説明

ベルトクリーニング装置および画像形成装置

【課題】 残留トナーを除去する除去効率が優れるとともに、クリーニング手段に付着した紙粉、タルク、カオリンなどの残留トナーよりも除去しにくい異物を、クリーニング手段から効率よく除去することができ、長期間にわたって高品位の画像を形成することを可能にするベルトクリーニング装置を提供する。
【解決手段】 ベルトクリーニング装置60は、クリーニングブレード601が中間転写ベルト311の外周面に当接して残留トナーを除去するとき、電源605が電極部材604に交流電圧を印加して、ブレード支持部材603を介して中間転写ベルト311を振動させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトクリーニング装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、静電潜像保持体上の静電潜像をトナーで現像してトナー像を得て、このトナー像を記録媒体へ転写して記録媒体上にトナー像を形成する方法が採用されている。画像形成装置における転写方法としては、静電潜像保持体上に形成されたトナー像が転写されて、トナー像を担持搬送するトナー像担持部材に対して、記録媒体を介して対向する転写手段により、トナー像を静電気力にて移動させることで、トナー像を記録媒体へ転写させる転写方法が使用されている。そして、記録媒体へのトナー像の転写後にトナー像担持部材上に残留した残留トナーを除去するために、クリーニング手段が設けられている。
【0003】
このような画像形成装置におけるクリーニング方法としては、残留トナーを担持搬送するトナー像担持部材にクリーニング手段を接触させてトナー像担持部材から残留トナーを機械的に掻き落としたり、クリーニング手段に電圧を印加することによって生じる静電気力にて残留トナーをトナー像担持部材から移動させることで、トナー像担持部材から残留トナーを除去するクリーニング方法が使用されている。
【0004】
このようなクリーニング方法において、トナー像担持部材から残留トナーを除去するためには、トナー像担持部材に対するトナーの付着力が低いことが望ましい。特に、球形度の高いトナーが残留トナーとしてトナー像担持部材上に残留した場合、クリーニング手段をトナー像担持部材に接触させて除去しようとしても、効率よく残留トナーを掻き落として除去するのが困難なので、トナー像担持部材に対するトナーの付着力を低減させることが重要である。
【0005】
トナー像担持部材であるトナー像担持ベルトに対するトナーの付着力を低減させることが可能な画像形成装置が、特許文献1〜3に開示されている。特許文献1に開示される画像形成装置によれば、静電潜像保持体である感光体ドラム上に担持されるトナー像を記録媒体である記録紙へ転写する転写部において、クリーニング手段であるクリーニングバイアスローラに対向させて転写ベルトの内面にピエゾ素子を接触させて配置し、転写ベルトにピエゾ素子による機械的振動を与えて、転写ベルトとトナーとの付着力を低下させることができる。
【0006】
また、特許文献2に開示される画像形成装置によれば、トナー像担持ベルトである中間転写ベルトを張架する支持ローラに20Hz以上の高周波振動を印加して、中間転写ベルト上に残留した残留トナーを振動させ、中間転写ベルトと残留トナーとの付着力を低下させることによって、前記支持ローラと対向して配置されるクリーニングファーブラシによるクリーニング性を向上させることができる。
【0007】
また、特許文献3に開示される画像形成装置によれば、感光体ドラム上に担持されるトナー像を記録紙へ転写するトナー像担持ベルトである中間転写ベルトにおいて、中間転写ベルトの内面でクリーニング手段であるクリーニングブレードに対向する金属ローラ端部の小径部に超音波発生器を圧接させ、中間転写ベルトに超音波発生器による機械的振動を与えて、中間転写ベルトとトナーとの付着力を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−112267号公報
【特許文献2】特開2005−338141号公報
【特許文献3】特開2007−47587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示される画像形成装置では、ピエゾ素子などの超音波振動子を転写ベルトに摺擦させるため、ピエゾ素子と転写ベルトとの接触部で摩耗が生じる。このため、転写ベルト内面と転写電極の接触抵抗が変動して転写電界が不均一になり、転写効率が低下して、記録紙上に均一で高品位な画像を形成することができない。このようなピエゾ素子によるトナーの付着力を低減させる技術を、トナー像担持部材である中間転写ベルトから残留トナーを除去する箇所に適用したとしても、中間転写ベルトにおけるピエゾ素子との接触部で不均一な摩耗が生じるので、ピエゾ素子によって中間転写ベルトに付与される振動が不均一なものとなり、ピエゾ素子による中間転写ベルトに対するトナーの付着力低減効果が低下する。そのため、中間転写ベルトから残留トナーを除去する除去効率に優れたものとはならず、記録紙への転写処理後の中間転写ベルトにトナーが残留してしまい、次の記録紙への画像形成時に残留トナーの影響が発現し、高品位の画像を形成することができなくなる。
【0010】
また、特許文献2に開示される画像形成装置では、中間転写ベルト上に残留した残留トナーのクリーニング性が向上したとしても、クリーニング手段に付着した紙粉、タルク、カオリンなどの残留トナーよりも除去しにくい異物を、クリーニング手段から除去することができない。
【0011】
また、特許文献3に開示される画像形成装置では、超音波発生器を金属ローラ端部の小径部に圧接させて振動させるため、超音波発生器の圧接部で摩耗が生じる。また、金属ローラ端部の小径部に圧接した超音波発生器によって生じた振動は、金属ローラに接触する中間転写ベルトの表面をベルトの幅手方向に伝達するが、金属ローラの半径方向に対応する方向に中間転写ベルトを振動させることができない。そのため、金属ローラ端部の小径部における圧接部で発生した振動の伝達が安定しないとともに、中間転写ベルトを金属ローラの半径方向に対応する方向に振動させることができないので、中間転写ベルトに対するトナーの付着力低減効果が充分なものとは言えない。そのため、中間転写ベルトから残留トナーを除去する除去効率に優れたものとはならず、記録紙への転写処理後の中間転写ベルトにトナーが残留してしまい、次の記録紙への画像形成時に残留トナーの影響が発現し、高品位の画像を形成することができなくなる。
