類、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、グリシン、セリン、アルギニン等のアミノ酸類、ピロリドンカルボン酸、乳酸、クエン酸等の有機酸類、尿素、糖等のNMF成分や保湿成分等が挙げられる。
【0020】
さらに、本発明のベシクル組成物は、ベシクル形成に水性媒体である水、低級アルコール、多価アルコール等の水溶性成分を適宜配合することができ、その他にも、例えば、油剤、界面活性剤、粉体(顔料を含む)、着色料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0021】
これらの任意成分のうち、油剤としては、動物油、植物油、合成油等、その起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等、その性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0022】
また界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
本発明のベシクル組成物は、上記成分を用いて調製するものであるが、ベシクル調製時に、ベシクルの膜形成物質と共に水溶性高分子を存在させ、これらを高圧処理し、ベシクル中に高分子を内在させる。
【0024】
具体的には、ベシクルの膜形成物質と水溶性高分子とを含有する混合液を、加圧下でチャンバー内の流路に導入し、該混合液を高圧下、該流路内の平面部に衝突させるか、あるいは高圧下該流路内で該混合物同士を衝突させることにより分散させる。このようにして高圧処理することにより、ベシクル組成物自体の安定化および本ベシクル組成物を利用したベシクル組成物配合化粧料の安定性を高めることができる。
【0025】
上記高圧処理方法は、例えば特開2000−26240等に記載されているが、これに用いる機器としては、高いせん断力と衝撃力を用いることで分散と粉砕を行う一般的な高圧ホモジナイザー構造を有するものであればよく、圧力調整が可能で、70Mpa以上の圧力の付与が可能な超高圧ホモジナイザーを使用することができる。
【0026】
上記超高圧ホモジナイザーとしては、マイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製)、アルティマイザー((株)スギノマシン製)等を挙げることができる。
【0027】
上記高圧処理により、本発明ベシクル組成物を製造する際の圧力は、70ないし300MPa、好ましくは、100ないし200MPa程度であり、温度および時間は、機器の種類や大きさ、調製するベシクル組成物や化粧料の量によって適宜設定できる。
【0028】
かくして得られたベシクル組成物は、次のような優れた性質を有するものである。
【0029】
本発明のベシクル組成物は、水溶性高分子との複合化により、電解質存在下や、ベシクルの外相の粘度が低いといったベシクルの安定性には劣悪な外的環境の下でも安定に存在することが可能であり、安定性、特に低粘度領域における安定性に優れ、化粧水のような低粘度製剤の製剤化が可能である。
本発明の方法で得られるベシクル組成物は、適用時は、べたつかずさっぱりとした感触でありながら、有効成分はベシクルに内在して保持される為、その貯留性(長期安定性)、徐放性に優れ、肌への浸透感や保湿感、肌への美容効果も高いものとなる。
【0030】
従って、薬剤や美容成分等の有効成分を角層内に浸透、貯留し、徐々に放出させ、有効成分の効果を持続させ、肌へのより高い効果をもたらすことを目的とする化粧品や皮膚外用剤として有利に使用しうるものである。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0032】
実 施 例 1
下記表1に示す処方および下記製法により、ベシクル組成物を調製した。得られたベシクル組成物について、安定性、有効成分の貯留性(保持率)、粘度、べたつきのなさ、浸透感、保湿感を下記方法及び判定基準で評価した。この結果も表1に示す。
【0033】
<安定性>
(評価方法)
試料調製後、40℃恒温槽に1ケ月保管し、透過型電子顕微鏡でベシクルの存在、形を観察した。
(判定基準)
◎:ベシクルの存在が確認された。
○:ベシクルの存在が確認されたが僅かに変形しているものもある。
△:ベシクルがかなり変形しているのが確認された。
×:ベシクルの存在が確認されなかった。
【0034】
<有効成分の貯留性(保持率)>
(評価方法)
有効成分の貯留性として、実施例1の試料における有効成分であるリン酸L−アスコルビルマグネシウム(VC−PMG)のベシクル組成物に内包されているVC−PMG量を調製当初と、40℃で1ヶ月保存した後とで比較した。
調製当初のベシクル組成物に内包されているVC−PMG量を100%とした場合の40℃で1ヶ月保存した後のそれの量で表し、有効成分の貯留性(保持率)とした。
(判定基準)
◎:80%以上保持
○:70%〜80%未満保持
△:60〜70%未満保持
×:60%未満
【0035】
<粘度>
(測定方法)
試料調製後25℃恒温槽に入れ、翌日B型粘度計で測定した。
【0036】
<べたつきのなさ>
(評価方法)
15名の化粧品専門パネルを用い、洗顔後、試料を顔に直接適当量塗布し、塗布直後のべたつきのなさを評価してもらった。
(判定基準)
◎:12名以上がべたつかないと判定
○:8〜11名以上がべたつかないと判定
△:5〜7名がべたつかないと判定
×:べたつかないと判定した人が4名以下
【0037】
<浸透感>
(評価方法)
15名の化粧品専門パネルを用い、洗顔後、試料を顔に直接適当量塗布し、塗布30分後の肌に試料が浸透していく感じ(浸透感)を評価してもらった。
(判定基準)
◎:12名以上が浸透感を感じたと判定
○:8〜11名以上が浸透感を感じたと判定
△:5〜7名が浸透感を感じたと判定
×:浸透感を感じたと判定した人が4名以下
【0038】
<保湿感>
(評価方法)
15名の化粧品専門パネルを用い、洗顔後、試料を顔に直接適当量塗布し、塗布30分後の肌がしっとりと保湿された感じ(保湿感)を評価してもらった。
(判定基準)
◎:12名以上が保湿感を感じたと判定
○:8〜11名が保湿感を感じたと判定
△:5〜7名が保湿感を感じたと判定
×:保湿感を感じたと判定した人が4名以下
【0039】
【表1】

