説明

ポジションセンサ

【課題】小型化を図ることが可能なポジションセンサを提供すること。
【解決手段】ポジションセンサは、磁束を発生する磁石10及びその磁石10に対向して配置され同磁石10による磁束を検出するホールIC21〜23を備える。磁石10は、シフトレバーの操作に伴い、所定の直線に沿って移動されることで、その移動距離に対する磁束密度の変化が比例関係となる着磁態様を有する。シフトレバーの操作に伴い、磁石10が各ホールIC21〜23の設けられる直線に対し交差するかたちで直線運動されると、両直線のなす角度毎に、各ホールIC21〜23による検出信号の出力差が一義的に決まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ポジションを検出するポジションセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
変速機を備える車両では、シフトレバーの操作ポジションがポジションセンサによって検出され、その検出結果が変速機の接続状態に反映され、例えば、シフト操作によりドライブポジションが選択されたとき、変速機の接続状態が前進ギヤ段に切り換えられる。特許文献1には、車両前後方向であるシフト方向及び車幅方向であるセレクト方向に沿ってシフトレバーを操作できるよう、シフトゲートがH字タイプに設定され、このゲートに沿ったシフト操作を検出するポジションセンサについて開示されている。そして、上記文献によるものは、シフト側の磁石をシフト用の検出素子群で検出するとともに、セレクト側の磁石をセレクト用の検出素子群で検出し、各検出素子による検出信号の組み合わせに基づき、シフトレバーの操作ポジションを特定することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−239057号公報(段落[0029]、段落[0031]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているものでは、シフト側及びセレクト側といった2個の磁石が必要であるため、部品点数が多く、センサの大型化を招く虞がある。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、小型化を図ることが可能なポジションセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、磁束を発生する磁石及びその磁石に対向して配置され同磁石による磁束を検出する検出素子を備え、シフトレバーの操作に伴って前記磁石及び前記検出素子が相対的に変位するとともに、前記検出素子による検出信号の組み合わせに基づき、前記シフトレバーの操作ポジションを検出するポジションセンサにおいて、前記磁石は、前記シフトレバーの操作に伴い、複数の直線の中から選択されるいずれかの直線として規定される所定の直線に沿って前記検出素子に対し相対的に変位されることで、その移動距離に対する前記検出素子の出力の変化が比例関係となる着磁態様を有し、前記検出素子は、前記所定の直線と交差する一直線上に所定の間隔を有して複数個設けられ、さらに、各検出素子による検出信号の組み合わせに基づき、前記シフトレバーの操作ポジションを特定する特定手段を備えることをその要旨としている。
【0006】
同構成によると、シフトレバーの操作に伴い、磁石が各検出素子の設けられる直線に対し交差するかたちで相対的に直線運動されると、両直線のなす角度毎に、各検出素子による検出信号の出力差が一義的に決まる。このため、まず各検出信号の出力差に基づき、シフトレバーがどの直線上にあるのか、を特定できるとともに、次いで、各検出信号そのものの値に基づき、上記特定した直線上のどの操作ポジションにシフトレバーがあるのか、を特定できるようになる。そして、このように操作ポジションを特定するに際し、磁石の着磁態様に工夫を凝らすことで、当該磁石の数を増やすことなく、単一の磁石で対応できるようになる。従って、小型化を図ることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポジションセンサにおいて、各検出素子の間隔に基づいて、両直線のなす角度毎に一義的に決まる各検出信号の出力差を基準値と規定し、各検出素子による検出信号の出力差について、前記基準値に対する比較を行い、この比較の結果、当該出力差が前記基準値に対し所定の許容差を超えることを条件に、いずれかの検出素子の故障を判定する故障判定手段を備えることをその要旨としている。同構成によると、検出素子の故障を判定できるようにすることで、故障と判定された検出素子を用いた操作ポジションの検出を回避できるようになる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のポジションセンサにおいて、前記各検出素子は、前記所定の直線と交差する一直線上に所定の間隔を有して3個以上設けられることをその要旨としている。同構成によると、各検出素子による検出信号の出力差が各検出素子の間隔に基づいて両直線のなす角度毎に一義的に決まることを踏まえて、いずれか1個の検出素子の故障が判定された場合でも、残りの検出素子を用いて操作ポジションを検出できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のポジションセンサによって検出される操作ポジションについて、その設定態様を示す概念図。
