説明

ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ阻害剤としてのチアゾリルウレア誘導体

本発明は、式I
【化1】


〔式中、基R−Rは明細書に定義のとおりである〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、その組成物、ならびにホスファチジルイノシトール3−キナーゼの阻害によって改善される疾患の処置における当該化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソキサゾール−3−イル−ウレア誘導体、それらの製造方法、それらの使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。
【発明の概要】
【0002】
より具体的には、本発明は、式I
【化1】

〔式中、RはC1−3アルキルであり;
は、各々所望によりハロゲン、SO1−3アルキル、アシルおよび5もしくは6員ヘテロアリールから選択される1個以上の置換基によって置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニリル;あるいは所望により置換された5もしくは6員ヘテロアリールであり;
はHまたはC1−3アルキルであり;
は、各々所望によりC1−4アルキルで置換されたフェニル、ナフチルまたはビフェニリル;または所望により置換された、ヘテロ原子として少なくとも1個のNを含む5もしくは6員ヘテロアリールである;
ただし、RがSO1−3アルキルおよび所望によりハロゲンで置換されたフェニルであるとき、Rはナフチル以外であり;そして
はHまたはC1−4アルキルである〕
の化合物またはその塩を提供する。
【0003】
アシルは、RがC1−4アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはベンジルである基RCOであり得る。
【0004】
5または6員ヘテロアリールは、N、OおよびSから選択される第2のヘテロ原子を含んでいてもよい。5または6員ヘテロアリールの例には、例えばピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、イソオキサゾリル、ピリジルまたはチエニルが含まれる。ヘテロアリールはC1−4アルキル、例えばCHでモノまたはジ置換されていてもよい。置換基は炭素原子および/または窒素原子に結合し得る。ヘテロアリールは好適には、少なくとも1個の窒素原子および/または硫黄原子を環に含む。ある態様において、ヘテロアリール基は少なくとも1個の窒素原子を環に含む。
【0005】
好ましくは、Rとしてのナフチルは置換されていない。
【0006】
ハロゲンはフッ素、塩素または臭素、好ましくはフッ素または塩素であり得る。
【0007】
下記意味が独立して、集合的に、または任意の組合せまたはサブコンビネーションにおいて好ましい:
1. RがCHである
2. Rが例えば実施例に記載の置換フェニルである。
3. Rがヘテロアリール、例えばピラゾリルでモノ置換されたフェニルである。
4. Rが非置換5または6員ヘテロアリール、例えばピリジルである。
5. RがHである。
6. Rが非置換ナフチルである
7. Rが例えば実施例に記載の置換もしくは非置換ヘテロアリールである。
8. RがHである。
【0008】
式Iの化合物は遊離形または塩形、例えば有機もしくは無機酸、例えば塩酸もしくは酢酸との酸付加塩形で存在し得る。
【0009】
式Iの化合物が分子内に不斉中心を有するとき、様々な光学異性体が得られる。本発明はまた、エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマーおよびそれらの混合物を含む。例えば、Rとしてアルキル基を有する炭素原子は、RまたはS立体配置を有し得る。
【0010】
本発明はまた、式Iの化合物の製造方法であって、式II
【化2】

〔式中、RおよびRは上記定義のとおりである〕
の化合物を式III
【化3】

〔式中、R、RおよびRは上記定義のとおりである〕
の化合物と反応させて、得られた遊離形または塩形の式Iの化合物を回収し、そして所望により得られた遊離形の式Iの化合物を所望の塩形に、またはその逆に、変換することを含む方法を含む。
【0011】
方法を、当該技術分野で既知の方法に従って、または後記実施例に記載のとおりに行うことができる。例えば、式IIの化合物を式IIIの化合物と、溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、塩基、例えば有機アミン、例えばトリエチルアミンの存在下で反応させることができる。
【0012】
出発物質として使用する式IIの化合物を、式IV
【化4】

〔式中、RおよびRは上記定義のとおりである〕
の化合物をカルボニルジイミダゾールと反応させて製造することができる。反応を、好適な溶媒中で、例えばWO05/021519A2またはWO04/096797A1に記載のとおり、または後記の通りに行うことができる。
【0013】
式IVの化合物を、例えばWO05/021519A2またはWO04/096797A1に記載のとおりに製造することができる。式IVの化合物を、式V
−Hal V
〔式中、Rは上記定義のとおりであり、HalはCl、BrまたはIである〕
の化合物を式VI
【化5】

〔式中、Rは上記定義のとおりであり、Wは窒素保護基、例えばアセチルである〕
の化合物と反応させて製造することができる。
【0014】
反応を、触媒、例えばパラジウム触媒、例えばPd(t−ブチル)と、塩基、例えば炭酸セシウムの存在下、適当な溶媒、例えばジメチルホルムアミド中、高温で行うことができる。反応の後、保護基Wの除去を標準的な条件下で行うことができる。
【0015】
あるいは、式IVの化合物を、式VII
【化6】

〔式中、Rは上記定義のとおりである〕
の化合物を式VIII
【化7】

〔式中、RおよびW上記定義のとおりである〕
の化合物と反応させて製造することができる。Wはベンズヒドリリデンであってもよい。
【0016】
反応を、触媒、例えばパラジウム触媒、例えばテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)と、塩基、例えば炭酸セシウムの存在下、好適な溶媒、例えばジオキサン/水中、高温で行い、その後保護基Wを標準的な条件下で除去することができる。
【0017】
式VおよびVIIの化合物は商業的に入手可能であるか、または既知の方法に従って製造することができる。
【0018】
式IIIの化合物を、式IX
【化8】

〔式中、Rは上記定義のとおりであり、Xは例えばカップリング反応で使用されるようなアミノ保護基である〕
の化合物と式X
【化9】

〔式中、RおよびRは上記定義のとおりである〕
の化合物をカップリングさせ、その後アミノ保護基を脱保護して、製造することができる。アミノ保護基Xは好ましくは、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)またはベンジルオキシカルボニル(CbZ)基であってもよく、好ましい脱保護反応は、Lott, Richard S.; Chauhan, Virander S.; Stammer, Charles H. Trimethylsilyl iodide as a peptide deblocking agent; Journal of the Chemical Society, Chemical Communications (1979), (11), 495-6に記載の、ヨウ化TMSでの処理である。
【0019】
式IXおよびXの化合物は商業的に入手可能である。
【0020】
出発物質の製造が具体的に記載されていないとき、当該化合物は既知であるか、当該技術分野で、例えばWO 05/021519またはWO04/096797において既知の方法と同様に、あるいは本明細書に記載のとおり、製造することができる。
【0021】
下記実施例は本発明を、何ら限定することなく説明する。
【0022】
使用する略語は以下のとおりである:CDIは1,1’−カルボニルジイミダゾールである、DCMはジクロロメタンである、DMFはジメチルホルムアミドである、DMSOはジメチルスルホキシドである、TEAはトリエチルアミンである、THFはテトラヒドロフランである、EtOAcは酢酸エチルである、EtOHはエタノールである、IPAはiso−プロピルアルコールである、MeOHはメタノールである、MeCNはアセトニトリルである、TLCは薄層クロマトグラフィーである、WSCDは水溶性カルボジイミドである、HOATは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾ−トリアゾールである、TMSIはトリメチルヨードシランである、Pd(dba)はトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)である、PCyはトリシクロヘキシルホスフィンである。
【0023】
中間体A1:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−アセチル−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
工程1:ベンズヒドリリデン−(4−メチル−チアゾール−2−イル)−アミン
【化10】

