説明

ボイルオフガス再液化装置

【課題】熱負荷を小さくして小型で高効率な冷凍サイクル部とし、かつ、機器の配置を工夫し、たとえ既存のLNG船でも設置し得るボイルオフガス再液化装置を提供する。
【解決手段】BOG供給配管35、燃料用圧縮機33およびBOG搬送配管39を有する液化処理部5と、冷媒圧縮機9からの冷媒をエキスパンダ13によって一層低温とし、BOG搬送配管39を通るBOGを冷却する凝縮部17を有する冷凍サイクル部3と、を有するボイルオフガス再液化装置1であって、液化処理部5には、凝縮部17の上流側に、BOG搬送配管39を通るBOGとBOG供給配管35を通るBOGとの間で熱交換を行うBOGプレクーラ57が備えられ、冷凍サイクル部3には、凝縮部17の下流側に、エキスパンダ13によって駆動されるブースタコンプレッサ19と、ブースタコンプレッサ19からの冷媒を冷却する第二アフタクーラ29とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイルオフガス再液化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LNG船では、低温の液化天然ガスをカーゴタンクに大気圧で貯蔵し、運搬している。この液化天然ガス(LNG)はカーゴタンク内への入熱によって蒸発され、ボイルオフガスとしてカーゴタンク内の上部に溜る。この蒸発ガスで膨張した容積によりカーゴタンク内の圧力が増加するので、その蒸発ガスを連続的に抜き出して処理する必要がある。
このボイルガスを有効に使うため、ほとんどLNG船では、ボイルオフガスをボイラ、ガス焚き内燃機関等の燃料とすることによって推進力や船内電力の足しに利用している。
【0003】
ところで、発生するボイルオフガスの量に対して燃料として求められる量が少ない場合、余剰のボイルオフガスは船外に排出する、すなわち、無駄に捨てることになる。特に、積荷状態で停泊あるいは低速航行を長期にわたって行う場合には、損失が大きくなる。
この損失を抑制するものとして余剰のボイルオフガスを再液化してカーゴタンクに戻すボイルオフガス再液化装置を備える天然ガス運搬船(LNG船)が就航している(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
ボイルオフガス再液化装置では、ボイルオフガスは、冷凍サイクルに沿って状態を変えて循環される冷媒の冷熱によって冷却され、凝縮することによって再液化する。
LNG船に設置されるボイルオフガス再液化装置では、船上の狭い空間に収まるようにするためコンパクトな構造であることが求められる。
また、ボイルオフガス再液化装置は液化効率を向上させる工夫が種々行われているが、、特許文献1に示されるように、冷凍サイクル部へ供給されるボイルオフガスを二個の圧縮機によって2回にわたり圧縮し、冷凍サイクル部を循環する冷媒との熱交換効率を向上させながらも、装置全体での省スペース化との両立に余念がない。
【0005】
ボイルオフガス再液化装置のボイルオフガスの冷却に関係する主要機器は、一般に船体中央部の貨物機器室に配置する。一方、冷凍サイクル部を構成する冷媒圧縮機は常温機器であり、ボイルオフガスと直接は接触せず、かつ、大きな動力を要するので、大動力駆動機類を設置しやすい機関室内に配置されるのが好ましい。また、圧縮された冷媒を冷却する中間冷却器は大型で、かつ、大量の冷却清水を要するので、この点でも冷却清水を製造している機関室に配置することが好ましい。
特許文献1に示されるものでは、冷凍サイクル部は冷媒圧縮機およびこれに付随する中間冷却器は機関室に配置され、残りの冷却する部分のみを貨物機器室に配置している。これにより、たとえば、既存のボイルオフガス等の天然ガスをボイラの燃料として用いるLNG船に、ボイルオフガス再液化装置を設置する場合、改造工事を大幅に軽減することができるし、新造船に適用する場合でも、設計変更を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−25152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ボイルオフガスは圧縮された後、ボイルオフガス再液化装置の液化部(凝縮部)へ供給されるまでに凝縮温度の近くまで冷却される。特許文献1に示されるものでは、この冷却に冷凍サイクル部における冷媒の冷熱が用いられているので、その分冷媒の冷熱を確保する必要がある。これにより、冷熱の増加分だけ冷凍サイクル部の液化効率が低下し、かつ、冷凍サイクル部を構成する各機器が大型化する。
