説明

ホールセンサ

【課題】本発明の課題は、従来技術をさらに改良した装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るホールセンサの代表的な構成は、第1の接続接点および第2の接続接点および第3の接続接点を備える第1のホール素子と、第4の接続接点および第5の接続接点および第6の接続接点を備える第2のホール素子と、第7の接続接点および第8の接続接点および第9の接続接点を備える第3のホール素子と、第10の接続接点および第11の接続接点および第12の接続接点を備える第4のホール素子とを有しており、第1のホール素子および第2のホール素子および第3のホール素子および第4のホール素子は直列につながれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項に記載されたホールセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(DE10150955C1)よりホールセンサが公知である。このホールセンサは、それぞれ5つの接続接点を備えた複数の垂直型のホール素子を有している。この場合、最大4つのホール素子が互いに並列に構成されており、接続接点は周期的な相互交差によって配線されており、これはホールセンサのオフセット電圧を、個々のホール素子のオフセット電圧に比べて低くするためである。これに加えて、いわゆる「スピニング電流」法によってオフセット電圧をいっそう引き下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許10150955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホールセンサの高いコストのかかる構造、オフセット、および消費電力を改善することが望ましい。
【0005】
以上を背景とする本発明の課題は、従来技術をさらに改良した装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1の構成要件を備えるホールセンサによって解決される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項の対象となっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来技術をさらに改良した装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ホールセンサの4つのホール素子の本発明による直列配線の実施形態を示す模式図である。
【図2】図1の個々のホール素子の実施形態を示す模式的な断面図である。
【図3】(a)図1の4つのホール素子の第1の幾何学的な配置の可能性である。(b)図1の4つのホール素子の第2の幾何学的な配置の可能性である。
【図4】nドーピングされたホールセンサについて4つのモードで、オフセット電圧と印加される供給電圧との間の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の対象物では、第1の接続接点および第2の接続接点および第3の接続接点を備える第1のホール素子と、第4の接続接点および第5の接続接点および第6の接続接点を備える第2のホール素子と、第7の接続接点および第8の接続接点および第9の接続接点を備える第3のホール素子と、第10の接続接点および第11の接続接点および第12の接続接点を備える第4のホール素子とを有するホールセンサが提供され、第1のホール素子および第2のホール素子および第3のホール素子および第4のホール素子は直列につながれている。付言しておくと、このホールセンサは互いに直列につながれた4つのホール素子で成り立っている。
【0010】
このとき4つのホール素子の各々は、中央の接続接点と、中央の接続接点の回りに配置された少なくとも2つの接続接点とを有している。中央の接続接点の回りに配置されているホール素子の接続接点は、中央の接続接点の回りに配置された次のホール素子の接続接点と配線される。このとき配線によって閉じたリングを生起するのが好ましく、すなわち、列の最後のホール素子は列の最初のホール素子と配線される。それによって構成されるホールセンサは4つの接続接点を有しており、これら4つの接続接点は、個々のホール素子の4つの中央の接続接点で構成される。
【0011】
本発明による装置の1つの利点は、それぞれ3つの接点を備える4つの個々のホール素子の本発明に基づく配線によって、ホールセンサのオフセットを低減できることにある。そのために4つのホール素子の直列配線は、4つの異なるモードでいわゆる「スピニング電流」法に基づいて作動し、個々のモードのオフセット電圧が加算されて総オフセット電圧になるのが好ましい。出願人の実験で示されたところでは、総オフセット電圧は、「スピニング電流」法で作動する5つの接点を備える個々の垂直型のホール素子のオフセット電圧よりも大幅に小さく、驚くべきことにほぼゼロである。つまりオフセット電圧がすでにほぼゼロであることに基づき、高いコストのかかる複数のホールセンサの並列回路が不要となる。
【0012】
この新規のセンサコンセプトは、4つのどのモードでも、個々のホール素子における制御電流分布の同じ組み合わせが得られるという特徴がある。5つの接点を備える個々のホール素子では、制御電流分布は個々のモードの間でそれぞれ相違している。実験が示すところでは、たとえばそれぞれ5つの接点を備えるホール素子も、本発明による直列配線に基づいて使用することができる。この場合、それぞれ内側に位置する3つの接点を使用するのが好ましい。さらに、4つの接点、6つの接点、もしくは相応に6つを超える接点を備えるホール素子も、本発明の直列回路に基づいて配線することができる。
【0013】
さらに別の利点は、4つのホール素子の直列回路で接触抵抗や接続抵抗を対称に分布させることができ、どのモードでもほぼ等しい大きさになることである。それにより、個々のモードのそれぞれのオフセット電圧が一次近似において逆向きに等しい大きさとなる。
【0014】
