説明

ベーンポンプ

【課題】ブラシレスモータにて駆動されるベーンポンプにおいて、部品点数の削減を図ることができるポンプを提供することを課題とする。
【解決手段】ブラシレスモータ28の軸27と同軸に設けられこのブラシレスモータ28により駆動されるベーンポンプ10であって、空気を圧縮するベーン室(図2、符号81)とブラシレスモータ28のロータ28eとの間に、吸入ポート24及び排気ポート130(排気口130)を備えるとともにロータ28eを回動可能に軸支するベアリング102が嵌合されたポンプボディ40と、このポンプボディ40内に設けられブラシレスモータ28を制御する制御回路25と、ポンプボディ40に一体化された形態を呈するブラシレスモータ28のヨーク28aとを備えた。
【効果】ブラシレスモータにて駆動されるベーンポンプにおいて、部品点数の削減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベーンポンプ、例えば車両用負圧ブースタの負圧を生成するために用いられるベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のベーンポンプとして、自動車用電気エアポンプが提案されている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるベーンポンプは、ポンプ本体(101)(括弧付き数字は特許文献1に記載されている符号を示す。以下同じ。)とブラシレスモータ(119)とが同軸に設けられている。吸入ポート(113)及び吐出ポート(114)がフロントプレート(111)の側面に形成されている。
【0004】
ところで、ブラシレスモータは制御回路が必要であり、制御回路が配置されたブラシレスモータが特許文献2に開示されている。
この特許文献2の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図14は従来のベーンポンプに設けられたブラシレスモータの断面図であり、ベーンポンプ200は、ベーンポンプ本体201とブラシレスモータ202とからなり、ベーンポンプ本体201の中心軸とブラシレスモータ202の中心軸が合致している。
【0005】
ブラシレスモータ202は、ケース部材203に設けられた軸受204と、この軸受204に回転自在に設けられた回転軸205と、この回転軸205と一体的に回転するように設けられた回転子206と、ケース部材203の開口側に設けられた制御回路207と、この制御回路207に接続されたステータコイル208とを備える。
【0006】
ケース部材203は、取付部材209にスポット溶接により固定され、ナゲット210が形成されている。例えば、取付部材209をベーンポンプ本体201のフランジ部211にボルト212により締結することで、ベーンポンプ200が組み立てられる。また、フランジ部211による結合であれば、通常はパッキン213を必要とする。すなわち、ベーンポンプ200は、ベーンポンプ本体201とブラシレスモータ202と複数本のボルト212とパッキン213とからなり、部品点数が多い。
また、フランジ部211の外径D1は、ポンプ本体201の外径よりも大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/029462号パンフレット
【特許文献2】特開2007−185040公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ブラシレスモータにて駆動されるベーンポンプにおいて、部品点数の削減を図ることができるポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ブラシレスモータの軸と同軸に設けられこのブラシレスモータにより駆動されるベーンポンプであって、空気を圧縮するベーン室と前記ブラシレスモータのロータとの間に、吸入ポート及び排気ポートの少なくとも一方を備えるとともに前記ロータを回動可能に軸支するベアリングが嵌合されたポンプボディと、このポンプボディ内に設けられ前記ブラシレスモータを制御する制御回路と、前記ポンプボディに一体化された形態を呈する前記ブラシレスモータのヨークとを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、ヨークは、ポンプボディにヨークの周縁部が全周カシメ結合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、ポンプボディには、ブラシレスモータに対面する部位に制御回路が締結具でポンプボディに固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、ブラシレスモータに対面する部位に、制御回路を収納する凹部が設けられ、この凹部に制御回路が収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ポンプボディにブラシレスモータのヨークを一体化した。一体化により、ボルトやパッキンを省くことができる。結果、ブラシレスモータにて駆動されるベーンポンプにおいて、部品点数の削減を図ることができるポンプを提供することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ヨークは、ポンプボディにヨークの周縁部が全周カシメ結合されている。ポンプボディにヨークの周縁部を全周カシメ結合するので、ヨーク固定用のねじ等の部品点数を削減することができる。