ベンゾフェノンイミン(39.8g、0.22mol)を2−アミノ−4−メチル−1,3−チアゾール(30g、260ml)のトルエン(450ml)溶液に加え、還流温度で、不活性雰囲気下、18時間加熱する。混合物を室温に冷却し、クエン酸バッファー(2×250ml)、水(2×250ml)、塩水(2×250ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSOおよび脱色炭)、濾過し、蒸発させて橙色固体を得る。
【0024】
工程2:ベンズヒドリリデン−(5−ブロモ−4−メチル−チアゾール−2−イル)−アミン:
【化11】

N−ブロモスクシンイミド(26.8g、0.15mol)をベンズヒドリリデン−(4−メチル−チアゾール−2−イル)−アミン(41.9g、0.15mol)の氷酢酸(200ml)溶液に加え、1.25時間撹拌する。固体を濾取し、真空下で乾燥させる。これをDCM(400ml)に溶解させ、重炭酸ナトリウム溶液(2×400ml)、水(2×400ml)、塩水(2×400ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて黄色固体を得て、これを真空下で乾燥させる。
【0025】
工程3:1−{4−[2−(ベンズヒドリリデン−アミノ)−4−メチル−チアゾール−5−イル]−フェニル}−エタノン
【化12】

水(10ml)中4−アセチルフェニルボロン酸(1.8g、0.011mol、1.1当量)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.7g、0.6mmol)、炭酸セシウム(9.8g、0.03mol)を、ベンズヒドリリデン−(5−ブロモ−4−メチル−チアゾール−2−イル)−アミン(3.5g、0.01mol)のジオキサン(80ml)溶液に加え、還流温度で6時間加熱する。溶媒を真空下で除去して油状懸濁液を得て、これをDCM(75ml)と飽和重炭酸ナトリウム(75ml)で分配する。層を分離させ、有機を水(75ml)および塩水(75ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSOおよびチャコール)、濾過し、蒸発させて褐色固体を得る。
【0026】
工程4:1−[4−(2−アミノ−4−メチル−チアゾール−5−イル)−フェニル]−エタノン
【化13】

2M 塩酸(45ml)をTHF(175ml)中1−{4−[ベンズヒドリリデン−アミノ]−4−メチル−チアゾール−5−イル}−フェニル}−エタノン(4.0g、0.01mol)に加え、1時間撹拌する。混合物を0.5M 塩酸(50ml)、イソヘキサン(100ml)およびEtOAc(50ml)で分配する。水相を4M NaOH(30ml)で塩基性化させ、DCM(2×100ml)で抽出する。有機を乾燥させ(MgSO)、濾過し、蒸発させて黄色固体を得る。
【0027】
工程5:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−アセチル−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
【化14】

1−[4−(2−アミノ−4−メチル−チアゾール−5−イル)−フェニル]−エタノン(0.57g、2.45mmol)溶液をTHF(10ml)とDCM(20ml)の混合物に溶解させ、油浴中で50℃に加熱する。CDIを加え(0.64g、3.92mmol)、反応混合物を50℃でさらに2時間加熱すると、淡黄色沈殿が形成される。室温に冷却後、沈殿を濾過し、DCMで洗浄し、高真空下で乾燥させて表題化合物を得る。
【0028】
中間体A2:イミダゾール−1−カルボン酸[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミド
【化15】

工程1:1−[4−(2−ニトロ−プロピル)−フェニル]−1H−ピラゾール
【化16】

4−ピラゾール−1−イル−ベンズアルデヒド(7.0g、40.65mmol)、酢酸アンモニウム(0.94g、12.19mmol)およびニトロエタン(24ml、333.3mmol)を含む混合物を還流温度で10時間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、得られた固体をEtOAcに溶解させ、水(3×50ml)で洗浄する。有機部を乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮して、表題化合物を橙色固体として得る。[MH+ 230.1].
【0029】
工程2:1−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−プロパン−2−オン:
【化17】

鉄(10.7g、191.9mmol)の氷酢酸(150ml)懸濁液を、撹拌下、アルゴンの不活性雰囲気下で40℃に加熱し、1−[4−(2−ニトロ−プロピル)−フェニル]−1H−ピラゾール(8.8g、38.39mmol)の氷酢酸(100ml)溶液で処理する。反応混合物を100℃に2時間加熱し、室温に冷却させる。混合物を氷水(200ml)に注ぎ、5分間撹拌し、セライトで濾過し、DCM(50ml)で洗浄する。濾液の有機部を分離し、水をDCM(150ml)で抽出する。有機部を合併し、水(3×50ml)、塩水(1×25ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮して表題化合物を赤色油状物として得る。[MH+ 201.25].
【0030】
工程3:4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イルアミン:
【化18】

1−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−プロパン−2−オン(6.9g、34.46mmol)のピリジン(30ml)溶液を、チオウレア(2.6g、34.46mmol)、次にヨウ素(8.7g、34.46mmol)で処理し、80℃に加熱する。8時間後、反応混合物を室温に冷却させ、得られた懸濁液を濾過し、EtOAcで洗浄する。濾液を真空下で濃縮して、油状物を得る。油状物をEtOAc(200ml)に溶解させ、NaHCO(2×100ml)、塩水(100ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮して粘稠性固体を得る。EtOHを粗残渣に加え、得られた沈殿を濾過し、乾燥させて表題化合物を得る(MH+ 257.29)。
【0031】
あるいは、4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イルアミンを鈴木経路によって製造することができる:
工程3a:ベンズヒドリリデン−[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミン
【化19】

