説明

ホルダ搬送機構

【課題】ホルダ挟み6でホルダ8を掴んだときに、ホルダ8が容易にずれたり脱落せずに、しかもホルダ8の着脱動作を簡単な操作で確実に行うことが出来るようにする。
【解決手段】ホルダ搬送機構は、トレイ状であって、外周面に段部14を有するホルダ8を、その外周面の段部14に両側から差し込んだ二股状のホルダ挟み6によって保持した状態で搬送し、ホルダ受け9、21に装着し、或いはホルダ受け9、21から取り上げるものである。このホルダ挟み6を取り付けたアーム7側にストッパ12を設け、このストッパ10がホルダ8に掛かる方向の弾力を付勢すると共に、ホルダ8をホルダ受け9に装着したとき、同ホルダ受け9から反力を受け、前記弾力に抗してストッパ10がホルダ8から外れる方向に移動させる反力受16をストッパ10に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着装置、スパッタリング装置等により、真空中で半導体ウエハやガラス等からなる基板上に薄膜を形成するに当たり、基板やスパッタリング用のターゲットを保持したホルダをロードロック室等から導入、搬送し、ホルダ受けか取り上げ、別のホルダ受に移動して装着するホルダ搬送機構に関する。特に、アームの先端に設けた二股状のホルダ挟みにトレイ状のホルダの外周を保持して搬送し、ホルダ受に装着するホルダ搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、真空蒸着装置では、クヌードセンセル等の分子線源から薄膜用の材料の分子を放射し、これを基板上の成膜面に堆積させて薄膜を形成する。また、スパッタリング装置では、ターゲットに荷電粒子を衝突させ、その衝撃でターゲットから薄膜用の材料の粒子を放射し、これを基板上の成膜面に堆積させて薄膜を形成する。
【0003】
このような薄膜形成装置では、基板やターゲットがホルダと呼ばれるトレイ状の部材の平坦面上に貼り付けられた状態でロードロック室や真空チャンバ内に設けたホルダ受に装着される。例えば、これらの基板やターゲットを取り付けたホルダはホルダ受けに装着された状態で真空チャンバに設けたロードロック室に導入され、ここでホルダ搬送機構によりホルダ受けから取り上げられ、搬送され、真空チャンバのホルダ受に装着される。その後、ホルダ搬送機構の保持部が真空チャンバから待避し、成膜が行われる。成膜後は逆の手順で真空チャンバのホルダ受からホルダが取り外され、ロードロック室のホルダ受けに戻される。
【0004】
トレイ状のホルダを掴むホルダ搬送機構の保持部の形状は必要に応じて幾つかの形状のものがあるが、最も一般的なものは、アームの先端に二股状のホルダ挟みを設けたものである。ホルダの外周面に溝を設け、この溝に差し込む形で二股状のホルダ挟みでホルダを挟み、保持する。このような形のホルダ搬送機構の保持部は、ホルダ挟みをホルダの外周面に沿って差し込んだり抜くだけで溝ホルダをつかんだり放したりすることが出来るので、ホルダの着脱動作がしやすく、狭い真空チャンバ内での取り扱いも容易である。
【0005】
しかしながら、このホルダ搬送機構の保持部の形状では、二股状のホルダ挟みをホルダの外周面の溝に差し込んだ状態で保持するため、ホルダがホルダ挟みからずれやすく、最悪の場合はホルダ挟みからホルダが抜けて脱落することもある。このため、ホルダをホルダ受に装着するときに位置ずれが起こったり、装着ミスが起こりやすいという課題があった。
【特許文献1】特開2005−93789号公報
【特許文献2】特開2004−128249号公報
【特許文献3】特開2002−151567号公報
【特許文献4】特開平11−233588号公報
【特許文献5】国際公開WO99/3999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来のホルダ搬送機構における課題に鑑み、ホルダ挟みでホルダを掴んだときに、ホルダが容易にずれたり脱落せずに、しかもホルダの着脱動作を簡単な操作で確実に行うことが出来るホルダ搬送機構を提供することを目的とする。
【0007】
本発明では、前記の目的を達成するため、ホルダ挟み6を取り付けたアーム7側にストッパ12を設け、このストッパ12に、ホルダ挟み6でホルダ8を掴んで搬送するとき施錠され、ホルダ受9でホルダ8を掴むとき、或いは掴んだホルダ8をホルダ受9に置くとき解錠される機構を設けた。
