説明

ホイール式作業車

【課題】ホイールベースを縮小したり、トレッドを縮小したりすることなく、従来よりも狭い直角進入路幅を有する道路に侵入することができる狭所進入性に優れたホイール式作業車を提供する。
【解決手段】4輪操向機能を有する車輪走行式の下部走行体2を備え、この下部走行体2の上に、垂直軸心回りに旋回自在に搭載され、作業アタッチメントが装着される伸縮ブームを起伏自在に支持する上部旋回体を備えたホイール式作業車1において、前記下部走行体2のホイールベースLWBの中央部の所定間に、この下部走行体2の前後の車幅方向の幅よりも小幅となる括れ部7を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式作業車の改善に係り、より詳しくは、狭所進入性に優れたホイール式作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ホイールクレーンのようなホイール式作業車の場合には、狭所進入性を良くするために、一般に4輪操向機能が付与されている。特に、直角進入路幅は、ホイール式作業車の狭所進入性を表すものである。従来、直角進入路幅を狭くするために、ホイール式作業車のホイールベースを縮小したり、トレッドを縮小したりしていたが、これでは車体の走行安定性が悪化する。例えば、ホイールベースを縮小した場合には走行時にピッチングが発生し、トレッドを縮小した場合にはホイール式作業車の転倒角が厳しくなるため設計が難しくなる。そこで、ホイールベースを縮小したり、トレッドを縮小したりすることなく、車体の前後に設けられているアウトリガの寸法や取付け構成を工夫することにより、ホイール式作業車の狭所進入性を良くするようにしている。
【0003】
以下、狭所進入性を良くするようにした典型的なホイール式作業車の2例の従来例を紹介する。先ず、従来例1に係るホイール式作業車(ホイールクレーン)は、狭所進入性を良くするために、その模式的平面図の図7に示すように構成されている。即ち、前側アウトリガ56と後側アウトリガ57の縮小時長さl寸法は、ホイール式作業車の車体51の車幅Wよりも小さく、車体51の最小回転半径Rで回転時にその回転の最外側端が描く曲線K上に前側アウトリガ56と後側アウトリガ57の最外側端が位置するような寸法に設定されている。
【0004】
従って、この従来例1に係るホイール式作業車によれば、アウトリガ端の最小回転半径が車体51の最小回転半径Rと同一となり、この車体1の最小回転半径Rがホイール式作業車全体の最小回転半径となるため、車体1が曲がり得るところは、ホイール式作業車全体が曲がり得ることになる。即ち、前側アウトリガ56と後側アウトリガ57が曲折走行の邪魔にならず、車体51の小回り性がホイール式作業車に生かされる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、従来例2に係るホイール式作業車は、狭所進入性を良くするために、後述するように構成されている。即ち、車体本体に前後部アウトリガを装着してなる作業車において、前記前後部アウトリガを車体本体における最小旋回半径範囲内の位置に装着したものである。なお、この従来例2では、走行時には垂直軸を支点としてアウトリガを、下部走行体の側面に沿うように回動させて、アウトリガを車体本体における最小旋回半径範囲内に位置させるようにした構成のものも開示している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実開昭63−25672号公報
【特許文献2】実開昭55−147954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例1,2に係るホイール式作業車は、何れも狭所進入性の改善に効果があるため、既に実施されている。ところが、実際の道路の場合には、道路幅はあるものの隅切りされていなかったり、曲がり角等に大きな石が置かれたりしており、上記従来例1,2に係るホイール式作業車のように、ほぼ全長にわたって車幅が同一の下部走行体を備えた構成では、曲がり角に置かれている石に下部走行体に干渉してしまうため、さらなる狭所進入性の向上が望めない。
【0007】
しかしながら、近年では、市街地や住宅地での種々の建築工事において、人件費の削減、工期の短縮のために、ホイール式作業車が使用されるようになってきている。そのため、より路幅が狭い道路でも進入することができる、それなりの作業能力を有するホイール式作業車の具現化に対する要望が高まってきている。
【0008】
