説明

ボツリヌス神経毒素受容体及びその使用

本発明は、BoNT/A受容体としてシナプスベッセル糖タンパク質SV2の同定及びSV2の様々なBoNT/A結合断片のさらなる同定に基づく。本明細書における開示は、ボツリヌス中毒症を診断及び治療する新規のツールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2005年10月14日に提出された米国特許出願第60/726,879号(本明細書でその全体が参照により援用される)の利益を主張する。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究または開発の記載]
本発明は、国立衛生研究所による助成金番号第AI057153号及び同第AI057744号に基づき、米国政府の支援によって行われた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
ボツリヌス神経毒素A(BoNT/A)は、嫌気性細菌株ボツリヌス菌によって産生される7つのボツリヌス神経毒素(BoNT/A〜Gと称される)の1つである(Schiavo G et al.,Physiol.Rev.80:717-766,2000)。BoNTは、SNAP−25と、vamp−2/シナプトブレビン(Syb)と、シンタキシンとから構成された膜融合機構の膜を切断することによって、神経伝達物質の放出を妨げる(Jahn R and Niemann H,Ann.NY Acad.Sci.733:245-255,1994、Schiavo G et al.,supra,2000)。運動性神経末端におけるこれらのタンパク質の切断は神経筋接合部(NMJ)におけるアセチルコリン放出を妨げ、麻痺を引き起こし、呼吸不全により死に至る危険性がある(Schiavo G.et al.,supra,2000、Simpson LL,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.44:167-193,2004)。強力な潜在能力及び致死性、並びに使用及び輸送が容易であるため、BoNTは、6つの最も危険性のある潜在的なバイオテロの脅威(米国の疾病対策センター(Center for Disease Control of United States)で指定された)の1つと考えられている(Arnon SS et al.,JAMA 285:1059-1070,2001)。米国医師会によれば、結晶性毒素はわずか1gでも100万の人々を死滅させるのに十分である。
【0004】
現在、BoNTに対する標準試験は、疾病対策予防センター(CDC)で利用可能なマウスのバイオアッセイであり、全国の研究所で選択されている。この試験は、1つのBoNTを保有する疑いのある臨床サンプルでマウスを処理することを伴う。マウスは、様々なBoNTに対して免疫付与され、サンプル中に存在する特定のBoNTに対して免疫付与されたこれらのマウスのみが生き残る。この試験は、わずか0.03ngのBoNTを検出することができるという点では高感度であるが、高価であり、終了するまで数日を要する。治療の側面では、BoNTに対する抗体を含有するウマの抗毒素は最適治療であり、その有効性は適時の治療によって変わる。しかし、この治療は、アナフィラキシー及び血清病の危険性といったような、ウマの血清産物のあらゆる欠点を有している。この診断試験は治療の効果を待つには日数がかかり過ぎるので、ボツリヌス中毒症が確認される前に、治療を開始することが多い。したがって、代替的な検出及び治療の戦略に対する当該技術分野における必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の簡単な要約]
本発明は、BoNT/A受容体としてのシナプスベッセル(synaptic vessel)糖タンパク質SV2の同定及びSV2の様々なBoNT/A結合断片のさらなる同定に基づく。本明細書における開示は、ボツリヌス中毒症を診断及び治療する新規のツールを提供する。
【0006】
本発明のファイルには、カラーで作製された少なくとも1つの図面が含まれる。要請及び必要な手数料の支払いに応じて、特許商標局によってカラーの図面付きの本発明のコピーを準備される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[発明の詳細な説明]
本発明は、BoNT/A受容体としてのシナプスベッセル糖タンパク質SV2の同定、及びSV2の様々なBoNT/A結合断片の同定に基づく。本明細書における開示は、BoNT/A毒性及びボツリヌス病に対する新規の予防及び治療の戦略を提供する。本明細書における開示は、SV2−BoNT/A結合、BoNT/A細胞侵入、及びBoNT/A毒性を低減することができる薬剤を同定する新規のツールも提供する。
【0008】
幾つかの種(例えば、ヒト、ラット、及びマウス)において、3つのSV2アイソフォーム、すなわち、SV2A、SV2B及びSV2Cが同定されている。例えばラットのSV2を用いて、本発明者らは、3つのアイソフォーム全てが、BoNT/Aと結合することができ、BoNT/Aの受容体として有用であることを見出した。ウシ及びシビレエイ(Discopyge ommatta)等の他の種では、今までのところ1つのアイソフォームしか同定されていない。ウシのSV2のcDNAは、SV2B及びSV2CよりもSV2Aに類似しており、シビレエイのSV2のcDNAは、SV2A及びSV2BよりもSV2Cに類似している。SV2A、SV2B及びSV2Cの機能及びアミノ酸配列が、動物種(特に哺乳類種)にわたって保存されることが当該技術分野において既知である。タンパク質レベルでは、既知のSV2タンパク質(ヒト、マウス、ラット、ウシ、及びシビレエイ)の間で少なくとも62%同一性があり、既知のSV2タンパク質の内腔ドメインの間で少なくとも57%同一性がある。既知のSV2Aタンパク質及びウシのSVタンパク質において、アミノ酸配列の同一性は、全タンパク質に関しては98%を超え、内腔ドメインに関しては100%である。既知のSV2Bタンパク質において、アミノ酸配列の同一性は、全タンパク質に関しては94%を超え、内腔ドメインに関しては96%を超える。既知のSV2Cタンパク質及びシビレエイのSVタンパク質において、アミノ酸配列の同一性は、全タンパク質に関しては79%を超え(哺乳類種においては96%を超え)、内腔ドメインに関しては76%を超える(哺乳類種においては97%を超える)。ラットのSV2A、SV2B、及びSV2Cの内腔ドメインの間のアミノ酸配列同一性は76%であり、ラットのSV2A、SV2B、及びSV2Cの内腔ドメインの間のアミノ酸配列同一性は75%である。本明細書における開示は、ラットのSV2A、SV2B、及びSV2Cでの発見に基づいているが、全ての哺乳類種を含む全ての動物種に適用される。例えば、或る特定のラットのSV2C断片がBoNT/Aと結合することができることを示しているが、その一方でラットのSV2A及びラットのSV2B由来の対応する断片、並びに他のSV2ホモログ由来の対応する断片がBoNT/Aと結合することができると考えられる。全てのSV2タンパク質の間の対応するドメイン及び断片は、当業者に良く知られている任意のアラインメントプログラムを用いて同定することができる。例えば、Accelrys(San Diego,CA)製のGCGソフトウェアをこの目的に使用することができる(例えば、パラメータが初期値であるMegaAlignプログラム)。
【0009】
典型的に、SV2タンパク質は12個の膜貫通ドメインと、7つの細胞質ドメインと、1つの大きな内腔ドメイン(内腔ドメイン4、L4)とを含有する(Janz R and Sudhof TC,Neuroscience 94:1279-1290,1999)。ラットのSV2A、SV2B、及びSV2Cの場合、内腔ドメインはそれぞれ、アミノ酸468〜アミノ酸595、アミノ酸411〜アミノ酸536、及びアミノ酸454〜アミノ酸580にわたっている。本発明者らは、BoNT/Aが、その内腔ドメインでSV2タンパク質と結合することを見つけ出している。特に、本発明者らは、ラットのSV2Cの内腔ドメイン断片のアミノ酸529〜562及びアミノ酸454〜546並びに上記の断片を含有する様々な他の断片が、BoNT/Aと結合することができることを示している。断片のアミノ酸529〜566は、内腔ドメイン自体とほとんど同じ効率で結合する。アミノ酸529〜562又は454〜546にわたる断片よりも短い断片でもBoNT/Aと結合することができる可能性があり、当業者は日常的な切断実験によってこれらの断片を容易に同定することができる。
【0010】
さらに、上記のSV2タンパク質のBoNT/A結合断片のいずれか及び1つ又は複数の保存的置換を有するこのような結合断片のいずれかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%同一であるペプチドが、BoNT/Aと結合することができると考えられる。同じ保存的群内のアミノ酸は、タンパク質の機能に実質的に影響を与えることなく互いに典型的に置換することができることは当該技術分野で既知である。本発明の目的のために、このような保存的群が共通の特性に基づき、表1に記載されている。
【0011】
【表1−1】

【0012】
【表1−2】

【0013】
ラットのSV2A(cDNA配列は配列番号1に記載され、アミノ酸配列は配列番号2に記載される)、SV2B(cDNA配列は配列番号3に記載され、アミノ酸配列は配列番号4に記載される)、及びSV2C(cDNA配列は配列番号5に記載され、アミノ酸配列は配列番号6に記載される)に対するcDNA配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_057210、L10362、及びNM_031593に見出され得る。マウスのSV2A(cDNA配列は配列番号7に記載され、アミノ酸配列は配列番号8に記載される)、SV2B(cDNA配列は配列番号9に記載され、アミノ酸配列は配列番号10に記載される)、及びSV2C(cDNA配列は配列番号11に記載され、アミノ酸配列は配列番号12に記載される)に対するcDNA配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_022030、NM_153579、及びXM_991257に見出され得る。ヒトのSV2A(cDNA配列は配列番号13に記載され、アミノ酸配列は配列番号14に記載される)、SV2B(cDNA配列は配列番号15に記載され、アミノ酸配列は配列番号16に記載される)、及びSV2C(cDNA配列は配列番号17に記載され、アミノ酸配列は配列番号18に記載される)に対するcDNA配列及びアミノ酸配列はそれぞれ、GenBankアクセッション番号NM_014849、BC030011、及びBC100827に見出され得る。ウシのSV2に対するcDNA配列及びアミノ酸配列(cDNA配列は配列番号19に記載され、アミノ酸配列は配列番号20に記載される)は、GenBankアクセッション番号NM_173962に見出され得る。シビレエイ(Discopyge ommatta)SV2に対するcDNA配列及びアミノ酸配列(cDNA配列は配列番号21に記載され、アミノ酸配列は配列番号22に記載される)は、GenBankアクセッション番号L23403に見出され得る。
【0014】
ポリペプチド、核酸、ベクター、及び宿主細胞
本明細書中で用いられる「単離ポリペプチド」又は「単離核酸」という用語は、その自然環境から単離されるか、又は当業者にとって既知の方法のような合成方法を用いて調製されたポリペプチド又は核酸を意味する。いずれの場合においても完全な精製は要求されていない。本発明のポリペプチド及び核酸は、精製品においてポリペプチド又は核酸がその精製品の優勢種であるような従来の方法で、通常関連物質から単離精製することができる。精製度は最低限でも、精製品中の異物が、本発明で開示される様式での本発明のポリペプチド又は核酸の使用を妨げない程度のものである。ポリペプチド又は核酸は好ましくは、少なくとも約85%の純度、より好ましくは少なくとも約95%の純度、及び最も好ましくは少なくとも約99%の純度である。
【0015】
さらに単離核酸は、任意の天然由来の核酸の構造、又は2つ以上の遺伝子にわたる天然由来のゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない構造を有する。単離核酸としては、これらに限定されないが、(a)天然由来のゲノム核酸分子又は染色体外核酸分子の配列を有するが、その自然位置の配列に隣接するコード配列によっては隣接されない核酸、(b)得られる分子が天然由来のベクター又はゲノムDNAのいずれとも同一ではないようなベクター、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムに組み込まれる核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって作製される断片、又は制限断片等の分離分子、並びに(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組み換えヌクレオチド配列も挙げられる。クローンの混合物に存在する核酸は、例えばこれらのクローンがcDNA又はゲノムDNAのライブラリ等のDNAライブラリで発生するのでこの定義から特に除外される。単離核酸は、完全に若しくは部分的に一本鎖、又は二本鎖、又はたとえ三本鎖であったとしても、修飾若しくは非修飾のDNA又はRNAであり得る。核酸は、化学的に又は酵素的に修飾することができ、すなわちイノシン等の非標準塩基を含み得る。
【0016】