当然ながら、ホールセンサの4つのホール素子はホール電圧を生成するために通電面を有しており、この面の法線ベクトルは、この面を貫通する磁界の測定されるべき成分の方向と平行に形成される。さらにオフセット電圧は、磁界が存在しないときに測定されるのが好ましい。このような種類の測定サイクルはキャリブレーションとも呼ばれる。
【0015】
別の実施形態では、第2の接続接点および第5の接続接点および第8の接続接点および第11の接続接点はそれぞれ供給電圧接続部またはホール電圧ピックアップ部として構成されている。このとき測定されるべきホール電圧の正負記号は、電流の方向と、印加される磁界の方向と、ホール素子が形成された半導体領域のドーピングとに依存して決まる。直列配線を構成するために、他の実施形態では、第1の接続接点は第12の接続接点と接続される。別の実施形態では、第3の接続接点は第4の接続接点と配線され、第6の接続接点は第7の接続接点と配線され、第9の接続接点は第10の接続接点と配線される。図解をするために、表1にはホールセンサを作動させるための4つのモードすなわちモード1からモード4が掲げられている。ここで記号C1からC4は個々のホール素子の中央の接点をそれぞれ表しており、VB1,VB2は両方の動作電圧、VH1およびVH2は両方の測定電圧を表しており、両方の測定電圧の差がホール電圧とも呼ばれる。
【0016】
【表1】

【0017】
1つの好ましい実施形態では、第1のホール素子から第4のホールでは3つの接続接点がそれぞれ1本の直線上に配置されており、この直線は互いに平行に配置されるのが好ましく、すなわち、これらのホール素子は互いに平行に配置される。1つの発展例では、第1のホール素子から第4のホール素子の接続接点は共通の直線上に配置される。特に、第1のホール素子から第4のホール素子をそれぞれ垂直型のホール素子として構成するのが好ましい。付言しておくと、個々のホール素子を相互に接続するための条導体抵抗をできる限り等しい大きさに選択するのが好ましい。
【0018】
出願人の実験が示すところでは、第1のホール素子および第2のホール素子および第3のホール素子および第4のホール素子が半導体本体の上に配置されており、半導体本体の上に集積回路が構成されていると好都合である。それにより、集積回路の一部として構成された、ホールセンサと作用接続されている制御回路と、評価回路とをモノリシックに集積化することができる。付言しておくと、作用接続という概念は特に集積回路とホールセンサの間の電気接続も意味している。さらに、第1のホール素子および第2のホール素子および第3のホール素子および第4のホール素子および集積回路をただ1つの共通のハウジングの中に配置し、特に相互に電気的に配線するのが好ましい。
【0019】
次に、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。ここでは同じ種類の部品には同一の符号が付されている。図示した実施形態は大幅に模式化されており、すなわち間隔や縦横の長さは寸法通りではなく、別段の断りがない限り、何らかの帰結を導くことができる幾何学的な相互の関係も有していない。
【0020】
図1の図面は、第1の接続接点23、第2の接続接点26、および第3の接続接点29を備える、第1の好ましくは垂直型に構成されたホール素子20と、第4の接続接点33、第5の接続接点36、および第6の接続接点39を備える、第2の好ましくは垂直型に構成されたホール素子30と、第7の接続接点43、第8の接続接点46、および第9の接続接点49を備える、第3の好ましくは垂直型の構成されたホール素子40と、第10の接続接点53、第11の接続接点56、および第12の接続接点59を備える、第4の好ましくは垂直型に構成されたホール素子50と、を有するホールセンサ10の本発明による直列配線の実施形態の模式図を示している。さらに、第1の接続接点23は第12の接続接点59と配線されている。モードに応じて、表1の配置に基づき、第2の接続接点26は第1の接続点C1、第5の接続接点36は第2の接続点C2、第8の接続接点46は第3の接続点C3、第11の接続接点56は第4の接続点C4をそれぞれ供給電圧端子またはホール電圧ピックアップ部として備えるように構成されている。モードに応じて、第1から第4の接続点には、供給電圧VB1またはこれとは相違する基準電位VB2が印加され、または、ホール電圧VH1もしくはホール電圧VH2が測定される。
【0021】
図2には、図1の第1のホール素子20を例にとって、個々のホール素子の実施形態の模式的な断面図が示されている。以下においては、図1に示す実施形態との違いについてのみ説明する。第1の接続接点23から第3の接続接点29のすぐ下には、高ドーピングされたn接点領域100が構成されており、これは、個々の接続接点23から29を低ドーピングされたn窪み領域110に低抵抗接続するためである。n窪み領域110は半導体本体120に構成されている。個々のn接触領域の間には、好ましくは酸化物または高ドーピングされたp拡散からなる絶縁領域130がそれぞれ構成されている。半導体本体120は、p基板として構成されているのが好ましい。n窪み領域はリンドーピングを有しているのが好ましく、n接触領域はn窪み領域よりも強いリンドーピングを有しているのが好ましい。それに対して、p基板はホウ素ドーピングを有している。
【0022】
図2に図示する実施形態では、測定されるべき磁界の方向はz方向すなわち紙面に出入りする方向を有しており、それに対して第1のホール素子20はx−y平面に構成されている。
【0023】
図3(a)の図面には、図1の4つのホール素子の第1の幾何学的な配置の可能性が示されている。以下においては、図1に示す実施形態との違いについてのみ説明する。第1のホール素子20から第4のホール素子50では、3つの接続接点がそれぞれ1本の直線(図示せず)の上に配置されており、個々の直線は実質的に互いに平行に配置されている。
【0024】
図3(b)の図面には、図1の4つのホール素子の第2の幾何学的な配置の可能性が示されている。以下においては、図1に示す実施形態との違いについてのみ説明する。これによると、第1のホール素子から第4のホール素子のすべての接続接点は、1本の共通の直線(図示せず)の上に配置されている。