【0012】
したがって本発明の目的は、トナー像を担持搬送するトナー像担持ベルトに対して、トナー像が記録媒体に転写された後にトナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置であって、残留トナーを除去する除去効率が優れるとともに、クリーニング手段に付着した紙粉、タルク、カオリンなどの残留トナーよりも除去しにくい異物を、クリーニング手段から効率よく除去することができ、長期間にわたって高品位の画像を形成することを可能にするベルトクリーニング装置を提供することであり、該ベルトクリーニング装置を備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、複数の支持ローラによって張架されて回転可能に設けられ、トナー像を担持搬送する無端状のトナー像担持ベルトに対して、トナー像が記録媒体に転写された後にトナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置であって、
板状弾性部材で形成されて、前記トナー像担持ベルトの外周面に当接して残留トナーを除去するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードに接触して設けられ、前記クリーニングブレードを支持するブレード支持部材と、
前記ブレード支持部材に対して、所定の間隙を有して対向する電極部材と、
前記電極部材に、所定の周波数を有する交流電圧を印加する電源とを含み、
前記クリーニングブレードが前記トナー像担持ベルトの外周面に当接して残留トナーを除去するとき、前記電源が前記電極部材に交流電圧を印加して、前記ブレード支持部材を振動させることで、前記トナー像担持ベルトを振動させるように構成されることを特徴とするベルトクリーニング装置である。
【0014】
また本発明は、前記電極部材は、前記ブレード支持部材と対向する表面に、絶縁材料からなるコート層が設けられることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記電極部材の前記ブレード支持部材に対する対向方向への曲げ剛性が、前記ブレード支持部材の曲げ剛性よりも高いことを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記電源が前記電極部材に印加する交流電圧の周波数は、20kHz以上であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
複数の支持ローラによって張架されて回転可能に設けられ、トナー像を担持搬送する無端状のトナー像担持ベルトと、
前記トナー像担持ベルトの外周面上に担持されるトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
トナー像が記録媒体に転写された後に前記トナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング手段とを含む画像形成装置であって、
前記ベルトクリーニング手段は、前記ベルトクリーニング装置であることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ベルトクリーニング装置は、トナー像を担持搬送する無端状のトナー像担持ベルトに対して、トナー像が記録媒体に転写された後にトナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去する装置であり、トナー像担持ベルトの外周面に当接するクリーニングブレードと、クリーニングブレードを支持するブレード支持部材と、ブレード支持部材に対して所定の間隙を有して対向する電極部材と、電極部材に交流電圧を印加する電源とを含む。そして、ベルトクリーニング装置では、クリーニングブレードがトナー像担持ベルトの外周面に当接して残留トナーを除去するとき、電源が電極部材に所定の周波数を有する交流電圧を印加する。このように、電極部材に交流電圧が印加されると、電極部材とブレード支持部材との間隙には振動電界が形成され、この振動電界によってブレード支持部材およびブレード支持部材で支持されるクリーニングブレードが振動して、クリーニングブレードが当接するトナー像担持ベルトが振動する。トナー像担持ベルトが振動することによって、トナー像担持ベルト上に残留する残留トナーと、トナー像担持ベルトとの付着力は、トナー自身の質量に起因する慣性力によって低下する。これによって、記録媒体に対する転写処理後に、トナー像担持ベルト上に残留する残留トナーを除去する除去効率に優れ、次の記録媒体への画像形成時に残留トナーの影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0019】
また、従来技術では、超音波振動子をトナー像担持ベルトに接触させて振動させているために、長期間の使用により、超音波振動子とトナー像担持ベルトとの接触部で摩耗が発生するが、本発明のベルトクリーニング装置では、電極部材とブレード支持部材との間隙に発生する振動電界によってトナー像担持ベルトを非接触で振動させるように構成されているので、電極部材、クリーニングブレードおよびトナー像担持ベルトのそれぞれにおいて、長期間にわたって振動に起因する摩耗が発生することはない。そのため、長期間にわたって、記録媒体に対する転写処理後に、トナー像担持ベルト上に残留する残留トナーを除去する除去効率が高い状態で維持され、次の記録媒体への画像形成時に残留トナーの影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0020】
さらに、ベルトクリーニング装置では、クリーニングブレードがトナー像担持ベルトに当接して残留トナーを除去するとき、電極部材とブレード支持部材との間隙に発生する振動電界によってブレード支持部材およびブレード支持部材で支持されるクリーニングブレードが振動するので、クリーニングブレードに付着した紙粉、タルク、カオリンなどの残留トナーよりも除去しにくい異物を、クリーニングブレードから効率よく除去することができる。
【0021】