【0008】
また、冷媒圧縮機で圧縮された冷媒をさらに圧縮するブースタコンプレッサが備えられているが、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒が冷却清水を用いた中間冷却器で冷却された後、コールドボックスのエキスパンダに供給されるようにされているので、この中間冷却器はコールドボックスの近くに配置せざるを得ない。大型の中間冷却器をコールドボックスの近くに設置するので、比較的狭い空間である貨物機器室への配置が難しい。特に、就航している既存のLNG船では貨物機器室が限られた空間しか備えられていないので、これにボイルオフガス再液化装置を設置するように改造することは無理がある。
さらに、特許文献1に示されるものでは、プレクーラおよび凝縮器が3以上の多重熱交換プロセスとされているので、これらの設計が難しく、設計の信頼性が不足する恐れがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、圧縮ガス予冷の熱負荷を小さくして小型で高効率な冷凍サイクル部とし、かつ、機器の配置を工夫し、たとえ既存のLNG船でも設置し得るボイルオフガス再液化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の第一態様は、ガス圧縮部にタンク内で発生したボイルオフガスを供給するガス供給ラインおよび該ガス圧縮部で圧縮されたボイルオフガスを搬送する圧縮ガス搬送ラインを有するガス供給部と、冷媒圧縮部で圧縮された後第一のインタークーラで冷却された冷媒を、エキスパンダによって膨張させ一層低温状態とし、この冷媒によって前記圧縮ガス搬送ラインに搬送される前記ボイルオフガスを冷却し凝縮させる凝縮部を有する冷凍サイクル部と、を備えているボイルオフガス再液化装置であって、前記ガス供給部には、前記凝縮部の上流側に、前記圧縮ガス搬送ラインを通る前記ボイルオフガスと前記ガス供給ラインを通る前記ボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換部が備えられているボイルオフガス再液化装置である。
【0011】
冷凍サイクル部の冷媒は冷媒圧縮部で圧縮され、中間冷却器である第一のインタークーラによって冷却された後、エキスパンダに供給される。
この冷媒は、エキスパンダによって膨張減圧されることによって、ボイルオフガスの液化に必要な低温状態とされる。エキスパンダは、この冷媒が膨張する時の力を回転力として取り出し、たとえば、直結された軸を介してブースタコンプレッサを回転させる。この冷媒は凝縮部を経由してブースタコンプレッサに戻される。
一方、ガス供給部では、ガス供給ラインを経由して供給されたタンク内で発生したボイルオフガスがガス圧縮部で圧縮され、圧縮ガス搬送ラインを経由して凝縮部を通るように搬送される。
【0012】
このとき、凝縮部の上流側に、圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスとガス供給ラインを通るボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換部が備えられているので、ガス圧縮部で圧縮されて高温状態とされた圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスは、ガス供給ラインを通る温度の低いボイルオフガスによって冷却(予冷)されて凝縮部に導入される。
圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスは、ガス圧縮部で圧縮される前のボイルオフガスによって冷却され、言い換えると、ボイルオフガス自身の冷熱で予冷される。なお、圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスの冷熱としては、ガス供給ラインを通るボイルオフガスに限定されるものではなく、それ以外のものを付加するようにしてもよい。
凝縮部に導入された、たとえば、凝縮温度近傍まで冷却されたボイルオフガスは、凝縮部を通る低温の冷媒によって冷却され、凝縮される。
