説明

ボールジョイント

【課題】部品点数が増加せず、製造が容易であり、カバーの中間部に外力が加わってもカバーがソケットから外れにくいボールジョイントを提供する。
【解決手段】カバー4は、ソケット取付部41と、シャフト取付部42と、ソケット取付部41とシャフト取付部42との間に設けられた中間部43とを備え、中間部43は、ソケット取付部41側の延設部43aと、シャフト取付部42側の変形部43bとを含み、ソケット3は、ソケット取付部41と嵌合する嵌合部32aと、嵌合部32aに隣接してカバー4内に配置され、ソケット取付部41と嵌合部32aとの嵌合が外れないように延設部43aの変形を抑制する抑制部33とを備え、抑制部33は、ソケット3の嵌合部32aから傾斜して立設し、抑制部33の高さD1が、延設部43aの高さD2よりも低く、カバー4の内側と、抑制部33の自由端との間に空間が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの中間部に外力が加わってもカバーがソケットから外れにくいボールジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように、ボールジョイント100には、シャフト101と球状部分102とその球状部分102を支持するソケット103との間へ埃などの粉塵が入り込むことによって、シャフト101が揺動しにくくなるのを防ぐためにカバー104を設けている。このカバー104はソケット取付部104aとシャフト取付部104bとを有し、ソケット取付部104aとシャフト取付部104bとの間には、ソケット取付部104a側の延設部104cとシャフト取付部104b側の変形部104dとを含む中間部104eを有している。この延設部104cはソケット固定部103aに隣接して配置されているため、輸送時などに外部からカバー104に衝撃が加わり、延設部104cが外力により変形した場合にソケット取付部104aまで変形してしまい、カバー104がソケット103から外れてしまうおそれがある。
【0003】
これを防ぐために、特許文献1では、ソケットに形成されたカバーが嵌め込まれるカバー嵌合溝にダストカバーを外側から嵌めた後、サークリップをダストカバーの外側から装着することによりカバーをソケットから外れにくくしている。また、特許文献2では、ソケットに形成された環状溝にダストカバーを収容し、ダストカバーの外側からC字状の固定リングを嵌めることによりカバーをソケットから外れにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−35111号公報
【特許文献2】実用新案登録第3125272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載されたボールジョイントは、いずれも別部材にてカバーがソケットから外れにくくなるようにしているため、部品点数が増加し、製造が煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、部品点数が増加せず、製造が容易であり、カバーの中間部に外力が加わってもカバーがソケットから外れにくいボールジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボールジョイントは、一端側に球状部を有するシャフトと、前記球状部と摺接して前記シャフトを揺動可能に支持するソケットと、前記シャフトと前記ソケットとの間に配設されるカバーとを有するボールジョイントにおいて、前記カバーは、ソケット取付部と、シャフト取付部と、前記ソケット取付部と前記シャフト取付部との間に設けられた中間部とを備え、前記中間部は、前記ソケット取付部側の延設部と、前記シャフト取付部側の変形部とを含み、前記ソケットは、前記ソケット取付部と嵌合する嵌合部と、前記嵌合部に隣接して前記カバー内に配置され、前記ソケット取付部と前記嵌合部との嵌合が外れないように前記延設部の変形を抑制する抑制部とを備え、前記抑制部は、前記ソケットの嵌合部から外側に広がるように傾斜して立設し、前記抑制部の高さが、前記延設部の高さよりも低く、前記延設部と前記変形部との境界における前記カバーの内側と、前記抑制部の自由端との間に空間が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記抑制部は、前記延設部に添設されていることが好ましい。
【0009】
また、前記変形部は、前記シャフトの揺動による前記延設部の変形を防ぐように設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボールジョイントによれば、ソケットに抑制部が設けられているため、部品点数が増加せず、製造が容易であり、カバーの中間部に外力が加わってもカバーがソケットから外れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のボールジョイントを説明するための部分断面図である。