【0025】
図4の図面には、nドーピングされたホールセンサについて、磁界の影響がないときのオフセット電圧VOFF=VH1−VH2と、印加される供給電圧VB=VB1−VB2との関係の模式図が示されている。付言しておくと、オフセット電圧は磁界が存在しないいわゆるキャリブレーション段階中に判定するのが好ましい。別案の手順では、いわゆる「スピニング電流」法を用いてオフセット電圧をほぼ磁界に関わりなく除去することができる。それにより、結果として得られる測定信号すなわちホール電圧は、すでにほぼ完全にオフセット電圧を含んでいないことが好ましい。測定されるオフセット電圧VOFFは、第1のモードM1または第2のモードM2または第3のモードM3または第4のモードM4において正または負であり、個々のモードのオフセット電圧を加算すると、平均値の形成から算出される総オフセット電圧GOFFは、三角形の記号で図示しているように、傾きがほぼゼロの直線を形成することが示されている。
【符号の説明】
【0026】
C1 …第1の接続点
C2 …第2の接続点
C3 …第3の接続点
C4 …第4の接続点
VB1 …供給電圧
VB2 …基準電位
VH1 …ホール電圧
VH2 …ホール電圧
10 …ホールセンサ
100 …接点領域
110 …n窪み領域
120 …半導体本体
130 …絶縁領域
20 …ホール素子
23 …第1の接続接点
26 …第2の接続接点
29 …第3の接続接点
30 …ホール素子
33 …第4の接続接点
36 …第5の接続接点
39 …第6の接続接点
40 …ホール素子
43 …第7の接続接点
46 …第8の接続接点
49 …第9の接続接点
50 …ホール素子
53 …第10の接続接点
56 …第11の接続接点
59 …第12の接続接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホールセンサ(10)であって、
−第1の接続接点(23)および第2の接続接点(26)および第3の接続接点(29)を備える第1のホール素子(20)と、
−第4の接続接点(33)および第5の接続接点(36)および第6の接続接点(39)を備える第2のホール素子(30)と、
−第7の接続接点(43)および第8の接続接点(46)および第9の接続接点(49)を備える第3のホール素子(40)と、
−第10の接続接点(53)および第11の接続接点(56)および第12の接続接点(59)を備える第4のホール素子(50)と、を有している、そのようなホールセンサにおいて、
4つのホール素子の各々は中央の接続接点の回りに配置された少なくとも2つの接続接点を有しており、中央の接続接点の回りに配置された接続接点は、その次のホール素子の中央の接続接点の回りに配置された接続接点と配線されており、それにより、
第1のホール素子(20)および第2のホール素子(30)および第3のホール素子(40)および第4のホール素子(50)は直列につながれていることを特徴とするホールセンサ。
【請求項2】
第2の接続接点(26)および第5の接続接点(36)および第8の接続接点(46)および第11の接続接点(56)はそれぞれ供給電圧端子またはホール電圧ピックアップ部として構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のホールセンサ(10)。
【請求項3】
第1の接続接点(23)は第12の接続接点(59)と接続されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のホールセンサ(10)。
【請求項4】
第3の接続接点(29)は第4の接続接点(33)と配線されており、第6の接続接点(39)は第7の接続接点(43)と配線されており、第9の接続接点(49)は第10の接続接点(53)と配線されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のホールセンサ(10)。
【請求項5】
第1のホール素子(20)から第4のホール素子(50)では3つの接続接点がそれぞれ1本の直線上に配置されており、前記直線は好ましくは互いに平行に配置されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のホールセンサ(10)。
【請求項6】
第1のホール素子(20)から第4のホール素子(50)の接続接点は1本の共通の直線上に配置されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のホールセンサ(10)。
【請求項7】
第1のホール素子(20)から第4のホール素子(50)は1つの半導体本体(120)でそれぞれ垂直型のホール素子として構成されていることを特徴とする、先行請求項のうちいずれか1項に記載のホールセンサ(10)。
【請求項8】
導体本体(120)の上には集積回路が構成されていることを特徴とする請求項7に記載のホールセンサ(10)。
【請求項9】
第1のホール素子(20)および第2のホール素子(30)および第3のホール素子(40)および第4のホール素子(50)および集積回路は電気接続されており、ただ1つの共通のハウジングの中に配置されていることを特徴とする、請求項8に記載のホールセンサ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−24871(P2013−24871A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156700(P2012−156700)
【出願日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【出願人】(501409670)マイクロナス ゲーエムベーハー (23)
【氏名又は名称原語表記】Micronas GmbH
【出願人】(505476397)アルベルト−ルートヴィヒス−ウニヴェルジテート・フライブルク (2)
【Fターム(参考)】