本出願で用いられるように、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列間の「同一率」は「相同率」と同義語であり、これは、Karlin and Altschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,5873-5877,1993)によって修正されたKarlin and Altschul(Proc.Natl.Acad.ScI USA 87,2264-2268,1990)のアルゴリズム、又は当業者に良く知られている他の方法を用いて求めることができる。上記のアルゴリズムは、Altschul et al.(J.Mol.Biol.215,403-410,1990)のNBLASTプログラム及びXBLASTプログラムに組み込まれる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)で実行し、対象のポリヌクレオチドと相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)で実行し、参照ポリペプチドと相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、ギャップド(Gapped)BLASTは、Altschul et al.(Nucleic Acids Res.25,3389-3402,1997)に記載されるように利用することができる。BLASTプログラム及びギャップドBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の初期パラメータを用いることができる。2つのアミノ酸配列をアラインメントする別のプログラムの例(MegaAlign、GCG)は本明細書の上記で与えられる。
【0017】
一態様において、本発明は、結合断片の全長にわたるSV2タンパク質のBoNT/A結合断片のアミノ酸配列、又は1つ又は複数の保存的置換を有するSV2タンパク質のBoNT/A結合断片のアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%若しくは95%同一であるアミノ酸配列を含有する単離ポリペプチドに関する。好ましくは、上記単離ポリペプチドはBoNT/Aと結合することができる。全長SV2タンパク質を含有するポリペプチドは、本発明のポリペプチドから特に除外される。一実施態様では、SV2内腔ドメインから成るか、又はSV2内腔ドメインを含有する単離ポリペプチドであって、当該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドも本発明から除外される。SV2タンパク質のBoNT/A結合断片の例としては、これらに限定されないが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜576と、(iv)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜576に対応する断片である、ホモログの断片(例えば図9を参照されたい)と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応する断片(例えば図9を参照されたい)とが挙げられる。
【0018】
好ましいSV2タンパク質のBoNT/A結合断片としては、これらに限定されないが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜580と、(iv)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜580に対応する断片が挙げられる。他の好ましいBoNT/A結合断片には、SV2タンパク質の内腔ドメインが含まれる。
【0019】
一実施態様において、本発明のポリペプチドは、おおよそSV2内腔ドメインの長さ以下である。例えば、本発明のポリペプチドは、129、128、127、又は126アミノ酸長未満であり得る。別の実施態様では、本発明のポリペプチドは、125、120、110、100、90、80、70、60、50、又は40アミノ酸長未満である。
【0020】
別の実施態様において、本発明のポリペプチドは水性溶媒(例えば、他の添加剤の有無に関わらず水)に可溶性である。水性溶媒に可溶性であるということは、ポリペプチドが、水性溶媒において少なくとも10μg/ml、好ましくは少なくとも50μg/ml又は100μg/ml、より好ましくは少なくとも500μg/ml、及び最も好ましくは少なくとも1000μg/mlの溶解度を示すことを意味する。ポリペプチドが水溶液に可溶性であるか否かは、そのアミノ酸配列に基づくか、又は日常的な実験によって当業者によって容易に求められ得る。本発明の可溶性ポリペプチドの例としては、SV2タンパク質の内腔ドメインの全て又は一部を含有するが、隣接膜貫通ドメイン(複数可)の少なくとも一部、好ましくは全てを欠いているポリペプチドが挙げられる。典型的に可溶性ポリペプチドは、静脈内投与に関して不溶性ポリペプチドよりも好適である。
【0021】
付加的なアミノ酸(複数可)がBoNT/A結合機能に実質的に影響を与えなければ、本発明の単離ポリペプチドには、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列のN末端及びC末端のいずれか又は両方に1つ又は複数のアミノ酸が含まれていてもよい。任意の付加的なアミノ酸は必要ではないが、ポリペプチドを精製、検出、又は安定化するのに有利に使用することができる。
【0022】
ポリペプチドの安定性及び/又は結合性を改善するために、非天然アミノ酸及び/又はアミノ酸間の非天然化学結合の組み込みによって分子を修飾することができる。このような分子はペプチドミミック(peptidomimics)と呼ばれる(H.U.Saragovi et al.,Bio/Technology 10:773-778,1992、S.Chen et al.,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 89:5872-5876,1992)。このような化合物の生成は化学合成に限定されている。本発明のポリペプチドは、その機能を破壊することなくペプチドミミックへと修飾することができることが理解される。これは当業者によって容易に達成することができる。
【0023】
別の態様において、本発明は、コードポリヌクレオチド又はその相補体を含有する単離核酸であって、当該コードポリヌクレオチドが、上記のように本発明のポリペプチドをコードする一続きの(uninterrupted)コード配列を有する単離核酸に関する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、又は適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、コードポリヌクレオチド又はその相補体とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含有する核酸は、コードポリペプチドを検出するのに有用であり、したがって本発明の範囲内である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5×SSC/5×デンハルト溶液/1.0%SDSにおける68℃でのハイブリダイズ、及び0.2×SSC/0.1%SDS±100μg/mlの変性サケ精子DNAにおける室温での洗浄と定義され、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、同じ緩衝液における42℃での洗浄と定義される。例えば、Sambrook et al.著,1989,「分子クローニング、研究所マニュアル(Molecular Cloning,A Laboratory Manual)」,Cold Spring Harbor Press,N.Y.、及びAusubel et al.(編),1995,「分子生物学における最新のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(John Wiley&Sons,N.Y.)のUnit 2.10によるこのような条件に関する付加的な指針が当該技術分野で容易に利用可能である。コードポリヌクレオチド、又はコードポリヌクレオチドの全長にわたるその相補体と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるポリヌクレオチドを含有する核酸は、コードポリヌクレオチドを検出するプローブとして用いることもでき、したがって本発明の範囲内である。全長SV2タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含有する核酸が本発明から特に除外される。一実施態様では、SV2内腔ドメインをコードするポリヌクレオチドから成る核酸、及びSV2内腔ドメインを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、当該ドメインが非天然アミノ酸配列によって一端又は両端に隣接される核酸が除外される。
【0024】
関連の態様において、上記の本発明の任意の核酸が、当業者に既知の様式でベクターにおいて提供され得る。このベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターであり得る。発現ベクターにおいて、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つ又は複数の非天然発現制御配列の転写制御下にあり、これにはベクターが適合する宿主細胞に、又は無細胞転写翻訳系に与えられる場合に、コード化ポリペプチドを生成することができるようにポリヌクレオチドに隣接して天然には見出されないプロモータが含まれ得る。このような細胞に基づいた系及び無細胞系は当業者に既知である。本発明の核酸を含有するベクターを含む細胞自体が本発明の範囲内である。非天然部位でそのゲノムに組み込まれた本発明の核酸を有する宿主細胞も本発明の範囲内である。
【0025】
リガンド−ポリペプチド複合体
別の態様において、本発明は、リガンドとポリペプチドとの複合体であって、当該ポリペプチドが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜576と、(iv)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜576に対応する断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応する断片と、(ix)(i)〜(viii)の前記アミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%同一であり、BoNT/Aと結合することができるアミノ酸配列と、(x)保存的置換を有し、BoNT/Aと結合することができる(i)〜(viii)由来のアミノ酸配列とから選択される、リガンドが結合する部分を含み、ポリペプチドが全長SV2タンパク質である場合、リガンドがボツリヌス毒素ではない複合体に関する。本明細書に開示される複合体には、in vitro及びin vivoで形成されるものの両方が含まれる。
【0026】
一実施態様において、複合体のポリペプチドは、全長SV2タンパク質である。
【0027】
別の実施態様において、複合体のポリペプチドは、「ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞」の項で規定されている本発明のBoNT/A結合ポリペプチドの1つである。
【0028】
好ましい実施態様において、複合体のポリペプチドは、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜580と、(iv)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜580に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)ラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、当該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片とから選択される成員を含む。
【0029】
複合体のポリペプチドは、合成ペプチド又は組み換えペプチドであってもよく、アフィニティタグ及び/又はガングリオシド結合部位を含み得る。
【0030】
一実施態様において、複合体のリガンドは、ポリペプチドに対する抗体又はポリペプチドと結合するBoNT/A断片である。このような抗体及びBoNT/A断片は、ポリペプチドとBoNT/Aとの間の結合を低減することができる。
【0031】
BoNT/A神経毒性を低減する方法
別の態様において、本発明はニューロン等の標的細胞でBoNT/A細胞毒性を低減する方法に関する。結果として、ボツリヌス病を予防又は治療することができる。一実施態様では、この方法を用いて、BoNT/A毒性を低減することができる薬剤をヒト又は非ヒト動物に投与することによって、ヒト又は非ヒト動物におけるBoNT/A毒性を低減させる。
【0032】
「BoNT/A細胞毒性を低減させる」という用語は、BoNT/A毒性におけるあらゆるレベルの低減を包含する。標的細胞のSV2タンパク質のレベルを低減すること、標的細胞のSV2タンパク質のBoNT/A関連の細胞機能を阻害すること、又はBoNT/Aと標的細胞の細胞表面上に位置するSV2タンパク質との間の結合を低減することによって、BoNT/A毒性を低減することができる。BoNT/AとSV2タンパク質との間の結合は、直接結合を妨げること、又は結合に利用可能なSV2タンパク質の量を減少させることのいずれかによって低減することができる。