【図2】本発明のボールジョイントに用いられるソケットの断面図である。
【図3】本発明のボールジョイントに用いられるソケットの側面図である。
【図4】本発明のボールジョイントに用いられるソケットの抑制部を説明するための、図1における抑制部周辺の拡大図である。
【図5】従来のボールジョイントの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照し、本発明のボールジョイントを詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明のボールジョイント1は、一端側に球状部2を有するシャフトSと、球状部2と摺接してシャフトSを揺動可能に支持するソケット3と、シャフトSとソケット3との間に配設されるカバー4とを有している。
【0014】
シャフトSは、ロッド状の部材の一端にソケット3内で摺動する球状部2を有し、球状部2がシャフトSの揺動の中心となる。シャフトSの他端近傍の側部には、ボールジョイント1のシャフトSを取り付け対象に取り付けるために、雄ネジ等のシャフト固定部S1が形成されている。また、シャフトSの長手方向中央部には、鍔部S2が形成され、鍔部S2の球状部2側に後述するカバー4のシャフト取付部42が水密に取り付けられる。なお、シャフト固定部S1は、雄ネジに限られることはなく、シャフトSが取り付けられる取り付け対象の形状に応じて、適宜変更が可能である。また、シャフトSの鍔部S2は任意の構成であり、カバー4をシャフトSに水密に取り付けることが可能であれば、鍔部S2を設けなくともよい。
【0015】
ソケット3は、図1に示すように、シャフトSの球状部2を収容する。球状部2の外表面はソケット3に摺接し、ソケット3に対してシャフトSが揺動可能になるように支持される。図1においては、ソケット3は、球状部2を収容する収容凹部が形成されたブッシュBを有し、ソケット3のブッシュBを介して球状部2の外表面が摺接するように構成されている。また、図2に示すように、ソケット3はシャフトSが挿通される第1開口部34と、当該第1開口部34の反対側に第2開口部35とを有している。図1においては、シャフトSが挿通される第1開口部34とは反対側の第2開口部35は、蓋状の閉止部材5により閉止され、閉止部材5とブッシュBとの間には、コイルバネ6が介装されている。コイルバネ6等の弾性部材を閉止部材5とブッシュBの間に設けることにより、シャフトSの軸方向におけるシャフトSのガタを抑えることができる。
【0016】
また、本発明のボールジョイント1は、特にその用途は限定されるものではないが、車両用等、例えばコントロールケーブルを介してシフトレバーとトランスミッションを連結するための連結部にボールジョイント1が用いられる場合は、図1および2に示すように、ソケット3のロッド取付部31にロッドRが固定され、ロッドR内にコントロールケーブル(図示せず)の端部が固定される。
【0017】
なお、図1では、ブッシュB、閉止部材5、コイルバネ6がソケット3に設けられているが、ソケット3は、シャフトSが揺動可能に支持でき、球状部2が滑らかに摺接できるように構成されていればよく、図1に示す構成に限定されるものではない。
【0018】
ソケット3の外形形状は、シャフトSの球状部2を収容でき、カバー4を取り付けることができれば特に限定されることはないが、図2および3に示すように、球状部2が収容される球状部収容部32は、球状部2を収容するために、略円筒状を呈している。ソケット3の球状部収容部32の外周には、後述するカバー4のソケット取付部41が嵌合する嵌合部32aが形成されている。嵌合部32aは、図2および3では、球状部収容部32の外周に形成された円環状の溝として示され、当該溝状の嵌合部32aにカバー4のソケット取付部41が嵌合することにより、カバー4がソケット3に取り付けられる。なお、嵌合部32aは、図2および3に示す円環状の溝に限定されるものではなく、カバー4のソケット取付部41の形状に応じて適宜変更することができる。ソケット3の球状部収容部32のカバー4が取り付けられる側の端部には、カバー4のソケット取付部41と嵌合部32aとの嵌合が外れないように、後述するカバー4の延設部43aの変形を抑制する抑制部33が設けられている。なお、ソケット3の抑制部33の詳細については、後述する。
【0019】