【0013】
このように、ガス圧縮部で圧縮され、高温状態とされた圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスは、ガス圧縮部で圧縮される前のボイルオフガスによって冷却され、言い換えると、ボイルオフガス自身の冷熱で予冷されるので、少なくともその熱量の分だけ冷凍サイクル部の負担を減少させることができる。
これにより、冷凍サイクル部を構成する各機器を小さくできるので、ボイルオフガス再液化装置を小型化することができる。
【0014】
上記各態様では、前記冷凍サイクル部には、前記凝縮部の下流側に、前記エキスパンダによって駆動され前記冷媒を圧縮するブースタコンプレッサと、該ブースタコンプレッサで圧縮され、前記冷媒圧縮部に供給される前記冷媒を冷却する第二のインタークーラとが備えられていてもよい。
【0015】
このようにすると、冷凍サイクル部では、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒が、さらに冷媒圧縮部によって圧縮されてエキスパンダへ供給されるようにされているので、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒を冷却する第二のインタークーラは、冷媒圧縮部とブースタコンプレッサとの間に介装されることになる。
したがって、第二のインタークーラは冷媒圧縮部に近くに配置することができるので、冷媒圧縮部が、たとえば、機関室に設置される場合、第二のインタークーラも機関室に設置することができる。このように、大型の第二のインタークーラを比較的広い機関室に設置できるので、たとえ、貨物機器室が狭い就航している既存のLNG船であってもボイルオフガス再液化装置を設置することができる。
また、清水の供給システムは機関室に設置されているので、冷凍サイクル部の第一のインタークーラおよび第二のインタークーラがともに機関室に設置されると、それらの配管が簡素化できるし、冷却効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の第二態様は、ガス圧縮部にタンク内で発生したボイルオフガスを供給するガス供給ラインおよび該ガス圧縮部で圧縮されたボイルオフガスを搬送する圧縮ガス搬送ラインを有するガス供給部と、冷媒圧縮部で圧縮された後第一のインタークーラで冷却された冷媒を、エキスパンダによって膨張減圧させ一層低温状態とし、この冷媒によって前記圧縮ガス搬送ラインを搬送される前記ボイルオフガスを冷却し凝縮させる凝縮部を有する冷凍サイクル部と、を備えているボイルオフガス再液化装置であって、前記冷凍サイクル部には、前記凝縮部の下流側に、前記エキスパンダによって駆動され前記冷媒を圧縮するブースタコンプレッサと、該ブースタコンプレッサで圧縮され、前記冷媒圧縮部に供給される前記冷媒を冷却する第二のインタークーラとが備えられているボイルオフガス再液化装置である。
【0017】
冷凍サイクル部では、ブースタコンプレッサで圧縮され、中間冷却器である第二のインタークーラによって冷却される。この冷媒は冷媒圧縮部で圧縮され、中間冷却器である第一のインタークーラによって冷却された後、エキスパンダに供給される。
この冷媒は、エキスパンダによって減圧され、膨張させられることによって一層低温状態とされる。エキスパンダは、この冷媒が膨張する時の力を回転力として取り出し、たとえば、直結された軸を介してブースタコンプレッサを回転させる。
一層低温状態とされた冷媒は凝縮部を経由してブースタコンプレッサに戻される。
一方、ガス供給部では、ガス供給ラインを経由して供給されたタンク内で発生したボイルオフガスがガス圧縮部で圧縮され、圧縮ガス搬送ラインを経由して凝縮部を通るように搬送される。
【0018】
このように、冷凍サイクル部では、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒が、さらに冷媒圧縮部によって圧縮されてエキスパンダへ供給されるようにされているので、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒を冷却する第二のインタークーラは、冷媒圧縮部とブースタコンプレッサとの間に介装されることになる。