【図2】ポジションセンサの構成を示す側面図、及び、磁石の着磁態様を示す斜視図、及び、ホールICの配置を示す基板の平面図。
【図3】磁石及びホールICの配置関係を操作ポジション毎に示す概念図。
【図4】ホールICによる出力電圧を示すグラフ。
【図5】各ホールICによる出力電圧に出力差が生じる原理について説明する図。
【図6】ポジションセンサの電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、車両変速機の接続状態を切り換えるためのシフト装置に適用されるとともに、このシフト装置が備えるシフトレバーの操作ポジションを検出するポジションセンサに具体化した一実施形態について説明する。尚、この種のシフト装置として、近年、シフトレバーと車両変速機とが機構的に分離されるとともに、上記シフトレバーによる機械的なシフト操作を電気的な操作信号に変換し、その操作信号によってアクチュエータを作動させ、このことにより、車両変速機の接続状態を切り換える、いわゆるシフトバイワイヤ方式によるものが提案されている。本実施形態のポジションセンサは、上記シフトバイワイヤ方式によるシフト装置に適用されたものであるが、本発明はこれに限定されず、シフトレバーと車両変速機とが機構的に連結されたシフト装置に適用されてもよい。また、シフト装置には、シフトポジションを選択後にシフトレバーから手を離してもシフトレバーが選択位置で保持されるステーショナリー型と、シフトポジションを選択後にシフトレバーから手を離すとシフトレバーが原点位置に戻るモメンタリー型とが存在する。本実施形態のポジションセンサは、モメンタリー型のシフト装置に適用されたものであるが、本発明はこれに限定されず、ステーショナリー型のシフト装置に適用されてもよい。
【0012】
本実施形態のシフト装置は、運転席と助手席との間に配設されるとともに、このシフト装置が備えるシフトレバーは、運転者による操作側の端部にシフトノブが設けられ、また、シフトレバーの反対側の端部、すなわち最終端にポジションセンサが設けられている。そして、運転者がシフトノブを操作すると、このシフトノブの操作ポジションがポジションセンサで検出されるとともに、その検出結果が車両変速機の接続状態に反映される。
【0013】
図1に示すように、シフトレバーは、シフトゲートに沿って、車両前後方向であるシフト方向及び車幅方向であるセレクト方向への操作が許容されるとともに、そのうちシフト方向への操作は、第1の直線に沿った操作及びその第1の直線と平行な第2の直線に沿った操作が許容されている。そして、上記第1の直線上には、リバースポジション、ニュートラルポジション、ドライブポジションといった3つの操作ポジションが設定されるとともに、上記第2の直線上には、ホームポジション、回生ブレーキポジションといった2つの操作ポジションが設定されている。
【0014】
図2に示すように、ポジションセンサ1は、上記シフトレバーの操作に伴って同レバーと一体的に移動する単一の磁石10、及び、その磁石10の下面に対向して固定配置されるかたちで基板20上に実装された3個のホールIC21〜23を備えている。尚、上記ホールIC21〜23は、前記セレクト方向に沿った一直線上に等間隔で設けられている。そして、この各ホールIC21〜23の設けられる直線をホールIC21〜23の基準線と規定する。一方、各ホールIC21〜23が対向する上記磁石10の下面側は、半分の領域がN極に、残りの半分の領域がS極となるよう着磁されるとともに、同磁石10の上面側は、下面側のN極の上部がS極に、下面側のS極の上部がN極となるよう着磁されている。すなわち、上記磁石10は、これを上下左右に均等となるよう仮想的に4分割したとき、N極とS極とが上下左右で隣り合うよう磁極が交互に設定されている。そして、磁石10の上面側或いは下面側において、N極とS極とが並設された方向に沿った直線のうち、当該磁石10の第1端部から第2端部へ向かう磁極の中央を通る直線を磁石10の基準線と規定する。
【0015】
そして、こうした着磁態様のもと、上記シフトレバーが上記シフトゲートに沿って操作されると、磁石10及びホールIC21〜23の配置関係は、操作ポジション毎に図3に示す態様となり、また、そのときの各ホールIC21〜23による出力電圧は図4に示す態様となる。尚、図3には、各ホールIC21〜23に対向する磁石10の下面側の磁極が示される一方で、同磁石10の上面側の磁極については、説明の便宜上、図示が割愛されている。
【0016】