【0033】
SV2タンパク質のレベル等の細胞タンパク質のレベルを低減することができる方法が多く存在する。本発明は、これに関して特定の方法に限定されない。例として、SV2タンパク質の細胞レベルは、アンチセンス技術を用いることによって低減することができる。例えば、SV2のmRNAの5’末端に向かって20〜25merのアンチセンスオリゴヌクレオチドを生成することができる。ホスホロチオエート誘導体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端及び5’末端における最後の3塩基対に利用し、その半減期及び安定性を高めることができる。カチオン性リポソーム等のキャリアを利用して、アンチセンスオリゴヌクレオチドを輸送することができる。これに関して、オリゴヌクレオチドは、クロロホルム1ml中5:2の比で1−αジオレイルファチジルセルタノールアミンを臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウムと混合することによって調製されたカチオン性リポソームと混合する。溶媒は蒸発させ、脂質を生理食塩水10ml中での超音波処理によって再懸濁させた。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる別の方法は、ベクターがSV2のmRNAの翻訳を妨げるアンチセンスcRNAを生成することができるように、アンチセンスオリゴヌクレオチドをベクターに組み込むことである。同様に、今まで哺乳類系に適用されているRNAi技法も、SV2タンパク質の発現を阻害するのに適している(Zamore,Nat.Struct.Biol.8:746-750,2001を参照されたい(その全体が記載されるように参照により本明細書に援用される))。
【0034】
ドミナントネガティブSV2
別の態様において、本発明は、対応する野生型SV2を発現する細胞におけるBoNT/Aの影響を打ち消すことができるドミナントネガティブSV2を同定することに関する。ドミナントネガティブSV2は、突然変異を野生型SV2遺伝子に導入すること、同じ宿主細胞において突然変異型SV2及び野生型SV2を発現させること、及びBoNT/A毒性に関するパラメータ(これには、宿主細胞のBoNT/Aに対する感受性、新たに形成されたSV2の宿主細胞膜への融合、BoNT/Aとの野生型SV2の結合、及び細胞へのBoNT/Aの取り込みが含まれるが、これらに限定されない)に対する突然変異型SV2の影響を求めることによって同定することができる。宿主細胞で発現した野生型SV2は、内因性SV2又は宿主細胞に導入されたSV2であり得る。同定された任意のドミナントネガティブSV2が本発明の範囲内である。同定されたドミナントネガティブSV2を用いて、BoNT/Aの影響を打ち消すことができる。
【0035】
BoNT/AとSV2との間の結合を妨げること
BoNT/A受容体としてのSV2、及びSV2におけるBoNT/A結合配列の同定は、当業者が、当該技術分野で利用可能な多くの戦略によって、BoNT/Aとその受容体との間の結合を妨げることを可能にする。1つの戦略は、SV2におけるBoNT/A結合配列に特異的なモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の使用を伴う。このようなモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を生成することは十分に当業者の能力の範囲内である。このようにして生成された抗体は本発明の範囲内である。
【0036】
別の戦略は、BoNT/A結合に対する受容体と競合するBoNT/A結合ポリペプチド、好ましくは可溶性BoNT/A結合ポリペプチドの使用を伴う。例えば、「ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞」の項で上記の本発明のBoNT/A結合ポリペプヂトは、この目的に利用することができる。利用することができる他のポリペプチドとしては、全長SV2タンパク質を含むポリペプチドと、SV2内腔ドメインから成るポリペプチドと、SV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、当該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドとが挙げられる。
【0037】
動物(ヒト又は非ヒト)におけるBoNT/Aとその受容体との間の結合を妨げるために、同じ種及び異なる種の両方に由来のBoNT/A結合ポリペプチドを用いることができる。ポリペプチドは、ポリペプチドを直接投与すること又は動物においてポリペプチドを発現することができるベクターを投与することによって動物に導入することができる。
【0038】
当業者は、置換、挿入及び欠失等の突然変異がBoNT/A結合活性を破壊することなく、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列に導入することができることを理解している。幾つかの突然変異は結合活性さえも高めることができる。このような突然変異を含有するポリペプチドは、本発明の方法に用いることができる。このようなポリペプチドは、下記のスクリーニング方法を用いることによって同定することができる。
【0039】
さらに、ガングリオシドが安定性のあるBoNT/A−SV2複合体の形成を促進し得るので、BoNT/AとSV2タンパク質との間の結合は、ガングリオシドとSV2タンパク質との間の結合を低減することによって、又はSV2タンパク質との結合に利用可能なガングリオシドの量を減少させることによって低減し得る。関連の態様では、BoNT/A結合ポリペプチドが、BoNT/Aとの複合体を形成することによってBoNT/A毒性を低減するのに用いられる場合、複合体の形成を容易にさせるガングリオシドが含まれ得る。
【0040】
BoNT/AとSV2との間の結合を妨げることができる薬剤の同定
BoNT/A、及びBoNT/Aがポリペプチドと結合するのに好適な条件下でSV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含有するポリペプチドを利用することによって、BoNT/AとSV2との間の結合を妨げることができる薬剤をスクリーニングすることができる。ガングリオシドは任意で反応混合物に含まれる。BoNT/Aとポリペプチドとの間の結合は、試験薬剤の存在下で測定し、試験薬剤に曝されない対照の結合と比較することができる。試験群において対照よりも低い結合は、試験薬剤がBoNT/AとSV2タンパク質との間の結合を妨げることができることを示す。この方法で利用することができる他のBoNT/A結合ポリペプチドとしては、「ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞」の項で上記の本発明のポリペプチドが挙げられる。
【0041】
当業者には、BoNT/AとBoNT/A結合ポリペプチドとの間の結合を評価する多くの系が良く知られている。これらの系のいずれもスクリーニング方法に用いることができる。実験条件の詳細は、当業者によって容易に決定することができる。例えば、上記のBoNT/Aとポリペプチドとの間の結合は、in vitro(無細胞系)で測定することができる。SV2タンパク質が発現し、細胞膜上で転座される細胞培養系も用いることができる。細胞培養系に関しては、BoNT/AとSV2タンパク質との間の結合に加えて、BoNT/Aの細胞侵入及び他のパラメータの値も、BoNT/AとSV2との間の結合の指標として用いることができる。
【0042】
タンパク質−タンパク質相互作用を測定する当業者に既知の任意の方法を用いて、BoNT/AとBoNT/A結合ポリペプチドとの間の結合を測定することができる。免疫共沈降及びアフィニティカラム単離の2つが一般的に用いられる方法である。
【0043】
表面プラズモン共鳴(SPR)は別の一般的に用いられる方法である。SPRは屈折率の変化を用いて、マイクロフローセル内の薄金チップ上に共有結合したリガンドとの高分子の結合及び解離を定量化する。この技法を用いて、多くの系におけるタンパク質−タンパク質相互作用(これには、PA63のEF及びLFとの相互作用(Elliott,J.L.et al.,Biochemistry 39:6706-6713,2000)が含まれる)を研究している。この技法によって、高感度及び高い正確性、並びにリアルタイムで結合及び放出を観察する能力が与えられる。平衡解離定数(Kd)に加えて、結合速度定数及び解離速度定数(on- and off-rate constants)(ka及びkd)も得ることができる。典型的に、研究されるタンパク質は、金チップと結合したカルボキシメチルデキストランマトリクスと共有結合的に連結される。固定化タンパク質とのタンパク質リガンドの結合がデキストラン/タンパク質層の屈折率の変化をもたらし、これはSPRによって定量化される。BIAcore2000機器(Pharmacia Biotech)をこれらの測定に用いることができる。
【0044】
細胞培養系に関して、BoNT/A結合ポリペプチドとのBoNT/Aの結合は、細胞を染色することによって評価することができ、この例は、以下の実施例の項で記載される。
【0045】
SV2のBoNT/A結合配列と結合することができる薬剤の同定
SV2タンパク質のBoNT/A結合配列と結合することができる薬剤を用いて、BoNT/AとSV2タンパク質との結合を妨げることができる。このような薬剤は、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含有するポリペプチドを試験薬剤に与えること、及びこの薬剤がBoNT/A結合配列と結合するか否か求めることによって同定することができる。この方法に利用することができる他のBoNT/A結合ポリペプチドとしては、「ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞」の項で上記の本発明のポリペプチドが挙げられる。この方法によって同定された任意の薬剤は、細胞へのBoNT/A侵入を妨げる能力又はBoNT/A毒性を中和する能力に関してさらに試験することができる。当業者は、さらに試験するのに用いることができる好適な系を良く知っている。このような系の例は以下の実施例の項で与えられる。
【0046】
当業者は、ポリペプチドと薬剤との間の結合を評価する当該技術分野における多くの系を良く知っている。これらの系のいずれかを本発明の方法に使用することができる。実験条件の詳細は当業者によって容易に決定することができる。例えば、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含有するポリペプチドは好適な基質で与えられ、試験薬剤に曝すことができる。抗体と結合するポリペプチドの能力の喪失、又は薬剤が放射性標識、蛍光標識、又はそうでなければ他の方法で標識される場合のポリペプチドの標識化のいずれかによって、ポリペプチドとの薬剤の結合を検出することができる。別の例では、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含有するポリペプチドは宿主細胞で発現することができ、それからこの細胞が試験薬剤に曝される。次に、例えば、免疫沈降又は電気泳動によってポリペプチドを単離することができ、ポリペプチドと薬剤との間の結合を測定することができる。上記のように、ポリペプチドと薬剤との間の結合を測定する1つの方法は、薬剤と結合するポリペプチドが結合時に標識されるように薬剤を標識することである。試験薬剤がポリペプチドである場合、上記のタンパク質/タンパク質結合を評価するのに特有の技法例も用いることができる。なお、スクリーニングアッセイに用いられるSV2タンパク質のBoNT/A結合配列がフランキング配列を有する場合、薬剤がフランキング配列よりもむしろBoNT/A結合配列と結合することを確認する必要があり、これは当業者によって容易に達成することができる。
【0047】
スクリーニングできる薬剤
上記のスクリーニング方法でスクリーニングされる薬剤は、例えばポリペプチド(例えば、SV2タンパク質の修飾BoNT/A結合配列を含有するポリペプチド、又はSV2タンパク質のBoNT/A結合配列に対するモノクローナル抗体若しくはポリクローナル抗体が含まれる)等の高分子量分子、多糖、脂質、核酸、低分子量の有機分子、又は低分子量の無機分子等であり得る。
【0048】
スクリーニング用の薬剤のバッテリは、ペプチドライブラリを含む様々な化学ライブラリの形態で市販されている。このようなライブラリの例としては、ASINEX製のライブラリ(すなわち、24000個の自動的に合成された有機分子のCombined Wisdomライブラリ)及びCHEMBRIDGE CORPORATION製のライブラリ(すなわち、50000個の自動的に合成された化合物のDIVERSet(商標)ライブラリ、24000個の自動的に合成された化合物のSCREEN−Set(商標)ライブラリ、11000個の化合物のCNS−Set(商標)ライブラリ、最大300000個の化合物のCherry−Pick(商標)ライブラリ)及び直鎖ライブラリ、多量体ライブラリ及び環状ライブラリ(Tecnogen(Italy))が挙げられる。所望の活性を有する薬剤が同定されたら、この薬剤の誘導体のライブラリは、より良好な分子に関してスクリーニングすることができる。ファージ提示法は、BoNT/AとSV2との相互作用の新規の阻害因子の発見に好適なアプローチでもある。
