説明

ホスファチジルセリンを含有する皮膚保・改善用あるいは皮膚バリア機能強化用の組成物

本発明はホスファチジルセリンを有効成分として含有する組成物に係り、さらに詳しくは、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚保護・改善用、皮膚バリア機能強化用、炎症反応抑制・緩和用、アトピー性皮膚の治療・改善用、PPARαの活性化用、皮膚の分化の促進・保護用、皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物に関する。本発明に係る前記組成物は、ホスファチジルセリンが皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚の外部刺激による皮膚の炎症反応を抑制・緩和し、皮膚のバリア機能を強化して皮膚バリア機能が弱いアトピー性皮膚を治療・改善する他、皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚角質細胞の分化を促進し、紫外線あるいは活性酸素種から皮膚角質細胞を保護して皮膚の分化を促進・保護し、さらに、紫外線による皮膚老化及びシワを防止・改善する効果がある。よって、このような組成物を用いることにより、紫外線または化学物質などの皮膚の外部刺激による損傷から皮膚を保護・改善し、皮膚バリア機能を堅牢化させて全体としての皮膚の状態を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホスファチジルセリンを有効成分として含有する組成物に係り、さらに詳しくは、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚保護・改善用、皮膚バリア機能強化用、炎症反応抑制・緩和用、アトピー性皮膚の治療・改善用、皮膚の分化の促進・保護用、皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ほ乳動物の皮膚の表皮は各種の細胞を含むことにより、種々なる機能を行うと共に、各種の化学的な組成物を有している。これらの相異なる皮膚層間には、各種の脂質が種々なる濃度をもって存在している。具体的に、皮膚の真皮は、主としてコラーゲンとその他の蛋白質を生成し、極めて少量の脂質分を生成する線維芽細胞により構成されている。これとは反対に、表皮は、脂質を生成し、実質的にはコラーゲンは実質的に生成しない角質細胞を含んでいる。線維芽細胞により生成されたコラーゲンは皮膚に張りを与えるのに対し、角質細胞により生成された脂質は生組織と外部との遮断層を形成して、皮膚バリアの機能を果たすことになる。
【0003】
皮膚内の脂質成分としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、トリグリセリド、グルコシルセラミド、セラミド、コレステロール、コレステロールサルフェート、遊離脂肪酸などが挙げられる。中でも、リン脂質としてのホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトールなどは真皮側に、そしてセラミド系の物質は表皮側に主として分布している。これらの組成物の分布比と脂質量は皮膚バリアの恒常性に寄与し、外部からの物理的・化学的な損傷に対して早い修復力を与える。
【0004】
老化過程中の表皮脂質は、そうでない表皮の組織とは異なって全体的に減り、これに伴い、皮膚バリアの機能が低下する。さらに、表皮脂質の総量は青年層の30%程度まで減っているとはいえ、それぞれの脂質の含量比は保たれる。これは、皮膚角質の脂質が脂質の生合成経路とセラミドの生合成経路を通じて形成されるということを裏付けることであり、実際に、皮膚角質の脂質は真皮のリン脂質と遊離脂肪酸から由来したものであることが文献に開示されている[Hamanaka et al., J. Invsti. Dermatol., 119, pp 416-423, 2002]。また、遊離脂肪酸の割合が変化するに伴い、老化性の皮膚に進行する可能性があるということが知られている[Rogers et al., Arch. Dermatol. Res., 288, pp 765-770, 1996]。
【0005】
ホスファチジルセリンは天然に存在する脂肪質の一種であり、セリン基、リン酸基、グリセロール及び2つの脂肪酸基が結合されている物質である。人間の脳の重量中は、乾燥重量を基準としてレシチンが占める重量が約半分ほどに達しているが、このようなレシチンのほとんどは、神経細胞膜を形成している。ホスファチジルセリンは細胞膜の重要な成分としてのレシチン誘導体の一種であり、特に、脳に多量存在している物質であるが、神経細胞膜において生命維持の活動のためのエネルギーの出入、神経伝達物質の放出やシナプスの活動などの情報伝達など神経細胞の機能の発現に深く関与していると考えられる。しかしながら、ホスファチジルセリンは動物の脳に多量存在しているが、動物の脳以外の由来のものにおいては0.1%未満の濃度にて存在するため、天然の原料から多量のホスファチジルセリンを得ることは困難である。
【0006】
近年、皮膚の構成細胞に全般的に存在するPPAR(Peroxisome proliferators activated receptors)が知られているが、PPARは皮膚のバリアの修復及び炎症の治癒過程の発現に重要な役割を果たすということが明らかになっている。
【0007】
すなわち、PPARはエネルギーの恒常性を調節する因子であり、特に、PPARが各種のメカニズムを通じて皮膚バリアの透過性の調節、表皮層の増殖抑制、表皮層の分化誘起などの皮膚状態の調節に関与するということが知られている。これらの特徴により、PPARは、炎症による皮膚疾患だけではなく、表皮層の過増殖による乾癬、傷の治癒、ニキビなど各種の皮膚疾患の革新的な調節子として働くことになる。