【0008】
すなわち、本発明によるホルダ搬送機構は、トレイ状であって、外周面に段部14を有するホルダ8を、その外周面の段部14に両側から差し込んだ二股状のホルダ挟み6によって保持した状態で搬送し、ホルダ受け9、21に装着し、或いはホルダ受け9、21から取り上げるものである。このホルダ挟み6を取り付けたアーム7側にストッパ12を設け、このストッパ10がホルダ8に掛かる方向の弾力を付勢すると共に、ホルダ8をホルダ受け9に装着したとき、同ホルダ受け9から反力を受け、前記弾力に抗してストッパ10がホルダ8から外れる方向に移動させる反力受16をストッパ10に設けている。
【0009】
例えばストッパ10は、付勢した弾力により先端部がホルダ8の内周面に掛かる爪状のストッパ部材12を有する。さらにこのストッパ10のストッパ部材12は、ホルダ受け9に当てたとき、同ホルダ受け9から反力を受けて当該ストッパ部材12を解錠する方向に回動させる突起状の反力受け16を有する。
【0010】
このようなホルダ搬送機構では、ホルダ挟み6がホルダ受け9に近づき、ホルダ受け9に置いたホルダ8を掴むとき、或いは掴んでいたホルダ8をホルダ受け9に置くとき、ストッパ10が解錠するため、ホルダ挟み6でホルダ8を掴み、或いはホルダ8の掴みを解除することが出来る。他方、ホルダ挟み6がホルダ受け9から離れている状態でホルダ8を搬送するときは、ストッパ10が施錠されるため、ホルダ8がホルダ挟み6に確実に保持され、ホルダ挟み6からずれたり抜けたりしない。これにより、ホルダ挟み6でホルダ8を確実に搬送することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
以上説明した通り、本発明によるホルダ搬送機構では、ホルダ挟み6でホルダ8を掴み、搬送するときは、ストッパ10によりホルダ8を安定して保持出来る。また、ホルダ受け9からホルダ8を取り上げ、或いは取り付けするときは、ホルダ挟み6がホルダ受け9に当たることでストッパ10が解錠されるため、円滑にホルダ8をホルダ受け9から取り上げたり取り付けることが可能となる。これにより、ホルダ8を搬送する途中でホルダ8がホルダ挟み6で位置ずれしたり抜けたりすることないので、確実な搬送はもちろん、ホルダ受け9にホルダ8を正確且つ確実に取り付けることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明では、その目的を達成するため、ホルダ挟み6にストッパ12を設け、このストッパ12に施錠と解錠する機構を設けた。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
【0013】
図1は、ホルダ搬送機構が使用される真空薄膜形成装置、特に真空蒸着装置の例を示す概略断面図である。
真空ポンプ(図示せず)を含む真空排気システムにより高真空状態とされる真空チャンバ1の中にホルダ支持部2が設けられ、この下部にホルダ受け9が取り付けられている。このホルダ受け9の下方には、るつぼ等から成膜材料の分子を放出する分子線源3が設けられている。真空チャンバ1を高真空状態とし、ホルダ受け9に取り付けられたホルダ8の下面に基板(図示せず)を装着し、分子線源3からこの基板に向けて成膜材料の分子を放出することにより、基板上に薄膜を形成する。
【0014】
真空チャンバ1の側方には、ロードロック室17が設けられ、このロードロック室17はゲートバルブ19を開くことにより真空チャンバ1と通じ、ゲートバルブ19を閉じることにより真空チャンバ1と遮断される。ロードロック室17は真空チャンバ1とは別系統の真空排気システムを備え、真空チャンバとは独立して真空排気される。
【0015】
このロードロック室17には、ホルダ支持部20が設けられており、このホルダ支持部20はホルダ受け21を有している。図示の例では、ホルダ受け21は上下2段に設けられており、これらホルダ受け21には真空チャンバ1側のホルダ受け9に供給するためのホルダ8が保持されている。ホルダ支持部20は、ロードロック室17の上に設けた搬送機構18の下端に取り付けられた状態でロードロック室17に設置されており、この搬送機構18によりロードロック室17内で上下動される。なお、図示の実施例に示したホルダ8は、基板を保持するためのもので、図示していないがホルダ8の下面には薄膜を成膜するための半導体ウエハ等の基板が取り付けられる。