1−(4−フェニルボロン酸)−1H−ピラゾール(製造は下記)(275mg、1.44mmol)、ベンズヒドリリデン−(5−ブロモ−4−メチル−チアゾール−2−イル)−アミン(中間体A1、工程2)(468mg、1.31mmol)、Pd(dba)(12mg、0.013mmol)、およびPCy(87mg、0.31mmol)をアルゴン下、ジオキサン(4ml)および水性リン酸カリウム(1.76ml、2.23mmol)溶液中で撹拌する。混合物を100℃で18時間加熱する。過剰の溶媒を真空下で除去し、残渣をシリカに前吸着させる。シリカのクロマトグラフィーで精製して(イソヘキサン中10%−30%酢酸エチルのグラジエント混合物で溶出)、表題化合物を得る。
【0032】
1−(4−フェニルボロン酸)−1H−ピラゾールの製造:
【化20】

1−(4−ヨードフェニル)−1H−ピラゾール(7.71g、28.5mmol)をTHF(100ml)に、不活性条件下で溶解させる。トリエチルボロネート(4.9ml、29.07mmol)を加え、混合物を−78℃に冷却する。n−ブチルリチウムをゆっくりと、温度を−78℃に維持して加える。混合物を室温に18時間にわたって温める。5M 塩酸(30ml)を加え、混合物を1時間撹拌し、酢酸エチル(2×200ml)で抽出する。合併した有機を塩水(250ml)、10% ナトリウムチオスルフェイト溶液(250ml)および6M 水酸化ナトリウム溶液(250ml)で洗浄する。生成物を塩基性溶液から、5M 塩酸を加えて沈殿させる。固体を濾過し、真空下で乾燥させる。[MH+ 189.06]
【0033】
工程3b:4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イルアミン
【化21】

この化合物をベンズヒドリリデン−[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミンから、1−[4−(2−アミノ−4−メチル−チアゾール−5−イル)−フェニル]−エタノン(中間体A1 工程4)と同様に製造する。
【0034】
工程4:イミダゾール−1−カルボン酸[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミド
【化22】

4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イルアミン(1.5g、5.85mmol)の無水DCM懸濁液を、CDI(1.1g、7.02mmol)、次にTEA(1.2ml、8.77mmol)で処理する。得られた橙色懸濁液を還流温度に3時間加熱し、室温に一晩冷却させる。懸濁液を濾過し、DCMで洗浄して表題化合物を得る。 [MH+ 315.35].
【0035】
この固体はイミダゾール−ウレア中間体(A1)と、様々な量の対応するイソシアネート、および反応条件下でイミダゾールの可逆性熱脱離から得られるイミダゾールから成る。イミダゾール−ウレア中間体およびイソシアネート中間体はウレアの前駆体として等しく好適であるため、この固体を次の工程で用いる。
【0036】
中間体A3:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−アセチル−3−フルオロ−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
【化23】

工程1:N−(4−メチル−チアゾール−2−イル)−アセトアミド:
【化24】

冷温(5℃)の無水酢酸(237ml、2.51mol)溶液に、撹拌下、2−アミノ−4−メチルチアゾール(80g、0.697mol)を少量ずつ加える。2−アミノ−4−メチルチアゾールを溶解させるため、反応混合物を温めるが、35℃未満に保つ。溶液が形成されると、反応混合物を5℃に冷却し、一晩撹拌する。溶媒を真空下で除去し、固体を真空オーブン中で一晩乾燥させる。得られた固体をイソヘキサン(100ml)で粉砕し、再び乾燥させる。EtOAc/イソヘキサンから再結晶化させて、表題生成物を淡黄色固体として得る。
【0037】
下記合成は、式(Vi)の中間体を介して式(I)の化合物とする‘Heck’経路の代表である:
工程2:N−[5−(4−アセチル−3−フルオロ−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アセトアミド
【化25】

乾燥、脱気DMF(25ml)を1−(4−ブロモ−2−フルオロ−フェニル)−エタノン(WO 2003095441)(1.25g、5.76mmol)、N−(4−メチル−チアゾール−2−イル)−アセトアミド(0.75g、4.80mmol)、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.245g、0.48mmol)および炭酸セシウム(3.13g、9.60mmol)に加え、反応混合物を150℃に4時間加熱する。反応混合物をセライトで濾過し、濾液を真空下で減少させる。粗生成物をシリカのクロマトグラフィーで精製して(2:1 イソヘキサン:EtOAcで溶出)、表題化合物を黄色固体として得る。 (MH+) 293.25
【0038】
工程3:1−[4−(2−アミノ−4−メチル−チアゾール−5−イル)−2−フルオロ−フェニル]−エタノン
【化26】

EtOH(15ml)中N−[5−(4−アセチル−3−フルオロ−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アセトアミド(0.46g、0.171mmol)を6M HCl(3.14ml)で処理し、マイクロウェーブ照射を用いて100℃で加熱する。90分後、溶媒を真空下で除去し、得られた固体を水(25ml)に溶解させる。2M NaOHを加えてpHをpH7に調節する。沈殿した黄色固体を濾過し、真空下で乾燥させて表題化合物を得る。(MH+ 251.22).
【0039】
工程4:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−アセチル−3−フルオロ−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
【化27】

無水DCM(10ml)を1−[4−(2−アミノ−4−メチル−チアゾール−5−イル)−2−フルオロ−フェニル]−エタノン(0.25g、1.0mmol)およびCDI(0.259g、1.6mmol)に加え、混合物を還流温度で4時間加熱する。得られた懸濁液を濾過し、真空下で乾燥させて表題化合物を得る。
【0040】
中間体A4:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−メチルスルホニル−3−フルオロ−フェニル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
これをWO05/021519A2に記載のとおり製造することができる。
【0041】
中間体A5:イミダゾール−1−カルボン酸[5−(4−ピリジル)−4−メチル−チアゾール−2−イル]−アミド
これをWO04/096797A1に記載のとおり製造することができる。
【0042】
中間体B1:3−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−プロピオンアミドヒドロアイオダイド
【化28】

工程1:[2−(5−メチル−イソキサゾール−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
【化29】