【0008】
このため、皮膚の恒常性に寄与する物質の信号伝達の詳細が広く知られてはいないとはいえ、近年知られているPPARと関連するリン脂質の機能についての具体的な研究が進んでいる。PPARは、3つのサブタイプのものがあると報告されているが、これらの中でPPARαがホスファチジルセリンの受容体としての可能性を有しているということが明らかになっている[Michalik et al., The journal of Cell Biology, 154, pp 799-814, 2001]。
【0009】
実際に、既知のPPARαのアゴニストであるクロフィブレート、WY14643などを皮膚に塗布したとき、皮膚の刺激物質による炎症が減っていることが認められている[Sheu et al.,The Journal of investigative Dermatology, 118, pp 94-101, 2002]。
これまで、グルココルチコイドなどの物質が抗炎症剤として用いられてきているが、これは、持続的な投与や処理を行うと、慢性的な副作用を示して主として免疫反応の低下を招き、その結果、治療の限界にぶつかることになる。このため、PPARαのアゴニストがグルココルチコイドに比べて局所的且つ効果的な治療方法であるとされるようになった。
【0010】
さらに、皮膚の老化は、紫外線に長期間露出された皮膚から見られる光老化と、紫外線に露出されていない皮膚から見られる内因性の老化と、に大別できる。光老化と内因性の老化においては、臨床的に皮膚が薄くなり、張りがなくなって皮膚にシワができる。シワの主因として、真皮内の細胞からの基質タンパク質の欠乏が重要なものとして挙げられている。皮膚における基質タンパク質には、膠原質(コラーゲン)が90%以上を占め、弾力質(エラスチン)が3−4%程度を占めている。通常、シワの生成は、皮膚組織のコラーゲンの減少とプロテアーゼの一種である基質金属タンパク質の分解酵素(Matrix metalo proteinase;MMP)の発現の増加と深い関連性があり、これは、真皮組織にある線維芽細胞の活性と深い関連性がある。紫外線によるコラーゲンの減少とMMPの増加についての多くの研究結果とそのメカニズムについての報告がなされているが、これまで知られている正確なメカニズムは、ない。最も広く知られているメカニズムとしては、紫外線によるAP−1(activator protein)の活性化と、コラーゲンの合成に重要とされるTGF−β/smadとのp300に対する競争が挙げられる。AP−1とSBE(smad binding element)は、転写因子として働く上でp300が要される。細胞内に存在するp300の量には限りがあるため、一方の転写因子が活性化すると、他方の転写因子が阻害される。このため、紫外線によるAP−1の活性化はMMPの発現を高め、このようなMMPの向上に起因してコラーゲンの合成は減る。それ故、膠原質量を増やして基質タンパク質の分解酵素の発現を阻害させ、その結果、皮膚老化の抑制効果を期待することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は上述の課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ホスファチジルセリンの各種の効能についての調査を行い、ホスファチジルセリンが皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させることにより、紫外線及び化学物質による皮膚の炎症反応を抑制・緩和させ、皮膚角質の細胞の分化を促進するということを見出した。併せて、皮膚の角質細胞を紫外線あるいは活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)から保護し、紫外線による皮膚の老化およびシワの防止にも効くということを知見した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
本発明の目的は、ホスファチジルセリンを含有する皮膚保護・改善用、皮膚バリア機能の強化用、炎症反応の抑制・緩和用、アトピー性皮膚の治療・改善用、PPARαの活性化用、皮膚の分化の促進・保護用、皮膚老化およびシワの防止・改善用の組成物を提供するところにある。
【0014】
本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚保護・改善用の組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚バリア機能強化用の組成物を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する炎症反応抑制・緩和用の組成物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有するアトピー性皮膚の治療・改善用の組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有するPPARαの活性化用の組成物を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚の分化の促進・保護用の組成物を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物を提供する。
【0021】
前記炎症反応抑制・緩和用の組成物において、ホスファチジルセリンが、PPARαを活性化させることにより皮膚の外部刺激による炎症反応を抑制・緩和することを特徴とする。
【0022】