また本発明によれば、電極部材は、ブレード支持部材と対向する表面に、絶縁材料からなるコート層が設けられる。このように、絶縁材料からなるコート層が電極部材の表面に設けられることによって、ブレード支持部材に対向する部分が導電体で構成されている場合に比べて、電極部材に高い電圧を印加しても、気中放電の発生を防止することができる。そのため、高い電圧を電極部材に印加して、ブレード支持部材と電極部材との間隙に大きな振動電界を発生させることができる。
【0022】
また本発明によれば、電極部材のブレード支持部材に対する対向方向への曲げ剛性が、ブレード支持部材の曲げ剛性よりも高くなるように構成されている。これによって、電極部材とブレード支持部材との間隙に生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材の撓みを抑制しながらブレード支持部材を振動させることができる。また、電極部材が撓む場合には、この撓みによって電極部材とブレード支持部材との間隙幅が小さくなり、気中放電が発生しやすくなる。電極部材の曲げ剛性を高めて電極部材の撓みを抑制することによって、高い電圧を電極部材に印加しても、電極部材とブレード支持部材との間隙幅が小さくなり過ぎるのを防止して、ブレード支持部材を大きく振動させて、トナー像担持ベルトに大きな振動を付与することができる。
【0023】
また本発明によれば、電源が電極部材に印加する交流電圧の周波数は、20kHz以上である。電極部材とブレード支持部材との間隙に発生する振動電界によってブレード支持部材が振動するときに、ブレード支持部材が振動することにより生じる空気振動が、人間の可聴周波数以上となり、動作時の不快感を防止することができる。
【0024】
また本発明によれば、画像形成装置は、本発明に係るベルトクリーニング装置を備える。これによって、画像形成装置は、トナー像担持ベルトのクリーニング不良に基づく画像不良のない高品位の画像を長期的にかつ安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態であるベルトクリーニング装置60の構成を示す図である。
【図3】ブレード支持部材603の振動モードを説明する図である。
【図4】本発明の第2実施形態であるベルトクリーニング装置70の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置1の構成を示す図である。画像形成装置1は、カラー画像を形成可能とするタンデム方式のカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、ネットワークを介して接続されたPC(Personal Computer)等の各種端末装置から送信される画像データや、スキャナ等の原稿読み取り装置によって読み取られた画像データに基づいて、記録媒体となる記録紙に対して、カラー画像またはモノクロ画像を形成するプリンタ機能を有するものである。
【0027】
画像形成装置1は、トナー像形成部20と1次転写部31を有する画像形成ステーション部2と、2次転写ステーション部32と、定着手段4と、用紙供給手段5と、排紙手段6とを含んで構成される。画像形成ステーション部2は、カラー画像情報に含まれるイエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)およびブラック(k)の各色の画像情報に対応するために、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションにわかれている。そして、後述するトナー像担持ベルトである中間転写ベルト311の回転方向に、イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用、ブラック画像用の画像形成ステーションがこの順に並設されている。
【0028】
イエロー画像用、マゼンタ画像用、シアン画像用およびブラック画像用の4つの画像形成ステーションは、それぞれ実質的に同一の構成を有しており、各色に対応する画像データに基づいて、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの画像を形成して、中間転写ベルト311上で重ね合わせて4色のトナーからなる画像を形成し、2次転写ステーション部32で記録紙上にトナー像を転写する。そして、記録紙上のトナー像を定着手段4で加熱加圧することにより、記録紙上にフルカラー画像を形成する。
【0029】
画像形成ステーション部2を構成する各部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0030】
画像形成ステーション部2は、トナー像形成部20と1次転写部31を有する。トナー像形成部20は、感光体21と、帯電手段22と、露光ユニット23と、現像手段24と、クリーナ25とを含む。帯電手段22、現像手段24およびクリーナ25は、感光体21の回転方向まわりに、この順序で配置される。
【0031】
感光体21は、OPC(Organic Photoconductor;有機光導電体)などの感光性材料を表面に有する略円筒のドラム形状を呈し、露光ユニット23の上方に配設され、駆動手段と制御手段によって、所定方向に回転駆動されるように制御されている。帯電手段22は、感光体21の表面を所定の電位に均一に帯電するためのスコロトロン方式の帯電器であって、感光体21の外周面に近接して配置されている。
【0032】
露光ユニット23は、画像処理部(不図示)から出力された画像データに基づいて、帯電手段22にて帯電される感光体21の表面にレーザ光を照射して露光することにより、感光体21表面における露光部の電位を低下させ、当該表面に画像データに応じた静電潜像を書込み形成する機能を有する。露光ユニット23は、各色に対応する画像形成ステーションに応じて、イエロー、マゼンタ、シアン、またはブラックに対応する画像データが入力されることにより、対応する色に応じた静電潜像を形成するようになっている。露光ユニット23としては、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)の他、EL(Electro Luminescence)やLED(Light Emitting Diode)などの発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(たとえば、書込みヘッド)を使用することができる。
【0033】