HOAT(0.216g、1.58mmol)およびWSCD(0.985g、6.34mmol)のDCM(4ml)溶液を、5−メチル−イソキサゾール−3−イルアミン(0.57g、5.81mmol)およびN−Boc−β−アラニン(1.0g、5.28mmol)で処理し、室温で18時間撹拌する。得られた混合物をDCM(10ml)で希釈し、水および塩水で洗浄する。有機部を乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮させて粗残渣をシリカのクロマトグラフィーで精製して(EtOAc−EtOHで溶出、必要であれば極性を増加させる)、表題化合物を得る。
【0043】
工程2:3−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−プロピオンアミドヒドロアイオダイド
[2−(5−メチル−イソキサゾール−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.1g、0.37mmol)のMeCN(3ml)溶液に、撹拌下、TMSI(0.11ml、0.74mmol)を加える。30分後、MeOH(1ml)を加えて黄色懸濁液を得て、これを濾過により回収し、EtOAcで洗浄して表題化合物を得る。濾液を濃縮してさらなる生成物を得る。
【0044】
あるいは、この中間体を塩酸塩として製造することができる:
DMAP(9.77g)、TEA(55.23ml)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(49.01ml)のDCM溶液を、5−メチル−イソキサゾールe−3−イルアミン(28.8g)およびBoc−β−Ala−OH(50g)で処理し、室温で18時間撹拌する。得られた混合物をDCM(1750ml)で希釈し、10% クエン酸(2×500ml)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2×500ml)および塩水(600ml)で洗浄する。有機部を乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮し、粗残渣をイソヘキサン(750ml)で1時間撹拌する。得られた固体をジオキサン(400ml)に溶解させ、ジオキサン(350ml)中4M HClで処理する。1時間後、沈殿を濾取し、ジオキサン(100ml)で洗浄して3−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−プロピオンアミドヒドロクロライドを得る。(MH+ 169.84)
【0045】
中間体B2:3−アミノ−N−ピリジン−3−イル−プロピオンアミドヒドロアイオダイド:
【化30】

工程1:[2−(ピリジン−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル.
TEA(2.2ml、16mmol)をBOC−β−アラニン(2.4g、12.7mmol)、HOAt(0.68g、5.0mmol)、EDCl.HCl(2.43g、12.7mmol)のDCM溶液に撹拌下で加え、室温で撹拌する。1時間後、3−アミノピリジン(1.0g、10.6mmol)を加え、混合物を室温でさらに3時間撹拌する。混合物をDCM(200ml)で希釈し、0.1M HCl、次に1M NaOHで洗浄する。有機部を乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮して表題化合物を白色結晶固体として得る。
【0046】
工程2:3−アミノ−N−ピリジン−3−イル−プロピオンアミドヒドロアイオダイド:
[2−(ピリジン−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.075g、0.28mmol)のMeCN(3ml)懸濁液に、撹拌下、TMSI(0.05ml、0.34mmol)を滴下する。30分後、MeOH(1ml)を加え、撹拌をさらに20分間続ける。溶媒を真空下で除去し、粗残渣をMeOH/EtOAcで粉砕して、表題化合物をクリーム色結晶固体として得る。
【0047】
中間体B3:2−アミノ−N−ピリジン−3−イル−プロピオンアミドヒドロアイオダイド
【化31】

この化合物を中間体B2と同様に、3−アミノピリジンを2−アミノピリジンと入れ替えて製造する。
【0048】
中間体B4:3−アミノ−N−イソキサゾール−3−イル−プロピオンアミドヒドロクロライド
【化32】

工程1:[2−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル:
BOC−β−アラニン(1g、5.29mmol)、WSCD(0.985g、6.34mmol)およびHOAT(0.216g、1.59mmol)を含むDCM中混合物を、3−アミノイソキサゾール(0.43ml、5.81mmol)で処理し、一晩撹拌する。得られた混合物を水、塩水で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空下で濃縮する。粗生成物をシリカのクロマトグラフィーで精製して(EtOAcで溶出)、表題化合物を白色固体として得る。
【0049】
工程2:3−アミノ−N−イソキサゾール−3−イル−プロピオンアミドヒドロクロライド
ジオキサン(5ml)中[2−(イソキサゾール−3−イルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.702g、2.76mmol)をジオキサン(3.44ml)中4M HClで処理し、室温で3日間撹拌する。溶媒を真空下で除去し、トルエンと共沸させて、表題化合物を淡褐色固体として得る。
【0050】
脱保護プロセスを、TMSIを用いて、中間体B2(工程2)の製造に記載のとおり行うこともできる。
【0051】
中間体B5:3−アミノ−N−(2,5−ジメチル−2H−ピラゾール−3−イル)−プロピオンアミド
【化33】

この化合物を、中間体B4と同様に、3−アミノイソキサゾール(工程1)を1,3−ジメチルピラゾール−5−アミンと入れ替えて製造する。
【0052】
中間体B6:3−アミノ−N−(2−ナフチル)−プロピオンアミド
この化合物は商業的に入手可能である。
【0053】
実施例1:3−{3−[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−ウレイド}−N−ピリジン−3−イル−プロピオンアミド
【化34】

イミダゾール−1−カルボン酸[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミド(中間体A1)(0.1g、0.28mmol)および3−アミノ−N−ピリジン−3−イル−プロピオンアミドヒドロアイオダイド(中間体B2)(0.083g、0.28mmol)の無水DMF(1ml)懸濁液を、撹拌下、TEAで処理する。室温で1時間撹拌後、溶媒を真空下で除去し、粗残渣をシリカのクロマトグラフィーで精製して(EtOAc/EtOH(10:1から5:1に増加)で溶出)固体を得て、これをEtOAc/EtOHから再結晶化して表題化合物を得る。[MH+ 448.49]
【0054】
実施例2:N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−3−{3−[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−ウレイド}−プロピオンアミド
【化35】

3−アミノ−N−(5−メチル−イソキサゾール−3−イル)−プロピオンアミドヒドロクロライド(中間体B1、HCl脱保護により製造した)(0.1g、0.49mmol)およびトリエチルアミン(0.164ml、1.18mmol)の混合物をDMF(4ml)中で撹拌する。イミダゾール−1−カルボン酸[4−メチル−5−(4−ピラゾール−1−イル−フェニル)−チアゾール−2−イル]−アミド(中間体A2)(0.16g、0.47mmol)を加え、混合物を室温で18時間撹拌する。水(20ml)を加え、混合物を30分間撹拌する。固体を濾取し、水で洗浄し、真空下、45℃で4時間乾燥させて表題化合物を得る。
【0055】
下記方法に従って、式XI
【化36】

の化合物を下記表1に示す。化合物を遊離形で得る。
【0056】
イミダゾール−ウレア中間体(A)およびアミン(B)からさらなる例の製造のための一般的方法:
無水DMF(0.12mmol)中アミン(B)(0.12mmol)をDMF(1.0ml)中イミダゾールウレア中間体(A)(0.12mmol)の溶液/懸濁液に加える。とりわけ一方または両方の出発物質が塩として存在するとき、トリエチルアミンを加えて反応速度を上昇させる(塩1当量あたりEtN 1.1当量)。反応混合物を所望により、透明な溶液が得られるまで超音波処理することができる。反応を、室温から70℃で、出発物質が消費されるまで(30分から24時間)進行させる。完了すると、混合物を真空下で濃縮して溶媒を除去する。生成物を標準的な方法、例えば結晶化、クロマトグラフィーまたはHPLCで精製することができる。
【表1】