したがって、第二のインタークーラは冷媒圧縮部に近くに配置することができるので、冷媒圧縮部が、たとえば、機関室に設置される場合、第二のインタークーラも機関室に設置することができる。このように、大型の第二のインタークーラを比較的広い機関室に設置できるので、たとえ、貨物機器室が狭い就航している既存のLNG船であってもボイルオフガス再液化装置を設置することができる。
また、清水の供給システムは機関室に設置されているので、冷凍サイクル部の第一のインタークーラおよび第二のインタークーラがともに機関室に設置されると、それらの配管が簡素化できるし、冷却効率を向上させることができる。
【0019】
上記各態様では、前記ガス供給ラインの前記熱交換器の上流側には、液化天然ガスを噴霧して前記ボイルオフガスを冷却する緩熱器が備えられていることが望ましい。
【0020】
たとえば、ボイルオフガス再液化装置の運転開始時で配管が冷却されていない場合、あるいはバラスト航行中で、タンク内のボイルオフガスが比較的高温の状態である場合等では、ガス供給ラインを通過するボイルオフガスの温度が比較的高くなり、熱交換部での冷熱が不足する恐れがある。
このような場合、本態様では、ガス供給ラインの熱交換器の上流側に、液化天然ガスを噴霧してボイルオフガスを冷却する緩熱器が備えられているので、緩熱器によって熱交換器へ供給するボイルオフガスを冷却することができる。
【0021】
上記各態様では、前記ガス圧縮部は、2段階に分割されている構成としてもよい。
【0022】
このようにすると、ボイルオフガスは、2回にわたり圧縮されるので、冷凍サイクル部との熱交換を効率的に行うことができる。これにより、再液化プラントの小型化をはかることができる。
【0023】
上記構成では、前記ガス圧縮部の1段目の圧縮は、ボイラへ燃料として供給する燃料用圧縮機によって行われるようにしてもよい。
【0024】
このようにすると、たとえば、既存のボイルオフガス等の天然ガスをボイラの燃料として用いるLNG船に、ボイルオフガス再液化装置を設置する場合、改造工事を大幅に軽減することができる。また、新造船に適用する場合でも、設計変更を容易に行うことができる。
燃料用圧縮機は、比較的大容量であるが、これに供給されるボイルオフガスは熱交換器によって暖められ、容積が増加しているので、容量オーバーとならずに用いることができる。したがって、就航している既存のLNG船で、既存の燃料用圧縮機を有効に活用することができるので、改造工事の範囲を小さくでき、安価に改造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ガス圧縮部で圧縮され、高温状態とされた圧縮ガス搬送ラインを通るボイルオフガスは、ガス圧縮部で圧縮される前のボイルオフガスによって冷却されるので、冷凍サイクル部を構成する各機器を小さくでき、ボイルオフガス再液化装置を小型化することができる。
また、冷凍サイクル部では、ブースタコンプレッサで圧縮された冷媒が、さらに冷媒圧縮部によって圧縮されてエキスパンダへ供給されるようにされているので、第二のインタークーラを冷媒圧縮部の近くに配置することができ、たとえ、貨物機器室が狭い就航している既存のLNG船であってもボイルオフガス再液化装置を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかるボイルオフガス再液化装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の一実施形態にかかるLNG船のボイルオフガス再液化装置1について、図1を用いて説明する。
図1は、LNG船のボイルオフガス再液化装置1の全体概略構成を示すブロック図である。
LNG船は、液化天然ガス(以下、LNGということもある。)を貯蔵する複数のカーゴタンク(図示省略)を備えている。カーゴタンクには、たとえば、略球形をしているモス式のタンク等種々の形式がある。
ボイルオフガス再液化装置1には、冷凍サイクル部3と、液化処理部(ガス供給部)5と、が備えられている。
【0028】
冷凍サイクル部3は、冷媒配管7を通って循環される冷媒(冷媒としては、たとえば、窒素が用いられている。他に、たとえば、水素やヘリウムが対象となる。)の冷熱を液化処理部5に供給するものである。
冷凍サイクル部3には、冷媒圧縮機(冷媒圧縮部)9と、冷媒プレクーラ11と、エキスパンダ13と、過冷却器15と、凝縮器(凝縮部)17と、ブースタコンプレッサ19と、が主たる要素として設けられている。