ここで、まず図3から理解されるように、上記シフトレバーが前記第1の直線上のRポジション、Nポジション、Dポジションのいずれかの選択位置にあるとき、磁石10の基準線とホールIC21〜23の基準線とのなす角度θ1が75度に設定されている。一方、上記シフトレバーが前記第2の直線上のHポジション、Bポジションのいずれかの選択位置にあるとき、磁石10の基準線とホールIC21〜23の基準線とのなす角度θ2が105度に設定されている。尚、こうした態様での磁石10の運動を許容するべく、ガイド部材及びスライダを含むかたちで上記シフトレバーの操作機構が構築されている。すなわち、上記シフトレバーがシフト方向に沿って操作されるときには、磁石10がスライダ内を磁石10の基準線に沿って直線運動するとともに、上記シフトレバーがセレクト方向に沿って操作されるときには、磁石10がスライダと一体となってガイド部材に案内されるかたちで時計回り或いは反時計回りに回転運動する。
【0017】
次いで図4から理解されるように、上記シフトレバーが前記第1の直線に沿ってRポジションからNポジションを経由してDポジションまで操作されるとき、各ホールIC21〜23による出力電圧V1〜V3は、V1>V2>V3の大小関係が維持されつつ、それぞれの傾きが正の比例関係となる。これは、上記磁石10の着磁態様が、当該磁石10の基準線に沿った磁石10の移動距離に対する磁束密度の変化が比例関係となるよう設定され、また、各ホールIC21〜23に対向する面の磁極が、ホールIC21、ホールIC22、ホールIC23の順に、S極からN極に切り換わることによる。尚、各ホールIC21〜23は、図3のNポジションにおいてホールIC22が配置される位置のように、S極とN極との境界位置に対向するとき、中間電圧である2.5Vを出力する。そして、同NポジションにおいてホールIC21が配置される位置のように、N極寄りで対向するとき、2.5Vよりも大きな電圧を出力し、同NポジションにおいてホールIC23が配置される位置のように、S極寄りで対向するとき、2.5Vよりも小さな電圧を出力する。
【0018】
一方、上記シフトレバーが前記第2の直線に沿ってHポジションからBポジションまで操作されるとき、各ホールIC21〜23による出力電圧V1〜V3は、この場合、V1<V2<V3の大小関係が維持されつつ、それぞれの傾きが正の比例関係となる。これは、上記シフトレバーが前記第1の直線に沿って操作される場合とは逆に、ホールIC23、ホールIC22、ホールIC21の順に、S極からN極に切り換わることによる。
【0019】
ここで、各ホールIC21〜23による出力電圧V1〜V3に出力差が生じる原理について説明する。尚、本例では、図5に示すように、ホールIC21〜23が一直線上に等間隔で固定配置され、そのホールIC21〜23の基準線に対し磁石10の基準線が交差するかたちで、同磁石10が−方向側でホールIC21〜23に対向する位置から+方向側でホールIC21〜23に対向する位置まで直線運動する。そして、磁石10において、ホールIC21〜23に対向する面の磁極は、−方向寄りがS極に設定されるとともに、+方向寄りがN極に設定されている。
【0020】
まず図5の上段に示すように、ホールIC21〜23の基準線に対して、磁石10が90度の角度で移動する場合について説明する。この場合において、磁石10が−方向側のS極の端部付近でホールIC21〜23に対向するとき、各ホールIC21〜23は、S極の端部付近の互いに等しい磁束密度を検出することとなり、したがって出力電圧V1〜V3は互いに等しいかたちで小さなものとなる。そして、磁石10が+方向側のN極の端部付近でホールIC21〜23に対向する位置まで移動することに伴い、出力電圧V1〜V3は互いに等しいかたちで次第に大きなものとなる。
【0021】
次いで図5の中段に示すように、ホールIC21〜23の基準線に対して、磁石10が95度の角度で移動する場合について説明する。この場合において、磁石10が−方向側のS極の端部付近でホールIC21〜23のうちホールIC22に対向するとき、ホールIC21は、ホールIC22よりも+方向寄りに配置されるとともに、ホールIC23は、ホールIC22よりも−方向寄りに配置される。このとき、各ホールIC21〜23は、それぞれの付近の互いに異なる磁束密度を検出することとなり、したがって出力電圧V1〜V3は、ホールIC23による出力電圧V3が最も大きくなるかたちでV1<V2<V3の大小関係となる。そして、磁石10が+方向側のN極の端部付近でホールIC21〜23のうちホールIC22に対向する位置まで移動することに伴い、出力電圧V1〜V3は、V1<V2<V3の大小関係を維持するかたちで次第に大きなものとなる。
【0022】