加えて、ポンプボディにヨークの周縁部が全周カシメ結合されているので、パッキン等のシール部材を使用しなくてもシール性を有し、一層部品点数の削減を図ることができる。
さらに、全周カシメ結合されているので、フランジ部を必要とせず、その分の外径を小さくすることができ、ベーンポンプの小型化を図ることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、ポンプボディには、ブラシレスモータに対面する部位に制御回路が締結具でポンプボディに固定されている。制御回路が締結具でポンプボディに固定され、制御回路はブラシレスモータでカバーされるので、専用のカバーを設けずに制御回路を効果的に保護することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、ポンプボディに、凹部を設け、この凹部に制御回路が収納され、この制御回路が締結具でポンプボディに固定されている。凹部内に制御回路を収納するので、制御回路を更に効果的に保護することができる。また、凹部内のスペースを利用するので、制御回路を効率的に収めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るベーンポンプの配置例を示す図である。
【図2】ポンプ部の分解斜視図である。
【図3】ベーンポンプの分解斜視図である。
【図4】制御回路及びブラシレスモータの組み付け手順を説明する図である。
【図5】実施例1のベーンポンプの断面図である。
【図6】図5の6−6線断面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】接続管からポンプ部までの吸気の流れを説明する図である。
【図10】ポンプ部から排気口までの排気の流れを説明する図である。
【図11】図4の変更例を示す図である。
【図12】実施例2のベーンポンプの断面図である。
【図13】実施例3のベーンポンプの断面図である。
【図14】従来のベーンポンプの原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0019】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、本発明のベーンポンプ10は、車両に備えられる負圧ブースタ11の負圧室12内を、負圧にする真空ポンプの一種である。
ベーンポンプ10を作動させると、負圧管13、負圧室12内及び変圧室14内が負圧になっている。この状態でブレーキペダル16を踏むと負圧室12と変圧室14とが遮断され、変圧室14に空気が導入され、負圧室12と変圧室14との差圧により、ダイヤフラム17がリターンばね18を圧縮させる側へ変形し、プッシュロッド19を押し出す。結果、小さな踏力で大きな制動力が得られる。ベーンポンプ10は、車両の側のブラケット21にボルト22で固定される。
【0020】
次にベーンポンプ10のポンプ部について以下に詳しく述べる。
図2はポンプ部80の分解斜視図であり、ポンプ部80は、非円断面のベーン室81及び複数(この例では4個)のボルト穴82が設けられるケース83と、複数のベーン溝85が放射状に設けられ、中心にインボリュートスプライン穴86が設けられ、非円断面のベーン室81に回転自在に収納されるロータ87と、複数のベーン溝85に各々移動自在に収納されるベーン88と、複数(この例では4個)のボルト穴91及び上下2個の吸気孔92、93を有する吸気プレート94と、複数(この例では4個)のボルト穴96及び上下2個の排気孔97、98を有する排気プレート101と、ボルト穴96、82、91に通される複数(この例では4本)のボルト32とからなる。
【0021】
ベーンポンプ10の構造を以下に詳しく述べる。
図3に示されるように、ベーンポンプ10は、吸入ポート24を上部に有するポンプボディ40と、このポンプボディ40の一方の側面に複数(この例では2本)のビス26で取付けられブラシレスモータを制御する制御回路25と、この制御回路25の外方においてポンプボディ40のモータ取付部29に結合されモータの軸27がインボリュートスプライン軸であるブラシレスモータ28と、ポンプボディ40の他方の側面に設けられている複数(この例では4個)の雌ねじ穴31に長いボルト32をねじ込むことで取付けられるポンプ部80と、吸入ポート24にフィルタ部材33を介して接続される接続管60と、ポンプ部80を覆うと共に、ポンプボディ40の他方の面に設けられている複数(この例では4個)の雌ねじ穴34にビス36をねじ込むことで取付けられるカバー体70とからなる。