前記アトピー性皮膚の治療・改善用の組成物において、ホスファチジルセリンが皮膚のバリア機能を強化することにより、皮膚バリア機能が弱いアトピー性皮膚を治療・改善することを特徴とする。
【0023】
前記皮膚の分化の促進・保護用の組成物において、ホスファチジルセリンがPPARαを活性化させることにより、皮膚角質細胞の分化を促進することを特徴とする。
前記皮膚の分化の促進・保護用の組成物において、ホスファチジルセリンが紫外線または活性酸素種から皮膚角質細胞を保護することを特徴とする。
【0024】
前記皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物において、前記皮膚老化とシワは、紫外線によるものであることを特徴とする。
【0025】
前記組成物において、前記ホスファチジルセリンは大豆、トウモロコシなどの植物性由来のレシチン、卵黄、魚油などの動物性油脂、動物の脳、あるいは牛乳から抽出されたものであるか、あるいは、抽出されたレシチンをホスホリパーゼD転移反応して得られたものであることを特徴とする。
【0026】
前記組成物において、前記ホスファチジルセリンは、水素添加型のものであることを特徴とする。
【0027】
前記組成物は油脂をさらに含むことを特徴とする。
【0028】
前記組成物は経皮投与用、あるいは、経口投与用のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るホスファチジルセリンを含有する組成物は、ホスファチジルセリンが皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚の外部刺激による皮膚の炎症反応を抑制・緩和し、皮膚のバリア機能を強化して皮膚バリア機能が弱いアトピー性皮膚を治療・改善する他、皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚角質細胞の分化を促進し、紫外線あるいは活性酸素種から皮膚角質細胞を保護して皮膚の分化を促進・保護し、さらに、紫外線による皮膚老化及びシワを防止・改善する効果がある。よって、このような組成物を用いることにより、紫外線または化学物質などの皮膚の外部刺激による損傷から皮膚を保護・改善し、皮膚バリア機能を堅牢化させて全体としての皮膚の状態を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明をさらに詳述する。
【0031】
本発明に係る組成物は薬学組成物であっても良い。本発明に係る薬学組成物は、経口、非経口、直腸、膣、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などを通じて投与しても良い。最も好ましい投与経路は、経口投与および経皮投与である。もちろん、活性化合物の投与量は、治療を受ける対象、治療の対象となる特定の疾患あるいは病態、疾患または病態の深刻度、投与の経路、および処方者の判断により変わる。これらの因子に基づく投与量の決定は、当業者のレベル内にある。通常、投与量は、概ね0.001mg/kg/日〜概ね1000mg/kg/日の範囲であっても良い。好ましくは、投与量は、0.5mg/kg/日〜10mg/kg/日である。
【0032】
本発明に係る薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体と一緒に薬学組成物に剤型化可能である。文献[参照:Remington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, by E. W. Martin(Merck Publ. Co., Easton, PA]には、典型的な担体と、本発明の組成物を製造する上で用いられる通常の薬学組成物の製造方法が開示されている。本発明の化合物は、その他の薬剤と一緒に投与されても良い。また、本発明に係る薬学組成物は、疾患の治療のための他の組成物とともにおよび他の処置とともに投与されても良い。例えば、本発明に係る薬学組成物の投与と一緒に手術、レーザーまたは化学療法が併行可能である。
【0033】
意図された投与の方式によって、薬学組成物は、固体、半固体、または液体投与の形を取っても良い。投与形態は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、座剤、小袋、顆粒、粉末、クリーム、ローション、軟膏、ばん創膏、液体溶液、懸濁液、および分散液、エマルジョン、シロップなどを含むが、これらに限定されることはない。活性成分は、リポソーム、微粒子、またはマイクロカプセルなどにカプセル化されても良い。しかしながら、最も好ましい剤型は、クリーム、ローション、軟膏、液体溶液、懸濁液、分散液またはエマルジョンなどの経皮投与用の剤型である。
【0034】
さらに、本発明に係る組成物は、機能性化粧品の組成物であっても良い。化粧品組成物の剤型としては、柔軟化粧水、収斂化粧水、ローション、クリーム、エッセンス、カプセル、粉末など各種の剤型が挙げられる。化粧品の剤型は、当業界における通常の製造方法に従い製造される。
【0035】
さらに、本発明は、前記化合物および食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む健康機能食品を提供する。前記化合物を添加可能な食品としては、例えば、各種の食品類、飲み物、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0036】
このとき、食品または飲み物中における前記化合物の量は、全食品重量の0.001〜99重量%であり、健康飲み物組成物は、100mlを基準として0.001〜0.1g、好ましくは、0.05〜0.1gの割合である。
【0037】