図1に示すように、シャフトSの球状部2が収容されたソケット3とシャフトSとの間には、球状部2とソケット3との間に粉塵等が入り込むことを防止するために、カバー4が配設される。カバー4は、粉塵等が入り込むことを防止しながらシャフトSが揺動できるように、例えばゴム等の弾性材料から構成される。カバー4は、図1に示すように、ソケット3に取り付けられるソケット取付部41と、シャフトSに取り付けられるシャフト取付部42と、ソケット取付部41とシャフト取付部42との間に設けられた中間部43とを備えている。また、中間部43は、ソケット取付部41側の延設部43aと、シャフト取付部42側の変形部43bとを含んでいる。ソケット取付部41は、ソケット3の溝状の嵌合部32aに嵌合できるように、図1に示すように、カバー4の外周側から内側(シャフトSの軸心方向)に向かって延び、内向きのフランジ状に形成されている。
【0020】
図1に示すように、ソケット取付部41の外周側からは、ソケット取付部41に対してほぼ垂直、またはソケット取付部41の外周側からわずかにシャフトSの軸心方向に傾斜して延設された延設部43aが形成されている。延設部43aと連続して、シャフト取付部42側に向かって蛇腹状の変形部43bが設けられ、カバー4の外部からの粉塵等が入り込むことを防止しながら、シャフトSの揺動に合わせて変形し、シャフトSの円滑な揺動を許容する。また、カバー4の内側(シャフトS側の内部空間)には、シャフトSの揺動を円滑にするために、グリース等の潤滑剤が充填されている。なお、図1に示す形状のカバー4はあくまで一例であり、球状部2とソケット3との間に粉塵等が入り込むことを防止することができ、ソケット3の嵌合部32aと勘合するソケット取付部41、シャフトSに取り付けられるシャフト取付部42、延設部43aと変形部43bを含む中間部43を有するものであれば、特にその形状は限定されるものではない。
【0021】
つぎに、本発明のボールジョイント1の、カバー4がソケット3から外れにくくするための構造について、図4を用いて説明する。
【0022】
図4に示すように、ソケット3の球状部収容部32のカバー4が取り付けられる側の端部には、ソケット3の嵌合部32aに隣接してカバー4内に配置され、カバー4のソケット取付部41と嵌合部32aとの嵌合が外れないように、カバー4の延設部43aの変形を抑制する抑制部33が設けられている。抑制部33は、図2および3に示すように、球状部収容部32のカバー4が取り付けられる側の端部において、カバー4の延設部43aに沿って延びるように、図4中、下方に向かって形成され、延設部43aに添設されている。
【0023】
抑制部33がカバー4の内側に設けられることにより、ボールジョイント1の輸送時などに、カバー4の外側から、図4中、矢印X、Yで示す方向に外力が加わったとしても、カバー4自体の変形を抑制することができ、カバー4の変形によるカバー4のソケット取付部41と嵌合部32aの嵌合が外れることを防止することができる。すなわち、嵌合部32aだけが設けられ、抑制部33が設けられていない場合は、X方向に力が加わった場合、カバー4の延設部43aは、カバー4の内側方向に変形し、そのカバー4の変形に伴って、図4中、矢印Zで示す方向、すなわち、ソケット取付部41が嵌合部32aから外れる方向に力が加わり、ソケット取付部41が嵌合部32aから外れる原因となってしまう。特に、カバー4の内側には、通常グリースなどの潤滑剤が充填されることが多く、延設部43aの変形により、ソケット取付部41と嵌合部32aとが滑って外れ易い。抑制部33を設けることにより、X方向の力によって変形してしまう延設部43aの変形を抑制し、図4中Z方向の力がソケット取付部41に加わらないようにすることにより、簡単な構成でカバー4がソケット3から外れることを防止することができる。したがって、カバー4の外側から別部材でカバー4を固定する必要がなくなるため、ボールジョイント1の部品点数が増加せず、ボールジョイント1の製造も容易となる。また、ソケット3を外側からかしめることにより、カバー4をソケット3に固定したりする必要もないので、ボールジョイント1の製造が容易となる。ソケット3の材質は特に限定はされないが、ソケット3を変形もしくは変形後の形状保持が困難な材料、例えば合成樹脂により成形した場合は、外側からソケット3をかしめて固定することは困難であるので、部品点数を増やさずにカバー4がソケット3から外れないようにする場合に、上記構造は有用である。
【0024】
図4中、Y方向の力が加わった場合にも、変形部43bが図4中、右上方向に向かってわずかに撓んだ後、抑制部33の端部に当接し、それ以上の変形部43bの変形が防止され、その結果、延設部43aがX方向に変形することを抑制することができる。したがって、ソケット取付部41が嵌合部32aから外れることを防止することができる。
【0025】