現像手段24は、現像剤を担持する現像剤潜像体となる現像ローラと、現像剤を収容する現像槽とを備える。ここで、本実施の形態では、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いて、露光ユニット23にて感光体21表面に形成された静電潜像を当該トナーにて反転現像してトナー像を形成する。なお、現像剤としては、二成分現像に限定されるものではなく、一成分現像剤も用いることができる。また、現像手段24は、各色に対応したそれぞれのトナーを収容し、トナーの消費量に応じて現像槽にトナーを補給するトナーボトル241を備える。現像ローラは、トナーが感光体21へ移動し得る現像領域へ現像剤を搬送するように構成されている。また、現像槽に収容される現像剤中のトナーは、感光体21に帯電される表面電位と同極性に帯電されている。なお、感光体21に帯電される表面電位の極性および使用するトナーの帯電極性は、ここでは、何れもマイナスとされている。
【0034】
クリーナ25は、中間転写ベルト311へのトナー像転写後に、感光体21の外周面上に残存しているトナーを除去・回収するものであり、ウレタンゴムからなるクリーニングブレードを感光体21表面に当接している。
【0035】
1次転写部31は、トナー像担持ベルトである中間転写ベルト311と、対向ローラ312と、1次転写ローラ313と、本発明に係るベルトクリーニング装置60とを含む。中間転写ベルト311は、2次転写ステーション部32の構成部材の一部材である転写ローラ321と、対向ローラ312とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端状のベルト部材であり、転写ローラ321の回転に伴って回転搬送される。中間転写ベルト311は、各色の画像形成ステーションの感光体21上に形成されたトナー像を、位置を合わせて重ね合わせることにより、4色のトナーからなるトナー像を、表面のトナー像担持領域内に担持する。中間転写ベルト311は、厚さ80μmで半導電性のポリイミドからなり、体積抵抗率が1010Ω・cm、表面抵抗率が1010Ω/□である。
【0036】
また中間転写ベルト311は、ポリイミドなどから成る基体の表面に、ウレタンゴムなどから成る弾性層が形成された2層構造としてもよい。弾性層を有する中間転写ベルト311では、弾性層の表面がトナー像担持領域となり、弾性層が記録紙の凹凸に対応して弾性変形し、トナー像を覆い包むようにして中間転写ベルト311とトナー像とが接触するので、転写性を良好にすることができる。
【0037】
対向ローラ312は、後述するベルトクリーニング装置60が備えるクリーニングブレード601と中間転写ベルト311を介して対向する支持ローラであり、中空円筒状に形成される。対向ローラ312は、外径が30mmで、軸線方向の長さが310mmで、アルミニウム(A5052)からなる厚さ0.8mmの円筒端部に、導電性の樹脂フランジを設け、ボールベアリングを介して回転軸まわりに回転可能に支持されている。対向ローラ312は、中間転写ベルト311の回転に伴って従動回転する。そして、対向ローラ312は、回転軸を介して電気的に接地されている。
【0038】
中間転写ベルト311が、感光体21に接しながら感光体21を通過する際、中間転写ベルト311を介して感光体21に対向配置される1次転写ローラ313から、感光体21表面のトナーの帯電極性とは逆極性(ここでは、正極性)の転写バイアスが印加され、感光体21の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト311上へ転写されて担持される。そして、中間転写ベルト311が回転することにより4色のトナーからなるトナー像は、2次転写ステーション部32へ搬送される。
【0039】
ベルトクリーニング装置60は、詳細は後述するが、2次転写ステーション部32における記録紙へのトナー像転写後に、中間転写ベルト311の外周面上に残留している残留トナーを除去・回収するものであり、前述したクリーナ25と同様にウレタンゴムからなるクリーニングブレード601を中間転写ベルト311に当接している。
【0040】
2次転写ステーション部32では、中間転写ベルト311を懸架する転写ローラ321に対して、2次転写ローラ322が中間転写ベルト311を介して対向して配置されている。中間転写ベルト311は、転写ローラ321の回転により回転搬送される。転写ローラ321は、中間転写ベルト311との摩擦力を高めるために、円筒部表面にゴム層を備え、装置本体に設けられる駆動モータ(不図示)に連結され、回転駆動される。そして、2次転写ローラ322は、中間転写ベルト311上に担持されるトナー像の搬送とタイミングを合わせて用紙供給手段5によって供給搬送される記録紙を介して、中間転写ベルト311に圧接する。この2次転写ローラ322と中間転写ベルト311との圧接部分が転写ニップ部となる。中間転写ベルト311上に担持されるトナー像と記録紙とが、タイミングを合わせて転写ニップ部を通過するとき、2次転写ローラ322にはトナーを引きつける正電位(転写電界)が印加され、中間転写ベルト311上のトナー像を記録紙へ転写させる。
【0041】
定着手段4は、2次転写ステーション部32よりも記録紙の搬送方向下流側に設けられ、加熱ローラ41と加圧ローラ42とを含む。加熱ローラ41は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録紙に転写されて担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録紙に定着させる。加熱ローラ41の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、加熱ローラ41表面が所定の温度(定着温度)になるように加熱ローラ41を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。
【0042】
加圧ローラ42は加熱ローラ41に圧接するように設けられ、加圧ローラ42の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ42は、加熱ローラ41によってトナーが溶融して記録紙に定着する際に、トナーと記録紙とを押圧することによって、トナー像の記録紙への定着を補助する。加熱ローラ41と加圧ローラ42との圧接部が定着ニップ部である。定着手段4によれば、2次転写ステーション部32においてトナー像が転写された記録紙が、加熱ローラ41と加圧ローラ42とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録紙に押圧されることによって、トナー像が記録紙に定着され、画像が形成される。