冷媒配管7は、冷媒圧縮機9、冷媒プレクーラ11、エキスパンダ13、過冷却器15、凝縮器17、冷媒プレクーラ11およびブースタコンプレッサ19の順に接続し、閉じた系を構成している。
【0029】
冷媒圧縮機9は、スチームタービン21によって駆動される2段の遠心式圧縮機である。なお、駆動用スチーム設備の無い船舶(ディーゼル推進船等)では圧縮機スピード制御機能を有したモータ駆動としてもよい。また、冷媒圧縮機9はこの形式に限らず、冷媒配管7内の差圧を発生させるものであれば、スクリュー圧縮機等、適宜な形式のものを用いることができる。
【0030】
冷媒圧縮機9は、低温・低圧のガス状冷媒を吸引して圧縮し、高温・高圧のガス状冷媒とするものである。
冷媒圧縮機9はインタークーラ23を有している。冷媒圧縮機9の出口には第一アフタクーラ(第一のインタークーラ)25が設けられている。
冷媒量を調整するために、冷媒バッファタンク27を有する配管が、冷媒圧縮機9の前後に接続されている。
【0031】
冷媒プレクーラ11は、第一アフタクーラ25から導入される冷媒を凝縮器17から導入される冷媒によって冷却するものである。冷媒プレクーラ11は、冷媒と冷媒との間でのみ熱交換されるものであるので、3以上の多重熱交換プロセスのものと比較して、構造が簡単で、設計が容易である。これにより、設計の信頼性を向上させることができる。
エキスパンダ13は、冷媒プレクーラ11を通って温度が低下させられた冷媒を減圧により膨張させて低温・低圧のガス状冷媒とするものである。この冷媒が膨張する時の力を回転力として、エキスパンダ13と同軸で接続されたブースタコンプレッサ19は回転駆動させられる。
【0032】
エキスパンダ13からの低温・低圧のガス状冷媒は、過冷却器15、凝縮器17および冷媒プレクーラ11と順次送られ熱交換される。
ブースタコンプレッサ19は、冷媒プレクーラ11から導入される冷媒を圧縮して、冷媒を高温・高圧とし、冷媒圧縮機9へ供給するものである。ブースタコンプレッサ19の下流側で冷媒圧縮機の上流側には第二アフタクーラ(第二のインタークーラ)29が備えられている。
【0033】
冷媒配管7におけるエキスパンダ13の上流側と、凝縮器17の下流側との間に、弁の開閉により断接されるバイパス配管31が備えられている。
冷凍サイクル3の起動時に、バイパス配管31は開放される。これにより冷媒はエキスパンダ13を通過しないので、それらによる抵抗がなくなり冷媒圧縮機9の起動を可能とできる。
【0034】
液化処理部5には、燃料用圧縮機33へ図示しないカーゴタンクで発生したボイルオフガス(以下、BOGという)を供給するBOG供給配管(ガス供給ライン)35と、燃料用圧縮機33によって圧縮されたBOGをセパレータ37へ搬送するBOG搬送配管(圧縮ガス搬送ライン)39と、セパレータ37からカーゴタンクへ再液化されたLNGを送る再液化ガス配管41とが備えられている。
【0035】
BOG供給配管35には、搬送されるBOGを冷却するミストセパレータ(緩熱器)43が備えられている。ミストセパレータ43は、セパレータ37の下部に貯留された再液化されたLNGが選択的に供給されるように構成されている。セパレータ37からミストセパレータ43へLNGが供給されると、このLNGによってBOGが冷却される。
【0036】
燃料用圧縮機33は、ボイラへ燃料を供給するものとして設置する、改造の場合は、設置されているものである。燃料用圧縮機33は、同一構造の2台が並列的に配設され、一方は万一故障した場合の予備とされている。燃料用圧縮機33はモータで駆動されるように構成されている。
また、この2台の燃料用圧縮機33に並列的に燃料用圧縮機33が設置されていないフリーフローライン45が備えられている。フリーフローライン45には、開閉する開閉弁47が備えられている。
【0037】
燃料用圧縮機33およびフリーフローライン45の出口には、天然ガスを図示しないボイラへ燃料として供給する燃料配管47が接続されている。燃料配管49には、燃料用圧縮機33で圧縮された天然ガスを加熱するガスヒータ51が備えられている。
燃料用圧縮機33およびフリーフローライン45には、別途カーゴタンクに貯蔵されたLNGをガス化して供給するようにしてもよい。
【0038】