また、変形部43bを、シャフトSの揺動による延設部43aの変形を防ぐように設けることにより、変形部43bの変形に起因する延設部43aの変形を防止して、ソケット取付部41が嵌合部32aから外れることを防止することができる。すなわち、シャフトSが図4中、球状部2を中心として左右に揺動すると、変形部43bもシャフトSの揺動に伴って変形するが、例えば、図4に示すような蛇腹状の変形部43bとすることにより、蛇腹状の部分が図4中、左右方向に伸び縮みすることにより、延設部43aに変形部43bの変形が影響せず、延設部43aの変形を防止することができる。したがって、ソケット取付部41が嵌合部32aから外れることを防止することができる。なお、蛇腹状の変形部43bの凹凸の数は、図4に示す数に特に限定されるものではない。
【0026】
また、抑制部33は、延設部43aに添設されているが、図4に示すように、抑制部33の自由端に向かうにつれ、外側(シャフトSの軸心から離れる方向)に広がるように傾斜して立設するように形成することができる。すなわち、抑制部33は、球状部収容部32の嵌合部32aが形成される側の端部から、シャフトSの軸心方向に沿って、環状に立設し、かつ抑制部33が外側に広がるように傾斜している。この構成により、図4においてシャフトSが左側に揺動し、図4中左方向に変形部43bが全体的に縮んだ場合に、変形部43bが延設部43aの傾斜の分だけ左側に逃げることができるため、シャフトSの揺動動作をスムーズにすることができる。
【0027】
抑制部33の高さ(図4にD1で示す、抑制部33とソケット取付部41の接触位置から抑制部33の自由端までの高さ)D1は、カバー4がソケット3から外れることを防止することができる高さであれば特に限定されるものではないが、カバー4に様々な方向からの外力が加わった場合に、効率よく抑制部33の変形を防止する観点から、抑制部33の高さD1は、延設部43aの高さ(図4にD2で示す、ソケット取付部41と延設部43aとの境界部から延設部43aの頂部までの高さ)D2よりも低くなるように構成されることが好ましい。また、抑制部33の高さD1を延設部43aの高さよりも低くして、カバー4の延設部43aと変形部43bとの境界におけるカバー4の内側と抑制部33の自由端との間に空間を設けることにより、シャフトSの揺動によって、変形する変形部43bと抑制部33との接触を減らすことができ、変形部43bの抑制部33との繰り返しの当接によるカバー4の破損を防ぐことができる。また、変形部43bの輸送時の外力による変形をある程度許すことができるので、延設部43aの変形を抑制しながら、抑制部33と変形部43bとの接触によるカバー4の破損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ボールジョイント
2 球状部
3 ソケット
31 ロッド取付部
32 球状部収容部
32a 嵌合部
33 抑制部
34 第1開口部
35 第2開口部
4 カバー
41 ソケット取付部
42 シャフト取付部
43 中間部
43a 延設部
43b 変形部
5 閉止部材
6 コイルバネ
B ブッシュ
R ロッド
S シャフト
S1 シャフト固定部
S2 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に球状部を有するシャフトと、
前記球状部と摺接して前記シャフトを揺動可能に支持するソケットと、
前記シャフトと前記ソケットとの間に配設されるカバーとを有するボールジョイントにおいて、
前記カバーは、ソケット取付部と、シャフト取付部と、前記ソケット取付部と前記シャフト取付部との間に設けられた中間部とを備え、
前記中間部は、前記ソケット取付部側の延設部と、前記シャフト取付部側の変形部とを含み、
前記ソケットは、前記ソケット取付部と嵌合する嵌合部と、
前記嵌合部に隣接して前記カバー内に配置され、前記ソケット取付部と前記嵌合部との嵌合が外れないように前記延設部の変形を抑制する抑制部とを備え、
前記抑制部は、前記ソケットの嵌合部から外側に広がるように傾斜して立設し、
前記抑制部の高さが、前記延設部の高さよりも低く、前記延設部と前記変形部との境界における前記カバーの内側と、前記抑制部の自由端との間に空間が設けられていることを特徴とするボールジョイント。
【請求項2】
前記抑制部は、前記延設部に添設されていることを特徴とする請求項1記載のボールジョイント。
【請求項3】
前記変形部は、前記シャフトの揺動による前記延設部の変形を防ぐように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のボールジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44402(P2013−44402A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183053(P2011−183053)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコーポレーション (362)
【Fターム(参考)】