【0016】
さらにこのロードロック室17には、ホルダ搬送機構5が設けられている。このホルダ搬送機構5は、ロードロック室17側のホルダ受け21からホルダ8を取り上げ、ゲートバルブ19を通って真空チャンバ1側のホルダ受け9にホルダ8をセットするものである。或いはその逆に、真空チャンバ1側のホルダ受け9からホルダ8を取り上げ、ゲートバルブ19を通ってロードロック室17側に戻り、そこのホルダ受け21にホルダ8を戻す動作をする。ホルダ搬送機構5は、フランジを介してロードロック室17の外側に設置した駆動部22により操作、駆動され、前記の動作を行う。
【0017】
この駆動部22に連結されたアーム23の先端には、リンク機構7が設けられ、このリンク機構7の先端部に二股状のホルダ挟み6が設けられている。図2と図3は、ホルダ搬送機構5のリンク機構7から先の先端部分を示しており、ホルダ8をホルダ挟み6で保持した状態である。ホルダ8は円板トレイ状のもので、外周に溝14を有する。ホルダ挟み6はその二股状の突起部分をそのホルダ8の溝14に差し込んで同ホルダ8を保持する。ホルダ挟み6を取り付けたリンク機構7は、そのリンクが図3で示す状態から延びてホルダ挟み6を前方に移動させる際に、斜め下方に向けてホルダ挟み6を押し出す動作をする。
【0018】
リンク機構7の先端に取り付けられたホルダ挟み6の基部11にストッパ10が設けられている。このストッパ10は、一対の軸受13の間に回動自在に取り付けられたストッパ部材12を有する。このストッパ部材12の先端は下方に曲がった鉤状になっている。また、同ストッパ部材12の基部側には、ホルダ挟み6の基部11に取り付けられた圧縮バネからなる弾性部材15が装着されており、この弾性部材15でストッパ部材12に付勢した弾性によりストッパ部材12の爪状の先端部がホルダ8の内周面に掛かり、ホルダ8を固定する。さらに同ストッパ部材12の回転中心を挟んで前記弾性部材15より先端側には、下方に向けて突出した突起状の反力受け16が設けられている。この反力受け16は、ストッパ部材12の爪状の先端部がホルダ8の内周面に掛かった状態でホルダ挟み6の基部11に設けた通孔から下方に突出する。
【0019】
このようなホルダ搬送機構では、まずロードロック室17内にホルダ支持部20を装着し、ロードロック室17を排気して真空チャンバ1と同等の高真空とする。この状態でホルダ搬送機構5のホルダ挟み6でロードロック室17側にあるホルダ支持部20のホルダ受け21からホルダ8を掴んで取り上げる。ホルダ8を取り上げるときは、ロードロック室17側にあるホルダ支持部20を搬送機構18により必要な高さまで下降させる。このとき、駆動部22に連結されたアーム23の先端は必要な位置まで後退している。そこからリンク機構7によりホルダ挟み6を伸ばし、下降したホルダ受け21に保持されたホルダ8を挟み、取り上げる。
【0020】
図4(a)、図5(a)は、ホルダ挟み6でホルダ8を掴み、取り上げた状態であり、ホルダ挟み6はその両側の二股状の突起がホルダ8の周面の溝14に挿入された状態でホルダ8を保持する。このとき、ストッパ10のストッパ部材12は、弾性部材15の弾力により押され、その鉤状の先端がホルダ8の内周面に掛かり、ホルダ8を完全に保持する。
【0021】
リンク機構7によりホルダ挟み6を伸ばしてホルダ受け21に保持されたホルダ8を挟み、取り上げた後は、ホルダ挟み6を一旦後退させ、その間に搬送機構18によりホルダ支持部20を上方に移動させて待避する。その後、ゲートバルブ19を開いて、アーム23を伸ばし、さらにリンク機構7を伸ばしてホルダ8を真空チャンバ1側に移動させ、その中にあるホルダ受け9のホルダ8を取り付ける。
【0022】
ホルダ受け9は、円板リング状のものであり、その中にホルダ8を嵌め込んで設置する。このとき、ストッパ10のストッパ部材12の反力受け16がホルダ受け9の上面に当たり、このときの反力によってストッパ部材12が弾性部材15の弾力に抗して回動され、図4(b)、図5(b)に示すようにその鉤状の先端部分がホルダ8の内周縁からは外れる。この状態では、ストッパ10によるホルダ8の保持が解除されるため、ホルダ搬送機構5を戻すことにより、ホルダ挟み6がホルダ8の外周の溝14から抜け、ホルダ8をホルダ受け9に残したままホルダ挟み6だけをロードロック室17に戻すことが出来る。
【0023】