【0022】
ポンプボディ40の側部に、ブラシレスモータ28へ給電するハーネス35が設けられる。
ポンプボディ40は、ブラシレスモータ28をマウントするため及び車両に接続するための基盤であるため、厚くて剛性に富む、例えば鋳物などの金属製とすることが望まれる。ポンプボディ40の底面に、車両側のブラケット(図1、符号21)にブッシュを介して取付けられる一対の固定部41が下方に突出して設けられる。ポンプボディ40の中心部にモータの軸27が挿入される軸穴42が設けられる。
【0023】
ポンプボディ40のうちポンプ部80が取付けられる側面を、ポンプ取付け側面43と呼ぶことにする。このポンプ取付け側面43に、ポンプ取付け側面43の外周に沿ってOリングなどのシール材44が設けられる。
【0024】
また、ポンプ取付け側面43に、軸穴42の上方から下方にかけて、軸穴42を中心とする半円形の吸気溝46が設けられており、この吸気溝46を囲うようにOリングなどのシール材47がポンプ取付け側面43に設けられる。
【0025】
さらに、ポンプ取付け側面43に複数(実施例では4室)のチャンバー51〜54が設けられる。複数のチャンバー51〜54は、ボディ部40の上下方向中央に配置され、ボディ部40の外周に沿って形成される第1チャンバー51と、この第1チャンバー51と軸穴42との間に配置され、第1チャンバー51に第1連通溝55を介して連通する第2チャンバー52と、軸穴42の下方に配置され、第2チャンバー52に第2連通溝56を介して連通する第3チャンバー53と、この第3チャンバー53の直下にてボディ部40の外周に沿って形成され、チャンバー51〜53とは独立した第4チャンバー54とからなる。
【0026】
接続管60は、ボディ部40の上面に設けられている複数(この例では2個)の雌ねじ穴61にビス62をねじ込むことで締結される締結部63と、この締結部63から上方に突出する基部65と、この基部65からモータの軸27の軸方向67に延びるホース差込部66とを主要素とし、Oリングなどのシール材68を介して吸入ポート24に接続される。
【0027】
カバー体70は、有底円筒であり、ポンプ取付け側面43に対向する底部71と、この底部71からポンプ取付け側面43に向けて延びる筒部72と、この筒部72の端部に鍔状に形成されるフランジ部73とからなる。
【0028】
次に制御回路及びブラシレスモータの取付手順を図4に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、ポンプボディ40には、ブラシレスモータ28に対面する位置に制御回路25を収納する凹部45が設けられている。この凹部45に制御回路25を入れ、この制御回路25の穴37に締結具38を通し、締結具38により制御回路25を回路取付部39に固定する。
【0029】
図4(b)に示すように、ブラシレスモータ28のモータの軸27を軸穴42に挿入する。さらに、ブラシレスモータ28のヨーク28aの先端をポンプボディ40のモータ取付部29に嵌める。
【0030】
図4(c)にて、▽で示すように、ヨーク28aの周縁部28bをモータ取付部29にカシメる。全周カシメすることで、ヨーク28aをポンプボディ40に結合し、ポンプボディ40に一体化させる。
【0031】
ベーンポンプの各部の構成を図5〜図8に基づいて、さらに詳細に説明する。
図5は、図2〜図4に基づいて組立てられたベーンポンプ10の断面図である。
図5に示されるように、軸穴42にベアリング102が設けられており、このベアリング102にモータの軸27が支持される。モータの軸27の先端部は、ロータ87のインボリュートスプライン穴86に嵌り、先端が排気プレート101の近傍まで達する。
【0032】
カバー体70のフランジ部73はシール材44の全周に接しており、このシール材44によってカバー体70内の気密性が確保される。
一方、シール材47の全周に吸気プレート94の表面が接しており、このシール材47と吸気プレート94で吸気溝46の開口が塞がれ、吸気通路103が形成される。結果、接続管60、吸入ポート24、吸気通路103及び2個の吸気孔(図2、符号92、93)からなる吸気経路が形成される。
【0033】
一対の固定部41、41の間に排気口130(詳細後述)が設けられる。
第3チャンバー53と排気口130とは、第1排出通路104によって連通される。第1排出通路104は、第3チャンバー53の内壁からモータ28側へ延びる横通路106と、この横通路106の端部から下方に延びて排気口130に開口する縦通路107とからなる。第4チャンバー54と排気口130とは、鉛直方向に延びる第2排出通路108によって連通される。
【0034】