【0049】
BoNT/A又はボツリヌス菌を検出する方法
別の態様において、本発明は、BoNT/A又はボツリヌス菌を検出する方法に関する。この方法は、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を有するポリペプチドを含有する薬剤に、BoNT/Aを含有する疑いのあるサンプルを曝すこと、及びBoNT/Aとのポリペプチドの結合を検出することを伴う。この方法に利用することができる他のBoNT/A結合ポリペプチドとしては、「ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、及び宿主細胞」の項で上記の本発明のポリペプチドが挙げられる。
【0050】
BoNT/Aと結合することができるポリペプチドを同定する方法
別の態様において、本発明は、BoNT/Aと結合することができるポリペプチドを同定する方法に関する。この方法は、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含むポリペプチドを提供すること、BoNT/A結合配列においてポリペプチドを修飾すること、及び修飾ポリペプチドがBoNT/Aと結合することができるか否かを求めることを伴う。
【0051】
キット
本明細書に記載の本発明の任意の製品は、当業者の理解に合わせて、キットの形態(例えば、診断キット、予防キット、又は治療キット)で1つ又は複数の他の試薬又は緩衝液等と組み合わせてもよい。
【0052】
本発明は、以下の非限定的な例を考慮してより完全に理解される。
【実施例】
【0053】
本実施例において、本発明者らは、BoNT/Aが3つのSV2アイソフォーム(SV2A、SV2B、及びSV2C)全てと結合することを示している。ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、529〜566、及び454〜546等の特定の結合断片も同定された。組み換えSV2断片が、海馬ニューロン及び運動性神経末端とのBoNT/A結合を阻害する。重要なことに、海馬ニューロンとのBoNT/A結合は、SV2A/Bノックアウトマウスで破壊され、SV2をニューロンにトランスフェクトすることによって元に戻すことができる。常に、SV2ノックアウトマウスの横隔膜の運動性神経末端においてBoNT/A結合は低減され、SV2Bノックアウトマウスは、BoNT/Aに対する感受性の低減を示した。これらのデータによって、BoNT/Aに対するタンパク質受容体としてSV2が確定し、これはシナプス小胞の再生によって毒素侵入を介在する。
【0054】
材料及び方法
材料、抗体及びSV2ノックアウトマウス株:Alexa488結合α−BTXはMolecular Probes,Inc.(OR)から購入した。BoNT/Aで切断させた後にSNAP−25を認識するmAb(抗SNAP−25−C)は、Research&Diagnostic Antibodies,Inc.(CA)から購入した。SV2(汎SV2(pan-SV2))、Syp(Cl 7.2)、Syb II(Cl 69.1)及びSyt I(Syt IN Ab、Cl 604.4)に対するmAbがR.Jahn(マックスプランク生物物理化学研究所(Max-Planck-Institute for Biophysical Chemistry),Gottingen,Germany)で広く与えられた。BoNT/Aに対するヒトの抗体(RAZ−1)は、J.Marks(カルフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California - San Francisco),CA)で広く与えられた。Cy2、Cy3、Cy5、Alexa546及びAlexa647と結合した二次抗体は、Jackson Laboratories(ME)及びMolecular Probes,Incから購入した。ウサギの抗BoNT/A、抗BoNT/B及び抗BoNT/Eポリクローナル抗体並びに抗SV2A、抗SV2B及び抗SV2C抗体がDong M et al.,J.Cell.Biol.162:1293-1303,2003、及びJanz R and Sudhof TC,Neuroscience 94:1279-1290,1999(両方がその全体において参照により本明細書に援用される)で記載されていた。BoNT/A、BoNT/B及びBoNT/Eは、Malizio CG,Methods and Protocols,O.Holst,ed.(Humana Press),pp.27-39,2000(その全体において参照により援用される)で記載されるように精製した。ウシの脳のガングリオシド混合物は、Matreya LLC(PA)から購入した。この研究で用いられたSV2ノックアウトマウス株は、Janz R et al.,Neuron 24:1003-1016,1999(その全体において参照により援用される)で記載されていた。マウスは、Janz R et al.,supra,1999で記載されるようにPCRで遺伝子型を決定した。
【0055】
cDNA、構築及びトランスフェクション:ラットのSV2A、SV2B及びSV2CのcDNAは、Bajjalieh SM et al.Science 257:1271-3,1992、Feany MB et al.Cell 70:861-7,1992、Bajjalieh SM et al.Proc Natl Acad Sci USA 90:2150-4,1993、及びJanz R&Sudhof TC Neuroscience 94:1279-90,1999(全てその全体において参照により本明細書に援用される)に記載されていた。様々なSV2内腔ドメイン断片がPCRによって生成され、pGEX−2Tにサブクローニングされ、GST融合タンパク質として精製された(Lewis JL et al.J Biol Chem 276:15458-65,2001)。また、GST及びGSTで標識したSV2C−L4タンパク質は、製造業者のプロトコル(Promega,WI)に従って磁性GSTビーズを用いて精製し、40mMのグルタチオン(Sigma)で溶出し、その後透析し、高濃度の可溶性タンパク質を生成した。
【0056】
SV2アイソフォームを海馬ニューロンにトランスフェクトするために、全長SV2A、SV2B及びSV2CをLox−Syn−Synレンチウイルスベクターにサブクローニングした(P.Scheiffele,Columbia University,NYにより与えられる)。このベクターは、pFUGWの修正版であり(Lois C et al.,Science 295:868-872,2002)、別個のニューロン特異的な(シナプシン)プロモータを含有する。1つのプロモータがBamHI部位とNotI部位との間に挿入されるSV2アイソフォームの発現を制御し、他のプロモータがEGFPの発現を制御し、トランスフェクト細胞を検出する。Dean C et al.,Nat.Neurosci.6:708-716,2003(その全体において参照により援用される)に記載のようにリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて7〜10DIVのニューロンでトランスフェクトを行い、48時間後に分析した。備考:SV2C配列内のBamHI部位は、単純にサブクローニングするのに突然変異している(アミノ酸配列を保存するGGATCCからGGATACへの突然変異)。
【0057】
ニューロン細胞培養、BoNT取り込み、免疫細胞化学:海馬ニューロンの培養物は、E18〜E19のラットから調製され、SV2ノックアウトマウスのニューロン培養物がP1マウスから調製された。ニューロンは、50000/cm2の密度でポリ−D−リジンでコートされたカバーガラス片(12mm)上で平板培養され、B−27(2%)及びGlutamax(2mM)で添加されたニューロベイサル(Neurobasal)培地で培養した。実験は10〜14日齢のニューロンで行った。
【0058】
異なる条件下でBoNT/Aの取り込みに関して評価するために(図1b)、海馬ニューロンを1分間、BoNT/A(10nM)及びSyt IN Ab(604.4、1:40)を含有する以下のアッセイ緩衝液の1つ(200μl)でインキュベートした。これらの緩衝液は、対照緩衝液(PBS:140mMのNaCl、3mMのKCl、1.5mMのKH2PO4、8mMのNa2HPO4、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2)、高K+緩衝液(対照緩衝液と同じだが、56mMのKCl及び87mMのNaClに調整する)、及び高K+/無Ca2+緩衝液(高K+緩衝液と同じだが、CaCl2を欠いている)である。それからニューロンをPBSで洗浄し(3×500μl)、4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。0.3%トリトンX−100での浸透後、ニューロンは、10%ヤギ血清で遮断され、室温で1時間、抗BoNT/Aポリクローナル抗体(1:200)で染色した。二次抗体は、Cy2結合ヤギ抗マウス及びCy3結合ヤギ抗ウサギであった。共焦点顕微鏡(Olympus FV1000、60X浸水対物レンズ)を用いて、免疫蛍光画像が得られた。同一のゲイン(Identical gain)及びレーザーの設定は、図で直接比較した画像に用いた。図1b後の海馬ニューロンを用いる全ての実験に関して、毒素侵入量を増加させるために、ニューロンを10分間高K+緩衝液でインキュベートした。
【0059】
BoNT/A、BoNT/B及びSV2の三重染色に関して(図4b)、BoNT/Bをウサギのポリクローナル抗体(1:200)及びCy2結合二次抗体で検出し、BoNT/Aをヒトの抗体(RAZ−1、1:300)及びAlexa−546結合二次抗体で検出して、SV2発現をマウスのモノクローナル抗体(汎SV2 Ab、1:400)及びAlexa−647結合二次抗体で検出した。
【0060】
BoNT/Aで切断しているSNAP−25を検出するために(図3b)、ニューロンをBoNT/Aに曝した後3回洗浄し、6時間培養培地でさらにインキュベートした。それから細胞を固定し、浸透させ、抗SNAP−25−Cモノクローナル抗体(1:50)及びウサギの抗BoNT/A抗体で染色した。
【0061】
ImageJソフトウェア(NIH)を用いて、図4に示される蛍光強度を定量化した。要するに、初めにそれぞれのチャネル(BoNT/B及びBoNT/A)に関して固定した閾値が選択され、ニューロンを欠いている領域からバックグラウンドシグナルを排除して、装飾ニューロン由来の蛍光シグナルの平均強度を測定した。BoNT/A及びBoNT/Bに曝されなかったニューロンを固定し、同じ抗体で同時に染色した。毒素で処理したサンプルからこれらの画像の平均強度を差し引いた。両側t検定を用いて、統計的有意性を求めた。
【0062】
免疫共沈降及びプルダウンアッセイ:ラット又はマウスの脳の界面活性剤抽出物は、Lewis JL et al.,J.Biol.Chem.276:15458-15465,2001(その全体において参照により援用される)で記載されるように構成された。4℃で1時間、脳の抽出物(400μl、3〜6mg/ml)と予混合した後、抗体(5μl)を加え、それから1時間さらにインキュベートした。プロテインG Fast Flowビーズ(40μl、Amersham Biosciences)を加え、1時間インキュベートした。0.5%トリトンX−100に加えて、TBS(20mMのTris、150mMのNaCl(pH7.4))中で3回ビーズを洗浄した。結合物質をSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析にかけた。
【0063】
組み換えGST融合タンパク質を精製し、グルタチオン−セファロースビースで固定化した。0.5%トリトンX−100に加えて、TBS100μl中で固定化タンパク質8μg及び100nMの毒素を用いて、Dong M et al.(supra,2003)に記載のようにプルダウンアッセイを行った。結合物質をSDS−PAGE及びウエスタンブロット分析にかけた。
【0064】
マウスの片側横隔膜実験:マウスの片側横隔膜を対照緩衝液(図1a、哺乳類のリンガー液(mM):NaCl 138.8、KCl 4、NaHCO3 12、KH2PO4 1、MgCl2 22、CaCl2 2、及びグルコース 11)、又は高K+緩衝液(対照緩衝液と同じだが、98mMのNaCl及び45mMのKClに調整する)で維持し、37℃まで温め、95%O2/5%CO2に空気調節した(gased)。片側横隔膜を室温で1時間、指示されたBoNT(25nM)とインキュベートした(備考:10nMのBoNT/Aを用い、図3cで30分間だけインキュベートした)。インキュベート後に、横隔膜を洗浄し、室温で30分間、4%パラホルムアルデヒドで固定して、浸透させ、0.5%トリトンX−100に加えて、5%ヤギ血清において遮断した。4℃で一晩、横隔膜をAlexa−488結合α−BTX(1:250)及びウサギ抗BoNT/A抗体又は抗BoNT/B抗体(1:1000)とインキュベートした。Cy3結合抗ウサギ二次抗体を1:800の希釈で用いた。NMJにおいてSV2A、SV2B又はSV2Cを染色するために(図8)、片側横隔膜を切除し、直ぐに固定した。1:1000の希釈の特異的なウサギ抗SV2A、抗SV2B又は抗SV2C抗体を用いた。共焦点顕微鏡(Olympus FV1000、60X浸水対物レンズ)を用いて、全ての画像を収集した。
【0065】