【0057】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えばインビトロおよびインビボ試験で示されるとおり、例えばホスファチジルイノシトール3−キナーゼ酵素(PI3K)、とりわけδアイソフォームの阻害剤として有用な薬理学的特徴を示し、したがって治療に適用される。
【0058】
式Iの化合物は、下記アッセイにおいて測定されるとおり、PI3Kδアイソフォームに対する阻害活性を示す:
PI3Kデルタ酵素アッセイはシンチレーション近接アッセイ(SPA)技術に基づく。ヒトPI3Kデルタを昆虫細胞の組換えタンパク質として発現させる。PI3Kデルタ活性を、シンチレーション近接アッセイを用いてホスファチジルイノシトール(PI)のリン酸化を測定することによってアッセイする。簡単に説明すると、キナーゼ反応を最終体積50μl/ウェルで行う。アッセイ中ATPおよびPIの最終濃度は、それぞれ5μMおよび6μg/mlである。PI3Kデルタを加えて反応を開始させ、室温で90分インキュベーションした後、コムギ胚芽凝集素SPAビーズ50μlを加えて終了させる。このアッセイにおいて、式Iの化合物は7nMから275nMのIC50値(50%阻害に必要な濃度)を示す。例えば、実施例2の化合物は5nMのIC50値を有する。
【0059】
式Iの化合物は、対応するPI3Kアイソフォームを用いた対応するアッセイによって測定されるとおり、α、βまたはγアイソフォームに対して選択性を示す。とりわけ式Iの化合物、例えば実施例2の化合物は、δアイソフォームに対する化合物のIC50値とα、βまたはγアイソフォームに対する化合物のIC50値の比によって測定されるとおり、α、βまたはγアイソフォームに対して少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍の、δアイソフォーム選択性を有する。
【0060】
細胞PI3Kデルタアッセイ。Rat−1細胞をヒトPI3Kデルタ構造物(pcDNA3 PIK3デルタ、C末端にCaaXボックスを含む)を、FUGENEトランスフェクションキットを用いて一時的にトランスフェクトする。CaaXボックスは、細胞内膜/細胞膜に標的化することによってPI3Kを活性化するイソプレノイド基の結合を伝達する。続いて、PI3Kデルタ依存性Aktリン酸化を、試験化合物の存在下または無しで、R&D SystemsのホスホAkt ELISAキットを用いて試験して定量する。サンプルによる阻害率を計算し、50%阻害に必要な濃度(IC50値)を決定する。このアッセイにおいて、式Iの化合物はIC50値≦1μMを有し;例えば実施例2の化合物は22nMのIC50を有する。
【0061】
さらにまた、下記アッセイにおいて、式Iの化合物はB細胞およびT細胞応答を阻害する:
B細胞増殖アッセイ。nu/nu Balb/cマウスの脾臓細胞懸濁液を製造し、Iscoves Medium中2×10細胞/mlに調節し、その後10μg/ml モノクローナル抗−マウスIgM抗体(クローンb−7−6)を加える。試験化合物をDMSOに、10mMで溶解させ、完全Iscoves Mediumで希釈する。細胞懸濁液100μlを、化合物溶液100μlを含むウェルに移して最終濃度2×10細胞/ウェルおよび5μg/ml モノクローナル抗マウスIgM抗体とする。プレートを3日間、37℃、5% COでインキュベートする。細胞増殖を[H]チミジンの導入によって、16時間のパルス後に測定する。試験化合物による阻害率を計算し、50%阻害に必要な濃度(IC50値)を決定する。このアッセイにおいて、式Iの化合物はIC50<1μMを示す。例えば、実施例2の化合物は15nMのIC50を有する。
【0062】
混合リンパ球反応(MLR)。2方向MLRを標準的な方法に従って行う。簡単に説明すると、CBAおよびBALB/cマウスの脾臓細胞(各株から1.6×10細胞/ウェル、平底組織培養マイクロタイタープレート中、合計3.2×10)を、10% 胎児ウシ血清、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、50μM 2−メルカプトエタノールおよび連続希釈試験化合物を含むRPMI培地中でインキュベートする。4日間インキュベーション後、1μCi[H]チミジンを培養物に加える。さらに5時間のインキュベーション期間の後、細胞を収穫し、取り込まれたH−チミジンを標準的な方法に従って測定する。サンプルによる阻害率を計算し、50%阻害に必要な濃度(IC50値)を決定する。このアッセイにおいて、式Iの化合物は20nMから200nMのIC50値を有する。実施例2の化合物は、例えば、26nMのIC50値を有する。
【0063】
式Iの化合物は、例えばSzarka et al, J. Immunol. Methods (1997) 202:49-57; Renzi et al, Am. Rev. Respir. Dis. (1993) 148:932-939; Tsuyuki et al., J. Clin. Invest. (1995) 96:2924-2931;および Cernadas et al (1999) Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 20:1-8に記載の気道炎症または他の炎症性状態の動物モデル、例えばマウスまたはラットモデルにおいて示されるとおり、炎症性状態、例えば炎症性気道疾患の阻害に効果を示す。
【0064】
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、したがって、Pi3キナーゼ酵素の活性化によって介在される状態、疾患または障害、とりわけ炎症性、アレルギー性または自己免疫性状態の処置および/または予防に有用である。
【0065】
したがって、式Iの化合物は、例えば組織損傷、気道炎症、気管支過活動、リモデリングまたは疾患進行を引き起こす炎症性または閉塞性気道疾患の処置に有用である。本発明が適用され得る炎症性または閉塞性気道疾患には、内因性(非アレルギー性)喘息および外因性(アレルギー性)喘息のいずれもを含むあらゆるタイプまたは起源の喘息、軽度の喘息、中度の喘息、重度の喘息、気管支喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息および細菌感染によって誘導される喘息が含まれる。喘息の処置は、例えば喘鳴症状を示し、そして「喘鳴小児」と診断されたもしくは診断される可能性があり、主要な医学的関心事項として確立された患者カテゴリーであり、そして現在ではしばしば初期または早期喘息と定義される4または5歳未満の対象の処置を含むことが理解される。(簡便さのため、この特定の喘息状態を「小児喘鳴症候群」と称する。)
【0066】
喘息の処置における予防効果は、例えば急性喘息の症状発病または気管支収縮発作の頻度または重症度減少、肺機能の改善または気道過反応性の改善によって示される。これはさらに、他の対症療法、すなわち症状発病が起こったとき、その限定または停止のためのまたはそれを意図する治療によって必要とされる、例えば抗炎症剤(例えばコルチコステロイド)または気管支拡張剤を減少することによって示され得る。喘息の予防効果は、とりわけ、「モーニング・ディッピング(morning dipping)」の傾向がある対象において明確であり得る。「モーニング・ディッピング」は、実質的な割合の喘息において共通であり、例えばおおよそ朝4〜6時、すなわち喘息の症状治療の直前の投与から通常実質的に離れた時点での喘息発症によって特徴付けられる喘息症候群と理解される。
【0067】
他の炎症性または閉塞性気道疾患および本発明が適用可能である状態には、急性肺損傷(ALI)、成人/急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患、気道疾患もしくは肺疾患(COPD、COADもしくはCOLD)、例えば慢性気管支炎もしくはそれに関連する呼吸困難、肺気腫、ならびに他の薬剤療法、とりわけ他の吸入薬剤療法の結果としての気道過活動の増悪が含まれる。本発明はまた、例えば急性、アラキン酸性、カタル性、クループ性、慢性もしくは結核性気管支炎を含むあらゆるタイプまたは起源の気管支炎の処置に適用可能である。本発明を適用可能なさらなる炎症性または閉塞性気道疾患には、気管支拡張症、あらゆるタイプおよび起源の塵肺症(炎症性、通常職業性肺疾患、これはしばしば慢性または急性であろうと、気道閉塞を伴い、粉塵のくり返し吸入によって発症する)、例えばアルミニウム肺症、炭粉沈着症、石綿肺症、石肺症、嚢胞性線維症、ダチョウ塵肺症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症および綿肺症が含まれる。