【0043】
用紙供給手段5は、用紙給紙トレイ51と、ピックアップローラ52と、レジストローラ53と、搬送ローラ54と、用紙ガイド55とを含む。用紙給紙トレイ51は画像形成装置1の鉛直方向下部に設けられ、記録紙を貯留する容器状部材である。記録紙としては、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などを挙げることができる。また近年、環境、省エネ対策に関し、記録紙としてリサイクル紙が多用されている。このリサイクル紙は、紙繊維が短く、白色性を高める指標となる紙の抵抗値をノンリサイクル紙に近づけるなどの理由により、ノンリサイクル紙よりもタルク、カオリンなどの充填剤を多く含有したものである。このようなリサイクル紙を用いた場合には、後述する本発明における優れた効果である、クリーニングブレードに付着した異物の除去効率の向上が顕著に認められる。
【0044】
ピックアップローラ52は、用紙給紙トレイ51に貯留される記録紙を1枚ずつ取り出し、レジストローラ53に向けて送給する。レジストローラ53は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、ピックアップローラ52から送給される記録紙を、中間転写ベルト311に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給されるように、記録紙の搬送経路を規定する用紙ガイド55に送給する。用紙ガイド55に送給された記録紙は、互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材である搬送ローラ54に搬送され、転写ニップ部に搬送される。
【0045】
排紙手段6は、排出ローラ61を含む。排出ローラ61は、用紙搬送方向において定着手段4における定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録紙を、画像形成装置1の鉛直方向上面に設けられる排出トレイに排出する。排出トレイは、画像が定着された記録紙を貯留する。
【0046】
図2は、本発明の第1実施形態であるベルトクリーニング装置60の構成を示す図である。ベルトクリーニング装置60は、中間転写ベルト311の外周面上に担持されるトナー像が記録紙に転写された後に、中間転写ベルト311の外周面上に残留する残留トナーを除去する装置である。ベルトクリーニング装置60は、クリーニングブレード601と、廃トナーケース602と、ブレード支持部材603と、電極部材604と、電源605と、すくいシール606とを含む。
【0047】
クリーニングブレード601は、弾性材料からなる板状の部材であり、中間転写ベルト311の外周面に当接するように設けられる。弾性材料としては、合成樹脂、ゴムなどの中から適切な弾性を有するものが適宜選択される。そして、クリーニングブレード601は、中間転写ベルト311の外周面に臨む側縁部、すなわち、中間転写ベルト311に当接する当接辺が、中間転写ベルト311の幅方向(回転方向に垂直な方向)に平行な直線状に形成される。本実施の形態では、クリーニングブレード601は、ウレタンゴムからなる長方形の板状弾性部材であり、厚みは2mm程度である。
【0048】
長方形の板状弾性部材であるクリーニングブレード601の長手方向は、中間転写ベルト311の幅方向に対応し、長手方向に垂直な方向がクリーニングブレード601の短手方向である。このようなクリーニングブレード601では、短手方向一端側の側縁部が、中間転写ベルト311の外周面に当接する当接辺となる。クリーニングブレード601の短手方向一端側の側縁部は、中間転写ベルト311の対向ローラ312と接触する領域における外周面に当接するように設けられる。さらに、クリーニングブレード601は、短手方向他端側から短手方向一端側に向かう方向が、中間転写ベルト311の回転方向に対して対向する向きとなるように設けられる。
【0049】
このように構成されたクリーニングブレード601は、弾性的に撓んだ状態で、短手方向一端側の側縁部が中間転写ベルト311の対向ローラ312と接触する領域における外周面に当接し、転写処理後の中間転写ベルト311の外周面に残留する残留トナーを機械的に掻き取って、中間転写ベルト311の外周面をクリーニングする。
【0050】
ブレード支持部材603は、クリーニングブレード601の短手方向他端側において、中間転写ベルト311に対する対向面とは反対側の面に接触して設けられる矩形板状の部材であり、廃トナーケース602の開口端部に接続されることによって、クリーニングブレード601を支持する。ブレード支持部材603は、たとえば、アルミニウム、ステンレス(SUS)などによって形成される。
【0051】
廃トナーケース602は、クリーニングブレード601によって中間転写ベルト311から掻き取られた残留トナーを、廃トナーとして収容するための容器状の部材である。廃トナーケース602に収容された廃トナーは、廃トナー搬送スクリュー(不図示)により廃トナー廃棄ボトル(不図示)へ搬送される。
【0052】
すくいシール606は、クリーニングブレード601の上方において、一方のエッジが、中間転写ベルト311の対向ローラ312と接触する領域における外周面に軽く当接し、中間転写ベルト311の外周面上の残留トナーを掻き落とすことなく、クリーニングブレード601の当接部へ通過させる。そして、すくいシール606は、クリーニングブレード601により掻き取られて廃トナーケース602に収容されている廃トナーが、廃トナーケース602から漏出することを防止する。本実施の形態では、すくいシール606は、厚さ0.1mmのウレタンゴムシートからなる。すくいシール606の他方のエッジは、廃トナーケース602の開口端部に接続されている。
【0053】