【0040】
( 製 法 )
製法イ〜ハにおいて、成分Bは予めホモジナイザー※1で分散して調製する。
製 法 イ:
1.Aをホモジナイザー※1で分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃、3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4を高圧乳化装置マイクロフルイダイザー※2で分散する。
【0041】
製 法 ロ(水溶性高分子をベシクル調製後に配合):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
3.2を40℃まで徐冷する。
4.3を高圧乳化装置マイクロフルイダイザーで分散する。
5.4にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
【0042】
製 法 ハ(通常の乳化装置で調製):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4をホモジナイザーで分散する。
※1および2はいずれもみづほ工業社製
【0043】
表1から明らかなように、本発明のベシクル組成物は、非常に粘度が低いにも関わらずベシクルの安定性が高く有効成分であるリン酸L−アスコルビルマグネシウムの保持率も良好なものであった。また、べたつきもなく肌への浸透感、保湿感にも優れていた。
【0044】
実 施 例 2
下記表2に示す処方および下記製法で、ベシクル組成物を調製した。得られたベシクル組成物について、実施例1と同様にしてそのベシクルの安定性、有効成分の貯留性(保持率)、粘度、べたつきのなさ、浸透感、保湿感を評価した。この結果も表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
( 製 法 )
製法二〜ヘにおいて、成分Bは予めホモジナイザー※1で分散して調製する。
製 法 二:
1.Aをホモジナイザー※1で分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加え高圧乳化装置アルティマイザー※3で分散する(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃、3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4をホモジナイザーで分散する。
【0047】
製 法 ホ(水溶性高分子をベシクル調製後に配合):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
3.2を40℃まで徐冷する。
4.3を高圧乳化装置アルティマイザーで分散する。
5.4にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
【0048】
製 法 ヘ(通常の乳化装置で調製):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4をホモジナイザーで分散する。
※3 スギノマシン社製
【0049】
表2から明らかなように、本発明のベシクル組成物は、粘度が低いにも関わらずベシクルの安定性が高く有効成分であるリン酸L−アスコルビルマグネシウムの貯留性(保持率)も良好なものであった。また、べたつきもなく肌への浸透感、保湿感にも優れていた。
【0050】
実 施 例 3
下記表3に示す処方および下記製法により、ベシクル組成物配合化粧料を調製した。得られたベシクル組成物配合化粧料について、安定性の評価方法において保管温度を40℃から50℃に代えた以外は実施例1と同様にして、安定性、有効成分の貯留性(保持率)、粘度、べたつきのなさ、浸透感、保湿感を評価した。この結果も表3に示す。
【0051】