蛍光シグナルを定量化するために、α−BTXチャネルは偽着色した緑色であり、BoNT/A(又はBoNT/B)チャネルは偽着色した赤色であった。組み合わせた緑色画像及び赤色画像をMetaMorphソフトウェア(Improvision)に導入した。α−BTX緑色チャネルを閾値化することによって、NMJをマーキングする対象の領域(ROI)を求めた。横隔膜実験を通して同じ閾値を用いた。ROI内の緑色チャネル及び赤色チャネルの平均強度を測定し、それらの間の比を用いて、毒素結合のレベルを求めた。両側t検定を用いて、対となるデータセット間の統計的有意性を求めた。
【0066】
マウスにおける迅速なBoNT毒素アッセイ:Boroff DA and Fleck U,J.Bacteriol.92:1580-1581,1966(その全体において参照により援用される)、Dong M et al.,supra,2003、及びMalizio CG,supra,2000に記載された点適法を用いて、マウスにおいてBoNT/Aの効果的な毒素を推測した。要するに、Hall株から単離されたBoNT/A(A1型)を30mMのリン酸ナトリウム緩衝液(0.2%ゼラチンを加えてpH6.3)において10μg/mlに希釈した。0.1mlの希釈毒素をそれぞれのマウスに静脈注射し(外側尾静脈)、その時間対致死を記録した。Malizio CG,supra,2000に記載された標準曲線を用いて、時間対致死の値を腹腔内のLD50/mlに変換した。これらの実験で用いたSV2Bノックアウトマウスは、C57Bl6/Jのマウスと6世代にわたって交雑されている。
【0067】
結果
BoNT/A受容体がシナプス小胞上に存在する:BoNT/Aに対する生理学的標的は末梢運動性神経末端である(Dolly JO et al.,Nature 307:457-460,1984)。ニューロンの活動の刺激(すなわち、神経伝達物質放出)がBoNT/Aによって引き起こされる麻痺の速度を加速させる可能性がある(Hughes RW,J.Physiol(Lond.)160:221-233,1962)。しかし、シナプス小胞のエキソサイトーシスがBoNT/A結合及びニューロンへの侵入を直接増大させるか否かは知られていない。この問題に対処するために、本発明者らはマウスの横隔膜標本における運動性神経末端とのBoNT/A結合を視覚化させた。この組織の神経筋接合部(NMJ)を、シナプス後アセチルコリン受容体と結合するα−ブンガロトキシン(α−BTX)で標識した(Astrow SH et al.,J.Neurosci.12:1602-1615,1992)。図1aで示されるように、シナプス小胞のエキソサイトーシスを誘起する高K+溶液(45mMのKCl)が、対照条件と比べて約6倍までNMJとのBoNT/A結合を増大させ、このことはシナプス小胞のエキソサイトーシスがBoNT/A受容体を曝すことを示していた。
【0068】
BoNT/A受容体がシナプス小胞上にあるか否かをさらに分析するために、本発明者らは、モデル系として培養したラットの海馬ニューロンを用いた。シナプス小胞の再生は、豊富なシナプス小胞膜タンパク質であるシナプトタグミンI(Syt IN Ab)の内腔ドメインを認識する抗体の取り込みによってモニタリングされた(Dong M et al.,J.Cell.Biol.162:1293-1303,2003)。図1bで示されるように、Syt IN Abの取り込みは、高K+による短い刺激(56mMのKCl、1分)で大きく増大し、細胞外Ca2+の減少によって阻害された。興味深いことに、BoNT/Aの同じニューロンへの取り込みは、Syt IN Abの挙動を模倣しており、Syt IN Abシグナルと広く共局在化する(図1b)。さらにこの所見を確認するために、本発明者らは、エキソサイトーシスに必要なシナプス小胞膜タンパク質であるSyb IIを切断することによって、シナプス小胞のエキソサイトーシスを特異的に妨げるBoNT/Bでこれらのニューロンを前処理した(Schiavo G et al.,Nature 359:832-835,1992)。図1cで示されるように、BoNT/B処理は、刺激条件下でBoNT/Aの取り込みを止め、このことはBoNT/A受容体が、ニューロンでSyb IIを含有する小胞に存在することを示していた。同時に、これらの証拠によって、BoNT/Aに対する受容体がシナプス小胞に存在することが示唆されている。
【0069】
BoNT/AがSV2の内腔ドメインに結合する:シナプス小胞は十分に研究された細胞小器官であり、全てではないがほとんどの内在性シナプス小胞タンパク質が同定されている(Fernandez-Chacon R and Sudhof TC Ann.Rev.Physiol.61:753-776,1999)。本発明者らは、これらの特異的な抗体を用いてラットの脳の界面活性剤抽出物由来のBoNT/Aを免疫共沈降することによって、BoNT/A相互作用に対する既知のシナプス小胞膜タンパク質をスクリーニングした。図2aで示されるように、SV2モノクローナル抗体(汎SV2)がBoNT/Aを免疫沈降することができた。別の豊富な小胞タンパク質であるシナプトフィジン(Syp)に対する抗体が相当量のBoNT/Aを削減することはできないので、この相互作用は特異的である(図2a)。
【0070】
次に本発明者らは、BoNT/A−SV2相互作用がガングリオシドの影響を受けるか否かを評価した。本発明者らは、外因性ガングリオシドを加えることによって、脳の界面活性剤抽出物においてガングリオシド濃度を増大させた。様々なBoNT/A濃度で免疫沈降を行った。図2bで示されるように、外因性ガングリオシドを加えることによって、BoNT/Aの免疫共沈降のレベルが増大した。この効果は高いBoNT/A濃度(100nM)では有意ではなかったが、低い毒素濃度(例えば、20nM)ではより明らかになり、このことはガングリオシドが低い毒素濃度で安定したBoNT/A−SV2複合体の形成を促進し得ることを示していた。
【0071】
SV2は、脊椎動物におけるシナプス小胞及び内分泌小胞上で保存された膜タンパク質である(Buckley K and Kelly RB,J.Cell.Biol.100:1284-1294,1985、Lowe AW et al.,J Cell.Biol.106:51-59,1988)。SV2A、SV2B及びSV2Cと呼ばれる3つの相同性の高いアイソフォームが同定されている(Bajjalieh SM et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2150-2154,1993、Bajjalieh SM et al.,Science 257:1271-1273,1992、Feany MB et al.,Cell 70:861-867,1992、Janz R and Sudhof TC,Neuroscience 94:1279-1290,1999)。SV2A及びSV2Bは脳全体で広く発現されるが、SV2Cの発現は進化的に古い脳領域であればあるほどより制限される(Bajjalieh SM et al.,J.Neurosci.14:5223-5235,1994、Janz R and Sudhof TC,supra,1999)。図2aで用いた抗体は、3つのアイソフォーム全てを認識する(Lowe AW et al.,supra,1988)。図2dで示されるように、SV2アイソフォームは同様のトポロジーを共有し、12個の推定膜貫通ドメインとわずか1つの比較的大きな内腔ドメイン(内腔ドメイン4、L4)とを含有する(Janz R and Sudhof TC,supra,1999)。SV2の内腔ドメインだけが、小胞のエキソサイトーシス後に細胞の外側に曝された領域であるので、初めに本発明者らはBoNT/A結合がSV2内腔ドメインで介在されるか否かを試験した。SV2A、SV2B及びSV2Cの主な内腔ドメイン(L4)をGST融合タンパク質として精製し、ビーズ上で固定化して、溶液からBoNT/A、BoNT/B及びBoNT/Eを取り除くこれらの能力を試験した。図2cで示されるように、本発明者らは、BoNT/B又はBoNT/Eではなく、BoNT/Aの全てのSV2アイソフォームとの直接結合を観察した。SV2Cは、最も堅固な結合を示し、SV2Bは、最小量のBoNT/Aしか削減しなかった。
【0072】
有意な(critical)BoNT/A結合領域を決定するために、本発明者らはSV2C−L4領域内で一連の切断変異体を作製した。図2eで示されるように、短い断片(アミノ酸529〜566)は、全L4領域に対するBoNT/Aレベルを同程度まで削減することができた。配列アラインメントは、図2dにおいて矢印で示されるこの領域がSV2アイソフォーム間で比較的保存され、2つの推定N−グリコシル化部位を含むことを示していた。より短い断片(アミノ酸529〜562)も、529〜566断片ほど効果的ではないが、BoNT/Aを削減することができることがさらに観察された。さらに、アミノ酸454〜546を含有する様々な断片もBoNT/Aを削減することができた。
【0073】
SV2C内腔断片がニューロンとのBoNT/A結合を阻害する:3つのSV2アイソフォーム間で、SV2Cではなく、SV2A及びSV2Bを発現する海馬ニューロンが発見された(Bajjalieh SM et al.,supra,1994、Janz R and Sudhof TC,supra,1999)。SV2がこれらのニューロンにおいてBoNT/A結合を介在するか否かを求めるために、本発明者らは、BoNT/Aに対して明らかに最も高いアフィニティを示した可溶性組み換えSV2C−L4断片を用い、内因性SV2A/Bと競合させることによって、ニューロンとのBoNT/A結合を阻害した。ニューロンは、過剰量の対照タンパク質(GST)又はGST標識SV2C−L4断片のいずれかの存在下で10分間、BoNT/A及びSyt IN Abに曝された。図3aで示されるように、SV2C−L4が、GSTに比べて、ニューロンとのBoNT/A結合を低減した。両方の条件でのニューロンは、同程度のレベルのSyt IN Abの取り込みを示し、このことによって、BoNT/A結合の低減がシナプス小胞の再生の非特異的な変化によるものではないことが示された。
【0074】
この阻害の特異性をさらに実証するために、本発明者らは平行して、別のBoNTであるBoNT/Bを試験し、シナプス小胞タンパク質シナプトタグミンI/IIを細胞に侵入するのに用いることが示された(Dong M et al.,supra,2003、Nishiki T et al.,J.Biol.Chem.269:10498-10503,1994、Nishiki T et al.,Biochim.Biophys.Acta 1158:333-338,1993)。BoNT/Bは、BoNT/Aと同様の構造及び大きさを有しており、同じ侵入経路を用いるので理想的な対照である。図3a(右側のパネル)で示されるように、SV2C−L4は、ニューロンとのBoNT/B結合に影響を与えなかった。さらに、BoNT/Bの結合は、その受容体、シナプトタグミンII(Syt II)に由来するペプチド(P21)を加えることによって阻害することができ(Dong M et al.,supra,2003)、このペプチドの添加は、BoNT/A結合に影響を与えなかった(図7a及び図7b)。興味深いことに、SV2C−L4は、別の主なBoNTであるBoNT/Eの結合にも影響を与えず、このことによって、BoNT/Eはニューロンに侵入するのにSV2を用いないことが示唆された(図7c)。
【0075】
本発明者らは、SV2C−L4の添加によるBoNT/A結合の低減が、内因性SNAP−25の防御に相関があるか否かをさらに評価した。分化した抗体である、BoNT/Aで切断されたSNAP−25断片のみを認識する抗SNAP−25−C(図3b)を利用して、本発明者らは免疫染色によって、断片の切断レベルをモニタリングした。初めにGST又はSV2C−L4のいずれかの存在下で10分間、ニューロンをBoNT/Aで処理した。これらのニューロンを洗浄し、6時間さらにインキュベートして、固定させ、切断されたSNAP−25断片に関して免疫染色を行った。図3bで示されるように、SV2C−L4の添加によるBoNT/A結合の低減によって、SNAP−25の切断レベルが低減し、このことは、SV2C−L4がBoNT/Aのニューロンへの機能的な侵入を抑えたことを示していた。
【0076】
本発明者らは、この研究を、in vivoでのBoNT/Aの生理学的標的である末梢運動性神経末端にまで広げた。SV2アイソフォームに特異的な抗体を用いて、本発明者らは、横隔膜中のNMJにおける運動性神経末端が3つのSV2アイソフォーム全てを発現することを見出した(図8)。BoNT/Aの高濃度のSV2C−L4断片(30μM)との前インキュベーションが、NMJとのBoNT/A結合を有意に低減させた(対照と比べて65%の低減、P<0.0001、t検定)(図3c及び図3d)。SV2C−L4はBoNT/B結合に影響を与えなかったので、この低減はBoNT/Aに特異的である(図3c及び図3d)。これらのデータは、運動性神経末端とのBoNT/Aの結合が、SV2内腔ドメインとの直接的な相互作用によって介在されることを示唆している。
【0077】