本発明の健康機能性の飲み物組成物は、指示された割合にて前記化合物を必須成分として含有する以外は、他の成分には特に制限がなく、通常の飲み物のように種々なる香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0038】
これら以外に、本発明の組成物は、各種の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲み物に用いられる炭酸化剤などを含有することができる。その他に、本発明の組成物は、天然果物ジュース、果物ジュースなどの飲み物および野菜の飲み物の製造のための果肉を含有することができる。これらの成分は単独で用いても、複数種組み合わせて用いても良い。このような添加剤の割合は、あまり重要なものではないが、通常本発明の組成物100重量部当たり約0〜20 重量部の範囲において選ばれる。
【0039】
一方、本発明のホスファチジルセリンは深刻な毒性および副作用は報告されていないため、予防を目指して長期間使用するときにも安心して用いることが可能である。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の好適な実施の形態を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明の権利範囲がこれらに限定されることはない。
【0041】
<実施例1:紫外線の照射による皮膚刺激(炎症反応)の抑制実験>
本発明のホスファチジルセリンが紫外線の照射による皮膚刺激(炎症反応)を抑える効果を有するかどうかを調べてみるために、下記のようにして実験を行った。このとき、紫外線の照射によって起こる皮膚刺激(炎症反応)は、紅斑形成により測定した。
【0042】
先ず、被検者(28才以上、男女各10名)の腕の内側部分のMED(minimal erythma dosage)を測定し、予め被検者の腕の内側部分にホスファチジルセリン0.5%を含む水溶液(PEG300を5%を含む水溶液相;PEG300、Sigma、米国)を1cm当たり30ulを塗布し、UVB(Sankyo Denki G15T8E sunlamps UV−B、日本)を2MED(78mj/cm)、3MED(117mj/cm)、4MED(156mj/cm)照射した後、紅斑形成の抑制の程度を測定した。このとき、対照群としては、ホスファチジルセリンの無処理群を用いた。
【0043】
その結果、図1に示すように、ホスファチジルセリンを処理した群においては、対照群に比べて、紅斑の形成が大幅に抑えられていることが確認された。
【0044】
<実施例2:12-0-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA)による皮膚刺激(炎症反応)の緩和実験>
本発明のホスファチジルセリンの皮膚刺激物質による皮膚刺激(炎症反応)の緩和効果を確かめるために、Sheuら(The journal of Investigative Dermatology, 118, pp 94−101, 2002)が用いた方法に従い、下記のようにして実験を行った。
【0045】
まず、実験対象としては、6−8週齢の雄マウス及び雌マウスとしてのCD−1マウス(Charles River、米国)を用いた。なお、刺激物質としては、アセトン中にTPA(12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート)が0.03wt/vol%分含まれている溶液10μlを前記実験動物の両耳の内側と外側に処理した。処理物質により耳が厚くなりながら、炎症反応が起きた。陽性対照群として公知のPPARαアゴニストであるクロフィブラート(1mM)及びWy14643(1mM)、試験物質として前記実施例1において用いられたものと同じホスファチジルセリン0.5%含有した水溶液のそれぞれを、炎症誘発後45分間、4時間おきに耳の両面に1cm当たり30ulを処理した。次いで、耳の処理部位を生検して、4%のホルムアルデヒドに固定した後、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を行った。その後、H&E染色を施した組織スライドを100倍拡大した写真から炎症の緩和を確認した。
【0046】
その結果、図2に示すように、TPAのみを処理した対照群において、組織がかなり肥大化していることが確認でき、ホスファチジルセリン処理群において炎症が緩和されていることを確認した。また、陽性対照群のPPARαのアゴニストであるクロフィブラート処理群、Wy14643処理群において炎症が緩和されていることが確認された。
【0047】
<実施例3:皮膚角質細胞における、紫外線の照射による炎症反応の減少実験>
本発明のホスファチジルセリンについて、皮膚角質細胞における紫外線の照射による炎症反応の減少効果を確めるために、ステファンら(The journal of Investigative Dermatology, 117, pp 1430−1436, 2001)が発表した論文による方法に従い、下記のようにして実験を行った。
【0048】
まず、皮膚角質細胞株(HaCaT、Yonsei univeritym(韓国)寄贈)を3×10細胞/ディッシュの量にて35mm細胞培養皿に接種した後、一晩培養した。翌日に培地を除去し、1×リン酸バッファ生理食塩水(Phosphate-buffered saline;PBS)を用いて洗浄した後、700ulの1×PBSを各ディッシュに加えた。その後、25mJ/cmにてUVBを照射した後、PBSを除去し、20uM、40uMのホスファチジルセリン水溶液(PS;DoosanBiotech、韓国)、200uMのWY−14643(Sigma、米国)(陽性対照群)を加えたDMEM培地(Hyclone、米国)を加え、24時間培養した。翌日、培地を回収してそれぞれの炎症サイトカインとして知られているTNF−α、IL−6の量をELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent assay)法により測定した。また、実際に正常人の角質細胞においても類似した炎症反応の減少効果が得られるかどうかを確かめるために、HaCaT細胞株の代わりに、正常人の皮膚角質細胞(東国大学より寄贈)を用い、前記の方法と同様にして実験を行った後、培地に分泌されたIL−1αの量をELISAにより測定した。その結果を図3に示す。