【0068】
とりわけ好酸球活性化の阻害に関連したそれらの抗炎症性活性の観点から、本発明の薬剤は、好酸球関連障害、例えば好酸球増加、とりわけ気道の好酸球関連障害(例えば、肺組織の病的好酸球性浸潤)例えば気道および/または肺に作用するような好酸球過増加、ならびに例えば、Loeffler症候群、好酸球性肺炎、寄生(とりわけ後生動物)侵入(熱帯性好酸球増加を含む)、気管支肺のアスペルギルス症、結節性多発性動脈炎(Churg−Strauss症候群を含む)、好酸球性肉芽腫および薬剤反応によって引き起こされる気道の好酸球関連障害の処置に有用である。
【0069】
さらにまた、式Iの薬剤は、皮膚の炎症性またはアレルギー性状態、例えば乾癬、過敏性接触性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、およびさらに湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫介在性障害の皮膚症状、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、多形性紅斑、疱疹状皮膚炎、強皮症、白斑、過敏性血管炎、じんま疹、類天疱瘡、エリテマトーデス、天疱瘡(pemphisus)、後天性表皮水疱症、および他の炎症性またはアレルギー性皮膚状態の処置にも有用である。
【0070】
式Iの化合物は、他の疾患または状態、とりわけ炎症性要素を有する疾患または状態の処置、例えば眼の疾患および状態、例えば結膜炎、乾性角結膜炎および春季結膜炎、および自己免疫応答が関与するか、自己免疫性要素もしくは病因を有する炎症性疾患、例えば自己免疫性血液学的障害、例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、真性赤血球性貧血、特発性血小板減少症、および悪性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性軟骨炎、強皮症、ウェグナー肉腫芽症、皮膚筋炎、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、スティーブン・ジョンソン症候群、特発性スプルー、異常応答を有することもある自己免疫性炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内分泌系眼症、グレーブス病、サルコイドーシス、肺胞炎、慢性過敏症間質性肺炎、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、ブドウ膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎および糸球体腎炎傷害、例えば糸球体腎炎(ネフローゼ症候群を伴うかまたは伴わない、例えば特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフロパシー(minal change nephropathy))の処置に使用することもできる。
【0071】
本発明の薬剤で処置することができる他の疾患または状態には、急性もしくは慢性細胞、組織または臓器同種または異種移植片の拒絶、または遅延した移植片機能、移植片対宿主病、血栓症、高血圧、心臓虚血、膵炎、感染性ショック、リウマチ性関節炎、骨関節炎、乾癬性関節炎、増殖性疾患、例えばがん、アテローム性動脈硬化症、肥満、再狭窄、I型またはII型糖尿病、およびそれに伴う障害、脈管炎、シェーグレン症候群、グレーブス眼症、網膜症、例えば糖尿病性網膜症または高圧酸素誘導性網膜症、上昇した眼内圧または眼房水分泌によって特徴付けられる状態、例えば緑内障、および他のもの、アレルギー性疾患、例えばアレルギー性鼻炎/結膜炎、下痢疾患、炎症性肺傷害、炎症性肝臓傷害、膀胱炎、例えば間質性膀胱炎または尿失禁、例えば膀胱排尿筋過反射および膀胱過敏症、炎症性眼疾患、角結膜炎、心筋炎または肝炎、例えば急性もしくは慢性肝炎、虚血/再灌流障害、例えば心筋梗塞、卒中、心不全、例えば(急性および慢性)鬱血性心不全、左心室機能不全、例えば心臓収縮不全、肥大型心筋障害、糖尿病性心筋障害および他のタイプの有害な心臓機能不全およびリモデリング、腸虚血、腎不全または出血ショック、外傷性ショック、ネフローゼ症候群、感染症、例えば毒性ショック(例えば超抗原誘導性)、成人呼吸窮迫症候群またはウイルス感染、例えばAIDS、ウイルス性肝炎、例えばB型またはC型肝炎、慢性細菌感染、または神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症または老年性認知症が含まれる。細胞、組織または固形臓器移植の例には、例えば膵島、幹細胞、骨髄、角膜組織、神経組織、心臓、肺、心臓−肺の組合せ、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道が含まれる。上記使用のために必要な投与量は、投与形態、具体的な処置する状態および所望の効果に依存して当然に変化する。
【0072】
一般に、満足のいく結果が、全身的に約0.03から10.0mg/kg体重の1日用量で得られる。大型哺乳類、例えばヒトにおける適用1日用量は、約0.5mgから約1gの範囲であり、簡便には例えば、1日4回までの分割用量または徐放形態で投与する。経口投与のための好適な単位用量形態は、約0.1から500mgの有効成分を含む。
【0073】
式Iの化合物を、あらゆる常套の経路で、とりわけ経腸的、例えば経口的に、例えば錠剤またはカプセル剤の形態で、または非経腸的に、例えば注射溶液または懸濁液の形態で、局所的に、例えばローション、ゲル、軟膏またはクリームの形態で、例えば炎症性または閉塞性気道疾患の処置において吸入によって、例えばアレルギー性鼻炎の処置において鼻腔内的に、または座薬の形態で投与することができる。遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物を、常套の方法で、薬学的に許容される担体または希釈剤と混合して製造することができる。
【0074】
式Iの化合物を、遊離形または薬学的に許容される塩形で、例えば上記のとおり、投与することができる。かかる塩は常套の方法で製造され、そして遊離化合物と同じオーダーの活性を示し得る。
【0075】
上記にしたがって、本発明はさらに下記態様を提供する:
1.1 処置を必要とする対象におけるPi3キナーゼ酵素、例えばそのδアイソフォームによって介在される傷害または疾患、例えば上記のものを予防または処置する方法であって、当該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法;
1.2 処置を必要とする対象における急性もしくは慢性移植片拒絶、またはアレルギー性もしくは炎症性もしくは自己免疫性疾患、例えば上記のものを予防または処置する方法であって、当該対象に有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む方法;
2. 例えば上記1.1または1.2に記載の方法のいずれかにおいて、医薬として使用するための遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物。
3. 例えば上記1.1または1.2に記載の方法のいずれかに使用するための、遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む医薬組成物。