従って、本発明の目的は、ホイールベースを縮小したり、トレッド(車幅)を縮小したりすることなく、従来よりも狭い直角進入路幅を有する道路に侵入することができる狭所進入性に優れたホイール式作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、従って、上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るホイール式作業車が採用した手段の要旨は、4輪操向機能を有する車輪走行式の下部走行体を備え、この下部走行体の上に、垂直軸心回りに旋回自在に搭載され、作業アタッチメントが装着される伸縮ブームを起伏自在に支持する上部旋回体を備えたホイール式作業車において、前記下部走行体のホイールベースの中央部の所定間に、この下部走行体の前後の車幅方向の幅よりも小幅となる括れ部を形成させたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項2に係るホイール式作業車が採用した手段の要旨は、請求項1に記載のホイール式作業車において、前記下部走行体の括れ部の運転室側に、この下部走行体に設けた係合部に着脱自在に係合する係止部を備えてなる昇降用ラダーを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るホイール式作業車では、ホイール式作業車の車輪走行式の下部走行体のホイールベースの中央部の所定間に、この下部走行体の車幅方向の幅よりも小幅となる括れ部が形成されているため、たとえ道路の曲がり角等に大きな置石が置かれたりしていても前記括れ部により置石を避けることができる。従って、本発明の請求項1に係るホイール式作業車によれば、従来例1,2に係るホイール式作業車よりも狭い直角進入路幅を有する道路に進入することができるから、従来よりも多くの建築工事に対してホイール式作業車を活用することができ、建築工事における人件費の削減、工期の短縮に大いに寄与することができる。
【0012】
本発明の請求項2に係るホイール式作業車では、下部走行体の括れ部の運転室側に、この下部走行体に設けた係合部に着脱自在に係合する係止部を備えてなる昇降用ラダーが設けられている。従って、本発明の請求項2に係るホイール式作業車によれば、オペレータは昇降用ラダーを使用して容易に運転室に乗り込み、また運転室から地上に下りることができる。そして、ホイール式作業車の走行時には昇降用ラダーを取外しておくことにより、狭い直角進入路幅を有する道路への進入に支障が生じるようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態1乃至3に係るホイール式作業車を、添付図面を順次参照しながら説明する。先ず、本発明の実施の形態1に係るホイール式作業車を、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るホイール式作業車の旋回状態を示す模式的平面図であり、図2は昇降用ラダーの斜視図であり、図3は図2のA−A線断面図である。なお、図4は、旋回状態を示す従来例に係るホイール式作業車の模式的平面図である。
【0014】
図1に示す符号2は、本発明の実施の形態1に係るホイール式作業車1の車輪走行式の後述する構成になる下部走行体である。この下部走行体2は、2輪の前輪3,3と、2輪の後輪4,4との4輪操向により走行し得るように構成されている。この下部走行体2の前端部には前部アウトリガ5が装着されると共に、後端部には後部アウトリガ6が装着されている。また、この下部走行体2の上には、図示しない上部旋回体が垂直軸心回りに旋回自在に搭載されると共に、前記上部旋回体には作業アタッチメントが装着される図示しない伸縮ブームが起伏自在に支持されている。
【0015】
前記下部走行体2のホイールベースLWBの中央部の所定間に、この下部走行体2の前後の車幅Wの幅よりも小幅となる、後述する括れ部7が形成されている。この括れ部7は下部走行体2の車幅方向の両側面に形成される凹所7aからなっており、これら凹所7a,7aは下部走行体2の車幅の中心方向に、rの曲率半径で湾曲している。
【0016】
そして、前記下部走行体2の括れ部7の、前方方向に向って左側の図示しない運転室側の凹所7a側には、後述する構成になる昇降用ラダー9が着脱自在に取付けられている。
この昇降用ラダー9には、図2,3に示すように、下部走行体2の外縁付近の上部に設けられた溝状の係合穴からなる係合部8に挿脱自在に嵌込まれる一対のフック状の係止部9a,9aが設けられている。つまり、この昇降用ラダー9は、一対の係止部9a,9aが係合部8に挿入されて嵌込まれると、この昇降用ラダー9の幅方向の側板9b,9cの端面が凹所7aの湾曲した側面に当接して、その取付け状態が保持され、オペレータが昇降し得るように構成されている。
【0017】
本発明の実施の形態1に係るホイール式作業車1の作用態様を説明する。即ち、本実施の形態1に係るホイール式作業車1では、下部走行体2のホイールベースLWBの中央部の所定間に、この下部走行体2の前後の車幅Wの幅よりも小幅となる括れ部7が形成されているため、たとえ道路の曲がり角等に大きな置石Sが置かれたりしていても括れ部7により置石Sを避けることができる。
【0018】
従って、本実施の形態1に係るホイール式作業車1によれば、ホイール式作業車の旋回状態を示す図1と図4との比較において良く理解されるように、従来例に係るホイール式作業車よりも狭い直角進入路幅LW1(LW1<図4に示す直角進入路幅LW2)を有する道路に進入することができる。例えば、少なくとも1クラス下のホイール式作業車と同等の狭所進入性を得ることが可能になり、従来よりも多くの建築工事に対してホイール式作業車を投入することができるから、建築工事における人件費の削減、工期の短縮に大いに寄与することができる。
【0019】