電極部材604は、ブレード支持部材603に対して所定の間隙を有して対向するように配置されている。電極部材604を構成する材料は、ステンレス(SUS)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、真ちゅう、カーボンなどの導電性材料であれば特に限定されないが、本実施の形態ではSUSからなる。また、本実施の形態では、電極部材604は、直方体形状に形成され、ブレード支持部材603に対する対向方向Aに対応する寸法Lが20mmで、対向方向Aに直交する方向に対応する寸法Hが10mmである。ここで、対向方向Aとは、電極部材604からブレード支持部材603に向かう方向である。そして、電極部材604における対向ローラ312の軸線方向に延びる長さは、クリーニングブレード601およびブレード支持部材603の長手方向の寸法に対応して、300mmである。また、本実施の形態では、電極部材604とブレード支持部材603との間隙の間隙幅Gは、200μmに設定されている。
【0054】
電源605は、電極部材604に所定の周波数および振幅を有する交流電圧を印加する。本実施の形態では、電源605は、周波数が2.2kHzで、振幅が4kVppの正弦波の波形を有する交流電圧を電極部材604に印加し、オフセット電圧は0Vである。電源605は、中間転写ベルト311上に担持されるトナー像が、2次転写ステーション部32において記録紙に転写された後、中間転写ベルト311に残留した残留トナーの画像先端がベルトクリーニング装置60から上流側の所定位置(たとえば、ベルトクリーニング装置60から100mm上流側の位置)に達するタイミングに合わせて電極部材604に対する電圧供給を開始し、残留トナーの画像後端がベルトクリーニング装置60から下流側の所定位置(たとえばベルトクリーニング装置60から100mm下流側の位置)となったときに電極部材604に対する電圧供給を停止する。
【0055】
ベルトクリーニング装置60によれば、ブレード支持部材603に対向して配置される電極部材604に所定の周波数および振幅を有する交流電圧が印加されると、電極部材604とブレード支持部材603との間隙Gには振動電界が形成され、この振動電界によってブレード支持部材603およびブレード支持部材603で支持されるクリーニングブレード601が対向方向Aに振動し、中間転写ベルト311が対向ローラ312に懸架される領域において対向方向Aに振動する。中間転写ベルト311が対向方向Aに振動すると、中間転写ベルト311の外周面に残留する残留トナーは対向方向Aに振動することになり、この振動によって生じる慣性力により、残留トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下する。これによって、記録紙に対する転写処理後に中間転写ベルト311上に残留する残留トナーを、クリーニングブレード601によって除去する除去効率に優れ、次の記録紙への画像形成時に残留トナーの影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0056】
また、従来技術では、超音波振動子を中間転写ベルト311に接触させて振動させているために、長期間の使用により、超音波振動子と中間転写ベルト311との接触部で摩耗が発生するが、本発明のベルトクリーニング装置60では、電極部材604とブレード支持部材603との間隙Gに発生する振動電界によって中間転写ベルト311を非接触で振動させるように構成されているので、電極部材604、クリーニングブレード601および中間転写ベルト311のそれぞれにおいて、長期間にわたって振動に起因する摩耗が発生することはない。そのため、長期間にわたって、記録紙に対する転写処理後に、中間転写ベルト311上に残留する残留トナーをクリーニングブレード601によって除去する除去効率が高い状態で維持され、次の記録紙への画像形成時に残留トナーの影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0057】
また、球形度の高いトナーが残留トナーとして中間転写ベルト311上に残留した場合には、クリーニングブレード601の機械的な掻き落とし作用によって中間転写ベルト311から除去するのが困難であるが、本発明のベルトクリーニング装置60においては、中間転写ベルト311が対向方向Aに振動するので、中間転写ベルト311に対する残留トナーの付着力が低下し、クリーニングブレード601によって除去する除去効率が高い状態で維持される。
【0058】
さらに、ベルトクリーニング装置60では、クリーニングブレード601が中間転写ベルト311に当接して残留トナーを除去するとき、電極部材604とブレード支持部材603との間隙Gに発生する振動電界によってブレード支持部材603およびブレード支持部材603で支持されるクリーニングブレード601が振動するので、クリーニングブレード601に付着した紙粉、タルク、カオリンなどの残留トナーよりも除去しにくい異物を、クリーニングブレード601から効率よく除去することができる。
【0059】
次に、中間転写ベルト311上に残留する残留トナーを対向方向Aに振動させて中間転写ベルト311に対する付着力を低下させ、クリーニングブレード601によって除去する除去効率を向上させるために考慮すべき事項について説明する。
【0060】
電極部材604とブレード支持部材603とを電極板とするコンデンサを考えると、電極板間に働く引力Fは下式(1)で表される。
F=(1/2)×Q×E …(1)
[式中、Fは電極板間に働く引力を示し、Qは電荷量を示し、Eは電界の強さを示す。]
【0061】
また電荷量Qは、下式(2)で表される。
Q=(εS/d)V …(2)
[式中、εは真空の比誘電率を示し、Sは対向面積を示し、dは電極間隔を示し、Vは電位差を示す。]
【0062】
式(1)および式(2)に、たとえば、S=300mm×5mm、d=200μm、ε=8.85×10−12(s・A・kg−1・m−3)、V=2kVを代入して電極板間に働く引力Fを算出すると、F=0.66Nとなる。
【0063】
つまり、電極部材604に電源605から交流電圧が印加されると、電極部材604とブレード支持部材603との間には前述のような引力が働き、この引力は印加電圧の周波数で繰り返し生じる。これによって、ブレード支持部材603およびブレード支持部材603で支持されるクリーニングブレード601が対向方向Aに、引力に対応する振動振幅で、かつ印加電圧の周波数に対応する振動周波数で振動する。そして、ブレード支持部材603およびクリーニングブレード601の振動に伴って、中間転写ベルト311は、対向ローラ312に懸架される領域において対向方向Aに、前記振動振幅および振動周波数で振動する。