ブラシレスモータ28は、ハウジングとしての機能を兼ねるヨーク28aと、ヨーク28aの内側に固定されているステータ28cと、ヨーク28aの底部に設けられているベアリング28dと、このベアリング28dに回転可能に支持されているモータの軸27と、このモータの軸27に一体的回転するように設けられているロータ28eとを備えている。
【0035】
ブラシレスモータ28は、ポンプボディ40のモータ取付部29にヨーク28aの周縁部28bが全周カシメ結合されている。ポンプボディ45の凹部45に制御回路25が収納され、制御回路25は回路取付部39に締結具38で固定されている。
【0036】
図6に示されるように、ポンプボディ40の凹部45は、モータの軸27方向から見て円形状を呈している。この凹部45の円周形状に沿うようにして、円形状を呈する制御回路25が配置されている。制御回路25の中央部には穴48が設けられており、この穴48にモータの軸27が通されている。また、制御回路25は、ポンプボディ40に4個の締結具38で固定されている。
【0037】
なお、実施例では、制御回路25は円形状としたが、これに限定されず、矩形や三角形など、凹部45に収納されれば、他の形状であっても差し支えない。また、実施例では、締結具38を4個使用したが、これに限定されず、2個、3個など、制御回路25をポンプボディ40に固定できれば締結具38の個数は限定されない。
【0038】
次に、複数のチャンバーの構成を図7及び図8に基づいて詳しく説明する。
図7に示されるように、チャンバー51〜54、連通溝55、56は、各々、ポンプ部(図3、符号80)側に開口する。
【0039】
第1チャンバー51は、モータの軸27を中心とする円弧状に形成され且つ幅W1で帯状に形成される。第4チャンバー54は、左右に延びる直線とモータの軸27を中心とした円弧とで囲われるような外形を有する。図において、第4チャンバー54の中央で最大となる幅(上下方向)をW2で示し、左右方向の全長をL1で示す。
【0040】
図8は、図7の構造にポンプ部80及びカバー体70を取付けた形態を示す図である。
図8に示されるように、第2・第3チャンバー(図7、符号52、53)、第1・第2連通溝(図7、符号55、56)の各々の開口は、吸気プレート94で全体が塞がれる。
【0041】
一方、ボディ部40の外周に沿って形成される第1チャンバー51及び第4チャンバー54は、開口の一部が、カバー体70及び吸気プレート94で塞がれる。
【0042】
カバー体70の筒部72のうち、第1チャンバー51に対峙する部位が、モータの軸27に向かって突出するように窪んでおり、この窪んだ部位124で、第1チャンバー51の開口うち筒部72側を塞ぐ。また、第1チャンバー51の開口のうちモータの軸27側を吸気プレート94で塞ぐ。
【0043】
この結果、第1チャンバー51は、幅W1より格段に小さい幅W3の隙間によって、カバー体70内と連通する。この幅W3の狭い隙間が排気通路126となる。排気孔97、98からの排気は、カバー体70内から排気通路126で絞られて第1チャンバー51に流れる。
【0044】
また、カバー体70の筒部72のうち、第4チャンバー54に対峙する部位が、モータ軸27に向かって突出するように窪んでおり、この窪んだ部位125で、第4チャンバー54の開口下部を塞ぐ。また、第4チャンバー54の開口上部を吸気プレート94で塞ぐ。
【0045】
この結果、第4チャンバー54は、幅W2より格段に小さい幅W4の隙間と、長さL1より格段に小さい長さL2の左右の隙間によって、カバー体70内と連通する。幅W4の狭い隙間が排気通路127となり、長さL2の左右の狭い隙間が排気通路128、128となる。排気孔97、98からの排気は、カバー体70内から排気通路127及び排気通路128、128で絞られて第4チャンバー54に流れる。
【0046】
以上に述べた負圧ポンプの作用を次に述べる。
図9に示されるように、モータ(図3、符号28)が作動すると、ポンプ部80の吸引作用により、外気が接続管60内に吸入される。この吸気は、接続部構造110及びフィルタ部材33を通過して吸入ポート24に吸入される(矢印(1))。
【0047】
吸入ポート24に入った吸気は、吸気孔92からポンプ部80に入り、加圧されて排気孔97から排出される(矢印(2))、又は、吸気通路103を通って吸気孔93からポンプ部80に入り、加圧されて排気孔98から排出される(矢印(3))。上下の排気孔97、98から排出された排気は、カバー体70内に流入する。
【0048】
図10に示されるように、カバー体70内において、排気は2つの排気経路のうち、いずれかの経路で排気口130へ導かれる。一方の経路では、排気はポンプ部80の側部とカバー体70との間の隙間を流れた後、排気通路(図8、符号126)を介して第1チャンバー51に流入する(矢印(4)、(5))。第1チャンバー51に流入した排気は第1連通溝55を介して第2チャンバー52に移る(矢印(6))。第2チャンバー52に流入した排気は第2連通溝56を介して第3チャンバー53に移る(矢印(7))。第3チャンバー53に流入した排気は、第1排出通路104を通って栓部材132に達すると、栓部材132を回避するように、空間部143を抜け、排気通路133から大気中に放出される(矢印(8))。