4. 上記1.1または1.2の方法のいずれかに使用するための医薬組成物の製造に使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0076】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を、単独の有効成分として、または例えばアジュバントとして他の薬剤、例えば免疫抑制剤または免疫調節剤、例えば同種もしくは異種移植片急性もしくは慢性拒絶の処置または予防用の他の抗炎症剤、または化学療法剤、例えば悪性細胞抗増殖剤と共に投与することができる。例えば、式Iの化合物は、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578、AP23573、ビオリムス−7またはビオリムス−9;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981等;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;レフルノマイド;ミゾリビン;ミコフェノール酸またはその塩;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制ホモログ、アナログもしくは誘導体;PKC阻害剤、例えばWO 02/38561またはWO 03/82859に記載のもの、例えば実施例56または70の化合物;S1P受容体アゴニストまたは調節剤、例えば所望によりリン酸化されたFTY720もしくはそのアナログ、例えば所望によりリン酸化された2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパンジオールまたは1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸もしくはその薬学的に許容される塩;JAK3キナーゼ阻害剤、例えばN−ベンジル−3,4−ジヒドロキシ−ベンジリデン−シアノアセトアミド、α−シアノ−(3,4−ジヒドロキシ)−]N−ベンジルシンナミド(チルフォスチンAG 490)、プロジギオシン25−C(PNU156804)、[4−(4’−ヒドロキシフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P131)、[4−(3’−ブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン](WHI−P154)、[4−(3’,5’−ジブロモ−4’−ヒドロキシルフェニル)−アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン]WHI−P97、KRX−211、遊離形または薬学的に許容される塩形の3−{(3R,4R)−4−メチル−3−[メチル−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−アミノ]−ピペリジン−1−イル}−3−オキソ−プロピオニトリル、例えばモノサイトレート(CP−690,550とも呼ばれる)、またはWO 04/052359またはWO 05/066156に記載の化合物;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD52、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節化合物、例えばCTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4タンパク質配列(例えばATCC68692で登録)と結合しているCTLA4またはその変異体の少なくとも細胞外部分を有する組換え結合分子、例えばCTLA4Igまたはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1もしくは−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシンまたは5−フルオロウラシル;または抗感染剤との組合せで使用することができる。
【0077】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩は、他の薬剤物質、例えば抗炎症剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤または鎮咳剤との組合せにおいて、とりわけ閉塞性または炎症性気道疾患、例えば上記のものの処置において、例えばかかる薬剤の治療活性増強剤として、またはかかる薬剤の必要投与量または潜在的副作用を減少させる手段として使用するための共薬剤としても有用である。
【0078】
適当な抗炎症性薬剤には、ステロイド、とりわけグルココルチコステロイド、例えばブデソニド、ベクラメタゾンジプロピオネート、フルチカゾンプロピオネート、シクレソニドもしくはモメンタゾンフロエート、またはWO 02/88167、WO 02/12266、WO 02/100879、WO 02/00679 (とりわけ実施例3、11、14、17、19、26、34、37、39、51、60、67、72、73、90、99および101のもの)、WO 03/035668、WO 03/048181、WO 03/062259、WO 03/064445、WO 03/072592に記載のステロイド、非ステロイド性グルココルチコイド受容体アゴニスト、例えばWO 00/00531、WO 02/10143、WO 03/082280、WO 03/082787、WO 03/104195、WO 04/005229に記載のもの;
LTB4アンタゴニスト、例えばLY293111、CGS025019C、CP−195543、SC−53228、BIIL 284、ONO 4057、SB 209247、およびUS 5451700に記載のもの;LTD4アンタゴニスト、例えばモンテルカストおよびザフィルルカスト;PDE4阻害剤、例えばシロミラスト(Ariflo(登録商標)GlaxoSmithKline)、Roflumilast(Byk Gulden)、V−11294A(Napp)、BAY19−8004(Bayer)、SCH−351591(Schering-Plough)、Arofylline(Almirall Prodesfarma)、PD189659/PD168787(Parke-Davis)、AWD−12−281(Asta Medica)、CDC−801(Celgene)、SelCID(商標)CC−10004(Celgene)、VM554/UM565(Vernalis)、T−440(Tanabe)、KW−4490(Kyowa Hakko Kogyo)、およびWO 92/19594、WO 93/19749、WO 93/19750、WO 93/19751、WO 98/18796、WO 99/16766、WO 01/13953、WO 03/104204、WO 03/104205、WO 03/39544、WO 04/000814、WO 04/000839、WO 04/005258、WO 04/018450、WO 04/018451、WO 04/018457、WO 04/018465、WO 04/018431、WO 04/018449、WO 04/018450、WO 04/018451、WO 04/018457、WO 04/018465、WO 04/019944、WO 04/019945、WO 04/045607およびWO 04/037805に記載のもの;A2aアゴニスト、例えばEP 409595A2、EP 1052264、EP 1241176、WO 94/17090、WO 96/02543、WO 96/02553、WO 98/28319、WO 99/24449、WO 99/24450、WO 99/24451、WO 99/38877、WO 99/41267、WO 99/67263、WO 99/67264、WO 99/67265、WO 99/67266、 WO 00/23457、WO 00/77018、WO 00/78774、 WO 01/23399、WO 01/27130、WO 01/27131、WO 01/60835、WO 01/94368、 WO 02/00676、WO 02/22630、WO 02/96462、WO 03/086408、WO 04/039762、WO 04/039766、WO 04/045618およびWO 04/046083に記載のもの;A2bアンタゴニスト、例えばWO 02/42298に記載のもの;ならびにベータ−2アドレナリン受容体アゴニスト、例えばアルブテロール(サルブタモール)、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、フェノテロール、プロカテロール、およびとりわけ、フォルモテロール、カルモテロールおよびその薬学的に許容される塩、ならびにWO 0075114(出典明示により本明細書の一部とする)の式Iの化合物(遊離形または塩形または溶媒和物形)、好ましくはその実施例の化合物、とりわけ化合物5−[(R)−2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシ−エチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン、およびその薬学的に許容される塩、ならびにWO 04/16601の式Iの化合物(遊離形または塩形または溶媒和物形)、およびWO 04/033412の化合物が含まれる。
【0079】