次いで図5の下段に示すように、ホールIC21〜23の基準線に対して、磁石10が100度の角度で移動する場合について説明する。この場合において、磁石10が−方向側のS極の端部付近でホールIC21〜23のうちホールIC22に対向するとき、ホールIC21は、上記95度の場合との比較において、ホールIC22よりも更に+方向寄りに配置されるとともに、ホールIC23は、ホールIC22よりも更に−方向寄りに配置される。このとき、各ホールIC21〜23は、それぞれの付近の互いに異なる磁束密度を検出することとなり、したがって出力電圧V1〜V3は、上記95度の場合との比較において、出力差が広がりつつ、ホールIC23による出力電圧V3が最も大きくなるかたちでV1<V2<V3の大小関係となる。そして、磁石10が+方向側のN極の端部付近でホールIC21〜23のうちホールIC22に対向する位置まで移動することに伴い、出力電圧V1〜V3は、上記出力差が保たれつつ、V1<V2<V3の大小関係を維持するかたちで次第に大きなものとなる。
【0023】
このことから理解されるように、ホールIC21〜23の基準線に対して、磁石10が90度<θ<180度の角度で移動する場合には、V1<V2<V3の大小関係が得られるとともに、出力電圧V1〜V3の出力差が当該角度毎に一義的に決まる。一方、図示は省略するが、ホールIC21〜23の基準線に対して、磁石10が0度<θ<90度の角度で移動する場合にも、上記と同様の原理に基づき、この場合、V1>V2>V3の大小関係が得られるとともに、出力電圧V1〜V3の出力差が当該角度毎に一義的に決まる。従って、本例によるように、ホールIC21〜23の間隔を例えば等間隔とすることで、その間隔に基づいて、両直線のなす角度毎に各出力電圧V1〜V3の出力差が一義的に決まることになる。ここに図4の例では、両直線のなす角度θ1が75度のとき、出力差「V1−V2」の値、及び、出力差「V2−V3」の値がそれぞれ「+1V」であり、また、出力差「V1−V3」の値が「+2V」である。同じく両直線のなす角度θ2が105度のとき、出力差「V1−V2」の値、及び、出力差「V2−V3」の値がそれぞれ「−1V」であり、また、出力差「V1−V3」の値が「−2V」である。
【0024】
図6に示すように、上記各ホールIC21〜23は、シフトバイワイヤ電子制御ユニット30に電気的に接続されている。このシフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、上記各ホールIC21〜23による出力電圧V1〜V3を監視するとともに、当該出力電圧V1〜V3の組み合わせに基づき、上記シフトレバーの操作ポジションを特定する。
【0025】
次に、ポジションセンサ1の作用について説明する。
車両ユーザによってシフトレバーが操作されていないとき、同レバーはHポジションの選択位置にある。この場合、図4に示すように、ホールIC21による出力電圧V1が1.5Vに、また、ホールIC22による出力電圧V2が2.5Vに、さらに、ホールIC23による出力電圧が3.5Vとなる。シフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、まず出力電圧V1〜V3の出力差について、出力差「V1−V2」の値、及び、出力差「V2−V3」の値がそれぞれ「−1V」であり、また、出力差「V1−V3」の値が「−2V」であることに基づき、両直線のなす角度が105度、すなわちシフトレバーが第2の直線上にあることを特定する。次いでシフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、各出力電圧V1〜V3の値に基づき、上記特定した第2の直線上のHポジションにシフトレバーがあることを特定する。尚、シフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、各出力電圧V1〜V3の出力差について、所定の許容差を考慮しつつ基準値に対する比較を行い、それによって各ホールIC21〜23の故障判定を行う。そして、基準値に対し許容差を超えるかたちの出力差を得た場合、正しい出力差が得られている2個のホールICによる出力電圧に基づいて操作ポジションを特定するとともに、出力差が大きくずれる要因となったホールICの故障を判定する。
【0026】
そして、シフトレバーがHポジションからNポジションを経由してDポジションまで操作されると、このDポジションの選択位置において、図4に示すように、ホールIC21による出力電圧V1が4.5Vに、また、ホールIC22による出力電圧V2が3.5Vに、さらに、ホールIC23による出力電圧が2.5Vとなる。この場合、シフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、まず出力電圧V1〜V3の出力差について、出力差「V1−V2」の値、及び、出力差「V2−V3」の値がそれぞれ「+1V」であり、また、出力差「V1−V3」の値が「+2V」であることに基づき、両直線のなす角度が75度、すなわちシフトレバーが第1の直線上にあることを特定する。次いでシフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、各出力電圧V1〜V3の値に基づき、上記特定した第1の直線上のDポジションにシフトレバーがあることを特定する。そして、シフトバイワイヤ電子制御ユニット30は、上記のように操作ポジションとしてDポジションを特定したとき、変速機の接続状態を前進ギヤ段に切り換える。その結果、車両は前進走行できるようになる。
