説明

ベルト、及びその製造方法

【課題】発生ガスを金型外に効果的に排除し、かつ製品の局部的な膨らみの発生を回避すると共に、金型からの製品の取外し作業の簡素化が図れるベルト及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂溶液を円筒状芯体1表面に塗布して樹脂塗膜を形成する塗膜形成工程と、樹脂塗膜を加熱して熱硬化性樹脂皮膜7を形成する熱硬化性樹脂皮膜形成工程と、熱硬化性樹脂皮膜7を円筒状芯体1から取外す工程とを有するベルトの製造方法において、円筒状芯体1の軸方向両端には、円筒状芯体1の外周面を軸方向に移動可能な筒状のスライド部材2を配置し、円筒状芯体1の軸方向両端には軸方向に伸びるガス通路3を設けているので、熱硬化性樹脂皮膜形成工程では、スライド部材2を軸方向に移動させることにより、熱硬化性樹脂塗膜7を加熱した際に発生するガスをガス通路3により外部へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のベルトの製造方法には、円筒パイプ金型の内面塗装法、外面塗装法、円筒棒ディッピング法などがある。
これらの塗装法は、必要寸法精度、樹脂物性により選択するが、円筒型ベルト内面粗さや高い寸法精度が必要な場合は、外面塗装法が有利である。
そして、円筒パイプ金型外面塗装法では、円筒パイプを回転させながらディスペンサなどで外周部に樹脂を塗装した後、乾燥、焼成を行う。
しかし、焼成時(樹脂熱硬化時)にガスが発生する。
この時、発生ガスを製品外に排除しないと、製品の局部的な膨らみを発生させ、不具合を惹起させる。
【0003】
従来は、この種発生ガス対策としては、塗装前に円筒パイプ表面に離型剤を塗り、樹脂と円筒パイプの密着力を下げて、隙間から自然にガス抜きを行っている。
しかし、この方法では樹脂と円筒パイプの密着力(主に線膨張係数による収縮差に起因)が大きくなった場合や、発生ガスの量が多量な場合は、充分な効果が得られず、製品に局部的な膨らみが発生するという不具合を確実に防止することが出来なかった。
また、この種円筒パイプ金型外面塗装法では、円筒パイプを回転させながらディスペンサなどで外周部に樹脂を塗装した後、乾燥、焼成を行う。
そして、焼成時に加熱して、樹脂熱硬化反応する。
【0004】
その後、常温まで冷却して離型時するが、樹脂と円筒パイプ金型材の線膨張係数の差により、樹脂は金型に密着して、離型が困難であった。
従来は、塗装前に、製品部に離型剤を塗布して、樹脂と金型の密着性を下げ、焼成冷却後に、一方の端部を切断除去して、樹脂と金型の間にエアを注入し、樹脂を金型より浮かして、離型を行っている。
しかし、この作業は樹脂と金型の密着度合いにより、エアの入り方が部位によりばらつき、自動化が困難であり人手で行うしかなかった。
このため、この種の製造方法は、コストアップになるばかりでなく、作業性が悪い為、製品破損する可能性も高く、品質的も安定しない問題を招来した。
【特許文献1】特開2006−240099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、発生ガスを製品外に効果的に排除し、製品の局部的な膨らみの発生を回避すると共に、金型からの製品の取外し作業の簡素化が図れるベルト、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のベルトの製造方法は、熱硬化性樹脂溶液を円筒状芯体表面に塗布して樹脂塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記樹脂塗膜を加熱して熱硬化性樹脂皮膜を形成する熱硬化性樹脂皮膜形成工程と、前記熱硬化性樹脂皮膜を前記円筒状芯体から取外す取外し工程とを有するベルトの製造方法において、前記円筒状芯体の軸方向両端には、前記円筒状芯体の外周面を軸方向に移動可能に配置された筒状のスライド部材が配置され、前記円筒状芯体の軸方向両端には軸方向に伸びるガス通路が設けられ、前記熱硬化性樹脂皮膜形成工程において前記スライド部材を軸方向に移動させることにより、前記熱硬化性樹脂塗膜を加熱した際に発生するガスが前記ガス通路を介して外部に排出可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明のベルトの製造方法によれば、製品の局部的な膨らみの発生を回避することが出来る。
【0008】
また、請求項2記載の発明のベルトの製造方法によれば、円筒状芯体(金型)からの製品(ベルト)の取外しが容易である。
更に、請求項3記載の発明のベルトの製造方法によれば、製品を過大に伸ばす事が無いため、製品の品質が安定する。
【0009】
更に、請求項4記載の発明のベルトの製造方法によれば、円筒状芯体(金型)からの製品(ベルト)の取外しが容易であるため、製品の品質が安定する。
更に、請求項5記載の発明のベルトによれば、製品の局部的な膨らみの無い、安定した品質の製品とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明に係るベルトの製造方法に使用される金型を示した断面図であり、図2は図1の側面図である。
また、図3は、円筒状芯体1の軸方向両端に、軸方向移動可能に挿着されたスライド部材2を、図1の状態から、円筒状芯体1の軸方向端部側に移動させた状態を示した図である。
また、図4は、図1に示した金型表面に熱硬化性樹脂塗膜6を形成した状態を示した断面図である。
更に、図5は、図4のスライド部材2を円筒状芯体1の軸方向端部側に移動させた状態で加熱して、熱硬化性樹脂皮膜7を形成した状態を示した図である。
また、図6は、熱硬化性樹脂皮膜7の軸方向一端側を切断して、この熱硬化性樹脂皮膜7をスライド部材2と共に円筒状芯体1から引抜く状態を示した図である。