また、本実施の形態1に係るホイール式作業車1では、下部走行体2の括れ部7の運転室側に、この下部走行体2の係合部8に着脱自在に係合する係止部9aを備えた昇降用ラダー9が設けられている。従って、本実施の形態1に係るホイール式作業車1によれば、オペレータは昇降用ラダー9を使用して容易に運転室に乗込み、また運転室から地上に下りることができる。そして、係るホイール式作業車1の走行時には昇降用ラダー9を取外しておくことにより、狭い直角進入路幅を有する道路への進入に支障が生じるようなことがない。
【0020】
本発明の実施の形態2に係るホイール式作業車を、昇降用ラダーを省略して示すその模式的平面図の図5を参照しながら説明する。即ち、本実施の形態2に係るホイール式作業車1の下部走行体2のホイールベースLWBの中央部の所定間に、この下部走行体2の前後の車幅Wの幅よりも小幅となる、後述する括れ部7が形成されている。この括れ部7は下部走行体2の車幅方向の両側面に形成されてなる平面視長方形の凹所7aからなっており、これら凹所7a,7aは下部走行体2の車幅の中心方向に、所定の深さで窪んでおり、この括れ部7の車幅Wは前後にわたって同一幅に設定されている。
【0021】
従って、本発明の実施の形態2に係るホイール式作業車1によれば、たとえ道路の曲がり角等に大きな置石が置かれたりしていても括れ部7により置石を避けることができるから、本実施の形態2に係るホイール式作業車は、上記実施の形態1に係るホイール式作業車と同等の効果を得ることができる。
【0022】
本発明の実施の形態3に係るホイール式作業車を、昇降用ラダーを省略して示すその模式的平面図の図6を参照しながら説明する。即ち、本実施の形態3に係るホイール式作業車1の下部走行体2のホイールベースLWBの中央部の所定間に、この下部走行体2の前後の車幅Wの幅よりも小幅となる、後述する括れ部7が形成されている。この括れ部7は下部走行体2の車幅方向の両側面に形成されてなる平面視二等辺三角形の凹所7aからなっており、これら凹所7a,7aは下部走行体2の車幅の中心方向に、所定の深さで窪んでおり、この括れ部7の車幅Wは前後にわたって同一幅に設定されている。
【0023】
従って、本発明の実施の形態3に係るホイール式作業車1によれば、たとえ道路の曲がり角等に大きな置石が置かれたりしていても括れ部7により置石を避けることができるから、本実施の形態2に係るホイール式作業車は、上記実施の形態1に係るホイール式作業車と同等の効果を得ることができる。なお、この実施の形態3に係るホイール式作業車1の凹所7aの場合、二等辺三角形の頂角にRが形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係るホイール式作業車の旋回状態を示す模式的平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係り、昇降用ラダーの斜視図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】旋回状態を示す従来例に係るホイール式作業車の模式的平面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係り、昇降用ラダーを省略して示すホイール式作業車の模式的平面図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係り、昇降用ラダーを省略して示すホイール式作業車の模式的平面図である。
【図7】従来例1に係るホイール式作業車の模式的平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…ホイール式作業車,2…下部走行体,3…前輪,4…後輪,5…前部アウトリガ,6…後部アウトリ,7…括れ部,7a…凹所,8…係合部,9…昇降用ラダー,9a…係止部,9b…側板,9c…側板
W1,LW2…直角進入路幅,LWB…ホイールベース,r…括れ部の曲率半径,S…置石,W…車幅,W…括れ部の車幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4輪操向機能を有する車輪走行式の下部走行体を備え、この下部走行体の上に、垂直軸心回りに旋回自在に搭載され、作業アタッチメントが装着される伸縮ブームを起伏自在に支持する上部旋回体を備えたホイール式作業車において、前記下部走行体のホイールベースの中央部の所定間に、この下部走行体の前後の車幅方向の幅よりも小幅となる括れ部を形成させたことを特徴とするホイール式作業車。
【請求項2】
前記下部走行体の括れ部の運転室側に、この下部走行体に設けた係合部に着脱自在に係合する係止部を備えてなる昇降用ラダーを設けたことを特徴とする請求項1に記載のホイール式作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−62661(P2008−62661A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239209(P2006−239209)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】