【0027】
尚、上記HポジションやDポジション以外の操作ポジションが選択される場合にも、上記原理に倣って、まず出力電圧V1〜V3の出力差に基づき、シフトレバーが第1の直線上にあるのか、それとも第2の直線上にあるのか、が特定される。ちなみに、本例によるように、両直線のなす角度が90度未満となる第1の直線、及び、両直線のなす角度が90度を超える第2の直線、といった2本の直線の中から選択されるいずれかの直線に沿って磁石10がホールIC21〜23に対し相対的に変位される場合には、以下のような簡易的な手法で直線を特定することができる。すなわち、出力電圧V1〜V3の出力差に基づいて直線を特定する代わりに、出力電圧V1〜V3の大小関係がV1>V2>V3の場合には第1の直線を特定するとともに、V1<V2<V3の場合には第2の直線を特定できるようになる。次いで上記いずれの手法であれ、各出力電圧V1〜V3の値に基づき、上記特定された直線上のどの操作ポジションにシフトレバーがあるのか、が特定される。また、併せて、各出力電圧V1〜V3の出力差について、基準値に対する比較が行われ、出力差が大きくずれているような場合には、それを根拠としてホールICの故障が判定される。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)シフトレバーの操作に伴い、磁石10が各ホールIC21〜23の設けられる直線に対し交差するかたちで相対的に直線運動されると、両直線のなす角度毎に、各ホールIC21〜23による出力電圧V1〜V3の出力差が一義的に決まる。このため、まず各出力電圧V1〜V3の出力差に基づき、シフトレバーがどの直線上にあるのか、を特定できるとともに、次いで、各出力電圧V1〜V3そのものの値に基づき、上記特定した直線上のどの操作ポジションにシフトレバーがあるのか、を特定できるようになる。そして、このように操作ポジションを特定するに際し、磁石の着磁態様に工夫を凝らすことで、当該磁石の数を増やすことなく、単一の磁石10で対応できるようになる。従って、小型化を図ることができる。
【0029】
(2)各ホールIC21〜23の間隔を本例によるように例えば等間隔とすることで、出力電圧V1〜V3の出力差が当該間隔に基づいて一義的に決まる。このため、上記出力差が大きくずれているような場合には、それを根拠としてホールICの故障を判定できるようになる。
【0030】
(3)ホールICの故障を判定できるようにすることで、故障と判定されたホールICを用いた操作ポジションの検出を回避できるようになる。
(4)出力電圧V1〜V3の出力差が各ホールIC21〜23の間隔に基づいて両直線のなす角度毎に一義的に決まることを踏まえて、いずれか1個のホールICの故障が判定された場合でも、残りのホールICを用いて操作ポジションを検出できるようになる。
【0031】
(5)5つの操作ポジションを検出するに際し、3個のホールIC21〜23で足りるため、検出素子の数を減らすことができる。
(6)上記(5)に加え、ホールICのような検出素子の出力端子の数に由来するハーネスの数を減らすことができる。
【0032】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・前記実施形態では、磁石10の着磁態様について、移動距離に対する磁束密度の変化が比例関係となるものを規定したが、移動距離に対する各ホールIC21〜23の出力の変化が比例関係となるものが規定されてもよい。例えば、移動距離に対する磁束密度の変化が比例関係でなくても、各ホールIC21〜23から出力される電圧の変化が比例関係となればよい。或いは、各ホールIC21〜23から出力される電圧の変化そのものが比例関係でなくても、当該電圧に基づくシフトバイワイヤ電子制御ユニット30による演算結果が比例関係となればよい。
【0033】
・ホールICのような検出素子を少なくとも2個備えれば、それらによる検出信号に出力差が生まれるので、上記原理に基づき、シフトレバーがどの直線上にあるのか、また、その直線上のどの操作ポジションにシフトレバーがあるのか、を特定できるようになる。従って、検出素子の数は3個に限らず、2個であってもよい。
【0034】
・検出素子は、磁石10の基準線と交差する一直線上に所定の間隔を有して4個以上設けられてもよい。同構成によると、いずれか1個の検出素子の故障が判定されても、残りの3個以上の検出素子を用いて操作ポジションを検出できるとともに、いずれか2個の検出素子の故障が判定されても、残りの2個以上の検出素子を用いて操作ポジションを検出できるようになる。すなわち、故障と判定された検出素子以外の残りの正常な検出素子の数が2個以上あれば、それらによる検出信号の出力差に基づき、シフトレバーがいずれの直線上にあるのか特定できるとともに、次いで、各検出信号そのものの値に基づき、上記特定した直線上のどの操作ポジションにシフトレバーがあるのか特定できる。