【表3】

【0052】
( 製 法 )
製法ト〜リにおいて、成分Bは予めホモジナイザー※1で分散して調製する。
製 法 ト:
1.Aをホモジナイザー※1で分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4を高圧乳化装置マイクロフルイダイザー※2で分散し、ベシクル組成物を調製す
る。
6.5に更にD〜Hを加えホモジナイザーで分散する。

【0053】
製 法 チ(水溶性高分子をベシクル調製後に配合):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にCを加えホモジナイザーで分散する(75℃ 3分間)。
3.2を40℃まで徐冷する。
4.3を高圧乳化装置マイクロフルイダイザーで分散する。
5.4にBを加えホモジナイザーで分散する。(75℃ 2分間)。
6.5に更にD〜Hを加えホモジナイザーで分散する。

【0054】
製 法 リ(通常の乳化装置で調製):
1.Aをホモジナイザーで分散する(75℃ 2分間)。
2.1にBを加えホモジナイザーで分散する。(75℃ 2分間)。
3.2にCを加えホモジナイザーで分散する。(75℃ 3分間)。
4.3を40℃まで徐冷する。
5.4をホモジナイザーで分散する。
6.5に更にD〜Hを加えホモジナイザーで分散する。
【0055】
表3から明らかなように、本発明のベシクル組成物配合化粧料は、粘度が低いにも関わらず安定性が高く有効成分であるリン酸L−アスコルビルマグネシウムの保持率も良好なものであった。また、べたつきもなくさっぱりとした感触で、肌への浸透感、保湿感にも優れる化粧品として良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のベシクル組成物は、電解質存在下や、ベシクル外相の粘度が低い環境下でも安定性に優れるものであるため、適用時は、べたつかずさっぱりとした良好な感触でありながら、有効成分は内在して保持される為、貯留性(長期安定性)、徐放性に優れたものである。
【0057】
従って、薬剤や美容成分等の有効成分を角層内に浸透、貯留し、徐々に放出させることができる為、有効成分の効果を持続させ、肌へのより高い効果をもたらすことを目的とする化粧品や皮膚外用剤として有利に使用しうるものである。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質、ショ糖脂肪酸エステルおよびアシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質の1種又は2種以上と、水溶性高分子とを含有するベシクル組成物であって、ベシクル形成の際に水溶性高分子を存在せしめ、かつ高圧処理することにより得られることを特徴とするベシクル組成物。
【請求項2】
水溶性高分子が、キサンタンガム、1,3−1,6−βグルカン、アクリル酸系高分子、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン脂質ポリマーから選ばれるものである請求項第1項記載のベシクル組成物。
【請求項3】
ベシクルの膜形成物質の配合量が、0.01ないし5質量%である請求項第1項または第2項記載のベシクル組成物。
【請求項4】
水溶性高分子の配合量が、0.001ないし1質量%である請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載のベシクル組成物。
【請求項5】
ベシクルの膜形成物質と水溶性高分子の配合が、それらの質量比で、1:0.005〜1:1である請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載のベシクル組成物。
【請求項6】
高圧処理が、70ないし300MPaの圧力で行われる請求項第1項ないし第5項の何れかの項記載のベシクル組成物。
【請求項7】
請求項第1項ないし第6項のいずれかの項記載のベシクル組成物を配合するベシクル組成物配合化粧料。
【請求項8】
リン脂質、ショ糖脂肪酸エステルおよびアシルアミノ酸金属塩から選ばれるベシクルの膜形成物質の1種又は2種以上と水溶性高分子とを水性媒体中で高圧処理することを特徴とするベシクル組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−94808(P2008−94808A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281635(P2006−281635)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】