【0064】
以上のことより、中間転写ベルト311の振動周波数は、電極部材604に印加される印加電圧の周波数によって調整することができるが、残留トナーの中間転写ベルト311に対する付着力を低下させて残留トナーの除去効率を向上させるためには、印加電圧の周波数を所定値以上に調整する必要がある。つまり、前述したように、残留トナーが振動することによって生じる慣性力により、残留トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下するが、印加電圧の周波数が低すぎると、残留ナーに付与される慣性力が小さくなり過ぎて付着力の低下幅が小さく、残留トナーの除去効率の向上が認められなくなる。そのため、本実施の形態では、電極部材604に印加する印加電圧の周波数は、2.2kHzに設定している。
【0065】
また、電極部材604に印加する印加電圧の周波数は、20kHz以上(たとえば、22kHz)であるのが好ましい。これによって、ブレード支持部材603が振動することにより生じる空気振動が、人間の可聴周波数以上となり、動作時の不快感を防止することができる。
【0066】
また、電極部材604とブレード支持部材603との間に生じる前記引力に対応する中間転写ベルト311の振動振幅は、式(1)および式(2)から明らかなように、電極部材604およびブレード支持部材603を構成する材料の誘電率を高くし、電極部材604とブレード支持部材603との対向面積を大きくし、電極部材604に印加する印加電圧を高くし、電極部材604とブレード支持部材603との間隙幅を小さくすることによって、大きくすることができる。このように、中間転写ベルト311の振動振幅が大きくなると、中間転写ベルト311に残留する残留トナーに付与される慣性力が大きくなり、残留トナーの中間転写ベルト311に対する付着力が低下する。ただし、電極部材604に印加する印加電圧が高すぎる、または、電極部材604とブレード支持部材603との間隙幅が小さ過ぎると、気中放電が発生してしまうので好ましくない。
【0067】
また、電源605によって電極部材604に印加する印加電圧を、ブレード支持部材603の固有振動数の整数倍となる周波数を有する交流電圧である固有振動電圧とすることによって、クリーニングブレード601が共振して大きな振動振幅を得ることができ、残留トナーの中間転写ベルト311に対する付着力を低下させて、クリーニングブレード601によって除去する除去効率を向上させることができる。
【0068】
また、電極部材604のブレード支持部材603の長手方向に延びる梁を考える場合、その曲げ剛性Zは、Z=E×I(Eはヤング率、Iは断面2次モーメントを示す)で表される。
【0069】
ブレード支持部材603に対する対向方向Aに対応する寸法Lが20mmで、対向方向Aに直交する方向に対応する寸法Hが10mmである電極部材604では、断面2次モーメントIは、下式(3)で表される。
I=(H×L)/12 …(3)
【0070】
電極部材604の構成材料がステンレスである場合、ステンレスのヤング率E=170GPaであるので、電極部材604の曲げ剛性Zは、Z=E×I=1.1×10N・mとなる。
【0071】
電極部材604のブレード支持部材603に対する対向方向Aへの曲げ剛性Zが、ブレード支持部材603の長手方向の曲げ剛性よりも高く設定されることによって、電極部材604とブレード支持部材603との間隙Gに生じる振動電界による引力が作用したときに、電極部材604の撓みを抑制しながらブレード支持部材603を振動させることができる。
【0072】
また、電極部材604が撓む場合には、この撓みによって電極部材604とブレード支持部材603との間隙幅が小さくなり、気中放電が発生しやすくなる。電極部材604の曲げ剛性を高めて電極部材604の撓みを抑制することによって、高い電圧を電極部材604に印加しても、電極部材604とブレード支持部材603との間隙幅が小さくなり過ぎるのを防止して、ブレード支持部材603およびクリーニングブレード601を大きく振動させて、中間転写ベルト311に大きな振動振幅の振動を付与することができる。
【0073】
また、電源605が前述した固有振動電圧を電極部材604に印加したときに、ブレード支持部材603に生じる振動モードでの振動の腹部に対応する中間転写ベルト311の部分に、クリーニングブレード601が当接して残留トナーを掻き取って除去するように構成されるのが好ましい。ブレード支持部材603に生じる振動モードでの振動の腹部に対応する中間転写ベルト311の部分は、大きな振動振幅の振動が付与されることになる。そのため、中間転写ベルト311上の残留トナーを大きな振動振幅で振動させることができ、残留トナーに働く慣性力が大きくなって、中間転写ベルト311に対する残留トナーの付着力を低下させることができる。
【0074】
具体的には、図3を用いて以下に説明する。図3は、ブレード支持部材603の振動モードを説明する図である。電極部材604に、ブレード支持部材603の固有振動数の1倍である基本固有振動数を有する交流電圧が印加された場合、ブレード支持部材603の振動モードは、図3(a)に示すように、一次振動モード(n=2)となる。このとき、振動の腹に当たる部分である腹部11における振幅が最大である。また、図3(b)に示す二次振動モード(n=3)、図3(c)に示す三次振動モード(n=4)においても、振動の腹部11における振幅が最大である。ブレード支持部材603の振動の腹部11に対応する中間転写ベルト311の部分に、クリーニングブレード601が当接するようにすればよい。
【0075】
図4は、本発明の第2実施形態であるベルトクリーニング装置70の構成を示す図である。ベルトクリーニング装置70は、ベルトクリーニング装置60に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。ベルトクリーニング装置70において特徴的な構成は、電極部材604のブレード支持部材603に対向する部分に、絶縁材料からなるコート層701が設けられている点である。ベルトクリーニング装置70は、電極部材604にコート層701が設けられていること以外は、ベルトクリーニング装置60と同様に構成されている。
【0076】