【0035】
・各検出素子は、必ずしも等間隔で設けられる必要はなく、例えば3個の検出素子が磁石10の基準線と交差する一直線上に1:2の間隔で設けられてもよい。同構成によるように間隔が1:2の場合にも、各検出素子による検出信号の出力差が当該間隔に基づいて一義的に決まるので、上記出力差が大きくずれているような場合には、それを根拠として検出素子の故障を判定できる。
【0036】
・検出素子は、磁束の変化を検出するに際し、その強弱を検出する点で優れるホールICに限定されず、例えば、その向きを検出する点で優れる磁気抵抗素子等であってもよい。
【0037】
・シフトレバーの操作に伴う磁石及び検出素子の相対的な変位の態様は、前記実施形態による磁石が可動で検出素子が固定の態様に限定されず、検出素子が可動で磁石が固定の態様であってもよい。尚、両者が可動の態様、例えば、同じ方向に異なる移動量で移動する態様、或いは、異なる方向に移動する態様等であってもよい。
【0038】
・シフトパターンは、h字パターンに限らず、H字パターン、或いは、シフト方向の中央以外にセレクト方向が設定されるパターン等であってもよい。
・シフトレバーの操作に伴い、磁石が各検出素子の設けられる直線に対し交差するかたちで相対的に直線運動する別の態様例として、例えば3本以上の直線の中から選択されるいずれかの直線に沿って磁石が各検出素子に対し相対的に変位されるよう、3本以上の直線に沿ったシフトレバーの操作が許容されるシフト装置に適用されてもよい。例えば第1の直線〜第3の直線といった3本の直線に沿った操作が許容される構成において、例えば3個のホールIC21〜23が一直線上に等間隔で設けられるとき、各出力電圧V1〜V3が「V1+出力差a=V2=V3−出力差a」であれば第1の直線が特定される。一方、各出力電圧V1〜V3が「V1+出力差b=V2=V3−出力差b」であれば第2の直線が特定される。他方、各出力電圧V1〜V3が「V1+出力差c=V2=V3−出力差c」であれば第3の直線が特定される。尚、出力差a〜cは正負いずれの値も許容される。
【0039】
・磁石及び検出素子の相対的な直線運動は、例えば側面視円弧運動であっても、両直線のなす角度が0度<θ<180度の範囲に含まれる平面視直線運動であれば、直線運動として許容される。
【符号の説明】
【0040】
1…ポジションセンサ、10…磁石、20…基板、21〜23…ホールIC(検出素子)、30…シフトバイワイヤ電子制御ユニット(特定手段、故障判定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁束を発生する磁石及びその磁石に対向して配置され同磁石による磁束を検出する検出素子を備え、シフトレバーの操作に伴って前記磁石及び前記検出素子が相対的に変位するとともに、前記検出素子による検出信号の組み合わせに基づき、前記シフトレバーの操作ポジションを検出するポジションセンサにおいて、
前記磁石は、前記シフトレバーの操作に伴い、複数の直線の中から選択されるいずれかの直線として規定される所定の直線に沿って前記検出素子に対し相対的に変位されることで、その移動距離に対する前記検出素子の出力の変化が比例関係となる着磁態様を有し、
前記検出素子は、前記所定の直線と交差する一直線上に所定の間隔を有して複数個設けられ、
さらに、各検出素子による検出信号の組み合わせに基づき、前記シフトレバーの操作ポジションを特定する特定手段を備える
ことを特徴とするポジションセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のポジションセンサにおいて、
各検出素子の間隔に基づいて、両直線のなす角度毎に一義的に決まる各検出信号の出力差を基準値と規定し、
各検出素子による検出信号の出力差について、前記基準値に対する比較を行い、この比較の結果、当該出力差が前記基準値に対し所定の許容差を超えることを条件に、いずれかの検出素子の故障を判定する故障判定手段を備える
ことを特徴とするポジションセンサ。
【請求項3】
前記各検出素子は、前記所定の直線と交差する一直線上に所定の間隔を有して3個以上設けられる
請求項1又は2に記載のポジションセンサ。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−60055(P2013−60055A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198563(P2011−198563)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】