BOG搬送配管39は、燃料用圧縮機33からのBOGを凝縮部17を通ってセパレータ37へ搬送するものである。このとき、凝縮器17は、BOGを、冷媒配管7を通る冷媒によって冷却し凝縮させる。凝縮器17は、冷媒とBOGとの間でのみ熱交換されるものであるので、3以上の多重熱交換プロセスのものと比較して、構造が簡単で、設計が容易である。これにより、設計の信頼性を向上させることができる。
BOG搬送配管39には、BOGを圧縮するBOGブースタ53と、BOGブースタ53で圧縮され、高温となったBOGを、たとえば、清水で冷却するBOGアフタクーラ55とが備えられている。
BOGブースタ53は、たとえば、160kPaaのBOGを450kPaaに昇圧するものであり、それが可能であれば、たとえば、直冷式スクリュー圧縮機等、適宜形式のものが用いられる。
【0039】
BOG搬送配管39におけるBOGアフタクーラ55と凝縮器17との間、すなわち、凝縮部17の上流側に、BOG搬送配管39を通るBOGとBOG供給配管35を通るBOGとの間で熱交換を行うBOGプレクーラ(熱交換部)57が備えられている。BOGプレクーラ57は、冷媒とBOGとの間でのみ熱交換されるものであるので、3以上の多重熱交換プロセスのものと比較して、構造が簡単で、設計が容易である。これにより、設計の信頼性を向上させることができる。
なお、BOGプレクーラ57によってBOG搬送配管39を通るBOGが十分冷却される場合には、BOGアフタクーラ55の設置は省略されてもよい。
BOG供給配管35には、BOGプレクーラ57をバイパスする弁の開閉により断接されるバイパス配管59が備えられている。
【0040】
BOG搬送配管39で搬送されるBOGは凝縮器17において冷媒配管7を通る冷媒によって冷却され凝縮させられる。
この凝縮されたBOGは、セパレータ37に導入され液分とガス分とに分離される。
再液化ガス配管41は、セパレータ37の下部から過冷却器15を通りカーゴタンクに接続されている。
再液化ガス配管41には、過冷却器15よりも下流側に再液化ガス流量調整弁61が設けられている。
【0041】
BOG供給配管35におけるミストセパレータ43よりも上流側位置およびセパレータ37の頂部から燃料配管49へ接続される流量調整弁を備えたガス供給分岐配管63が設けられている。
ガス供給分岐配管63は、冷媒プレクーラ11を通って冷媒圧縮機9からエキスパンダ13へ供給される冷媒を冷却するように構成されている。
【0042】
エキスパンダ13、冷媒プレクーラ11、凝縮器17、過冷却器15、エキスパンダ13およびBOGプレクーラ57は防熱構造をしたコールドボックス65内にコンパクトに収納されている。
ブースタコンプレッサ19はエキスパンダ13で回転駆動されるので、コールドボックス65より張り出すように取り付けられている。
【0043】
冷媒圧縮機9、冷媒バッファタンク27、スチームタービン21、インタークーラ23、第一アフタクーラ25、第二アフタクーラ29および燃料用圧縮機33は、ボイラが設置されている機関室に配置され、コールドボックス65およびセパレータ37はカーゴ機器室に設置されている。
【0044】
以上の構成を有する本実施形態にかかるボイルオフガス再液化装置1の動作について説明する。
冷凍サイクル部3では、冷媒圧縮機9がスチームタービン21により駆動され、冷媒配管7から導入される低温・低圧のガス状冷媒を2段階に圧縮して、高温・高圧のガス状冷媒とする。このとき、冷媒は、1段目の圧縮と2段目の圧縮との間で、インタークーラ23によって冷却される。
この高温・高圧のガス状冷媒は、第一アフタクーラ25で冷却されて冷媒プレクーラ11に導入される。
【0045】
冷媒プレクーラ11では、導入されたガス状冷媒が凝縮器17から戻る低温・低圧のガス状冷媒により冷却される。
この冷媒が、エキスパンダ13に導入され、減圧によって膨張されて一層低温・低圧のガス状冷媒とされる。
この低温・低圧のガス状冷媒は、過冷却器15および凝縮器17を通過し、その冷熱を周囲に与えて冷却する。
その後、冷媒は冷媒プレクーラ11を通ってエキスパンダ13に導入される冷媒によって暖められ、ブースタコンプレッサ19に導入される。
【0046】
冷媒は、ブースタコンプレッサ19で、圧縮されて高温・高圧のガス状冷媒とされる。この高温・高圧のガス状冷媒は、第二アフタクーラ29によって冷却され、冷媒圧縮機9に送られる。