【0049】
図3から明らかなように、皮膚角質細胞において紫外線の照射により増えていた炎症反応が、陽性対照群であるWY14643処理群でのように、ホスファチジルセリン処理群においてもかなり緩和されていることを確認した。
【0050】
<実施例4:紫外線損傷に対する皮膚角質細胞の保護実験>
本発明のホスファチジルセリンの紫外線損傷に対する皮膚角質細胞の保護効果を確めるために、実施例3の方法と同様にして実験を行った。最後の日に、顕微鏡に取り付けられているデジタルカメラを用いて細胞の写真を撮り、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT)アッセイにより細胞の生存率を確認した。
【0051】
その結果、図4に示すように、既知のPPARαアゴニストとしてのWY14643とほとんど同じ程度にて、ホスファチジルセリンが紫外線の損傷に対して皮膚角質細胞を保護していることを確認した。
【0052】
<実施例5:皮膚角質細胞における分化の促進効果の確認>
本発明のホスファチジルセリンの皮膚角質細胞の分化の促進効果を確めるために、下記のようにして実験を行った。
【0053】
まず、KSFM(ケラチノサイト−SFM;Gibco BRL/Life Technologies、米国)に培養した正常人の皮膚角質細胞(東国大学より寄贈)を1.5×10細胞/ディッシュの量にて35mm細胞培養皿に接種した後、一晩培養した。翌日、培地を除去し、20uM、40uMのホスファチジルセリン水溶液、1.2mMのカルシウム水溶液、200uM、400uMのクロフィブレート(Sigma、米国)が加えられている新しい培地を加え、24時間培養した。翌日、角質細胞の分化を確めるために細胞のモルフォロジの変化を位相差顕微鏡(日本ニコン社製)により確認し、これを顕微鏡に取り付けられているデジタルカメラを用いて写真を撮った。
【0054】
さらに、角質特異的な角質細胞の分化蛋白質マーカーとして知られているインボルクリンとトランスグルタミナーゼの蛋白質の発現量を確めるために、ウェスターンブロットを行った。細胞は2%のSDS(Sodium dodecyl sulfate)入り溶解バッファ液500ulを加え、セルスクラッパにより掻き取り、細胞溶解物だけを得た。ウェスターンサンプルを製造して、7.5%のゲルにランニングした後、メンブレインに移して適切な1次抗体と2次抗体を付着させ、最終的に蛋白質帯を確認した。
【0055】
その結果、図5に示すように、高濃度のカルシウムが2つの蛋白質の発現を増大させ、既知のPPARαアゴニストであるクロフィブレートもまたその発現を増大させた。ホスファチジルセリンもまた急激な蛋白質の発現の増加を成し遂げ、その量は濃度依存的に増えていることが分かった。
【0056】
<実施例6:マウスにおける皮膚分化の促進実験>
本発明のマウスモデルにおける皮膚の分化の促進を確めるために、下記のようにして実験を行った。
【0057】
まず、6−8週齢の雄マウス及び雌マウスとしてのCD−1マウス(Charles River、米国)背部位の皮膚に0.5%のホスファチジルセリン水溶液を50ulずつ一日につき2回ずつ2週間塗布した後、処理部位の皮膚組織を生検し、4%のホルムアルデヒドに固定してスライド化した。その後、インボルクリンとローリクリンに対する抗体を付着して蛋白質の発現量を確認した。
【0058】
その結果、図6に示すように、陰性対照群(ブランク塗布群)と比較して0.5%のホスファチジルセリン塗布群において2つの蛋白質の発現量が大幅に増えているということが分かった。
【0059】
<実施例7:HeLa細胞株におけるPPARαの活性化実験>
本発明のホスファチジルセリンのPPARαの活性化能を確めるために、下記のようにして実験を行った。このとき、保有しているPPARαとPPARγに対する活性度を確認した。
【0060】
まず、HeLa(Human epithelial carcinoma)(KCLB(韓国細胞株寄託)No.10002)細胞株を2×10細胞/ウェルの量にて24ウェルプレートに接種して、一晩培養した。翌日、細胞トランスフェクションを行うためにPPARα過発現ベクター200ng、PPRE(PPARα特異的)−ルシフェラーゼリポーターベクター(プロメガ、米国)200ng、細胞内の対照群として用いられたレニラールシフェラーゼベクター(内部対照群、すなわち、トランスフェクション効率を確めるために用いられる)40ngをOMEM(Gibco、米国)培地に混合し、リポフェクタミン(インビトロジェン、米国)を用いて細胞にトランスフェクションした。4時間後に、10%のFBSになるように培地を加えて一晩培養し、翌日、PPARαの活性度を測定するためにホスファチジルセリンを20uM、40uM処理し、陽性対照群としてクロフィブレートを400uM処理した後に8時間培養し、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Dual luciferase assay system)(プロメガ、米国)を用いてルシフェラーゼ活性度を照度計を用いて測定した。PPARγの場合にも同じ方法により行い、活性度を測定した。このとき、PPARγの活性度を測定する場合、ホスファチジルセリンを10uM、50uM処理し、陽性対照群においてサイグリタゾーン(Sigma、米国)を50uM処理した。なお、PPARαの活性度を測定した結果を第1のグラフに、PPARγの活性度を測定した結果を第2のグラフに示す。