コート層701を構成する材料としては、たとえば、チタン酸バリウム(比誘電率;1200)やチタン酸ストロンチウム(比誘電率;332)、酸化チタン(比誘電率;100)の様な誘電率が高く、絶縁性の材料が望ましい。このように、絶縁材料からなるコート層701が電極部材604の表面に設けられることによって、ブレード支持部材603に対向する部分が導電体で構成されている場合に比べて、電極部材604に高い電圧を印加しても、気中放電の発生を防止することができる。そのため、ベルトクリーニング装置70の電極部材604に印加する交流電圧は、ベルトクリーニング装置60の電極部材604に印加する交流電圧よりも高い電圧である、空気中のパッシェンの放電電圧よりも高く設定している。このようにして、ブレード支持部材603と電極部材604との間隙に大きな振動電界を発生させることができる。
【0077】
また、絶縁材料からなるコート層701は誘電率が高いので、ブレード支持部材603と電極部材604との間隙に、さらに大きな振動電界を発生させることができる。そのため、ブレード支持部材603およびクリーニングブレード601を大きく振動させて、中間転写ベルト311に大きな振動を付与することができる。したがって、残留トナーと、中間転写ベルト311との付着力を低下させることができ、記録紙に対する転写処理後に、中間転写ベルト311上に残留する残留トナーを除去する除去効率に優れ、次の記録紙への画像形成時に残留トナーの影響が発現するのを防止し、高品位の画像を形成することができる。
【0078】
以上のような本実施の形態は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内において構成を変更することができる。たとえば、中間転写ベルトに残留する残留トナーを除去するときに中間転写ベルトを振動させる構成について、説明した。しかしながら本発明は、これに限定するものではなく、たとえば、感光体ベルトから中間転写ベルトにトナー像を転写させて、中間転写ベルト上に転写されるトナー像を記録用紙に転写させて画像を形成するように構成される画像形成装置において、感光体ベルトおよび中間転写ベルトを振動させて残留トナーを除去する構成、感光体ベルトに担持されるトナー像を直接記録用紙に転写させて画像を形成するように構成される画像形成装置において、感光体ベルトを振動させて残留トナーを除去する構成も、本発明の範囲内である。
【0079】
また、中間転写ベルトの外周面にクリーニングブレードを当接させて、中間転写ベルト上に残留する残留トナーを掻き取って除去する構成について説明したが、クリーニングブレードの代わりに、残留トナーを引きつける電界を印加したバイアスクリーニングローラやファーブラシクリーニング手段などの他のクリーニング手段を用いた構成にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成装置
2 画像形成ステーション部
4 定着手段
5 用紙供給手段
6 排紙手段
20 トナー像形成部
31 1次転写部
32 2次転写ステーション部
60,70 ベルトクリーニング装置
311 中間転写ベルト
601 クリーニングブレード
602 廃トナーケース
603 ブレード支持部材
604 電極部材
605 電源
606 すくいシール
701 コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持ローラによって張架されて回転可能に設けられ、トナー像を担持搬送する無端状のトナー像担持ベルトに対して、トナー像が記録媒体に転写された後にトナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング装置であって、
板状弾性部材で形成されて、前記トナー像担持ベルトの外周面に当接して残留トナーを除去するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードに接触して設けられ、前記クリーニングブレードを支持するブレード支持部材と、
前記ブレード支持部材に対して、所定の間隙を有して対向する電極部材と、
前記電極部材に、所定の周波数を有する交流電圧を印加する電源とを含み、
前記クリーニングブレードが前記トナー像担持ベルトの外周面に当接して残留トナーを除去するとき、前記電源が前記電極部材に交流電圧を印加して、前記ブレード支持部材を振動させることで、前記トナー像担持ベルトを振動させるように構成されることを特徴とするベルトクリーニング装置。
【請求項2】
前記電極部材は、前記ブレード支持部材と対向する表面に、絶縁材料からなるコート層が設けられることを特徴とする請求項1に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項3】
前記電極部材の前記ブレード支持部材に対する対向方向への曲げ剛性が、前記ブレード支持部材の曲げ剛性よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のベルトクリーニング装置。
【請求項4】
前記電源が前記電極部材に印加する交流電圧の周波数は、20kHz以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のベルトクリーニング装置。
【請求項5】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体表面の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
複数の支持ローラによって張架されて回転可能に設けられ、トナー像を担持搬送する無端状のトナー像担持ベルトと、
前記トナー像担持ベルトの外周面上に担持されるトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
トナー像が記録媒体に転写された後に前記トナー像担持ベルトの外周面上に残留する残留トナーを除去するベルトクリーニング手段とを含む画像形成装置であって、
前記ベルトクリーニング手段は、請求項1〜4のいずれか1つに記載のベルトクリーニング装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−59280(P2011−59280A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207526(P2009−207526)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】