BoNT/A結合は、SV2A/Bノックアウトニューロンにおいて破壊される:SV2がBoNT/Aに対する受容体であるか否かを確実に求めるために、本発明者らは、利用可能なSV2Aシングルノックアウトマウス及びSV2Bシングルノックアウトマウス並びにSV2A/Bダブルノックアウトマウスに注目した(Janz R et al.,Ann.NY Acad.Sci.733:345-255,1999)。SV2Aを欠いている(SV2Aシングルノックアウト及びSV2A/Bダブルノックアウト)マウスは重大な発作を示し、生後2〜3週間で死に至るが、SV2Bシングルノックアウトマウスは正常である。これらの現象は、SV2AがSV2Bよりも広く分布し、これらの2つのアイソフォームが機能的に不必要なものであるために起こり得る(Janz R et al.,supra,1999)。SV2A/Bノックアウトマウス由来の培養された海馬ニューロンは通常のシナプス構造を発達させ、神経伝達物質を放出することができる(Janz R et al.,supra,1999)。これらのニューロンはSV2A及びSV2Bを発現するだけであるので、SV2A/Bダブルノックアウトマウス由来のニューロンは、BoNT/A結合に対するSV2の役割を研究するのに理想的な機能消失モデルとなる。
【0078】
初めに本発明者らは、SV2Bノックアウトウ(SV2B(−/−))マウス及び野生型同腹子対照(WT)由来のニューロンとのBoNT/A結合を比較することによって、SV2Bの機能を試験した。高K+緩衝液で10分間、ニューロンをBoNT/A及びBoNT/Bに同時に曝し、洗浄して固定させた。ニューロンとのBoNT/A及びBoNT/Bの結合は、免疫蛍光強度を測定することによって定量化した(詳細に関しては方法を参照のこと)。正規化した平均強度(%WT)は図4aで示されている。SV2BノックアウトニューロンがBoNT/A結合の有意な低減(WTに比べて28%の低減、P<0.0001、t検定)を示したが、BoNT/B結合は同じままであった。これらのデータは、SV2Bの消失が毒素侵入経路、すなわちシナプス小胞の再生よりもむしろ、一般的にはBoNT/Aが結合する表面結合部位の特異的な低減に影響を与えるということを支持している。
【0079】
SV2B(−/−)ニューロンはSV2Aを発現するままであるので、本発明者らは、BoNT/Aの結合の維持がSV2Aによって介在されるか否かを調べた。SV2A(+/−)SV2B(−/−)マウスを交雑することによって、本発明者らは、SV2Bを有しないが、野生型レベルのSV2Aを有する同腹子(SV2A(+/+)SV2B(−/−))、SV2Bを有さず、半分のレベルのSV2Aを有する同腹子(SV2A(+/−)SV2B(−/−))、及びSV2A/Bダブルノックアウト同腹子(SV2A(−/−)SV2B(−/−))を発生させた(図4b)。これらの同腹子から培養したニューロンをBoNT/A及びBoNT/Bに曝し、洗浄して固定させた。BoNT/A、BoNT/B及びSV2の三重の免疫染色を行い、それぞれの遺伝子型の代表的な画像を図4bに示す。免疫蛍光強度の定量によって、SV2A(+/−)SV2B(−/−)ニューロンとのBoNT/A結合が、SV2A(+/+)SV2B(−/−)ニューロンのわずか47%であることが示された(図4c)。興味深いことに、SV2A(+/−)SV2B(−/−)ニューロンにおけるBoNT/A結合の大部分がSV2A発現と共局在化していた(図4bの真ん中のフレーム)。顕著なことに、SV2A/BダブルノックアウトニューロンとのBoNT/Aの結合は実質的に全くない(図4b及び図4c)。それぞれの遺伝子型に対するBoNT/B結合が同じままであったので、結合におけるこれらの変化はBoNT/Aに特異的である(図4b及び図4c)。このことによって、SVA/Bノックアウトが、他の侵入経路の障害を引き起こす代わりに、BoNT/A認識部位を特異的に破壊したことが示される。SV2C内腔断片がBoNT/A結合を阻害することができたという事実と共に、本発明者らは、海馬ニューロンとのBoNT/A結合がSV2A及びSV2Bとの直接的な相互作用によって介在されることを実証している。
【0080】
SV2の発現は、SV2A/BノックアウトニューロンとのBoNT/A結合を元に戻す:SV2A/Bダブルノックアウトマウス由来の海馬ニューロンを用いて、本発明者らは補助研究(rescue studies)を行い、SV2A、SV2B又はSV2Cの発現がBoNT/A結合を元に戻すことができるか否かを求めた。ラットのSV2A、SV2B又はSV2Cは、別々のニューロン特異的プロモータ(シナプスプロモータ、方法で詳述される)下でSV2及びGFPを同時に発現することができるレンチウイルスベクターを用いて、これらのニューロンにトランスフェクトした。トランスフェクトの48時間後、ニューロンを10分間BoNT/Aに曝し、洗浄して、BoNT/Aの結合を免疫染色で評価した。トランスフェクトニューロンをGFP蛍光シグナルで同定し、これらのニューロンにおけるSV2の発現を免疫染色で確認した。図5で示されるように、BoNT/A結合は、SV2A、SV2B又はSV2Cをトランスフェクトしたニューロンで観察されただけであったが、同じ領域において他のニューロンは結合を示さなかった。SV2とBoNT/Aシグナルとの間の拡大したオーバーレイ画像が、シナプスにおける高度な共局在化を示していた(図5、オーバーレイ)。細胞体における高レベルのSV2発現は、野生型のニューロンにおける外因性SV2の免疫染色で見出されないことから、外因性タンパク質の過剰発現のためであると考えられる。同じウイルスベクターを用いる、別のシナプス小胞タンパク質であるシナプトタグミンIの過剰発現では、検出可能なBoNT/A蛍光シグナルが生じず、これによって補助効果の特異性が確認された。SV2A、SV2B又はSV2C全てがBoNT/A結合を補助し、これによって、3つのアイソフォーム全てが一度発現すれば、ニューロンとのBoNT/A結合を介在することができることが示された。
【0081】
運動性末端とのBoNT/A結合が、SV2A/Bノックアウトマウスで低減する:SV2がその生理学的標的におけるBoNT/Aに対する受容体として機能するか否かを求めるために、本発明者らは、SV2ノックアウトマウス由来の横隔膜の神経末端とのBoNT/A結合を試験した。通常、これらの神経は3つのSV2アイソフォーム全てを発現し(図8)、本発明者らは、これらの神経全てが運動性末端のBoNT/A認識に寄与すると考えている。SV2Aノックアウトマウス及びSV2A/Bダブルノックアウトマウスは成体まで生存せず、SV2Cノックアウトマウスは利用することができないので、本発明者らは、最小量のSV2発現を有する利用可能な成体ノックアウトマウス由来の横隔膜調製物(SV2A(+/−)SV2B(−/−))を野生型(WT)と比較した。図6a及び図6bに示されるように、SV2A(+/−)SV2B(−/−)マウス由来のNMJとのBoNT/A結合は、WTと比べて有意に低減するが(72%の低減、P<0.001、t検定)、BoNT/B結合のレベルは同じままであり(P>0.05、t検定)、このことによって、SV2A及びSV2Bが運動性神経末端とのBoNT/A結合に重要であることが示唆される。これらのマウスで変わることなく、SV2Aにおいてはレベルが低減したままである、SV2A(+/−)SV2B(−/−)NMJにおけるBoNT/A結合のレベルの維持はSV2Cによって介在されると考えられる。
【0082】
SV2BノックアウトマウスはBoNT/Aに対する感受性が低減している:これらの所見の生理学的意味をさらに明らかにするために、本発明者らは動物全体に広げて研究(studied)を行った。利用可能なSV2ノックアウトマウス株の間で、SV2Aノックアウトマウス及びSV2A/Bダブルノックアウトマウスの両方が生後数週間以内に死滅し、このことによって、SV2Aが通常のシナプス伝達を維持するのに必須であることが示唆される。対して、SV2Bシングルノックアウトマウス(SV2B(−/−))は野生型(WT)マウスとの明らかな違いはない。シナプス伝達に対するin vivoでの潜在的異常を最小限にするために、本発明者らは、SV2BノックアウトマウスのBoNT/A感受性と、WT同腹子のBoNT/A感受性とを比較することを選択した。大量の毒素を静脈内注射し、注射後の生存時間(時間対致死)を記録した従来の迅速なアッセイ(Boroff DA and Fleck U,J.Bacteriol,92:1580-1581,1966、Dong M et al.,supra,2003、Malizio CG,Methods and Protocols O.Holst,ed.(Humana Press),pp.27-39,2000)を用いて、BoNT/Aに対する感受性を評価した。この生存時間は、以前に設定された標準曲線から見かけの毒性に変換することができる(Malizio CG,supra,2000)。
【0083】
同量のBoNT/A(104〜106LD50/ml)をSV2B(−/−)マウス及びWTマウスに注射して、その生存時間を図6cに示す。SV2Bノックアウトマウスは、野生型同腹子より有意に長期間生存した(43.7±1.9分対32.6±4.6分)。WTマウスの生存時間から推定した効果的な毒素濃度は、SV2B(−/−)マウスの約2.5倍であった(8.4±2.9×105LD50/ml対3.4±0.5×105LD50/ml、図6c)。効果的な毒素の差は、SV2BノックアウトマウスのLD50値の移行に反映され、すなわちこれらのマウスが、これらのWT同腹子よりも致死用量に関して約2.5倍多いBoNT/Aを必要としている。SV2B(−/−)マウスにおける残りの毒性は、これらの運動性神経末端においてSV2A及びSV2Cによって介在されると考えられている。これらの結果は、SV2がin vivoでのBoNT/Aに対する生理学的な受容体であるという機能的証明を与える。
【0084】
本発明は、上記の実施例に対する限定を意図せず、むしろ添付の特許請求の範囲内に近づくように、このような変更及び修正を全て包含するように意図される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】シナプス小胞のエキソサイトーシスを刺激することによって、横隔膜の運動性神経末端及び培養された海馬ニューロンとのBoNT/A結合が増大することを示す図である。パネルa:マウスの片側横隔膜調製物を、静止条件(対照緩衝液)又は刺激条件(高K+緩衝液:45mMのKCl)のいずれかにおいてBoNT/A(25nM)に曝した。組織を固定し、浸透させた。神経筋接合部(NMJ)をAlexa−488結合α−BTXで標識した。BoNT/AをBoNT/Aポリクローナル抗体及びCy3結合二次抗体を用いて検出した。長方形で示される領域のオーバーレイは、BoNT/A染色が個々のNMJにおけるα−BTX染色を反映することを示すために拡大表示した。右側のパネル:NMJとのBoNT/A結合を定量化した。NMJ領域(対象の領域、ROI)をα−BTXシグナルで定義した。BoNT/A染色の強度をα−BTXシグナルに対して正規化し、その比をY軸上にプロットした。高K+緩衝液による刺激によって、BoNT/A強度が約6倍増大した。誤差バーはSEM(n=27〜28画像数)を表す。パネルb:3つの異なる緩衝液条件:(1)標準緩衝液(PBS)、(2)高K+(56mMのKCl)、及び(3)高K+/無Ca2+(Ca2+なし)で1分間、培養したラットの海馬ニューロンを、BoNT/A(10nM)及びシナプトタグミンI(Syt IN Ab、CI604.4、1:40)の内腔ドメインに対する抗体に曝した。高K+でニューロンを刺激することによって、Syt IN Ab免疫蛍光シグナルが増大した。この増大は、細胞外Ca2+なしでは見られなかった。BoNT/Aシグナルは、Syt IN Abシグナルと広く共局在化する。右側3列目の画像は、微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡から得られた画像を示す。パネルc:BoNT/B(30nM、24時間)で前処理したラットの海馬ニューロンを高K+緩衝液で10分間、BoNT/A(10nM)に曝した。細胞を固定し、Syb II及びBoNT/Aに対して免疫染色した。BoNT/A結合は、BoNT/B処理によって破壊され、ニューロンにおけるSyb IIを切断する。BoNT/Bで処理しなかったニューロンは対照とする。右側3列目の画像はDIC顕微鏡から得られた画像を示す。
【0086】
【図2】BoNT/AがSV2内腔ドメインと直接結合することを示す図である。パネルa:シナプス小胞タンパク質シナプトフィジン(Syp、CI7.2)及びSV2(汎SV2)に対するモノクローナル抗体を用いて、ラットの脳の界面活性剤抽出物由来のBoNT/A(100nM)を免疫共沈降した。平行して、抗体を有しない対照サンプル(無Ab)に免疫共沈降を行った。免疫沈降した毒素及び小胞タンパク質をウエスタンブロットで検出した。BoNT/AをSypではなく、SV2で免疫共沈降した。パネルb:指示されたBoNT/A濃度で外因性ガングリオシド(ウシの脳のガングリオシド混合物、0.6mg/ml)あり又はなしで、汎SV2抗体を用いてマウスの脳の界面活性剤抽出物からのBoNT/Aの免疫共沈降を行った。ガングリオシドを加えることによって、SV2抗体によって免疫共沈降されたBoNT/Aの量が増加した。パネルc:3つのSV2アイソフォーム全ての第4の内腔ドメイン(SV2トポロジーに関してはパネルdを参照されたい)は、GST標識タンパク質として精製し、グルタチオン−セファロースビーズにおいて固定化した。固定化タンパク質8μg及び100nMの毒素(BoNT/A、BoNT/B又はBoNT/E)を用いてプルダウンアッセイを行った。抗BoNT/A抗体、抗BoNT/B抗体、抗BoNT/E抗体によるウエスタンブロットによって、結合した物質を分析した。BoNT/Aは、明らかに最も高いアフィニティを示すSV2Cの内腔ドメインを有する全てのSV2アイソフォームと直接結合する。パネルd:推定SV2トポロジーの概略図。それぞれの丸は残基を表す。黒丸は全てのSV2A、SV2B及びSV2Cアイソフォームにおいて保存された残基を示し、灰色の丸は2つのSV2アイソフォームにおいて保存された残基であり、白丸は保存されない残基を表す。SV2は、N末端及びC末端が細胞質側にある12個の膜貫通ドメインを含む。第4の内腔ドメイン(L4)は小胞内に存在し、示された3つの推定N−グリコシル化部位を含む。BoNT/A結合に関するSV2Cにおける重要領域(critical region:有意域)を矢印で示す(詳細に関してはパネルeを参照されたい)。パネルe:SV2C−L4内の一連の切断突然変異がGST融合タンパク質として生じ、BoNT/A結合に関して試験した。結合アッセイをパネルbで記載されたように行い、ウエスタンブロットで分析した。BoNT/A結合に関する重要領域が、単独でBoNT/Aと結合する能力を維持する短い断片(SV2Cにおける残基529〜566)にマップされた。Ponceau S染色によって固定化されたGST融合タンパク質が示され、当量の固定化タンパク質がこのアッセイで用いられることを確実にした。アスタリスクで示された推定N−グリコシル化部位で、この領域のタンパク質配列をSV2A及びSV2Bの領域(全てがラットの配列である)とアラインメントする。