冷媒圧縮機9に導入された冷媒は、冷媒圧縮機9によってさらに高温・高圧とされ送り出される。
冷凍サイクル部3では、このサイクルを連続的に行うことで、冷媒配管7が通過する過冷却器15、凝縮器17および冷媒プリクーラ11において冷熱を提供する。
【0047】
カーゴタンクで発生したBOGは、BOG供給配管35によってミストセパレータ43およびBOGプレクーラ57を通って燃料用圧縮機33によって供給される。
ミストセパレータ43は、通常運転中には、LNGが供給されていないので、BOGを冷却することはない。
たとえば、ボイルオフガス再液化装置1の運転開始時で配管が冷却されていない場合、あるいは、バラスト航行中で、カーゴタンク内のBOGが比較的高温の状態である場合等でBOG供給配管35を通過するBOGの温度が比較的高くなると、たとえば、セパレータ37から再液化されたLNGがミストセパレータ43に供給され、BOGプレクーラ57へ供給されるBOGの温度を必要な温度、たとえば、−120℃まで低下させる。
【0048】
燃料用圧縮機33に導入されたBOGは、燃料用圧縮機33によって、たとえば、160kPaaまで圧縮される。このとき、BOGの温度は、たとえば、略55℃となっている。
その後、BOGは、BOGブースタ53によって、たとえば、450kPaaに昇圧される。このとき、BOGの温度は、たとえば、略100℃となっている。
このBOGはBOGアフタクーラ55によって略40℃まで冷却され、BOGプレクーラ57に導入される。
BOGプレクーラ57では、BOG供給配管35を通るBOGによって、たとえば、略−110℃、すなわち、略飽和液状態まで冷却される。一方、BOG供給配管35を通るBOGは、たとえば、略−120℃から略30℃まで昇温される。
【0049】
この冷却されたBOGは、凝縮器17を通る際、冷凍サイクル部3の冷媒配管7を流れる低温・低圧のガス状冷媒により冷却されて、凝縮する。凝縮したBOGは、セパレータ37に送られる。
セパレータ37では、凝縮したBOGが気液分離され、再液化されたLNGである液体分は下部に、ガス分は上部に貯留される。
下部のLNGは、再液化ガス配管41を通って、過冷却器15で過冷却されカーゴタンクに戻される。
【0050】
このように、BOGは、燃料用圧縮機33およびBOGブースタ53によって2回にわたり圧縮されて高圧とされるので、冷凍サイクル部3との熱交換を効率的に行うことができる。これにより、冷凍サイクル部3の小型化をはかることができる。
また、燃料用圧縮機33およびBOGブースタ53で圧縮され、高温状態とされたBOG搬送配管39を通るBOGは、BOGプレクーラ57においてBOG供給配管35を通る燃料用圧縮機33で圧縮される前のBOGによって冷却され、言い換えると、BOG自信の冷熱で予冷されるので、少なくともその熱量の分だけ冷凍サイクル部3の負担を減少させることができる。
これにより、冷凍サイクル部3を構成する各機器を小さくできるので、ボイルオフガス再液化装置1を小型化することができる。
【0051】
また、冷凍サイクル部3では、ブースタコンプレッサ19で圧縮された冷媒が、さらに冷媒圧縮機9によって圧縮されてエキスパンダ13へ供給されるようにされているので、ブースタコンプレッサ19で圧縮された冷媒を冷却する第二アフタクーラ29は、冷媒圧縮機9とブースタコンプレッサ19との間に介装されることになる。
したがって、第二アフタクーラ29は冷媒圧縮機9に近くに配置することができるので、冷媒圧縮機9が、たとえば、機関室に設置される場合、第二アフタクーラ29も機関室に設置することができる。
【0052】
このように、大型の第二アフタクーラ29を比較的広い機関室に設置できるので、たとえ、貨物機器室が狭い就航している既存のLNG船であってもボイルオフガス再液化装置1を設置することができる。
また、清水の供給システムは機関室に設置されているので、冷凍サイクル部3のインタークーラ23、第一アフタクーラ25および第二アフタクーラ29がともに機関室に設置されると、それらの配管が簡素化できるし、冷却効率を向上させることができる。
このように、ボイルオフガス再液化装置1は小型で高効率なものにできるし、その設置空間を少なくできる。このため、たとえば、既存のBOG等の天然ガスをボイラの燃料として用いるLNG船に、ボイルオフガス再液化装置1を設置する場合、改造工事を大幅に軽減することができる。また、新造船に適用する場合でも、設計変更を容易に行うことができる。