【0049】
他方の排気経路では、排気はポンプ部80の下面とカバー体70との間の隙間を流れ(矢印(9))、排気通路127又は排気通路128を介して第4チャンバー54に流入する(矢印(10))。第4チャンバー54に流入した排気は、第2排出通路108を通って栓部材132に達すると、栓部材132を回避するように空間部143を抜け、排気通路133から大気中に放出される(矢印(11))。
【0050】
次に、実施例の変更例を図面に基づいて説明する。
図11は図4の変更例を示す図である。図4との相違点は、モータ取付部29の外周に溝49を形成したことにある。その他は図4と同じであるため、図4の符号を流用して詳細な説明を省略する。
【0051】
図11(a)に示すように、ポンプボディ40のモータ取付部29の外周に溝49が全周にわたり、形成されている。ヨーク28aの先端部28fを、ポンプボディ40の受け面57に突き当てる。矢印のように、先端部28fに外力を加えてカシメる。
【0052】
すると、図11(b)に示されるように、先端部28fは、溝49に沿って折れ曲がり、全周カシメ結合が完成する。この結果、ヨーク28aの先端部28fが、溝49に掛かるので、ヨーク28aがポンプボディ40から更に外れ難くなる。
【0053】
以上のように作用する負圧ポンプによれば、次に述べる効果が得られる。
図7に示されるように、第1チャンバー51及び第4チャンバー(図8、符号54)は、ボディ部40にカバー体(図8、符号70)を重ねることで形成される。ボディ部40には凹部を形成するだけでよいため、チャンバーは容易に形成される。
【0054】
チャンバーの開口の一部を塞ぐ手段として、プレートなどの専用部品を新規に調達することが考えられるが、専用部品を調達すると、部品点数が増えて製品コストが高くなる。
この点、本実施例では、カバー体の窪んだ部位(図8、符号124、125)で、第1チャンバー51及び第4チャンバー(図8、符号54)の各々の開口の一部を塞ぐようにしたので、専用部品は不要である。結果、製品コストを抑えることができる。
【0055】
また、吸気プレート(図8、符号94)で、複数のチャンバー及び複数の連通溝を覆うようにしたので、専用部品が不要になる。すなわち、チャンバーや連通溝を覆う部品として吸気プレートを兼用することで、部品点数の増加を抑えることができる。
【0056】
また、排気がポンプ部(図8、符号80)とカバー体(図8、符号70)との間の隙間を流れ、排気通路(図8、符号126〜128)へ向かうので、排気孔から排気通路に排気を導くための専用の通路をポンプ部などに加工する必要がない。結果、部品の加工コストを抑えることができる。
【0057】
また、図10に示されるように、排気口130における排気経路は、第1排出通路104、第2排出通路108、複雑な形状の空間部143及び複数の排気通路133からなる迷路である。この複雑な迷路によって、排気通路133の出口から水が万一侵入しても、水が栓部材132よりも上流側(ポンプ側)に逆流することを防止することができる。したがって、モータ停止時(負圧ポンプ停止時)であっても、排気口130からポンプ部(図5、符号80)への水の侵入を防止できる。結果、負圧ポンプの機能及び耐久性を維持することができる。
【0058】
上記の図5に示されるように、ブラシレスモータ28の軸27と同軸に設けられこのブラシレスモータ28により駆動されるベーンポンプ10であって、空気を圧縮するベーン室(図2、符号81)とブラシレスモータ28のロータ28eとの間に、吸入ポート24及び排気ポート130(排気口130)の少なくとも一方を備えるとともにロータ28eを回動可能に軸支するベアリング102が嵌合されたポンプボディ40と、このポンプボディ40内に設けられブラシレスモータ28を制御する制御回路25と、ポンプボディ40に一体化された形態を呈するブラシレスモータ28のヨーク28aとを備えた。
【0059】
この構成により、ボルトやパッキンを省くことができる。結果、ブラシレスモータ28にて駆動されるベーンポンプ10において、部品点数の削減を図ることができるポンプを提供することができる。
【0060】
上記の図4に示されるように、ヨーク28aは、ポンプボディ40にヨーク28aの周縁部28bが全周カシメ結合されている。
【0061】
この構成により、ポンプボディ40にヨーク28aの周縁部28bを全周カシメ結合するので、ヨーク固定用のねじ等の部品点数を削減することができる。
加えて、ポンプボディ40にヨーク28aの周縁部28bが全周カシメ結合されているので、パッキン等のシール部材を使用しなくてもシール性を有し、一層部品点数の削減を図ることができる。
さらに、全周カシメ結合されているので、フランジ部を必要とせず、その分の外径を小さくすることができ、ベーンポンプ10の小型化を図ることができる。