【0061】
その結果、図7から明らかなように、ホスファチジルセリンはPPARαを活性化させているのに対し、PPARγに対しては影響がなかった。
【0062】
<実施例8:皮膚角質細胞におけるROSからの皮膚保護効果の測定>
本発明のホスファチジルセリンについて、皮膚角質細胞において活性酸素種から皮膚を保護する効果を測定するために、下記のようにして実験を行った。
【0063】
まず、24ウェルプレートに5×10細胞/ウェルの皮膚角質細胞を接種した後、翌日25uMのホスファチジルセリン水溶液(DoosanBiotech、韓国)(ホスファチジルセリン処理群)と陽性対照群として100uMのビタミンC(アスコルビン酸処理群)、100uMのビタミンE(α−トコフェロール処理群)を処理して24時間培養した。その後、その翌日に1mMの過酸化水素(H)を処理して約1−1.5時間培養した後、MTTアッセイにより細胞生育力を確認した。
【0064】
その結果、図8に示すように、ホスファチジルセリン処理群、アスコルビン酸処理群およびα−トコフェロール処理群においていずれも活性酸素種からの保護効果を示すことを確認したが、中でもホスファチジルセリンは少量をもっても同じ保護効果を示すことが分かった。これより、ホスファチジルセリンが皮膚角質細胞を活性酸素種から保護し、結果的に活性酸素種から皮膚を保護することが分かった。
【0065】
<実施例9:ホスファチジルセリンの皮膚バリア機能修復の強化効果>
この実施例9は、無毛マウスモデルを用い、ホスファチジルセリンを服用した群と、服用しなかった群における水分損失量の修復度がいかなる違いを示すかを確めることにより、ホスファチジルセリンが皮膚バリア機能の修復強化に及ぼす効果を調べてみるために行われた。
【0066】
まず、試験物質としてはホスファチジルセリン(DS−PS95、斗山)を400mg/100mlの濃度にて3次蒸留水に分散させた溶液を用いた。また、生後8−12週齢の無毛誘導マウス(JapanSLC Inc.(静岡、日本))10匹のうち5匹には前記溶液をマウス一匹当たりホスファチジルセリンの摂取量が毎日1回につき0.8mgになるように経口投与し、他の5匹には3次蒸留水を経口投与した。このとき、服用期間は合計3週間であった。その後、これらの無毛誘導マウスの背両側の水分蒸発量をTEWL装置[TEWLAMETER、TW210、ドイツ]を用いて測定した後(正常皮膚約10±2g/hm)、同じ位置に接着テープを貼り付けてから外し、さらに貼り付けることを15−20回程度水分蒸発量が40−50g/hm程度に達するまで繰り返し行った。その後、それぞれ損傷前、損傷直後、6時間後、9時間後、24時間後の時間経過により(すなわち、損傷前、損傷直後、6時間経過後、9時間経過後、24時間経過後)水分の蒸発量を測定して、皮膚バリアの修復の程度を確認し、その結果を図9に示す。
【0067】
図9から明らかなように、ホスファチジルセリンを服用したマウスはホスファチジルセリンを服用しなかったマウスと比較した場合、皮膚バリア機能の修復率が一層高かった。これより、ホスファチジルセリンが皮膚バリア機能を強める効果を示すということが分かった。
【0068】
<実施例10:ホスファチジルセリンによるコラーゲン前駆体および基質金属蛋白質の分解酵素の発現の測定>
本発明のホスファチジルセリンの皮膚老化の抑制能を確めるためにコラーゲン前駆物および基質金属蛋白質の分解酵素(Matrix metaloprotease;MMP)の発現量を定量した。定量法として電気泳動による蛋白質−抗体反応法を試み、その方法により線維芽細胞(ソウル大学、寄贈)に紫外線を当てる場合とそうではない場合に分けて培養した後、ホスファチジルセリンを処理(20uM)して細胞を得、蛋白質部分を抽出してSDSにより溶解した後、SDS−ポリアクリルアミドゲル上において電気泳動を行った。次いで、電気泳動を終えたゲル内の蛋白質をニトロセルロース紙に移した後、コラーゲン前駆物およびMMP−1(コラゲナーゼ;コラーゲンの分解酵素)の抗体として反応し、発色させて該当蛋白質の量を測定した。
【0069】
その結果、図10に示すように、ホスファチジルセリンは紫外線の照射や未照射を問わずに、コラーゲン前駆物質を増大させ、MMP−1の発現量を減らすということを確認した。これより、ホスファチジルセリンは皮膚の老化抑制の機能を有していることを確認した。
【0070】
下記に前記組成物の製剤例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、単に本発明を具体的に説明するためのものである。
【0071】
(製剤例1.石鹸の製造)
ホスファチジルセリン 1.00(%)
油脂 適量
水酸化ナトリウム 適量
塩化ナトリウム 適量
香料 小量
精製水 残量
合計 100
上記の配合比によって石鹸を製造した。
【0072】
(製剤例2.ローションの製造)
ホスファチジルセリン 3.00(%)
L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩 1.00
水溶性コラーゲン(1%水溶液) 1.00
クエン酸ナトリウム 0.10
クエン酸 0.05
甘草エキス 0.20
1,3−ブチレングリコール 3.00
油脂 2.00
セリン 1.00
精製水 残量
合計 100
上記の配合比(%)によりローションを製造した。
【0073】
(製剤例3.クリームの製造)
ホスファチジルセリン 1.00(%)
ポリエチレングリコールモノステアレート 2.00
自己乳化型モノステアル酸グリセリン 5.00