【0053】
この場合、燃料用圧縮機33は、比較的大容量であるが、これに供給されるBOGはBOGプレクーラ57によって暖められ、容積が増加しているので、容量オーバーとならずに用いることができる。したがって、就航している既存のLNG船で、既存の燃料用圧縮機33を有効に活用することができるので、改造工事の範囲を小さくでき、安価に改造することができる。
【0054】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ボイルオフガス再液化装置
3 冷凍サイクル部
5 液化処理部
9 冷媒圧縮機
13 エキスパンダ
17 凝縮器
19 ブースタコンプレッサ
25 第一アフタクーラ
29 第二アフタクーラ
33 燃料用圧縮機
35 BOG供給配管
39 BOG搬送配管
43 ミストセパレータ
53 BOGブースタ
57 BOGプレクーラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧縮部にタンク内で発生したボイルオフガスを供給するガス供給ラインおよび該ガス圧縮部で圧縮されたボイルオフガスを搬送する圧縮ガス搬送ラインを有するガス供給部と、
冷媒圧縮部で圧縮された後第一のインタークーラで冷却された冷媒を、エキスパンダによって膨張減圧させ一層低温状態とし、この冷媒によって前記圧縮ガス搬送ラインを搬送される前記ボイルオフガスを冷却し凝縮させる凝縮部を有する冷凍サイクル部と、を備えているボイルオフガス再液化装置であって、
前記ガス供給部には、前記凝縮部の上流側に、前記圧縮ガス搬送ラインを通る前記ボイルオフガスと前記ガス供給ラインを通る前記ボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換部が備えられていることを特徴とするボイルオフガス再液化装置。
【請求項2】
前記冷凍サイクル部には、前記凝縮部の下流側に、前記エキスパンダによって駆動され前記冷媒を圧縮するブースタコンプレッサと、該ブースタコンプレッサで圧縮され、前記冷媒圧縮部に供給される前記冷媒を冷却する第二のインタークーラとが備えられていることを特徴とする請求項1に記載のボイルオフガス再液化装置。
【請求項3】
ガス圧縮部にタンク内で発生したボイルオフガスを供給するガス供給ラインおよび該ガス圧縮部で圧縮されたボイルオフガスを搬送する圧縮ガス搬送ラインを有するガス供給部と、
冷媒圧縮部で圧縮された後第一のインタークーラで冷却された冷媒を、エキスパンダによって膨張減圧させ一層低温状態とし、この冷媒によって前記圧縮ガス搬送ラインを搬送される前記ボイルオフガスを冷却し凝縮させる凝縮部を有する冷凍サイクル部と、を備えているボイルオフガス再液化装置であって、
前記冷凍サイクル部には、前記凝縮部の下流側に、前記エキスパンダによって駆動され前記冷媒を圧縮するブースタコンプレッサと、該ブースタコンプレッサで圧縮され、前記冷媒圧縮部に供給される前記冷媒を冷却する第二のインタークーラとが備えられていることを特徴とするボイルオフガス再液化装置。
【請求項4】
前記ガス供給ラインの前記熱交換器の上流側には、液化天然ガスを噴霧して前記ボイルオフガスを冷却する緩熱器が備えられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のボイルオフガス再液化装置。
【請求項5】
前記ガス圧縮部は、2段階に分割されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のボイルオフガス再液化装置。
【請求項6】
前記ガス圧縮機の1段目の圧縮は、ボイラへ燃料として供給する燃料用圧縮機によって行われることを特徴とする請求項5に記載のボイルオフガス再液化装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−76559(P2012−76559A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222495(P2010−222495)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】