以上のストッパ10の動作は、真空チャンバ1やロードロック室17でホルダ受け9、21からホルダ8を取り上げるときは逆の動作となる。すなわち、リンク機構7を伸ばしてホルダ受け9、21にあるホルダ8を取り上げるためホルダ挟み6をホルダ受け9、21に降ろすと、ストッパ10のストッパ部材12の反力受け16がホルダ受け9の上面に当たり、このときの反力によってストッパ部材12が弾性部材15の弾力に抗して回動され、図4(b)、図5(b)に示すようにその鉤状の先端部分が上がる。この状態では、ストッパ部材12の先端が邪魔になることなく、ホルダ挟み6をホルダ8の外周の溝14に差し込むことが出来る。その後、ホルダ挟み6を上昇させると、ストッパ10のストッパ部材12の反力受け16がホルダ受け9、21から離れるため、ストッパ部材12が弾性部材15の弾力により押され、その鉤状の先端がホルダ8の内周面に掛かり、ホルダ8を完全に保持する。
【0024】
このようにして、本願発明によるホルダ搬送機構では、ホルダ挟み6がホルダ8をホルダ受け9に置いたホルダ8を掴むとき、或いは掴んでいたホルダ8をホルダ受け9に置くとき、ストッパ10が解錠される。他方、ホルダ挟み6がホルダ受け9から離れている状態でホルダ8を搬送するときは、ストッパ10が施錠されるため、ホルダ8をずらさずに安定して保持出来る。
なお、前述の実施例では、ストッパ10のストッパ部材12に弾性部材15として圧縮バネを装着したが、弾性部材はこれに限らず、ストッパ部材12の軸に装着した巻きバネ等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるホルダ搬送機構が使用される薄膜形成装置の一例を示す概略縦断側面図である。
【図2】本発明によるホルダ搬送機構の一実施例を示すその先端部とホルダ受けの平面図である。
【図3】本発明によるホルダ搬送機構の一実施例を示すその先端部とホルダ受けの一部縦断側面図である。
【図4】本発明によるホルダ搬送機構の一実施例の動作を示すその先端部とホルダ受けの一部縦断拡大側面図である。
【図5】本発明によるホルダ搬送機構の一実施例の動作を示すその先端部とホルダ受けのさらに拡大した一部縦断拡大側面図である。
【符号の説明】
【0026】
6 ホルダ挟み
7 アーム
8 ホルダ
9 ホルダ受け
10 ストッパ
12 ストッパのストッパ部材
14 ホルダの段部
15 弾性部材
16 ストッパの反力受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ状であって、外周面に段部(14)を有するホルダ(8)を、その外周面の段部(14)に両側から差し込んだ二股状のホルダ挟み(6)によって保持した状態で搬送し、ホルダ受け(9)、(21)に装着し、或いはホルダ受け(9)、(21)から取り上げるホルダ搬送機構であって、ホルダ挟み(6)を取り付けたアーム(7)側にストッパ(12)を設け、このストッパ(10)がホルダ(8)に掛かる方向の弾力を付勢すると共に、ホルダ(8)をホルダ受け(9)に装着したとき、同ホルダ受け(9)から反力を受け、前記弾力に抗してストッパ(10)がホルダ(8)から外れる方向に移動させる反力受(16)をストッパ(10)に設けたことを特徴とするホルダ搬送機構。
【請求項2】
ストッパ(10)は、付勢した弾力により先端部がホルダ(8)の内周面に掛かる爪状のストッパ部材(12)を有することを特徴とする請求項1に記載のホルダ搬送機構。
【請求項3】
ストッパ(10)のストッパ部材(12)は、ホルダ受け(9)に当てたとき、同ホルダ受け(9)から反力を受けて当該ストッパ部材(12)を解錠する方向に回動させる突起状の反力受け(16)を有することを特徴とする請求項1または2に記載のホルダ搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−324395(P2007−324395A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153458(P2006−153458)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390027683)株式会社エイコー・エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】