セチルアルコール 4.00
スクアレン 6.00
トリ2−エチルヘキサングリセリル 6.00
スフィンゴ糖脂質 1.00
1.3−ブチレングリコール 7.00
ビタミンC 1.00
精製水 残量
合計 100
上記の配合比(%)によりクリームを製造した。
【0074】
(製剤例4.パックの製造)
ホスファチジルセリン 5.00(%)
ポリビニールアルコール 13.00
L−アスコルビン酸−2−リン酸マグネシウム塩 1.00
ラウロイリヒドロキシプロリン 1.00
水溶性コラーゲン(1%水溶液) 2.00
1,3−ブチレングリコール 3.00
エタノール 5.00
セリン 1.00
精製水 残量
合計 100
上記の配合比(%)によりパックを製造した。
【0075】
(製剤例5.美容液の製造)
ホスファチジルセリン 2.00(%)
ヒドロキシエチレンセルロース(2%水溶液) 12.00
キサンタンガム(2%水溶液) 2.00
1,3−ブチレングリコール 6.00
濃いグリセリン 4.00
ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) 5.00
油脂 2.00
セリン 1.00
ビタミンC 1.00
精製水 残量
合計 100
上記の配合比(%)により美容液を製造した。
【0076】
(製剤例6.パウダーの製造)
ホスファチジルセリン 100mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
油脂 5mg
上記の成分を混合して気密布に詰め、パウダーを製造する。
【0077】
(製剤例7.錠剤の製造)
ホスファチジルセリン 50mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
ビタミンC 50mg
上記の成分を混合した後、通常の精製の製造方法に従い打錠して錠剤を製造する。
【0078】
(製剤例8.カプセル剤の製造)
ホスファチジルセリン 50mg
トウモロコシ澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
ビタミンC 50mg
セリン 50mg
通常のカプセル剤の製造方法に従い前記の成分を混合してゼラチンカプセルに詰め、カプセル剤を製造する。
【0079】
(製剤例9.注射剤の製造)
ホスファチジルセリン 50mg
注射用の滅菌蒸留水 適量
pH調節剤 適量
通常の注射剤の製造方法に従い1アンプル当たり(2ml)上記の成分含有量にて製造する。
【0080】
(製剤例10.液剤の製造)
ホスファチジルセリン 100mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
ビタミンC 50mg
セリン 50mg
油脂 適量
精製水 適量
通常の液剤の製造方法に従い精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモンの香りを適量加えた後、前記の成分を混合した。次いで、ここに精製水を加えて、全体を100mlに調節した後、茶色の瓶に詰め、滅菌して液剤を製造した。
【0081】
(製剤例11.健康食品の製造)
ホスファチジルセリン 1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB 0.13mg
ビタミンB 0.15mg
ビタミンB 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸 0.5mg
無機質混合物
硫酸第1鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第1リン酸カリウム 15mg
第2リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上記のビタミンおよびミネラル混合物の組成比は、比較的に健康食品に適した成分を好ましい実施例により混合して求めたが、その配合比を任意に変えても構わない。なお、通常の健康食品の製造方法に従い上記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法に従い健康食品の組成物の製造に用いても良い。
【0082】
(製剤例12.健康飲み物の製造)
ホスファチジルセリン 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅の実の濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水 残量
――――――――――――――――――――――――――――――
合計 900ml
通常の健康飲み物の製造方法に従い前記の成分を混合した後、約1時間中に85℃において撹はん加熱した後、得られた溶液をろ過して、滅菌された2lの容器に取り、密封滅菌した。次いで、冷蔵保管した後、本発明の健康飲み物の組成物の製造に用いる。
上記においては、比較的に嗜好飲料に適した実施例に基づいて各成分を混合したが、需要階層や需要国、使用用途など地域的、民族的な嗜好度に応じてその配合比を任意に変えても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上述べたように、本発明に係るホスファチジルセリンを含有する組成物は、ホスファチジルセリンが皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚の外部刺激による皮膚の炎症反応を抑制・緩和し、皮膚のバリア機能を強化して皮膚バリア機能が弱いアトピー性皮膚を治療・改善する他、皮膚内の組織細胞のPPARαを活性化させて皮膚角質細胞の分化を促進し、紫外線あるいは活性酸素種から皮膚角質細胞を保護して皮膚の分化を促進・保護し、さらに、紫外線による皮膚老化及びシワを防止・改善する効果がある。よって、このような組成物を用いることにより、紫外線または化学物質などの皮膚の外部刺激による損傷から皮膚を保護・改善し、皮膚バリア機能を堅牢化させて全体としての皮膚の状態を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】ホスファチジルセリンの紫外線の照射による皮膚刺激(炎症反応)の抑制効果を測定した結果を示す。