【0087】
【図3】BoNT/A結合の遮断及びSV2C内腔断片による海馬ニューロン及び運動性神経末端への侵入を示す図である。パネルaの左側のパネル:海馬ニューロンは、対照タンパク質(可溶性GST、10μM)又はSV2C−L4(可溶性GST標識SV2C−L4断片、10μM)のいずれかの存在下で高K+緩衝液において10分間、BoNT/A(10nM)及びSyt IN Abに曝された。細胞を洗浄し、固定した。Syt IN Ab及びBoNT/Aの結合及び取り込みを続く免疫染色で分析した。SV2C−L4は、ニューロンへのSyt IN Abの取り込みには影響を与えないが、同じニューロンとのBoNT/A結合が低減された。パネルaの右側のパネル:BoNT/Aの代わりにBoNT/Bを用いることを除いて上記のように実験を行った。SV2C−L4はニューロンとのBoNT/B結合に影響を与えなかった。パネルb:高K+緩衝液において10分間、GSTタンパク質又はSV2C−L4のいずれかの存在下で、海馬ニューロンをBoNT/A(10nM)とインキュベートした。細胞を3回洗浄し、培養培地で6時間さらにインキュベートした。それから細胞を固定し、浸透させた。(未処理の(intact)全長SNAP−25ではなく)切断SNAP−25のみを認識するモノクローナル抗体(抗SNAP−25−C)を用いて、SNAP−25の切断を検出した。SV2C−L4は、BoNT/Aによる未処理のSNAP−25の切断を防いだ。右側3列目の画像は、DIC顕微鏡から得られた画像を示す。パネルc:高K+緩衝液において30分間、GSTタンパク質又はSV2C−L4のいずれかの存在下でマウスの片側横隔膜調製物をBoNT/A(10nM)又はBoNT/B(10nM)に曝した。組織を洗浄し、固定して浸透させた。NMJをα−BTXで標識した。BoNT/A及びBoNT/Bをそれぞれ、これらのポリクローナル抗体で検出した。SV2C−L4は、NMJとのBoNT/Aの結合を特異的に低減させたが、BoNT/B結合には効果がなかった。パネルd:パネルcで回収した画像に基づき、NMJとのBoNT/A及びBoNT/Bの結合を図1aに記載されたように定量化した。SV2C−L4は、BoNT/A結合を特異的に低減させるが(対照に比べて65%の低減、P<0.0001、t検定、n=76〜90画像数)、BoNT/B結合には影響を与えなかった(P>0.05、t検定、n=49〜55画像数)。誤差バーはSEMを表す。
【0088】
【図4】BoNT/A結合がSV2A及びSV2Bノックアウト海馬ニューロンで破壊されることを示す図である。パネルa:SV2Bノックアウト(SV2B(−/−))マウス及び野生型(WT)同腹子対照由来の海馬ニューロンを培養した。10分間、高K+において、ニューロンをBoNT/A(15nM)及びBoNT/B(7.5nM)に曝した。これらのニューロンを3回洗浄し、表面結合毒素を減らし、固定して浸透させた。BoNT/A及びBoNT/Bに対する免疫蛍光シグナルを検出し定量化して、正規化した強度比としてプロットした(%WTシグナル)。SV2B(−/−)ニューロンによって、BoNT/Aの取り込みの有意な低減が示された(WTに比べて28%の低減、P<0.0001、t検定、n=18画像数)。BoNT/Bの取り込みレベルは、SV2B(−/−)ニューロンとWTニューロンとで同程度に維持された(P>0.05、t検定、n=22画像数)。誤差バーはSDを表す。パネルb:以下の遺伝子型:SV2A(+/+)SV2B(−/−)、SV2A(+/+)SV2B(−/−)を有する同腹子由来の海馬ニューロン、及びダブルノックアウトSV2A(−/−)SV2B(−/−)ニューロンを培養した。培養物を10分間同時にBoNT/A(10nM)及びBoNT/B(7.5nM)に曝した。細胞を3回洗浄し、固定して浸透させた。三重の免疫染色を行った(BoNT/B:ウサギの抗BoNT/B、BoNT/A:ヒトの抗BoNT/A、SV2:マウスの汎SV2)。ニューロンとのBoNT/Bの結合は、異なる遺伝子型の間で変わらなかった。SV2Bノックアウト及びSV2A異型の接合体(SV2A(+/−)SV2B(−/−))は、BoNT/A結合の低減を示した。SV2A/Bダブルノックアウトは、BoNT/Aの結合を示さなかった。パネルc:パネルbで回収した画像は閾値であり、ニューロンのみを含んでいた。平均強度(バックグラウンドが差し引かれたもの)を正規化データとしてプロットした(SV2A(+/+)の%)。SV2A(+/−)SV2B(−/−)ニューロンは、SV2A(+/+)SV2B(−/−)と比べて53%の低減を示し、SV2A/BダブルノックアウトはBoNT/Aの結合を示さなかった。BoNT/Bの結合は、全ての遺伝子型で同程度を維持した(P>0.05、t検定、n=11画像数)。
【0089】
【図5】SV2A/BダブルノックアウトニューロンにおいてSV2A、SV2B又はSV2Cを導入することがBoNT/A結合を補助することを示す図である。ニューロン特異的なシナプシンプロモータの制御下でラットのSV2A、SV2B及びSV2Cをレンチウイルスベクターにサブクローニングし、SV2A/Bダブルノックアウトマウス由来の海馬ニューロンをトランスフェクトするのに用いた。トランスフェクトの48時間後に、ニューロンを10分間、BoNT/A(10nM)に曝した。細胞を3回洗浄し、固定して浸透させた。図4bに記載されるようにSV2及びBoNT/Aに対する免疫染色を行った。ベクターにおいて個々のシナプシンプロモータの制御下でトランスフェクトしたニューロンをGFP発現によって同定した。外因性非標識SV2アイソフォームの発現をSV2染色によって確認し、BoNT/Aはトランスフェクト細胞と選択的に結合した。白色の長方形で示された領域のオーバーレイ画像を拡大し、SV2発現とBoNT/Aシグナルとの間の高度な共局在化が示された。
【0090】
【図6】SV2ノックアウトマウスは、横隔膜の運動性神経末端においてBoNT/A結合が低減され、BoNT/Aに対してより耐性であることを示す図である。パネルa:野生型(WT)マウス及びSV2A(+/−)SV2B(−/−)マウスからマウスの横隔膜を調製した。1時間、刺激条件下で横隔膜の半分をBoNT/A(25nM)に曝した。組織を固定し、図1aに記載されたように、α−BTX及びBoNT/A抗体で免疫染色した。横隔膜の残りの半分をBoNT/B(25nM)に曝し、平行して免疫染色した。代表的な画像が示される。パネルb:パネルaで回収した画像を図1aで示されたように定量化した。SV2A(+/−)SV2B(−/−)マウスは、WTに比べてBoNT/A結合が有意に低減したことを示したが(72%の低減、P<0.001、t検定、n=47画像数)、BoNT/B結合は同程度である(P>0.05、t検定、n=20画像数)。パネルc:SV2B(−/−)マウス及びこれらのWT同腹子のBoNT/Aに対する感受性を迅速な時間対致死アッセイで求めた。同量のBoNT/Aをそれぞれのマウスに注射し、その生存時間(時間対致死)を記録した。標準曲線を用いて、時間対致死から平均の効果的毒性(LD50/ml)を推測した。SV2B(−/−)マウスはWTマウスより有意に長期間生存する(43分対33分、P<0.05、対応のあるt検定)。WTマウスで注射したBoNT/Aの効果的な毒性は、SV2Bノックアウトマウスより約2.5倍大きい。
【0091】
【図7】BoNT/B結合部位を含有するペプチドが、海馬ニューロンと結合するBoNT/Aではなく、BoNT/Bを特異的に阻害し、SV2C−L4はBoNT/E結合に影響を与えないことを示す図である。パネルa:ペプチドP21はシナプトタグミンII内腔ドメインに由来する(Dong M et al.,J.Cell.Biol.162:1293-1303,2003)。P21Sは対照となるP21のスクランブル版である(Dong M et al.,supra,2003)。P21(30μM)又はP21Sの存在下で、10分間高K+緩衝液において、培養した海馬ニューロンをBoNT/B(10nM)及びSyt IN Abに曝した。細胞を洗浄し固定した。Syt IN Ab及びBoNT/Bの結合及び取り込みを図3aに記載されたように、続く免疫染色で分析した。P21はニューロンとのBoNT/B結合を阻害したが、Syt IN Abの取り込みには影響を与えていない。パネルb:BoNT/Bの代わりにBoNT/Aを用いて、パネルaに記載されたように実験を行った。P21ペプチドは海馬ニューロンとのBoNT/A結合に影響を与えなかった。パネルc:GST(10μM)又はSV2C−L4(10μM)の存在下で10分間、高K+緩衝液において、海馬ニューロンをBoNT/E(10nM)及びSyt IN Abに曝した。BoNT/Eの結合を抗BoNT/Eポリクローナル抗体で検出した。SV2C−L4はニューロンとのBoNT/E結合に影響を与えなかった。
【0092】
【図8】マウスの横隔膜における運動性神経末端はSV2A、SV2B及びSV2Cを発現することを示す図である。マウスの片側横隔膜を切除し、直ぐに4%パラホルムアルデヒドで30分間固定して、浸透させ、遮断した。SV2A、SV2B又はSV2Cの発現をこれらの特異的なポリクローナル抗体(1:1000)によって検出した。NMJをα−BTXで標識した。全てのSV2アイソフォームがNMJ、おそらくはシナプス前神経末端で観察された。
【0093】
【図9】ラットのSV2C(配列番号6)、ヒトのSV2A(配列番号14)、ヒトのSV2B(配列番号16)、ヒトのSV2C(配列番号18)、マウスのSV2A(配列番号8)、マウスのSV2B(配列番号10)、及びマウスのSV2C(配列番号12)の部分配列のアラインメントを示す図である。
【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図2f】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図3d】

【図4a】

【図4b】

【図4c】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜576と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜576に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片と、(ix)(i)〜(viii)の前記アミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%同一であり、ボツリヌス神経毒素A(BoNT/A)と結合することができるアミノ酸配列と、(x)保存的置換を有し、BoNT/Aと結合することができる(i)〜(viii)由来のアミノ酸配列とから選択されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドであって、全長SV2タンパク質を含むポリペプチド、SV2内腔ドメインから成るポリペプチド、及びSV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドが除外される、単離ポリペプチド。
【請求項2】
(ix)の前記アミノ酸配列が、(i)〜(viii)の前記アミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%同一である、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜580と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜536と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜595と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜580、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜536、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜595に対応する断片とから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが可溶性である、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