【0062】
上記の図5に示されるように、ポンプボディ40には、ブラシレスモータ28に対面する部位に制御回路25が締結具38でポンプボディ40に固定されている。
【0063】
この構成により、制御回路25が締結具38でポンプボディ40に固定され、制御回路25はブラシレスモータ28でカバーされるので、専用のカバーを設けずに制御回路25を効果的に保護することができる。
【0064】
上記の図5に示されるように、ブラシレスモータ28に対面する部位に、制御回路25を収納する凹部45が設けられ、この凹部45に制御回路25が収納されている。
【0065】
この構成により、凹部内45に制御回路25を収納するので、制御回路25を更に効果的に保護することができる。また、凹部内45のスペースを利用するので、制御回路25を効率的に収めることができる。
【実施例2】
【0066】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。なお、図5に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図12に示されるように、ポンプボディ40は、ブラシレスモータ28側に平面部111を備える。この平面部111に回路取付部39が設けられ、この回路取付部39に制御回路25が取付けられる。
【0067】
ヨーク28aの端部にフランジ部28gが設けられる。フランジ部28gに平坦部111のモータ取付部112をカシメることで、ブラシレスモータ28がポンプボディに固定される。
【実施例3】
【0068】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。なお、図12に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図13に示されるように、平面部111にモータ取付部112が設けられる。このモータ取付部112に、ヨーク28aのフランジ部28gがボルト113によって着脱可能に固定される。ボルト113を外すことで、ブラシレスモータ28の取り外しを容易に行うことができる。
【0069】
尚、本発明のベーンポンプは、車両に備えられる負圧ブースタの負圧室内を、負圧にするための車両用のベーンポンプに好適であるが、用途を格別に限定するものではなく、一般機械用、汎用機械用、一般設備用に適用することは差し支えない。また、本発明のベーンポンプは実施例の構成に限定されず、ベーン及びロータが構成を為すポンプであれば、ベーンポンプの形状や形式も任意である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のベーンポンプは、車両に備えられる負圧ブースタの負圧室内を、負圧にするための車両用のベーンポンプに好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…ベーンポンプ、24…吸入ポート、25…制御回路、27…モータの軸、28…ブラシレスモータ、28a…ヨーク、28b…周縁部、28e…ロータ、40…ポンプボディ、45…凹部、63…締結部、81…ベーン室、102…ベアリング、130…排気口(排気ポート)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータの軸と同軸に設けられこのブラシレスモータにより駆動されるベーンポンプであって、
空気を圧縮するベーン室と前記ブラシレスモータのロータとの間に、吸入ポート及び排気ポートの少なくとも一方を備えるとともに前記ロータを回動可能に軸支するベアリングが嵌合されたポンプボディと、
このポンプボディ内に設けられ前記ブラシレスモータを制御する制御回路と、
前記ポンプボディに一体化された形態を呈する前記ブラシレスモータのヨークとを備えたことを特徴とするベーンポンプ。
【請求項2】
請求項1記載のベーンポンプにおいて、
前記ヨークは、前記ポンプボディに前記ヨークの周縁部が全周カシメ結合されていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のベーンポンプにおいて、
前記ポンプボディには、前記ブラシレスモータに対面する部位に前記制御回路が締結具で前記ポンプボディに固定されていることを特徴とするベーンポンプ。
【請求項4】
請求項3記載のベーンポンプにおいて、
前記ブラシレスモータに対面する部位に、前記制御回路を収納する凹部が設けられ、この凹部に前記制御回路が収納されていることを特徴とするベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−188968(P2012−188968A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51911(P2011−51911)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】