更に図7は、熱硬化性樹脂皮膜7をスライド部材2と共に円筒状芯体1から完全に引抜いた状態を示す図である。
【0011】
本発明に係る使用される成型金型は、図1乃至図3に示す様に、金属材製の円筒状芯体1の軸方向両端には、この円筒状芯体1の外周面を軸方向に移動可能に配置された筒状のスライド部材2が配置されている。
そして、円筒状芯体1の軸方向両端には軸方向に伸びるガス通路3が円周方向に4本均等に設けられている。
このガス通路3は、一端が円筒状芯体1の軸方向端部に開口し、他端は、図3に示す様に、スライド部材2が端部側に移動した際に生ずる、スライド部材2端部と円筒状芯体1端部との間隙8に開口している。
【0012】
また、円筒状芯体1の軸方向両端には、スライド部材2の移動を規制するための、ストッパー部材が、取外し可能に円周上4箇所等配に設けられている。
そして、本発明は、この様な構造の金型を用いて次のように製造される。
すなわち、まず、熱硬化性樹脂溶液を円筒状芯体1表面に塗布して樹脂塗膜6を形成する塗膜形成工程と、樹脂塗膜6を加熱して熱硬化性樹脂皮膜7を形成する熱硬化性樹脂皮膜7形成工程と、この熱硬化性樹脂皮膜7形成工程において、スライド部材2を軸方向に移動させることにより、熱硬化性樹脂塗膜6を加熱した際に発生するガスが前記ガス通路3を介して外部に排出可能な状態とする工程を含んでいる。
【0013】
熱硬化性樹脂としては、ポリアミドイミド、ポリイミド等のポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂等が選択的に用いられる。
更に、スライド部材2の外周面には、アンカー溝4が設けられている。
そして、このアンカー溝4にも樹脂塗膜6が入り込んでいる。
【0014】
本発明の製造方法においては、まず、図4に示す様に、円筒状芯体1を回転しながら、その外表面に樹脂塗膜を均一な厚さに塗布する。
ついで、図5に示す様に、スライド部材2を移動させ、樹脂皮膜7と円筒状芯体1との間に溜まったガスが、ガス通路3を介して、容易に外部に排出出来る状態とした後、過熱硬化する。
そして、樹脂皮膜7が完全に硬化した後、円筒状芯体1を回転させ、樹脂皮膜7の一端を切断して、図6に示す様に、スライド部材2と共に樹脂皮膜7を引抜く。
この際、ガス通路3から気体を吹き込みつつ、これらの作業を行うことにより、作業が容易に行える。
また、この際、図上下方のストッパー部材5は、円筒状芯体1から取外してある。
更に、図7に示す様に、円筒状芯体1から完全に抜取った後に、樹脂皮膜7の他端(図上下方)をスライド部材2から切除することにより、目的とするベルトが得られる。
【0015】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るベルトの製造方法に使用される金型を示した断面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の状態から、スライド部材を円筒状芯体の軸方向端部側に移動させた状態を示した図である。
【図4】図1に示した金型表面に熱硬化性樹脂塗膜を形成した状態を示した断面図である。
【図5】硬化性樹脂皮膜を形成した状態を示した断面図である。
【図6】熱硬化性樹脂皮膜の軸方向一端側を切断して、この熱硬化性樹脂皮膜をスライド部材と共に円筒状芯体から引抜く状態を示した断面図である。
【図7】熱硬化性樹脂皮膜をスライド部材と共に円筒状芯体から完全に引抜いた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 円筒状芯体
2 スライド部材
3 ガス通路
4 アンカー溝
5 ストッパー部材
6 樹脂塗膜
7 樹脂皮膜
8 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂溶液を円筒状芯体(1)表面に塗布して樹脂塗膜(6)を形成する塗膜形成工程と、前記樹脂塗膜(6)を加熱して熱硬化性樹脂皮膜(7)を形成する熱硬化性樹脂皮膜(7)形成工程と、前記熱硬化性樹脂皮膜(7)を前記円筒状芯体(1)から取外す取外し工程とを有するベルトの製造方法において、前記円筒状芯体(1)の軸方向両端には、前記円筒状芯体(1)の外周面を軸方向に移動可能に配置された筒状のスライド部材(2)が配置され、前記円筒状芯体(1)の軸方向両端には軸方向に伸びるガス通路(3)が設けられ、前記熱硬化性樹脂皮膜(7)形成工程において前記スライド部材(2)を軸方向に移動させることにより、前記熱硬化性樹脂塗膜(6)を加熱した際に発生するガスが前記ガス通路(3)を介して外部に排出可能としたベルトの製造方法。
【請求項2】
前記スライド部材(2)の外周面にアンカー溝(4)が設けられていることを特徴とする請求項1記載のベルトの製造方法。
【請求項3】
前記円筒状芯体(1)の軸方向両端に、取外し可能なストッパー部材(5)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のベルトの製造方法。
【請求項4】
前記スライド部材(2)を前記円筒状芯体(1)の端部側に移動させた後、前記ガス通路(3)から気体を吹き込み、ついで、円筒状芯体(1)を回転させながら前記熱硬化性樹脂皮膜(7)の一端を切断し、その後、一方のスライド部材(2)と共に前記熱硬化性樹脂皮膜(7)を円筒状芯体(1)から取外すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−284818(P2008−284818A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133232(P2007−133232)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】