前記ポリペプチドが128、127、又は126個未満のアミノ酸を有する、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜576と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜576に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片と、(ix)(i)〜(viii)の前記アミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%同一であり、BoNT/Aと結合することができるアミノ酸配列と、(x)保存的置換を有し、BoNT/Aと結合することができる(i)〜(viii)由来のアミノ酸配列とから選択されるアミノ酸配列から成る、請求項1記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
請求項6記載のポリペプチドと特異的に結合する抗体。
【請求項8】
ポリヌクレオチド又はその相補体を含む単離核酸であって、該ポリヌクレオチドが、
(1)請求項6記載のポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチドと、
(2)前記第1のポリヌクレオチドの全長にわたって該第1のポリヌクレオチドと少なくとも80%同一性である第2のポリヌクレオチドと、
(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、又は適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前記第1のポリヌクレオチドにハイブリダイズする第3のポリヌクレオチドとから選択され、
全長SV2をコードするポリヌクレオチドを含む核酸、SV2内腔ドメインをコードするポリヌクレオチドから成る核酸、及びSV2内腔ドメインを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、該ドメインが非天然アミノ酸配列によって一端又は両端に隣接される核酸が除外される単離核酸。
【請求項9】
前記第2のポリヌクレオチドが、前記第1のポリヌクレオチドの全長にわたって、該第1のポリヌクレオチドと少なくとも90%同一性である、請求項8記載の単離核酸。
【請求項10】
前記核酸が、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜580と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜580に対応する断片とから選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項8記載の単離核酸。
【請求項11】
非天然プロモータと操作可能に結び付く請求項8記載の核酸を含むベクター。
【請求項12】
非天然プロモータと操作可能に結び付く請求項8記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項13】
リガンドとポリペプチドとの複合体であって、該ポリペプチドが、前記リガンドが結合する成員を含み、該成員が、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜576と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜562、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜519、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜576に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片と、(ix)(i)〜(viii)の前記アミノ酸配列のいずれかと少なくとも70%同一性であり、BoNT/Aと結合することができるアミノ酸配列と、(x)保存的置換を有し、BoNT/Aと結合することができる(i)〜(viii)由来のアミノ酸配列とから選択され、前記ポリペプチドが全長SV2タンパク質である場合、前記リガンドはボツリヌス毒素ではない、リガンドとポリペプチドとの複合体。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜580と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜580に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片とから選択される成員を含む、請求項13記載の複合体。
【請求項15】
前記リガンドがBoNT/Aであり、前記ポリペプチドが合成ペプチド又は組み換えペプチドである、請求項13記載の複合体。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、マウスのSV2タンパク質の内腔ドメインと同一な配列又は相同な配列を有する、請求項14記載の複合体。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、(i)ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566と、(ii)ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523と、(iii)ラットのSV2Aのアミノ酸543〜580と、(iv)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸529〜566、ラットのSV2Bのアミノ酸486〜523、又はラットのSV2Aのアミノ酸543〜580に対応するホモログの断片と、(v)ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546と、(vi)ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503と、(vii)ラットのSV2Aのアミノ酸468〜560と、(viii)前記のラットのSV2C、SV2B、又はSV2Aのホモログの断片であって、該断片がそれぞれ、ラットのSV2Cのアミノ酸454〜546、ラットのSV2Bのアミノ酸411〜503、又はラットのSV2Aのアミノ酸468〜560に対応するホモログの断片とから選択される成員から成る、請求項14記載の複合体。
【請求項18】
前記ポリペプチドがさらにアフィニティタグから成る、請求項17記載の複合体。
【請求項19】
前記リガンドが、抗体又は(i)〜(viii)の成員と結合するBoNT/A断片であり、前記ポリペプチドとのBoNT/Aの結合を低減する、請求項13記載の複合体。
【請求項20】
前記ポリペプチドが全長SV2タンパク質である、請求項13又は19に記載の複合体。
【請求項21】
前記ポリペプチドがin vivoに位置する、請求項19記載の複合体。
【請求項22】
前記ポリペプチドが、ガングリオシドに対する結合部位をさらに含む、請求項13記載の複合体。
【請求項23】
前記ポリペプチドが組み換えポリペプチドである、請求項13記載の複合体。
【請求項24】
前記ポリペプチドが、(i)〜(viii)のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも80%同一性であるアミノ酸配列を含む、請求項13記載の複合体。
【請求項25】
ヒト又は非ヒト動物においてBoNT/A毒性を低減する方法であって、
前記ヒト又は前記非ヒト動物に、該ヒト又は非ヒト動物においてBoNT/AとSV2タンパク質との間の結合を低減する薬剤を投与する工程
を含む方法。
【請求項26】
前記方法がヒトのBoNT/A毒性を低減させる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤が、請求項1記載のポリペプチドと、全長SV2タンパク質を含むポリペプチドと、SV2内腔ドメインから成るポリペプチドと、SV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドとから選択されるポリペプチドである、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤がガングリオシドをさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記薬剤が請求項7記載の抗体である、請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤が、前記ヒト又は前記非ヒト動物において、SV2タンパク質の発現を低減する、請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記薬剤が、前記ヒト又は前記非ヒト動物において、ガングリオシドとSV2タンパク質との間の結合を低減する、請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記薬剤が、前記ヒト又は前記非ヒト動物において、前記SV2タンパク質との結合に利用可能なガングリオシドの量を低減させる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
BoNT/AとSV2タンパク質との間の結合を妨げることができる薬剤を同定する方法であって、該方法が、
試験薬剤の存在下でBoNT/Aとポリペプチドとの間の結合を測定する工程であって、該ポリペプチドが、請求項1記載のポリペプチド、全長SV2タンパク質を含むポリペプチド、SV2内腔ドメインから成るポリペプチド、及びSV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドから選択される、前記の測定する工程と、
前記結合を、同じ条件下ではあるが、前記試験薬剤の非存在下で測定された対照の結合と比較する工程であって、対照の結合より低いことは、該薬剤がBoNT/AとSV2タンパク質との間の結合を妨げることができることを示す、前記の比較する工程と
を含む、BoNT/AとSV2タンパク質との間の結合を妨げることができる薬剤を同定する方法。
【請求項34】
全ての工程がin vitroで行われる、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチドが細胞表面上に提供され、該細胞が前記試験試薬に曝される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
BoNT/Aと前記ポリペプチドとの間の結合が、前記細胞へのBoNT/Aの侵入をモニタリングすることによって間接的に測定される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
SV2タンパク質のBoNT/A結合配列と結合することができる薬剤を同定する方法であって、該方法が、
ポリペプチドを試験薬剤に曝す工程であって、該ポリペプチドが、請求項1記載のポリペプチド、全長SV2タンパク質を含むポリペプチド、SV2内腔ドメインから成るポリペプチド、及びSV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドから選択される、前記の曝す工程と、
前記薬剤が前記ポリペプチドと結合するか否かを求める工程と
を含む、SV2タンパク質のBoNT/A結合配列と結合することができる薬剤を同定する方法。
【請求項38】
全ての工程がin vitroで行われる、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記ポリペプチドが提供され、細胞において試験薬剤に曝される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
BoNT/A又はボツリヌス菌を検出する方法であって、該方法が、
BoNT/Aを含む疑いのあるサンプルを、請求項1記載のポリペプチド、全長SV2タンパク質を含むポリペプチド、SV2内腔ドメインから成るポリペプチド、及びSV2内腔ドメインを含むポリペプチドであって、該ドメインが非天然フランキングアミノ酸配列によって一端又は両端に隣接されるポリペプチドから選択されるポリペプチドに曝す工程と、
任意に、前記サンプルをガングリオシドに曝す工程と、
BoNT/Aとの前記ポリペプチドの結合を検出する工程と
を含む、BoNT/A又はボツリヌス菌を検出する方法。
【請求項41】
BoNT/Aと結合することができるポリペプチドを同定する方法であって、
SV2タンパク質のBoNT/A結合配列を含むポリペプチドを提供する工程と、
前記BoNT/A結合配列で前記ポリペプチドを修飾する工程と、
前記の修飾されたポリペプチドがBoNT/Aと結合することができるか否かを求める工程と
を含む、BoNT/Aと結合することができるポリペプチドを同定する方法。

【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−511070(P2009−511070A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535797(P2008−535797)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040685
【国際公開番号】WO2007/050390
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390023641)ウイスコンシン アラムナイ リサーチ フオンデーシヨン (61)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】