好適な気管支拡張剤には、抗コリン作動性または抗ムスカリン薬剤、とりわけイプラトロピウムブロマイド、オキシトロピウムブロマイド、チオトロピウム塩およびCHF 4226(Chiesi)、ならびにグリコピロレート、WO 01/04118、WO 02/51841、WO 02/53564、WO 03/00840、WO 03/87094、WO 04/05285、WO 02/00652、WO 03/53966、EP 424021、US 5171744、US 3714357、WO 03/33495およびWO 04/018422に記載のものが含まれる。
【0080】
好適な抗ヒスタミン剤には、セチリジンヒドロクロライド、アセトアミノフェン、クレマスチンフマレート、プロメタジン、ロラチジン、デスロラチジン、ジフェンヒドラミンおよびフェキソフェナジンヒドロクロライド、アクチバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、エバスチン、エピナスチン、ミゾラスチンおよびテフェナジンならびにWO 03/099807、WO 04/026841およびJP 2004107299に記載のものが含まれる。
【0081】
本発明の薬剤と抗炎症剤の他の有用な組合せ剤は、ケモカイン受容体のアンタゴニスト、例えばCCR−1、CCR−2、CCR−3、CCR−4、CCR−5、CCR−6、CCR−7、CCR−8、CCR−9およびCCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、とりわけCCR−5アンタゴニスト、例えばSchering-PloughアンタゴニストSC−351125、SCH−55700およびSCH−D、Takedaアンタゴニスト、例えばN−[[4−[[[6,7−ジヒドロ−2−(4−メチルフェニル)−5H−ベンゾ−シクロヘプテン−8−イル]カルボニル]アミノ]フェニル]−メチル]テトラヒドロ−N,N−ジメチル−2H−ピラン−4−アミン−イウムクロライド(TAK−770)、およびUS 6166037(とりわけクレーム18および19)、WO 00/66558(とりわけクレーム8)、WO 00/66559(とりわけクレーム9)、WO 04/018425およびWO 04/026873に記載のCCR−5アンタゴニストとのものである。
【0082】
式Iの化合物を、アンギオテンシン受容体ブロッカー、例えばバルサルタン(アンギオテンシン受容体ブロッカー)、ロサルタン、イルベサルタン、エプロサルタン、フォラサルタン、オルメサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、カンデサルタン、タソサルタンまたはテルミサルタンと組合せ得る。
【0083】
式Iの化合物はまた、化学療法剤、例えばパクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチナム、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、ホルモン剤またはアンタゴニスト、例えば抗アンドロゲン剤またはミトキサントロン、抗エストロゲン剤、例えばタモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよび塩酸ラロキシフェン、アロマターゼインヒビター、例えばアタメスタン、エキセメスタンおよびフォルメスタン、およびとりわけ、非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ログレチミド、ピリドグルテチミド、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールまたはレトロゾール、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、生物学的応答修飾剤、好ましくはリンホカインまたはインターフェロン、プロテインチロシンキナーゼの阻害剤および/またはセリン/スレオニンキナーゼ、または他のもしくは未知の活性機構の薬剤、例えばエピトロンもしくはエピトロン誘導体との組合せで使用することができる。
【0084】
式Iの化合物を他の薬剤、例えば上記のものとの組合せで投与するとき、共投与する薬剤の用量は、当然、使用する共薬剤のタイプ、使用する具体的な薬剤、処置する疾患等に依存して変化する。上記に従って、本発明は下記さらなる局面を提供する:
5. 治療上有効かつ非毒性量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の第2の薬剤物質、例えば上記のものを共投与することを含む、上記定義の方法。
6. a)遊離形または薬学的に許容される塩形の、式Iの化合物である第1薬剤、およびb)少なくとも1種の共薬剤を含む医薬組合せ剤、例えばキット。当該キットは投与のための指示書を含んでいてもよい。
【0085】
「共投与」または「組合せ投与」などの用語は、本明細書において使用するとき、選択した治療薬剤を1人の患者に投与することを意味しており、薬剤を必ずしも同じ投与経路で、または同時に投与することのない処置レジメンを含むことを意図する。
【0086】
「医薬組合せ剤」なる用語は、本明細書において使用するとき、1種以上の有効成分の混合または組合せによって得られる製品を意味しており、有効成分の固定された組合せ剤および固定されていない組合せ剤のいずれもを含む。「固定された組合せ剤」なる用語は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤が共に、同時に、1個の物または投与形で患者に投与されることを意味する。「固定されていない組合せ剤」なる用語は、有効成分、例えば式Iの化合物と共薬剤を、いずれも1人の患者に、別々の物として、同時に、一度にまたは逐次的に、特に時間の限定なく、かかる投与によって患者の体内で2種の化合物の治療上有効レベルが得られるように投与することを意味する。後者はまた、カクテルセラピー、例えば3種以上の有効成分の投与に適用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、RはC1−3アルキルであり;
は、各々所望によりハロゲン、SO1−3アルキル、アシルおよび5もしくは6員ヘテロアリールから選択される1個以上の置換基によって置換されているフェニル、ナフチルまたはビフェニリル;あるいは所望により置換された5もしくは6員ヘテロアリールであり;
はHまたはC1−3アルキルであり;
は、各々所望によりC1−4アルキルで置換されたフェニル、ナフチルまたはビフェニリル;または所望により置換された、ヘテロ原子として少なくとも1個のNを含む5もしくは6員ヘテロアリールである;
ただし、RがSO1−3アルキルおよび所望によりハロゲンで置換されたフェニルであるとき、Rはナフチル以外であり;そして
はHまたはC1−3アルキルである〕
の化合物またはその塩。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
がHである、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
がハロゲン、SO1−3アルキル、C(O)C1−3アルキルもしくは5員ヘテロアリールで置換されたフェニル;または5もしくは6員ヘテロアリールである、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
がナフチルまたは所望によりC1−3アルキルで置換された5もしくは6員ヘテロアリールである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項8】
医薬としての請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項9】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼによって介在される疾患の処置における、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項10】
ホスファチジルイノシトール3−キナーゼによって介在される疾患の処置用医薬の製造における、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−541387(P2009−541387A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516965(P2009−516965)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005599
【国際公開番号】WO2008/000421
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】