【図2】ホスファチジルセリンのTPAによる皮膚刺激(炎症反応)の緩和効果を測定した結果を示す。
【図3】ホスファチジルセリンの紫外線の照射による皮膚角質細胞の損傷緩和及び炎症反応の緩和効果を測定した結果を示すグラフ。
【図4】ホスファチジルセリンの紫外線損傷に対する皮膚角質細胞の保護効果を測定した結果を示すグラフ。
【図5】ホスファチジルセリンの皮膚角質細胞における分化の促進効果を測定した結果を示す。
【図6】ホスファチジルセリンのマウスにおける皮膚の分化の促進効果を測定した結果を示す。
【図7】ホスファチジルセリンのPPARαの活性化効果を証明した結果を示すグラフ。
【図8】ホスファチジルセリンの皮膚角質細胞における活性酸素種(Reactive Oxygen Species;ROS)からの皮膚角質細胞の保護効果を測定した結果を示すグラフ。
【図9】ホスファチジルセリンの経口投与を通じて皮膚バリア機能を強化する効果を証明する実験の結果であり、ホスファチジルセリンを3週間服用しなかったマウスと、3週間服用したマウスに対して皮膚の皮脂膜を損傷させた後、経時によるTEWL(Transepidermal water loss)の修復率を示すグラフ。
【図10】ホスファチジルセリンによるコラーゲン前駆体および基質金属蛋白質の分解酵素の発現を測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚保護・改善用の組成物。
【請求項2】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚バリア機能強化用の組成物。
【請求項3】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有する炎症反応抑制・緩和用の組成物。
【請求項4】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有するアトピー性皮膚の治療・改善用の組成物。
【請求項5】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有するPPARαの活性化用の組成物。
【請求項6】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚の分化促進・保護用の組成物。
【請求項7】
ホスファチジルセリンを有効成分として含有する皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物。
【請求項8】
ホスファチジルセリンがPPARαを活性化することにより皮膚の外部刺激による炎症反応を抑制・緩和することを特徴とする請求項3に記載の炎症反応抑制・緩和用の組成物。
【請求項9】
ホスファチジルセリンが皮膚のバリア機能を強化することにより、皮膚バリア機能が弱いアトピー性皮膚を治療・改善することを特徴とする請求項4に記載のアトピー性皮膚の治療・改善用の組成物。
【請求項10】
ホスファチジルセリンがPPARαを活性化することにより、皮膚角質細胞の分化を促進することを特徴とする請求項6に記載の皮膚の分化の促進・保護用の組成物。
【請求項11】
ホスファチジルセリンが紫外線または活性酸素種から皮膚角質細胞を保護することを特徴とする請求項6に記載の皮膚分化の促進・保護用の組成物。
【請求項12】
前記皮膚老化およびシワは、紫外線によるものであることを特徴とする請求項7に記載の皮膚老化およびシワ防止・改善用の組成物。
【請求項13】
前記ホスファチジルセリンは大豆、トウモロコシなどの植物性由来のレシチン、卵黄、魚油などの動物性油脂、動物の脳、あるいは牛乳から抽出されたものであるか、あるいは、抽出されたレシチンのホスホリパーゼD転移反応で得られたものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
前記ホスファチジルセリンは、水素添加型のものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
油脂をさらに含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、経皮投与用のものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、経口投与用のものであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。

【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−522259(P2007−522259A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554035(P2006−554035)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003500
【国際公開番号】WO2006/043788
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(305000507)ドゥサン コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】